特許第6870448号(P6870448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870448栽培施設に用いる細霧冷房システムおよび細霧冷房方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870448
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】栽培施設に用いる細霧冷房システムおよび細霧冷房方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20210426BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A01G9/24 R
   A01G7/00 601Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-79685(P2017-79685)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-174804(P2018-174804A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】村山 浩
(72)【発明者】
【氏名】永田 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】徳江 和典
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−289728(JP,A)
【文献】 実開昭58−113344(JP,U)
【文献】 特開2017−012056(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/199357(WO,A1)
【文献】 特開2016−169908(JP,A)
【文献】 特開2015−173653(JP,A)
【文献】 特開2014−198012(JP,A)
【文献】 特開2005−214806(JP,A)
【文献】 米国特許第04956936(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 − 9/26
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培施設内の温度を計測する温度センサと、
前記栽培施設内の湿度を計測する湿度センサと、
前記栽培施設内の照度を計測する照度センサと、
前記温度センサで計測された温度が所定値以上であり、前記湿度センサで計測された湿度が所定値以下であり、且つ、前記照度センサで計測された照度が所定値以上であるときに、前記栽培施設内への細霧供給処理を実行する細霧冷房装置と
と備えることを特徴とする細霧冷房システム。
【請求項2】
栽培施設内の温度を計測する温度センサと、
前記栽培施設内の湿度を計測する湿度センサと、
前記栽培施設内の照度を計測する照度センサと、
前記温度センサで計測された温度と前記湿度センサで計測された湿度とから飽差を算出し、算出した飽差が第1閾値以上であり、且つ、前記照度センサで計測された照度が所定値以上であるときに、前記栽培施設内への細霧供給処理を開始する細霧冷房装置と
と備えることを特徴とする細霧冷房システム。
【請求項3】
前記細霧冷房装置は、前記細霧供給処理を開始した後、前記温度センサで計測された温度と前記湿度センサで計測された湿度とから算出した飽差が、前記第1閾値と異なる第2閾値以下になると、前記細霧供給処理を停止する
ことを特徴とする請求項2に記載の細霧冷房システム。
【請求項4】
前記細霧冷房装置は、予め設定された時間帯内に、前記細霧供給処理を行う
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の細霧冷房システム。
【請求項5】
前記細霧冷房装置は、前記細霧供給処理を実行してから所定時間は、次の細霧供給処理を実行しない
ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の細霧冷房システム。
【請求項6】
前記細霧冷房装置は、細霧供給処理を実行した回数を、所定期間ごとに計数する処理回数係数部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の細霧冷房システム。
【請求項7】
前記照度センサで計測された照度を、該当日の日射角度に基づいて補正する照度補正部をさらに備え、
前記細霧冷房装置は、前記照度補正部により補正された照度を用いて、細霧供給処理の要否を判定する
ことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の細霧冷房システム。
【請求項8】
前記温度センサ、前記湿度センサ、および前記照度センサは、前記栽培施設内が分割された複数のエリアごとにそれぞれ設置され、
前記細霧冷房装置は、前記エリアごとに、対応する温度センサ、湿度センサ、および照度センサの計測情報に基づいて細霧供給処理の要否を判定し、細霧供給処理が必要と判定したエリアに対して細霧供給処理を実行する
ことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の細霧冷房システム。
【請求項9】
前記細霧冷房装置は、複数の栽培施設にそれぞれ設置された前記温度センサ、前記湿度センサ、および前記照度センサのうち、予め栽培施設ごとに設定されたセンサの計測情報に基づいて細霧供給処理の要否を判定し、細霧供給処理が必要と判定された栽培施設に対して細霧供給処理を実行する
ことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の細霧冷房システム。
【請求項10】
栽培施設内の温度を計測する温度センサと、
前記栽培施設内の湿度を計測する湿度センサと、
前記栽培施設内の照度を計測する照度センサとに接続された細霧冷房装置が、
前記温度センサで計測された温度が所定値以上であり、前記湿度センサで計測された湿度が所定値以下であり、且つ、前記照度センサで計測された照度が所定値以上であるときに、前記栽培施設内への細霧供給処理を実行する
ことを特徴とする細霧冷房方法。
【請求項11】
栽培施設内の温度を計測する温度センサと、
前記栽培施設内の湿度を計測する湿度センサと、
前記栽培施設内の照度を計測する照度センサとに接続された細霧冷房装置が、
前記温度センサで計測された温度と前記湿度センサで計測された湿度とから飽差を算出し、算出した飽差が第1閾値以上であり、且つ、前記照度センサで計測された照度が所定値以上であるときに、前記栽培施設内への細霧供給処理を開始し、前記細霧供給処理を開始した後、前記温度センサで計測された温度と前記湿度センサで計測された湿度とから算出した飽差が、前記第1閾値と異なる第2閾値以下になると、前記細霧供給処理を停止する
ことを特徴とする細霧冷房方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培施設に用いる細霧冷房システムおよび細霧冷房方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の栽培施設においては、栽培対象の植物に高温障害が発生することを防止し、光合成を促進させるために、温度および湿度を適正範囲に保つことが重要である。このため、従来は、施設内の温度が所定値よりも高くなったときや、湿度が所定値よりも低くなったとき、または定期的なタイミングで、霧状の水を噴霧する細霧冷房が行われている。細霧冷房を行うことで、温度を下げるとともに湿度を上昇させて、栽培施設内を好適な環境に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−18158号公報
【特許文献2】特許第5207502号公報
【特許文献3】特開2003−289728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、植物の光合成を促進するためには、光合成が活発に行われる晴天時の昼間に湿度を上げて葉の気孔を開かせる必要がある。日射角度が大きく日照量が多い夏場は、特にその必要性が高い。一方で、光合成が行われない夜間や日照量が少ない曇天時には、高湿によるカビの発生を防ぐため、湿度を下げる必要がある。
しかし、上述したように施設内の温度や湿度に基づいて必要と判断されたタイミングやや定期的なタイミングで細霧冷房が実行されると、天候や季節による日照量の変化が考慮されず、施設内を好適な環境を提供できない場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、植物の栽培施設内を、日照量を考慮して精度よく好適な環境に制御するための細霧冷房システムおよび細霧冷房方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の細霧冷房システムは、栽培施設内の温度を計測する温度センサと、前記栽培施設内の湿度を計測する湿度センサと、前記栽培施設内の照度を計測する照度センサと、前記温度センサで計測された温度が所定値以上であり、前記湿度センサで計測された湿度が所定値以下であり、且つ、前記照度センサで計測された照度が所定値以上であるときに、前記栽培施設内への細霧供給処理を実行する細霧冷房装置とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の形態の細霧冷房システムは、栽培施設内の温度を計測する温度センサと、前記栽培施設内の湿度を計測する湿度センサと、前記栽培施設内の照度を計測する照度センサと、前記温度センサで計測された温度と前記湿度センサで計測された湿度とから飽差を算出し、算出した飽差が第1閾値以上であり、且つ、前記照度センサで計測された照度が所定値以上であるときに、前記栽培施設内への細霧供給処理を開始する細霧冷房装置と備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の細霧冷房方法は、栽培施設内の温度を計測する温度センサと、前記栽培施設内の湿度を計測する湿度センサと、前記栽培施設内の照度を計測する照度センサとに接続された細霧冷房装置が、前記温度センサで計測された温度が所定値以上であり、前記湿度センサで計測された湿度が所定値以下であり、且つ、前記照度センサで計測された照度が所定値以上であるときに、前記栽培施設内への細霧供給処理を実行することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の形態の細霧冷房方法は、栽培施設内の温度を計測する温度センサと、前記栽培施設内の湿度を計測する湿度センサと、前記栽培施設内の照度を計測する照度センサとに接続された細霧冷房装置が、前記温度センサで計測された温度と前記湿度センサで計測された湿度とから飽差を算出し、算出した飽差が第1閾値以上であり、且つ、前記照度センサで計測された照度が所定値以上であるときに、前記栽培施設内への細霧供給処理を開始し、前記細霧供給処理を開始した後、前記温度センサで計測された温度と前記湿度センサで計測された湿度とから算出した飽差が、前記第1閾値と異なる第2閾値以下になると、前記細霧供給処理を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の細霧冷房システムおよび細霧冷房方法によれば、植物の栽培施設内を、日照量を考慮して精度よく好適な環境に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による細霧冷房システムの構成を示す全体図である。
図2】一実施形態による細霧冷房システムの制御装置に設定されるパラメータの設定画面の一例である。
図3】一実施形態による細霧冷房システムに利用する制御装置で実行される細霧冷房処理(a)の動作を示すフローチャートである。
図4】一実施形態による細霧冷房システムに利用する制御装置で実行される細霧冷房処理(b)の動作を示すフローチャートである。
図5】一実施形態による細霧冷房システムの制御装置に設定されるパラメータの設定画面の他の例である。
図6】他の形態による細霧冷房システムの制御装置に設定される、栽培施設ごとに設定された細霧冷房処理対象のセンサの情報の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈一実施形態による細霧冷房システムの構成〉
本発明の一実施形態による植物の栽培施設に用いる細霧冷房システムの構成について、図1を参照して説明する。
【0013】
本実施形態による細霧冷房システム1は、ビニールハウス等の植物の栽培施設A内に設置され、栽培施設A内の環境情報を取得する各種センサおよび栽培施設A内に細霧を供給する第1ノズル15−1および第2ノズル15−2を備える。また、栽培施設A内に噴霧するための水を給水管20−1および20−2を介して第1ノズル15−1および第2ノズル15−2に供給する給水機構30を備える。さらに、栽培施設A内の各種センサから出力された情報を信号線40を介して取得し、取得した情報に基づいて給水機構30内の機器を制御する細霧冷房装置としての制御装置50を備える。
【0014】
栽培施設A内は、予め設定された第1エリア10−1〜第Nエリアの10−NのN個の栽培エリアに分割されている。各エリアにはそれぞれ植物が栽植されるとともに、第1温度センサ11−1〜第N温度センサ11−Nと、第1湿度センサ12−1〜第N湿度センサ12−Nと、第1照度センサ13−1〜第N照度センサ13−Nと、第1スイッチ14−1〜第Nスイッチ14−Nとが設置されている。以下、第1エリア10−1〜第Nエリア10−Nのうちのいずれであるかが特定されない場合は、エリア10と記載する。温度センサ、湿度センサ、照度センサ、およびスイッチについても同様に、温度センサ11、湿度センサ12、照度センサ13、およびスイッチ14とする。
【0015】
第1温度センサ11−1〜第N温度センサ11−Nはそれぞれ、設置されたエリア10−1〜10−Nの温度を計測する。第1湿度センサ12−1〜第N湿度センサ12−Nはそれぞれ、設置されたエリア10−1〜10−Nの湿度を計測する。第1照度センサ13−1〜第N照度センサ13−Nはそれぞれ、設置されたエリア10−1〜10−Nの照度を計測する。第1スイッチ14−1〜第Nスイッチ14−Nは、栽培の作業員によりON操作されると、信号線40を介して制御装置50にON操作信号を出力する。
【0016】
第1ノズル15−1および第2ノズル15−2はそれぞれ、給水管20−1および給水管20−2に接続されて栽培施設Aの上部に設置され、給水機構30から供給される水を用いて栽培施設A内に細霧を噴霧して供給する。
【0017】
給水機構30は、水を貯留する水タンク31と、水タンク31から水を吸い上げるポンプ32と、ポンプ32と給水管20−1および20−2との間にそれぞれ設置される電磁弁33−1および33−2とを有する。電磁弁33−1および33−2はそれぞれ、制御装置50からの制御により開閉する。電磁弁33−1、33−2が開状態になると、ポンプ32で吸い上げられた水が対応する給水管20−1、20−2に供給される。
【0018】
制御装置50は、入力部51と、表示部52と、情報取得部53と、細霧冷房処理部54と、第1電磁弁駆動部55−1および第2電磁弁駆動部55−2とを有する。入力部51は、監視員の操作により入力された情報を細霧冷房処理部54に送出する。表示部52は、細霧冷房処理部54から出力される情報を表示する。
【0019】
情報取得部53は、栽培施設A内の第1温度センサ11−1〜第N温度センサ11−N、第1湿度センサ12−1〜第N湿度センサ12−N、および第1照度センサ13−1〜第N照度センサ13−Nから所定時間間隔で計測情報を取得する。また、情報取得部53は、第1スイッチ14−1〜第Nスイッチ14−Nから出力されるON操作信号を取得する。
【0020】
細霧冷房処理部54は、第1温度センサ11−1〜第N温度センサ11−N、第1湿度センサ12−1〜第N湿度センサ12−N、および第1照度センサ13−1〜第N照度センサ13−Nから取得した計測情報と、予め設定されたパラメータとに基づいて、現在、栽培施設A内に細霧冷房が必要であるか否かを判定する。細霧冷房が必要であると判定したときには、第1電磁弁駆動部55−1および第2電磁弁駆動部55−2に、駆動指令を送出する。
【0021】
第1電磁弁駆動部55−1および第2電磁弁駆動部55−2は、細霧冷房処理部54から駆動指示を取得すると、対応する電磁弁33−1、33−2が所定時間、開状態になるように駆動する。
【0022】
〈一実施形態による細霧冷房システムの動作〉
次に、本実施形態による細霧冷房システム1により栽培施設A内に細霧冷房を行う際の動作について説明する。
【0023】
まず、監視員により制御装置50の入力部51から、細霧冷房の処理に用いられるパラメータが入力される。各種パラメータの設定を行う際は、例えば図2のように表示部52に表示されたパラメータ設定画面が用いられる。
【0024】
図2のパラメータ設定画面には、監視員により入力された、細霧冷房の対象である運転時間および細霧冷房の対象外である休止時間として設定された値と、細霧冷房の運転対象とする照度、相対湿度、温度、および飽差の条件として設定された値が表示されている。
【0025】
図2においては、運転時間が7:00〜16:30、休止時間が870分(16:30〜翌日7:00)であり、運転対象の照度が50,000lux以上、相対湿度が50%以下、温度が25℃以上、飽差6g/m3(第1の飽差閾値)以上であることが設定されている。また、飽差5g/m3(第2の飽差閾値)以下が運転停止条件であることが設定されている。
【0026】
ここで、運転時間は、日の出時刻および日の入り時刻に合わせて日毎に算出して設定し、植物が光合成を行う昼間に適切に細霧冷房処理が実行されるようにしてもよい。例えば、運転時間を日の出時刻の30分後から日の入り時刻の60分前までとすることを監視員が入力しておき、細霧冷房処理部54において現在の月日情報および当該栽培施設Aの位置情報に基づいて、外部機関から日の出時刻および日の入り時刻を取得し運転時間を算出して設定するようにしてもよい。
【0027】
制御装置50では、このように設定されたパラメータに基づいて、細霧冷房処理(a)または(b)が実行される。まず、細霧冷房処理(a)について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0028】
まず、制御装置50の細霧冷房処理部54において、予め設定された細霧冷房の対象時間帯の開始時刻7:00が到来したか否かが監視される(S1)。そして、時刻7:00が到来したと判断されると(S1の「YES」)、情報取得部53において、栽培施設A内の第1温度センサ11−1〜第N温度センサ11−N、第1湿度センサ12−1〜第N湿度センサ12−N、および第1照度センサ13−1〜第N照度センサ13−Nで計測された計測値が取得される(S2)。
【0029】
そして、情報取得部53で取得された情報と、予め設定された各種パラメータとに基づいて、細霧冷房処理部54において、栽培施設A内に細霧冷房が必要であるか否かが判定される。具体的には、第1エリア10−1〜第Nエリア10−Nのうち、温度センサ11で計測された温度が25℃以上であり、対応する湿度センサ12で計測された相対湿度が50%以下であり、且つ、対応する照度センサ13で計測された照度が50,000lux以上の条件を満たすエリアがあれば、栽培施設A内に細霧冷房が必要であると判定される(S3)。
【0030】
上記条件を満たすエリアがあり、細霧冷房が必要であると判定されたときには(S3の「YES」)、電磁弁駆動部55−1および53−2に対し、駆動指令が出力される。電磁弁駆動部55−1および53−2は、駆動指令を取得すると、それぞれ対応する電磁弁33−1および33−2を所定時間(例えば10秒)、開状態にするように駆動する(S4)。
【0031】
電磁弁駆動部55−1および53−2により電磁弁33−1および33−2が開状態になっている間は、水タンク31からポンプ32で吸い上げられた水が給水管20−1および20−2に供給され、それぞれ対応する第1ノズル15−1および第2ノズル15−2から、栽培施設A内に細霧が供給される。供給される細霧の量は、水の供給時間(電磁弁の開時間)、ノズルの径、ポンプの動力、および電磁弁33の開度等により、調整可能である。
【0032】
次に、ステップS2で各センサの計測情報を取得してから所定時間(例えば、1分)が経過したか否かが監視される(S5)。各センサの計測情報を取得してから所定時間が経過すると(S5の「YES」)、ステップS2に戻り、各センサから新たな計測情報が取得されてステップS3、S4の処理が実行される。
【0033】
また、ステップS3において、上記条件を満たすエリアがなく、栽培施設10内に細霧冷房が必要ないと判定されたときには(S3の「NO」)、ステップS4による細霧供給処理は実行されずにステップS5に移行する。
その後、細霧冷房の対象時間帯の終了時刻16:30が到来したとき(S6の「YES」)には、ステップS1に戻り、翌日の細霧冷房の対象時間帯が到来するまで各センサの計測情報の取得処理は停止される。以上で、細霧冷房処理(a)の説明を終了する。
【0034】
また、図2のように設定されたパラメータに基づいて、制御装置50において実行される細霧冷房処理(b)について、図4のフローチャートを参照して説明する。
まず、細霧冷房処理(a)と同様に細霧冷房の対象時間帯の開始時刻7:00が到来したと判断されると(S11の「YES」)、情報取得部53において、栽培施設A内の第1温度センサ11−1〜第N温度センサ11−N、第1湿度センサ12−1〜第N湿度センサ12−N、および第1照度センサ13−1〜第N照度センサ13−Nで計測された計測値が取得される(S12)。
【0035】
次に、細霧冷房処理部54において、取得した第1温度センサ11−1〜第N温度センサ11−Nおよび第1湿度センサ12−1〜第N湿度センサ12−Nの計測値に基づいて、各エリアの飽差が算出される。そして、算出された飽差が第1の飽差閾値の6g/m3以上であり、且つ、対応する照度センサ13で計測された照度が50,000lux以上の条件を満たすエリアがあれば、栽培施設A内に細霧冷房が必要であると判定される(S13)。細霧冷房の要否の判断に飽差を用いることにより、温度と湿度との関係性を考慮して精度の高い判断を行うことができる。
【0036】
上記条件を満たすエリアがあり、細霧冷房が必要であると判定されたときには(S3の「YES」)、電磁弁駆動部55−1および53−2に対し、駆動指令が出力される。電磁弁駆動部55−1および53−2は、駆動指令を取得すると、それぞれ対応する電磁弁33−1および33−2を開状態にするように駆動する(S14)。
【0037】
電磁弁駆動部55−1および53−2により電磁弁33−1および33−2が開状態になると、水タンク31からポンプ32で吸い上げられた水が給水管20−1および20−2に供給され、それぞれ対応する第1ノズル15−1および第2ノズル15−2から、栽培施設A内への細霧の供給が開始される。
【0038】
その後、所定時間間隔(例えば数秒間隔)で第1温度センサ11−1〜第N温度センサ11−Nおよび第1湿度センサ12−1〜第N湿度センサ12−Nの計測値が取得され、細霧冷房処理部54において各エリアの飽差が算出されて、飽差が第2の飽差閾値の5g/m3以下であるか否かが監視される(S15)。
【0039】
そして、全てのエリアの飽差が5g/m3以下であると判定されると(S15の「YES」)、電磁弁駆動部55−1および53−2に対し、運転停止指令が出力される。電磁弁駆動部55−1および53−2は、運転停止指令を取得すると、それぞれ対応する電磁弁33−1および33−2を閉状態にして、細霧の供給を停止する(S16)。ここで、第2の飽差閾値を第1の飽差閾値よりも高い値で設定しておくことにより、過剰な加湿を防ぐことができる。一方、第2の飽差閾値を第1の飽差閾値よりも低い値で設定しておくことにより、過剰な除湿を防ぐことができる。
【0040】
次に、ステップS12で各センサの計測情報を取得してから所定時間(例えば、10分)が経過したか否かが監視される(S17)。各センサの計測情報を取得してから所定時間が経過すると(S17の「YES」)、ステップS12に戻り、各センサから新たな計測情報が取得されてステップS13〜S16の処理が実行される。
【0041】
また、ステップS13において、上記条件を満たすエリアがなく、栽培施設10内に細霧冷房が必要ないと判定されたときには(S13の「NO」)、ステップS14〜S16による細霧供給処理は実行されずにステップS17に移行する。
【0042】
その後、細霧冷房の対象時間帯の終了時刻16:30が到来したとき(S6の「YES」)には、ステップS1に戻り、翌日の細霧冷房の対象時間帯が到来するまで各センサの計測情報の取得処理は停止される。以上で、細霧冷房処理(b)の説明を終了する。
【0043】
また、これらの細霧冷房処理(a)、(b)とは別個に、作業者が植物の状態を見て細霧冷房が必要と判断し、第1スイッチ14−1〜第Nスイッチ14−NのいずれかをON操作すると、信号線40を介して制御装置50にON操作信号が出力される。制御装置50では、ON操作信号が情報取得部53を介して細霧冷房処理部54で取得されると、第1電磁弁駆動部55−1、第2電磁弁駆動部55−2が駆動される。そして、第1電磁弁33−1および第2電磁弁33−2が所定時間、開状態になり、細霧冷房が実行される。
【0044】
以上の実施形態によれば、植物の栽培施設内を、日照量の多い晴天時の昼間には湿度を上げて植物の光合成を促進させ、夜間や日照量の少ない曇天時には湿度を下げてカビの発生を防止することで、好適な環境に保つことができる。また、作業員の判断に応じて、植物の生育状態に合わせて好適な環境にすることができる。
【0045】
上述した実施形態において、制御装置50に設定しておくパラメータを、時間帯ごとに異なる値で設定してもよい。例えば図5に示すように、運転時間7:00〜16:30の中の、時間帯7:00〜10:00に運転対象とする照度を30,000luxとし、時間帯10:00〜14:00に運転対象とする照度を50,000luxとし、時間帯14:00〜16:30に運転対象とする照度を30,000luxとしてもよい。このように時間帯ごとに異なるパラメータを設定することにより、さらに精度よく対象とする植物の生育に応じた細霧冷房を行うことができる。
【0046】
また、上述した実施形態において、制御装置50では、細霧供給処理を実行してから所定時間(例えば数分間)は、次の細霧供給処理を実行しないように設定してもよい。このように設定しておくことにより、細霧供給処理による施設内環境の変化が各センサの計測値に反映されるまでにタイムラグがあった場合にも、過度に加湿されることを防ぐことができる。
【0047】
また、上述した実施形態において、制御装置50に、細霧供給処理を実行した回数を所定期間(例えば1か月)ごとに計数する処理回数係数部をさらに備えるようにしてもよい。所定回数係数部で計数された回数の情報は、例えば、次の年の同時期のパラメータの設定の際に参照させることができる。
【0048】
また、上述した実施形態において、制御装置50に、情報取得部53から取得された各エリアの第1照度センサ13−1〜第N照度センサ13−Nの計測情報を、該当日の日射角度に基づいて補正する照度補正部をさらに備えるようにしてもよい。例えば、下記の式(1)により照度センサの計測情報を補正することにより、日光の差し込み角度の影響を考慮して、細霧供給処理の要否を適切に判断することができる。ここで、日射角度は、例えば、該当日の、その地域の最大日射角度であり、太陽の南中高度を用いてもよい。
【0049】
[数1]
照度補正値=照度生値(照度センサによる計測値)÷sin(日射角度)×正規化定数
式(1)
上記式(1)において、日ごとの日射角度は、外部機関から取得することが可能である。
【0050】
上述した実施形態においては、栽培施設A内に2本のノズルを設置した場合について説明したが、この数には限定されず、栽培施設の大きさに応じてさらに多くのノズルを設置してもよい。例えば、エリアごとにノズル15を設置するとともに、対応する数の給水管20および電磁弁33を設置し、細霧冷房処理部54において、細霧供給処理が必要と判定したエリアの電磁弁33を駆動させることで、必要なエリアに対して集中的に細霧供給処理を実行するようにしてもよい。ここで、必要なエリアごとに、設定パラメータを変えてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態においては、制御装置50が1つの栽培施設Aに対する細霧冷房を管理する場合について説明したが、複数の栽培施設に対する管理を行うようにしてもよい。この場合、栽培施設ごとに、細霧冷房の要否の判断対象とするセンサを予め設定しておくことで、効率よく細霧冷房処理を行うようにすることができる。
【0052】
例えば、図6に示すように、細霧供給処理の要否の判断対象として、ハウスAの栽培施設については、施設内の識別情報#1、#2、#4の温度センサ、湿度センサ、および照度センサを設定し、ハウスBの栽培施設については、施設内の識別情報#1、#3の温度センサ、湿度センサ、および照度センサを設定し、これら以外のハウスCの栽培施設については標準版として、各施設内の識別情報#1、#2の温度センサ、湿度センサ、および照度センサを設定しておくことで、栽培施設の設置位置や栽培している植物の種類等に応じて効率よく細霧冷房処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1 細霧冷房システム
10−1〜10−N 第1エリア〜第Nエリア
11−1〜11−N 第1温度センサ〜第N温度センサ
12−1〜12−N 第1湿度センサ〜第N湿度センサ
13−1〜13−N 第1照度センサ〜第N照度センサ
14−1〜14−N 第1スイッチ〜第Nスイッチ
15−1、15−2 ノズル
20−1、20−2 給水管
30 給水機構
31 水タンク
32 ポンプ
33−1、33−2 電磁弁
40 信号線
50 制御装置(細霧冷房装置)
51 入力部
52 表示部
53 情報取得部
54 細霧冷房処理部
55−1、55−2 第1電磁弁駆動部、第2電磁弁駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6