特許第6870455号(P6870455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870455
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   B66F9/24 S
   B66F9/24 H
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-84240(P2017-84240)
(22)【出願日】2017年4月21日
(65)【公開番号】特開2018-177515(P2018-177515A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】安倍 正記
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−165700(JP,A)
【文献】 特開2004−231335(JP,A)
【文献】 特開2011−063352(JP,A)
【文献】 特開2016−056006(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0197094(US,A1)
【文献】 特開2000−185900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所作業車であって、
走行体と、
前記走行体上に旋回動、起伏動及び伸縮動自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端側に旋回動自在に設けられた作業台と、
前記作業台に設けられるレーザ距離測定装置であって、前記レーザ距離測定装置と、前記レーザ距離測定装置の周囲にある物体との間の距離を測定する、レーザ距離測定装置と、
前記ブーム及び前記作業台を前記走行体上の所定の位置に自動格納することを指示する自動格納指示手段と、
前記自動格納指示手段からの自動格納指示に応じて、前記ブームを前記所定の位置に格納させる格納制御手段と、を備え、
前記格納制御手段は、前記レーザ距離測定装置の測定結果から、前記高所作業車の周囲の周囲物体認識範囲を決定し、決定された前記周囲物体認識範囲に前記ブーム及び前記作業台が進入しないように、前記ブーム及び前記作業台の格納経路を演算する、
高所作業車。
【請求項2】
前記レーザ距離測定装置は、前記作業台を所定の高所作業位置まで移動する間、及び/又は、前記高所作業位置での作業中に、前記レーザ距離測定装置と、前記レーザ距離測定装置の周囲にある物体との間の距離を測定し、
前記格納制御手段は、前記レーザ距離測定装置の測定結果から、前記高所作業車の周囲の周囲物体認識範囲を決定する、
請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記レーザ距離測定装置は、前記レーザ距離測定装置と、前記レーザ距離測定装置の周囲にある物体との間の水平距離を測定する、請求項1又は2に記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業車を用いた作業後におけるブーム及び作業台の自動格納機能では、周囲物体の有無に関わらず作動するため、ブーム及び/又は作業台が周囲物体と干渉する可能性あった。そのため、操作者は、目視等で周囲を確認しながら、各自の判断で自動格納操作と手動格納操作とのどちらを使用するかを判断していた。また、従来の自動格納機能では、ブームの伸縮、旋回、起伏作業を、所定の作動順序で単独操作していたため、格納経路が長くなり、結果として格納作動時間も長くなるという問題点があった。
【0003】
例えば、特許文献1には、電波、超音波、赤外線又はレーザ光線などの反射波を用いて障害物の接近を判別する障害物ソナーを備え、障害物の接近を警報手段などによって作業者に知らせる高所作業車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−80198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の高所作業車では、作業者の負担を軽減することができるが、格納経路が最適化されていないため、未だ格納経路が長くなり、格納作動時間も長くなるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、障害物と干渉しない最適な格納経路でブーム及び/又は作業台を自動格納できる高所作業車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の高所作業車は、走行体と、前記走行体上に旋回動、起伏動及び伸縮動自在に設けられたブームと、前記ブームの先端側に旋回動自在に設けられた作業台と、前記作業台に設けられるレーザ距離測定装置であって、前記レーザ距離測定装置と、前記レーザ距離測定装置の周囲にある物体との間の距離を測定する、レーザ距離測定装置と、前記ブーム及び前記作業台を前記走行体上の所定の位置に自動格納することを指示する自動格納指示手段と、前記自動格納指示手段からの自動格納指示に応じて、前記ブームを前記所定の位置に格納させる格納制御手段と、を備え、前記格納制御手段は、前記レーザ距離測定装置の測定結果から、前記高所作業車の周囲の周囲物体認識範囲を決定し、決定された前記周囲物体認識範囲に前記ブーム及び前記作業台が進入しないように、前記ブーム及び前記作業台の格納経路を演算するようになっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る高所作業車は、障害物と干渉せずに最適な格納経路で自動格納を制御可能な高所作業車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る高所作業車の一例の全体構成図である。
図2】本実施形態に係る高所作業車の制御系のブロック図の一例である。
図3】作業現場の側面図の一例である。
図4】作業現場の側面図の他の例である。
図5】姿勢Aにおける作業現場の上面図である。
図6】姿勢Bにおける作業現場の上面図である。
図7】姿勢Cにおける作業現場の上面図である。
図8】周囲物体認識範囲を説明するための図の一例である。
図9】本実施形態に係る自動格納方法を説明するための図の一例である。
図10】本実施形態に係る自動格納方法を説明するための図の他の例である。
図11】本実施形態に係る自動格納方法を説明するための図の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態に係る高所作業車について、図面を参照して説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(高所作業車の全体構成例)
まず、図1を用いて、本実施形態に係る高所作業車1の全体構成について説明する。図1に、本実施形態に係る高所作業車の一例の全体構成図を示す。
【0012】
図1に示すように、高所作業車1は、走行機能を有する車両の本体部分である走行体10と、走行体10の前方に配置されたキャビン11と、走行体10に旋回自在に搭載された旋回台12と、旋回台12に立設されたブラケット13と、ブラケット13に取り付けられたブーム14と、走行体10の四隅に設けられたアウトリガ16a〜16dと、を備えている。
【0013】
旋回台12は、旋回モータなどの旋回駆動手段17を回転させることで、旋回ベアリング機構により走行体10に対して相対的に回転(旋回)する。なお、旋回台12の旋回角度は、旋回角度検出手段40(図2参照)により検出される構成となっている。
【0014】
ブーム14は、ブラケット13側から順に、基端ブーム、中間ブーム、先端ブームなどによって入れ子式に構成されており、内部の伸縮シリンダなどの伸縮駆動手段18を伸縮することによって伸縮自在に設けられている。なお、ブーム14の伸縮長さは、伸縮長さ検出手段41(図2参照)により検出される構成になっている。
【0015】
また、基端ブームは、ブラケット13に水平に設置された支持軸に回動自在に取り付けられており、起伏シリンダなどの起伏駆動手段19を伸縮することでブーム14全体が起伏自在に設けられている。なお、ブーム14の起伏角度は、起伏角度検出手段42(図2参照)により検出される構成になっている。
【0016】
先端ブームの先端側には、作業者が高所作業を行うために搭乗する作業台としてのバケット15が取り付けられている。バケット15には、作業者がバケット15に搭乗した状態でブーム14の旋回・起伏・伸縮操作とバケット15のスイング操作(旋回操作)などができるように、各種の操作手段としての操作レバーが配置された操作盤などの格納制御手段20が設けられている。
【0017】
また、バケット15には、作業後にブーム14及びバケット15を所定の格納位置へと移動させるための、自動格納指示手段21が設けられている。例えば、バケット15に搭乗した作業者が自動格納指示手段21を作動することにより、後述する制御方法により、ブーム14及びバケット15の所定の格納位置への自動格納が開始される。
【0018】
なお、自動格納指示手段21は、上記格納制御手段20に一体的に設けられる構成であってもよいし、別途独立して設けられる構成であってもよい。また、自動格納指示手段21の具体例としては、特に限定されないが、スイッチ式のものや、ボタン式のものなどが挙げられる。
【0019】
例えばバケット15の外面(例えば、バケット15の外側面又は外底面)には、1乃至複数個のレーザ距離測定装置30が取り付けられており、このレーザ距離測定装置30と図示しない周囲物体との間の距離を測定できるように構成されている。図1では、レーザ距離測定装置30をバケット15の外側面に1つだけ取り付ける構成について例示している。
【0020】
レーザ距離測定装置30をバケット15に対して取り付ける場合、レーザ距離測定装置30を水平回転可能に取り付けることが好ましい。これにより、レーザ距離測定装置30が位置する水平面において、360度の全周方向に位置する周囲物体との距離を高い精度で測定することができる。
【0021】
レーザ距離測定装置30は、公知のレーザ距離測定装置を使用することができ、全方位方向の周囲物体との間の距離を測定できるレーザ距離測定装置を使用してもよいし、特定の方位、例えば水平全方位に高い分解能を有するレーザ距離測定装置を使用してもよい。レーザ距離測定装置30の好ましい具体例としては、例えば、レーザレンジファインダ(LRF)が挙げられる。LRFは、2次元平面を走査し、その平面内の距離を観測する機器であり、データの精度や信頼性の高いセンサとして広く知られている。そのため、レーザ距離測定装置30としてLRFを使用する場合、実施形態の一例としてバケット15の外面に、地面に対して水平にLRFを配置することで、LRFは水平面の2次元距離データを測定する。即ち、地面に水平な2次元平面における、LRFと周囲物体との間の正確な距離を知ることができる。
【0022】
(制御系の構成)
次に、図2を参照して、本実施形態に係る高所作業車の制御系の最適な構成について説明する。図2に、本実施形態に係る高所作業車の制御系のブロック図の一例を示す。
【0023】
本実施形態に係る高所作業車1は、各情報を検出する検出器部として、旋回角度検出手段40、伸縮長さ検出手段41、起伏角度検出手段42を有する。
【0024】
旋回角度検出手段40は、旋回台12の旋回角度を検出し、伸縮長さ検出手段41は、ブーム14のブーム長さを検出し、起伏角度検出手段42は、ブーム14の起伏角度を検出する。
【0025】
また、本実施形態に係る高所作業車は、他の検出器部として、レーザ距離測定装置30及び自動格納指示手段21を有する。
【0026】
レーザ距離測定装置30は周囲物体を検知し、検知信号を後述する検出距離算出部23へと出力することで、レーザ距離測定装置30と周囲物体との間の距離を測定する。
【0027】
また、自動格納指示手段21は、作業者の操作入力を検知し、自動格納指令信号を後述する最短格納経路算出部25へと出力する。
【0028】
本実施形態に係る高所作業車1の格納制御手段20は、上記説明した各検出器によって検出された情報に基づき各種演算を行い、演算結果に基づき自動格納に関する制御を行う。
【0029】
具体的には、格納制御手段20は、レーザ距離測定装置取付け位置算出部22、検出距離算出部23、周囲物体位置座標算出部24、最適格納経路算出部25及びメモリ26を有する。
【0030】
レーザ距離測定装置取付け位置算出部22は、旋回角度検出手段40、伸縮長さ検出手段41、起伏角度検出手段42で検出された検出情報に基づき、レーザ距離測定装置30の取付け位置を算出する。位置を算出する場合の座標原点としては限定されないが、後述する実施形態においては、ブーム14の旋回中心位置として説明する。
【0031】
検出距離算出部23は、レーザ距離測定装置30の検出情報に基づき、レーザ距離測定装置30と周囲物体との間の距離を算出する。なお、検出距離算出部23は、レーザ距離測定装置30が有する構成であってもよい。
【0032】
周囲物体位置座標算出部24は、レーザ距離測定装置取付け位置算出部22及び検出距離算出部23の算出結果に基づき、周囲物体の位置座標を算出する。周囲物体の座標算出は、例えば高所作業車1を用いた作業中、より具体的には高所作業車1を作業位置に固定した後バケット15を所定の高所作業位置まで移動する間、及び/又は、高所作業位置での作業中に、常時又は一定周期等の随時行われる。
【0033】
メモリ26は、周囲物体位置座標算出部24が算出した周囲物体の位置座標(周囲物体認識範囲)を記憶する。
【0034】
最適格納経路算出部25は、自動格納指示手段21からの自動格納指令信号を受信すると、メモリ26が記憶している周囲物体の位置座標と、レーザ距離測定装置取付け位置算出部22が算出したレーザ距離測定装置30の取付け位置とから、ブーム14の最適な格納経路を算出する。最適な格納経路の算出方法については、後述する。
【0035】
本実施形態に係る高所作業車1は、格納制御手段20による制御情報に基づき、実際の作動を行う作動出力部を有する。
【0036】
本実施形態に係る作動出力部は、旋回駆動手段17、伸縮駆動手段18及び起伏駆動手段19を有する。
【0037】
旋回駆動手段17、伸縮駆動手段18及び起伏駆動手段19は、各々、ブーム14の旋回駆動、伸縮駆動及び起伏駆動を実施する手段であり、最適格納経路算出部25が算出した最適経路に基づき、ブーム14をその格納経路に沿って作動させる。
【0038】
(実施例:周囲物体の位置座標の算出)
次に、具体的な実施例をあげて、本実施形態に係る高所作業車1の自動格納について説明する。なお、実施例においては、説明の簡略化のために、レーザ距離測定装置30として、特に水平方向に高い精度で周囲物体との間の距離を測定できるレーザ距離測定装置を使用する例について説明するが、本発明はこの点において限定されない。全方位方向の周囲物体との間の距離を測定できるレーザ距離測定装置を使用した場合であっても、同様の方法により、周囲物体位置座標を算出し、周囲物体認識範囲を決定することが可能である。
先ずは、上記図2を参照して説明した制御系の構成により、周囲物体の位置座標を算出する具体的な方法の一例について、図2及び図3を参照して説明する。
【0039】
図3に、作業現場の側面図の一例を示す。図3に示す例では、本実施形態に係る高所作業車1と周囲物体O1とが配置されている作業現場について説明する。また、図3に示す例では、レーザ距離測定装置30は、バケット15の外側面に取り付けられている。さらに、周囲物体の位置座標を決定する場合の座標原点(ゼロ座標)をブーム14の旋回中心位置とした例について説明する。
【0040】
高所作業車1を作業現場に固定した後、バケット15を所定の高所作業位置まで移動する間、及び/又は、高所作業位置での作業中に、常時又は随時(例えば一定周期で)、旋回角度検出手段40、伸縮長さ検出手段41及び起伏角度検出手段42の検出情報が、レーザ距離測定装置取付け位置算出部22へと送信される。レーザ距離測定装置取付け位置算出部22は、検出情報を受信すると、座標原点からレーザ距離測定装置30までの水平距離L及び鉛直高さHを算出する。この算出結果は、周囲物体位置座標算出部24へと送信される。
【0041】
また、レーザ距離測定装置30の検出情報は、検出距離算出部23へと送信される。この検出情報の送信についても、高所作業車1を作業現場に固定した後、バケット15を所定の高所作業位置まで移動する間、及び/又は、高所作業位置での作業中に、常時又は随時(例えば一定周期で)、実施される。検出距離算出部23は、検出情報を受信すると、レーザ距離測定装置30と周囲物体O1との間の水平距離Rを算出する。この算出結果もまた、周囲物体位置座標算出部24へと送信される。
【0042】
周囲物体位置座標算出部24は、レーザ距離測定装置取付け位置算出部22及び検出距離算出部23の算出結果を受信すると、周囲物体の位置座標(x,z= L+R, H)を算出する。算出された周囲物体の位置座標は、メモリ26へと送信され、メモリ26内に、最新の周囲物体の位置座標が蓄積される。
【0043】
なお、図3に示す例では、説明の簡略化のために、あるX−Z 2次元平面についてのみ説明したが、3次元平面においても同様の方法により周囲物体位置座標を決定することができる。好ましい具体例としては、レーザ距離測定装置30を高所作業車1の360度の全周方向について周囲物体の位置座標を算出する方法が挙げられる。レーザ距離測定装置30を用いて高所作業車1の360度の全周方向について周囲物体の位置座標を算出する方法としては、例えばレーザ距離測定装置30を水平回転可能に構成させ、常時又は随時回転させる方法や、全方位方向の周囲物体との間の距離を測定できるレーザ距離測定装置を使用する方法などが挙げられる。
【0044】
(実施例:周囲物体認識範囲の決定)
次に、上記で説明した周囲物体の位置座標を決定する方法を更に応用して、3次元の周囲物体認識範囲を決定する方法について、図4図8を参照して説明する。なお、図4図11の図面においては、説明の簡略化のために、高所作業車1を、図1を用いて上記説明した高所作業車1を簡略化して示している。
【0045】
図4に、作業現場の側面図の他の例を示す。図5図7に、図4に示したブーム14の各姿勢における作業現場の上面図を示す。図8に、周囲物体認識範囲を説明するための図を示す。なお、図4図8を参照して説明する例では、レーザ距離測定装置30は、バケット15の外側面に取り付けられている例について説明する。
【0046】
図4に示すように、本実施形態に係る作業現場では、高所作業車1の近傍に、周囲物体O2及び周囲物体O3が配置されている。このような作業現場において、ブーム14の作業姿勢が、姿勢Aから姿勢Bを経て姿勢Cへと移行する場合の、周囲物体認識範囲を決定する方法について説明する。なお、本実施形態において、高所作業車1の近傍とは、レーザ距離測定装置30を中心として、レーザ距離測定装置30の検出上限距離の範囲内のことを意味する。
【0047】
本実施形態においても、レーザ距離測定装置30が、ブーム14の各姿勢における鉛直方向の高さでの2次元水平面を、レーザ距離測定装置30を中心とする周方向に走査する例について説明する。即ち、姿勢Aでは、レーザ距離測定装置30は、図5に示すX―Y 2次元平面を、レーザ距離測定装置30を中心とする周方向に走査する。
【0048】
図5に示す姿勢Aの2次元平面では、レーザ距離測定装置30と、周囲物体O2及び/又は周囲物体O3とを結んだ場合に、周囲物体O2だけが存在する領域(R1で示す領域)と、周囲物体O2及び周囲物体O3の両方が存在する領域(R2で示す領域)と、周囲物体O3だけが存在する領域(R3で示す領域)と、が存在する。ここで、本実施形態においては、レーザ距離測定装置30がある方向において、ある周囲物体を検出した場合、その検出距離よりも遠い距離には、当該周囲物体があると判定する。そのため、R1で示す領域は、周囲物体O2が存在する領域であり、R2で示す領域は、周囲物体O2が存在する領域(実際には周囲物体O2及び周囲物体O3の両方が存在する領域)であり、R3で示す領域は、周囲物体O3が存在する領域であると判定する。結果として、図5に示す例では、斜線で示した領域全域が周囲物体認識範囲となる。なお、図5に示すR2の領域における、周囲物体O2と周囲物体O3との間の空間のように、周囲物体が存在しない領域であっても、周囲物体認識範囲となる場合がある。
【0049】
同様に、姿勢Bでは、図6に示すX−Y 2次元平面を、レーザ距離測定装置30を中心とする周方向に走査する。姿勢Bの2次元平面においては、図4に示すように、周囲物体O2が存在せず、周囲物体O3のみが存在する。また、この場合においても、レーザ距離測定装置30がある方向において、ある周囲物体を検出した場合、その検出距離よりも遠い距離には、当該周囲物体があると判定する。そのため、図6に示す例では、斜線で示した領域が周囲物体認識範囲となる。
【0050】
同様に、姿勢Cでは、図7に示すX−Y 2次元平面を、レーザ距離測定装置30を中心とする周方向に走査する。この2次元平面においては、図4に示すように、周囲物体O2及び周囲物体O3の両方が存在しない。そのため、図7に示す例では、周囲物体認識範囲がない。
【0051】
上記説明したように、ブーム14の各姿勢(即ち、レーザ距離測定装置30の各高さ)において、周囲物体認識範囲を作成することで、図4に示す作業現場においては、図8の斜線で示す領域R4のような周囲物体認識範囲を作成する。なお、図8に示す例では説明のために2次元平面の周囲物体認識範囲を図示したが、レーザ距離測定装置30は、レーザ距離測定装置30を中心とする周方向に走査することで、3次元平面の周囲物体認識範囲を作成することができる。
【0052】
(実施例:自動格納の方法)
次に、上記説明した周囲物体認識範囲に基づいて、ブーム14及びバケット15を自動格納する方法について、図9乃至図11を参照して説明する。図9に、本実施形態に係る自動格納方法を説明するための図の一例を示す。
【0053】
図9においては、高所作業車1の周囲に障害物(周囲物体)が存在しない条件下で、作業後のブーム14及びバケット15の作業姿勢Dから、所定の格納姿勢Eへと格納する例について説明する。なお、本実施形態において、高所作業車1の周囲に障害物が存在しないとは、少なくとも、ある作業姿勢のブーム14及びバケット15と、別の作業姿勢のブーム14及びバケット15との間の領域に、周囲物体が存在しないことを意味する。以降、具体的な例について説明するが、作業姿勢Dのブーム14及びバケット15と、格納姿勢Eのブーム14及びバケット15とで形成される領域を、干渉判定範囲と呼ぶ。なお、図9に示す例では、領域R5が干渉判定範囲(以後、干渉判定範囲R5と呼ぶ)となる。
【0054】
この場合、作業姿勢Dにおけるバケット15と、格納姿勢Eにおけるバケット15とを直線で結んだ経路がバケット15(及びブーム14)を最短で格納する経路となる。一般的に、当業者はこの経路を基本格納経路と呼ぶ。なお、基本格納経路に従ってブーム14を格納させる場合、旋回駆動手段17、伸縮駆動手段18及び起伏駆動手段19を同時に駆動させてもよいし、3つの駆動の種類に優先順位を設けて、順次駆動させる構成であってもよい。具体的には、伸縮駆動手段18、旋回駆動手段17、起伏駆動手段19の順に優先順位を低くさせ、先ずは所定のブーム長さとなるようにブーム14を伸縮動させ、その後、所定のブーム旋回角度となるようにブーム14を旋回動させ、その後、所定のブーム起伏角となるようにブーム14を起伏動させる構成であってもよい。
【0055】
しかしながら、作業現場や作業状況によっては、干渉判定範囲に、障害物(周囲物体)が存在することがある。図10及び図11に、本実施形態に係る自動格納方法を説明するための図の他の例を示す。
【0056】
図10に示す例では、斜線で示す干渉判定範囲R5内に、周囲物体04が存在する領域R6(点線で示している)が存在する。別の言い方をすると、干渉判定範囲R5と、周囲物体認識範囲とが干渉している状態といえる。
【0057】
この場合、最短格納経路算出部25は、周囲物体認識範囲内にブーム14及びバケット15が進入しない経路であって、バケット15の移動距離が最短となる、最短格納経路を算出し、その格納経路に従ってブーム14及びバケット15を格納させる。この場合、安全を鑑み、最短格納経路は、図11に示すように、バケット15(又はレーザ距離測定装置30)と周囲物体認識範囲との間隙(クリアランス)が所定の距離D1以上となるように、最短格納経路を算出することが好ましい。即ち、図9に示す作業姿勢Dから格納姿勢Eへと自動格納する場合、図11の点線で示す姿勢を経る経路で格納させる経路が最短格納経路となる。
【0058】
なお、周囲物体の座標算出のタイミング等によって、基本格納経路上の周囲物体認識範囲が取得されていない場合が存在することがある。この場合、取得済みの周囲物体認識範囲を通るように、格納経路を変更することが好ましい。この場合、実際の格納経路が最短の格納経路ではない場合があるが、作業者が手動で格納操作を行う必要がなく、自動でブーム14を格納させることができる。
【0059】
また、上記説明した自動格納中においても、周囲物体の位置座標を随時取得して、周囲物体認識範囲を更新することが好ましい。これによって、周囲物体が移動する場合であっても、ブーム14及びバケット15を安全に自動格納することができる。
【0060】
さらに、複雑に周囲物体が存在する場合など、蓄積された周囲物体認識範囲において、最適な自動格納経路を算出できない場合も考えられる。そのため、本実施形態に係る高所作業車1は、自動格納駆動が不可能であることを作業者に通知するための通知手段を有することが好ましい。上記通知手段としては、公知の光源を用いてランプを点滅させることにより作業者に通知する方法や、公知の音源を用いてブザーを鳴らすことにより作業者に通知する方法などが挙げられる。
【0061】
またさらに、本実施形態に係る高所作業車1のレーザ距離測定装置30は、自動格納時のみならず、通常作業時の周囲物体との衝突防止や、走行時の周囲物体との衝突防止にも応用可能である。
【0062】
以上、本実施形態に係る高所作業車は、レーザ距離測定装置の測定結果に基づき、前記ブーム及び前記作業台の格納経路を演算する。具体的には、レーザ距離測定装置の測定結果から、高所作業車の周囲の周囲物体認識範囲を決定し、決定された周囲物体認識範囲にブーム及びバケットが進入しないように、ブーム及び前記作業台の格納経路を演算する。そのため、本実施形態に係る高所作業車は、バケットだけでなく、ブームなど広範囲の干渉判定を行うことが可能となる。そのため、例えばバケット下面など、従来では確認が困難であった死角部分であっても、周囲物体との干渉を防ぐことができ、従来よりも安全かつ短時間でブーム及びバケットを自動格納することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:高所作業車
10:走行体
11:キャビン
12:旋回台
13:ブラケット
14:ブーム
15:バケット
16:アウトリガ
17:旋回駆動手段
18:伸縮駆動手段
19:起伏駆動手段
20:格納制御手段
21:自動格納スイッチ
22:レーザ距離測定装置取付け位置算出部
23:検出距離算出部
24:周囲物体位置座標算出部
25:最適格納経路算出部
26:メモリ
30:レーザ距離測定装置
40:旋回角度検出手段
41:伸縮長さ検出手段
42:起伏角度検出手段
図1
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