(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本開示の一実施の形態に係る油分回収装置100の構成について
図1を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る油分回収装置100の一例を概略的に示す図である。
図1に示すように、油分回収装置100は、クーラントタンク1(本発明の「貯留部」に対応)、揺動機構2および回収機構3を備える。
【0014】
クーラントタンク1は、油分を含むクーラント液4を貯留する。クーラント液4は、切削等の機械加工を行う加工装置において工具を冷却するために使用される。クーラント液4は、加工装置において製品等の加工時に使用された後、クーラントタンク1に回収される。加工装置では加工を滑らかに行うため、潤滑油等が使用されている。そのため、クーラントタンク1にクーラント液4が回収されるとき、潤滑油等の油分が混入した状態で回収される。クーラントタンク1内では、油分は、クーラント液4との比重差によって浮上する。
【0015】
クーラントタンク1の側壁12には台座部14が設けられている。台座部14には枢軸16が設けられている。枢軸16は、クーラント液4の液面に直交する方向に延在している。枢軸16にはアーム部材17が軸支されている。アーム部材17は台座部14上を滑るように枢軸16回りに揺動する。台座部14には、保持部材18が固定されている。
【0016】
以下、揺動機構2の一例について
図1を参照して説明する。
揺動機構2は、
図1に示すように、板状部材21、ベース部材22、電動モーター23(本発明の「動力部」に対応)および駆動部24を備える。
【0017】
板状部材21は、長尺形状を有する。板状部材21は、長尺の方向を、クーラントタンク1に貯留されるクーラント液4の液面に垂直な方向にしてクーラント液4に浸けられる。板状部材21における幅方向一端211側には、枢軸16が配置されている。板状部材21における幅方向他端212は、クーラントタンク1の側壁12の近傍に位置している。幅方向一端211は、幅方向他端212より側壁12から離間して(クーラントタンク1の中央部寄りに)位置している。
【0018】
ベース部材22は、アーム部材17の先端部に固定されている。ベース部材22は、上記のアーム部材17と同様に、台座部14上を滑るように枢軸16回りに揺動する。ベース部材22には、回収機構3を介して板状部材21が設けられている。これにより、板状部材21は、ベース部材22および回収機構3と一体的に枢軸16回りに揺動する。
【0019】
電動モーター23は、ベース部材22に固定されている。
【0020】
駆動部24は、ベース部材22を揺動させる。駆動部24は、引張ばね242(本発明の「付勢部材」に対応)、カム部材244およびローラー部材246(本発明の「カムフォロア部材」に対応)を備えている。
【0021】
図1に、時計回りの方向CW1に揺動した板状部材21等を破線で示す。また、
図2に、反時計回りの方向CW2に揺動した板状部材21等を想像線で示す。
【0022】
引張ばね242は、保持部材18とベース部材22との間に張架されている。引張ばね242は、ベース部材22を
図2に示す反時計回りの方向CW2に付勢する。これにより、ベース部材22に設けられる板状部材21は、反時計回りの方向CW2に付勢される。
【0023】
カム部材244は、電動モーター23の出力軸232に固定されている。カム部材244は電動モーター23により出力軸232と一体的に回転する。カム部材244の外周面はカム面を有する。
【0024】
ローラー部材246は、軸受部材(図示略)を介して回転可能に保持部材18に支持されている。引張ばね242の付勢力は、カム部材244の外周面とローラー部材246の外周面とを圧接させた状態に維持する。
【0025】
カム部材244の外周面とローラー部材246の外周面との圧接位置からカム部材244の回転中心位置までの距離(リフト量)は、カム部材244の回転に応じて変化する。具体的に、カム部材244は、リフト量が短くなった場合に、ローラー部材246に近づく。これにより、ベース部材22は、
図2における反時計回りの方向CW2に揺動する。また、板状部材21は、ベース部材22と一体的に枢軸16回りに揺動するため、反時計回りの方向CW2に揺動する。
【0026】
カム部材244は、リフト量が長くなった場合に、ローラー部材246から遠ざかる。これにより、ベース部材22および板状部材21は、
図1における時計回りの方向CW1に揺動する。
【0027】
以上の構成により、板状部材21は、電動モーター23によりカム部材244が回転した場合に、枢軸16時計回りおよび反時計回りの方向CW1,CW2に揺動する。
【0028】
次に、回収機構3の一例について
図4および
図5を参照して説明する。
回収機構3は、鋸歯部材31(本発明の「第2部材」に対応)、平板部材32(本発明の「第1部材」に対応)、回転部材33、駆動部34(
図2参照)および回収部35を備える。
【0029】
平板部材32は、クーラントタンク1に貯留されるクーラント液4の液面に垂直な第1方向(
図4中の上下方向)に延在する金属部材である。本実施の形態では、平板部材32は、ステンレスの薄板である。平板部材32は、クーラントタンク1に貯留されるクーラント液4に浸漬する可能性のある部分に形成され、当該クーラント液4を掻く複数の掻き部材322を有する。平板部材32には、第1方向に延びる長穴324が形成されている。平板部材32には、第2ピン部材326が挿入される。
【0030】
鋸歯部材31は、第1方向に直交する方向(
図5中の左右方向)において平板部材32の外側(
図5中の左側および右側)に固定して配置され、第1方向に複数の鋸状の歯部314を有する。平板部材32に形成された長穴324、および平板部材32の外側に配置された鋸歯部材31には、固定して配置された第1ピン部材312が挿入される。
図5に示すように、鋸歯部材31の上端部の近傍には、上面がV字形状である回収路部材316が設けられている。
【0031】
鋸歯部材31には板状部材21が設けられている。
【0032】
回転部材33は、第2ピン部材326の一端部(
図5中の右端部)に接続されている。回転部材33には、図示しない制御部の制御下において回転部材33を
図4中の時計回り方向に回転駆動させる駆動部34が接続されている(
図2及び
図5を参照)。
【0033】
駆動部34は、プーリー部材342および無端ベルト344を有している(
図2参照)。プーリー部材342は、電動モーター23の出力軸232に固定されている。無端ベルト344は、プーリー部材342と回転部材33とに巻き掛けられている。これにより、電動モーター23の動力が無端ベルト344を介して回転部材33に伝達される。
【0034】
回収部35は、
図4に示すように、鋸歯部材31の右方に固定して配置される。
【0035】
<油分回収装置100の動作>
次に、油分回収装置100における揺動機構2の動作について
図1から
図3を参照して説明する。電動モーター23が回転すると、カム部材244が回転する。カム部材244がローラー部材246に遠ざかった場合に、ベース部材22は、
図1における時計回りの方向CW1に移動する。これにより、回収機構3の全体が時計回りの方向CW1に移動する。これにより、板状部材21は、回収機構3の鋸歯部材31に固定されているため、時計回りの方向CW1に揺動する。
【0036】
カム部材244がローラー部材246から近づいた場合に、ベース部材22は、
図2における反時計回りの方向CW2に移動する。これにより、板状部材21は、反時計回りの方向CW2に揺動する。
【0037】
板状部材21は、枢軸16時計回りおよび反時計回りの方向CW1,CW2の揺動を繰り返すことにより、クーラントタンク1に貯留されるクーラント液4の液面に循環流40を発生させる。循環流40は、
図3に示すように、板状部材21の幅方向他端212側からクーラントタンク1の側壁12Aに遮られて、渦となる(
図3に渦発生領域6を示す)。
【0038】
循環流40は、渦発生領域6を経て、側壁12Aに沿って
図3における上方向の流れ40Aと、下方向の流れ40Bとに分かれる。流れ40Aは、側壁12Bに沿った流れとなり、側壁12Cに遮られて、下方向の流れとなる。一方、流れ40Bは、側壁12Dに沿った流れとなり、側壁12Cに遮られて、上方向の流れとなる。
【0039】
二つの流れ40A,40Bは、互いに遮り合うため、また、側壁12Cにそれぞれ遮られるため、側壁12Aに向かう流れとなる。二つの流れ40A,40Bは、板状部材21の幅方向一端211側(枢軸16の近傍)に達する。枢軸16の近傍には所定領域5が設けられる。これにより、回収機構3は、循環流40に沿って流される油分を、所定領域5から回収することができる(
図3に、所定領域5に到達する油分の流れ50を示す)。
【0040】
板状部材21は、上記の揺動を繰り返すことで、クーラント液4を撹拌する。これにより、スカムは発生し難くなる。また、仮に、スカムが発生しても、スカムは、循環流40に沿って移動するために、所定領域5に滞留することがなく、所定領域5から油分を回収する際に邪魔にならない。
【0041】
次に、油分回収装置100における回収機構3の動作について
図6および
図7を参照して説明する。駆動部34は、制御部の制御を受けて、電動モーター23の動力を回転部材33に伝達し、回転部材33を回転駆動させる。これにより、回転部材33に接続された第2ピン部材326ひいては第2ピン部材326が挿入された平板部材32は、平板部材32の面上と平行な面上で、鋸歯部材31に対して周回運動する。この周回運動の際、平板部材32に形成された長穴154に挿入される第1ピン部材312は、
図4における上下方向(第1方向)以外の平板部材32の移動を規制する。
【0042】
以上のように、本実施の形態では、第1ピン部材312、第2ピン部材326、回転部材33、電動モーター23、駆動部34によって、鋸歯部材31に対して平板部材32を周回運動させる周回機構(クランク機構)が実現される。
図6は、
図6A、
図6B、
図6C、
図6Dの順で平板部材32が鋸歯部材31に対して時計回り方向に周回運動している様子を示している。
【0043】
平板部材32が周回運動することによって、平板部材32がクーラントタンク1に貯留されているクーラント液4に浸漬する結果、クーラント液4の上面の油分(油膜)が平板部材32に付着する。エマルジョン化した油分の微細粒子も平板部材32に付着する。
【0044】
その後、平板部材32が周回運動することによって、平板部材32のうち油分が付着した部分が歯部314の上辺に接触し、当該油分は、歯部314の上辺に移動する(載る)。
【0045】
その後、平板部材32が周回運動することによって、歯部314の上辺に移動した油分は、再び平板部材32に付着する。そのため、平板部材32の周回運動(周回サイクル)毎に、平板部材32に付着した油分は、より上方に位置する歯部314の上辺に移動する。本実施の形態では、平板部材32の周回方向を考慮し、歯部314の上辺を水平ではなく傾けることで、周回サイクル毎の油分の移動をスムーズにしている。また、歯部314は、端部において鋭角をつくるような形状、すなわち平板部材32との接触面積が小さくなるような形状を有するため、平板部材32の表面から油分の落下を最小限に留めることができる。仮に、端部において平板部材32との接触面積が大きいと,接触部分で油分が掻き落とされてしまう。
【0046】
そして、最上方に位置する歯部314の上辺まで移動した油分は、回収路部材316の上面に移動し、回収部35に向けて流れ落ちる。回収部35は、回収路部材316から流れ落ちた油分を回収する。例えば、回収部35で回収された油分は、廃油口から排出される。
【0047】
また、本実施の形態では、平板部材32が周回運動することによって、掻き部材322がクーラント液4の液面付近に存在するヘドロを掻き、クーラント液4の上面の油分が平板部材32に付着しやすくしている。すなわち、油分の回収効率の低下を防止することができる。なお、掻き部材322は、切欠きでも良いし、羽形状の突起でも良い。
【0048】
図7は、平板部材32に付着した油分が回収部35まで移動する経路を説明する図である。
図7中の矢印に示すように、平板部材32が周回運動することによって、歯部314aの上辺に移動した油分は、再び平板部材32に付着する。そして、平板部材32に付着した油分は、平板部材32が周回運動することによって、歯部314bの上辺に移動する。以後、平板部材32の周回運動によって、油分は、歯部314c,314d,314e,314f,314g,314hの上辺に順次移動する。
【0049】
そして、最上方に位置する歯部314hの上辺まで移動した油分は、回収路部材316の上面に移動し、回収部35に向けて流れ落ちる。本実施の形態では、最上方に位置する歯部314hの上辺まで移動した油分が回収部35に向けて流れ落ちやすくする観点から、歯部314hおよび回収路部材316は、歯部314a,314b,314c,314d,314e,314f,314gと異なり、回収部35に向けて傾斜している。
【0050】
<本実施の形態の効果>
以上のように、本実施の形態に係る油分回収装置100によれば、板状部材21をクーラントタンク1に貯留されるクーラント液4に浸け、クーラント液4の液面に直交する枢軸16回りに揺動させることにより、クーラント液4の液面に循環流40を発生させる揺動機構2と、クーラント液4の液面に浮上する油分を循環流40における所定領域5から回収する回収機構3とが備えられている。これにより、仮に、スカムが発生した場合でも、スカムは、循環流40に沿って移動し、所定領域5に滞留することがなく、油分を回収する際に邪魔にならない。このため、油分を所定領域5に近づけることができ、油分を効率的に回収することができる。
【0051】
また、油分回収装置100によれば、枢軸16は、板状部材21の幅方向一端211側に配置されている。これにより、回収時の油分が枢軸16に向かって流れるようになる。
【0052】
また、油分回収装置100において、所定領域5は、枢軸16の近傍に位置する。これにより、浮上した油分は、循環流40に沿って移動し、枢軸16の近傍を通るため、所定領域5から多くの油分を回収することができる。
【0053】
また、油分回収装置100によれば、板状部材21における幅方向他端212は、幅方向一端211よりクーラントタンク1の側壁12の近傍に位置する。これにより、揺動機構2は、幅方向他端212側から側壁12に沿って幅方向一端211側へ戻る循環流40を発生させることができるため、浮上した油分をより効率的に回収することができる。
【0054】
また、油分回収装置100において、板状部材21が設けられ、枢軸16回りに揺動するように支持されるベース部材22と、ベース部材22に設けられる電動モーター23と、電動モーター23から供給される動力により、ベース部材22を揺動させる駆動部34とが備えられている。これにより、ベース部材22に設けられた電動モーター23の動力により、ベース部材22自らが揺動する自駆動型の装置となるため、例えば、電動モーター23の動力をベース部材22へ伝達するための動力伝達機構などが不要となり、装置の小型・軽量化を図ることができる。
【0055】
また、油分回収装置100によれば、駆動部24は、引張ばね242、カム部材244およびローラー部材246を有している。引張ばね242の付勢力により板状部材21を所定方向に揺動させる一方で、カム部材244に従動するローラー部材246の相対的な移動により、板状部材21を所定方向と反対の方向に揺動させるため、簡単な構成により、板状部材21を揺動させることができる。
【0056】
また、油分回収装置100によれば、電動モーター23は、回収機構3に動力を供給する。これにより、回収機構3に動力を供給するための新たな動力源が不要となる。
【0057】
また、油分回収装置100によれば、回収機構3は、鋸歯部材31、平板部材32、周回機構および回収部35を有している。これにより、ベルト式のオイルスキマーと異なり、分離槽を必要とせずに、クーラントタンク1内で浮上した油分をクーラント液4と分離して回収することができる。
【0058】
また、油分回収装置100によれば、回収機構3は、ベース部材22と一体的に揺動するように構成されている。これにより、スカムが回収機構3にまとわりつくのを防止することができる。
【0059】
なお、上記油分回収装置100において、揺動機構2は、板状部材21を揺動させることにより、クーラント液4の液面に循環流40を発生させたが、本発明はこれに限らず、回収機構3に向かう流れを発生させればよい。この構成では、スカムが発生した場合、スカムおよび油分が回収機構3に向かって流れるが、油分は回収機構3に回収され、スカムは回収機構3に回収されずに回収機構3から遠ざかる。これにより、スカムは、回収機構3の回りに滞留することがなく、油分を回収する際の邪魔にならないため、油分を効率的に回収することができる。
【0060】
また、上記油分回収装置100において、板状部材21は、幅方向一端211から幅方向他端212にわたり、その板厚が一定のものであるが、本発明はこれに限らず、幅方向他端212側の板厚が幅方向一端211側の板厚より薄いヒレ形状を有してもよい。