【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 戦略的省エネルギー技術革新プログラム/省エネルギー技術開発事業の重要技術に係る周辺技術・関連技術の検討(平成28年度)/高度EMSによる生産最適化技術の開発に関する調査検討、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明のデータ処理装置、データ処理方法の実施形態について説明する。
【0018】
(データ処理システム)
まず、本実施形態に係るデータ処理システムの一構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係るデータ処理システムの一構成例を示すブロック図である。
データ処理システム1は、データ処理装置10と、制御システム20と、を含んで構成される。
【0019】
データ処理装置10は、制御装置24から所定時間(例えば、1秒)毎にネットワークNW2、監視装置22及びネットワークNW1を介してプロセスデータを受信する。プロセスデータは、プラント設備30におけるプロセスの運転状態の測定値を示す出力情報が含まれるリアルタイムデータである。プロセスデータには、プロセスの制御目標とする設定値を示す設定情報、プロセスへの操作量を示す入力情報が含まれてもよい。データ処理装置10は、受信したプロセスデータを集積する。データ処理装置10は、集積したプロセスデータを解析し、プロセスの主な変動成分を特定する。データ処理装置10は、特定した変動成分を有する制御ループに対して制御パラメータを最適化する。ここで、データ処理装置10は、測定値と操作量に基づいて伝達関数を計算し、さらにプロセスにおける測定値の周波数特性を解析する。データ処理装置10は、伝達関数と周波数特性とに基づいて目標とする目標感度関数を定め、調整前の制御パラメータに基づく現状の感度関数と、目標感度関数との差が減少するように制御パラメータを調整する。
【0020】
制御システム20は、プラント設備30におけるプロセスを制御対象として、その運転状態を制御する。制御システム20は、監視装置22と、制御装置24と、を含んで構成されるDCSである。データ処理装置10と監視装置22とは、ネットワークNW1を介して接続され、相互にデータが送受信可能である。また、監視装置22と制御装置24とは、ネットワークNW2を介して接続され、相互にデータが送受信可能である。
図1に示す例では、ネットワークNW1は、ネットワークNW2に直接接続されていない。このことは、ネットワークNW2に接続された制御装置24への不正なアクセスを予防するためである。
【0021】
監視装置22は、プラント設備30の運転員が、プロセスの運転状態の監視や、その運転状態を制御するための設定値を設定するためのHMI(Human Machine Interface)である。監視装置22は、プラント設備30における運転状態の測定値を示す出力情報を所定時間毎に受信する。監視装置22は、例えば、各時点における測定値を表示する表示部を備える。監視装置22は、操作に応じて制御目標とする設定値を設定する操作入力部を備える。監視装置22は、設定した設定値を示す設定情報を制御装置24とデータ処理装置10に送信する。
【0022】
制御装置24は、プラント設備30から所定時間毎に入力されるプロセスの出力情報と監視装置22から受信した設定情報に基づいてプロセスの運転状態を制御する。制御装置24は、制御対象とするプロセス毎に制御器(Controller,コントローラ)を備える。制御器は、例えば、PID制御を実行するPID制御器である。PID制御とは、比例項P、積分項I及び微分項Dの総和を操作量として計算し、得られた操作量を制御対象に入力する手法である。比例項Pは、その時点における設定情報が示す設定値から出力情報が示す測定値を差し引いて得られる偏差に所定の比例ゲインK
pを乗じて得られる。積分項Iは、その時点までの偏差を積分して得られる積分値に所定の積分ゲインK
Iを乗じて得られる。微分項Dは、その時点における偏差を微分して得られる微分値に所定の微分ゲインK
Dを乗じて得られる。これらの比例ゲインK
p、積分ゲインK
I及び微分ゲインK
Dが、PID制御の制御パラメータに相当する。制御装置24は、プロセス毎に得られた操作量をプラント設備30に出力する。なお、制御装置24は、プロセス毎に入力される出力情報をデータ処理装置10に送信する。
【0023】
プラント設備30は、制御対象となるプロセスを有する設備である。これらのプロセスは、運転が時間的に継続する連続プロセスである。プラント設備30は、制御対象とする各プロセスについて、センサ32と、アクチュエータ34とを備える。センサ32は、プロセスの運転状態を検出する。センサ32は、例えば、温度を検出する温度センサ、圧力を検出する圧力センサ、流量を検出する流量計、電流を検出する電流計、電圧を検出する電圧計など、アクチュエータ34の動作により変化する状態を検出する。センサ32は、検出した状態を示す出力情報を制御装置24に逐次に出力する。
【0024】
アクチュエータ34は、制御装置24から入力される入力情報に基づいて動作する。その動作によりプロセスの運転状態が変化する。入力情報が示す入力値が大きいほど、アクチュエータ34の動作量は大きくなる。例えば、アクチュエータ34の動作量は、入力値に比例する。従って、センサ32、制御装置24における制御器及びアクチュエータ34のセットにより1個の制御ループが形成される。アクチュエータは、例えば、ポンプ、コンプレッサ、バルブ、モータ、モータ駆動装置などである。
以下の説明では、主に1個の制御ループに係る構成ならびに処理について述べるが、
制御ループの個数は、一般には複数個となる場合がある。その場合には、個々の制御ループに係る処理が並列に行われればよい。
【0025】
(データ処理装置)
次に、本実施形態に係るデータ処理装置の一構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係るデータ処理装置10の一構成例を示すブロック図である。
データ処理装置10は、プロセスデータ収集部12と、プロセスデータ解析部14と、制御パラメータ最適化部16と、記憶部18と、を含んで構成される。制御パラメータ最適化部16は、プロセス同定部162と、目標感度関数計算部164と、周波数解析部166と、制御パラメータ調整部168と、を含んで構成される。なお、データ処理装置10は、キーボード、ポインティングデバイス等の操作入力部、LCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)等の表示部、入出力インタフェース、通信インタフェース等のデータ入出力部、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)等の演算回路、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read−only Memory)等の記憶媒体、等を含んで構成されるコンピュータ(図示せず)として実現されてもよい。その場合には、演算回路は、起動時において予め記憶媒体に記憶された制御プログラムを読み出し、制御プログラムに記述された命令で示される処理を実行することによって上述した各部の機能を実現する。
【0026】
プロセスデータ収集部12は、制御システム20(
図1)からプロセスデータを受信する。ここで、プロセスデータ収集部12は、制御装置24(
図1)から監視装置22(
図1)を介して所定時間毎に各プロセスの出力情報とそのプロセスへの入力情報をプロセスデータの一部として受信する。また、プロセスデータ収集部12は、プロセスデータの他の一部として監視装置22からその時点における設定値を示す設定情報を受信する。プロセスデータを収集する際、データ処理装置10は、例えば、プロセスデータ通信の標準規格であるOPC(OLE:Object Linking and Embedding for Process Control)を用いる。各データのデータ形式が統一されるので、データ処理装置10は、監視装置22や制御装置24の製造業者や内部構成によらずに、それらの装置から受信したデータをOPCに所定の手順で利用することができる。
プロセスデータ収集部12は、所定時間毎に受信した出力情報が示す測定値、入力情報が示す操作量及び設定情報が示す設定値を各プロセスについて記憶部18に記憶する。プロセスデータには、閉ループ制御が行われているプロセスの各時刻における設定値、測定値及び操作量が含まれる。記憶媒体には、記憶容量の許す限り十分に長期間にわたるプロセスデータを蓄積できる容量を有する。
【0027】
プロセスデータ解析部14は、記憶部18に集積されたプロセスデータを解析する。プロセスデータ解析部14は、例えば、プロセスデータを構成する各測定値、操作量及び設定値のそれぞれの時系列について複数のプロセス間の因果関係を解析し、その変動成分やその原因を特定する。プロセスデータ解析部14は、例えば、変動成分の量が最も大きいプロセスを特定してもよいし、その変動成分における変動が最も早期に開始するプロセスを特定してもよい。プロセスデータ解析部14は、例えば、線形の解析手法である相関解析、周波数解析、主成分分析等の手法を用いる。プロセスデータ解析部14は、解析により得られた変動成分を記憶部18に記憶してもよいし、表示部(図示せず)に表示してもよい。
【0028】
制御パラメータ最適化部16は、記憶部18に集積されたプロセスデータを用いて、所定のプロセスに係る制御ループについて制御パラメータを最適化する。本実施形態では、最適化とは、絶対的に最も適切な制御パラメータを計算することに限らず、後述する評価関数の値を全体として小さくするように計算することを意味する。最適化には、評価関数の値が一時的に増加する場合が含まれることがある。制御パラメータ最適化部16は、例えば、プロセスデータ解析部14が特定したプロセス又は特定した変動成分を有するプロセスを、処理対象のプロセスとして採用してもよい。
記憶部18は、データ処理装置10の各部が処理に用いるデータや処理によって得られたデータを記憶する。記憶部18には、プロセスデータ収集部12が所定時間毎に収集したプロセスデータが各プロセスについて集積される。プロセスデータ解析部14、制御パラメータ最適化部16による処理対象のプロセスデータは、既に記憶部18に記憶された過去のデータであってもよいし、逐次に新たに記憶されるリアルタイムのデータであってもよい。
【0029】
次に、制御パラメータ最適化部16の一構成例について説明する。
制御パラメータ最適化部16は、プロセス同定部162と、目標感度関数計算部164と、周波数解析部166と、制御パラメータ調整部168と、を含んで構成する。
プロセス同定部162は、プロセスデータ収集部12が収集したプロセスデータが示す所定のプロセスの設定値、測定値及び操作量に基づいて、そのプロセスの伝達関数を同定する。一般に、閉ループ制御の実行中であっても、設定値から測定値の偏差が有意に変化する時点を含む区間を含むプロセスデータを用いて、そのプロセスの伝達関数を算出することができる。有意に変化するとは、例えば、変化量が所定の変化量の閾値よりも大きい変化を意味する。変化量の閾値として、例えば、誤差量よりも十分に大きい値が設定される。偏差が有意に変化する時点には、例えば、設定値が変更されるとき(
図3)、プロセスからの出力に外乱が付加されるとき(
図4)がある。
【0030】
プロセス同定部162は、例えば、最小二乗法を用いて式(1)に示す誤差v(t)の二乗ノルムが小さくなるように、プロセスの伝達関数Gを与えるパラメータを算出する。
【0032】
式(1)において、y
meas(t)は、プロセスから現実に出力される出力値、つまり測定値を示す。y
model(t)は、式(2)に示すように制御装置24から出力されるプロセスへの入力値u(t)にプロセスの伝達関数Gを乗じて得られるモデル出力値を示す。
【0034】
但し、プロセスの伝達関数Gの次数、むだ時間(遅れ要素)は、予め設定しておく。プロセス同定部162は、同定したプロセスの伝達関数Gのパラメータを示す伝達関数情報を目標感度関数計算部164に出力する。
【0035】
目標感度関数計算部164は、プロセス同定部162から入力される伝達関数情報が示すパラメータで表されるプロセスの伝達関数Gから現状のプロセスにおける感度関数S(θ)を算出する。感度関数S(θ)とは、測定値Yに対する外乱Dの寄与もしくは減衰の度合いを示す関数である。感度関数S(θ)は、式(3)に示すように、伝達関数Gと制御装置24における制御対象の制御器の伝達関数C(θ)の乗算値に1を加えた値の逆数に相当する。なお、θは、そのプロセスに係る制御器が操作量を求める際に用いる制御パラメータのセットを示す。
【0037】
次に、目標感度関数計算部164は、周波数解析部166から入力される周波数成分情報に基づいて減衰率関数S
dを定める。周波数成分情報は、測定値Yの主な周波数成分(主成分)を示す情報である。ここで、目標感度関数計算部164は、周波数成分情報が示す周波数特性が、その主成分としてピーク特性を有するか否かを判定する。目標感度関数計算部164は、例えば、周波数成分情報が、他の周波数帯域よりもゲインが大きい周波数帯域の中心周波数cを示す情報を含む場合に主成分としてピーク特性を有すると判定する。また、目標感度関数計算部164は、さらに中心周波数cが所定の周波数(例えば、0.1[rad/s])以上であるとき主成分としてピーク特性を有すると判定する。ピーク特性を有すると判定するとき、目標感度関数計算部164は、中心周波数cにおいて所定の減衰率M(例えば、5dB)を与える減衰率関数S
dを定める。この減衰率関数S
dによれば、中心周波数cを中心とする周波数帯域における外乱Dに対するゲインを減少させる。周波数成分情報がさらに減衰率Mを示す情報を含む場合には、目標感度関数計算部164は、その減衰率Mを採用してもよい。なお、周波数成分情報がまたさらに片側帯域幅rを示す情報を含む場合には、目標感度関数計算部164は、中心周波数cを中心とし、減衰率が所定の減衰率(例えば、3dB)以上となる周波数帯域の片側帯域幅がrとなるように減衰率関数S
dを定めてもよい。
【0038】
なお、目標感度関数計算部164は、周波数成分情報に基づいて主成分が所定の周波数よりも周波数が低い低周波数領域にあるか否かを判定してもよい。目標感度関数計算部164は、例えば、中心周波数cが所定の周波数よりも周波数が低い場合、主成分が低周波数領域であると判定する。主成分が低周波数領域にあると判定する場合には、目標感度関数計算部164は、所定の周波数よりも十分に低い周波数(例えば、0[rad/s])において所定の減衰率Mを与える減衰率関数S
dを定める。この減衰率関数S
dによれば、所定の周波数よりも低い低周波数領域における周波数帯域における外乱Dに対するゲインを減少させる。なお、周波数成分情報がその所定の周波数である開始周波数w
1の情報を含む場合には、周波数が開始周波数w
1以下である低周波数帯域における減衰率がM以上となる減衰率関数S
dを定めてもよい。減衰率関数S
dの例については、後述する。
【0039】
そして、目標感度関数計算部164は、式(4)に示すように初期の感度関数S(θ
ini)に減衰率関数S
dを乗じて目標感度関数S
Rを計算する。ここで、θ
iniは、制御器の制御パラメータの初期値を示す。従って、目標感度関数計算部164は、計算した目標感度関数S
Rを制御パラメータ調整部168に出力する。
【0041】
周波数解析部166は、記憶部18に集積されたプロセスデータからプロセスから出力される出力値Yの周波数特性を解析し、その主成分を判定する。周波数解析部166は、判定した主成分を示す周波数成分情報を目標感度関数計算部164に出力する。なお、周波数解析部166は、初期の感度関数S(θ
ini)の主成分を判定し、その主成分を示す周波数成分情報を出力してもよい。
【0042】
制御パラメータ調整部168には、目標感度関数計算部164から目標感度関数S
R、プロセス同定部162からプロセスの伝達関数G、記憶部18から設定値Rと測定値Yの一組の集積されたプロセスデータがそれぞれ入力される。制御パラメータ調整部168は、制御パラメータθを調整する際、例えば、以下のようにFRIT(Fictitious Reference Iterative Tuning)アルゴリズムを用いる。制御パラメータ調整部168は、プロセスの伝達関数G、制御器の伝達関数C(θ)、設定値Rと測定値Yのプロセスデータとから、式(5)に示すように仮想的な外乱D
est(θ)を計算する。
【0044】
そして、制御パラメータ調整部168は、この仮想的な外乱D
est(θ)から計算される以下の評価関数J(θ)を最小化するように制御パラメータθ
0を算出する。より具体的には、制御パラメータ調整部168は、差の大きさを示す評価関数J(θ
0)が調整前の制御パラメータθのもとで得られるJ(θ)よりも小さくなるように制御パラメータθ
0を算出する。
【0046】
評価関数J(θ)は、以下のように変形できる。
【0048】
式(7)は、制御パラメータθで与えられる感度関数S(θ)と、目標感度関数S
Rとの差の大きさが減少するように制御パラメータθが調整(最適化)されることを意味している。つまり、感度関数S(θ)と目標感度関数S
Rとの差が小さいほど、J(θ)が小さくなる。また、測定値Yから設定値Rの差が小さいほどJ(θ)が小さくなる。但し、上述したように、本実施形態では測定値Yと設定値Rの差が0よりも有意に大きいことを前提とする。そのため、感度関数S(θ)と目標感度関数S
Rとの差が小さくなるように制御パラメータθが調整される。また、式(7)は、測定値Yの主要な周波数成分においてSRで定義される望ましい減衰特性が得られるように、制御パラメータが最適に調整されることを意味している。制御パラメータ調整部168は、制御装置24におけるそのプロセスの制御器の制御パラメータとして、調整された制御パラメータθ
0を設定する。制御器は、その制御パラメータθ
0を用いて入力される偏差に対する操作量を計算する。
【0049】
なお、非特許文献1においては、制御系に入力される外乱として、
図5に示すように、制御器からプロセスへ入力される操作量Uに加えられる外乱D2を仮定して、最適化計算を行うことが提案されている。この方法では、式(5)の仮想的な外乱D
est(θ)に対応する仮想的な外乱D2
est(θ)を計算する際に、プロセスの伝達関数Gの逆システムG
-1を用いる必要がある。しかし、G
-1は一般にプロパーでない、すなわち伝達関数の分子次数が分母次数より大きくなるため、その応答の計算ができない。これを回避するために高域通過フィルターを導入することが提案されているが、フィルター特性の決定等の処理が必要になる等、アルゴリズムが複雑になる。そこで、
図5に示すように制御器からプロセスへ入力される操作量Uに外乱D2が入力されることを仮定する場合には、本実施形態において、
図4に示すようにプロセスからの出力値に外乱D=G・D2が加わるとみなして上述したように最適化計算、つまり制御パラメータθの調整を行えばよい。これにより、制御パラメータの計算を有効に行うことができる。また、感度関数は、設定値Rから制御偏差Eへの伝達関数でもあるので、感度関数を最適化する制御パラメータを求めることは、設定値に対する追従特性も規定するという別の側面もあるので、追従特性を改善するうえで有効であると言える。すなわち、感度関数の低周波数帯域における減衰度を大きくするということは、設定値変更に対する追従特性を改善することを意味する。
【0050】
(減衰率関数)
次に、減衰率関数S
dの例について説明する。外乱Dが含まれる測定値の周波数特性のの主成分、あるいは初期の感度関数S(θ
ini)の周波数特性の主成分としてピーク特性を有する場合には、目標感度関数計算部164は、減衰率関数S
dとして、例えば、式(8)に示す4つの要素関数S
1(s)、S
2(s)、S
3(s)及びS
4(s)の積を用いる。
【0052】
式(8)において、c、rは、それぞれ中心周波数、片側帯域幅を示す。αは、片側帯域幅rと減衰率Mに基づいて与えられるパラメータである。要素関数S
1(s)、S
2(s)、S
3(s)、S
4(s)の周波数sに対する依存性を
図6に例示する。要素関数S
1(s)、要素関数S
4(s)の値は、それぞれ、c・α
−1・10
−r、c・α・10
rよりも周波数が高い周波数帯域において周波数が高くなるほど減少する。他方、要素関数S
2(s)、S
3(s)の値は、それぞれc・10
−r、c・10
rよりも周波数が低い周波数帯域において周波数が高くなるほど増加する。減衰率関数S
dは、式(9)で表される。
【0054】
従って、減衰率関数S
d(s)は、中心周波数cを中心としてc・α
−1・10
−rからc・α・10
rの間の周波数帯域において
図6で例示するような減衰特性を持つ。 ゲインR[単位なし]は、減衰率M[単位:dB]より10
−M/20として算出される。減衰率関数S
dが、中心周波数cにおいて減衰率Rを与えるαの条件は、式(10)を満足することである。
【0056】
式(10)において、jは、虚数単位である。式(10)を整理すると、式(11)に示すようにAに対する2次方程式が得られる。
【0058】
式(11)において、Aはα
2である。従って、式(11)を満たすαは、式(12)により算出される。
【0060】
一例として、中心周波数c、片側帯域幅r、減衰率Mが、それぞれ0.6[rad/s]、0.3[rad/s]、5[dB]であるとき、αは2.1057となる。このときに与えられる減衰率関数S
dのBode線図が、
図7で表される。
図7において横軸は周波数を示す。上段の縦軸、下段の縦軸は、それぞれ減衰率関数S
dのゲイン、位相を示す。
図7に示すように、中心周波数cにおいてゲインは−5dBと極小となり、位相は0となる。中心周波数cよりも低周波数領域では、位相は0未満となる。これに対し、中心周波数cよりも高周波数領域では、位相は正値である。この減衰率関数S
dによれば、外乱Dに対する感度が高い周波数帯域に対して高い減衰率が与えられる。そのため、その周波数帯域の成分を含む外乱Dに対する減衰度が大きくなるように制御パラメータθ
0が定められる。
【0061】
他方、主成分が低周波数領域にある場合には、目標感度関数計算部164は、例えば、式(13)に示す2つの要素関数S
1(s)及びS
2(s)の積を減衰率関数S
dとして用いる。
【0063】
式(13)に示す減衰率関数S
dによれば、開始周波数w
1よりも十分に周波数が低い周波数(例えば、周波数0[rad/s]に限りなく近い周波数)における減衰率をMに近似する。また、開始周波数w
1よりも十分に高い周波数(例えば、周波数∞[rad/s]に限りなく近い周波数)における減衰率が0となる。
一例として、開始周波数w
1、減衰率Mが、それぞれ0.01[rad/s]、10[dB]で与えられるとき、減衰率関数S
dのBode線図が、
図8で表される。
図8に示すように、周波数が高くなるほどゲインが大きくなる。周波数が0[rad/s]に近づくと、ゲインは−10[dB]に漸近する。周波数が∞に近づくと、ゲインは0[dB]に漸近する。位相は、周波数が0[rad/s]又は∞[rad/s]に近づくほど0[deg]に漸近するが、周波数が0.02[rad/s]であるとき約31[deg]と極大となる。この減衰率関数S
dによれば、低周波数帯域において高い減衰率が与えられる。よって、その低周波数帯域の成分を含む外乱Dに対する減衰度が大きくなるように制御パラメータθ
0が定められる。
【0064】
(制御パラメータの計算方法)
次に、本実施形態に係る制御パラメータθ
0の計算方法の一例について説明する。
図9は、本実施形態に係る制御パラメータθ
0の計算方法の一例を示すフローチャートである。
(ステップS102)プロセス同定部162は、プロセスに入力される入力値u(t)と伝達関数Gを作用して得られるモデル出力値y
model(t)からプロセスから出力される測定値y
meas(t)の誤差v(t)の二乗ノルムが小さくなるように伝達関数Gを算出する。その後、ステップS104の処理に進む。
(ステップS104)目標感度関数計算部164は、プロセスの伝達関数Gと初期の制御器の伝達関数C(θ
ini)に基づいて初期の感度関数S(θ
ini)を算出する。ここで、θ
iniは制御パラメータの初期値である。その後、ステップS106の処理に進む。
(ステップS106)周波数解析部166は、プロセスから出力される測定値Yの周波数特性、または初期の感度関数S(θ
ini)の周波数特性を解析する。目標感度関数計算部164は、前記周波数特性が主成分としてピーク特性を有するか否か、ピーク特性を有しない場合には前記周波数特性の主成分が低周波数帯域にあるか否かを判定する。その後、ステップS108の処理に進む。
【0065】
(ステップS108)目標感度関数計算部164は、判定した主成分に基づいて減衰率関数S
dのパラメータを設定する。前記周波数特性が主成分としてピーク特性を有する場合には、目標感度関数計算部164は、ゲインのピークの中心周波数c、片側帯域幅r及び減衰率Mを設定する。前記周波数特性の主成分が低周波数領域にある場合には、目標感度関数計算部164は、開始周波数w
1及び減衰率Mを設定する。
(ステップS110)目標感度関数計算部164は、設定したパラメータで与えられる減衰率関数S
dを初期の感度関数S(θ
ini)に乗算して目標感度関数S
Rを計算する。その後、ステップS112の処理に進む。
(ステップS112)制御パラメータ調整部168は、制御パラメータθで与えられる現状の感度関数S(θ)と、目標感度関数S
Rとの差の大きさが減少するように制御パラメータθを調整する。その後、
図9に示す処理を終了する。
【0066】
(FRITアルゴリズム)
次に、制御パラメータθを調整する方法の一例として、FRITアルゴリズムについて説明する。FRITアルゴリズムは、ある制御対象の目標応答伝達関数、初期の制御パラメータ、初期の設定値及び初期の出力値が与えられているとき、目標応答伝達関数に基づく出力値と初期の出力値との誤差の二乗ノルムが減少するように制御パラメータをオフラインで更新する手法である。
【0067】
本実施形態では、制御パラメータ調整部168は、目標応答伝達関数、初期の制御パラメータとして、目標感度関数S
R、調整前における制御パラメータの初期値θ
iniを用いる。初期の設定値として設定値Rのプロセスデータ、初期の出力値として測定値Yのプロセスデータを適用する。
そして、制御パラメータ調整部168は、評価関数J(θ)を最小化するように、ガウス・ニュートン法を用いて制御パラメータθ(ベクトル)を逐次に更新する。ガウス・ニュートン法によれば、制御パラメータの変化量が、評価関数J(θ)の制御パラメータに対する導関数J’(θ)(ベクトル)と評価関数J(θ)のヘッセ行列J’’(θ)の逆行列J’’(θ)
‐1の積に所定のステップサイズγを乗じて計算される。ヘッセ行列は、J’’(θ)の制御パラメータの各要素値による二階偏導関数を要素として有する行列である。制御パラメータ調整部168は、評価関数の変化量δJ(θ)、つまり更新後の制御パラメータθ’に基づく評価関数J(θ’)から更新前の制御パラメータθに基づく評価関数J(θ)の差分δJ(θ’)が所定の差分の閾値εよりも小さくなったか否かを判定する。制御パラメータ調整部168が、差分δJ(θ’)が閾値εよりも小さくなったと判定するとき、制御パラメータを調整する処理を停止する。制御パラメータ調整部168が、差分δJ(θ’)が閾値ε以上であると判定するとき、制御パラメータを調整する処理を繰り返す。
この手法によれば、目標感度関数S
R、初期の制御パラメータθ
ini、設定値R、測定値Yが得られていれば、オフラインで制御パラメータの最適調整値θ
0が求められる。そのため、制御パラメータθの更新のために、複数回のオンラインでのテストを実施する必要がない。なお、FRITアルゴリズムについては、例えば、非特許文献1に詳しく記載されている。
【0068】
(制御パラメータの計算例)
次に、制御パラメータθの計算例について説明する。第1の例として、プロセスの伝達関数G、初期の制御器の伝達関数C(θ
ini)が、それぞれ式(14)、(15)で与えられる場合を仮定する。
【0071】
式(14)に示す伝達関数Gは、そのプロセスが、むだ時間が課されている一次遅れ系であることを示す。式(15)に示す初期の伝達関数C(θ
ini)は、PID制御の制御パラメータθ=[K
P,K
I,K
D]が[5,30,0]であることを示す。このとき、初期の感度関数S(θ
ini)のゲインは、
図10に示すように周波数0.6[rad/s]においてピークを有する。この周波数における減衰度、片側帯域幅は、それぞれ5[dB]、0.3[rad/s]となる。そこで、減衰率関数S
dのパラメータとして、中心周波数c、片側帯域幅rは、それぞれ0.6[rad/s]、0.3[rad/s]と与えられる。また、減衰率Mを5.0[dB]と設定しておく。目標感度関数S
Rは、周波数0.6[rad/s]においてゲインが0[dB]となり、かつ全周波数帯域にわたりゲインが0[dB]を超えないように設定される。この条件のもとで制御パラメータ調整部168により調整された制御パラメータθ
0は、[1.708,29.73,0.370]となる。従って、制御器の伝達関数C(θ
0)は、式(16)で与えられる。
【0073】
この制御パラメータθ
0のもとで得られる感度関数S(θ
0)では、
図10に示すように周波数0.6[rad/s]におけるゲインのピークが緩和されている。周波数0.6[rad/s]におけるゲインは、約1[dB]と処理前よりも4[dB]低下している。但し、低周波数帯域におけるゲインが上昇している。もっとも、感度関数S(θ
0)においてゲインのピークが平滑化されている。周波数0.3[rad/s]未満の周波数帯域では、ゲインが0[dB]未満となる。そのため、システム全体として外乱Dに対する減衰特性が向上する。
【0074】
次に、第2の例として、プロセスの伝達関数G、初期の制御器の伝達関数C(θ
ini)が、それぞれ式(17)、(18)で与えられる場合を仮定する。
【0077】
式(18)に示す例では、制御器の制御パラメータθは、[K
P,K
I,K
D]=[6,40,0]である。このとき、初期の感度関数S(θ
ini)のゲインは、
図11に示すようにピークを有さず、周波数が高くなるほどゲインが単調に増加する。しかしながら、低周波数帯域の成分のゲインが比較的高い。周波数0.01[rad/s]であるとき、ゲインは−3[dB]となる。そこで、減衰率関数S
dのパラメータとして、開始周波数w
1は、0.01[rad/s]と与えられる。また、減衰率Mを10[dB]と設定しておく。目標感度関数S
Rは、周波数0.01[rad/s]においてゲインが−12[dB]となり、かつ全周波数帯域にわたりゲインが0[dB]を超えないように設定される。この条件のもとで制御パラメータ調整部168により調整された制御パラメータθ
0は、[10.03,39.20,1.056]となる。従って、制御器の伝達関数C(θ
0)は、式(19)で与えられる。
【0079】
この制御パラメータθ
0のもとで得られる感度関数S(θ
0)は、
図11に示すように低周波数帯域、特に開始周波数0.01[rad/s]以下の帯域においてゲインが有意に低下している。開始周波数0.01[rad/s]におけるゲインは、約‐8[dB]と処理前よりも5[dB]低下している。この計算例も、システム全体として外乱Dに対する減衰特性が向上することを示す。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態に係るデータ処理装置10は、プロセス同定部162と、周波数解析部166と、目標感度関数計算部164と、制御パラメータ調整部168とを備える。プロセス同定部162は、制御対象であるプロセスからの出力量とそのプロセスに対する操作量に基づいてそのプロセスの伝達関数を計算する。周波数解析部166は、プロセスからの測定値の周波数特性または前記プロセスの伝達関数と初期の制御パラメータとから求められる初期の感度関数の周波数特性を解析する。目標感度関数計算部164は、前記初期の感度関数と前記周波数特性に基づいて目標とする目標感度関数を定める。そして、制御パラメータ調整部168は、感度関数と目標感度関数の差が減少するように制御パラメータを調整する。
この構成により、制御対象であるプロセスの運転にステップ応答テスト等の負荷を与えずに、運転中に得られるリアルタイムデータを用いて、制御パラメータに基づく感度関数が、周波数特性に基づいて定められた目標感度関数に近似するように制御パラメータが得られる。プロセスからの測定値または初期の感度関数の主成分を与える周波数帯域において減衰するように目標感度関数が定められる場合には、その周波数帯域における感度関数が減衰するように制御パラメータが調整される。そのため、システム全体として外乱に対する減衰特性が向上する。
【0081】
また、周波数解析部166は、初期の感度関数のゲインが他の周波数帯域よりも大きい周波数帯域を特定し、目標感度関数計算部164は、特定した周波数帯域におけるゲインが初期の感度関数のゲインよりも小さくなるように、目標感度関数を定める。
この構成により、測定値の周波数特性のゲインがピークを有するとき、そのピークである周波数帯域において、ゲインが小さくなるように目標感度関数が定められる。そのため、測定値の周波数特性の主成分であるその周波数帯域における感度関数が減衰するように制御パラメータが調整される。
【0082】
目標感度関数計算部164は、ゲインを減衰させる周波数帯域の中心周波数と、そのゲインの減衰率と、その周波数帯域の帯域幅に基づいて周波数毎の減衰率を示す減衰率関数を定め、減衰率関数を初期の感度関数に乗じて目標感度関数を定める。
この構成により、感度関数のゲインに対する減衰率の周波数特性が、中心周波数、減衰率及び帯域幅といった少数のパラメータを用いて定量的に指示される。そのため、目標感度関数の決定、ひいては制御パラメータの調整にかかる計算負荷を低減することができる。
【0083】
また、目標感度関数計算部164は、所定の周波数よりも周波数が低い低周波数領域におけるゲインが所定のゲインよりも大きいとき、低周波数領域におけるゲインが初期の感度関数のゲインよりも小さくなるように目標感度関数を定める。
この構成により、測定値の周波数特性の主成分が低周波数領域にあるとき、低周波数領域において、ゲインが小さくなるように目標感度関数が定められる。そのため、低周波数帯域における感度関数が減衰するように制御パラメータが調整される。
【0084】
また、目標感度関数計算部164は、低周波数領域におけるゲインの減衰率と、所定の周波数である開始周波数とに基づいて周波数毎の減衰率を示す減衰率関数を定め、減衰率関数を初期の感度関数に乗じて目標感度関数を定める。
この構成により、感度関数のゲインに対する減衰率の周波数特性が、減衰率及び開始周波数といった少数のパラメータを用いて定量的に指示される。そのため、目標感度関数の決定、ひいては制御パラメータの調整にかかる計算負荷を低減することができる。
【0085】
(変形例)
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0086】
例えば、データ処理装置10は、さらにプロセスシミュレータ部170と、制御パラメータ決定部172と、を含んで構成されてもよい。
プロセスシミュレータ部170には、同定された伝達関数Gのパラメータを示す伝達関数情報がプロセス同定部162から入力され、初期の制御パラメータθ
iniと調整された制御パラメータθ
0を示す制御パラメータ情報が制御パラメータ調整部168から入力される。本変形例では、制御パラメータ調整部168は、調整された制御パラメータθ
0を示す制御パラメータ情報を制御装置24(
図1)に送信しなくてもよい。また、プロセスシミュレータ部170は、初期の制御パラメータθ
ini、調整された制御パラメータθ
0とは異なる別個の制御パラメータθ
*を設定してもよい。制御パラメータθ
*は、例えば、初期の制御器の伝達関数C(θ
ini)と調整された制御器の伝達関数C(θ
0)の平均となる制御特性を与える制御パラメータであってもよい。
【0087】
プロセスシミュレータ部170は、いずれかの制御パラメータθにより与えられる制御器の伝達関数C(θ)とプロセスの伝達関数Gを設定する。そして、プロセスシミュレータ部170は、制御器の伝達関数C(θ)を用いて設定値Rと測定値Yの偏差に対する各時点における操作量Uを計算し、さらにプロセスの伝達関数Gを用いてその時点における測定値Yを計算する。プロセスシミュレータ部170は、計算した操作量U、測定値Yの時系列を示すグラフデータを表示部(図示せず)に表示させてもよい。
【0088】
制御パラメータ決定部172は、プロセスシミュレータ部170が設定した制御パラメータのうちいずれかを、操作入力部(図示せず)から入力される操作信号で指示される制御パラメータに定めてもよい。制御パラメータ決定部172は、定めた制御パラメータを示す制御パラメータ情報を制御装置24(
図1)に監視装置22(
図1)を介して送信する。これにより、監視者は、制御パラメータ毎に計算された操作量U、測定値Yの時間変化を比較ならびに確認して、いずれかの制御パラメータを制御に用いるかを選択することができる。
【0089】
また、制御パラメータ最適化部16は、次に説明するステップS202〜S210の処理を所定の回数繰り返してもよい。
(ステップS202)目標感度関数計算部164は、減衰率関数S
dのパラメータを更新する。出力値の周波数特性または初期の感度関数S(θ
ini)の周波数特性が主成分としてピーク特性を有する場合には、更新対象のパラメータは、中心周波数c、片側帯域幅r、減衰率Mのいずれか、又は任意の組み合わせであってもよい。出力値の周波数特性または初期の感度関数S(θ
ini)の周波数特性の主成分が低周波数帯域にある場合には、更新対象のパラメータは、開始周波数w
1、減衰率Mのいずれか又は両方であってもよい。その後、ステップS204の処理に進む。
【0090】
(ステップS204)目標感度関数計算部164は、更新したパラメータで与えられる減衰率関数S
dと初期の感度関数S(θ
ini)から目標感度関数S
Rを計算する。その後、ステップS206の処理に進む。
(ステップS206)そして、制御パラメータ調整部168は、計算した目標感度関数S
Rと、制御パラメータθで与えられる感度関数S(θ)との差の大きさが減少するように制御パラメータθを調整する。これにより、更新された減衰率関数S
dのパラメータに対して再調整された制御パラメータθ
0が得られる。その後、ステップS208の処理に進む。
【0091】
(ステップS208)プロセスシミュレータ部170は、再調整された制御パラメータθ
0により与えられる制御器の伝達関数C(θ
0)を用いて設定値Rと測定値Yの偏差に対する各時点における操作量Uを計算し、さらにプロセスの伝達関数Gを用いてその時点における測定値Yを計算する。その後、ステップS210の処理に進む。
(ステップS210)プロセスシミュレータ部170は、計算した操作量U、測定値Yの時系列を示すグラフデータを表示部(図示せず)に表示させる。
その後、制御パラメータ最適化部16は、ステップS206の処理により得られる制御パラメータのうち、操作入力部(図示せず)から入力される操作信号で指示される制御パラメータを選択してもよい。
【0092】
上述した変形例に係る制御パラメータ最適化部16は、プロセスシミュレータ部170と、制御パラメータ決定部172を備える。そのため、計算(シミュレーション)によって得られる操作量と測定値の確認と制御パラメータの再計算が繰り返される。そのため、プロセスの運転にステップ応答テストの負荷を与えずに制御パラメータが算出される。そして、算出された制御パラメータにより調整前の制御パラメータよりも外乱に対する減衰特性が向上する。
【0093】
なお、制御パラメータ最適化部16は、ステップS202〜ステップS206の処理を繰り返し、1回の繰り返し毎に調整後の制御パラメータθ
0と所定の指標値を記憶してもよい。そして、制御パラメータ最適化部16は、記憶された指標値のうち最も小さい指標値を与える制御パラメータθ
0を選択し、選択した制御パラメータθ
0を示す制御パラメータ情報を制御装置24に監視装置22を介して送信してもよい。指標値として、評価関数J(θ
0)、出力値のパワーの周波数間における最大値、感度関数S(θ)のゲインの周波数間の最大値のいずれが用いられてもよい。
【0094】
また、プロセスの伝達関数G、制御器の伝達関数C、減衰率関数S
dのそれぞれの次数は、上記において例示した次数に限られない。これらの次数は、例示した次数よりも低い次数であってもよいし、より高い次数であってもよい。