(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中心に形成された軸穴、1つの磁極あたり2個配置され、外周に沿って並べられた複数の磁石スロット、該複数の磁石スロットの径方向外側に形成された外周部、及び前記複数の磁石スロットの径方向内側に形成された芯部を備えた円筒形状の回転子コアと、前記複数の磁石スロットの各々内に固定された複数の永久磁石と、前記軸穴に嵌合した回転軸とを備え、前記回転子コアの外周部及び芯部が、各磁極において隣接する磁石スロットの間に形成されるd軸側の複数のセンターブリッジと、隣り合う磁極の磁石スロットの間に形成されるq軸側の複数のサイドブリッジとにより繋がっている回転子であって、
前記複数のサイドブリッジの各々に、隣り合う磁極の磁石スロット同士を連通させて前記外周部と前記芯部とを切り離す切り離し路を設け、
前記複数の磁石スロットの各々が、前記回転子コアの周方向に細長く延びる略矩形状に形成され、
前記複数のサイドブリッジの各々に、前記切り離し路から延びる、フラックスバリアとしての孔部を形成し、
前記孔部が、q軸を挟んで一対形成され、
前記一対の孔部の各々が、前記磁石スロットのq軸側の周方向側面に対して肉を残すように前記切り離し路から延びる半円弧状孔部と、該半円弧状孔部の磁石スロット側側面から前記磁石スロット及び前記切り離し路の双方に連通する連通孔部とで構成され、前記一対の孔部同士が連通していることを特徴とする回転子。
前記各磁極において、2個の前記磁石スロットの各々の径方向外面と径方向内面との中心をなす前記磁石スロットの各々の中心線がd軸に対して直交するように2個の前記磁石スロットが配置され、2個の前記磁石スロット内に固定される2個の永久磁石が一文字配置となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転子。
前記各磁極において、2個の前記磁石スロットの各々の径方向外面と径方向内面との中心をなす前記磁石スロットの各々の中心線がd軸に対して鋭角をなすように2個の前記磁石スロットが配置され、2個の前記磁石スロット内に固定される2個の永久磁石が略V字配置となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転子。
前記各磁極において、2個の前記磁石スロットの各々の径方向外面と径方向内面との中心をなす前記磁石スロットの各々の中心線がd軸に対して鈍角をなすように2個の前記磁石スロットが配置され、2個の前記磁石スロット内に固定される2個の永久磁石が略ハの字配置となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転子。
前記回転子コアの外周面の形状を、前記回転コアの外周面と固定子の固定子コアの内周面との間の空隙がd軸からq軸の周方向に向かって滑らかに増加するようにしたことを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか一項に記載の回転子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る回転子を備えた永久磁石式回転電機は、
図1に示されており、永久磁石式回転電機1は、8極48スロットの埋込磁石型同期電動機である。なお、本発明は、極数やスロット数、その他の各部分の寸法などによって何ら制約を受けるものではない。
【0012】
図1に示す永久磁石式回転電機1は、固定子10と、固定子10の固定子コア11の内周側に回転自在に配置された回転子20とを備えている。
ここで、固定子10は、円筒状の固定子コア11を備えている。固定子コア11の内周面側には、円周方向に等間隔で形成された複数(本実施形態にあっては48個)のスロット12及び複数(本実施形態にあっては48個)の磁極ティース13が形成される。各スロット12には、複数の固定子巻線14が巻装されている。
【0013】
また、回転子20は、回転子コア21と、複数(本実施形態にあっては、8極で16個)の永久磁石30と、回転軸31とを備えている。
回転子コア21は、軸心Cを中心とした円筒形状に形成され、積層鉄心で構成される。回転子コア21は、
図1に示すように、中心に形成された軸穴23と、1つの磁極22あたり2個配置され、外周に沿って並べられた複数(本実施形態にあっては、8極で16個)の磁石スロット24と、複数の磁石スロット24の径方向外側に形成された外周部25と、複数の磁石スロット24の径方向内側に形成された芯部26とを備えている。
【0014】
ここで、「芯部26」は、複数の磁石スロット24と軸穴23との間の部分を意味する。
各磁石スロット24は、
図2に示すように、径方向外面24a、径方向内面24b、d軸側の周方向側面24c及びq軸側の周方向側面24dを有する、回転子コア21の周方向に細長く延びる略矩形状に形成されている。そして、各磁石スロット24は、回転子コア21の軸方向の両端にまで延びる貫通孔で形成される。そして、各磁極22において、2個の磁石スロット24の径方向外面24aと径方向内面24bとの中心をなす磁石スロット24の中心線CLがd軸に対して直交するように2個の磁石スロット24が配置されている。
【0015】
また、回転子コア21における外周部25及び芯部26は、各磁極22において隣接する磁石スロット24の間に形成されるd軸側の複数(本実施形態にあっては8極で8個)のセンターブリッジ27と、
図1に示すように、隣り合う磁極22の磁石スロット24の間に形成されるq軸側の複数(本実施形態にあっては、8極で8個)のサイドブリッジ28とにより繋がっている(このサイドブリッジ28には、後述する切り離し路29が形成され、最終的には切り離し路29によって外周部25及び芯部26は切り離される)。
【0016】
また、各永久磁石30は、略矩形状体で構成され、
図1及び
図2に示すように、各磁石スロット24内に固定される。隣り合う磁極22の永久磁石30の極性は互いに異なっている。各磁極22において、2個の磁石スロット24の中心線CLがd軸に対して直交するように2個の磁石スロット24が配置されているので、各永久磁石30を各磁石スロット24内に固定することで、各磁極22における2個の磁石スロット24内に固定される2個の永久磁石30が一文字配置となっている。
【0017】
更に、回転軸31は、回転子コア21の軸穴23に焼嵌めによって嵌合固定され、回転子20は、回転軸31によって回転する。
そして、回転子コア21の各サイドブリッジ28には、
図1及び
図2に示すように、隣り合う磁極22の磁石スロット24同士を連通させて外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されている。この切り離し路29は、隣り合う磁極22の磁石スロット24の径方向外面24aに沿うように形成されている。切り離し路29は、回転子コア21の軸方向の両端を貫通するように形成される。この切り離し路29の径方向の幅は、電磁鋼板の板厚程度が好適である。その理由は、リラクタンストルクを大きくするために突極比を大きくするには、q軸インダクタンスを大きくする必要があり、すなわちq軸上の磁気抵抗を低下させる必要があり、そのためには切り離し路29の径方向の幅は狭いほど良く、また金型で打ち抜ける幅の限界は電磁鋼板の板厚程度であるためである。
【0018】
ここで、回転軸31を回転子コア21の軸穴23に焼嵌めによって嵌合固定すると、回転子コア21の芯部26、センターブリッジ27、サイドブリッジ28、及び外周部25が外周側に変形しようとする。しかし、サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されている。このため、芯部26のサイドブリッジ28における変形が切り離し路29のところで吸収され、サイドブリッジ28の近傍の外周部25付近の外周側への変形が抑制される。このため、芯部26に応力集中を発生させる箇所を形成することなく、回転軸31を軸穴23に嵌合した際に生じるサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍における最大主応力の最大値を低減できる。
【0019】
また、サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29を形成することにより、回転軸31に嵌合された回転子20を回転させた時のサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍の応力振幅を低減させることができる。
また、切り離し路29は、隣り合う磁極22の磁石スロット24の径方向外面24aに沿うように形成されるので、高速回転時のセンターブリッジ27の応力低減が可能となる。つまり、センターブリッジ27が回転子鉄心外側を支えており、切り離し路29が外側に有る方が回転子鉄心外側全体の重量を低下させることができるためである。
【0020】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る回転子について
図3を参照して説明する。
図3において、
図1及び
図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図3に示す回転子は、
図1に示す回転子20と基本構成は同様であるが、複数(8個)のサイドブリッジ28の各々に、切り離し路29から延びる、フラックスバリアとしての孔部40を形成した点で相違している。
【0021】
この孔部40は、
図3に示すように、q軸を挟んで一対形成されている。そして、各孔部40は、回転子コア21の軸方向の両端を貫通するように形成され、磁石スロット24のq軸側の周方向側面24d及びq軸のそれぞれに対して肉を残すように切り離し路29から先細形状に内径側に延びる略三角形状孔部で形成されている。
このように、各サイドブリッジ28に、切り離し路29から延びる、フラックスバリアとしての孔部40を形成したので、永久磁石30の径方向外側から径方向内側に向けてサイドブリッジ28を通る漏れ磁束を低減することができる。また、孔部40は、q軸を挟んで一対形成されているので、q軸を挟んだ隣り合う磁極22の各永久磁石30の径方向外側から径方向内側に向けてサイドブリッジ28を通る漏れ磁束を低減することができる。
【0022】
なお、第2実施形態に係る回転子においても、回転子コア21の各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されているので、芯部26に応力集中を発生させる箇所を形成することなく、回転軸31を軸穴23に嵌合した際に生じるサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍における最大主応力の最大値を低減できる。
また、各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29を形成することにより、回転軸31に嵌合された回転子20を回転させた時のサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍の応力振幅を低減させることができる。
【0023】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る回転子について
図4を参照して説明する。
図4において、
図1及び
図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図4に示す回転子は、
図1に示す回転子20と基本構成は同様であるが、複数(8個)のサイドブリッジ28の各々に、切り離し路29から延びる、フラックスバリアとしての孔部40を形成した点で相違している。
【0024】
この孔部40は、
図3に示す第2実施形態に係る回転子と同様に、q軸を挟んで一対形成されている。そして、各孔部40は、回転子コア21の軸方向の両端を貫通するように形成されるとともに、第2実施形態に係る回転子の各孔部40と異なり、磁石スロット24のq軸側の周方向側面24d及びq軸のそれぞれに対して肉を残すように切り離し路29から先細形状に延びる略三角形状孔部41と、略三角形状孔部41の磁石スロット側側面から磁石スロット24及び切り離し路29の双方に連通する連通孔部42とで構成されている。
【0025】
このように、第3実施形態に係る回転子においても、各サイドブリッジ28に、切り離し路29から延びる、フラックスバリアとしての孔部40を形成したので、永久磁石30の径方向外側から径方向内側に向けてサイドブリッジ28を通る漏れ磁束を低減することができる。また、孔部40は、q軸を挟んで一対形成されているので、q軸を挟んだ隣り合う磁極22の各永久磁石30の径方向外側から径方向内側に向けてサイドブリッジ28を通る漏れ磁束を低減することができる。
【0026】
そして、各孔部40は、磁石スロット24のq軸側の周方向側面24d及びq軸のそれぞれに対して肉を残すように切り離し路29から先細形状に延びる略三角形状孔部41と、略三角形状孔部41の磁石スロット側側面から磁石スロット24及び切り離し路29の双方に連通する連通孔部42とで構成されているので、第2実施形態に係る回転子の各孔部40よりも連通孔部42の分だけ磁気抵抗となる領域が大きい。このため、サイドブリッジ28を通る漏れ磁束を第2実施形態に係る回転子の各孔部40よりも低減することができる。
【0027】
なお、第3実施形態に係る回転子においても、回転子コア21の各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されているので、芯部26に応力集中を発生させる箇所を形成することなく、回転軸31を軸穴23に嵌合した際に生じるサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍における最大主応力の最大値を低減できる。
また、各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29を形成することにより、回転軸31に嵌合された回転子20を回転させた時のサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍の応力振幅を低減させることができる。
【0028】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る回転子について
図5を参照して説明する。
図5において、
図1及び
図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図5に示す回転子は、
図1に示す回転子20と基本構成は同様であるが、複数(8個)のサイドブリッジ28の各々に、切り離し路29から延びる、フラックスバリアとしての孔部40を形成した点で相違している。
【0029】
この孔部40は、
図3に示す第2実施形態に係る回転子と同様に、q軸を挟んで一対形成されている。そして、各孔部40は、回転子コア21の軸方向の両端を貫通するように形成されるとともに、第2実施形態及び第3実施形態に係る回転子の各孔部40と異なり、磁石スロット24のq軸側の周方向側面24dに対して肉を残すように切り離し路29から延びる半円弧状孔部43と、半円弧状孔部43の磁石スロット側側面から磁石スロット24及び切り離し路29の双方に連通する連通孔部44とで構成され、一対の孔部40同士が連通している。
【0030】
このように、第4実施形態に係る回転子においても、各サイドブリッジ28に、切り離し路29から延びる、フラックスバリアとしての孔部40を形成したので、永久磁石30の径方向外側から径方向内側に向けてサイドブリッジ28を通る漏れ磁束を低減することができる。また、孔部40は、q軸を挟んで一対形成されているので、q軸を挟んだ隣り合う磁極22の各永久磁石30の径方向外側から径方向内側に向けてサイドブリッジ28を通る漏れ磁束を低減することができる。
【0031】
そして、各孔部40は、磁石スロット24のq軸側の周方向側面24dに対して肉を残すように切り離し路29から延びる半円弧状孔部43と、半円弧状孔部43の磁石スロット側側面から磁石スロット24及び切り離し路29の双方に連通する連通孔部44とで構成され、一対の孔部40同士が連通しているので、第3実施形態に係る回転子の各孔部40よりも磁気抵抗となる領域が大きい。このため、サイドブリッジ28を通る漏れ磁束を第3実施形態に係る回転子の各孔部40よりも低減することができる。
【0032】
なお、第4実施形態に係る回転子においても、回転子コア21の各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されているので、芯部26に応力集中を発生させる箇所を形成することなく、回転軸31を軸穴23に嵌合した際に生じるサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍における最大主応力の最大値を低減できる。
また、各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29を形成することにより、回転軸31に嵌合された回転子20を回転させた時のサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍の応力振幅を低減させることができる。
【0033】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る回転子について
図6を参照して説明する。
図6において、
図1及び
図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図6に示す回転子は、
図1に示す回転子20と基本構成は同様であるが、各磁極22において、2個の磁石スロット24の各々の径方向外面24aと径方向内面24bとの中心をなす磁石スロット24の各々の中心線CLがd軸に対して鋭角をなすように2個の磁石スロット24が配置され、2個の磁石スロット24内に固定される2個の永久磁石30が略V字配置となっている点で相違している。
【0034】
つまり、d軸と2個の磁石スロット24の各々の径方向外面24aと径方向内面24bとの中心をなす磁石スロット24の各々の中心線CLとのなす角度(d軸に対して右側の磁石スロット24につき、当該中心線CLがd軸に対して時計回りに回ったときの回転角度と同じ意味、d軸に対して左側の磁石スロット24につき、当該中心線CLがd軸に対して反時計回りに回ったときの回転角度と同じ意味)θ1が、鋭角をなすように2個の磁石スロット24が配置され、2個の磁石スロット24内に固定される2個の永久磁石30が略V字配置となっている。
【0035】
このように、各磁極22において、2個の永久磁石30を略V字配置とすると、突極比(=Lq/Ld、Lqはq軸方向のインダクタンス、Ldはd軸方向のインダクタンス)が大きくなり、リラクタンストルクを大きくすることができる。
なお、第5実施形態に係る回転子においても、回転子コア21の各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されているので、芯部26に応力集中を発生させる箇所を形成することなく、回転軸31を軸穴23に嵌合した際に生じるサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍における最大主応力の最大値を低減できる。
また、各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29を形成することにより、回転軸31に嵌合された回転子20を回転させた時のサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍の応力振幅を低減させることができる。
【0036】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る回転子について
図7を参照して説明する。
図7において、
図1及び
図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図7に示す回転子は、
図1に示す回転子20と基本構成は同様であるが、各磁極22において、2個の磁石スロット24の各々の径方向外面24aと径方向内面24bとの中心をなす磁石スロット24の各々の中心線CLがd軸に対して鈍角をなすように2個の磁石スロット24が配置され、2個の磁石スロット24内に固定される2個の永久磁石30が略ハの字配置となっている点で相違している。
【0037】
つまり、d軸と、2個の磁石スロット24の各々の径方向外面24aと径方向内面24bとの中心をなす磁石スロット24の各々の中心線CLとのなす角度(d軸に対して右側の磁石スロット24につき、当該中心線CLがd軸に対して時計回りに回ったときの回転角度と同じ意味、d軸に対して左側の磁石スロット24につき、当該中心線CLがd軸に対して反時計回りに回ったときの回転角度と同じ意味)θ2が、鈍角をなすように2個の磁石スロット24が配置され、2個の磁石スロット24内に固定される2個の永久磁石30が略ハの字配置となっている。
【0038】
このように、各磁極22において、2個の永久磁石30を略ハの字配置とすると、q軸方向のインダクタンスLqが小さくなり、突極比が小さくなるものの、応答性が良好になる。これにより、端子電圧を低くすることができる。
また、各磁極22において、2個の永久磁石30を略ハの字配置とすると、
図7に示すように、磁石スロット24の径方向外側の外周部25の肉厚が
図2に示す2個の永久磁石30を一文字配置した場合よりも薄くなる。これにより、外周部25の質量が低減でき、回転子20を高速回転したときにセンターブリッジ27に生じる応力を小さくすることができる。
【0039】
また、第6実施形態に係る回転子においても、回転子コア21の各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されているので、芯部26に応力集中を発生させる箇所を形成することなく、回転軸31を軸穴23に嵌合した際に生じるサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍における最大主応力の最大値を低減できる。
【0040】
また、各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29を形成することにより、回転軸31に嵌合された回転子20を回転させた時のサイドブリッジ28を含めた磁石スロット24近傍の応力振幅を低減させることができる。
なお、
図2に示す第1実施形態に係る回転子20の場合には、2個の永久磁石30が一文字配置されている。この場合、q軸方向のインダクタンスが2個の永久磁石30を略V字配置した時と略ハの字配置した時とのほぼ中間の大きさとなる。このため、突極比が2個の永久磁石30を略V字配置した時と略ハの字配置した時とのほぼ中間の大きさとなりリラクタンストルクの大きさの中間の特性となる。また、応答性についても2個の永久磁石30を略V字配置した時と略ハの字配置した時とのほぼ中間の特性となる。
【0041】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態に係る回転子について
図8を参照して説明する。
図8において、
図1及び
図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図8に示す回転子は、
図1及び
図2に示す第1実施形態に係る回転子20と基本構成は同様であるが、
図1及び
図2に示す回転子20の回転子コア21の外周面の形状は円形で構成され、回転コア21の外周面と円形で構成される固定子コア11の内周面との間の空隙がd軸からq軸の周方向に向かって均一になっているのに対し、
図8に示す回転子の回転子コア21の外周面21aの形状は、回転子コア21の外周面21aと円形で構成される固定子コア11の内周面11aとの間の空隙Gがd軸からq軸の周方向に向かって滑らかに増加するようになっている点で相違している。
【0042】
このように、回転子コア21の外周面21aの形状を、回転子コア21の外周面21aと固定子コア11の内周面11aとの間の空隙Gがd軸からq軸の周方向に向かって滑らかに増加するようにすることで、エアギャップ部の磁束の空間高調波成分を低減することができ、コギングトルクを低減することができ、磁石スロット24近傍における最大主応力の最大値を低減しつつモータの応答性を向上することができる。
【0043】
また、
図8に示す第7実施形態に係る回転子においても、回転子コア21の各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されているので、
図1及び
図2に示す第1実施形態に係る回転子20に切り離し路29を形成した効果と同様の効果を得ることができる。
【0044】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態に係る回転子について
図9を参照して説明する。
図9において、
図6に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図9に示す回転子は、
図6に示す第5実施形態に係る回転子と基本構成は同様であるが、
図6に示す回転子の回転子コア21の外周面の形状は円形で構成され、回転コア21の外周面と円形で構成される固定子コアの内周面との間の空隙がd軸からq軸の周方向に向かって均一になっているのに対し、
図9に示す回転子の回転子コア21の外周面21aの形状は、回転子コア21の外周面21aと円形で構成される固定子コア11の内周面11aとの間の空隙Gがd軸からq軸の周方向に向かって滑らかに増加するようになっている点で相違している。
【0045】
このように、回転子コア21の外周面21aの形状を、回転子コア21の外周面21aと固定子コア11の内周面11aとの間の空隙Gがd軸からq軸の周方向に向かって滑らかに増加するようにすることで、エアギャップ部の磁束の空間高調波成分を低減することができ、コギングトルクを低減することができ、磁石スロット24近傍における最大主応力の最大値を低減しつつモータの応答性を向上することができる。
【0046】
また、
図9に示す第8実施形態に係る回転子においても、回転子コア21の各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されているので、
図6に示す第5実施形態に係る回転子20に切り離し路29を形成した効果と同様の効果を得ることができる。
更に、
図9に示す第8実施形態に係る回転子においても、
図6に示す第5実施形態に係る回転子と同様に、d軸と2個の磁石スロット24の各々の径方向外面24aと径方向内面24bとの中心をなす磁石スロット24の各々の中心線CLとのなす角度θ1が、鋭角をなすように2個の磁石スロット24が配置され、2個の磁石スロット24内に固定される2個の永久磁石30が略V字配置となっている。各磁極において、2個の永久磁石30を略V字配置とすると、突極比(=Lq/Ld、Lqはq軸方向のインダクタンス、Ldはd軸方向のインダクタンス)が大きくなり、リラクタンストルクを大きくすることができる。
【0047】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態に係る回転子について
図10を参照して説明する。
図10において、
図7に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図10に示す回転子は、
図7に示す第6実施形態に係る回転子と基本構成は同様であるが、
図7に示す回転子の回転子コア21の外周面の形状は円形で構成され、回転コア21の外周面と円形で構成される固定子コアの内周面との間の空隙がd軸からq軸の周方向に向かって均一になっているのに対し、
図10に示す回転子の回転子コア21の外周面21aの形状は、回転子コア21の外周面21aと円形で構成される固定子コア11の内周面11aとの間の空隙Gがd軸からq軸の周方向に向かって滑らかに増加するようになっている点で相違している。
【0048】
このように、回転子コア21の外周面21aの形状を、回転子コア21の外周面21aと固定子コア11の内周面11aとの間の空隙Gがd軸からq軸の周方向に向かって滑らかに増加するようにすることで、エアギャップ部の磁束の空間高調波成分を低減することができ、コギングトルクを低減することができ、磁石スロット24近傍における最大主応力の最大値を低減しつつモータの応答性を向上することができる。
【0049】
また、
図10に示す第9実施形態に係る回転子においても、回転子コア21の各サイドブリッジ28に、外周部25と芯部26とを切り離す切り離し路29が形成されているので、
図7に示す第6実施形態に係る回転子20に切り離し路29を形成した効果と同様の効果を得ることができる。
更に、
図10に示す第9実施形態に係る回転子においても、
図7に示す第6実施形態に係る回転子と同様に、d軸と、2個の磁石スロット24の各々の径方向外面24aと径方向内面24bとの中心をなす磁石スロット24の各々の中心線CLとのなす角度θ2が、鈍角をなすように2個の磁石スロット24が配置され、2個の磁石スロット24内に固定される2個の永久磁石30が略ハの字配置となっている。各磁極において、2個の永久磁石30を略ハの字配置とすると、q軸方向のインダクタンスLqが小さくなり、突極比が小さくなるものの、応答性が良好になる。これにより、端子電圧を低くすることができる。
【0050】
また、各磁極において、2個の永久磁石30を略ハの字配置とすると、磁石スロット24の径方向外側の外周部25の肉厚が
図2に示す2個の永久磁石30を一文字配置した場合よりも薄くなる。これにより、外周部25の質量が低減でき、回転子を高速回転したときにセンターブリッジ27に生じる応力を小さくすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0051】
例えば、切り離し路29は、隣り合う磁極22の磁石スロット24同士を連通させて外周部25と芯部26とを切り離すのであれば、サイドブリッジ28の径方向のいずれの位置に形成されてもよく、必ずしも、隣り合う磁極22の磁石スロット24の径方向外面24aに沿うように形成されている必要はない。
【実施例】
【0052】
本発明の効果を検証すべく、本発明例に係る回転子の軸穴に回転軸が嵌合(焼嵌め)した時の磁石スロット近傍の最大主応力の分布と、比較例に係る回転子の軸穴に回転軸が嵌合(焼嵌め)した時の磁石スロット近傍の最大主応力の分布とを調査した。
また、本発明例に係る回転子を最高回転速度(約20,000r/min)で回転させた時の磁石スロット近傍の応力振幅と平均応力との関係と、比較例に係る回転子を最高回転速度(約20,000r/min)で回転させた時の磁石スロット近傍の応力振幅と平均応力との関係とを調査した。
【0053】
なお、調査の対象となる本発明例に係る回転子は、
図13に示すように、
図5に示す第4実施形態に係る回転子と同様である。
また、調査の対象となる比較例に係る回転子は、
図11に示すように、回転子コア21が、中心に形成された軸穴23、外周に沿って1つの磁極22あたり並べて2個配置された複数(8個)の磁石スロット24、複数の磁石スロットの径方向外側に形成された外周部25、及び複数の磁石スロット24の径方向内側に形成された芯部26を備えた円筒形状に形成されている。そして、各磁石スロット12のq軸側の周方向側面24dから空気領域24eが延びている。この空気領域24eは、各磁石スロット12のq軸側の周方向側面24dから周方向外側に延びた後、径方向内方に延び、更に径方向内側の先端が周方向内側に湾曲するように形成されている。
【0054】
本発明例に係る回転子の軸穴に回転軸が嵌合(焼嵌め)した時の磁石スロット近傍の最大主応力の分布を
図13に、比較例に係る回転子の軸穴に回転軸が嵌合(焼嵌め)した時の磁石スロット近傍の最大主応力の分布を
図11に示す。
図11に示すように、比較例に係る回転子の軸穴に回転軸が嵌合(焼嵌め)した時、最大主応力の最大値は、各磁石スロット24に形成された空気領域24eの先端近傍に発生し、その大きさは453MPaであった。
【0055】
これに対し、
図13に示すように、本発明例に係る回転子の軸穴に回転軸が嵌合(焼嵌め)した時、最大主応力の最大値は、各磁石スロット24の径方向内面のセンターブリッジ27側の端部近傍に発生し、その大きさは401MPaであり、最大主応力の最大値が比較例に対し約11%低下した。
また、本発明例に係る回転子を最高回転速度(約20,000r/min)で回転させた時の磁石スロット近傍の応力振幅と平均応力との関係を
図14に、比較例に係る回転子を最高回転速度(約20,000r/min)で回転させた時の磁石スロット近傍の応力振幅と平均応力との関係を
図12に示す。
【0056】
図12に示すように、比較例に係る回転子を当該最高回転速度で回転させた時の
図11においてaで示すセンターブリッジ27の径方向外周側、bで示すセンターブリッジ27の径方向内周側、及びcで示すサイドブリッジ28の径方向外周側のいずれにおいても、応力振幅が疲労限度を超えた。
これに対し、
図14に示すように、本発明例に係る回転子を当該最高回転速度で回転させた時の
図13においてaで示すセンターブリッジ27の径方向外周側、bで示すセンターブリッジ27の径方向内周側、及びcで示すサイドブリッジ28の径方向外周側のいずれにおいても、応力振幅が疲労限度内となった。