(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された燃料電池システムでは、吸着剤の色相変化を目視またはカメラ撮影することにより当該吸着剤の寿命が判定される。しかしながら、目視やカメラ撮影により吸着剤の色相変化を適正に把握するのは容易ではなく、特許文献1に記載の燃料電池システムは、吸着剤の寿命判定精度の面で、なお改善の余地を有している。また、燃料電池システムに上記吸着剤を撮影するためのカメラを設置した場合、システム全体のコストアップを招いてしまう。更に、上記特許文献2に記載された燃料電池システムでは、単室型固体電解質型燃料電池の追設によりシステム全体のコストアップを招いてしまう。
【0005】
そこで、本開示は、燃料電池システムのコストアップを抑制しつつ、原燃料中の除去対象成分を除去するための除去剤の劣化を精度よく判定可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の燃料電池システムは、アノードガスとカソードガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、原燃料を改質して前記アノードガスを生成する改質器とを含む燃料電池システムにおいて、前記改質器の上流側に配置されると共に酸素と反応して発熱する除去剤を有し、前記除去剤の存在下で前記原燃料中の除去対象成分を化学反応させて該除去対象成分を該除去剤に吸着させる除去装置と、前記除去装置のガス入口に酸素を供給する酸素供給装置と、前記除去装置のガス出口側で前記除去剤の温度を検出する温度センサと、前記酸素供給装置から前記除去装置のガス入口に酸素が供給された際の前記温度センサの検出値に基づいて前記除去装置の前記除去剤の劣化を判定する劣化判定装置とを備えるものである。
【0007】
この燃料電池システムにおいて、除去装置の除去剤は、除去対象成分の吸着によりガス入口側から劣化していき、燃料電池システムの運転時間が長期化するにつれて、劣化していない除去剤の位置は、ガス入口側からガス出口側へと移動していく。そして、酸素供給装置から除去装置に酸素が供給された際には、除去対象成分が吸着しておらず、劣化していない除去剤が酸素と反応して発熱する。従って、酸素供給装置から除去装置への酸素の供給により除去剤が発熱した状態で温度センサによってガス出口側における除去剤の温度を取得することにより、当該温度に基づいて除去剤の劣化の進行度を適正に把握することが可能となる。更に、温度センサの設置によるコストアップは許容され得るものであり、酸素供給装置も他の用途のために設けられるものを兼用することができる。この結果、この燃料電池システムでは、システム全体のコストアップを抑制しつつ、原燃料中の除去対象成分を除去するための除去剤の劣化を精度よく判定することが可能となる。
【0008】
また、前記劣化判定装置は、前記温度センサの検出値が予め定められた閾値以上になった場合、前記除去装置の前記除去剤が寿命に達したと判定してもよい。すなわち、上述のような特性をもった除去剤を有する除去装置のガス出口側に温度センサを設置することで、除去剤の寿命を精度よく検知することが可能となる。
【0009】
更に、前記劣化判定装置は、前記温度センサの検出値が前記閾値よりも低い低温側閾値以上になった場合、前記除去装置の前記除去剤の寿命が近いと判定してもよい。これにより、除去剤の劣化の進行度をより適正に把握することが可能となる。
【0010】
また、前記燃料電池システムは、前記劣化判定装置の判定結果を報知する報知装置を更に備えてもよい。これにより、燃料電池システムのユーザーに除去装置の除去剤の劣化の度合いを報知して当該ユーザーの便に供することが可能となる。
【0011】
更に、前記燃料電池システムは、前記原燃料中の炭化水素と前記酸素供給装置からの酸素とを反応させて水素を生成する酸化器を更に備えてもよく、前記除去装置は、前記酸化器からの水素と前記原燃料中の硫黄成分とを反応させて該硫黄成分を除去する脱硫器であってもよい。このように除去装置がいわゆる水添式の脱硫器である場合には、当該脱硫器のために設けられる酸素供給装置を用いて当該脱硫器の脱硫剤の劣化を判定することができる。これにより、システム全体のコストアップを抑制しつつ、脱硫器の脱硫剤の劣化を精度よく判定することが可能となる。
【0012】
また、前記劣化判定装置は、前記燃料電池システムの運転に停止に伴って前記燃料電池の温度が低下した際に、前記酸素供給装置から前記除去装置に酸素を供給させて前記除去剤の劣化を判定してもよい。これにより、除去剤の劣化判定の実行に伴う燃料電池の酸化による劣化を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
図1は、本開示の燃料電池システム10を示す概略構成図である。同図に示す燃料電池システム10は、アノードガス(燃料ガス)中の水素とカソードガス(酸化剤ガス)中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池FCを有する発電ユニット20と、湯水を貯留する貯湯タンク101を有する給湯ユニット100と、システム全体を制御する制御装置80とを含む。また、発電ユニット20は、燃料電池FCや、断熱性材料により形成された箱型のモジュールケース31、気化器32、改質器33等を含む発電モジュール30と、発電モジュール30の気化器32に例えば天然ガスやLPガスといった原燃料ガス(原燃料)を供給するための原燃料ガス供給系統40と、発電モジュール30の燃料電池FCにカソードガスとしてのエア(空気)を供給するためのエア供給系統50と、発電モジュール30の気化器32に改質水を供給するための改質水供給系統55と、発電モジュール30で発生した排熱を回収するための排熱回収系統60と、燃料電池FCの出力端子に接続されたパワーコンディショナ71と、これらを収容する筐体22とを有する。
【0016】
発電モジュール30の燃料電池FCは、固体酸化物形燃料電池であり、例えば酸化ジルコニウム等の電解質と当該電解質を挟持するアノード電極およびカソード電極とを含む単セルを
図1中左右方向に複数積層することにより構成された複数(本実施形態では、2つ)のセルスタックCSを含む。各セルのアノード電極側には、アノードガスを流通させる図示しないアノードガス通路がセルの積層方向と直交する方向(図中上下方向)に延びるように形成されている。また、各セルのカソード電極側には、エアを流通させる図示しないエア通路がセルの積層方向と直交する方向(図中上下方向)に延びるように形成されている。燃料電池FCを構成する2つのセルスタックCSは、断熱材を介してモジュールケース31内に設置されたマニホールド上に並設され、各セルのアノードガス通路は、マニホールドに形成されたアノードガス通路に接続される。また、各セルのエア通路は、モジュールケース31内の図示しないエア供給通路に接続される。
【0017】
発電モジュール30の気化器32および改質器33は、モジュールケース31内の複数のセルスタックCSの上方に両者と間隔をおいて配設される。2つのセルスタックCSと気化器32および改質器33との間には、燃料電池FCの作動や、気化器32および改質器33での反応に必要な熱を発生させる燃焼部34が画成されている。燃焼部34には、点火ヒータ35が設置されると共に、2つのセルスタックCSの一方に近接するように温度センサ36が設置されている。
【0018】
気化器32は、燃焼部34からの熱により原燃料ガス供給系統40からの原燃料ガスと改質水供給系統55からの改質水とを加熱し、原燃料ガスを予熱すると共に改質水を蒸発させて水蒸気を生成する。気化器32により予熱された原燃料ガスは、水蒸気と混ざり合い、予熱された原燃料ガスと水蒸気との混合ガスは、当該気化器32から改質器33に導入される。
【0019】
改質器33は、その内部に充填された例えばRu系またはNi系の改質触媒を有し、燃焼部34からの熱の存在下で、改質触媒による気化器32からの混合ガスの反応(水蒸気改質反応)によって水素ガスと一酸化炭素とを生成する。更に、改質器33は、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気との反応(一酸化炭素シフト反応)によって水素ガスと二酸化炭素とを生成する。これにより、改質器33によって、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の原燃料ガス等を含むアノードガスが生成されることになる。
【0020】
改質器33により生成されたアノードガスは、上記マニホールドやセルスタックCSの各セルのアノードガス通路等を介して各セルのアノード電極に供給される。また、セルスタックCSの各セルのカソード電極には、各セルのエア通路等を介して酸素を含むカソードガスとしてのエアが供給される。カソード電極では、酸化物イオン(O
2-)が生成され、当該酸化物イオンが電解質を透過してアノード電極で水素や一酸化炭素と反応することにより電気エネルギが得られる。また、各セルスタックCSにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかったアノードガス(以下、「アノードオフガス」という)およびエア(以下、「カソードオフガス」という)は、各セルのアノードガス通路やエア通路から上方の燃焼部34へと流出する。
【0021】
各セルのアノードガス通路から燃焼部34に流入したアノードオフガスは、水素や一酸化炭素等の燃料成分を含む可燃性ガスであり、各セルのエア通路から燃焼部34に流入した酸素を含むカソードオフガスと混ざり合う。以下、アノードオフガスとカソードオフガスとの混合ガスを「オフガス」という。そして、点火ヒータ35により点火させられて燃焼部34でオフガス(アノードオフガス)が着火すると、当該オフガスの燃焼により、燃料電池FCの作動や、気化器32での原燃料ガスの予熱や水蒸気の生成、改質器33での水蒸気改質反応等に必要な熱が発生することになる。また、オフガスの燃焼に伴い、燃焼部34では、水蒸気を含む燃焼排ガスが生成される。
【0022】
図1に示すように、気化器32に原燃料ガスを供給するための原燃料ガス供給系統40は、天然ガスやLPガスを供給する原燃料供給源1と気化器32とを結ぶ原燃料ガス供給管41と、当該原燃料ガス供給管41に組み込まれた原燃料ガス供給弁(電磁開閉弁)42,43および原燃料ガスポンプ44と、気化器32と原燃料ガスポンプ44との間に位置するように原燃料ガス供給管41に組み込まれた第1脱硫器45Aと、気化器32と第1脱硫器45Aとの間に位置するように原燃料ガス供給管41に組み込まれた第2脱硫器(除去装置)45Bと、第1脱硫器45Aと第2脱硫器45Bとの間に位置するように原燃料ガス供給管41に組み込まれた酸化器46とを含む。更に、原燃料ガス供給管41には、当該原燃料ガス供給管41内の原燃料ガスの圧力を検出する圧力センサ48や、原燃料ガス供給管41を流通する原燃料ガスの単位時間あたりの流量を検出する流量センサ49が設置されている。
【0023】
第1脱硫器45Aは、例えばゼオライト等の吸着剤を用いて原燃料ガスから硫黄成分(硫黄化合物)を除去するものである。また、かかる第1脱硫器45Aに対する原燃料ガスの供給が開始されると、硫黄成分と共に原燃料ガス中の燃料成分(メタン等の炭化水素)が上記吸着剤に物理的に吸着する。なお、第1脱硫器45Aの脱硫方式は、いわゆる常温脱硫式に限られるものではない。第2脱硫器45Bは、
図2に示すように、ガス入口45iおよびガス出口45oを有する筐体45cと、当該筐体45cの内部に充填された水添脱硫剤(除去剤)45dsとを有する、いわゆる水添脱硫器である。本実施形態では、水添脱硫剤45dsとして、CuZn系触媒が用いられている。第2脱硫器45Bは、水添脱硫剤45dsの存在下で原燃料ガスの硫黄化合物(SR)を水素(H
2)と反応させて硫化水素(H
2S)に変換し、除去対象成分としての硫黄を含む硫化水素を当該水添脱硫剤45dsに吸着させる。
【0024】
本実施形態において、第2脱硫器45Bは、水添脱硫剤45dsを脱硫反応に適した温度にするために、モジュールケース31の近傍あるいはその内部に配置される。更に、第2脱硫器45Bには、筐体45cのガス出口45o側で水添脱硫剤45dsの温度を検出する温度センサ45tが設置されている。温度センサ45tは、ガス出口45oの近傍、すなわち原燃料ガスの流通方向における筐体45cの中央(
図2における一点鎖線参照)とガス出口45oとの間の当該ガス出口45oに近接した位置に設置される。なお、水添脱硫剤45dsは、酸素と反応して発熱する成分を含むものであれば、例えばZnO系触媒であってもよい。また、温度センサ45tは、ガス出口45oに設置されてもよい。
【0025】
酸化器46は、例えばロジウムや白金、パラジウム等の脱酸素触媒を担持したアルミナ等の担体、あるいは脱酸素触媒としてのCuやZn等からなる多孔質体を有しており、脱酸素触媒の存在下で原燃料ガス中の炭化水素を燃焼させて脱酸素反応(水素化脱酸素反応)により当該原燃料ガス中の酸素を除去すると共に水素を生成するものである。更に、原燃料ガス供給管41の第1脱硫器45Aのガス出口と酸化器46のガス入口との間の部分には、エア供給管を介してエアブロワ(酸素供給装置)47が接続されている。エアブロワ47を作動させることで、エアフィルタを介して吸入されたエアが当該エアブロワ47により酸化器46のガス入口へと圧送(供給)され、酸化器46に対して燃焼用の酸素が供給される。これにより、燃料電池システム10の運転中、エアブロワ47を作動させることで、酸化器46から第2脱硫器45Bに対して硫黄化合物と反応させる水素を供給することができる。また、酸化器46も、脱酸素触媒を水素化脱酸素反応に適した温度にするために、モジュールケース31の近傍あるいはその内部に配置される。
【0026】
エア供給系統50は、モジュールケース31内のエア供給通路に接続されるエア供給管51と、エア供給管51のエア入口に設置されたエアフィルタ52と、エア供給管51に組み込まれたエアブロワ53とを含む。エアブロワ53を作動させることで、エアフィルタ52を介して吸入されたエアが当該エアブロワ53により燃料電池FCへと圧送(供給)される。また、エア供給管51には、当該エア供給管51を流通するエアの単位時間あたりの流量が所定値に達するとオンする流量スイッチ54が設置されている。
【0027】
改質水供給系統55は、気化器32に接続された改質水供給管56と、改質水供給管56に接続されると共に改質水を貯留する改質水タンク57と、改質水供給管56に組み込まれた改質水ポンプ58とを含む。改質水ポンプ58を作動させることで、改質水タンク57内の改質水が当該改質水ポンプ58により気化器32へと圧送(供給)される。また、改質水タンク57内には、貯留されている改質水を精製する図示しない水精製器が設置されている。
【0028】
排熱回収系統60は、給湯ユニット100の貯湯タンク101に接続された循環配管61と、循環配管61を流通する湯水と発電モジュール30の燃焼部34からの燃焼排ガスとを熱交換させる熱交換器62と、循環配管61に組み込まれた循環ポンプ63とを含む。循環ポンプ63を作動させることで、当該循環ポンプ63により貯湯タンク101に貯留されている湯水を熱交換器62へと導入し、熱交換器62で燃焼排ガスから熱を奪って昇温した湯水を貯湯タンク101へと返送することができる。
【0029】
また、排熱回収系統60の熱交換器62(燃焼排ガスの通路)は、凝縮水供給管66を介して改質水タンク57に接続されており、燃焼排ガス中の水蒸気が貯湯タンク101からの湯水との熱交換により凝縮することにより得られた凝縮水は、当該凝縮水供給管66を介して改質水タンク57内に導入される。更に、熱交換器62の燃焼排ガスの通路は、排気管67に接続されている。これにより、発電モジュール30の燃焼部34(燃料電池FC)から排出されて熱交換器62で水分が除去された排ガスは、排気管67を介して大気中に排出される。
【0030】
パワーコンディショナ71は、燃料電池FCの出力端子に接続されて当該燃料電池FCからの直流電力を昇圧するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータからの直流電力を交流電力に変換するインバータとを有する(何れも図示省略)。パワーコンディショナ71(インバータ)の出力端子は、系統電源2に接続された電力ライン3に接続される。これにより、燃料電池FCからの直流電力を交流電力に変換して家電製品等の負荷4に供給することが可能となる。更に、燃料電池システム10は、電力ライン3に接続された電源基板72を含む。電源基板72は、系統電源2からの交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータを有しており、原燃料ガス供給弁42,43や原燃料ガスポンプ44、エアブロワ47,53、改質水ポンプ58、循環ポンプ63といった補機類、温度センサ36,45tといったセンサ類、更には制御装置80等に直流電力を供給する。
【0031】
また、パワーコンディショナ71や電源基板72等が配置される補機室内には、当該パワーコンディショナ71や電源基板72等を冷却するための冷却ファン(図示省略)と、換気ファン24とが配置されている。図示しない冷却ファンは、パワーコンディショナ71や電源基板72の発熱部にエアを送り込み、当該発熱部を冷却して昇温したエアは、換気ファン24により大気中に排出される。
【0032】
制御装置80は、CPU81や、各種プログラムを記憶するROM82、データを一時的に記憶するRAM83、タイマ84、何れも図示しない入力ポートおよび出力ポート等を含むコンピュータである。制御装置80は、温度センサ36,45tや、圧力センサ48、流量センサ49の検出値、流量スイッチ54からの信号等を入力ポートを介して入力する。また、制御装置80は、換気ファン24や、点火ヒータ35、原燃料ガス供給弁42,43のソレノイド、原燃料ガスポンプ44、エアブロワ47,53、改質水ポンプ58、循環ポンプ63、パワーコンディショナ71(DC/DCコンバータおよびインバータ)、表示パネル90等への制御信号を出力ポートを介して出力し、これらの機器を制御する。更に、制御装置80には、無線式または有線式の通信回線を介してリモコン85が接続されており、制御装置80は、燃料電池システム10のユーザーにより操作された当該リモコン85からの信号に基づいて各種制御を実行する。また、本実施形態において、リモコン85は、各種情報を表示可能な表示部85aを有する。
【0033】
ここで、上述の燃料電池システム10において、第2脱硫器45Bの水添脱硫剤45dsは、硫化水素の吸着によりガス入口45i側から劣化していき、燃料電池システム10の運転時間が長期化するにつれて、劣化していない水添脱硫剤45dsの位置は、
図2からわかるように、ガス入口45i側からガス出口45o側へと移動していく。また、燃料電池システム10の運転中、第2脱硫器45Bの水添脱硫剤45dsは、還元されたCuを含む状態となり、当該燃料電池システム10の運転中あるいは運転停止後に水添脱硫剤45dsに対して酸素が供給されると、Cuが酸化されることにより(2Cu+O
2→2CuO)発熱する。この際、
図2中破線で示す範囲に位置する硫化水素の吸着により劣化した水添脱硫剤45dsは発熱せず、当該劣化部に隣接した、硫化水素が吸着していない未劣化の水添脱硫剤45ds(Cu)が酸素と反応して発熱する。従って、第2脱硫器45Bに酸素が供給された際には、酸素と反応した発熱部分で水添脱硫剤45dsの温度が上昇することになる。これを踏まえて、本実施形態の燃料電池システム10では、以下に説明するようにして第2脱硫器45Bの水添脱硫剤45dsの劣化が判定される。
【0034】
図3は、燃料電池システム10の制御装置80により実行される脱硫剤劣化判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0035】
制御装置80のCPU81は、燃料電池システム10の運転停止後であって、温度センサ36により検出される燃料電池FC(セルスタックCS)の温度が所定温度以下になると、
図3のルーチンを開始する。なお、当該所定温度は、燃料電池FCの温度が当該所定温度以下になった際に第2脱硫器45Bの水添脱硫剤45dsが還元されたCuを含む状態となっているように定められる。
図3のルーチンの開始に際して、CPU81は、まず、エアブロワ47を作動させて酸化器46を介した第2脱硫器45Bのガス入口45iへのエア(酸素)の供給を開始させる(ステップS100)。
【0036】
エアブロワ47を作動させた後、CPU81は、硫黄成分が吸着していない未劣化の水添脱硫剤45dsが充分に発熱するまで予め定められた時間だけ待機した後、第2脱硫器45Bの温度センサ45tにより検出された温度T(検出値)を取得する(ステップS110)。更に、CPU81は、ステップS110にて取得した温度Tが予め定められた第1閾値(低温側閾値)Tref1以上であるか否かを判定する(ステップS120)。本実施形態において、第1閾値Tref1は、例えば、酸素と反応して発熱していないときの水添脱硫剤45dsの温度よりも高くかつ、酸素と反応して発熱した際の水添脱硫剤45dsの最高温度よりも低く定められた温度である。
【0037】
温度センサ45tにより検出された温度Tが第1閾値Tref1未満である場合、温度センサ45tの近傍に位置する水添脱硫剤45dsが酸素との反応により発熱しておらず、第2脱硫器45Bの筐体45cに内部に未劣化の水添脱硫剤45dsが充分に残されているとみなすことができる。このため、ステップS120にて温度Tが第1閾値Tref1未満であると判定した場合(ステップS120:NO)、CPU81は、エアブロワ47の運転を停止させ(ステップS160)、本ルーチンを終了させる。
【0038】
一方、ステップS120にて温度Tが第1閾値Tref1以上であると判定した場合(ステップS120:YES)、CPU81は、ステップS110にて取得した温度Tが第1閾値Tref1よりも高い第2閾値Tref2未満であるか否かを判定する(ステップS130)、本実施形態において、第2閾値Tref2は、例えば、酸素と反応して発熱した際の水添脱硫剤45dsの最高温度よりも若干低く定められた温度である。
【0039】
温度センサ45tにより検出された温度Tが第2閾値Tref1未満である場合、温度センサ45tの近傍に位置する水添脱硫剤45dsが酸素との反応により発熱していないが、温度センサ45tに比較的近接した位置にある水添脱硫剤45dsが酸素との反応により発熱しているとみなすことができる。このため、ステップS130にて温度Tが第2閾値Tref2未満であると判定した場合(ステップS130:YES)、CPU81は、水添脱硫剤45dsの寿命が近づいていることを示す警告表示を表示パネル90に表示させると共に、同様の警告表示を表示部85aに表示させるべくリモコン85に表示指令信号を送信する(ステップS140)。そして、CPU81は、エアブロワ47の運転を停止させ(ステップS160)、本ルーチンを終了させる。
【0040】
また、ステップS130にて温度Tが第2閾値Tref2以上であると判定した場合(ステップS130:NO)、CPU81は、水添脱硫剤45dsの寿命が到来したことを示す寿命到来表示(交換要請表示)を表示パネル90に表示させると共に、同様の寿命到来表示を表示部85aに表示させるべくリモコン85に表示指令信号を送信する(ステップS150)。そして、CPU81は、エアブロワ47の運転を停止させ(ステップS160)、本ルーチンを終了させる。
【0041】
上述のように、燃料電池システム10では、酸素と反応して発熱する特性をもった水添脱硫剤45dsを有すると共に当該燃料電池システム10の運転時間の長期化に伴って劣化していない水添脱硫剤45dsの位置がガス入口45i側からガス出口45o側へと移動する第2脱硫器45Bのガス出口45o側に温度センサ45tが設置される。そして、燃料電池システム10では、
図3の脱硫剤劣化判定ルーチンの実行により、エアブロワ47から第2脱硫器45Bへの酸素の供給により水添脱硫剤45dsが発熱した状態で温度センサ45tによってガス出口45o側における水添脱硫剤45dsの温度Tが取得され、当該温度Tと第1および第2閾値Tref1,Tref2とが比較される(ステップS110,S120,S130)。これにより、原燃料ガス中の除去対象成分である硫黄成分を除去する水添脱硫剤45dsの劣化の進行度や寿命を適正に精度よく把握することが可能となる。また、温度センサ45tの設置によるコストアップは許容され得るものであり、第2脱硫器45Bに酸素を供給する酸素供給装置として酸化器46への酸素の供給に用いられるエアブロワ47を兼用することができる。この結果、燃料電池システム10では、システム全体のコストアップを良好に抑制することが可能となる。
【0042】
また、燃料電池システム10では、劣化判定装置としての制御装置80の判定結果が報知装置としてのリモコン85の表示部85aや表示パネル90上に表示される(ステップS140,S150)。これにより、燃料電池システム10のユーザーに第2脱硫器45Bの水添脱硫剤45dsの劣化の度合いを報知して当該ユーザーの便に供することが可能となる。
【0043】
更に、制御装置80は、燃料電池システム10の運転に停止に伴って燃料電池FCの温度が低下した際に、エアブロワ47から第2脱硫器45Bに酸素を供給させて水添脱硫剤45dsの劣化を判定する。これにより、水添脱硫剤45dsの劣化判定の実行に伴う燃料電池FCの酸化による劣化を抑制することが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本開示の燃料電池システム10は、改質器33の上流側に配置されると共に酸素と反応して発熱する水添脱硫剤45dsを有し、当該水添脱硫剤45dsの存在下で原燃料ガス中の硫黄成分を化学反応させて水添脱硫剤45dsに吸着させる第2脱硫器45Bと、当該第2脱硫器45Bのガス入口45iに酸素を供給するエアブロワ47と、第2脱硫器45Bのガス出口45o側で水添脱硫剤45dsの温度を検出する温度センサ45tと、エアブロワ47から第2脱硫器45Bのガス入口45iに酸素が供給された際の温度センサ45tの検出値に基づいて水添脱硫剤45dsの劣化を判定する制御装置80とを含む。これにより、燃料電池システム10では、システム全体のコストアップを抑制しつつ、原燃料ガス中の硫黄成分を除去するための水添脱硫剤45dsの劣化を精度よく判定することが可能となる。
【0045】
なお、燃料電池システム10では、酸化器46に酸素を供給するエアブロワ47が水添脱硫剤45dsの劣化判定に際して第2脱硫器45Bに酸素を供給する酸素供給装置として兼用されるが、これに限られるものではない。すなわち、燃料電池FCにカソードガスとしてのエアを供給するエア供給系統50のエアブロワ53が第2脱硫器45Bに酸素を供給する酸素供給装置として兼用されてもよい。この場合、エアブロワ53に接続されたエア供給管51から中途に切替バルブを含む分岐管を分岐させると共に当該分岐管を原燃料ガス供給管41の第1脱硫器45Aのガス出口と酸化器46のガス入口との間の部分に接続してもよい。また、酸化器46が省略される場合等には、燃料電池システム10に対して第2脱硫器45Bに酸素を供給する専用の酸素供給装置が設けられてもよい。
【0046】
更に、上記燃料電池システム10において、酸化器46が酸素と反応して発熱する特性をもった脱酸素触媒を有する場合、
図1において二点鎖線で示すように、当該酸化器46にガス出口側で脱酸素触媒の温度を検出する温度センサ46tを設置し、当該温度センサ46tの検出値に基づいて脱酸素触媒の劣化を判定してもよい。この場合も、エアブロワ47から酸化器46への酸素の供給により脱酸素触媒が発熱した状態で温度センサ46tによって当該酸化器46のガス出口側における脱酸素触媒の温度を取得し、取得した温度と予め定められた閾値(第1および第2閾値)と比較すればよい。
【0047】
また、上記燃料電池システム10において、第1脱硫器45Aが酸素と反応して発熱する特性をもった脱硫剤(例えば、水添脱硫剤以外の脱硫剤)を有する場合、
図1において二点鎖線で示すように、当該第1脱硫器45Aにガス出口側で脱硫剤の温度を検出する温度センサ45t′を設置し、当該温度センサ45t′の検出値に基づいて第1脱硫器45Aの脱硫剤の劣化を判定してもよい。この場合、
図2において二点鎖線で示すように、エアブロワ47と第1脱硫器45Aのガス入口との間に中途に切替バルブを含む分岐管が設置されてもよい。そして、この場合も、エアブロワ47から第1脱硫器45Aへの酸素の供給により脱硫剤が発熱した状態で温度センサ45t′によって当該第1脱硫器45Aのガス出口側における脱硫剤の温度を取得し、取得した温度と予め定められた第1および第2閾値と比較すればよい。
【0048】
更に、
図3の脱硫剤劣化判定ルーチンは、ステップS100において所定時間だけエアブロワ47を作動させるように改変されてもよく、この場合、ステップS160が省略されてもよい。また、
図3の脱硫剤劣化判定ルーチンにおいて、ステップS120およびS140の処理が省略されてもよい。
【0049】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。