(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870425
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】軸継手装置
(51)【国際特許分類】
F16D 3/62 20060101AFI20210426BHJP
F16D 3/70 20060101ALI20210426BHJP
F16D 3/26 20060101ALI20210426BHJP
F16D 3/38 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
F16D3/62 B
F16D3/70 Z
F16D3/26 X
F16D3/38 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-65835(P2017-65835)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168922(P2018-168922A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西塔 諒
(72)【発明者】
【氏名】梶川 靖史
【審査官】
古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
実開平4−107522(JP,U)
【文献】
実開昭62−117328(JP,U)
【文献】
実開昭53−036650(JP,U)
【文献】
実開平06−018734(JP,U)
【文献】
実開平01−072466(JP,U)
【文献】
韓国公開特許第10−2007−0034708(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/26
F16D 3/38
F16D 3/58
F16D 3/62
F16D 3/70
F16D 3/76
F16D 3/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の回転軸を連結する軸継手装置であって、
前記2本の回転軸の間に配置された伝達軸部と、
一方の前記回転軸の端部と前記伝達軸部の一端部とを連結している継手部と、を備え、
前記継手部は、前記一方の回転軸から前記伝達軸部に向かって、第1軸体、第2軸体、及び継手をこの順に配置して構成され、
前記第1軸体は、その軸心を中心として軸方向に貫通して形成された中心孔を有し、
前記第2軸体は、その軸心を中心として前記第1軸体側に突出し、前記中心孔にその一方の開口から挿入された中心軸を有し、
前記中心軸は、前記中心孔に対して軸方向に相対移動可能であり、かつ軸方向以外の方向への相対移動が規制されるように、前記中心孔に挿入されており、
前記第1軸体及び前記第2軸体は、弾性部材を介して連結され、
前記継手は、前記中心軸に近接して配置された十字軸継手であり、一対のヨークと、これら一対のヨークを連結している十字軸と、を有しており、
一方の前記ヨークが前記第2軸体に接続された第1接続部とされ、他方の前記ヨークが前記伝達軸部の前記一端部に接続された第2接続部とされている、軸継手装置。
【請求項2】
前記中心孔の他方の開口は、蓋部材により塞がれている、請求項1に記載の軸継手装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸継手装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道車両におけるディーゼル機関車等の気動車は、その主機を駆動するエンジンから、定速回転装置を介して発電機や冷却装置等の補機に回転力を伝達することで、これらの補機を駆動するようになっている。エンジンの出力軸(駆動軸)と、定速回転装置の入力軸(従動軸)とは軸継手を介して連結されており、軸継手には、エンジンのトルク変動及び回転変動を吸収する機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3に示すように、特許文献1に記載された軸継手100は、第1軸部材101、第2軸部材102、駆動軸121と第1軸部材101とを繋ぐ第1継手103、従動軸122と第2軸部材102とを繋ぐ第2継手104、及び第1軸部材101と第2軸部材102とを結合する弾性カップリング105を備えている。弾性カップリング105は、駆動軸121側(エンジン側)である第1軸部材101と、従動軸122側(補機側)である第2軸部材102との間に介在しており、弾性カップリング105が弾性変形することで、エンジンのトルク変動等を吸収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−85931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の軸継手100では、第1軸部材101と第2軸部材102との同軸性を保つために、第1軸部材101に突設された中心軸106を、第2軸部材102に形成された有底の中心孔107に挿入している。しかし、この中心孔107は有底の孔であるため、中心軸106を中心孔107に挿入する際に、中心孔107内の空気を外部へ排出するための隙間を、中心軸106と中心孔107との間に形成しなければならない。このため、前記隙間を大きく形成すると、第1軸部材101と第2軸部材102との同軸性を保つことが困難となる。
【0006】
そこで、
図4に示すように、中心孔107を、第2軸部材102を軸方向に貫通した貫通孔とし、この中心孔107の一端側(駆動軸121側)の開口107aから中心軸106を挿入したときに、中心孔107の他端側(従動軸122側)の開口107bから中心孔107内の空気を外部へ逃がすことが考えられる。しかし、この場合、中心孔107に中心軸106を挿入した後、中心孔107の開口107bから異物が侵入するのを防止するために、開口107bをプラグ等の蓋部材108によって塞ぐ必要がある。そうすると、蓋部材108が中心孔107から万が一脱落した場合、蓋部材108が第2継手104と干渉することで、第2継手104の円滑な回転が阻害されるおそれがある。
【0007】
このような問題は、第1軸部材101に貫通孔からなる中心孔を形成し、第2軸部材102に中心軸を設けた場合であっても生じるおそれがある。すなわち、第1軸部材101の中心孔における第1継手103側の開口を塞ぐ蓋部材が脱落すると、蓋部材が第1継手103と干渉することで、第1継手103の円滑な回転が阻害されるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、継手の円滑な回転を阻害することなく、中心孔を有する構成部材と、前記中心孔に挿入される中心軸を有する構成部材との同軸性を保つことができる軸継手装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2本の回転軸を連結する軸継手装置であって、前記2本の回転軸の間に配置された伝達軸部と、一方の前記回転軸の端部と前記伝達軸部の一端部とを連結している継手部と、を備え、前記継手部は、前記一方の回転軸から前記伝達軸部に向かって、第1軸体、第2軸体、及び継手をこの順に配置して構成され、前記第1軸体は、その軸心を中心として軸方向に貫通して形成された中心孔を有し、前記第2軸体は、その軸心を中心として前記第1軸体側に突出し、前記中心孔にその一方の開口から挿入された中心軸を有し、前記継手は、前記第2軸体に接続された第1接続部と、前記伝達軸部の前記一端部に接続された第2接続部と、を有している。
【0010】
本発明によれば、第2軸体の中心軸が挿入される中心孔は、第1軸体を軸方向に貫通して形成されているので、中心孔の前記一方の開口から中心軸を挿入する際に、中心孔の他方の開口から中心孔内の空気を外部へ逃がすことができる。これにより、従来のように、中心軸と中心孔との間に中心孔内の空気を逃がすための隙間を形成する必要がないため、第1軸体と第2軸体との同軸性を保つことができる。
【0011】
また、一方の回転軸から伝達軸部に向かって、第1軸体、第2軸体、及び継手がこの順に配置され、継手の第1及び第2接続部はそれぞれ第2軸体及び伝達軸部に接続されている。このため、第1軸体が有する中心孔の前記他方の開口は、前記一方の回転軸に向かって開口し、継手に向かって開口することはない。したがって、中心孔の前記他方の開口に何らかの部材が取り付けられている場合に、その部材が中心孔から脱落しても継手とは干渉しないので、継手の円滑な回転が阻害されることはない。
【0012】
前記中心孔の他方の開口は、蓋部材により塞がれているのが好ましい。この場合、中心孔の他方の開口から異物が侵入するのを蓋部材により防止することができる。また、蓋部材が中心孔から脱落しても継手とは干渉しないので、蓋部材の脱落に起因して継手の円滑な回転が阻害されることはない。
【0013】
前記継手が、一対のヨークと、これら一対のヨークを連結している十字軸と、を有する十字軸継手であり、一方の前記ヨークが前記第1接続部とされ、他方の前記ヨークが前記第2接続部とされている場合、上記のように中心孔から脱落した部材は継手と干渉しないので、十字軸継手の円滑な回転が阻害されることはない。
【0014】
前記第1軸体及び前記第2軸体は、弾性部材を介して連結されているのが好ましい。この場合、弾性部材が弾性変形することで、第1軸体及び第2軸体の一方の軸体の振動が他方の軸体に伝わるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、継手の円滑な回転を阻害することなく、中心孔を有する構成部材と、前記中心孔に挿入される中心軸を有する構成部材との同軸性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る軸継手装置を備えた駆動機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る軸継手装置を備えた駆動機構の説明図である。この駆動機構10は、例えば鉄道車両の駆動機構として用いられるものである。鉄道車両としては、ディーゼル機関車等の気動車が挙げられる。
【0018】
駆動機構10は、例えば鉄道車両の床下に取り付けられており、鉄道車両の主機を稼働するのに必要な付属機器を含む。一例として、駆動機構10は、エンジン11、変速機12、減速機13、定速回転装置(CSU;Constant Speed Unit)14、冷却装置15、及び交流発電機16を備えている。エンジン11と変速機12とは一体に取り付けられている。変速機12と減速機13とは、推進軸21で接続されている。
【0019】
エンジン11と定速回転装置14とは補機軸22で接続されている。定速回転装置14と冷却装置15とは補機軸23で接続されている。定速回転装置14と交流発電機16とは補機軸24で接続されている。これらの補機軸22〜24のうち、エンジン11と定速回転装置14とを接続している補機軸22に、本実施形態の軸継手装置30が設けられている。
【0020】
図2は、補機軸22の説明図である。補機軸22は、第1回転軸25と、第2回転軸26と、これらの回転軸25,26を連結する軸継手装置30とを含む。本実施形態では、第1回転軸25はエンジン11の出力軸であり、第2回転軸26は定速回転装置14の入力軸である。
なお、以下の説明において、軸方向の位置に関して「エンジン側」及び「CSU側」という用語を用いる。エンジン側は
図2では左側であり、CSU側は
図2では右側である。
【0021】
軸継手装置30は、伝達軸部31、第1継手部32、及び第2継手部33を備えている。伝達軸部31は、例えば円筒形状の部材からなり、第1回転軸25と第2回転軸26との間に配置されている。第1継手部32は、第1回転軸25の端部25aと伝達軸部31の一端部31aとを連結している。第2継手部33は、第2回転軸26の端部26aと伝達軸部31の他端部31bとを連結している。
【0022】
第2継手部33は、第2継手51、及び連結部材52により構成されている。第2継手51は、例えば十字軸継手であり、一対のヨーク51a,51bと、これら一対のヨーク51a,51bを連結している十字軸51cとを有している。一方のヨーク51aは、伝達軸部31の他端部31bに接続されている。他方のヨーク51bは、連結部材52に接続されている。なお、本実施形態の第2継手51は、十字軸継手であるが、トリポードジョイント(TJ)や等速ジョイント(CVJ)等の他の継手であってもよい。
【0023】
連結部材52は、円筒形状に形成されており、軸方向両端部にそれぞれフランジ部52a,52bを有している。エンジン側のフランジ部52aには、他方のヨーク51bが接続され、CSU側のフランジ部52bには、第2回転軸26の端部26aが接続されている。以上より、第2継手部33は、第2回転軸26の端部26aと伝達軸部31の他端部31bとを連結した状態で、第2回転軸26の軸心C2に対する伝達軸部31の軸心C3の変位を許容している。
【0024】
第1継手部32は、第1回転軸25から伝達軸部31に向かって、第1軸体34、第2軸体35、及び第1継手36を、この順に配置して構成されている。第1軸体34は、円軸体からなり、その軸心は第1回転軸25の軸心C1上に配置されている。第1軸体34は、エンジン側の端部に形成されたフランジ部34aと、CSU側の端部に形成された大径部34bとを有している。フランジ部34aは、第1回転軸25の端部25aに接続されている。また、第1軸体34は、その軸心を中心として軸方向に貫通して形成された中心孔37を有している。
【0025】
第2軸体35は、円軸体からなり、その軸心は伝達軸部31の軸心C3上に配置されている。第2軸体35のエンジン側の端部にはフランジ部35aが形成されている。第2軸体35のエンジン側の端面は、第1軸体34のCSU側の端面に対向している。第2軸体35のCSU側の端部には、第1継手36が接続されている。
【0026】
第2軸体35には、その軸心を中心として軸方向に貫通する取付孔35bが形成されている。この取付孔35bには、中心軸39のCSU側の端部が内嵌して固定されている。これにより、第2軸体35は、その軸心を中心としてエンジン側の端部からエンジン側に突出する中心軸39を有している。なお、中心軸39は、第2軸体35と一体に形成されていてもよい。
【0027】
中心軸39における第2軸体35よりもエンジン側に突出している部分は、第1軸体34の中心孔37のCSU側の開口37aから中心孔37内に挿入されている。これにより、第1軸体34及び第2軸体35は、同じ軸心C1上に配置されている。中心軸39は、中心孔37に対して軸方向に相対移動可能であり、かつ軸方向以外の相対的な移動が規制されている。これにより、中心軸39は、中心孔37に対して軸方向への相対移動のみ可能とされている。
【0028】
中心孔37のCSU側の端部には、前記開口37aを有する大径孔部37bが形成されている。この大径孔部37bには、第2軸体35のエンジン側の端部に形成された突出部35cが挿入されている。中心孔37のエンジン側の端部には、大径孔部37dと、この大径孔部37dのCSU側に隣接する中径孔部37eとが形成されている。大径孔部37dは、第1軸体34のエンジン側の端面において開口しており、この開口が中心孔37のエンジン側の開口37cとされている。
【0029】
中径孔部37eには、中心孔37のCSU側の開口37aから中心軸39を挿入した後に、エンジン側の開口37cを塞ぐためのプラグ(蓋部材)40が挿入されている。プラグ40は、中径孔部37eを塞ぐ大きさに形成されており、例えば溶接によって中径孔部37eの周面に固定されている。これにより、中心孔37のエンジン側の開口37cは、プラグ40により塞がれるので、この開口37cから中心孔37内に異物が侵入するのを防止することができる。
【0030】
なお、大径孔部37dには、第1回転軸25の端部25aが挿入される。これにより、中心孔37のエンジン側の開口37cは、第1回転軸25の端部25aによっても塞がれる。したがって、本実施形態では、中心孔37のエンジン側の開口37cを塞ぐ蓋部材として、プラグ40を用いているが、これに替えて、第1回転軸25の端部25aを前記蓋部材として機能させてもよい。
【0031】
第1軸体34の大径部34bの外周には、弾性カップリング41が配置されている。弾性カップリング41は、例えば、天然ゴムやウレタンゴム等の弾性部材からなり、円環形状に形成されている。弾性カップリング41は、ボルト42等によって大径部34bに固定されている。弾性カップリング41のCSU側の端面41aは、第2軸体35のフランジ部35aにおけるエンジン側の端面に接触している。弾性カップリング41は、ボルト43等によってフランジ部35aに固定されている。これにより、第1軸体34及び第2軸体35は、弾性カップリング41を介して連結されている。
【0032】
弾性カップリング41のCSU側の端面41aは、大径部34bのCSU側の端面34cよりもCSU側に位置している。これにより、弾性カップリング41のCSU側の端部41bが、第1軸体34と第2軸体35との間に隙間を形成している。つまり、第1軸体34及び第2軸体35間の軸方向の距離dが一定の大きさ以上に保たれている。なお、第1軸体34及び第2軸体35を連結する弾性部材は、弾性カップリング41以外の弾性部材を用いてもよい。
【0033】
第1継手36は、例えば十字軸継手であり、一対のヨーク36a,36bと、これら一対のヨーク36a,36bを連結している十字軸36cとを有している。一方のヨーク36aは、第2軸体35のCSU側の端部35dに接続されている。これにより、一方のヨーク36aは、第2軸体35のCSU側の端部35dに接続される第1接続部とされている。他方のヨーク36bは、伝達軸部31の一端部31aに接続されている。これにより、他方のヨーク36bは、伝達軸部31の一端部31aに接続される第2接続部とされている。なお、本実施形態の第1継手36は、十字軸継手であるが、トリポードジョイント(TJ)や等速ジョイント(CVJ)等の他の継手であってもよい。
【0034】
軸継手装置30は、エンジン11の振動等によって第1回転軸25が振動すると、以下のようにして第2回転軸26に振動が伝わるのを抑制する。第1回転軸25が軸方向に沿って振動すると、弾性カップリング41のCSU側の端部41bが弾性変形により軸方向に収縮または伸長して、第1軸体34と第2軸体35との間の軸方向の距離dを変化させる。そのため、第1回転軸25の軸方向に沿った振動に伴って第1軸体34が振動しても、第2軸体35にはその振動が伝わりにくくなる。これにより、第1回転軸25の軸方向に沿った振動が第2回転軸26に伝わるのを抑制することができる。
【0035】
また、第1回転軸25が軸方向に対してねじれる方向に振動すると、第1回転軸25と一体に固定された第1軸体34も第1回転軸25に連動する。第1軸体34と第2軸体35とは、中心軸39によって軸方向以外の相対的な移動が規制されているので、第1軸体34が軸方向に対してねじれる方向に振動すると、第2軸体35も第1軸体34に連動する。
【0036】
しかし、第2軸体35と伝達軸部31との間には第1継手36が設けられ、かつ伝達軸部31と第2回転軸26との間には第2継手51が設けられているので、第2軸体35が軸方向に対してねじれる方向に振動するとき、その振動が第2回転軸26に伝わりにくくなる。これにより、第1回転軸25の軸方向に対してねじれる方向の振動が、第2回転軸26に伝わるのを抑制することができる。
【0037】
なお、実際に第1回転軸25が振動するときには、軸方向に沿って振動すると同時に、軸方向に対してねじれる方向に振動する。第1回転軸25の振動のうち、軸方向に沿った動きが第2回転軸26に伝達されるのは弾性カップリング41により抑制され、軸方向に対してねじれる方向の動きが第2回転軸26に伝達されるのは第1継手36及び第2継手51によって抑制される。
【0038】
以上、本実施形態の軸継手装置30によれば、第2軸体35の中心軸39が挿入される中心孔37は、第1軸体34を軸方向に貫通して形成されているので、中心孔37の一方の開口37aから中心軸39を挿入する際に、中心孔37の他方の開口37cから中心孔37内の空気を外部へ逃がすことができる。これにより、従来のように、中心軸39と中心孔37との間に中心孔37内の空気を逃がすための隙間を形成する必要がないため、第1軸体34と第2軸体35との同軸性を保つことができる。
【0039】
また、第1回転軸25から伝達軸部31に向かって、第1軸体34、第2軸体35、及び第1継手36がこの順に配置され、第1継手36の一対のヨーク36a,36bはそれぞれ第2軸体35及び伝達軸部31に接続される。このため、第1軸体34が有する中心孔37の他方の開口37cは、第1回転軸25に向かって開口し、第1継手36に向かって開口することはない。したがって、中心孔37の他方の開口37cを塞いでいるプラグ40が、中心孔37から脱落しても第1継手36とは干渉しないので、第1継手36の円滑な回転が阻害されることはない。
【0040】
また、第1軸体34及び第2軸体35は、弾性カップリング41を介して連結されているので、第1軸体34がエンジン11の振動等によって振動しても、弾性カップリング41が弾性変形することで、第1軸体34の振動が第2軸体35に伝わるのを抑制することができる。特に、エンジン11がディーゼルエンジンの場合には、エンジンの振動が大きくなるので、このような場合に有効となる。
【0041】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の軸継手装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
例えば、上記実施形態では、第1軸体34、第2軸体35及び第1継手36を、第1回転軸25と伝達軸部31とを連結する第1継手部32の構成部材としているが、第2回転軸26と伝達軸部31とを連結する第2継手部33の構成部材としてもよい。
また、本実施形態の軸継手装置30は、第1回転軸25から第2回転軸26への振動の伝達を抑制しているが、第2回転軸26から第1回転軸25への振動の伝達を抑制するものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10:軸継手装置、25:第1回転軸(回転軸)、25a:端部、31:伝達軸部、31a:一端部、32:第1継手部(継手部)、34:第1軸体、35:第2軸体、36:第1継手(継手)、36a:ヨーク(第1接続部)、36b:ヨーク(第2接続部)、36c:十字軸、37:中心孔、37a:一方の開口、37c:他方の開口、39:中心軸、40:プラグ(蓋部材)、41:弾性カップリング(弾性部材)