特許第6870435号(P6870435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870435
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】高炉操業方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20210426BHJP
   F23K 1/04 20060101ALI20210426BHJP
   F23K 1/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C21B5/00 301
   F23K1/04
   F23K1/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-72083(P2017-72083)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172734(P2018-172734A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊地知 大
(72)【発明者】
【氏名】坪根 洋平
(72)【発明者】
【氏名】門脇 正具
(72)【発明者】
【氏名】西河 良諭
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓司
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−070958(JP,A)
【文献】 特開2009−132971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤード経由コークスを使用する高炉操業方法であって、
前記ヤード経由コークスの少なくとも一部を、コークス乾式消火設備から排出された直送コークスに前記直送コークスと前記ヤード経由コークスの総量に対して68質量%未満の割合で混合して、前記直送コークスの顕熱で水分を蒸発させる混合工程と、
前記ヤード経由コークスと前記直送コークスを混合したコークスをコークス庫に貯留する貯留工程と、
貯留した前記コークスを高炉に装入する装入工程と、
を実施することを特徴とする高炉操業方法。
ここで、ヤード経由コークスとは、ヤードを経由して高炉に搬送されるコークス、直送コークスとは、ヤードを経由することなく、コークス製造工程からベルトコンベアを用いて高炉に搬送されるコークスをいう。
【請求項2】
請求項1に記載の高炉操業方法であって、
前記貯留工程は、
水分含有率が4質量%超の前記ヤード経由コークスをコークス乾式消火設備から排出された前記直送コークスと混合し、水分含有率が4質量%以下の前記ヤード経由コークスを直接、コークス庫に貯留する工程であることを特徴とする、高炉操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高炉操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の操業に用いられるコークスには、ヤードを経由して高炉に搬送されるヤード経由コークスと、コークス製造工程からベルトコンベア等を用いて高炉に搬送される直送コークスとがある。
【0003】
このうち、ヤード経由コークスは、ヤードに一旦貯蔵された後にコークスとして製鉄等に用いている。
コークス製造工程で製造されたコークスをヤード経由にする理由は、一つは、製鉄所のコークス製造能力が、高炉に必要なコークス量より小さく、外部からコークスを購入する場合があるためである。この場合、輸送船から荷揚げされたコークスは、一旦、ヤードに貯蔵されるため、ヤード経由コークスとなる。
もう一つの理由は、高炉をメンテナンスで休風する時に、コークスがヤードに貯蔵される場合があるためである。
【0004】
ヤードは、露天の保管場所であるため、雨天の際に雨水がコークスの内部まで浸透し、コークスの平均水分値が上昇する。
【0005】
そのため、ヤード経由コークスは直送コークスと比較して水分の含有量が多く、高炉に装入すると温度の低下を招く場合がある。
【0006】
ヤード経由コークスの水分量がどの程度かは、ヤード周辺の天候に左右されるため、ヤード経由コークスは直送コークスと比較して、水分の含有量のばらつきを生じやすい。
【0007】
こうした水分量の多いヤード経由コークスでは、原料の粒子に、まぶりつき粉と呼ばれれる粉原料が水分によって付着しているため、篩等により粒度調整を行っても粉原料が除去できない場合が生じる。水分を含んだ粉原料は、篩の網にも付着しやすいため、篩の目詰まりの原因となり、さらに原料の分級が困難になるという問題もある。
【0008】
このように、ヤード経由コークスは直送コークスと比較して水分の点で問題を有している。
【0009】
そこで、ヤード経由コークスを高炉に搬送する前に乾燥することにより、水分を除去することが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−096491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のようにヤード経由コークスを乾燥する場合、乾燥に必要な設備が必要になり、設備費用が高くなるという問題があった。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヤード経由コークスを用いる場合であっても設備費用が高くならない高炉操業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る高炉操業方法は、ヤード経由コークスを使用する高炉操業方法であって、前記ヤード経由コークスの少なくとも一部を、コークス乾式消火設備から排出された直送コークスに68質量%未満の割合で混合して、前記直送コークスの顕熱で水分を蒸発させる混合工程と、前記ヤード経由コークスと前記直送コークスを混合したコークスをコークス庫に貯留する貯留工程と、貯留した前記コークスを高炉に装入する装入工程と、を実施することを特徴とする。
ここで、ヤード経由コークスとは、ヤードを経由して高炉に搬送されるコークス、直送コークスとは、ヤードを経由することなく、コークス製造工程からベルトコンベアを用いて高炉に搬送されるコークスをいう。
【0014】
この発明によれば、直送コークスの顕熱でヤード経由コークスの水分を蒸発させるため、乾燥設備を追加せずに低コストで水分を除去できる。
【0015】
本発明では、前記貯留工程は、水分含有率が4質量%超の前記ヤード経由コークスをコークス乾式消火設備から排出された前記直送コークスと混合し、水分含有率が4質量%以下の前記ヤード経由コークスを直接、コークス庫に貯留する工程であるのが好ましい。
【0016】
この発明によれば、篩等により粒度調整を行っても粉原料が除去できない水分量のヤード経由コークスのみを直送コークスと混合するので、直送コークスと混合するヤード経由コークスの量を削減できる。よって、混合に必要な装置を小型化できる。また、直送コークスの量が少ない場合でもヤード経由コークスの水分を蒸発させられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る高炉操業方法に用いられるコークス供給システムの概要を示す図。
図2】本発明の第1の実施形態に係る高炉操業方法を示すフロー図。
図3】本発明の第2の実施形態に係る高炉操業方法に用いられるコークス供給システムの概要を示す図。
図4】本発明の第2の実施形態に係る高炉操業方法を示すフロー図。
図5】水分量とまぶりつき粉率の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず、図1を参照して、第1の実施形態に係る高炉操業方法に用いられる、コークス供給システムの概要を説明する。
【0019】
図1に示すように、第1の実施形態に係るコークス供給システム100は、コンベア3、ヤード5A、ヤード経由コークス搬送部7A、ワーフ8、バンカー9、一次篩11、コークス庫13A、二次篩15A、粉ホッパー21、三次篩23を有する。
【0020】
コンベア3はコークス工場1で製造された直送コークスを搬送するコンベアである。
ヤード5Aは、ヤード経由コークスを貯蔵する露天の保管場所である。
ヤード経由コークス搬送部7Aはヤード5Aからコンベア3へ、ヤード経由コークスを搬送する手段であり、ベビーコンベアやトラックが用いられる。
ワーフ8はヤード経由コークス搬送部7Aとコンベア3の合流地点であり、ヤード経由コークスが投入される場所である。
【0021】
ここで、ヤード経由コークスとは、ヤード5Aを経由して図1の高炉19に搬送されるコークスをいう。直送コークスとは、ヤード5Aを経由することなく、図1のコークス工場1(コークス製造工程)のCDQ1A(コークス乾式消火設備、Coke Dry Quenching equipment)から、ベルトコンベアを用いて高炉19に搬送されるコークスをいう。
【0022】
バンカー9は直送コークスとヤード経由コークスを一時的に貯蔵する貯蔵庫でもある。
一次篩11はバンカー9に収納されたコークスを分級する篩である。篩上はコークス庫13Aに送られ、篩下は焼結機25に送られて焼結鉱の炭材に用いられる。
コークス庫13Aは、一次篩11の篩上を保管する保管庫である。
二次篩15Aは、コークス庫13Aに収納されたコークスを分級する篩である。篩上はサージホッパー17を介して高炉19に装入される。篩下は粉ホッパー21を介して三次篩23に送られる。
【0023】
三次篩23は二次篩15Aの篩下をさらに分級する篩である。篩上は小塊コークスとして鉱石庫27で鉱石と混合され、高炉19に装入される。篩下は焼結機25に送られて焼結鉱の炭材に用いられる。
【0024】
次に、図2を参照して、コークス供給システム100を用いた高炉操業方法の概要を説明する。
【0025】
まず、直送コークスとヤード経由コークスを混合する(図2のS1、混合工程)。
【0026】
次に、混合したコークスをコークス庫13Aに貯蔵する(図2のS2、貯留工程)。
【0027】
最後に、コークス庫13Aからコークスを必要量取り出し、鉄鉱石等の鉄源と共に高炉19に装入して、高炉19を操業する(図2のS3、装入工程)。
以上が、コークス供給システム100を用いた高炉操業方法の概要の説明である。
【0028】
次に、図1および図2を用いて、コークス供給システム100を用いた高炉操業方法の詳細を説明する。
【0029】
<S1:直送コークスとヤード経由コークスの混合>
S1では、以下の手順で、直送コークスと、ヤード経由コークスを混合する。
【0030】
まず直送コークスを、コークス工場1のCDQ1Aから排出して、コンベア3に搬送する。次に、ヤード経由コークス搬送部7Aを用いて、ヤード5Aからワーフ8を介してヤード経由コークスをコンベア3上に搭載する。この際、直送コークスの上にヤード経由コークスを搭載して互いに接触させるのが望ましい。
【0031】
直送コークスはコンベア3に搭載された時点でも100℃〜130℃程度の温度を有する。そのため、直送コークスとヤード経由コークスを接触させることにより、直送コークスの顕熱でヤード経由コークスの水分を蒸発させて除去できる。
ヤード経由コークスの量は、直送コークスとヤード経由コークスの総量に対して、質量%で68%未満であるのが好ましい。68%以上だと、水分がほとんど蒸発しないためである。より好ましくは、50質量%以下である。50質量%以下であれば、水分量が半分以下になるためである。
【0032】
コンベア3は、直送コークスとヤード経由コークスをバンカー9まで搬送し、バンカー9に落とし込んで貯留する。
バンカー9内に直送コークスとヤード経由コークスが落とし込まれることにより、少なくとも積層された状態となって混合されるので、直送コークスの顕熱でヤード経由コークスの水分を蒸発させて除去できる。
【0033】
<S2:ヤード経由コークスの貯留>
S2では、コークスをコークス庫13Aに貯留する。
直送コークスと混合したヤード経由コークスは、バンカー9内で水分が除去されると、図示しない搬送装置でバンカー9から一次篩11に搬送される。
一次篩11は篩上をコークス庫13Aに貯蔵する。篩下は焼結機25に送る。
【0034】
なお、バンカー9内で水分が完全に除去されなかった場合でも、直送コークスとヤード経由コークスが混合された状態は、コークス庫13A内で維持されるので、コークス庫13A内でも、直送コークスの顕熱でヤード経由コークスの水分を蒸発させて除去できる。
【0035】
<S3:高炉への装入>
S3ではヤード経由コークスを高炉19に装入して、高炉19を操業する。
まず、コークス庫13Aからコークスを必要量取り出し、二次篩15Aで分級する。篩上はサージホッパー17に貯蔵される。篩下は粉ホッパー21を介して三次篩23に送られる。
コークス庫13Aから取り出されるコークスはヤード経由コークスを含んでいるが、直送コークスとの混合により水分が除去されている。そのため、二次篩15Aでの分級によって、粉原料を容易に除去できる。篩の目詰まりを生じる恐れもない。
三次篩23ではさらに分級が行われ、篩上は鉱石庫27に送られて、小塊コークスとして鉱石庫27で鉱石と混合される。篩下は焼結機25に送られる。
最後に、鉱石庫27から鉱石を高炉19に装入する。さらにサージホッパー17からコークスを装入する。この鉱石の装入とコークスの装入を交互に行い、高炉19の操業を行う。
以上がコークス供給システム100を用いた高炉操業方法の説明である。
【0036】
このように、第1の実施形態では、直送コークスの顕熱でヤード経由コークスの水分を蒸発させる。そのため、ヤード経由コークスを使用する場合であっても、乾燥設備を追加せずに低コストで水分を除去できる。
【0037】
次に、第2の実施形態について、図3および図4を参照して説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態において、水分含有量が4質量%超のヤード経由コークスのみを、直送コークスと混合するものである。
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0038】
まず、図3を参照して、第2の実施形態に係るコークス供給システム100Aの構成について、説明する。
図3に示すように、コークス供給システム100Aは、ヤード5B、ヤード経由コークス搬送部7B、コークス庫13B、および二次篩15Bをさらに有する。
【0039】
ヤード5Bは、ヤード経由コークスを貯蔵する露天の保管場所である。ヤード5Aとの違いは、貯蔵するヤード経由コークスの水分量の違いである。水分量が4質量%以下のヤード経由コークスはヤード5Bに貯蔵される。水分量が4質量%超のヤード経由コークスはヤード5Aに貯蔵される。
ヤード経由コークス搬送部7Bは、ヤード5Bからコークス庫13Bへ、ヤード経由コークスを搬送する手段であり、コンベアやトラックが用いられる。
【0040】
コークス庫13Bは、ヤード5Bから搬送されたヤード経由コークスを保管する保管庫である。
二次篩15Bは、コークス庫13Bに収納されたコークスを分級する篩である。篩上はサージホッパー17を介して高炉19に装入される。篩下は粉ホッパー21を介して三次篩23に送られる。
以上が、コークス供給システム100Aの構成の説明である。
【0041】
次に、図4を参照して、コークス供給システム100Aを用いた高炉操業方法を説明する。
まず、ヤード経由コークスを、水分含有量が4質量%超か否かで分類する(図4のS10)。4質量%超の場合はヤード5Aにヤード経由コークスを貯蔵してS11に進む。4質量%以下の場合は、ヤード5Bにヤード経由コークスを貯蔵してS12に進む。
【0042】
水分含有量でヤード経由コークスを分類する理由は以下の通りである。
ヤード経由コークスは、原料の粒子に粉原料が水分によって付着しているため、水分含有量が多いと、篩等により粒度調整を行っても粉原料が除去できない場合がある。
【0043】
そこで、本出願人は篩等による粉原料が除去可能な水分量がどの程度なのかを調査した。その結果、水分量が4質量%以下であれば、篩等による粉原料が除去可能であることを見出した。水分量が4質量%超の場合、篩等による粉原料の除去は困難であり、粉原料を除去するためには水分を蒸発させる必要があることも見出した。
そこで、第2の実施形態では、水分含有量でヤード経由コークスを分類し、水分量が4質量%超のヤード経由コークスのみを乾燥することにした。これにより、乾燥するヤード経由コークスの量を削減でき、混合に必要な装置を小型化できる。
【0044】
次に、直送コークスと、水分含有量が4質量%超のヤード経由コークスを混合する(図4のS11、混合工程)。
【0045】
次に、混合したコークス、および水分含有量が4質量%以下のヤード経由コークスをコークス庫13A、13Bに各々貯蔵する(図4のS12、貯留工程)。
【0046】
最後に、コークス庫13A、13Bからコークスを必要量取り出し、鉄鉱石等の鉄源と共に高炉19に装入して、高炉19を操業する(図4のS13、装入工程)。
以上が、コークス供給システム100Aを用いた高炉操業方法の概要の説明である。
【0047】
このように、第2の実施形態では、水分量4質量%超のヤード経由コークスのみを直送コークスと混合する。水分含有率が4質量%以下のヤード経由コークスは直接、コークス庫13Bに貯留する。換言すれば、篩等により粒度調整を行っても、粉原料が除去できない水分量のヤード経由コークスのみを、直送コークスと混合する。
【0048】
よって、混合するヤード経由コークスの量を削減でき、混合に必要な装置である、ヤード経由コークス搬送部7A、コンベア3、バンカー9等を小型化できる。また、直送コークスの量が少ない場合でもヤード経由コークスの水分を蒸発させられる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づき本発明を、より詳細に説明するが、本発明は実施例には限定されない。
【0050】
(乾燥試験)
図1に示すコークス供給システム100を用いて、水分量の異なるヤード経由コークスを直送コークスと混合し、乾燥を試みた。具体的な手順は以下の通りである。
【0051】
まず、ヤード経由コークスとして、水分量が表1に示す割合のヤード経由コークスを用意した。
次に、直送コークス100t/hをCDQから排出後、長さ60m、幅1.2mのコンベア3に搭載し、バンカー9に向けて搬送した。直送コークスの搬送中に、ヤード経由コークスを、ヤード経由コークス搬送部7Aとしてのトラックに搭載して、長さ5500mm、幅2900mm、底面がコンベア3に向けて約30度傾斜したワーフ8に貯蔵した。ワーフ8に貯蔵したヤード経由コークスは、ワーフ8の開口部(800mm×600mm)からコンベア3に搭載した。
バンカー9は幅12m、奥12m、最大深さ15mの円筒形状で、内面材質がバサルト製とした。
直送コークスとヤード経由コークスをバンカー9に落とし込んでから約5時間経過後、コークス庫13Aに貯蔵した。
【0052】
コークス庫13Aに貯蔵した状態のコークスの水分量を、(株)いすゞ製作所社製産業用恒温器を用いて測定した。
結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、ヤード経由コークスの混合率が68質量%未満の場合は、混合後に水分量が減少していた。
この結果から、直送コークスの顕熱でヤード経由コークスの水分を蒸発させて除去できることが分かった。
【0055】
(水分量とまぶりつき粉率の関係評価試験)
次に、ヤード経由コークスにおいて、篩による粉原料が除去可能な水分量が、どの程度なのかを調べるために、水分量と粉原料(まぶりつき粉)の割合との関係を評価した。
【0056】
具体的には以下の手順で、水分量とまぶりつき粉率の関係を測定した。
まず、核粒子として、面積粒径Dp=50mm程度の貯骸コークス塊を水洗して、まぶりつき粉を全て除去したものを用意した。粉粒子としてコークス粉を用意した。
次に、核粒子および粉粒子を水に48時間浸漬し、水分を最大限含ませた。
粉粒子は浸漬後、濾紙により軽く水切りを行った。
次に、粉粒子上で核粒子を転がし、粉粒子をまぶりつかせて試料とした。
試料を105℃の乾燥炉に入れ、一時間毎に取り出して10秒間、篩がけし、試料と、脱落粉の質量を測定した。
測定した質量から、以下の式(1)および式(2)に基づき、コークス水分値(水分量)と、まぶりつき粉率を計算した。
コークス水分値=(乾燥前の試料の質量−乾燥後の試料の質量)/(乾燥前の試料の質量)×100・・(1)
まぶりつき粉率=(脱落粉の質量)/(試料の質量)×100・・(2)
結果を図5に示す。図5の%は縦軸、横軸ともに質量%である。
【0057】
図5に示すように、水分量が4質量%以下になると、まぶりつき粉率が、水分量4質量%超の場合と比べて大きく低下することがわかった。一方で、水分量が4質量%超になると、4質量%以下の場合と比べて、まぶりつき粉率が、あまり変化しないことが分かった。
【0058】
この結果から、篩による粉原料が除去可能な水分量は最大でも4質量%程度であることが分かった。そのため、水分量が4質量%超のヤード経由コークスは、乾燥させて水分を除去させるのが好ましいことが分かった。
【符号の説明】
【0059】
1…コークス工場、3…コンベア、5A、5B…ヤード、7A、7B…ヤード経由コークス搬送部、9…バンカー、13A、13B…コークス庫、19…高炉、100…コークス供給システム。
図1
図2
図3
図4
図5