(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イミド構造を含むアニオンは、窒素に2つのスルホニル基が結合したスルホニルイミドアニオンまたは窒素に1つのスルホニル基と1つのカルボニル基が結合したスルホニルカルボニルイミドアニオンであることを特徴とする請求項1に記載のイオン導電性固体電解質。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0011】
[イオン導電性固体電解質]
本発明の一実施形態に係るイオン導電性固体電解質は、化学式(1)で表されるP−O系アルカリ金属塩とイミド構造を含むアニオンを有する非P−O系アルカリ金属塩とを含有する。
【0012】
【化2】
(式中、Xは、炭素数4〜20のアルキレン基を示す。Yは、炭素数2〜3のアルキレン基を示す。式中、nは2〜20の整数を示す。Mはリチウムもしくはナトリウムを示す。)
【0013】
また、リチウムイオン導電性固体電解質は、グライムを含まず、または、熱安定性の低下をしない程度の少量のグライムを含んでも良い。例えば、非P−O系アルカリ金属塩に対して0.2モル当量未満含有することが好ましい。グライムを非P−O系アルカリ金属塩に対して0.2モル当量未満含有することで、熱安定性を確保しつつ、イオン導電性の向上を図ることができる。
化学式(1)で表されるP−O系アルカリ金属塩は、固体状態での高いイオン導電性を有するため、グライムの添加を必須としない。そのため、多量のグライム添加による熱安定性の低下を防ぐことができる。
【0014】
(P−O系アルカリ金属塩)
P−O系アルカリ金属塩は、ホスホン酸系アルカリ金属塩、リン酸系アルカリ金属塩、ホスフィン酸系アルカリ金属塩のうちの1種以上である。本発明の一実施形態にかかる化学式(1)で表されるP−O系アルカリ金属塩(以下、「本発明のP−O系アルカリ金属塩」とも言うことがある)は、ホスホン酸系アルカリ金属塩である。
化学式(1)において、Xは、炭素数4〜20のアルキレン基を示す。炭素数が4〜20のアルキレン基としては、例えば、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基およびオクタレン基等のような炭素数4〜20の直鎖アルキレン基が挙げられる。また、1−メチルブチレン基、2−メチルブチレン基、3−メチルブチレン基、4−メチルブチレン基;1−メチルペンチレン基、2−メチルペンチレン基、3−メチルペンチレン基、4−メチルペンチレン基、5−メチルペンチレン基;1−メチルヘキシレン基、2−メチルヘキシレン基、3−メチルヘキシレン基、4−メチルヘキシレン基、5−メチルヘキシレン基、6−メチルヘキシレン基などのような、メチル基の分岐構造を有する炭素数5〜20のアルキレン基が挙げられる。
Xは、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基およびオクタレン基等のような炭素数4〜20の直鎖アルキレン基であることが好ましく、炭素数4〜9の直鎖アルキレン基であることがより好ましい。
Yは、炭素数2〜3のアルキレン基を示す。炭素数2〜3のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基が挙げられる。エチレン基であることが好ましい。
nは2〜20の整数を示す。2〜15の整数であることが好ましく、2〜10の整数であることがより好ましく、5〜8であることが更に好ましい。
Mはリチウムもしくはナトリウムを示す。リチウムであることが好ましい。
【0015】
(非P−O系アルカリ金属塩)
本発明にかかるイミド構造を含むアニオンを有する非P−O系アルカリ金属塩(以下、「本発明の非P−O系アルカリ金属塩」ともいうことがある。)は、イミド構造を含むアニオンを有しP−O系アルカリ金属塩とは異なるものであればよい。すなわち、本発明の非P−O系アルカリ金属塩は、ホスホン酸系アルカリ金属塩、リン酸系アルカリ金属塩、ホスフィン酸系アルカリ金属塩とは異なるものである。
本発明にかかるイミド構造を含むアニオンは、窒素に2つのスルホニル基が結合したスルホニルイミドアニオンまたは窒素に1つのスルホニル基と1つのカルボニル基が結合したスルホニルカルボニルイミドアニオンであることが好ましい。スルホニルイミドアニオンがより好ましい。
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(TFSI) やビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン(BETI)、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(FSI)、フルオロスルホニルトリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン(FTA)、4,4,5,5,−テトラフルオロ−1,3,2−ジチアゾリン−1,1,3,3−テトラオキシドアニオン(CTFSI)等が挙げられる。
スルホニルカルボニルイミドアニオンとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメチルスルホニル)アセトアミドアニオン(TSAC)等が挙げられる。イミド構造を含むアニオンは、有機アニオンであることが好ましい。
本発明の非P−O系アルカリ金属塩は、上述したアニオンと対をなすカチオンとしてアルカリ金属イオンを有している。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが好ましく、リチウムがより好ましい。このアルカリ金属は、本発明のP−O系アルカリ金属塩に含まれるものと同種のものであることが好ましい。
アニオンとカチオンの組み合わせとしては、例えば、LiTFSI、NaTFSI、LiFSI、NaFSIが好ましく、LiTFSIがより好ましい。
【0016】
(グライム)
グライムは、直鎖状の対称グリコールジエーテルの総称であり、例えば、R−O(CH
2CH
2O)
n−Rで表されるものとしてもよい。
【0017】
ここで、Rは、炭素数1〜9のフッ素置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基のいずれかである。nは1〜5である。
【0018】
上記式中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、任意の位置がフッ素で置換されていてもよい。アルキル基の数が9を超えると、グライムの極性が弱くなるため、アルカリ金属塩の溶解性が低下する傾向がある。そのため、アルキル基の炭素数は少ない方が好ましく、好ましくはメチル基およびエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0019】
ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基としては、特に制限はないが、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2,4−ヨードフェニル基等が挙げられる。
【0020】
ハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基としては、特に制限はないが、2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、4−ブロモシクロヘキシル基、2,4−ジブロモシクロヘキシル基、2−ヨードシクロヘキシル基、3−ヨードシクロヘキシル基、4−ヨードシクロヘキシル基、2,4−ジヨードシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
エチレンオキシド単位の繰り返し数を表わすnについては、1〜7が好ましく、より好ましくは2〜8、最も好ましくは4〜6である。
【0022】
グライムは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
(イオン導電性固体電解質の組成)
本発明の一実施形態のイオン導電性固体電解質において、本発明のP−O系アルカリ金属塩及び本発明の非P−O系アルカリ金属塩の割合は、特に限定されるものではない。本発明の非P−O系アルカリ金属塩に対して本発明のP−O系アルカリ金属塩を0.5〜4.0モル当量含むものが好ましく、1.0〜3.0モル当量含むものがより好ましく、1.5〜2.5モル当量含むものがさらに好ましい。
0.5モル当量を下回ると、イオン導電性に必要なアルカリ金属が少ないため所望のイオン導電性を確保することが出来ない。また、4.0モル当量を越えると、濃度が高すぎてイオン解離できないP−O系アルカリ金属塩が生じるため、それが抵抗となり所望のイオン導電性を確保することが出来ない。
【0024】
本発明の一実施形態のP−O系アルカリ金属塩は、固体状態での高いイオン導電性を有するため、イオン導電性固体電解質においてグライムが含まなくても(グライム・フリー)、高いイオン導電性を有することができる。グライム・フリーの本実施形態のイオン導電性固体電解質は、グライム添加による熱安定性の低下を防ぎ、高いイオン導電性と高い熱安定性を同時に実現することができる。
【0025】
本発明のその他の実施形態のイオン導電性固体電解質において、本発明のP−O系アルカリ金属塩及び本発明の非P−O系アルカリ金属塩の割合は特に限定されるものではない。本発明の非P−O系アルカリ金属塩に対して本発明のP−O系アルカリ金属塩を0.5〜4.0モル当量含むものが好ましく、1.0〜3.0モル当量含むものがより好ましく、1.5〜2.5モル当量含むものがさらに好ましい。グライムを含んでもよい。グライムを前記非P−O系アルカリ金属塩に対して0.2モル当量未満含有することが好ましい。0.15モル当量以下含有することがより好ましく、0.10モル当量以下含有することがさらに好ましく、0.05モル当量以下含有することが特に好ましい。例えば、グライムを前記非P−O系アルカリ金属塩に対して0.001〜0.18モル当量、好ましく0.01〜0.15モル当量、より好ましく0.01〜0.10モル当量、さらに好ましく0.01〜0.05モル当量含有する。
0.2モル当量以上含有すると、グライム添加による熱安定性の低下が大きくなり、所望の熱安定性を得ることが困難となる。また、グライムは液体であるため、0.2モル当量以上含有すると流動性が発現し、固体状態の維持が困難となる。
本発明のP−O系アルカリ金属塩は、固体状態での高いイオン導電性を有するため、イオン導電性固体電解質において多量のグライムが含まなくても、高いイオン導電性を有することができる。上記のように、固体電解質の熱安定性に影響しない程度の少量グライムを含有する本実施形態のイオン導電性固体電解質は、熱安定性を確保しつつ、イオン導電性の向上を図ることができる。
【0026】
(イオン導電性固体電解質の製造方法)
本発明の一実施形態のイオン導電性固体電解質の製法としては、例えば、本発明のP−O系アルカリ金属塩と、本発明の非P−O系アルカリ金属塩とを含む原料を混合して得られたものとしてもよい。特に混合方法等に制限はない。混合の際は、水の混入を防ぐために露点−80℃以下の大気下あるいは不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の雰囲気下で混合することが好ましい。より好ましくはアルゴンガス雰囲気下である。混合する際の温度は20〜80℃が好ましい。また、必要に応じてアルカリ金属塩を溶解させるために、スターラー等を用いて攪拌してもよい。
また、例えば、本発明のP−O系アルカリ金属塩に代えて、アルカリ金属が導入されていない、対応するP−O系アルカリ金属化合物を用いてもよい。この場合、対応するP−O系アルカリ金属化合物にアルカリ金属を導入して本発明のP−O系アルカリ金属塩とするため、アルカリ金属化合物を原料に追加することが好ましい。アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウムなどを好適に用いることができる。こうしたものは、対応するP−O系アルカリ金属化合物と、本発明の非P−O系アルカリ金属塩と、アルカリ金属化合物とを混合して得られたものとしてもよい。また、対応するP−O系アルカリ金属化合物と、本発明の非P−O系アルカリ金属塩とを混合して得られたものに、アルカリ金属化合物を加えてアルカリ金属を導入して得られたものとしてもよい。
【0027】
原料を混合する際には、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エタノール、メタノール、アセトン、N−メチルピロリドンなどの溶媒を用いてもよい。
【0028】
本発明のその他の実施形態のイオン導電性固体電解質の製法としては、例えば、本発明のP−O系アルカリ金属塩と、本発明の非P−O系アルカリ金属塩と、一定少量のグライムと、を含む原料を混合して得られたものとしてもよい。また、例えば、本発明のP−O系アルカリ金属塩であるホスホン酸系アルカリ金属塩に代えて、アルカリ金属が導入されていない、ホスホン酸系化合物を用いてもよい。この場合、ホスホン酸系化合物にアルカリ金属を導入してホスホン酸系アルカリ金属塩とするため、アルカリ金属化合物を原料に追加することが好ましい。アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウムなどを好適に用いることができる。こうしたものは、本発明のP−O系化合物と、本発明の非P−O系アルカリ金属塩と、一定少量のグライムと、アルカリ金属化合物とを混合して得られたものとしてもよい。また、本発明のP―O系化合物と、本発明の非P−O系アルカリ金属塩と、一定少量のグライムとを混合して得られたものに、アルカリ金属化合物を加えてアルカリ金属を導入して得られたものとしてもよい。
【0029】
(イオン導電性固体電解質層の形成方法)
本発明のそれぞれの実施形態のイオン導電性固体電解質から、イオン導電性固体電解質層を形成する方法は特に限定されない。
【0030】
例えば、電極間に積層される電解質層またはその一部(電解質層厚さの半分程度の電解質膜)を準備する方法がある。この場合には、イオン導電性固体電解質を含む溶液(例えば、アセトニトリルの溶液)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルムなど適当なフィルム上に塗布し、不活性雰囲気下で加熱乾燥、あるいは真空乾燥機(真空オーブン)することによって製造される。
【0031】
あるいは、セパレーターに、例えば、イオン導電性固体電解質を含む溶液を含浸させ、加熱乾燥、あるいは真空乾燥機(真空オーブン)することによって製造される。
【0032】
乾燥の条件は溶液に応じて決定され、一義的に規定できないが、例えば、通常は30〜110℃で0.5〜15時間である。また、アセトニトリルのような揮発性の溶媒を使用する場合、加熱乾燥の前に、自然乾燥させて溶媒を揮発されることが好ましい。
【0033】
<イオン導電性>
本発明のイオン導電性固体電解質において、高い熱安定性と高いイオン導電性が同時に発現することができる。こうした効果が得られる理由は、まだ未解明であるが、以下のように推察される。
本発明のP−O系アルカリ金属塩と本発明の非P−O系アルカリ金属塩とからなるイオン導電性固体電解質において、アルカリ金属イオンが以下のように伝導すると考えられる。
ステップ(1):イミド構造を含むアニオンを有する非P−O系アルカリ金属塩がアルカリ金属イオンとイミド構造を含むアニオンに解離する。
ステップ(2):生じたアルカリ金属イオンがエチレンオキシド(本発明のP−O系アルカリ金属塩中に存在)に移動する。
ステップ(3):エチレンオキシドのセグメント運動によってアルカリ金属イオンが伝導する。
このようなイオン導電性固体電解質のイオン導電性は、P−O系アルカリ金属塩のP原子に結合するアルキレン基Xの長さ(化学式(1)において、Xの炭素数)に依存する。ここでは、本発明の非P−O系アルカリ金属塩はLiTFSIであり、P−O系アルカリ金属塩はホスホン酸系リチウム塩(化学式(1)において、Yはエチレン、nは4の整数、Mはリチウムを示す。)である場合を例として説明する。
TFSIアニオンの1つのスルホニル基が、ホスホン酸系リチウム塩のLi
+カチオンと相互作用(配位結合)することで、この複合塩構造が安定化される。この相互作用により、TFSIアニオンの負電荷密度が分散され低下する為に、TFSIアニオンからエチレンオキサイドへのLi
+の移動性(解離性)が向上する。
(A)Xの炭素数が1〜3の場合
例えば、化学式(2)に示すように、ステップ(1)、(2)は生じるものの、TFSIアニオンとエチレンオキシドの距離が近すぎて一度解離したリチウムイオン(Li
+)がTFSIアニオンと再結合してしまう。その結果、Li
+のイオン伝導度が低下する。
【0035】
(B)Xの炭素数が4〜20の場合(本発明のP−O系アルカリ金属塩)
例えば、化学式(3)に示すように、ステップ(1)、(2)の後、TFSIアニオンとエチレンオキサイドの距離が適度に保たれ、リチウムイオン(Li
+)とTFSIアニオンとの再結合が生じない。その結果、ステップ(3)によってLi
+のイオン伝導度が向上する。
【0037】
(C)Xの炭素数が21以上の場合
化学式(4)に示すように、TFSIアニオンとエチレンオキサイドの距離が遠すぎてTFSIアニオンからエチレンオキサイドへのリチウムイオン(Li
+)の移動が生じない(ステップ(2)が生じない。)。その結果、Li
+のイオン伝導度が低下する。
【0039】
[全固体アルカリ金属イオン二次電池]
図1は、本発明の一実施形態に係る全固体アルカリ金属イオン二次電池の要部を拡大した断面模式図である。
図1に示すように、全固体アルカリ金属イオン二次電池10は、第1電極層1と第2電極層2と固体電解質層3とを有する積層体4を備える。第1電極層1と第2電極層2は、一対の電極をなす。
【0040】
第1電極層1はそれぞれ第1外部端子5に接続され、第2電極層2はそれぞれ第2外部端子6に接続されている。第1外部端子5と第2外部端子6は、外部との電気的な接点である。
【0041】
(積層体)
積層体4は、第1電極層1と第2電極層2と固体電解質層3とを有する。第1電極層1と、第2電極層2は、いずれか一方が正極層として機能し、他方が負極層として機能する。電極層の正負は、外部端子にいずれの極性を繋ぐかによって変化する。以下、理解を容易にするために、第1電極層1を正極層1とし、第2電極層2を負極層2とする。
【0042】
積層体4において正極層1と負極層2は、固体電解質層3を介して交互に積層されている。正極層1と負極層2の間で固体電解質層3を介したアルカリ金属イオンの授受により、全固体アルカリ金属イオン二次電池10の充放電が行われる。
【0043】
(正極層および負極層)
正極層1は、正極集電体層1Aと、正極活物質を含む正極活物質層1Bとを有する。負極層2は、負極集電体層2Aと、負極活物質を含む負極活物質層2Bとを有する。
【0044】
(集電体層)
正極集電体層1A及び負極集電体層2Aは、導電率が高いことが好ましい。そのため、正極集電体層1A及び負極集電体層2Aは、例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、ニッケル等の低抵抗金属を含むことが好ましい。これらの低抵抗金属の中でも、アルミニウムや銅は正極活物質、負極活物質及び固体電解質と反応しにくい。そのため、アルミニウムや銅を含む正極集電体層1A及び負極集電体層2Aを用いると、全固体アルカリ金属イオン二次電池10の内部抵抗を長期間にわたって低減することができる。正極集電体層1Aと負極集電体層2Aの組成は、同一でもよいし、異なってもよい。
正極集電体層1A及び負極集電体層2Aは、それぞれ後述する正極活物質及び負極活物質を含んでもよい。それぞれの集電体層に含まれる活物質の含有比は、集電体として機能する限り特に限定はされない。例えば、低抵抗金属/正極活物質、または低抵抗金属/負極活物質が体積比率で90/10から70/30の範囲であることが好ましい。
正極集電体層1A及び負極集電体層2Aがそれぞれ正極活物質及び負極活物質を含むことにより、正極集電体層1Aと正極活物質層1B及び負極集電体層2Aと負極活物質層2Bとの密着性が向上する。
【0045】
(正極活物質層)
正極活物質層1Bは、正極集電体層1Aの片面または両面に形成される。正極活物質層1Bは、正極活物質、正極用バインダー、及び、必要に応じた量の正極用導電助剤から主に構成されるものである。
正極活物質層1Bに用いる正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンとリチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF
6−)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能な電極活物質を用いることができる。
例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
xCo
yMn
zM
a2(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMPO
4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、LiNi
xCo
yAl
zO
2(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物が挙げられる。
正極活物質層1Bにおける正極活物質の構成比率は、質量比で80%以上90%以下であることが好ましい。また正極活物質層1Bにおける正極用導電助剤の構成比率は、質量比で0.5%以上10%以下であることが好ましく、正極活物質層1Bにおけるバインダーの構成比率は、質量比で0.5%以上10%以下であることが好ましい。
【0046】
正極用バインダーは、活物質同士を結合すると共に、活物質と正極集電体1Aとを結合する。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。
また、上記の他に、バインダーとして、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFPTFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
また、バインダーとして電子導電性の導電性高分子やイオン導電性の導電性高分子を用いてもよい。電子導電性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電材の機能も発揮するので導電材を添加しなくてもよい。イオン導電性の導電性高分子としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等の高分子化合物にリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。
【0047】
正極用導電助剤は、正極活物質層1Bの導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
【0048】
(負極活物質層)
負極活物質層2Bは、負極活物質を有し、必要に応じて負極バインダーと負極用導電助剤とをさらに有する。
負極活物質はリチウムイオンを吸蔵・放出可能な化合物であればよく、公知のリチウム二次電池用の負極活物質を使用できる。負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノチューブ、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、アルミニウム、シリコン、スズ等のリチウムと化合することのできる金属、SiO
x(0<x<2)、二酸化スズ等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)等を含む粒子が挙げられる。
【0049】
負極用導電助剤としては、例えば、カーボンブラック類等のカーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
【0050】
負極に用いるバインダーは正極と同様のものを使用できる。またこの他に、バインダーとして、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂等を用いてもよい。
【0051】
負極活物質層2B中の負極活物質、導電材及びバインダーの含有量は特に限定されない。負極活物質層2Bにおける負極活物質の構成比率は、質量比で70%以上98%以下であることが好ましい。また負極活物質層2Bにおける導電材の構成比率は、質量比で1%以上20%以下であることが好ましく、負極活物質層2Bにおけるバインダーの構成比率は、質量比で1%以上10%以下であることが好ましい。
負極活物質とバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、得られた負極活物質層2Bにおいて、バインダーの量が少なすぎて強固な負極活物質層を形成できなくなる傾向を抑制できる。また、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
【0052】
(固体電解質層)
固体電解質層3は、正極層1と負極層2との間に設けられる。固体電解質層3は、上述のイオン導電性固体電解質を含む。上述のイオン導電性固体電解質を含むことによって、固体電解質層3のアルカリ金属イオン導電性と熱安定性が高くなるので、本実施形態の全固体アルカリ金属イオン二次電池は熱安定性が高くなる。
【0053】
(外部端子)
全固体アルカリ金属イオン二次電池10の第1外部端子5及び第2外部端子6は、導電率が大きい材料を用いることが好ましい。例えば、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズ、ニッケルを用いることができる。第1外部端子5と第2外部端子6)とは同じ材料により構成されていてもよいし、異なる材料により構成されていてもよい。外部端子は、単層でも複数層でもよい。
【0054】
(保護層)
また全固体アルカリ金属イオン二次電池10は、積層体4や端子を電気的、物理的、化学的に保護する保護層を積層体4の外周に有してもよい。保護層を構成する材料としては絶縁性、耐久性、耐湿性に優れ、環境的に安全であることが好ましい。たとえば、ガラスやセラミックス、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いるのが好ましい。保護層の材料は1種類だけでも良いし、複数を併用してもよい。また、保護層は単層でもよいが、複数層備えていた方が好ましい。その中でも熱硬化性樹脂とセラミックスの粉末を混合させた有機無機ハイブリットが特に好ましい。
【0055】
(全固体アルカリ金属イオン二次電池の製造方法)
まず積層体4を構成する正極集電体層1A、正極活物質層1B、固体電解質層3、負極活物質層2B、及び負極集電体層2Aの各材料をペースト化する。
【0056】
ペースト化の方法は、特に限定されない。例えば、ビヒクルに各材料の粉末を混合してペーストが得られる。ここで、ビヒクルとは、液相における媒質の総称である。ビヒクルには、一般に溶媒、分散剤、バインダーが含まれる。かかる方法により、正極集電体層1A用のペースト、正極活物質層1B用のペースト、固体電解質層3用のペースト、負極活物質層2B用のペースト、及び負極集電体層2A用のペーストを作製する。
【0057】
次いで、グリーンシートを作製する。グリーンシートは、作製したペーストをPET(ポリエチレンテレフタラート)などの基材上に所望の順序で塗布し、必要に応じ乾燥させた後、基材を剥離し、得られる。ペーストの塗布方法は、特に限定されない。例えば、スクリーン印刷、塗布、転写、ドクターブレード等の公知の方法を採用することができる。
【0058】
作製したそれぞれのグリーンシートは、所望の順序、積層数で積み重ねられる。必要に応じアライメント、切断等を行い、グリーンシート積層体を作製する。並列型または直並列型の電池を作製する場合は、正極層の端面と負極層の端面が一致しないようにアライメントを行い積み重ねるのが好ましい。
【0059】
グリーンシート積層体は、以下に説明する正極ユニット及び負極ユニットを用いて作製してもよい。
【0060】
正極ユニットは、固体電解質層3/正極活物質層1B/正極集電体層1A/正極活物質層1Bがこの順で積層されたユニットである。この正極ユニットは、次のようにして作製することができる。まずPETフィルム上に固体電解質層形成用ペーストをドクターブレード法でシート状に形成し、乾燥して固体電解質層3を形成する。次に、形成した固体電解質層3に、正極活物質層1B用ペーストを印刷し乾燥して、正極活物質層1Bを形成する。
【0061】
次に、形成した正極活物質層1B上に、スクリーン印刷により正極集電体形成用ペーストを印刷し乾燥して、正極集電体層1Aを形成する。次に、形成した正極集電体層1A上に、スクリーン印刷により正極活物質層1B用ペーストを再度印刷し、乾燥して正極活物質層1Bを形成する。そして、PETフィルムを剥離することで正極活物質層ユニットを作製する。
【0062】
負極ユニットは、固体電解質層3/負極活物質層2B/負極集電体層2A/負極活物質層2Bがこの順に積層されたユニットである。この負極ユニットは、上記の正極ユニットと同様の手順にて、固体電解質層3、負極活物質層2B、負極集電体層2A、および負極活物質層2Bを形成することによって作製することができる。
【0063】
正極ユニットと負極ユニットを積層してグリーンシート積層体を作製する。この際、正極ユニットの固体電解質層3と負極ユニットの負極活物質層2B、もしくは正極ユニットの正極活物質層1Bと負極ユニットの固体電解質層3とが接するように積層する。これによって、正極活物質層1B/正極集電体層1A/正極活物質層1B/固体電解質層3/負極活物質層2B/負極集電体層2A/負極活物質層2B/固体電解質層3がこの順で積層されているグリーンシート積層体が得られる。正極ユニットの正極集電体層1Aが一の端面にのみ延出し、負極ユニットの負極集電体層2Aが他の面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねる。作製されたグリーンシート積層体の両面には、所定厚みの固体電解質層3用シートをさらに積み重ねてもよい。
【0064】
作製したグリーンシート積層体を一括して圧着する。圧着は加熱しながら行う。加熱温度は、例えば、40〜95℃とする。
【0065】
(端子形成)
得られた積層体に第1外部端子5と第2外部端子6をつける。第1外部端子5及び第2外部端子6は、正極集電体層1Aと負極集電体層2Aにそれぞれ電気的に接触するよう形成する。例えば、積層体の側面から露出した正極集電体層1Aと負極集電体層2Aに対しスパッタ法、ディッピング法、スプレーコート法等の公知の方法を用いることにより形成できる。所定の部分にのみ形成する場合は、例えばテープにてマスキング等を施して形成する。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例】
【0067】
以下に示す手順により、実施例1〜15および比較例1〜7のイオン導電性固体電解質を作製し、イオン導電性評価を行った。また、熱安定性評価を行った。
【0068】
なお、実施例1〜15、比較例1に用いた化合物について、表1に示した。具体的には、化学式(1)で表されるP−O系アルカリ金属塩化合物としては、化合物No.と、化学式(1)のX、YおよびMにそれぞれ該当する構造式およびnを記載した。
【0069】
【化6】
〔化学式(1)において、Xは、炭素数4〜12のアルキレン基を示す。Yは、炭素数2〜3のアルキレン基を示す。式中、nは2〜20の整数を示す。Mはリチウムもしくはナトリウムを示す。〕
【0070】
また、比較例2〜7に用いた化合物について、表1に示した。具体的には、化学式(1)で表されるP−O系アルカリ金属塩化合物としては、化合物No.と、化学式(1)のX、YおよびMにそれぞれ該当する構造式およびnを記載した。
【0071】
【化7】
〔化学式(1)において、Xは、炭素数3、6、もしくは22のアルキレン基を示す。Yは、炭素数1、2、もしくは4のアルキレン基を示す。式中、nは1、6、もしくは22の整数を示す。Mはリチウムを示す。〕
【0072】
「本発明のP−O系アルカリ金属塩化合物の合成」
(合成例1)
化合物No.1の合成方法を以下に示す。
【0073】
【化8】
【0074】
(合成例2〜11)
化合物No.1と同様の方法で化合物No.2〜11を合成した。それぞれの構造は表1に示す。
【0075】
(合成例12)
LiOHの代わりにNaOHを用いたこと以外は、化合物No.1と同様の方法で化合物No.12を合成した。その構造は表1に示す。
【0076】
(合成例13〜18)
化合物No.1と同様の方法で化合物No.13〜18を合成した。それぞれの構造は表1に示す。
【0077】
(実施例1)
<イオン導電性固体電解質の作製>
本発明のP−O系アルカリ金属塩としては、合成例1で得られた化合物No.1を使用し、本発明の非P−O系アルカリ金属塩としては、以下の化学式(6)で示すリチウム塩(以下LiTFSIと称する)を使用した。
【0078】
【化9】
【0079】
グローブボックス内で、合成例1で得られた化合物No.1とLiTFSIとのモル比が1:0.5となるよう混合した。本実施例のイオン導電性固体電解質を作製した。
【0080】
<イオン伝導度測定>
まず、グローブボックス内でイオン導電性固体電解質の溶液を作製した。具体的には、化合物No.1の化合物0.1gとLiTFSI0.032gとを含有するイオン導電性固体電解質を5mlのアセトニトリルに溶解させた。
【0081】
次に、イオン伝導度測定用のサンプルを作製した。直径10mm、厚さ30μmのガラスフィルターに前記溶液を十分含浸させ、自然乾燥させてアセトニトリルを揮発させた後、ガラスフィルター内に固体電解質を充填した。さらに、80℃で12時間真空乾燥した。これを直径10mmのステンレス製電極で挟み測定サンプルとした。そのときの固体電解質の膜厚を測定後、25℃においてインピーダンス測定を行った。このインピーダンス測定は、振幅電圧を100mVにして、1MHz−0.1Hzの間で0.5pts/secで行った。得られたCole−Coleプロットより抵抗値(R)を求めた。この値(R)と膜厚t(cm)及び電極面積S(cm
2)から、次式に従いイオン伝導度σ(Scm
−1)を算出した。
σ=1/R × t/S
その結果を表1に示す。
【0082】
<熱安定性評価>
イオン導電性固体電解質の熱安定性の評価は、Seiko Instrument社製 TG/DTA6200を用いた熱重量測定により行った。測定は、昇温速度を10℃/minとして室温から400℃まで昇温させ、5%重量減少する時の温度(℃)を求める方法と、温度を100℃に固定して、10%重量減少するまでの時間を求める方法で行った。その結果を表1に示す。
【0083】
(実施例2〜11)
合成例2〜11で得られた化合物No.2〜11をそれぞれ用いる以外に、実施例1と同様に、実施例2〜11のイオン導電性固体電解質を作製した。
【0084】
(実施例12)
合成例12で得られた化合物No.12を用い、LiTFSIの代わりに、以下に示すNaTFSIを用いる以外に、実施例1と同様に、本実施例のイオン導電性固体電解質を作製した。
【0085】
【化10】
【0086】
実施例1と同様の方法で、得られたイオン導電性固体電解質を評価した。それぞれのイオン伝導度及び熱安定性評価の結果を表1に示す。
【0087】
(実施例13)
合成例2で得られた化合物No.2を用い、グライムとしてはLiTFSIに対する0.05モル当量の以下に示すトリエチルグリコールジメチルエーテル(以下グライム(G3)と称する)を添加する以外に、実施例1と同様に、本実施例のイオン導電性固体電解質を作製した。
【0088】
【化11】
【0089】
実施例1と同様の方法で、得られたイオン導電性固体電解質を評価した。イオン伝導度及び熱安定性評価の結果を表1に示す。
【0090】
(実施例14)
LiTFSIに対する0.1モル当量のグライム(G3)を添加する以外に、実施例13と同様に、本実施例のイオン導電性固体電解質を作製した。
実施例1と同様の方法で、得られたイオン導電性固体電解質を評価した。イオン伝導度及び熱安定性評価の結果を表1に示す。
【0091】
(実施例15)
LiTFSIに対する0.15モル当量のグライム(G3)を添加する以外に、実施例13と同様に、本実施例のイオン導電性固体電解質を作製した。
実施例1と同様の方法で、得られたイオン導電性固体電解質を評価した。イオン伝導度及び熱安定性評価の結果を表1に示す。
【0092】
(比較例1)
LiTFSIに対する0.2モル当量のグライム(G3)を添加する以外に、実施例13と同様に、本比較例のイオン導電性固体電解質を作製した。
実施例1と同様の方法で、得られたイオン導電性固体電解質を評価した。イオン伝導度及び熱安定性評価の結果を表1に示す。
【0093】
(比較例2)
合成例13で得られた化合物No.13を用いる以外に、実施例1と同様に、本比較例のイオン導電性固体電解質を作製した。
実施例1と同様の方法で、得られたイオン導電性固体電解質を評価した。イオン伝導度及び熱安定性評価の結果を表1に示す。
【0094】
(比較例3〜7)
合成例14〜18で得られた化合物No.14〜18をそれぞれ用いる以外に、実施例1と同様に、比較例3〜7のイオン導電性固体電解質を作製した。
実施例1と同様の方法で、得られたイオン導電性固体電解質を評価した。それぞれのイオン伝導度及び熱安定性評価の結果を表1に示す。
【0095】
【表1】