(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後上脚部および前記後下脚部のうちの少なくとも一方に当接可能とされ、前記ガントリの前記起立姿勢から前記倒伏姿勢への姿勢変更において、前記後上脚部および前記後下脚部が前記連結ピンを支点として後方に屈曲することを規制するストッパを更に備える、請求項1に記載の建設機械。
前記後上脚部および前記後下脚部のうちの少なくとも一方の脚部に当接可能とされ、前記ガントリの前記起立姿勢から前記倒伏姿勢への姿勢変更において、前記後上脚部および前記後下脚部が前記連結ピンを支点として前方に屈曲するように、前記少なくとも一方の脚部を付勢する付勢部材を更に備える、請求項1または2に記載の建設機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載された技術では、ガントリの倒伏動作に際して、予め固定ピンが丸穴から脱離される必要がある。固定ピンが挿通される丸穴は、後下側部材の上端部に位置するため、作業者は比較的高所での作業を行うこととなる。また、後上側部材および後下側部材の丸穴から固定ピンが引抜かれるためには、油圧シリンダの伸縮の微調整によって両丸穴の位置が調整される必要があり、作業に手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ガントリの倒伏姿勢と起立姿勢との間での姿勢変更作業を容易に実行することが可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の建設機械では、固定ピンおよびスライドピンによって、後下脚部および後上脚部が連結されていた。一方、本発明の発明者は、連結ピンが起立姿勢において後下脚部および後上脚部を連結するとともに、当該連結ピンが起立姿勢と倒伏姿勢との間の姿勢変更における支点となることができるような、連結ピンの配置があることを見出した。すなわち、本発明の一の局面に係る建設機械は、機体と、前記機体に起伏可能に支持された起伏部材と、前記起伏部材の後方で前記機体に対して起立した起立姿勢と前記機体上に倒伏した倒伏姿勢との間で姿勢変更可能なように前記機体に支持され、前記起伏部材の起伏動作において前記起伏部材を支持する支柱として機能するガントリと、前記機体に回動可能に連結される基端部と前記ガントリに連結される先端部とを備え、前記ガントリを前記起立姿勢と前記倒伏姿勢との間で姿勢変更させるように伸縮するガントリ起伏シリンダと、を備え、前記ガントリは、前記ガントリ起伏シリンダの伸縮に応じて前記起伏部材の後方において水平に延びる第1軸心回りに回動するように前記機体に支持された前脚部と、前記前脚部の後方で前記第1軸心と平行な第2軸心回りに回動するように前記機体に支持された後下脚部であって、当該後下脚部の回動端部に前記第2軸心と平行に延びる第1孔部が開口されている、後下脚部と、前記起立姿勢において前記前脚部が前記機体から後方かつ上方に延びるとともに前記後下脚部が上下方向に沿って延びるように前記前脚部と前記後下脚部とを接続する後上脚部であって、当該後上脚部は、前記第1軸心と平行な第3軸心回りに回動可能なように前記後下脚部の前記回動端部に接続された基端部と、前記第1軸心と平行な第4軸心回りに回動可能なように前記前脚部の先端部に接続された回動端部と、を有し、更に、前記後上脚部の前記基端部に前記第3軸心と平行に延びる第2孔部が開口されている、後上脚部と、前記後下脚部の前記第1孔部および前記後上脚部の前記第2孔部に挿通され前記第3軸心を形成する連結ピンと、を備え、前記第1孔部および前記第2孔部は、前記起立姿勢において前記連結ピンが前記後下脚部に対する前記後上脚部の上下方向の位置を規制するとともに、前記ガントリの前記起立姿勢から前記倒伏姿勢への姿勢変更において前記後下脚部および前記後上脚部が前記連結ピンを支点として前方に屈曲するとともに前記前脚部が前記機体上に倒伏することを前記連結ポンが許容するような位置にそれぞれ開口されている。
【0009】
本構成によれば、ガントリが、ガントリ起伏シリンダの伸縮に応じて起立姿勢と倒伏姿勢との間で姿勢変更可能とされる。このため、建設機械の輸送時には、ガントリが倒伏姿勢とされることで、機体およびガントリの輸送性が向上する。また、連結ピンは、ガントリの起立姿勢において後下脚部に対する後上脚部の上下方向の位置を規制する。更に、連結ピンは、ガントリが姿勢変更することを、第2軸心と第3軸心との距離と第3軸心と第4軸心との距離との比を一定に保持しながら許容する。この結果、連結ピンは、ガントリの起立姿勢および倒伏姿勢のいずれの姿勢においても、第1孔部および第2孔部に挿通された状態とされるため、ガントリの姿勢変更に際して、第1孔部および第2孔部から連結ピンが脱離される必要がない。このため、作業者は、連結ピンの着脱のために機体よりも高い位置で作業をする必要がなく、ガントリの姿勢変更を従来よりも容易に実行することができる。
【0010】
上記の構成において、前記後下脚部は、前記第2軸心よりも下方に配置された第1被連結部を有し、前記機体は、前記第1被連結部よりも下方に配置された第2被連結部を有し、前記第1被連結部と前記第2被連結部とを連結する連結状態と、前記第1被連結部および前記第2被連結部のうちの少なくとも一方から脱離されることで前記連結を解除する非連結状態との間で状態変更が可能な起立用連結部材であって、前記連結状態において前記後上脚部および前記後下脚部が前記連結ピンを支点として屈曲することを規制する、起立用連結部材を更に備えるものでもよい。
【0011】
本構成によれば、ガントリの起立姿勢において、起立用連結部材が後下脚部を機体に固定することで、後下脚部および後上脚部の屈曲が規制される。このため、ガントリを起立姿勢に安定して保持することができる。
【0012】
上記の構成において、前記後上脚部および前記後下脚部のうちの少なくとも一方に当接可能とされ、前記ガントリの前記起立姿勢から前記倒伏姿勢への姿勢変更において、前記後上脚部および前記後下脚部が前記連結ピンを支点として後方に屈曲することを規制するストッパを更に備えるものでもよい。
【0013】
本構成によれば、ガントリの起立姿勢から倒伏姿勢への姿勢変更に際して、後上脚部および後下脚部が後方に屈曲することが防止される。このため、ガントリの姿勢変更が安定して実現される。
【0014】
上記の構成において、前記後上脚部および前記後下脚部のうちの少なくとも一方の脚部に当接可能とされ、前記ガントリの前記起立姿勢から前記倒伏姿勢への姿勢変更において、前記後上脚部および前記後下脚部が前記連結ピンを支点として前方に屈曲するように、前記少なくとも一方の脚部を付勢する付勢部材を更に備えるものでもよい。
【0015】
本構成によれば、ガントリの起立姿勢から倒伏姿勢への姿勢変更に際して、後上脚部および後下脚部が前方に屈曲することが促進される。このため、ガントリの姿勢変更がスムーズに実現される。
【0016】
上記の構成において、前記ガントリの前記倒伏姿勢において前記前脚部のうち前記第1軸心と前記第4軸心との間の部分と前記機体とを連結する、倒伏用連結部材を更に備えるものでもよい。
【0017】
本構成によれば、ガントリの倒伏姿勢において、機体と前脚部とを連結することができる。このため、ガントリを倒伏姿勢に安定して保持することができる。
【0018】
上記の構成において、前記後下脚部は、前記第2軸心よりも下方に配置された第1被連結部を有し、前記機体は、前記第1被連結部よりも下方に配置された第2被連結部を有し、前記前脚部は、前記第1軸心と前記第4軸心との間に配置される第3被連結部を有し、前記第1被連結部と前記第2被連結部とを連結することで前記ガントリを前記起立姿勢に保持する起立連結状態と、前記第2被連結部と前記第3被連結部とを連結することで前記ガントリを前記倒伏姿勢に保持する倒伏連結状態と、前記第1被連結部、前記第2被連結部および前記第3被連結部のうちの少なくとも一の連結部から脱離されることで前記後上脚部および前記後下脚部が前記連結ピンを支点として屈伸し前記ガントリが前記起立姿勢と前記倒伏姿勢との間で姿勢変更することを許容する非連結状態と、の間で状態変更が可能な連結部材を更に備えるものでもよい。
【0019】
本構成によれば、ガントリの起立姿勢において、起立用連結部材が後下脚部を機体に固定することで、後下脚部および後上脚部の屈曲が規制される。このため、ガントリを起立姿勢に安定して保持することができる。また、本構成によれば、ガントリの倒伏姿勢において、機体と前脚部とを連結することができる。このため、ガントリを倒伏姿勢に安定して保持することができる。更に、起立姿勢および倒伏姿勢において、連結部材を共用することができるため、建設機械のコストが低減される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガントリの倒伏姿勢と起立姿勢との間での姿勢変更作業を容易に実行することが可能な建設機械が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るクレーン(建設機械)の側面図である。なお、
図1には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係るクレーン1の構造を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係るクレーンの使用態様などを限定するものではない。
【0023】
クレーンは、地面上で走行可能な下部走行体1(機体)と、下部走行体1の上方に配置される上部旋回体2(機体)と、起伏部材としてのブーム3と、を備える。なお、上部旋回体2の前端部には、キャブが備えられている。キャブは、クレーンの運転席に相当する。上部旋回体2は、上下方向に延びる旋回中心CL(
図2)回りに旋回可能なように下部走行体1に搭載されている。上部旋回体2は、基台としての旋回フレーム21を備える。
【0024】
ブーム3は、上部旋回体2の旋回フレーム21に起伏可能に支持されている。
【0025】
クレーンは、ガントリ4と、カウンタウエイト5と、ブームガイライン6と、上部スプレッダ7と、下部スプレッダ8と、ブーム起伏ロープ9と、ブーム起伏ウインチ10と、ブームポイントシーブ11と、アイドラシーブ12と、フック13と、巻上げロープ14と、巻上げドラム15と、を更に備える。
【0026】
ガントリ4は、上部旋回体2の旋回フレーム21の後部に装着されている。詳しくは、ガントリ4は、ブーム3の後方で旋回フレーム21に支持され、ブーム3の起伏動作においてブーム3を支持する支柱として機能する。
【0027】
カウンタウエイト5は、ガントリ4の後方で旋回フレーム21に装着されており、クレーンが吊り荷を吊りあげる際にクレーンのバランスを保つ機能を備えている。
【0028】
上部スプレッダ7および下部スプレッダ8は、それぞれ複数のシーブからなる。また、上部スプレッダ7は、ブームガイライン6によってブーム3の先端部に接続されている。
ブーム起伏ロープ9は、ブーム起伏ウインチ10から引き出され、ガントリ4の先端部の不図示のシーブに掛けられた後、下部スプレッダ8と上部スプレッダ7との間で複数回掛け回される。ブーム起伏ウインチ10は、旋回フレーム21の後部に配置される。なお、引き出されたブーム起伏ロープ9の先端は、ガントリ4に固定される。ブーム起伏ウインチ10は、ブーム起伏ロープ9の巻き取りおよび繰り出しを行うことで、上部スプレッダ7と下部スプレッダ8との間の距離を変化させ、ブーム3をガントリ4に対して相対的に回動させながらブーム13を起伏させる。
【0029】
巻上げドラム15は、旋回フレーム21の中央部に備え付けられている。また、ブームポイントシーブ11およびアイドラシーブ12は、ブーム3の先端部に回転自在に支持されている。巻上げドラム15から引き出された巻上げロープ14の先端部には、吊荷用のフック13が備え付けられる。そして、巻上げロープ14の一端は、ブーム3の先端部のブームポイントシーブ11と、フック13に設けられた不図示のシーブブロックのシーブとの間に掛け回された後、ブーム3の先端部に固定される。一方、巻上げロープ14の他端は、ブームポイントシーブ11、アイドラシーブ12を経由して巻上げドラム15に巻きつけられている。従って、巻上げドラム15が巻上げロープ14の巻き取りや繰り出しを行うと、ブームポイントシーブ11とフック13のシーブとの間の距離が変わって、ブーム3の先端部から垂下されたフック13の巻上げ及び巻下げが行われる。
【0030】
次に、
図2乃至
図8を参照して、本実施形態に係るガントリ4の構造について説明する。
図2は、本実施形態に係るクレーンにおいて、ガントリ4が上部旋回体2に対して起立姿勢とされた状態の側面図である。
図3は、ガントリ4が上部旋回体2に対して起立姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更する状態の側面図である。
図4は、ガントリ4が上部旋回体2に対して倒伏姿勢とされた状態の側面図である。
図5は、ガントリ4の起立姿勢および倒伏姿勢を重ねて示す側面図であり、起立姿勢のガントリ4が実線、倒伏姿勢のガントリ4が破線でそれぞれ示されている。
図6は、ガントリ4の後記のストッパ26およびコイルばね26Bを拡大した側面図である。
図7は、ガントリ4が上部旋回体2に対して起立姿勢とされた状態の背面図である。更に、
図8は、ガントリ4が上部旋回体2に対して倒伏姿勢とされた状態の背面図である。
【0031】
上部旋回体2の旋回フレーム21は、一対の側壁部22(
図7)と、水平に延びる底面部23と、一対のブラケット28(第2被連結部)と、を有する。底面部23は、平面視で略矩形形状を備えている。一対の側壁部22は、底面部23の左右両端部から上方に向かって立設されており、前後方向に延びている。前述のブーム起伏ウインチ10および巻上げドラム15は、一対の側壁部22または底面部23に不図示のブラケットなどを介して支持されている。本実施形態では、ブーム起伏ウインチ10および巻上げドラム15の回転軸は、左右方向と平行に延びている。
【0032】
一対のブラケット28は、底面部23の後端部に配置されている。
図7に示すように、一対のブラケット28は、左右方向に間隔をおいて配置され、それぞれ、後記の一対の後下側脚部43の下方にそれぞれ位置する。ブラケット28には、取付孔28A(
図7)が開口されている。取付孔28Aには、後記の連結具45の下側ハッカー45Bが係止される。
【0033】
ガントリ4は、左右一対の前側脚部41(前脚部)と、左右一対の後上側脚部42(後上脚部)と、左右一対の後下側脚部43(後下脚部)と、を有する(
図2)。
【0034】
一対の前側脚部41は、左右方向に間隔をおいて配置されており、それぞれ、一対の側壁部22に支軸24(第1軸心)回りに回動可能に支持されている。支軸24は、左右方向に沿って水平に延びている。また、一対の前側脚部41は、ブーム3の後方に配置されている。
【0035】
一対の前側脚部41は、それぞれ、連結部33と、連結ブラケット41A(第3被連結部)と、当接ブラケット41Cと、緩衝材41Dと、を備える。連結部33は、前側脚部41の上端部に固定されている。連結部33は、側面視で略三角形状を備えている。連結部33は、連結軸34を備える。連結軸34は、連結部33の上端部(ガントリ4の頂部)に配置され、左右方向に沿って延びる軸部である。連結軸34には、前述の下部スプレッダ8が回動可能に取り付けられる。
【0036】
連結ブラケット41Aは、前側脚部41の長手方向の中央部よりもやや先端側において、後上側脚部42に向かって突出するように前側脚部41の本体部分に固定されている。連結ブラケット41Aには、取付孔41Bが開口されている。当接ブラケット41Cは、連結ブラケット41Aよりも僅かに前側脚部41の基端側において、後上側脚部42に向かって突出するように前側脚部41の本体部分に固定されている。なお、
図2に示すように、当接ブラケット41Cの突出高さは、連結ブラケット41Aの突出高さよりも小さい。当接ブラケット41Cは、略直方体形状を備えている。緩衝材41Dは、当接ブラケット41Cの先端面に固定されている。緩衝材41Dは、弾性材料で構成されている。
【0037】
一対の後上側脚部42は、それぞれ、前側脚部41と後下側脚部43とを接続する。一対の後上側脚部42は、それぞれ、下端部42A(基端部)と、上端部42B(回動端部)と、を有する。下端部42Aは、支軸24と平行な軸心(第3軸心)回りに回動可能なように後下側脚部43に接続される。当該後上側脚部42の下端部42Aには、支軸24と平行に延びる孔部42H(第2孔部)(
図7)が開口されている。孔部42Hには、連結ピン46が装着される。そして、この連結ピン46が、上記の後上側脚部42Aの軸心(第3軸心)を形成する。上端部42Bは、支軸24と平行な支軸47(第4軸心)回りに回動可能なように前側脚部41の連結部33に接続されている。なお、前述の連結ブラケット41Aは、
図2に示すように、上記の支軸47と支軸24との間に位置している。
【0038】
一対の後下側脚部43は、左右方向に間隔をおいて配置されており、それぞれ、前側脚部41の後方で一対の側壁部22に支軸24と平行な支軸25(第2軸心)回りに回動可能に支持されている。なお、一対の後下側脚部43の上端部には、それぞれ、支軸24と平行に延びるように孔部43H(第1孔部)が開口されている(
図7)。孔部43Hには、連結ピン46が装着される。
【0039】
図7を参照して、一対の後下側脚部43は、それぞれ、外側板43Aと、内側板43Cと、を有する。換言すれば、一対の後下側脚部43は、それぞれ一対の板状部材によって構成されている。
図7に示すように、外側板43Aは、後下側脚部43の左右方向の外側に位置し、上下方向に延びている。同様に、内側板43Cは、後下側脚部43の左右方向の内側に位置し、上下方向に延びている。外側板43Aおよび内側板43Cの上端部には、前述の孔部43Hがそれぞれ開口されている。また、外側板43Aおよび内側板43Cに、前述の後上側脚部42が挟まれるように配置されている。
【0040】
外側板43Aは、外側突出部43Bを備える(
図6、
図7)。外側突出部43Bは、外側板43Aの下端部の後側が、支軸25よりも下方に長く延びた部分である(
図6)。外側突出部43Bは、後記のストッパ26の緩衝材26Aに当接可能とされる。
【0041】
また、内側板43Cは、内側突出部43D(第1被連結部)を有する(
図6、
図7)。内側突出部43Dは、内側板43Cの下端部が、支軸25よりも後方かつ下方に長く延びた部分である。内側突出部43Dには、取付孔43Eが開口されている(
図6)。取付孔43Eには、後述の連結具45の上側ハッカー45Aが係止される。なお、前述のブラケット28(
図7)は、後下側脚部43の内側突出部43Dよりも下方に配置されている(
図7)。
【0042】
更に、クレーンは、左右一対の油圧シリンダ44(ガントリ起伏シリンダ)(
図2)と、左右一対の連結具45(起立用連結部材、倒伏用連結部材、連結部材)と、左右一対の連結ピン46と、左右一対のストッパ26と、を備える。
【0043】
左右一対の油圧シリンダ44(
図2)は、旋回フレーム21に回動可能に連結される基端部と、ガントリ4の前側脚部41に連結される先端部とを備える。なお、
図2乃至
図5では、旋回フレーム21のうち油圧シリンダ44の基端部が連結される部分の図示を省略している。また、油圧シリンダ44は、クレーンが備える不図示の油圧ポンプから供給される作動油を受け入れ、伸縮する。この際、油圧シリンダ44は、ガントリ4が上部旋回体2に対して起立した起立姿勢とガントリ4が上部旋回体2上に倒伏した倒伏姿勢との間でガントリ4を姿勢変更させるように伸縮する(
図2乃至
図5参照)。
【0044】
左右一対の連結具45は、公知のターンバックル式の固定部材である。連結具45は、上側ハッカー45Aと、下側ハッカー45Bと、を有する。連結具45の中央部のターンバックル部分が回転されることで、上側ハッカー45Aと下側ハッカー45Bとの間の距離が変化する。作業者は、上側ハッカー45Aをガントリ4の内側突出部43Dの取付孔43Eまたは連結ブラケット41Aの取付孔41Bに係止することができる。また、作業者は、下側ハッカー45Bを、旋回フレーム21のブラケット28の取付孔28Aに係止することができる。
【0045】
左右一対の連結ピン46は、それぞれ、後下側脚部43の孔部43H(
図7)および後上側脚部42の孔部42H(
図7)に挿通されることで、後上側脚部42と後下側脚部43とを連結するとともに、後上側脚部42および後下側脚部43の回動(屈伸)における軸心(第3軸心)を形成する。
【0046】
左右一対のストッパ26(
図2、
図6)は、支軸25の下方において旋回フレーム21の側壁部22にそれぞれ固定されている。また、ストッパ26は、前後方向において、外側突出部43Bに対向するように配置されている(
図6)。ストッパ26は、緩衝材26Aと、コイルばね26B(付勢部材)と、を有する。緩衝材26Aは、弾性材料から構成される。コイルばね26Bは、緩衝材26Aを外側突出部43Bに向かって付勢する。このような構成によって、ストッパ26は、ガントリ4の起立姿勢から倒伏姿勢への姿勢変更において、後上側脚部42および後下側脚部43が連結ピン46を支点として後方に屈曲することを規制する。また、コイルばね26Bは、ガントリ4の起立姿勢から倒伏姿勢への姿勢変更において、後上側脚部42および後下側脚部43が連結ピン46を支点として前方に屈曲するように、後下側脚部43の外側突出部43Bを付勢する。
【0047】
更に、旋回フレーム21は、一対の受け部27を備える(
図6)。一対の受け部27は、それぞれ、支軸25の上方において、側壁部22の上面部に固定されている。受け部27は、直方体形状を有し、上面部に緩衝材27Aを備える。受け部27には、ガントリ4の倒伏姿勢において、後上側脚部42の下面部が当接する(
図8)。
【0048】
次に、
図2乃至
図8に加え、
図9を参照して、ガントリ4の姿勢変更について更に詳述する。
図9は、本実施形態に係るクレーンにおいて、ガントリ4が上部旋回体2に対して起立姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更する軌跡を示した側面図である。
【0049】
本実施形態では、クレーンの使用時、ガントリ4は、
図2のような起立姿勢とされる。この際、フック13の吊り上げによるブームガイライン6の張力は、前側脚部41に対して圧縮負荷として作用し、後上側脚部42および後下側脚部43に対して引っ張り負荷として作用する。ガントリ4の起立姿勢では、後下側脚部43の取付孔43Eに連結具45の上側ハッカー45Aが係止され、旋回フレーム21の取付孔28Aに連結具45の下側ハッカー45Bが係止されている(
図7)。この結果、後下側脚部43の内側突出部43Dおよび旋回フレーム21のブラケット28が連結具45によって連結、固縛される。したがって、ガントリ4が安定して起立姿勢に保持される。また、この際、後下側脚部43の外側突出部43Bがストッパ26に当接しているため、後下側脚部43が後方に回動することが防止される。
【0050】
ガントリ4が起立姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更されるにあたって、まず、作業者は、連結具45のターンバックルを緩めて、連結具45の上側ハッカー45Aを取付孔43Eから取り外すとともに、下側ハッカー45Bを取付孔28Aから取り外す。この際、作業者は、連結ピン46の周辺の高い位置での作業を行うことなく、地上または旋回フレーム21上において、連結具45を容易に取り外すことができる。なお、ブラケット28は、旋回フレーム21の下部に配置されている。このため、連結具45の下側ハッカー45Bを取付孔28Aから取り外す際には、作業者は地上Gに立ったまま、作業を行うことができる。
【0051】
次に、油圧シリンダ44が縮小されることで、前側脚部41が支軸24回りに後方に回動する(
図3)。この際、前側脚部41の回動に連れて、後上側脚部42および後下側脚部43が後方に屈曲するように回動する可能性があるが、後下側脚部43の外側突出部43Bがストッパ26に当接することで、後下側脚部43の後方への回動が阻止される。この結果、後上側脚部42および後下側脚部43が連結ピン46を支点として前方に屈曲することが促進される。更に、ストッパ26のコイルばね26Bが後下側脚部43の外側突出部43Bを後方に付勢するため、後下側脚部43の上方部分が前方に回動しやすく、上記のような後上側脚部42および後下側脚部43の屈曲が更に促進される。この結果、ガントリ4を倒伏姿勢に確実に導くことができる。
【0052】
やがて、ガントリ4が、
図4に示すように略水平方向に沿った倒伏姿勢に至ると、旋回フレーム21の受け部27(
図6)の緩衝材27Aに後上側脚部42の下面部が当接する。また、後上側脚部42の上面部に前側脚部41の緩衝材41Dが当接する。この結果、緩衝材27Aおよび緩衝材41Dを介して、旋回フレーム21の側壁部22、後上側脚部42および前側脚部41が当接した状態となり、クレーンの輸送時の騒音(金属同士が干渉する音)や損傷が防止される。
【0053】
更に、ガントリ4の倒伏姿勢では、前側脚部41の一対の連結ブラケット41Aが、旋回フレーム21の一対のブラケット28の上方に位置する(
図8)。そして、作業者は、連結ブラケット41Aの取付孔41Bに連結具45の上側ハッカー45Aを係止し、連結具45の下側ハッカー45Bをブラケット28の取付孔28Aに係止することができる。そして、作業者は、連結具45のターンバックルを締め付けることで、連結ブラケット41Aとブラケット28とを固縛することができる。この結果、ガントリ4を倒伏姿勢に安定して保持することができる。なお、作業者は、連結ピン46の周辺の高い位置での作業を行うことなく、地上または旋回フレーム21上において、連結具45を容易に装着することができる。この場合も、連結具45の下側ハッカー45Bを取付孔28Aに取り付ける際には、作業者は地上Gに立ったまま、作業を行うことができる。
【0054】
なお、ガントリ4が倒伏姿勢から起立姿勢に姿勢変更される際には、作業者によって上記とは逆の手順で作業が行われる。
【0055】
以上のように、本実施形態では、油圧シリンダ44の伸縮に応じて、ガントリ4が起立姿勢と倒伏姿勢との間で姿勢変更することができる。起立姿勢では、前側脚部41が上部旋回体2の旋回フレーム21から後方かつ上方に延びるとともに、後上側脚部42および後下側脚部43がそれぞれ上下方向に沿って延びている。また、倒伏姿勢では、後上側脚部42および後下側脚部43が連結ピン46を支点として前方に屈曲し、前側脚部41が上部旋回体2の旋回フレーム21上に倒伏する。そして、本実施形態では、このようなガントリ4の姿勢変更に際して、連結ピン46が孔部42Hおよび孔部43Hから引き抜かれる必要がない。すなわち、作業者は、旋回フレーム21よりも高い位置に配置された連結ピン46の周辺で作業する必要がないため、ガントリ4の姿勢変更を容易かつ安全に実行することができる。
【0056】
換言すれば、従来のクレーンでは、後上側脚部42および後下側脚部43が、スライドピンおよび固定ピンによって連結されていた。そして、ガントリ4の姿勢変更に際して、まず、作業者によって固定ピンが引き抜かれる。また、スライドピンが、後上側脚部42または後下側脚部43に開口された長穴に沿って移動しながら、後上側脚部42および後下側脚部43が屈曲する。このように、従来のクレーンでは、作業者が固定ピンの着脱を行う必要があった。
【0057】
また、本実施形態に係る連結ピン46について換言すれば、連結ピン46は、ガントリ4の起立姿勢において後下側脚部43に対する後上側脚部42の上下方向の位置を規制する。すなわち、連結ピン46が、孔部42Hおよび孔部43Hに挿通されていることで、起立姿勢において、後上側脚部42が下方にずれることがない。また、連結ピン46は、ガントリ4が起立姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更する際に、支軸25と連結ピン46との距離と、連結ピン46と支軸47との距離との比を一定に保持しながら、ガントリ4の姿勢変更を許容する。なお、上記のように、スライドピンが長穴内を移動する従来の構成では、ガントリ4の姿勢変更中に、支軸25とスライドピンとの距離と、スライドピンと支軸47との距離との比が変化する。そして、本実施形態では、このような連結ピン46の機能を許容するように、孔部42Hおよび孔部43Hの開口位置が設定されている。
【0058】
更に、本実施形態では、ガントリ4の起立姿勢において、後下側脚部43の内側突出部43Dおよび旋回フレーム21のブラケット28が連結具45によって連結される(連結具45の起立連結状態)。そして、連結具45は、後上側脚部42および後下側脚部43が連結ピン46を支点として屈曲することを規制する。このため、ガントリ4を起立姿勢に安定して保持することができる。更に、ガントリ4の倒伏姿勢において、連結具45は旋回フレーム21と前側脚部41とを連結することができる(連結具45の倒伏連結状態)。このため、ガントリ4を倒伏姿勢に安定して保持することができる。また、連結具45は、連結ブラケット41A、ブラケット28、内側突出部43Dのうちの少なくとも一の部材から脱離されることで、後上側脚部42および後下側脚部43が連結ピン46を支点として屈伸しガントリ4が起立姿勢とから倒伏姿勢との間で姿勢変更することを許容する(連結具45の非連結状態)。このように、起立姿勢および倒伏姿勢において、連結具45を共用することができるため、クレーンのコストが低減されるとともに、連結具45の格納場所が別途確保される必要がない。このため、作業者は連結具45を格納する作業が不要となるため、作業者にかかる負担を減らすことができる。更に、連結具45がターンバックル式の固定具からなるため、固定時に、後下側脚部43と旋回フレーム21との間、および、前側脚部41と旋回フレーム21との間のガタを吸収することが可能となる。このため、クレーンの作業時や輸送時に、ガントリ4の姿勢を安定して保持することができる。
【0059】
また、本実施形態では、ストッパ26は、ガントリ4の起立姿勢から倒伏姿勢への姿勢変更において、後上側脚部42および後下脚部43が連結ピン46を支点として後方に屈曲することを規制する。このため、ガントリ4の姿勢変更が安定して実現される。また、ガントリ4の起立姿勢から倒伏姿勢への姿勢変更に際して、後上脚部42および後下脚部43が前方に屈曲することが、コイルばね26Bによって促進される。このため、ガントリ4の姿勢変更がよりスムーズに実現される。
【0060】
なお、本実施形態のように、1つの連結ピン46のみによって後上側脚部42および後下側脚部43が屈伸可能に連結されるためには、連結ピン46の配置(孔部42Hおよび孔部43Hの開口位置)が重要となる。
図10および
図11は、本実施形態に係るクレーンにおいて、連結ピン46の配置が決定されるための側面図である。
図10および
図11では、支軸24を中心とする前側脚部41の回動における支軸47の軌跡が仮想円C1で描かれている。同様に、支軸47を中心とする後上側脚部42の回動における連結ピン46の軌跡が仮想円C2で描かれている。また、支軸25を中心とする後下側脚部43の回動における連結ピン46の軌跡が仮想円C3で描かれている。また、ガントリ4の起立姿勢における前側脚部41の中心線が仮想直線Lで描かれている。
【0061】
連結ピン46の位置が
図10の位置に仮に設定され、ガントリ4が起立姿勢から倒伏姿勢に至るまで、徐々に、前側脚部41が後方に回動する。同様に、後上側脚部42および後下側脚部43が連結ピン46を支点として前方に屈曲する(
図11)。そして、連結ピン46の位置は、仮想円C2および仮想円C3の接点および交点の軌跡上となる。したがって、予めガントリ4の起立位置および倒伏位置が決められており、ガントリ4がスムーズに屈伸できるように、連結ピン46の位置が作図によって決定される。この結果、設定された連結ピン46の配置において、本実施形態のような、ガントリ4の姿勢変更が実現される。
【0062】
以上、本発明の一実施形態に係るガントリ4を備えたクレーンについて説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明では、以下のような変形実施形態が可能である。
【0063】
(1)上記の実施形態では、連結具45が、ガントリ4の起立姿勢および倒伏姿勢において共用される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ガントリ4の起立姿勢および倒伏姿勢のそれぞれに、専用の連結具45が使用される態様でもよい。
【0064】
(2)上記の実施形態では、ストッパ26のコイルばね26Bが、後上側脚部42および後下側脚部43が連結ピン46を支点として後方に屈曲することを防止する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。前側脚部41、後上側脚部42および後下側脚部43の各回動軸部(支軸25、連結ピン46、支軸47)のいずれかに、捻りコイルばねが備えられることで、後上側脚部42および後下側脚部43が前方に屈曲することが促進されてもよい。すなわち、ストッパ26およびコイルばね26Bは、互いに別の位置に配置されてもよい。更に、ストッパ26は後下側脚部43に対向して配置されるものに限定されるものではなく、後上側脚部42に対向して配置され、後上側脚部42の一部に当接するものでもよい。