【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記挿入工程の前または後に、前記第1端から一定範囲の前記共通クラッド管の外周部をテーパー状に細径化する細径化工程を含む、請求項1に記載のマルチコア光ファイバの製造方法。
前記細径化工程は、前記第1端において、前記共通クラッド管の最外周の空孔と共通クラッド管外周部との肉厚を10mm以下とする工程である、請求項2に記載のマルチコア光ファイバの製造方法。
前記ガラスブロックは、前記線引工程の開始前に溶融延伸により前記空孔の前記第1端側の封止を保ったまま除去される、請求項1から請求項7のいずれかに記載のマルチコア光ファイバの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1態様に係るマルチコア光ファイバの製造方法は、(1)第1端と第2端との間で軸方向に形成された複数の空孔を有する石英ガラス製の共通クラッド管を作製する母材作製工程と、(2)前記共通クラッド管の前記複数の空孔に石英ガラス製のコアロッドを、前記第1端から前記コアロッドの端部を引き込んだ状態で、挿入する挿入工程と、(3)前記第1端を加熱して前記第1端の
側で前記共通クラッド管の外径
および前記複数の空孔の内径を収縮させる熱収縮工程と、(4)前記第1端にガラスブロックを接続して前記複数の空孔を封止する封止工程と、(5)前記第2端側から前記共通クラッド管の前記複数の空孔の内部を減圧し、前記第1端側から前記共通クラッド管および前記コアロッドを一体化しながら紡糸してマルチコア光ファイバを製造する線引工程と、を順次含む。
【0014】
第1態様によれば、共通クラッド管の第1端の径を収縮させ共通クラッド管に接続されるガラスブロックの大きさを小さくでき質量を減少させることができるので、ガラスブロックの脱落を回避してマルチコア光ファイバを製造することができる。
【0015】
本発明の第2態様に係るマルチコア光ファイバの製造方法は、第1態様において、挿入工程の前または後に、前記第1端から一定範囲の前記共通クラッド管の外周部をテーパー状に細径化する細径化工程を含む。本態様によれば、共通クラッド管に接続されるガラスブロックの大きさをさらに小さくし質量をさらに減少させることができる。
【0016】
本発明の第3態様に係るマルチコア光ファイバの製造方法は、第2態様において、細径化工程は、前記第1端において、前記共通クラッド管の最外周の空孔と共通クラッド管外周部との肉厚を10mm以下とする工程である。本態様によれば、熱収縮工程により第1端の径をより小さくすることができ、共通クラッド管に接続されるガラスブロックの大きさをさらに小さくし、質量をさらに減少させることができる。
【0017】
本発明の第4態様に係るマルチコア光ファイバの製造方法は、第1から第3のいずれかの態様において、第1端において、複数の空孔の隣接する空孔間の肉厚が10mm以下とする。本態様によれば、熱収縮工程において空孔が閉塞することを回避することができる。
【0018】
本発明の第5態様によるマルチコア光ファイバの製造方法は、第1から第4のいずれかの態様において、ガラスブロックは、頂部と前記第1端に接続される底部とを有する形状である。本態様によれば、ガラスブロックの形状を制御することにより、質量をさらに減少させることができる。
【0019】
本発明の第6態様によれば、第5態様において、ガラスブロックの質量は、前記底部の半径をr(cm)としたとき、2.63×r
3(g)未満である。本態様によれば、ガラスブロックの質量を小さくしつつ、口出し前のガラス滴の形成をより確実にすることができる。
【0020】
本発明の第7態様によるマルチコア光ファイバの製造方法は、第6態様において、ガラスブロックの高さh(cm)は、1.15×r以上である。本態様によれば、ガラスブロックの高さを大きくするとともに質量を小さくしつつ、口出し前のガラス滴の形成をより確実にすることができる。
【0021】
本発明の第8態様によれば、第1から第7のいずれかの態様において、ガラスブロックは、前記線引工程の開始前に溶融延伸により前記空孔の前記第1端側の封止を保ったまま除去される。本態様によれば、共通クラッド管およびコアロッドを一体化する加熱開始からマルチコア光ファイバの紡糸開始までに要する時間を短くすることができる。
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
(第1実施形態)
図1および
図2は、第1実施形態のマルチコア光ファイバの製造方法を説明する図である。マルチコア光ファイバの製造にあたっては、まず、母材作製工程として、共通クラッド管10を作製する。
【0024】
図1(A)は、左側に共通クラッド管10の正面図を示し、また、右側に共通クラッド管10の側面断面図を示す図である。共通クラッド管10は、石英ガラス製であり、
図1(A)の右側に示すように第1端11と第2端12との間で軸方向に形成された複数の空孔13を有する。軸方向は、第1端11から第2端12への向きまたは逆向きの方向である。
【0025】
図1(A)の左側に示される共通クラッド管10の正面図を参照すると、空孔13の数は7であるが、空孔13の数は、2以上の任意の自然数とすることができ、
図1(A)とは異なる具体的な空孔13の数の例としては19や37などの二桁の自然数を挙げることもできる。
【0026】
隣接する空孔13間の共通クラッド管10の肉厚を、例えば10mm以下とすることができる。空孔13が配置されている円周上の周方向において隣接する空孔13があってもよい。また、空孔13が配置されている円周の径方向において隣接する空孔13であってもよい。前者のように、空孔13が配置されている円周上の周方向において隣接する空孔13間の共通クラッド管10の肉厚を10mm以下にするには、
図1(A)に示す距離d1を10mm以下とすることになる。また、後者のように、空孔13が配置されている円周上の径方向において隣接する空孔13間の共通クラッド管10の肉厚を10mm以下とするには、距離d2を10mm以下とすることになる。
【0027】
隣接する空孔13間の共通クラッド管10の肉厚を、10mm以下とすることにより、同じ半径の共通クラッド管10に、より多くのコアを配置することができる。
【0028】
なお、好ましくは、共通クラッド管10を作製した後、各空孔13の内壁面を気相エッチングし、共通クラッド管10の各空孔13内に塩素や酸素などの浄化ガスを流しながら共通クラッド管10を加熱することによる浄化処理によって空孔13内を清浄にする。
【0029】
図1(B)は、挿入工程として、母材作製工程の後に、複数の空孔13にコアロッド14を挿入することを示す図である。コアロッド14は石英ガラス製であり、コアロッド14の外径は、挿入する空孔13の径よりも僅に小さい。また、各空孔13の径を揃えることにより、各コアロッド14の外径を揃えるようにしてもよく、空孔13およびコアロッド14の作製において、径の違いに由来する手間を減らすことができ、また、製造されるマルチコア光ファイバのコアの光伝搬特性を揃えることもでき、マルチコア光ファイバを用いる通信の性能を上げることもできる。
【0030】
コアロッド14は、共通クラッド管10の第1端11の側から、空孔13に挿入する。あるいは、第2端12の側から、コアロッド14を空孔13に挿入してもよい。
【0031】
図1(C)は、コアロッド14を空孔13に挿入した後の状態を示す図である。コアロッド14は、第1端11からコアロッド14の端部を引き込んだ状態で、空孔13に挿入される。また、
図1(C)は、コアロッド14を第1端11からコアロッド14の端部を引き込んだ状態で、第1端11を加熱することも示している。すなわち、
図1(C)においては、共通クラッド管10の第1端11と、第1端11の側に位置するコアロッド14の端部との間に空隙15が形成された後に、第1端11が例えばバーナー60によって加熱されることが示されている。
【0032】
図1(D)は、共通クラッド管10の第1端11の加熱により、第1端11の径を収縮させ減少させる熱収縮工程を示す図である(左側が正面図、右側が側面断面図である。)。
図1(C)に示したように第1端11の側にバーナーを近づけることにより、共通クラッド管10の少なくとも第1端11の外周が加熱される。加熱により石英ガラスが溶融し、表面張力が、溶融した石英ガラスの表面積が小さくなるように働き、
図1(D)の左側に示す共通クラッド管10の正面図および
図1(D)の右側に示す共通クラッド管の断面側面図に示すように、符号16の部分の収縮により、第1端11の径が減少する。
【0033】
また、隣接する空孔13間の共通クラッド管10の肉厚を小さくし、上述のように例えば10mm以下とすることにより、第1端11の側の空孔13間の共通クラッド管10の材料の温度を上げやすくなり、
図1(D)に示すように、空孔13の第1端11の側の内径を小さくすることも容易に行える。また、空孔13の第1端11の側の内径を小さくすることを短時間で行なえば、加熱によりコアロッド14の第1端11の側が溶融し空孔13を閉塞することを防止でき、空孔13の空隙15側から第2端12の側までが連通したままとなり、後述するように、第2端12の側から減圧することにより、空孔13内の減圧により空隙15の減圧も行なうことができる。これにより、空隙15の存在にかかわらず、気泡の発生が抑制され、製造されるマルチコア光ファイバの品質を上げることができる。
【0034】
図1(E)は、熱収縮工程の後に、第1端11の側にガラスブロック30を接続する封止工程を示す図である。封止工程においては、ガラスブロック30を第1端11に接続することにより、第1端11の側から、複数の空孔13を封止する。複数の空孔13の封止により、上述の減圧が可能となる。
【0035】
なお、後述の線引工程の開始時にガラスブロック30自体が落下することを回避するためにはガラスブロック30の質量は小さいことが好ましい。このため、ガラスブロック30の形状においては、底面31の径d3は、熱収縮工程により径が収縮した共通クラッド管10の第1端11の径の大きさに合わせ、母材作製工程における共通クラッド管10の直径よりも小さくすることができる。
【0036】
また、ガラスブロック30の質量をさらに小さくするために、ガラスブロック30は、直径d3が一様に延在している円柱形よりも、底面から共通クラッド管10より離れるにつれて直径あるいは半径が減少する形状が好ましく、さらにより好ましくは、
図1(E)に側面切断面を示すように、頂部32を有するのが好ましい。ガラスブロック30が頂部32を有することにより、ガラスブロック30の質量を小さくすることができる。また、底面31と頂部32との間のガラスブロック30の側面は、ガラスブロック30の外部から見た場合、ガラスブロック30の内部に向かって凹んでいることが好ましい。別言すれば、頂部32と底面31とにより形成される円錐の内部にガラスブロック30が含まれるようになっていることが好ましい。このようなガラスブロックの形状を用いることにより、さらにガラスブロック30の質量を小さくすることができる。
【0037】
なお、ガラスブロック30の底面31と頂部32との距離(ガラスブロック30の高さ)の好適範囲には、底面31の半径に比例した下限値があることが実験上判明している。当該実験によれば、底面31の半径rを3.5cmとした場合、線引前の加熱によるガラス滴の形成を行なうには、ガラスブロック30の高さhは4.0cmが下限となる。したがって、hの好適範囲の下限は(40/35)×r=1.15×rとなり、ガラスブロックが直円錐ならばその質量のM(単位はグラム(g))の下限値は、
M=2.2×(πr
2×h)/3
=2.63×r
3
となる。なお、2.2は、ガラスの密度(単位はg/cm
3)である。よって、ガラスブロック30が、直円錐の内部に含まれる場合は、ガラスブロック30の質量(単位はg)は、M=2.63×r
3未満が好ましいことになる。これにより、ガラスブロック30の質量を小さくしつつ、ガラス滴の形成をより確実にすることができる。
【0038】
図1(F)は、封止工程の後、第2端12に、ダミー管40を接続した状態の側面断面図を示す。ダミー管40の側壁の肉厚は、例えば、共通クラッド管10の最外周の空孔13と共通クラッド管10の外周部との間の肉厚にすることができる。このような肉厚のダミー管40を用いれば、空孔13の全てをダミー管40の側壁が塞ぐことなく、ダミー管40を用いて、空孔13の内部を減圧することが可能である。なお、第2端12へのダミー管40の接続は、
図1(B)の挿入工程の前に行なってもよい。
【0039】
なお、空孔13の全てをダミー管40の側壁が塞ぐことがないようにする際の、ダミー管40の側壁の肉厚の上限の一例は、空孔13の直径の大きさに、共通クラッド管10の最外周の空孔13と共通クラッド管10の外周部との間の肉厚を加えた値となる。
【0040】
図2(A)は、ガラスブロック30により封止され、また、ダミー管40が接続された共通クラッド管10を、ガラスブロック30を下にして鉛直方向に立てた状態を示す図である。また、
図2(A)においては、ダミー管40を用いてコアロッド14が挿入された空孔13の内部を減圧し、共通クラッド管10の第1端11の側とガラスブロック30とを加熱炉50に入れた状態が示されている。加熱炉50により、ガラスブロック30が加熱され、ガラス滴が形成されてガラス滴が落下する。そこで、線引工程として、落下したガラス滴に続く糸状のガラスによりファイバの口出しを行ない、その後、第1端11の側から共通クラッド管10およびコアロッド14を一体化しながら紡糸してマルチコア光ファイバを製造する。
【0041】
なお、
図2(B)に示すように、共通クラッド管10の第1端11の側とガラスブロック30とを加熱炉50に入れ、ガラスブロック30および共通クラッド管10の第1端11の側の部分を溶融させる。これにより、ガラスブロック30による空孔13の第1端11の側の封止を保ちつつ、溶融したガラスブロック30および第1端11の側の部分を下方へ溶融延伸することができる。そこで、溶融延伸したガラスブロック30のかたまりとなった部分33を除去してもよい。より安全に作業するためには、部分33のようなたまりとせず、少しずつ溶融延伸しながら除去を繰り返すことが望ましい。
【0042】
このように、溶融延伸したガラスブロック30のかたまりとなった部分33を除去することにより、ファイバの口出し開始から紡糸されるガラスブロック30を無くしまたはガラスブロック30の量を減少させることができ、マルチコア光ファイバの紡糸開始までに要する時間を短くすることができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、熱収縮工程の導入により、共通クラッド管10の第1端11の径を収縮させることができる。このため、第1端11の側を封止するガラスブロック30の底面を小さくすることによりガラスブロック30の質量を減少させることができる。質量の減少によりガラスブロックの脱落を回避することができ、マルチコア光ファイバの製造効率の低下を抑制することができる。
【0044】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態のマルチコア光ファイバの製造方法を説明する図である。マルチコア光ファイバの製造にあたっては、まず、母材作製工程として、共通クラッド管10を作製する。
【0045】
図3(A)は、共通クラッド管10の側面断面図を示す図である。共通クラッド管10は、石英ガラス製であり、
図3(A)の右側に示すように第1端11と第2端12との間で軸方向に形成された複数の空孔13を有する。軸方向は、第1端11から第2端12への向きまたは逆向きの方向である。
【0046】
図3(A)に示される共通クラッド管10の断面側面図においては、3つの空孔13が示されているが、第1実施形態と同様に、共通クラッド管10の内部に形成される空孔13の全数は、2以上の任意の自然数とすることができる。
【0047】
隣接する空孔13間の共通クラッド管10の肉厚を、例えば10mm以下とすることができる点も第1実施形態と同様である。
【0048】
また、好ましくは、共通クラッド管10を作製した後、各空孔13の内壁面を気相エッチングし、共通クラッド管10の各空孔13内に塩素や酸素などの浄化ガスを流しながら共通クラッド管10を加熱することによる浄化処理によって空孔13内を清浄にする点も第1実施形態と同様である。
【0049】
図3(B)は、母材作製工程の後に、細径化工程により、第1端11の側から一定範囲の共通クラッド管10の外周部16をテーパー状に細径化した状態を示す。細径化は、機械的な手法を用いることもできるし、化学的な手法を用いることもできる。細径化工程により、外周部16の第1端11の側における肉厚d4を小さくすることができるので、後に行なう熱収縮工程により第1端11の側の径を第1実施形態よりもさらに小さくすることができる。したがって、ガラスブロック30の底面の径をさらに小さくすることができ、ガラスブロック30の質量をさらに小さくすることができる。
【0050】
細径化工程による第1端11の側の細径化は、共通クラッド管10の最外周の第1端11の側における肉厚d4が10mm以下とすることが好ましい。当該肉厚を10mm以下とすることにより、後に行なう熱収縮工程による第1端11の径の収縮を大きくすることができる。
【0051】
図3(C)は、細径化工程の後に、複数の空孔13にコアロッド14を挿入する挿入工程を示す図である。コアロッド14は、第1の実施形態と同様に、石英ガラス製であり、コアロッド14の外径は、挿入する空孔13の径よりも僅に小さい。コアロッド14は、共通クラッド管10の第1端11の側から、空孔13に挿入する。あるいは、第2端12の側から、コアロッド14を空孔13に挿入してもよい。
【0052】
図3(B)および
図3(C)に示す工程の順序では、挿入工程(
図3(C))の前に細径化工程(
図3(B))が行なわれるが、必要であれば、挿入工程を行なってから、細径化工程を行なうこともできる。したがって、挿入工程の前または後に、細径化工程を行なうことができる。
【0053】
図3(D)は、コアロッド14を空孔13に挿入した後の状態を示す図である。コアロッド14は、第1端11からコアロッドの端部を引き込んだ状態で、空孔13に挿入される。また、
図3(D)は、コアロッド14を第1端11からコアロッド14の端部を引き込んだ状態で、第1端11を加熱することも示している。
図3(D)においては、コアロッド14を第1端11からコアロッド14の端部を引き込んだ状態とすることにより、共通クラッド管10の第1端11と、第1端11の側に位置するコアロッド14の端部との間に空隙15が形成された後に、第1端11が例えばバーナー60によって加熱されることが示されている。
【0054】
図3(E)は、共通クラッド管10の第1端11の加熱により、第1端11の径を収縮させ減少させる熱収縮工程を示す図である(左側が正面図、右側が側面断面図である。)。
図3(D)に示したように第1端11の側にバーナーを近づけることにより、共通クラッド管10の少なくとも第1端11の外周が加熱される。加熱により、石英ガラスが溶融し、溶融した石英ガラスに表面張力が発生する。表面張力が、溶融した石英ガラスの表面積が小さくなるように働き、
図3(E)の左側に示す共通クラッド管10の正面図および
図3(E)の右側に示す共通クラッド管の断面側面図に示すように、符号17の部分の収縮により、第1端11の径が減少する。
【0055】
第2実施形態においては、細径化工程により、第1実施形態よりも第1端11の最外周の肉厚d4を小さくしてから、熱収縮工程を行なうので、第1実施形態におけるよりも第1端11の径をさらに小さくすることができる。
【0056】
なお、隣接する空孔13間の共通クラッド管10の肉厚を小さくし、上述のように例えば10mm以下とすることにより、第1端11の側の空孔13間の共通クラッド管10の材料の温度を上げやすくなり、溶融により発生する表面張力によって、
図3(E)に示すように、空孔13の第1端11の側の内径を収縮させることも容易に行える。また、空孔13の第1端11の側の内径を収縮させることを短時間で行えば、加熱によりコアロッド14が第1端11の側で溶融し空孔13を閉塞することを防止でき、空孔13の空隙15側から第2端12の側までが連通したままとなり、第2端12の側から減圧することにより、空孔13内の減圧により空隙15の減圧も行なうことができることも第1実施形態と同様である。
【0057】
図3(F)は、第1端11の側にガラスブロック30を接続する封止工程を示す図である。封止工程においては、ガラスブロック30を第1端11に接続することにより、第1端11の側から、複数の空孔13を封止する。複数の空孔13の封止により、上述の減圧が可能となる。
【0058】
後述の線引工程の開始時にガラスブロック30自体が脱落することを回避するためにはガラスブロック30の質量が小さいことが好ましい。このため、ガラスブロック30の形状においては、底面31の径d5は、熱収縮工程により径が収縮した共通クラッド管10の第1端11の側の径の大きさに合わせ、母材作製工程における共通クラッド管10の直径よりも小さくすることができる。
【0059】
ガラスブロック30の質量を小さくするために、ガラスブロック30は、直径d5が一様に延在している円柱形よりも、底面から共通クラッド管10から離れるにつれて直径(半径)が減少する形状が好ましく、さらにより好ましくは、
図3(F)に側面切断面を示すように、頂部32を有するのが好ましいことも第1実施形態と同様である。また、底面31と頂部32との間のガラスブロック30の側面は、ガラスブロック30の外部から見た場合、ガラスブロック30の内部に向かって凹んでいることが好ましい。別言すれば、頂部32と底面31とにより形成される円錐の内部にガラスブロックが含まれていることが好ましいことも第1実施形態と同様であり、共通クラッド管10およびガラスブロック30の正面視において、頂部32が中央に位置する場合、ガラスブロック30は、底面31および頂部32を有する直円錐の内部に含まれるのが好ましいことも第1実施形態と同様である。したがって、ガラスブロック30の質量(単位はg)は、M=2.63×r
3未満が好ましいことも第1実施形態と同様である(rは底面31の半径(単位はcm)である。)。
【0060】
図3(G)は、封止工程の後、第2端12に、ダミー管40を接続した状態の側面断面図を示す。ダミー管40の側壁の肉厚は、例えば、共通クラッド管10の最外周の空孔13と共通クラッド管10の外周部との間の肉厚が好ましい。このような肉厚のダミー管40を用いれば、空孔13の全てをダミー管40の側壁が塞ぐことなく、ダミー管40を用いて、空孔13の内部を減圧することが可能である。
【0061】
なお、空孔13の全てをダミー管40の側壁が塞ぐことがないようにする際の、ダミー管40の側壁の肉厚の上限の一例は、空孔13の直径の大きさに、共通クラッド管10の最外周の空孔と共通クラッド管10の外周部との間の肉厚を加えた値となることも第1実施形態と同様である。
【0062】
その後は、第1実施形態と同様に、ダミー管40が接続された共通クラッド管10をガラスブロック30を下にして鉛直方向に立てた状態とし、ダミー管40を用いてコアロッド14が挿入された空孔13の内部を減圧し、共通クラッド管10の第1端11の側とガラスブロック30とを加熱炉50に入れ、線引工程として、第1端11の側から共通クラッド管10およびコアロッド14を一体化しながら紡糸してマルチコア光ファイバを製造する。
【0063】
なお、
図2(B)に示したように、共通クラッド管10の第1端11の側とガラスブロック30とを加熱炉50に入れ、ガラスブロック30および共通クラッド管10の第1端11の側の部分を溶解させ、ガラスブロック30による空孔13の第1端11の側の封止を保ったまま、ガラスブロック30および第1端11の側の部分を溶解延伸し、溶融延伸したガラスブロック30のかたまり33を除去してもよいことも第1実施形態と同様である。より安全に作業するためには、部分33のようなたまりとせず、少しずつ溶融延伸しながら除去を繰り返すことが望ましい。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば、細径化工程の導入により、共通クラッド管10の第1端11の径をより小さく収縮することができる。このため、第1端11の側を封止するガラスブロック30の質量を減少させることにより、ガラスブロックの脱落を回避することができ、マルチコア光ファイバの製造効率の低下を抑制することができる。