(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IP電話網に接続された複数の子ゲートウェイと、これら子ゲートウェイでのIP電話接続サービスを、前記IP電話網を介して制御する親ゲートウェイとを備えるIP電話ネットワークシステムであって、
前記親ゲートウェイは、
前記子ゲートウェイのうち、着信先として指定される子ゲートウェイごとに、当該着信のスライド着信先となる子ゲートウェイが、それぞれのスライド順とともに予め登録されているスライド着信リストを記憶する記憶部と、
スライド着信先が設定されている子ゲートウェイを着信先として指定した前記IP電話網からの着信に応じて、前記スライド着信リストから前記子ゲートウェイのスライド着信先を取得し、前記着信先および前記スライド着信先となる子ゲートウェイのすべてに対して着信を通知し、これら着信通知に対して返答が得られた子ゲートウェイのみを、スライド着信対象として特定するスライド着信先特定部と、
前記スライド着信対象から前記スライド順に沿って1つずつ子ゲートウェイを処理対象として順に選択して着信処理を行うスライド着信処理部とを備え、
前記スライド着信処理部は、前記子ゲートウェイを前記処理対象として選択するごとに、前記処理対象に対して鳴動指示を通知した後、一定の呼出待機時間だけ待機し、待機中に前記処理対象が着信応答しなかった場合には、前記処理対象に対する着信処理を中断して新たな処理対象を選択し、待機中に前記処理対象が着信応答した場合には、前記IP電話網からの着信に応答して前記処理対象を前記IP電話網に接続した後に新たな処理対象の選択を終了し、
前記子ゲートウェイは、前記スライド着信先特定部からの着信通知に応じて、前記着信をキューイングして着信鳴動を保留し、前記スライド着信処理部からの鳴動指示の通知に応じて、キューイングしておいた前記着信の着信鳴動を開始する子制御部を備える
ことを特徴とするIP電話ネットワークシステム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるIP電話ネットワークシステム1について説明する。
図1は、第1の実施の形態にかかるIP電話ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
このIP電話ネットワークシステム1は、複数の子ゲートウェイ20に従来の電話システムなどの電話装置30を収容し、親ゲートウェイ10がIP電話網NWを介して子ゲートウェイ20でのIP電話接続サービスを制御するシステムである。
【0017】
IP電話網NWは、インターネット(WAN:Wide Area Network)からなり、呼制御サーバ(図示せず)が、親ゲートウェイ10や子ゲートウェイ20、さらには相手電話端末40と、SIP(Session Initiation Protocol)などの呼制御プロトコルに基づく各種メッセージをやり取りすることにより、VoIP(Voice Over Intenet Protocol)に基づく音声データを用いたIP電話サービスを提供する機能を有している。
【0018】
[IP電話ネットワークシステム]
親ゲートウェイ(親GW)10は、全体としてIP電話対応のゲートウェイ装置からなり、主な機能部として、網I/F部11、スイッチ部12、記憶部13、および呼制御部14が設けられている。
【0019】
網I/F部11は、通信回線L1を介してIP電話網NWとデータ通信することにより、IP電話網NWとの間でSIPなどの呼制御プロトコルに基づく各種メッセージや、VoIPに基づく音声データなどをやり取りする機能を有している。
スイッチ部12は、網I/F部11に接続されて、呼制御部14からの指示に応じて、網I/F部11でやり取りする音声データを相互に中継接続する機能を有している。
【0020】
記憶部13は、全体としてハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、呼制御部14での処理に用いる処理データやプログラムを記憶する機能を有している。
記憶部13で記憶する主な処理データとして、スライド着信リスト13Aがある。
スライド着信リスト13Aは、子ゲートウェイ20のうち、着信先として指定される子ゲートウェイ20ごとに、当該着信のスライド着信先となる子ゲートウェイ20が、それぞれのスライド順とともに予め登録されているリストデータである。
【0021】
呼制御部14は、全体としてCPUと記憶部13のプログラムとが協働して実現される演算処理部からなり、IP電話網NWや子ゲートウェイ20に関する呼制御を行う機能を有している。呼制御部14には、主な処理部として、スライド着信先特定部14Aとスライド着信処理部14Bが設けられている。
【0022】
スライド着信先特定部14Aは、スライド着信先が設定されている子ゲートウェイ20が着信先として指定されたIP電話網NWからの着信に応じて、記憶部13のスライド着信リスト13Aから当該子ゲートウェイ20のスライド着信先を取得する機能と、これら着信先およびスライド着信先となる子ゲートウェイ20のすべてに対して着信を通知する機能と、これら着信通知に対して返答が得られた子ゲートウェイ20のみを、スライド着信対象として特定する機能とを有している。
【0023】
スライド着信処理部14Bは、スライド着信先特定部14Aにより特定されたスライド着信対象からそれぞれのスライド順に沿って1つずつ子ゲートウェイ20を処理対象として順に選択する機能と、新たな処理対象を選択するごとに、処理対象に対して鳴動指示を通知した後、一定の呼出待機時間(例えば数秒から十数秒)だけ待機する機能と、待機中に処理対象が着信応答しなかった場合には、処理対象に対する着信を中断する機能と、待機中に処理対象が着信応答した場合には、IP電話網NWからの着信に応答して処理対象をIP電話網NWに接続し、新たな処理対象の選択を終了する機能とを有している。
【0024】
なお、スライド着信対象のスライド順は、まず、着信先として指定された子ゲートウェイ20が最優先され、そのあとは子ゲートウェイ20に登録されたスライド順となる。この際、スライド着信リスト13Aに、着信先として指定された子ゲートウェイ20も含むものとし、これらすべての子ゲートウェイ20に対して、着信先として指定された子ゲートウェイ20を最優先とするスライド順を予め登録しておいてもよい。
【0025】
子ゲートウェイ(子GW)20は、全体としてIP電話対応のゲートウェイ装置からなり、通信回線L2を介してIP電話網NWと接続されて、親ゲートウェイ10からの呼制御に基づいて、IP電話接続サービスを配下の電話装置30に対して提供する機能を有している。
【0026】
子ゲートウェイ20には、主な機能部として、子制御部21が設けられている。
子制御部21は、全体としてCPUとプログラムとが協働して実現される演算処理部からなり、親ゲートウェイ10からの着信通知に応じて、着信を一旦キューイングして着信鳴動を保留する機能と、その後の親ゲートウェイ10からの送達確認の通知に応じて、キューイングしておいた着信の着信鳴動を開始する機能とを有している。
【0027】
[第1の実施の形態の動作]
次に、
図2を参照して、本実施の形態にかかるIP電話ネットワークシステム1の動作について説明する。
図2は、第1の実施の形態にかかるスライド着信処理を示すシーケンス図である。
ここでは、子ゲートウェイ20Aに対して子ゲートウェイ20B,20Cがスライド着信先として設定されており、このうち子ゲートウェイ20Bで接続障害が発生している場合を例として説明する。なお、
図2では、呼制御プロトコルとしてSIPを用いた場合が示されているが、H.323などの他のプロトコルであっても同様である。
【0028】
相手電話端末40からの発呼に応じてIP電話網NWから子ゲートウェイ20Aを指定した着信メッセージ(INVITE)が通知された場合(ステップ100)、親ゲートウェイ10のスライド着信先特定部14Aは、IP電話網NWに暫定応答メッセージ(100trying)を返送した後、スライド着信リスト13Aを参照して着信先として指定された子ゲートウェイ20Aのスライド着信先である子ゲートウェイ20B,20Cを取得し(ステップ101)、これらスライド着信対象、すなわち子ゲートウェイ20A,20B,20Cのすべてに対して、着信メッセージ(INVITE)を通知する(ステップ102,103,104)。
【0029】
これに応じて、子ゲートウェイ20A,20Cのそれぞれから暫定応答メッセージ(100trying)と呼出中メッセージ(180Ringing)が返答されるが、接続障害が発生している子ゲートウェイ20Bからは返答がない。したがって、スライド着信先特定部14Aは、これら子ゲートウェイ20A,20B,20Cのうち返答があった子ゲートウェイ20A,20Cのみをスライド着信対象として特定する(ステップ105)。なお、子ゲートウェイ20A,20Cは、通知された着信メッセージを一旦キューイングして、着信メッセージに応じた着信鳴動を含む着信動作を保留する。これにより、着信鳴動は開始されない。
【0030】
次に、スライド着信処理部14Bは、スライド着信対象のスライド順に沿って、まず、着信先として指定された子ゲートウェイ20Aを処理対象として選択し、子ゲートウェイ20Aに対して、暫定応答メッセージに対する送達確認として鳴動指示メッセージ(PRACK)を通知する(ステップ106)。
【0031】
続いて、スライド着信処理部14Bは、子ゲートウェイ20Aからの確認メッセージ(200OK)に応じて、呼出中メッセージ(180Ringing)をIP電話網NWへ通知するとともに(ステップ107)、呼出待機時間Tsだけ待機する。
これに応じて、子ゲートウェイ20Aは、キューイングしておいた着信メッセージに基づく着信動作を開始する。これにより、着信鳴動が開始される。
【0032】
この後、子ゲートウェイ20Aからの着信応答が通知されず、呼出待機時間Tsが経過した場合、スライド着信処理部14Bは、子ゲートウェイ20Aに対して呼開放メッセージ(CANCEL)を通知して着信を中断する(ステップ108)。これにより、子ゲートウェイ20Aは着信鳴動を停止し、確認メッセージ(200OK)および着信停止メッセージ(487Request Terminated)を返送し、これに応じて、スライド着信処理部14Bは確認メッセージ(ACK)を返送する。
【0033】
続いて、スライド着信処理部14Bは、スライド着信対象のスライド順に沿って、次の子ゲートウェイ20Cを処理対象として選択し、子ゲートウェイ20Cに対して、鳴動指示メッセージ(PRACK)を通知し(ステップ109)、子ゲートウェイ20Aからの確認メッセージ(200OK)に応じて、呼出待機時間Tsだけ待機する。
これに応じて、子ゲートウェイ20Cは、キューイングしておいた着信メッセージに基づく着信動作を開始する。これにより、着信鳴動が開始される。
【0034】
ここで、待機中に子ゲートウェイ20Cで応答操作が行われた場合、子ゲートウェイ20Cから着信応答メッセージ(200OK)が通知される(ステップ110)。
これに応じて、スライド着信処理部14Bは、応答メッセージ(200OK)をIP電話網NWへ通知し、これに応じたIP電話網NWからの確認メッセージ(ACK)に応じて、子ゲートウェイ20Cに確認メッセージ(ACK)を通知する。
【0035】
これにより、IP電話網NWおよび親ゲートウェイ10を介して、相手電話端末40と子ゲートウェイ20Cとの音声通話が開始される(ステップ111)。
この後、スライド着信処理部14Bは、新たな処理対象の選択を終了し、一連のスライド着信処理を終了する。
【0036】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、スライド着信先特定部14Aが、スライド着信先が設定されている子ゲートウェイ20を着信先として指定したIP電話網NWからの着信に応じて、スライド着信リスト13Aから当該子ゲートウェイ20のスライド着信先を取得し、着信先およびスライド着信先となる子ゲートウェイ20のすべてに対して着信を通知し、これら着信通知に対して返答が得られた子ゲートウェイ20のみを、スライド着信対象として特定するようにしたものである。
【0037】
これにより、着信先およびスライド着信先となる子ゲートウェイ20のうちから、接続障害のある子ゲートウェイ20がスライド着信対象から除外されることになる。このため、子ゲートウェイ20の接続障害に起因した無駄な待ち時間を省くことが可能となる。したがって、有線LANや無線LANを介して子ゲートウェイ20が接続されており、良好な接続状況が常に得られないようなIP電話ネットワークシステムであっても、発信者の待ち時間を効果的に短縮することができ、より良いIP電話接続サービスを提供することが可能となる。
【0038】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかるIP電話ネットワークシステム1について説明する。
通常、呼出待機時間Tsは、数秒から十数秒であるが、この間にスライド着信対象のうち未選択の子ゲートウェイ20から発信要求が通知される場合が考えられる。
このような場合、発信要求した子ゲートウェイ20には、スライド着信先特定部14Aから着信メッセージは通知されているもののキューイングされているため、着信動作は開始されていない。したがって、発信要求した子ゲートウェイ20は発信可能な状態にあるため、親ゲートウェイ10の呼制御部14は、子ゲートウェイ20からの発信要求に応じて、IP電話網NWへ発信メッセージを通知することになる。
【0039】
しかし、発信要求した子ゲートウェイ20はスライド着信対象として選択されているため、スライド着信処理部14Bにより処理対象として選択されて鳴動指示が通知されることになる。これにより、子ゲートウェイ20からはビジーが返送されるものの、スライド着信処理部14Bは、呼出待機時間だけ待機するものとなる。このため、結果として無駄な待ち時間が生じる原因となる。
【0040】
本実施の形態は、このような課題を解決するためのものであり、スライド着信処理部14Bは、呼出待機時間の待機中に、スライド着信対象のうち処理対象として未選択の子ゲートウェイ20から発信要求があった場合、当該子ゲートウェイ20をスライド着信対象から除外する機能を有している。なお、本実施の形態にかかるIP電話ネットワークシステム1のその他構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0041】
[第2の実施の形態の動作]
次に、
図3を参照して、本実施の形態にかかるIP電話ネットワークシステム1の動作について説明する。
図3は、第2の実施の形態にかかるスライド着信処理を示すシーケンス図である。
ここでは、子ゲートウェイ20Aに対して子ゲートウェイ20B,20Cがスライド着信先として設定されており、このうち子ゲートウェイ20Bから待機中に発信要求が通知された場合を例として説明する。なお、
図3では、呼制御プロトコルとしてSIPを用いた場合が示されているが、H.323などの他のプロトコルであっても同様である。
【0042】
相手電話端末40からの発呼に応じてIP電話網NWから子ゲートウェイ20Aを指定した着信メッセージ(INVITE)が通知された場合(ステップ200)、親ゲートウェイ10のスライド着信先特定部14Aは、IP電話網NWに暫定応答メッセージ(100trying)を返送した後、スライド着信リスト13Aを参照して着信先として指定された子ゲートウェイ20Aのスライド着信先である子ゲートウェイ20B,20Cを取得し(ステップ201)、これらスライド着信対象、すなわち子ゲートウェイ20A,20B,20Cのすべてに対して、着信メッセージ(INVITE)を通知する(ステップ202,203,204)。
【0043】
これに応じて、子ゲートウェイ20A,20B,20Cから暫定応答メッセージ(100trying)と呼出中メッセージ(180Ringing)が返答されている。したがって、スライド着信先特定部14Aは、これら子ゲートウェイ20A,20B,20Cのすべてをスライド着信対象として特定する(ステップ205)。この際、子ゲートウェイ20A,20B,20Cは、通知された着信メッセージを一旦キューイングして、着信メッセージに応じた着信鳴動を含む着信動作を保留する。これにより、着信鳴動は開始されない。
【0044】
次に、スライド着信処理部14Bは、スライド着信対象のスライド順に沿って、まず、着信先として指定された子ゲートウェイ20Aを処理対象として選択し、子ゲートウェイ20Aに対して、鳴動指示メッセージ(PRACK)を通知する(ステップ206)。
【0045】
続いて、スライド着信処理部14Bは、子ゲートウェイ20Aからの確認メッセージ(200OK)に応じて、呼出中メッセージ(180Ringing)をIP電話網NWへ通知するとともに(ステップ207)、呼出待機時間Tsだけ待機する。
これに応じて、子ゲートウェイ20Aは、キューイングしておいた着信メッセージに基づく着信動作を開始する。これにより、着信鳴動が開始される。
【0046】
ここで、子ゲートウェイ20Aの待機中に、子ゲートウェイ20Cでの発信操作に応じて、子ゲートウェイ20Bからビジーメッセージ(486busy)と発信メッセージ(INVITE)が通知された場合(ステップ208)、これに応じて呼制御部14から、確認メッセージ(ACK)と暫定応答メッセージ(100trying)が子ゲートウェイ20Bに返送され、発信メッセージ(INVITE)がIP電話網NWに通知される(ステップ209)。
この際、スライド着信処理部14Bは、発信要求があった子ゲートウェイ20Bをスライド着信対象から除外する(ステップ210)。
【0047】
この後、子ゲートウェイ20Aからの着信応答が通知されず、呼出待機時間Tsが経過した場合、スライド着信処理部14Bは、子ゲートウェイ20Aに対して呼開放メッセージ(CANCEL)を通知して着信を中断する(ステップ211)。これにより、子ゲートウェイ20Aは着信鳴動を停止し、確認メッセージ(200OK)および着信停止メッセージ(487Request Terminated)を返送し、これに応じて、スライド着信処理部14Bは確認メッセージ(ACK)を返送する。
【0048】
続いて、スライド着信処理部14Bは、スライド着信対象のスライド順に沿って、次の処理対象を選択する。この際、子ゲートウェイ20Bが除外されたため、子ゲートウェイ20Cを処理対象として選択し、子ゲートウェイ20Cに対して、鳴動指示メッセージ(PRACK)を通知し(ステップ212)、子ゲートウェイ20Aからの確認メッセージ(200OK)に応じて、呼出待機時間Tsだけ待機する。
これに応じて、子ゲートウェイ20Cは、キューイングしておいた着信メッセージに基づく着信動作を開始する。これにより、着信鳴動が開始される。
【0049】
ここで、待機中に子ゲートウェイ20Cで応答操作が行われた場合、子ゲートウェイ20Cから着信応答メッセージ(200OK)が通知される(ステップ213)。
これに応じて、スライド着信処理部14Bは、応答メッセージ(200OK)をIP電話網NWへ通知し、これに応じたIP電話網NWからの確認メッセージ(ACK)に応じて、子ゲートウェイ20Cに確認メッセージ(ACK)を通知する。
【0050】
これにより、子ゲートウェイ20Cが親ゲートウェイ10を介してIP電話網NWに接続され、IP電話網NWを介して相手電話端末40と子ゲートウェイ20Cとの通話が開始される(ステップ214)。
この後、スライド着信処理部14Bは、新たな処理対象の選択を終了し、一連のスライド着信処理を終了する。
【0051】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、スライド着信処理部14Bが、呼出待機時間の待機中に、スライド着信対象のうち処理対象として未選択の子ゲートウェイ20から発信要求があった場合、当該子ゲートウェイ20をスライド着信対象から除外するようにしたものである。
これにより、発信要求した子ゲートウェイ20が処理対象として選択されなくなり、結果として無駄な待ち時間を省くことが可能となる。
【0052】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかるIP電話ネットワークシステム1について説明する。
スライド着信先特定部14Aにより、スライド着信対象を特定する場合、子ゲートウェイ20に接続障害が発生している場合、着信を通知した子ゲートウェイ20から返答がないため、例えばプロトコルで規定されているタイムアウトを待って、接続障害と判定することになる。したがって、無線LANの場合には数分程度のタイムアウトが設定されているため、この待ち時間が無駄となる。
【0053】
本実施の形態は、このような課題を解決するためのものであり、スライド着信先特定部14Aは、スライド着信対象を特定する際、着信を通知した後、規定のタイムアウトより短い、例えば呼出待機時間と同程度かそれ以下の一定監視時間Twが経過しても返答が得られない場合には、それまでに返答が得られた子ゲートウェイ20のみをスライド着信対象として特定する機能を有している。なお、本実施の形態にかかるIP電話ネットワークシステム1のその他構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0054】
[第3の実施の形態の動作]
次に、
図4を参照して、本実施の形態にかかるIP電話ネットワークシステム1の動作について説明する。
図4は、第3の実施の形態にかかるスライド着信処理を示すシーケンス図である。
ここでは、子ゲートウェイ20Aに対して子ゲートウェイ20B,20Cがスライド着信先として設定されており、このうち子ゲートウェイ20Aで接続障害が発生している場合を例として説明する。なお、
図4では、呼制御プロトコルとしてSIPを用いた場合が示されているが、H.323などの他のプロトコルであっても同様である。
【0055】
相手電話端末40からの発呼に応じてIP電話網NWから子ゲートウェイ20Aを指定した着信メッセージ(INVITE)が通知された場合(ステップ300)、親ゲートウェイ10のスライド着信先特定部14Aは、IP電話網NWに暫定応答メッセージ(100trying)を返送した後、スライド着信リスト13Aを参照して着信先として指定された子ゲートウェイ20Aのスライド着信先である子ゲートウェイ20B,20Cを取得し(ステップ301)、これらスライド着信対象、すなわち子ゲートウェイ20A,20B,20Cのすべてに対して、着信メッセージ(INVITE)を通知する(ステップ302,303,304)。
【0056】
これに応じて、子ゲートウェイ20B,20Cのそれぞれから暫定応答メッセージ(100trying)と呼出中メッセージ(180Ringing)が返答されるが、接続障害が発生している子ゲートウェイ20Aからは返答がない。したがって、スライド着信先特定部14Aは、着信メッセージの通知から予め設定されている監視時間Twが経過した時点で、これら子ゲートウェイ20A,20B,20Cのうち返答があった子ゲートウェイ20B,20Cのみをスライド着信対象として特定する(ステップ305)。
【0057】
この際、監視時間Twは、着信メッセージごとに別個に設定してもよいが、子ゲートウェイ20A,20B,20Cに対する着信通知に時間差がない場合には、最初の着信通知から監視時間Twが経過した時点でスライド着信対象として特定してもよい。また、最後の着信通知から監視時間Twが経過した時点でスライド着信対象として特定してもよい。
【0058】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、スライド着信先特定部14Aが、スライド着信対象を特定する際、着信の通知から一定監視時間Twが経過しても返答が得られない場合には、それまでに返答が得られた子ゲートウェイ20のみをスライド着信対象として特定するようにしたものである。
これにより、例えばプロトコルで規定されているタイムアウトより短い時間を一定監視時間Twに設定しておけば、数分程度のタイムアウトを待つことなく、より短いでスライド着信対象を特定でき、子ゲートウェイ20の接続障害に起因して発生する無駄な待ち時間を省くことが可能となる。
【0059】
[
参考の形態]
次に、
図5を参照して、
参考の形態にかかるIP電話システム2について説明する。
図5は、
参考の形態にかかるIP電話システムの構成を示すブロック図である。
第1〜第3の実施の形態では、親ゲートウェイ10が複数の子ゲートウェイ20でのIP電話接続サービスをIP電話網NWを介して制御するIP電話ネットワークシステム1でスライド着信を行う場合を例として説明した。本
参考の形態では、電話制御装置50が、配下のIP電話端末60をIP電話網NWに交換接続するIP電話システム2でスライド着信を行う場合について説明する。
【0060】
このIP電話システム2は、全体としてIP電話対応のビジネスホンやPBXシステムなどの電話システムからなり、複数のIP電話端末60と、これらをIP電話網NWに交換接続する電話制御装置50とから構成されている。
【0061】
[IP電話システム]
電話制御装置50は、全体として主装置やPBXなどの情報処理装置からなり、主な機能部として、網I/F部51、スイッチ部52、記憶部53、呼制御部54、および端末I/F部55が設けられている。
【0062】
網I/F部51は、通信回線L5を介してIP電話網NWとデータ通信することにより、IP電話網NWとの間でSIPなどの呼制御プロトコルに基づく各種メッセージや、VoIPに基づく音声データなどをやり取りする機能を有している。
【0063】
スイッチ部52は、網I/F部51と端末I/F部55との間に接続されて、呼制御部54からの指示に応じて、網I/F部51と端末I/F部55との間で音声データを相互に中継転送する機能を有している。
【0064】
記憶部53は、全体としてハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、呼制御部54での処理に用いる処理データやプログラムを記憶する機能を有している。
記憶部53で記憶する主な処理データとして、スライド着信リスト53Aがある。
スライド着信リスト53Aは、IP電話端末60のうち、着信先として指定されるIP電話端末60ごとに、当該着信のスライド着信先となるIP電話端末60が、それぞれのスライド順とともに予め登録されているリストデータである。
【0065】
呼制御部54は、全体としてCPUと記憶部53のプログラムとが協働して実現される演算処理部からなり、IP電話網NWやIP電話端末60に関する呼制御を行う機能を有している。呼制御部54には、主な処理部として、スライド着信先特定部54Aとスライド着信処理部54Bが設けられている。
【0066】
スライド着信先特定部54Aは、スライド着信先が設定されているIP電話端末60が着信先として指定されたIP電話網NWからの着信に応じて、記憶部53のスライド着信リスト53Aから当該IP電話端末60のスライド着信先を取得する機能と、これら着信先およびスライド着信先となるIP電話端末60のすべてに対して着信を通知する機能と、これら着信通知に対して返答が得られたIP電話端末60のみを、スライド着信対象として特定する機能とを有している。
【0067】
スライド着信処理部54Bは、スライド着信先特定部54Aにより特定されたスライド着信対象からそれぞれのスライド順に沿って1つずつIP電話端末60を処理端末として順に選択する機能と、新たな処理端末を選択するごとに、処理端末に対して鳴動指示を通知した後、一定の呼出待機時間(例えば数秒から十数秒)だけ待機する機能と、待機中に処理端末が着信応答しなかった場合には、処理端末に対する着信を中断する機能と、待機中に処理端末が着信応答した場合には、IP電話網NWからの着信に応答して処理端末をIP電話網NWに接続し、新たな処理端末の選択を終了する機能とを有している。
【0068】
なお、スライド着信対象のスライド順は、まず、着信先として指定されたIP電話端末60が最優先され、そのあとはIP電話端末60に登録されたスライド順となる。この際、スライド着信リスト53Aに、着信先として指定されたIP電話端末60も含むものとし、これらすべてのIP電話端末60に対して、着信先として指定されたIP電話端末60を最優先とするスライド順を予め登録しておいてもよい。
【0069】
端末I/F部55は、通信回線L6を介して複数のIP電話端末60とデータ通信することにより、これらIP電話端末60との間でSIPなどの呼制御プロトコルに基づく各種メッセージや、VoIPに基づく音声データなどをやり取りする機能を有している。
【0070】
IP電話端末60は、通信回線L6を介して電話制御装置50と接続されて、電話制御装置50からの呼制御によりVoIPに基づく音声通話を行うIP電話端末である。
IP電話端末60には、主な機能部として、端末制御部61が設けられている。
端末制御部61は、全体としてCPUと記憶部53のプログラムとが協働して実現される演算処理部からなり、スライド着信先特定部54Aからの着信通知に応じて、着信を一旦キューイングして着信鳴動を保留する機能と、スライド着信処理部54Bからの鳴動指示の通知に応じて、キューイングしておいた着信の着信鳴動を開始する機能とを有している。
【0071】
[
参考の形態の動作]
本
参考の形態において、電話制御装置50およびIP電話端末60は、前述した親ゲートウェイ10および子ゲートウェイ20にそれぞれ相当している。さらには、網I/F部11、スイッチ部12、記憶部13、スライド着信リスト13A、呼制御部14、スライド着信先特定部14A、スライド着信処理部14B、および子制御部21が、網I/F部51、スイッチ部52、記憶部53、スライド着信リスト53A、呼制御部54、スライド着信先特定部54A、スライド着信処理部54B、および端末制御部61にそれぞれ相当している。したがって、これら電話制御装置50およびIP電話端末60の動作も、
図2〜
図4で説明した親ゲートウェイ10および子ゲートウェイ20のものと同等であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0072】
[
参考の形態の効果]
このように、本
参考の形態は、スライド着信先特定部54Aが、スライド着信先が設定されているIP電話端末60を着信先として指定したIP電話網NWからの着信に応じて、スライド着信リスト53Aから当該IP電話端末60のスライド着信先を取得し、着信先およびスライド着信先となるIP電話端末60のすべてに対して着信を通知し、これら着信通知に対して返答が得られたIP電話端末60のみを、スライド着信対象として特定するようにしたものである。
【0073】
これにより、着信先およびスライド着信先となるIP電話端末60のうちから、接続障害のあるIP電話端末60がスライド着信対象から除外されることになる。このため、IP電話端末60の接続障害に起因する無駄な待ち時間を省くことが可能となる。したがって、有線LANや無線LANを介してIP電話端末60が接続されており、良好な接続状況が常に得られないようなIP電話システムであっても、発信者の待ち時間を効果的に短縮することができ、より良い電話サービスを提供することが可能となる。
【0074】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。