(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載機器の筐体の本体部に対して、車両の設置面が傾斜している場合には、筐体の取付部の取付座面を本体部に対して傾斜させ、車両の設置面に、取付座面が合致するようにする。
【0005】
図15に示す筐体101のように、本体部110に対して、取付部120の取付座面121を傾斜させると、取付部120は、筐体101の射出成形の際に使用される金型の抜き方向131及び132に対して傾斜するようになる。車両の設置面の傾斜と合致させた取付部120には、設置面に取付けボルト等で固定するための貫通孔122を成形する。
【0006】
図16に示すように、金型の抜き方向131及び132に対して傾斜した取付部120に、貫通孔122を成形する場合において、貫通孔122の中心軸123方向を、金型の抜き方向131及び132と平行にしたときは、貫通孔122を成形するためのピン133を、金型と共に、取付部120から抜くことができる。なお、この際、取付座面121に直交する法線124は、中心軸123方向と交差している。
【0007】
このようにして成形された貫通孔122は、
図17の左側の取付部120に示すように、取付部120の取付座面121の法線124方向から見たとき、円形状にはならず、円形からは、ずれるようになる。そうすると、
図18に示すように、取付部120を、車両の設置面140に取り付ける際に、取付ボルト141を貫通孔122に挿通させたときに、精度よく固定することができない。また、取付ボルト141が貫通孔122内で振動し、他の部材を破損させる等の不具合の原因になる。さらに、貫通孔122の径の寸法管理において、どの方向のどの寸法を管理すれば良いのかが不明確になる。
【0008】
したがって、
図19に示すように、取付部120に成形される貫通孔125の中心軸123は、取付部120の取付座面121に直交させることが好ましい。これにより、取付部120を車両の設置面140に取り付ける際に、取付ボルト141を貫通孔125に挿通させて固定することができる。この場合の貫通孔125は、
図17の右側の取付部120に示すように、取付部120の取付座面121の法線124方向から見たとき、円形状となっている。また、貫通孔125の径の寸法管理が明確になる。
【0009】
しかしながら、
図20に示すように、貫通孔125の中心軸123が取付部120に直交している場合には、金型の抜き方向131及び132と、貫通孔125を成形するためのピン133を抜く方向が交差している。したがって、金型を開くときに、ピン133が成形品、すなわち、取付部120の貫通孔125の内面に引っかかり抜けない。このように、金型を開くときに、金型またはピン133が引っ掛かる部分をアンダーカット部という。成形品がアンダーカット部を有する場合には、金型が開くときにピン133がアンダーカット部に引っかからない方向に動くように、金型にスライダ構造を設けなければならない。スライダ構造を用いると、金型の構造が複雑になり、成形された部材の寸法の精度が低下する。また、金型のコストが上昇する。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、取付部に成形される貫通孔の中心軸が、金型の抜き方向に対して傾斜していても、金型のスライダ構造を用いずに貫通孔を成形することができ、車両に対して精度よくかつ低コストで取り付けることができる型成形品、金型構造及び型成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は、本体部と、前記本体部と一体成形された取付部と、を備え、前記取付部には貫通孔が成形され、前記貫通孔の一方の開口の周りには、平面状の取付座面が成形され、前記貫通孔の内面における前記一方の開口側には、前記取付座面に直交した取付中心軸を有する円筒状または前記一方の開口側に拡径した円錐台状の内周面の一部である一方側取付内周面と、前記取付中心軸に交差する抜き中心軸を有する円筒状または前記一方の開口側に拡径した円錐台状の内周面の一部である一方側抜き内周面とが前記取付中心軸を挟んで対向して成形され、前記内面における他方の開口側には、前記取付中心軸を有する円筒状または前記他方の開口側に拡径した円錐台状の内周面の一部である他方側取付内周面と、前記抜き中心軸を有する円筒状または前記他方の開口側に拡径した円錐台状の内周面の一部である他方側抜き内周面とが前記取付中心軸を挟んで対向して成形され、前記一方側取付内周面及び前記他方側抜き内周面を含み前記一方の開口から前記他方の開口につながった前記内面の部分と、前記一方側抜き内周面及び前記他方側取付内周面を含み前記一方の開口から前記他方の開口につながった前記内面の部分とは前記取付中心軸を挟んで対向して成形される、型成形品を提供する。
【0012】
また、本発明は、本体部と、前記本体部と一体成型される取付部とを成形する金型構造であって、第1凹部を含み、前記第1凹部の底面から突出した第1ピンを有する第1金型と、第2凹部を含み、前記第2凹部の底面から突出した第2ピンを有する第2金型と、を備え、前記第1凹部の底面における前記第1ピンの周りには、平面状の座面が形成され、前記第1凹部と前記第2凹部とで前記取付部を成形するためのキャビティを形成させた場合に、前記第1ピンの外面には、前記座面に直交した第1取付中心軸を有する円柱状または前記第1凹部の底面側に拡径した円錐台状の外周面の一部である第1取付外周面と、前記第1取付中心軸に交差する第1抜き中心軸を有する円柱状または前記第1凹部の底面側に拡径した円錐台状の外周面の一部である第1抜き外周面とが前記第1取付中心軸を挟んで対向して形成され、前記第2ピンの外面には、前記第1取付中心軸に平行な第2取付中心軸を有する円柱状または前記第2凹部の底面側に拡径した円錐台状の外周面の一部である第2取付外周面と、前記第1抜き中心軸に平行な第2抜き中心軸を有する円柱状または前記2凹部の底面側に拡径した円錐台状の外周面の一部である第2抜き外周面とが前記第2取付中心軸を挟んで対向して形成され、前記第1ピンと前記第2ピンとは、前記第1取付中心軸及び前記第2取付中心軸が一致するように接触し、前記第1取付外周面及び前記第2抜き外周面を含み前記第1ピンから前記第2ピンにつながった前記外面の部分と、前記第1抜き外周面及び前記第2取付外周面を含み前記第1ピンから前記第2ピンにつながった前記外面の部分とは前記第1取付中心軸及び前記第2取付中心軸を挟んで対向して形成される、金型構造を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、上記に記載の金型構造を用いた型成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、車両に対して精度よくかつ低コストで取り付けることができる型成形品、金型構造及び型成形品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
以下、図面を参照して実施形態に係る型成形品及び型成形品の製造方法を説明する。まず、型成形品の構成を説明する。
【0017】
<型成形品の構成>
図1は、実施形態に係る型成形品を例示した斜視図である。
図2は、実施形態に係る型成形品を例示した斜視図であり、
図1のA方向から見た斜視図である。
図3は、実施形態に係る型成形品を例示した正面図である。
図4は、実施形態に係る型成形品を例示した側面図である。
【0018】
図1〜
図4に示すように、型成形品1は、本体部10と、取付部20とを備えている。型成形品1は、例えば、合成樹脂を射出成形させた車載機器の筐体であり、プラスチックを材料として含んでいる。取付部20は車両の設置面への取り付け部分となっている。
【0019】
なお、型成形品1は、合成樹脂を射出成形させた車載機器の筐体に限らない。型成形品1は、金属等、合成樹脂以外を材料としてもよいし、鋳造等、射出成形以外の方法で金型を用いて成形させた型成形品1でもよい。また、型成形品1は、車載機器の筐体以外のものでもよい。
【0020】
本体部10は、例えば、蓋のない中空の箱を横に倒した形状の部材であり、板状の上部11、板状の底部12、板状の側部13、板状の側部14及び板状の前部15を有している。上部11、底部12、側部13、側部14及び前部15で囲われた部分を中空部16という。上部11と底部12とは中空部16を挟んで対向し、側部13と側部14とは中空部16を挟んで対向している。前部15と中空部16を挟んで対向する部分は開いている。なお、本体部10は、中空部16を有するものに限らず、中実なものであってもよい。さらに、本体部10は、金型を用いて作製可能な範囲で、任意の形状及び構造をとることができる。ここでは、本体部10の一例として説明する。本体部10の形状及び構造は、実施形態に限定されない。
【0021】
上部11における底部12と対向した板面を内面11aといい、内面11aの反対側の板面を外面11bという。底部12における上部11と対向する板面を内面12aといい、内面12aの反対側の板面を外面12bという。側部13における側部14と対向した板面を内面13aといい、内面13aの反対側の板面を外面13bという。側部14における側部13と対向する板面を内面14aといい、内面14aの反対側の板面を外面14bという。前部15における中空部16側の板面を内面15aといい、内面15aの反対側の板面を外面15bという。
【0022】
ここで、型成形品1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸を導入する。前部15の板面に直交する方向をX軸方向とし、外面15bから内面15aに向かう方向を+X軸方向とする。側部13と側部14とを結ぶ方向をY軸方向とし、側部14から側部13に向かう方向を+Y軸方向とする。X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、底部12から上部11へ向かい方向を+Z軸方向とする。
【0023】
取付部20は、矩形の板状の部材であり、板面20a及び板面20bを有している。取付部20は、側部13及び側部14の外面13b及び外面14bに配置されている。取付部20の端部20cが、側部13及び側部14の外面13b及び外面14bにつながっている。取付部20は本体部10と一体成型されている。すなわち、本体部10と取付部20との間には、継ぎ目は形成されていない。板面20a及び板面20bは、Y軸に直交する方向を向いている。なお、取付部20の位置は、側部13及び側部14の外面13b及び外面14bに限らない。取付部20は、後述する金型構造によって、貫通孔22を成形することができれば、上部11の外面11b、底部12の外面12b等、任意の位置に配置されてもよい。また、取付部20を配置する本体部10上での角度、すなわち、板面20a及び板面20bの向きは、後述する金型構造によって、貫通孔22を成形することができる範囲内で変更可能である。
【0024】
取付部20の板面20aには、平面状の取付座面21が成形されている。取付座面21は、車両等の設置面に取り付ける面となっている。取付座面21は、車両等の設置面と合致するようになっている。車両等の設置面が、金型の抜き方向に対して傾いている場合には、取付座面21は、金型の抜き方向に対して傾いている。
【0025】
取付部20には貫通孔22が成形されている。取付座面21は、板面20aにおける貫通孔22の開口23aの周りに成形されている。なお、取付座面21は、貫通孔22の開口23aの周りの所定の領域に成形されてもよいし、板面20aの全面が、取付座面21となっていてもよい。
【0026】
図5は、実施形態に係る型成形品1の取付部20に成形された貫通孔22を例示した断面図である。
図4及び
図5に示すように、貫通孔22は、取付部20の板面20aから板面20bまで貫通している。よって、貫通孔22は板面20a及び板面20bに開口している。板面20aにおける貫通孔22の開口23aを一方の開口23aといい、板面20bにおける貫通孔22の開口23bを他方の開口23bという。他方の開口23bから一方の開口23aへ向かう方向を一方側といい、一方の開口23aから他方の開口23bへ向かう方向を他方側という。
【0027】
貫通孔22の内面25は、取付座面21に直交する中心軸(以下、「取付中心軸24a」という。)を有する円筒状の内周面の一部を含んでいる。なお、当該内周面は、後述する金型を抜く際の抜き勾配を考慮して、円筒状の内周面の代わりに、一方の開口23a側に拡径した円錐台状の内周面となっていてもよい。貫通孔22の内面25の一方の開口23a側に成形された取付中心軸24aを有する円筒状の内周面、または、一方の開口23a側に拡径した円錐台状の内周面を一方側取付内周面26aという。一方側取付内周面26aは、内面25における一方の開口23a側の+Z軸方向側に成形されている。
【0028】
また、内面25における一方の開口23a側の−Z軸方向側は、取付中心軸24aに交差する中心軸(以下、「抜き中心軸24b」という。)を有する円筒状の内周面の一部を含んでいる。なお、当該内周面は、一方側取付内周面26aと同様に、金型を抜く際の抜き勾配を考慮して、円筒状の内周面の代わりに、一方の開口23a側に拡径した円錐台状の内周面となっていてもよい。以下、抜き勾配については、貫通孔22の他方の開口23bに対して同様である。貫通孔22の内面25の一方の開口23a側に成形された抜き中心軸24bを有する円筒状の内周面、または、一方の開口23a側に拡径した円錐台状の内周面を一方側抜き内周面27aという。一方側取付内周面26aと一方側抜き内周面27aとは、取付中心軸24aを挟んで対向している。
【0029】
このように、貫通孔22の内面25における一方の開口23a側には、取付座面21に直交する取付中心軸24aを有する円筒状または一方の開口23a側に拡径した円錐台状の内周面の一部である一方側取付内周面26aと、抜き中心軸24bを有する円筒状または一方の開口23a側に拡径した円錐台状の内周面の一部である一方側抜き内周面27aとが取付中心軸24aを挟んで対向して成形されている。
【0030】
貫通孔22の内面25における他方の開口23b側は、取付中心軸24aを有する円筒状、または、他方の開口23b側に拡径した円錐台状の内周面の一部を含んでいる。貫通孔22の内面25の他方の開口23b側に成形された取付中心軸24aを有する円筒状の内周面、または、他方の開口23b側に拡径した円錐台状の内周面を他方側取付内周面26bという。他方側取付内周面26bは、内面25における他方の開口23b側の−Z軸方向側に成形されている。
【0031】
貫通孔22の内面25における他方の開口23b側の+Z軸方向側は、抜き中心軸24bを有する円筒状、または、他方の開口23b側に拡径した円錐台状の内周面一部を含んでいる。貫通孔22の内面25の他方の開口23b側に成形された抜き中心軸24bを有する円筒状の内周面、または、他方の開口23b側に拡径した円錐台状の内周面を他方側抜き内周面27bという。他方側取付内周面26bと他方側抜き内周面27bとは、取付中心軸24aを挟んで対向している。
【0032】
このように、貫通孔22の内面25における他方の開口23b側には、取付中心軸24aを有する円筒状または他方の開口23b側に拡径した円錐台状の内周面の一部である他方側取付内周面26bと、抜き中心軸24bを有する円筒状または他方の開口23b側に拡径した円錐台状の内周面の一部である他方側抜き内周面27bとが取付中心軸24aを挟んで対向して成形されている。
【0033】
一方側取付内周面26aの+X軸方向側には、他方側抜き内周面27bが成形されている。一方側取付内周面26aと他方側抜き内周面27bとは、例えば、つながっている。また、一方側抜き内周面27aの+X軸方向側には、他方側取付内周面26bが成形されている。一方側抜き内周面27aと他方側取付内周面26bとは、例えば、つながっている。なお、他方側抜き内周面27bが+Z軸方向側にずれて位置することにより、一方側取付内周面26aと他方側抜き内周面27bとの間に段差が挟まれてもよい。また、一方側抜き内周面27aが−Z軸側にずれて位置することにより、一方側抜き内周面27aと他方側取付内周面26bとの間に段差が挟まれてもよい。
【0034】
一方側取付内周面26a及び他方側抜き内周面27bを含み、一方の開口23aから他方の開口23bにつながった内面25と、一方側抜き内周面27a及び他方側取付内周面26bを含み、一方の開口23aから他方の開口23bにつながった内面25とは取付中心軸24aを挟んで対向して成形されている。一方側取付内周面26a及び他方側取付内周面26b、並びに、一方側抜き内周面27a及び他方側抜き内周面27bの各内周面の形状は、設計上の誤差等を含んでいてもよい。
【0035】
図5に示すように、一方側取付内周面26aの最も他方側、すなわち、+X軸方向側の部分と、他方側取付内周面26bの最も一方側、すなわち、−X軸方向側の部分とは、取付座面21に平行な面内に位置していてもよい。このような構成となっていると、貫通孔22の内径を、円形状の内周面によって、容易に管理することができる。
【0036】
図6及び
図7は、実施形態に係る取付部20の貫通孔22を例示した図であり、
図6は、取付座面21に直交する取付中心軸方向から見た図を示し、
図7は、金型の抜き方向から見た図を示す。
図6に示すように、貫通孔22を取付座面21に直交する取付中心軸24a方向に、例えば、一方の開口23a側から見たときは、貫通孔22には、一方側取付内周面26aと他方側取付内周面26bとにより円形状が形成されている。開口23aの近傍には、一方側抜き内周面27aも見えている。
【0037】
一方、
図7に示すように、抜き中心軸24b方向、すなわち、後述する金型の抜き方向であるX軸方向の、例えば、一方の開口23a側から見た場合には、貫通孔22は、円形状からずれている。
【0038】
図8は、実施形態に係る型成形品1の取付部20を設置面40に取付ボルト41で取り付けた状態を例示した断面図である。
図8に示すように、取付部20の取付座面21を、車両等の設置面40に当接させ、貫通孔22に取付ボルト41を挿入し、ボルト締めする。これにより、設置面40に取付部20を固定することができる。
【0039】
本実施形態の貫通孔22には、一方側取付内周面26aと他方側取付内周面26bとにより円筒状の内周面が形成される。すなわち、取付中心軸24a方向から見て、円形状の全周に渡って円周が形成されている。よって、貫通孔22の全周に対して位置決めをすることができる。これにより、車両の設置面40に対して、精度よくかつ低コストで型成形品1を取り付けることができる。
【0040】
また、円筒状の内周面の内径を、取付ボルト41の外径に対応させることができる。よって、取付ボルト41が貫通孔22内で振動し、他の部材を破損させる等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、貫通孔22の径の寸法を、取付中心軸24a方向から見た円形状の全周に渡って、管理することができるので、寸法の管理を明確にすることができる。
【0041】
図9は、実施形態に係る型成形品1において、取付部20の取付座面21の角度を変えた状態を例示した側面図である。
図9に示すように、本体部10に対する車両の設置面40の角度が変化した場合には、取付部20の取付座面21の角度を変えることにより最適化する。これにより、車両の設置面40における角度の変化に対して、容易に対応することができる。
【0042】
<金型を用いた型成形品の製造方法>
次に、実施形態に係る型成形品1の製造方法を説明する。本実施形態の型成形品の製造方法は、以下に示す金型構造を用いた型成形品の製造方法である。
図10は、実施形態に係る型成形品1の製造方法を例示したフローチャート図である。まず、
図10のステップS11に示すように、金型のキャビティに溶融材料を供給する。材料として、例えば、合成樹脂を用いる。そして、金型のキャビティ内に材料を射出等により供給する。なお、本実施形態の型成形品の製造方法は、合成樹脂を金型に射出成形させる製造方法に限らない。型成形品の製造方法は、金属等、合成樹脂以外を材料としてもよいし、鋳造等、射出成形以外の方法で金型を用いて成形させる製造方法でもよい。
【0043】
図11及び
図12は、実施形態に係る型成形品1の本体部10における金型構造を例示した断面図であり、
図11は、金型の開いた状態を示し、
図12は、金型の閉じた状態を示す。
図13及び
図14は、実施形態に係る型成形品の取付部における金型構造を例示した断面図であり、
図13は、金型の開いた状態を示し、
図14は、金型の閉じた状態を示す。
【0044】
図11〜
図14に示すように、金型30は、第1金型31a及び第2金型31bを有している。金型30は、本体部10と、本体部10と一体成型される取付部20を成形するための金型である。第1金型31aは、本体部10を成形するための本体凹部32a及び取付部20を成形するための第1凹部33aを含んでいる。第2金型31bは、本体部10を成形するための本体凸部32b及び取付部20を成形するための第2凹部33bを含んでいる。
【0045】
図11及び
図12に示すように、第1金型31aの本体凹部32a及び第2金型31bの本体凸部32bを組み合わせる。組み合わせる際には、第1金型31a及び第2金型31bを、抜き方向34a及び34bに沿って組み合わせる。このようにして形成されたキャビティに合成樹脂等の溶融材料を射出等により供給する。これにより、型成形品1の本体部10の部分を成形する溶融材料が供給される。
【0046】
図13及び
図14に示すように、第1凹部33aは、取付部20の板面20a側を形成する部分となっている。第1凹部33aの底面35aは、平面状の部分を有している。第1金型31aは、第1ピン36aを有している。第1ピン36aは、第1凹部33aの底面35aから突出している。第1凹部33aの底面35aにおける第1ピン36aの周りには、平面状の座面35cが形成されている。
【0047】
第1ピン36aの外面には、座面35cに直交する中心軸(以下、「第1取付中心軸37a」という。)を有した円柱状の外周面の一部を有している。なお、当該外周面は、金型を抜く際の抜き勾配を考慮して、円柱状の外周面の代わりに、第1凹部33aの底面側に拡径した円錐台状の外周面となっていてもよい。第1取付中心軸37aを有した円柱状または円錐台状の外周面を第1取付外周面38aという。
【0048】
第1ピン36aの外面には、第1取付中心軸37aに交差する中心軸(以下、「第1抜き中心軸37c」という。)を有した円柱状の外周面の一部を有している。なお、当該外周面は、金型を抜く際の抜き勾配を考慮して、円柱状の外周面の代わりに、第1凹部33aの底面側に拡径した円錐台状の外周面となっていてもよい。第1抜き中心軸37cを有した円柱状または円錐台状の外周面を第1抜き外周面39aという。第1取付外周面38aと第1抜き外周面39aとは、第1取付中心軸37aを挟んで対向している。
【0049】
このように、第1ピン36aの外面には、座面35cに直交する第1取付中心軸37aを有した円柱状または第1凹部33aの底面側に拡径した円錐台状の外周面の一部である第1取付外周面38aと、第1取付中心軸37aに交差する第1抜き中心軸37cを有する円柱状または第1凹部33aの底面側に拡径した円錐台状の外周面の一部である第1抜き外周面39aとが第1取付中心軸37aを挟んで対向して形成されている。
【0050】
第2凹部33bは、取付部20の板面20b側を形成する部分となっている。第2凹部33bの底面35bは、平面状の部分を有している。第2金型31bは、第2ピン36bを有している。第2ピン36bは、第2凹部33bの底面35bから突出している。
【0051】
第2ピン36bの外面には、第1取付中心軸37aに平行な中心軸(以下、「第2取付中心軸37b」という。)を有した円柱状の外周面の一部を有している。なお、当該外周面は、金型を抜く際の抜き勾配を考慮して、円柱状の外周面の代わりに、第1凹部33aの底面側に拡径した円錐台状の外周面となっていてもよい。第2取付中心軸37bを有した円柱状または第2凹部33bの底面側に拡径した円錐台状の外周面を第2取付外周面38bという。
【0052】
第2ピン36bの外面には、第1抜き中心軸37cに平行な中心軸(以下、「第2抜き中心軸37d」という。)を有した円柱状、または、第2凹部33bの底面35b側に拡径した円錐台状の外周面の一部を有している。当該外周面を、第2抜き外周面39bという。第2取付外周面38bと第2抜き外周面39bとは、第2取付中心軸37bを挟んで対向している。
【0053】
このように、第2ピン36bの外面には、第2取付中心軸37bを有した円柱状または第2凹部33bの底面側に拡径した円錐台状の外周面の一部である第2取付外周面38bと、第2抜き中心軸37dを有した円柱状または前記第2凹部の底面側に拡径した円錐台状の外周面の一部である第2抜き外周面39bとが第2取付中心軸37bを挟んで対向して形成されている。
【0054】
図14に示すように、第1金型31a及び第2金型31bを、抜き方向34a及び34bに沿って組み合わせると、第1凹部33aと第2凹部33bとで取付部20を形成するためのキャビティが形成される。キャビティを形成させた場合に、第1ピン36aと第2ピン36bとは、第1取付中心軸37a及び第2取付中心軸37bが一致するように接触する。
【0055】
そうすると、第1取付外周面38a及び第2抜き外周面39bを含み、第1ピン36aから第2ピン36bにつながった外面の部分と、第1抜き外周面39a及び第2取付外周面38bを含み第1ピン36aから第2ピン36bにつながった外面の部分とは、第1取付中心軸37a及び第2取付中心軸37bを挟んで対向して形成される。
【0056】
例えば、このとき、第1ピン36aと、第2ピン36bとが接触する接触面は、円形状となっている。また、第1ピン36aと、第2ピン36bとが接触する接触面は、第1取付中心軸37a及び第2取付中心軸37bに直交する。なお、第1ピン36aと、第2ピン36bとが接触する接触面は、円形状に限らず、楕円等を含んでもよい。また、第1ピン36aと、第2ピン36bとが接触する接触面は、第1取付中心軸37a及び第2取付中心軸37bに直交せずに、傾斜してもよい。
【0057】
このようにして形成されたキャビティに、合成樹脂等の溶融材料を射出等により供給する。これにより、型成形品1の取付部20の部分を成形する溶融材料が供給される。なお、溶融樹脂を供給する方法としては、射出法にかぎらない。また、溶融材料としては、合成樹脂に限らない。例えば、金属等、合成樹脂以外の溶融材料を用いてもよいし、鋳造等、射出法以外の方法で溶融材料を供給してもよい。
【0058】
次に、
図10のステップS12に示すように、金型30のキャビティで溶融材料を固化させる。これにより、金型30のキャビティ内で、型成形品1の本体部10及び取付部20が一体成型される。
【0059】
次に、
図10のステップS13に示すように、型成形品1を金型30から取り出す。型成形品1を金型から取り出す際には、第1金型31aの本体凹部32a及び第2金型31bの本体凸部32bを抜き方向34a及び34bに沿って移動させる。これにより、本体部10を金型30から取り出すことができる。
【0060】
また、第1金型31aの第1凹部33a及び第2金型31bの第2凹部33bを抜き方向34a及び34bに沿って移動させる。これにより、取付部20を金型30から取り出すことができる。第1金型31a及び第2金型31bを、本体部10及び取付部20から抜き取る際の抜き方向34a及び34bは、第1抜き中心軸37c及び第2抜き中心軸37dと同方向となっている。また、抜き方向34a及び34bは、第1取付中心軸37a及び第2取付中心軸37bの方向と傾いている。このようにして、型成形品1を製造することができる。
【0061】
次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態では、取付部20に成形される貫通孔22の取付中心軸24aが、金型30の抜き方向34a及び34bに対して傾斜していても、金型30のスライダ構造を用いずに貫通孔22を成形することができる。よって、スライダ構造を用いなくてもよいので、金型費用を抑え、低コストで成形することができる。
【0062】
また、複雑な構造のスライダ構造を用いなくてもよいことで、寸法のバラつきを抑制し、車両の設置面40等の取付対象面に対して精度よくかつ低コストで取り付けることができる。
【0063】
さらに、スライダ構造を配置するために必要な金型内の領域を不要とすることができる。これにより、スライダ構造を用いる場合に、型成形品の特定の形状しか形成できないという制約を省くことができる。よって、型成形品の形状に対して、汎用性を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態の貫通孔22には、一方側取付内周面26aと他方側取付内周面26bとにより円筒状の内周面が形成される。取付中心軸24a方向から見て、円形状の全周に渡って円周が形成されている。これにより、車両の設置面40に対して、精度よくかつ低コストで型成形品1を取り付けることができる。
【0065】
さらに、円形状の内径を、取付ボルト41の外径に対応させることができる。よって、取付ボルト41が貫通孔22内で振動し、他の部材を破損させる等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、貫通孔22の径の寸法を、取付中心軸24a方向から見た円形状の全周に渡って、管理することができる。これにより、寸法の管理を明確にすることができる。
【0066】
本体部10に対する車両の設置面40の角度が変化した場合でも、取付部20の取付座面21の角度を変えて、最適化することができ、車両の設置面40における角度の変化に対応することができる。