特許第6870343号(P6870343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870343
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】熱風ヒーター
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/04 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   F24H3/04 302
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-10543(P2017-10543)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-119711(P2018-119711A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 清人
(72)【発明者】
【氏名】大和谷 渉
(72)【発明者】
【氏名】松村 勇人
(72)【発明者】
【氏名】坂松 信一
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第01949658(US,A)
【文献】 実開昭55−181135(JP,U)
【文献】 特開平08−189706(JP,A)
【文献】 特開昭50−141653(JP,A)
【文献】 特開昭51−008647(JP,A)
【文献】 実開昭63−026070(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風を噴射することで、被加工部位に対する表面加工を行うハンディタイプの熱風ヒーターであって、
エアを加熱した熱風を、被加工部位に沿って噴射可能な加熱機構と、
前記加熱機構が接続され、作業員が把持可能なグリップ機構と、
前記加熱機構にエアを導入可能なエア導入機構と、
前記グリップ機構に設けられ、エアを拡散させて冷風化させることで、前記加熱機構から前記グリップ機構に伝導された熱を冷却する冷却構造と、を有し、
前記エア導入機構は、前記加熱機構とは正反対の領域に亘って配置構成されていると共に、前記エア導入機構と、前記加熱機構とは、前記グリップ機構の両側に対向させて配置されており、これにより、熱風ヒーターのバランス中心が、前記グリップ機構のセンター乃至その近傍に位置付けられる熱風ヒーター。
【請求項2】
前記冷却構造は、熱風による表面加工を行う際に、エアを前記加熱機構に送出可能なゲートを備えており、
エアは、前記ゲートを通過する際に前記ゲートによって絞られた後、前記ゲートを通過した後に解放されることで、外界に向けて放射状に拡散し、これにより、冷風化される請求項1に記載の熱風ヒーター。
【請求項3】
前記冷却構造を包含するゲート開閉機構を、更に有し、
前記ゲート開閉機構は、前記ゲートを開放又は閉鎖させるための操作レバーを備え、
前記操作レバーによって前記ゲートを開放させた状態において、エアを前記加熱機構に送出可能となり、
前記操作レバーによって前記ゲートを閉鎖させた状態において、エアを前記加熱機構に送出不可能となると共に、前記加熱機構の作動が停止制御される請求項2に記載の熱風ヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のバンパーやグリルなど、車体用の樹脂成形品に対する表面加工(例えば、バリ取り、仕上げ)を行う際に用いられる熱風ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車体の軽量化の要請のもと、例えば、自動車の前後に設けられるバンパーやグリルは、樹脂材料で成形されている。そして、かかる樹脂成形品に表面加工(例えば、バリ取り、仕上げ)が施されることで、完成品が製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4780613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の表面加工では、バーナーを用いた火炎処理が行われている(例えば、特許文献1参照)。火炎処理において、被加工部位(例えば、バリ)に沿って、バーナーから火炎を噴射する。火炎によって被加工部位(バリ)を溶融させて平滑化させる。かくして、被加工部位(バリ)に対する火炎処理が完了する。
【0005】
本発明の目的は、火炎を用いた表面加工と同程度の処理効果を維持しつつ、作業員ないし被加工部位に対する安全をより十分に確保可能な表面加工技術(熱風ヒーター)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、熱風を噴射することで、被加工部位に対する表面加工を行うハンディタイプの熱風ヒーターであって、エアを加熱した熱風を、被加工部位に沿って噴射可能な加熱機構と、加熱機構が接続され、作業員が把持可能なグリップ機構と、加熱機構にエアを導入可能なエア導入機構と、グリップ機構に設けられ、エアを拡散させて冷風化させることで、加熱機構からグリップ機構に伝導された熱を冷却する冷却構造と、を有する。エア導入機構は、加熱機構とは正反対の領域に亘って配置構成されていると共に、エア導入機構と、加熱機構とは、グリップ機構の両側に対向させて配置されており、これにより、熱風ヒーターのバランス中心が、グリップ機構のセンター乃至その近傍に位置付けられる。
【0007】
本発明において、冷却構造は、熱風による表面加工を行う際に、エアを加熱機構に送出可能なゲートを備えており、エアは、ゲートを通過する際にゲートによって絞られた後、ゲートを通過した後に解放されることで、外界に向けて放射状に拡散し、これにより、冷風化される。
【0008】
本発明において、冷却構造を包含するゲート開閉機構を、更に有し、ゲート開閉機構は、ゲートを開放又は閉鎖させるための操作レバーを備え、操作レバーによってゲートを開放させた状態において、エアを加熱機構に送出可能となり、操作レバーによってゲートを閉鎖させた状態において、エアを加熱機構に送出不可能となると共に、加熱機構の作動が停止制御される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、火炎を用いた表面加工と同程度の処理効果を維持しつつ、作業員ないし被加工部位に対する安全をより十分に確保可能な表面加工技術(熱風ヒーター)を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る熱風ヒーターの外観を示す斜視図。
図2図1の熱風ヒーターによって表面加工が行われる被加工部位(フロントバンパー、グリル)の一例を示す斜視図。
図3】加熱機構の内部構成を示す部分断面図。
図4】熱風ヒーターを制御するための構成を示すブロック図。
図5】ゲート開閉機構(即ち、冷却構造)の構成を示す断面図であって、ゲート閉鎖状態を示す図。
図6図5のゲートが開放されることで、冷却効果が発揮された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「一実施形態」
「熱風ヒーターの概要」
図1には、熱風を用いた表面加工技術の一例として、ハンディタイプの熱風ヒーター1が示されている。本実施形態に係る熱風ヒーター1は、自動車の車体用の樹脂成形品(例えば、バンパーBp、グリルGr(図2参照))に対する表面加工(例えば、バリ取り、仕上げ)を行うことが可能に構成されている。
【0013】
表面加工に際し、熱風ヒーター1は、被加工部位(例えば、バリ)に沿って熱風を噴射する。熱風によって被加工部位(バリ)を溶融させて平滑化させる。かくして、被加工部位(バリ)に対する表面加工が完了する。
【0014】
かかる表面加工を可能にするために、熱風ヒーター1は、グリップ機構2と、加熱機構3と、エア導入機構4と、ゲート開閉機構5(即ち、冷却構造)と、を有している。グリップ機構2は、作業員が把持可能に構成されている。加熱機構3は、グリップ機構2に支持されている。加熱機構3とグリップ機構2とは、相互に接続されている。加熱機構3には、エア導入機構4が連結されている。ゲート開閉機構5(冷却構造)は、グリップ機構2に設けられている。
【0015】
ここで、例えば、作業員がゲート開閉機構を操作することで、後述するゲート開閉機構5(ゲート26)を開放する。これに同期して、加熱機構3が稼動する。エア導入機構4を通って、加熱機構3にエアが導入される。当該エアは、加熱機構3で加熱される。加熱機構3から熱風(例えば、800℃程度)が噴射される。
【0016】
このとき、例えば、熱風を、被加工部位(例えば、バリ)から20mm〜30mm程度の距離を保ちつつ、被加工部位(バリ)に沿って噴射させる。熱風によって、被加工部位(バリ)が溶融して平滑化される。かくして、被加工部位に対する表面加工(例えば、バリ取り、仕上げ)が完了する。以下、熱風ヒーター1の構成について具体的に説明する。
【0017】
「グリップ機構2」
図1,4,5,6に示すように、グリップ機構2は、グリップ本体2aと、エア供給通路2bと、を備えている。グリップ本体2aは、例えば、ステンレス鋼などの耐久性及び耐食性に優れた金属材料で構成されている。グリップ本体2aは、作業員が手指で把持可能な輪郭(形状)を有している。エア供給通路2bは、グリップ本体2aの内部に沿って構成されている。エア供給通路2bの一端は、後述するゲート開閉機構5(ゲート26)に連結されている。エア供給通路2bの他端には、エア供給管6が接続されている。エア供給管6は、流量コントローラ7を介して、エア源8に連結されている。
【0018】
かかる構成において、エア源8からエア供給管6に、例えば、常温のエアが送り出される。当該エアは、流量コントローラ7によって、その送り出し流量が制御される。かくして、最適な圧力のエアが、エア供給管6からグリップ機構2(グリップ本体2a)、即ち、エア供給通路2bの一端、換言すると、後述するゲート開閉機構5(ゲート26)に向けて供給される。
【0019】
「加熱機構3」
図1,3,4に示すように、加熱機構3は、その先端に熱風噴射部3aを備え、その基端にコネクタ部3bを備えている。熱風噴射部3aは、表面加工(例えば、バリ取り、仕上げ)に際し、ターゲットに向けて、最適な温度(例えば、800℃程度)の熱風を噴射可能に構成されている。コネクタ部3bは、後述するエア導入機構4が連結可能に構成されている。
【0020】
図面では一例として、加熱機構3の先端から基端の全体、及び、グリップ機構2(グリップ本体2a)の全体に亘って、シリカクロス9が巻き付けられている。更に、加熱機構3の先端側には、シリカクロス9の外周に沿って、ガードコイル10が設けられている。シリカクロス9は、保温材(断熱材)としての機能を有している。シリカクロス9は、例えば、シリカを95%以上含有する繊維を使用した布地である。これにより、作業員の安全が図られている。
【0021】
更に、加熱機構3は、温度センサ11と、ベース12と、を備えている。
温度センサ11は、加熱機構3の先端(熱風噴射部3a)に配置されている。温度センサ11の一例として、図面には、熱電対が示されている。温度センサ(熱電対)11は、センサリード線13を介して、温度コントローラ14に電気的に接続されている。なお、温度コントローラ14と、上記した流量コントローラ7は、共に、1つの制御盤31に実装されている。
【0022】
ベース12は、加熱機構3の基端(コネクタ部3b)に配置されている。ベース12は、後述する発熱ユニット15、絶縁管16を支持可能に構成されている。ベース12は、例えば、ステアタイト(steatite)セラミックスなどの機械的強度の高い非金属無機材料で構成されている。
【0023】
更に、加熱機構3は、発熱ユニット15と、絶縁管16と、金属ケース17と、を備えている。
発熱ユニット15は、加熱機構3の基端(コネクタ部3b)から、先端(熱風噴射部3a)に亘って連続して構成されている。発熱ユニット15は、両端(一端、他端)を有している。発熱ユニット15の一端は、ベース12に支持されている。発熱ユニット15の他端は、熱風噴射部3aに位置付けられている。
【0024】
発熱ユニット15は、絶縁体18と、電熱線19と、を備えている。絶縁体18は、両端(一端、他端)を有している。絶縁体18の一端は、ベース12に支持されている。絶縁体18の他端は、熱風噴射部3aに位置付けられている。絶縁体18の形状の一例として、図面には、円柱形状の絶縁体18が示されている。絶縁体18は、例えば、アルミナ(alumina)セラミックスなどの耐熱性に優れた非金属無機材料で構成されている。
【0025】
電熱線19は、絶縁体18の他端から一端に向けて、螺旋状に巻き付けられている。電熱線19は、例えば、鉄−クロム−アルミニウム系合金で構成されている。電熱線19には、電源リード線20が接続されている。電源リード線20は、温度コントローラ14を介して、電源21に電気的に接続されている。
【0026】
絶縁管16は、発熱ユニット15の外側に沿って配置されている。絶縁管16は、発熱ユニット15を覆うように、加熱機構3の基端(コネクタ部3b)から先端(熱風噴射部3a)に亘って連続して構成されている。絶縁管16は、両端(一端、他端)を有している。絶縁管16の一端は、ベース12に支持されている。絶縁管16の他端は、熱風噴射部3aに位置付けられている。
【0027】
絶縁管16の形状の一例として、図面には、中空の円筒形状の絶縁管16が示されている。絶縁管16は、例えば、石英ガラスなどの耐熱性に優れた材料で構成されている。石英ガラスは、二酸化ケイ素が100%のガラスである。
【0028】
金属ケース17は、絶縁管16の外側面に沿って配置されている。金属ケース17は、絶縁管16を覆うように、加熱機構3の基端(コネクタ部3b)から先端(熱風噴射部3a)に亘って連続して構成されている。金属ケースの形状の一例として、図面には、中空円筒形状の金属ケースが示されている。金属ケースは、例えば、ステンレス鋼などの耐久性及び耐食性に優れた金属材料で構成されている。
【0029】
金属ケース17は、両端(一端、他端)を有している。金属ケース17の一端には、上記したコネクタ部3b(後述するエア導入機構4が接続可能)が構成されている。金属ケース17の他端は、熱風噴射部3aに位置付けられている。熱風噴射部3a(加熱機構3の先端)において、金属ケース17は、絶縁管16を越えて構成されている。上記した温度センサ(熱電対)11は、金属ケース17の内側であって、かつ、絶縁管16を越えた領域に位置付けられている。
【0030】
ここで、熱風噴射プロセスの一例について説明する。即ち、熱風ヒーター1(加熱機構3の熱風噴射部3a)から噴射される熱風の温度は、温度センサ(熱電対)11によって測定される。その測定結果(温度)は、センサリード線13を介して、温度コントローラ14に送られる。温度コントローラ14において、測定結果に基づいて、現在の熱風の温度が、予め設定された適温(例えば、800℃程度)に保たれているか否か判定される。
【0031】
このとき、現在の熱風の温度が適温よりも低い場合、温度コントローラ14は、電源リード線20を介して、発熱ユニット15(電熱線19)に印加する電力(電流)を増加させる。一方、現在の熱風の温度が適温よりも高い場合、温度コントローラ14は、電源リード線20を介して、発熱ユニット15(電熱線19)に印加する電力(電流)を減少させる。
【0032】
いずれの場合も、上記したコネクタ部3bから加熱機構3に導入されたエアは、発熱ユニット15(電熱線19)と直接接触しながら熱風噴射部3aに送られる。この間に、エアは、一定温度(例えば、800℃程度)に加熱される。
【0033】
これにより、常に一定温度の熱風を、被加工部位(例えば、バリ)に沿って噴射させることができる。この結果、被加工部位(バリ)を、均一に溶融させて偏り無く平滑化させることができる。かくして、被加工部位(バリ)に対する高精度の表面加工を行うことができる。
【0034】
なお、上記した加熱機構3(金属ケース17)とグリップ機構2(グリップ本体2a)とを相互に接続させる方法の一例として、図面(図1,5,6)には、固定治具22による接続方法が示されている。かかる接続方法において、加熱機構3(金属ケース17)の基端(コネクタ部3b)寄りの部位が、固定治具22を介して、グリップ機構2(グリップ本体2a)に接続されている。
【0035】
固定治具22は、一対の固定板22a,22bと、複数の固定ネジ22cと、を有している。一対の固定板22a,22bは、加熱機構3(金属ケース17)を両外側から挟持可能に構成されている。一方の固定板22aは、グリップ機構2(グリップ本体2a)に溶接(固定)されている。他方の固定板22bは、一方の固定板22aと平行に対向させて配置可能に構成されている。
【0036】
更に、一対の固定板22a,22bには、加熱機構3(金属ケース17)を回避した位置に、ネジ孔(図示しない)が構成されている。ここで、双方の固定板22a,22bを並行に対向させた状態において、双方のネジ孔は、固定ネジ22cを挿通可能に対向して位置付けられる。このとき、対向したネジ孔相互に固定ネジ22cを捩じ込む。これにより、加熱機構3(金属ケース17)が、一対の固定板22a,22bで挟持される。かくして、加熱機構3(金属ケース17)は、その基端寄りの部位が、グリップ機構2(グリップ本体2a)に支持されている。
【0037】
かかる構成において、上記したセンサリード線13及び電源リード線20は、後述するエア導入機構4から上記したグリップ機構2(グリップ本体2a)を経由して、温度コントローラ14に配線されている。
【0038】
「エア導入機構4」
図1に示すように、エア導入機構4は、上記したセンサリード線13及び電源リード線20と共に、加熱機構3の先端(熱風噴射部3a)側とは正反対の領域に亘って配置構成されている。正反対の領域とは、加熱機構3の先端(熱風噴射部3a)からグリップ機構2(グリップ本体2a)を含めた同一平面上に沿って規定されている。かくして、エア導入機構4と、加熱機構3の先端(熱風噴射部3a)側とは、グリップ機構2(グリップ本体2a)の両側に対向させて配置されている。
【0039】
エア導入機構4は、中空の送気管4aを備えている。送気管4aは、その内部に沿ってエアが通過可能に構成されている。送気管4aは、可撓性を有している。送気管4aは、両端(一端、他端)を有している。送気管4aの一端は、加熱機構3の基端(コネクタ部3b)に連結されている。
【0040】
送気管4aの他端は、グリップ機構2(グリップ本体2a)に連結されている。送気管4aの他端は、後述するゲート開閉機構5(ゲート26)に連結されている。送気管4aの他端は、後述するゲート開閉機構5(ゲート26)を介して、上記したグリップ機構2(グリップ本体2a)のエア供給通路2bの一端に連結されている。
【0041】
かかる構成において、後述するゲート開閉機構5(ゲート26)を開放すると、上記したエア源8からエア供給通路2bの一端に供給されたエアは、当該ゲート26を通って、エア導入機構4(送気管4a)に送り出される。送り出されたエアは、上記したコネクタ部3bから加熱機構3に導入される。かくして、加熱機構3で熱せられたエアが、熱風噴射部3aから噴射可能となる。
【0042】
「ゲート開閉機構5」
図1,5,6に示すように、ゲート開閉機構5は、樹脂成形品(例えば、バンパーBp、グリルGr(図2参照))に対する表面加工(例えば、バリ取り、仕上げ)を行う際に、エア源8(図4参照)からエア供給通路2bの一端に供給されたエアを、後述するゲート26を介して、エア導入機構4(送気管4a)に送出可能に構成されている。このため、ゲート開閉機構5は、操作レバー23と、可動シャフト24と、弁体25と、ゲート26と、弁座27と、付勢治具28と、を備えている。
【0043】
操作レバー23は、作業員がグリップ機構2(グリップ本体2a)を把持した状態において、当該作業員の手指(例えば、人差し指、中指)で操作可能に構成されている。操作レバー23は、両端(先端、基端)を有している。操作レバー23の基端は、グリップ機構2(グリップ本体2a)に対して回転可能に支持されている。操作レバー23の先端は、作業員の手指を引っ掛けることが可能に構成されている。
【0044】
かかる構成において、操作レバー23に引っ掛けた手指を手前に、即ち、グリップ本体2aに向けて引く。これにより、上記した基端を回転中心として、操作レバー23を、操作(旋回)させることができる。なお、操作レバー23の操作(旋回)運動は、可動シャフト24に伝達される。
【0045】
可動シャフト24は、操作レバー23の操作(旋回)運動に追従して、一定方向(例えば、矢印S1,S2方向(図5,6参照))に往復(直線)運動可能に構成されている。可動シャフト24は、両端(一端、他端)を有している。可動シャフト24の一端は、操作レバー23に対して常時接触可能に構成されている。可動シャフト24の他端には、弁体25が接続されている。弁体25の形状の一例として、図面には、球形状の弁体25が示されている。
【0046】
弁体25は、エア案内通路29に配置されている。エア案内通路29は、グリップ機構2(グリップ本体2a)に構成されている。エア案内通路29は、上記したエア導入機構4(送気管4a)に連通接続されている。エア案内通路29は、上記したエア供給通路2bの一端とは、隔壁30を介して互いに分離した位置関係に構成されている。即ち、エア案内通路29と、エア供給通路2bの一端との間には、隔壁30が介在されている。
【0047】
ゲート26は、隔壁30の1箇所を貫通させて構成されている。ゲート26は、中空円筒形(断面円形)を有している。エア案内通路29と、エア供給通路2bの一端とは、ゲート26を介して、相互に連通接続されている。上記した球形状の弁体25は、ゲート26よりも大きく構成されている。
【0048】
かかる構成によれば、ゲート26に弁体25を接触させた状態で、当該ゲート26が閉鎖される。これに対して、ゲート26から弁体25を離間させた状態で、当該ゲート26が開放される。ここで、ゲート26が開放された状態において、エア供給通路2bの一端に供給されたエアは、当該ゲート26を介して、エア導入機構4(送気管4a)に送出可能となる。かくして、ゲート26は、熱風による表面加工を行う際に、エアを加熱機構3(エア案内通路29、エア導入機構4(送気管4a))に送出可能に構成されている。
【0049】
弁座27は、上記した円形のゲート26の外周に沿って、隔壁30に設けられている。弁座27は、球形状の弁体25が隙間なく接触可能に構成されている。弁座27は、中空の円環形状を有している。弁座27の形状の一例として、図面には、球面に沿った輪郭形状の弁座27が示されている。
【0050】
かかる構成によれば、後述する付勢冶具28によって、ゲート26に弁体25を接触させた状態において、弁体25が弁座27に隙間なく接触する。即ち、弁体25は、弁座27に対して気密状(液密状)に密接(密着)する。かくして、ゲート26は、弁体25によって気密状(液密状)に閉鎖される。
【0051】
付勢治具28は、圧縮バネを備えている。圧縮バネ28は、両端(一端、他端)を有している。圧縮バネ28の一端は、弁体25に接続されている。圧縮バネ28の他端は、グリップ機構2(グリップ本体2a)に接続されている。
【0052】
かかる構成によれば、弁体25は、圧縮バネ28の付勢力によって、常時弁座27に密接(密着)された状態に維持されている。このとき、ゲート26は、閉鎖されている。この状態において、エア供給通路2bの一端に供給されたエアは、ゲート26を介して、エア導入機構4(送気管4a)に送出不可能となっている。
【0053】
更に、この状態において、弁体25が接続された可動シャフト24は、図5の矢印S1方向に移動した状態に維持されている。このとき、操作レバー23は、可動シャフト24の一端によって押圧され、グリップ機構2(グリップ本体2a)から離間して位置付けられている(以下、操作レバー23の「初期位置」と言う)。
【0054】
ここで、作業員が「初期位置」の操作レバー23を手前に引いて、当該操作レバー23を旋回させる(操作レバー23のON操作)。操作レバー23から、圧縮バネ28の付勢力に抗した押圧力が、可動シャフト24の一端に作用する。可動シャフト24は、図6の矢印S2方向(即ち、矢印S1とは正反対の方向)に移動した状態に維持される。
【0055】
この状態において、弁体25は、可動シャフト24の他端に追従して、弁座27から離間する。このとき、ゲート26は、開放されている。かくして、エア供給通路2bの一端に供給されたエアは、エア導入機構4(送気管4a)を介して、加熱機構3に送出可能となる。
【0056】
一方、作業員が、操作レバー23を解放する(操作レバー23のOFF操作)。圧縮バネ28の付勢力が、可動シャフト24に作用する。可動シャフト24は、図5の矢印S1方向に移動した状態に維持される。操作レバー23は、可動シャフト24の一端に追従して旋回することで「初期位置」に復帰する。
【0057】
この状態において、弁体25は、可動シャフト24の他端に追従して、弁座27に隙間なく接触する。このとき、ゲート26は、弁体25によって気密状(液密状)に閉鎖されている。かくして、エア供給通路2bの一端に供給されたエアは、エア導入機構4(送気管4a)を介して、加熱機構3に送出不可能となる。
【0058】
「熱風ヒーター1のON/OFF制御」
操作レバー23が初期位置(図5参照)にある状態(操作レバー23のOFF状態)、即ち、ゲート26が閉鎖された状態において、エア源8から送り出されたエアは、その流動が弁体25によって堰き止められる。このため、エア供給通路2bの一端におけるエアの圧力レベルが上昇する。
【0059】
圧力レベルの上昇は、エア供給管6を介して、流量コントローラ7に反映される。流量コントローラ7は、圧力レベルを一定の許容範囲内に制御する。このとき、流量コントローラ7から温度コントローラ14に制御信号が出力される。
【0060】
かかる制御信号によって、温度コントローラ14は、発熱ユニット15(電熱線19)に印加する電力(電流)をゼロに制御する。かくして、加熱機構3の作動が停止制御される。即ち、電熱線19の発熱が停止制御される。換言すると、熱風噴射部3aからの熱風の噴射が停止制御される。
【0061】
この状態において、操作レバー23をON操作する。ゲート26が開放される。エア供給通路2bの一端に供給されたエア(即ち、圧縮エア)が、ゲート26(詳しくは、ゲート26と弁体25との隙間)を通って、エア案内通路29に拡散する。拡散したエアは、エア導入機構4(送気管4a)を通って、加熱機構4に導入される。
【0062】
ここで、当該エアが拡散すると、エア供給通路2bの一端におけるエアの圧力レベルが下降する。流量コントローラ7は、圧力レベルを一定の許容範囲内に制御する。例えば、エア源8からエア供給管6にエアを送り出す制御を行う。これにより、加熱機構3に対して一定量(圧)のエアが導入される。このとき、流量コントローラ7から温度コントローラ14に制御信号が出力される。
【0063】
かかる制御信号によって、温度コントローラ14は、発熱ユニット15(電熱線19)に電力(電流)を印加する。発熱ユニット15(電熱線19)を発熱させる。加熱機構3に導入されたエアは、発熱ユニット15(電熱線19)と直接接触しながら熱風噴射部3aに送られる。かくして、エアは、一定温度に加熱された後、熱風噴射部3aからターゲットに向けて噴射される。
【0064】
続いて、操作レバー23をOFF操作する。ゲート26が閉鎖される。エア源8から送り出されたエアは、その流動が弁体25によって堰き止められる。エア供給通路2bの一端におけるエアの圧力レベルが上昇する。
【0065】
ここで、エアの圧力レベルが上昇すると、流量コントローラ7は、圧力レベルを一定の許容範囲内に制御する。例えば、エア源8からエア供給管6に対するエアの送り出しを停止制御する。このとき、流量コントローラ7から温度コントローラ14に制御信号が出力される。
【0066】
かかる制御信号によって、温度コントローラ14は、発熱ユニット15(電熱線19)に印加する電力(電流)をゼロに制御する。これにより、加熱機構3の作動が停止制御される。かくして、熱風噴射部3aからの熱風の噴射が停止制御される。
【0067】
ところで、上記した熱風ヒーター1のON/OFF制御では、熱風噴射の停止制御中における自動復帰を不可制御することが好ましい。例えば、加熱機構3の停止制御中に、再度、操作レバー23をON操作しても、加熱機構3を作動させない制御(即ち、自動復帰不可制御)を行う。これにより、不用意な熱風の噴射を未然に回避することができる。かくして、作業員ないし被加工部位に対する安全を確保することができる。
【0068】
「冷却構造を包含するゲート開閉機構5」
上記したゲート開閉機構5において、操作レバー23をON操作すると、エア供給通路2bの一端に供給されたエア(即ち、圧縮エア)が、ゲート26(詳しくは、ゲート26と弁体25との隙間)を通って、エア案内通路29に拡散する。ここで、圧縮エアが拡散する際に、当該エアは、外界(周囲)から押してくる空気(大気)を押し退けている。
【0069】
具体的に説明すると、エア供給通路2bの一端と、ゲート26と、エア案内通路29とから成るエア通路は、比較的広い通路からゲート26で通路幅が狭められた後、再び比較的広い通路となるように構成されている。
【0070】
かかる通路構成によれば、圧縮エアは、狭いゲート26から広い通路に流動する際に、外界(周囲)に向けて放射状に拡散する。即ち、圧縮エアは、ゲート26を通過する際に当該ゲート26によって絞られた(圧縮された)後、当該ゲート26を通過することで解放される。これにより、当該エアは、外界(周囲)に向けて放射状に拡散する。
【0071】
このとき、当該エアは、外界(周囲)に対してエネルギーを消費したことになる。これにより、消費したエネルギーの分だけ、当該エアの温度が下がる。換言すると、エネルギー保存則に従って、エアは、冷風となって拡散する。即ち、エアを冷風化させる。かくして、拡散した冷風によって、グリップ機構2(グリップ本体2a)が冷却される。
【0072】
これにより、ゲート開閉機構5は、いわゆる冷却構造を包含し、冷却機能を発揮可能に構成されている。即ち、操作レバー23のON操作中、グリップ機構2(グリップ本体2a)は、エア案内通路29に向けて拡散する冷風によって冷却され続ける。
【0073】
ところで、操作レバー23のON操作に同期して、発熱ユニット15(電熱線19)が発熱すると、かかる熱は、加熱機構3(金属ケース17)から固定治具22を介して、グリップ機構2(グリップ本体2a)に伝導される。この場合、伝導された熱の温度によっては、グリップ機構2(グリップ本体2a)が高温に熱せられる虞がある。
【0074】
しかし、上記した冷却構造によれば、加熱機構3(金属ケース17)からグリップ機構2(グリップ本体2a)に伝導された熱は、ゲート26から拡散し続ける冷風によって、逐次冷却される。この結果、グリップ機構2(グリップ本体2a)が高温に熱せられることは無い。
【0075】
「一実施形態の作用、効果」
本実施形態によれば、操作レバー23のON操作に同期して、発熱ユニット15(電熱線19)が発熱した際に、加熱機構3(金属ケース17)からグリップ機構2(グリップ本体2a)に伝導された熱を、加熱機構3に供給されるエアを用いた冷却構造(即ち、ゲート26から拡散する冷風)によって逐次冷却する。これにより、熱風による表面加工に際し、グリップ機構2(グリップ本体2a)が高温に熱せられることは無い。この結果、作業員に対する安全をより十分に確保可能な熱風ヒーター1を実現することができる。
【0076】
本実施形態によれば、既存の冷却装置を別途設けること無く、既存のゲート開閉機構5をそのまま用いた冷却構造が実現される。これにより、熱風ヒーター1の部品点数を大幅に削減できると共に、構造の簡素化を図ることができる。この結果、軽量かつコンパクトで低コストの熱風ヒーター1を実現することができる。
【0077】
本実施形態によれば、操作レバー23のOFF操作に同期して、エア源8からのエアの送り出しを停止制御すると共に、加熱機構3(発熱ユニット15(電熱線19))の作動を停止制御する。これにより、電力消費量の低減を図ることができると共に、作業員ないし被加工部位に対する安全を確保することができる。
【0078】
本実施形態によれば、加熱機構3の先端から基端の全体、及び、グリップ機構2(グリップ本体2a)の全体に亘って、シリカクロス9が巻き付けられていると共に、加熱機構3の先端側には、シリカクロス9の外周に沿って、ガードコイル10が設けられている。これにより、作業員ないし被加工部位に対する安全をより十分に確保することができる。
【0079】
本実施形態によれば、加熱機構3に導入されたエアは、発熱ユニット15(電熱線19)と直接接触しながら熱風噴射部3aに送られる。これにより、火炎(バーナー)を用いた表面加工と同程度の処理効果を維持しつつ、高精度な表面加工を行うことができる。
【0080】
本実施形態によれば、エア導入機構4を、センサリード線13及び電源リード線20と共に、加熱機構3の先端(熱風噴射部3a)側とは正反対の領域に亘って配置構成する。これにより、熱風ヒーター1のバランス中心(例えば、重心)を、グリップ機構2(グリップ本体2a)のセンター乃至その近傍に位置付けることができる。この結果、熱風ヒーター1の操作性及び取扱い性を飛躍的に向上させることができる。かくして、被加工部位(バリ)に対する高精度の表面加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
1…熱風ヒーター、2…グリップ機構、3…加熱機構、4…エア導入機構、
5…ゲート開閉機構(冷却構造)、6…エア供給管、9…シリカクロス、
10…ガードコイル、22…固定治具、23…操作レバー。
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図6