(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作ダイアルの一部は、前記ユニット筐体を前記装置本体に挿入した状態で前記ユニット筐体の挿入方向上流側の端部から露出していることを特徴とする請求項1に記載のシート給送ユニット。
前記操作ダイアルの一部は、前記シート給送カセットが前記装置本体に挿入された状態で操作可能な位置に露出していることを特徴とする請求項2に記載のシート給送ユニット。
【背景技術】
【0002】
給紙カセットは、複写機やプリンターに代表される画像形成装置において、カットペーパー等の給紙用として用いられる。この給紙カセットは、印字前の用紙を予め多数枚ストックしておき、給紙カセットの近傍に設けられた給紙ユニットによりカセット内に積み上げられた用紙束の最上層から1枚ずつ用紙を分離して供給する。
【0003】
給紙ユニットには給紙ローラーやピックアップローラー等の消耗品が付設されるため、これらの消耗品のメンテナンス時や交換時に画像形成装置本体から給紙ユニットが容易に着脱できるようになっている。
【0004】
また、給紙カセットには、上面に用紙が載置されるシート積載板が備えられたものがある。シート積載板は、カセット本体の底面内側に給紙方向上流側の端部が揺動支点として支持され、給紙方向下流側の端部が揺動端として昇降する。シート積載板の揺動端は、画像形成装置に設けられたリフトモーター等の駆動手段によって上方に持ち上げられる。これにより、シート積載板上に載置された用紙の下流端が給紙ユニットに配置されたピックアップローラーに圧接されて給紙が行われる。ここで、用紙の不送りや重送を発生させることなく安定した給紙を行うために、シート積載板上に載置された用紙の上面に対するピックアップローラーの圧接力が重要となる。
【0005】
このピックアップローラーの圧接力は、給送される用紙の種類やサイズ等によって適切な値が異なるため、用紙の種類やサイズ等に応じてピックアップローラーの圧接力を調整する必要がある。例えば特許文献1には、シートサイズ検知手段によるシートサイズ検知信号に基づいて、複数の可変押圧力を選択して設定する押圧力設定テーブルを有し、押圧力設定テーブルに基づいて押圧手段の押圧力を変更する給紙装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、ローラー保持軸を圧下するトーションスプリングの巻線部の巻き上げ度を、巻き上げ部から突き出した係合アーム部とローラーホルダー側に設けた第1、第2ストッパーとの係合によって調整することでローラーの押圧力を調整するシート材の搬送機構が開示されている。さらに、特許文献3には、給紙圧スプリングとスライダーと給紙圧可変モーターとを有し、給紙圧可変モーターの駆動によりスライダーが移動することで給紙圧スプリングの引っ張り長さを可変させて給紙圧をする給紙圧調整手段を備えた給紙装置が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の給紙ユニット117a、117bが搭載される画像形成装置100の内部構造を示す側面断面図である。なお、図中の実線矢印は用紙の搬送経路、及び搬送方向を示す。
【0014】
図1において、画像形成装置100の下部には、カセット式給紙部101が配置されている。カセット式給紙部101には、2つの給紙カセット1a、1bが備えられている。この給紙カセット1a、1bの内部に、印字前のカットペーパー等の用紙束Pが積載して収容され、画像形成装置100の装置本体120に備えられた給紙ユニット117a、117bにより用紙束Pから用紙が1枚ずつ分離して送り出される。給紙ユニット117a、117bは、それぞれピックアップローラー29a、フィードローラー30a、およびリタードローラー30bを備えている。ピックアップローラー29aは、用紙束Pの上面に当接して回転することで用紙束Pから1枚〜複数枚の用紙を送出する。フィードローラー30aは、リタードローラー30bと共にニップを形成し、ピックアップローラー29aにより送出された用紙を1枚ずつ捌きながら給送する。
【0015】
手差し給紙部102は、画像形成装置100の右側面上部の外部に備えられている。手差し給紙部102には、カセット式給紙部101と異なるサイズや厚みの用紙や、OHPシート、封筒、葉書き、送り状等のように1枚ずつ送り込まれるものが載置される。
【0016】
画像形成装置100内には用紙搬送部103が配置されている。用紙搬送部103は、カセット式給紙部101に対し、給紙方向下流側である右方に位置し、手差し給紙部102に対し、給紙方向下流側である左方に位置する。カセット式給紙部101から送り出された用紙は、用紙搬送部103により装置本体120の側面に沿って垂直上方に搬送され、手差し給紙部102から送り出された用紙Pは水平に搬送される。
【0017】
画像形成装置100の上面には原稿搬送装置104が配置され、その下方には画像読取部105が配置されている。使用者が原稿の複写を行う場合には、原稿搬送装置104に、文字や図形、模様等の画像が描かれた複数枚の原稿を積載する。原稿搬送装置104では原稿が1枚ずつ分離して送り出され、画像読取部105によってその画像データが読み取られる。
【0018】
用紙搬送部103の用紙搬送方向下流側であって、画像読取部105の下方には、画像形成部106、及び転写部107が配置されている。画像形成部106では、画像読取部105によって読み取られた画像データに基づいて原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像が現像されてトナー像が形成される。一方、画像形成部106におけるトナー像の形成タイミングと同期をとってカセット式給紙部101から用紙搬送部103を介して用紙Pが転写部107に搬送される。画像形成部106において形成されたトナー像は、転写部107において用紙P上に転写される。
【0019】
転写部107の下流側には、定着部108が配置されている。転写部107において未定着トナー像が転写された用紙Pは、定着部108へと搬送され、加熱ローラー及び加圧ローラーから成る定着ローラー対のニップ部を通過することにより、用紙P上の未定着トナー像が定着されて永久像とされる。
【0020】
定着部108の下流側であって、画像形成装置100の左側面の近傍には、排出・分岐部109が配置されている。定着部108から排出された用紙は、両面印刷を行わない場合には、排出・分岐部109から画像形成装置100の左側面外側に設けられた用紙排出トレイ111に排出される。
【0021】
画像形成部106から排出・分岐部109にかけての部分の下方であって、カセット式給紙部101の上方には、両面印字用ユニット110が配置されている。両面印字を行う場合には、定着部108から排出された用紙が、排出・分岐部109を介して両面印字用ユニット110へと送られる。両面印字用ユニット110へ送られた用紙は、スイッチバックにより表裏が反転され、再び用紙搬送部103を通って画像が形成されていない面を上向きにして転写部107へと搬送される。
【0022】
また、画像形成装置100には、操作部112および制御部113が配置されている。操作部112には、液晶表示部やLEDが設けられており、画像形成装置100の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。その他、操作部112には、画像形成を開始するようにユーザーが指示するスタートボタン、画像形成を中止する際等に使用するストップ/クリアボタン、画像形成装置100の各種設定をデフォルト状態にする際に使用するリセットボタン等が設けられている。制御部113は画像形成装置100内の各装置に対して制御信号または入力信号の送受信を行う。
【0023】
次に、画像形成装置100に着脱可能に用いられる給紙カセット1aの詳細な構成について、
図1に加えて
図2を用いて説明する。
図2は、給紙カセット1aを前面側上方から見た外観斜視図である。なお、ここでは給紙カセット1aの構成について説明するが、給紙カセット1bについても全く同様の構成である。
【0024】
給紙カセット1aは、
図1に示す装置本体120側のカセット式給紙部101に挿入および引き出し可能に収容される。カセット本体10は、底面の四方の周縁部に壁部10a〜10dが立設されて上面が開口した平坦な箱状に構成され、その上面方向から用紙束P(
図1参照)を積載して収容する。画像形成装置100内部において、給紙カセット1aの上方であってカセット本体10の給紙方向(矢印A方向)下流側に位置する壁部10bの外側には給紙ユニット117a(
図1参照)が配置され、用紙束Pから1枚ずつ分離された用紙は
図2の矢印A方向に供給される。
【0025】
給紙カセット1aの挿入または引き出し方向(矢印BB′方向)に対し平行な壁部10b、10cの外側には一対のガイドレール11が付設されている。カセット式給紙部101にはガイドレール11を摺動可能に支持する一対のレール支持部(図示せず)が設けられており、ガイドレール11をレール支持部に沿って摺動させることで、給紙カセット1aは画像形成装置100に対し挿入及び引き出し可能となっている。
【0026】
カセット本体10の底面内側には、シート積載板20が備えられている。シート積載板20は、給紙方向上流側のボス部20aを揺動支点としてカセット本体10の壁部10a、10dに支持されており、給紙方向下流側の端部を揺動端20bとして上下に揺動可能である。シート積載板20は、画像形成装置100本体側のリフトモーター35aに連結されるリフト機構(図示せず)によって揺動端20bが上下に昇降する。
【0027】
また、シート積載板20の揺動端20bには、シート積載板20をカセット本体10の底面に固定するロックピン21が付設されている。ロックピン21は、給紙カセットを輸送する際にシート積載板20の揺動による騒音やシート積載板20の破損を防止する。給紙カセット1aを使用する際にはロックピン21を取り外した状態で用紙束Pをシート積載板20上に積載する。
【0028】
カセット本体10の内部には、給紙方向(矢印A方向)に沿って立設された一対の幅規制カーソル24が備えられている。幅規制カーソル24は、給紙方向と直角をなす用紙幅方向の両側から用紙束Pの側面に当接し、用紙束Pが給紙ユニット117aにより給紙される給紙位置に位置するように、用紙束Pの幅方向の位置決めを行う。幅規制カーソル24は、カセット本体10の底面内側に設けられた用紙幅方向に延在するカーソル移動溝(図示せず)に沿って移動可能である。なお、一対の幅規制カーソル24は、それらの下方に設けられたラック・ピニオン機構(図示せず)により、一方を移動させると、それに連動して他方も移動するようになっている。このとき、一対の幅規制カーソル24は用紙束Pの幅方向中心線に対して左右対称に移動する。
【0029】
図3は、給紙ユニット117aを上方から見た斜視図である。なお、給紙ユニット117bについても
図3に示す給紙ユニット117aと全く同様の構成である。給紙ユニット117aは、装置本体120の背面側及び正面側に対向配置される一対の側面フレームの間に形成されたユニット挿入部(図示せず)に着脱可能に支持される。
【0030】
給紙ユニット117aにはローラーホルダー31がフィードローラー30a(
図2参照)の回転軸41を支軸としてユニット筐体40に揺動可能に支持されている。回転軸41の先端部にはカセット式給紙部101(
図1参照)側の駆動出力カップリング(図示せず)に噛み合う駆動入力カップリング41aが付設されている。ローラーホルダー31の揺動端31c(
図5参照)にはピックアップローラー29(
図2参照)が回転可能に支持されている。ピックアップローラー29とフィードローラー30aはギア列(図示せず)によって連結されており、回転軸41の回転によってピックアップローラー29およびフィードローラー30aが同方向(給紙方向)に回転する。
【0031】
ユニット筐体40には回転軸41と平行に搬送ローラー33の回転軸43が回転可能に支持されている。回転軸43の一端部にはカセット式給紙部101側の駆動出力カップリング(図示せず)に噛み合う駆動入力カップリング43aが付設されている。回転軸43の他端部には、搬送ローラー33を手動で給紙方向と逆方向に回転させるためのハンドル45がギア列を介して連結されている。給紙ユニット117aで用紙がジャムした場合にはハンドル45を所定方向に回して搬送ローラー33を回転させることにより用紙を除去する。ハンドル45の近傍には、フィードローラー30aに対してリタードローラー30b(
図1参照)を押圧または押圧解除するためのレバー47が設けられている。
【0032】
ローラーホルダー31の近傍には上面検知センサー35が配置されている。上面検知センサー35は、発光部と受光部とを有する検知部を備えたPI(フォトインタラプター)センサーであり、ローラーホルダー31に形成された遮光板31b(
図4参照)によって上面検知センサー35の検知部の光路を遮断若しくは開放する。シート積載板20(
図2参照)が上昇していない非給紙時においては、遮光板31bは上面検知センサー35の検知部から下方に退避しており、検知部の受光信号レベルがHIGH状態となっている。
【0033】
給紙動作時にシート積載板20の揺動端20bが上昇すると、シート積載板20上に積載された用紙束Pの上面(用紙束Pが積載されていない状態ではシート積載板20)がピックアップローラー29に当接し、ピックアップローラー29がローラーホルダー31と共に押し上げられ、ローラーホルダー31に形成された遮光板31bも上方に移動する。その結果、遮光板31bが上面検知センサー35の検知部の光路を遮断することにより検知部の受光信号レベルがHIGHからLOWに切り換わり、ピックアップローラー29の高さ、即ち用紙束Pの上面位置を検知可能となっている。
【0034】
また、給紙ユニット117aにはシート積載板20上の用紙の有無を検知するPE検知アクチュエーター37が設けられている。シート積載板20上に用紙束Pが積載された給紙カセット1aを挿入した後、シート載置板20を所定量上昇させると、PE検知アクチュエーター37が揺動し、カセット式給紙部101側に設けられたPE検知センサー(図示せず)の受光信号レベルがLOWからHIGHに切り換わる。
【0035】
シート載置板20にはPE検知アクチュエーター37が通過可能なスリット20c(
図2参照)が形成されている。印字動作により給紙カセット1a内の用紙が減少すると、その分だけシート積載板20が上昇するので、PE検知アクチュエーター37の角度は一定に保持される。給紙カセット1a内の用紙が無くなると、PE検知アクチュエーター37はシート積載板20のスリット20cを通過し、PE検知アクチュエーター37が回動する。その結果、PE検知センサーの受光信号レベルが再びLOWに切り換わり、給紙カセット1a内の用紙が無くなったことを検知する。
【0036】
また、給紙ユニット117aは、シート積載板20上に積載された用紙束Pの上面にピックアップローラー29を押圧する押圧機構50と、ピックアップローラー29の押圧力を調整する押圧力調整機構51と、給紙カセット1aの挿入および引き出し時にピックアップローラー29を退避させる退避機構60とを備えている。
【0037】
図4は、給紙ユニット117aに設けられる押圧機構50、押圧力調整機構51、および退避機構60の斜視図であり、
図5および
図6は、それぞれ押圧機構50とローラーホルダー31との接触部分を上方および下方から見た拡大図である。押圧機構50は、リンク部材53と、押圧部材55と、第1コイルバネ57と、を備える。押圧力調整機構51は、アーム部材52と、第1ギア70と、第2ギア71と、を備える。
【0038】
アーム部材52はユニット筐体40(
図3参照)に矢印BB′方向に往復移動可能に支持されている。リンク部材53は断面円形のロッド状であり、アーム部材52の一端側(ローラーホルダー31側)に形成されたガイド部52aに矢印BB′方向に往復移動可能に支持されている。
【0039】
押圧部材55は、平面視三角形状の部材であり、三角形の頂点に設けられた回動軸55aを支点としてユニット筐体40に回動可能に支持されている。回動軸55aから上方に延在する被押圧面55bにはリンク部材53の先端が当接している。回動軸55aを挟んで被押圧面55bと反対側の頂点にはローラーホルダー31の押下片31aを押圧する押圧部55cが形成されている。
【0040】
第1コイルバネ57はリンク部材53に外挿されており、第1コイルバネ57の一端側(押圧部材55側)はガイド部52aの一端側(押圧部材55側)に形成された第1係止部52cに係止され、他端側はリンク部材53に形成された第2係止部53a係止されている。これにより、リンク部材53は第1コイルバネ57の付勢力(収縮力)によって押圧部材55に近づく方向(矢印B方向)に付勢されている。
【0041】
第1ギア70および第2ギア71は、外周面に形成されたギア歯が互いに噛み合う位置でユニット筐体40に回転可能に支持されている。第2ギア71のギア歯はアーム部材52に形成されたラック歯52bに噛み合っている。また、第1ギア70の外周面の一部はユニット筐体40の挿入方向上流側(
図3の右側、画像形成装置100の前面側)に形成された開口部40aから給紙ユニット117aの外部に露出している。
【0042】
退避機構60は、ホルダー支持部材61と、当接レバー63と、第2コイルバネ65とを有する。ホルダー支持部材61はユニット筐体40に対して給紙カセット1aの挿入および引き出し方向(矢印BB′方向)に往復移動可能に配置されている。当接レバー63は、ユニット筐体40から給紙カセット1aの挿入方向(矢印B方向)と直交する方向に突出する支軸63aから下方に延在する。ホルダー支持部材61と当接レバー63は、支軸63aに取り付けられたピニオンギアとホルダー支持部材61の上面に形成されたラックギアとで構成されるラック・ピニオン機構(図示せず)により連結されており、当接レバー63が矢印BB′方向に揺動することでホルダー支持部材61も矢印BB′方向に往復移動する。第2コイルバネ65はユニット筐体40のバネ収納部40b内に矢印BB′方向に沿って配置され、ホルダー支持部材61を矢印B′方向に付勢する。
【0043】
給紙カセット1aが未挿入のとき、ホルダー支持部材61は第2コイルバネ65の付勢力によってローラーホルダー31の下方に挿入され、ユニット筐体40の規制部(図示せず)に押圧された状態で位置決めされている。また、ローラーホルダー31はホルダー支持部材61によって自重および押圧部材55の押圧力に抗して上方に持ち上げられた状態(退避位置)で支持されている。これにより、カセット式給紙部101に給紙カセット1aを挿入する際にカセット本体10とピックアップローラー29との干渉を回避する。
【0044】
給紙カセット1aがカセット式給紙部101の所定位置まで挿入されると、挿入方向下流側の壁部10d(
図2参照)が当接レバー63を押圧し、当接レバー63は第2コイルバネ65の付勢力に抗して矢印B方向に回動する。その結果、ホルダー支持部材61がローラーホルダー31の下方から退避し、ローラーホルダー31が自重および押圧部材55の押圧力により下降して用紙束Pの上面に接触するシート給送位置に配置される。
【0045】
また、押圧機構50の押圧部材55によるローラーホルダー31の押し下げ位置(押下片31a)と、退避機構60のホルダー支持部材61によるローラーホルダー31の支持位置とが、ローラーホルダー31の揺動支点(回転軸41)から略等距離にある。
【0046】
次に、押圧力調整機構51によるピックアップローラー29の押圧力調整手順について説明する。前述したように、リンク部材53はアーム部材52のガイド部52aに支持されており、第1コイルバネ57の矢印B方向の端部はガイド部52aに係止され、第1コイルバネ57の矢印B′方向の端部はリンク部材53に係止されている。第1ギア70を矢印C方向に回転させると、第2ギア71を介してアーム部材52のラック歯52bに駆動力が伝達され、アーム部材52が矢印B方向に移動する。アーム部材52の矢印B方向への移動に伴い、リンク部材53の先端が押圧部材55の被押圧面55bに当接する。アーム部材52がさらに矢印B方向に移動すると、両端部をアーム部材52およびリンク部材53に固定された第1コイルバネ57が引き伸ばされる。
【0047】
その結果、第1コイルバネ57の収縮力(復元力)がリンク部材53に伝達され、リンク部材53が押圧部材55の被押圧面55bを押圧する力が強くなるため、押圧部55cがローラーホルダー31の押下片31aを押し下げる力も強くなる。これにより、ローラーホルダー31には自重に加えて押圧部材55からの押圧力が強く作用するため、シート積載板20上の用紙束Pの上面に対するピックアップローラー29の押圧力が強くなる。
【0048】
一方、第1ギア70を矢印C′方向に回転させると、第2ギア71を介してアーム部材52のラック歯52bに駆動力が伝達され、アーム部材52が矢印B′方向に移動する。これに伴い、第1コイルバネ57の引っ張り長さが短くなるため、リンク部材53に伝達される第1コイルバネ57の収縮力(復元力)も弱くなる。その結果、リンク部材53が押圧部材55の被押圧面55bを押圧する力が弱くなるため、押圧部55cがローラーホルダー31の押下片31aを押し下げる力も弱められる。これにより、シート積載板20上の用紙束Pの上面に対するピックアップローラー29の押圧力が弱くなる。第1コイルバネ57の引っ張り長さはアーム部材52の移動距離に比例するため、第1コイルバネ57の復元力および押圧部材55の押圧力もアーム部材52の移動距離に比例する。以上のようにして、ピックアップローラー29の押圧力を調整することができる。
【0049】
図7は、第1ギア70をユニット筐体40と対向するウェブ面70a側から見た平面図であり、
図8は、第1ギア70の第1ラチェット歯37aとユニット筐体40側の第2ラチェット歯37bが噛み合う状態を示す側面図である。第1ギア70のユニット筐体40との対向面であるウェブ面70aには第1ラチェット歯73aが形成されており、ユニット筐体40には第1ラチェット歯73aに噛み合う第2ラチェット歯73bが形成されている。また、第1ギア70のボス部70bには、第1ギア70をユニット筐体40側に押圧する押圧バネ75が外挿されている。
【0050】
押圧バネ75の押圧力により第1ラチェット歯73a、第2ラチェット歯73bの噛み合い状態が保持されるため、第1ギア70の回転が規制される。また、押圧バネ75の押圧力に抗して第1ギア70を回転させると、第1ラチェット歯73aが第2ラチェット歯73bを乗り越えて移動し、第1ラチェット歯73aと第2ラチェット歯73bの噛み合い位置が変化する。これにより、第1ギア70の回転を任意の位置で止めることができ、第1コイルバネ57の付勢力によるアーム部材52の移動を規制してピックアップローラー29の押圧力の変動を防止することができる。また、第1ギア70を回転させる際の操作感(クリック感)を得ることができる。
【0051】
本実施形態によれば、ピックアップローラー29の押圧力を調整する押圧力調整機構51を給紙ユニット117a内に設けることにより、給紙ユニット117aを画像形成装置100のカセット式給紙部101から引き出した状態でピックアップローラー29の押圧力を調整することができる。従って、給紙ユニット117aを引き出してメンテナンスを行う際に、ピックアップローラー29やフィードローラー30aに付着した紙粉の清掃と併せてピックアップローラー29の押圧力調整を行うことができる。
【0052】
また、押圧力調整機構51の操作ダイアルを兼ねる第1ギア70がユニット筐体40の挿入方向上流側の端部から画像形成装置100の前面側に露出しているため、給紙ユニット117aがユニット挿入部に挿入された状態でも、ユーザーは画像形成装置100の外装カバー(図示せず)を開放して第1ギア70を回転させるだけでピックアップローラー29の押圧力を調整することができる。また、第1ギア70は、給紙カセット1aが画像形成装置100に挿入された状態でも操作可能な位置に露出している。即ち、給紙カセット1aがカセット式給紙部101に挿入された状態であるか引き出された状態であるかに関係なくピックアップローラー29の押圧力を調整できるため、ピックアップローラー29の押圧力を調整する毎に給紙カセット1aを引き出す必要がなく、作業性が向上する。
【0053】
また、本実施形態の押圧力調整機構51を用いることで、ピックアップローラー29の押圧力を微調整することができる。例えば、ローラーホルダー31を押圧方向に付勢するねじりバネの係止位置を変更する従来の調整法では、係止位置が2箇所であれば2段階、3箇所であれば3段階の調整しかできなかった。本実施形態では、第1ギア70のウェブ面70aに形成される第1ラチェット歯73a、およびユニット筐体40に形成される第2ラチェット歯73bの間隔(ピッチ)を狭くすることで多段階の調整が可能となる。
【0054】
また、アーム部材52(リンク部材53)の移動範囲を広げるとともに、適切なバネ定数を有する第1コイルバネ57を用いることで、ピックアップローラー29の押圧力を広範囲に調整することができる。これにより、坪量40g程度の薄紙から坪量400g程度の厚紙まで、種々の厚みの用紙に対してピックアップローラー29の押圧力を適切に設定することができる。
【0055】
なお、退避機構60によってピックアップローラー29を退避させる場合は、押圧機構50からローラーホルダー31に作用する押圧力とローラーホルダー31の自重との合力よりも大きい力でローラーホルダー31を持ち上げる必要がある。ここで、回転軸41から押圧部材55によるローラーホルダー31の押し下げ力の作用点(押し下げ位置)までの距離と、回転軸41からホルダー支持部材61による持ち上げ力の作用点(支持位置)までの距離とが異なる場合、ローラーホルダー31に作用する押圧力と持ち上げ力のベクトルの方向がばらつき、押圧力のバランス調整が難しくなる。
【0056】
本実施形態では、押圧部材55によるローラーホルダー31の押し下げ位置とホルダー支持部材61によるローラーホルダー31の支持位置とが回転軸41から略等距離にあるため、ローラーホルダー31に作用する押圧力と持ち上げ力のベクトルの方向が180°反対方向となる。これにより、押圧力のバランス調整が容易となり、調整精度を高めることができる。
【0057】
さらに、使用する用紙の種類に応じて第1ギア70の回転方向および回転量を通知するようにすれば、ピックアップローラー29の押圧力の調整をより簡素化するとともに調整精度を向上させることができる。例えば、操作部112(
図1参照)から用紙の種類を選択すると、選択された用紙情報(用紙の厚みおよびサイズ情報)が制御部113に送信される。制御部113は、送信された用紙情報に基づいてピックアップローラー29の押圧力の調整情報(外装カバーを開放すると第1ギア70が調整可能となる旨や、選択された用紙に応じた第1ギア70の回転方向、回転量等)を操作部112の液晶表示部に表示する。
【0058】
その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では第1ギア70を手動で操作することでピックアップローラー29の押圧力を調整するようにしたが、第1ギア70および第2ギア71を駆動するモーターを設けてピックアップローラー29の押圧力を自動調整するようにしてもよい。
【0059】
また、本実施形態では第1ギア70および第2ギア71を用いてアーム部材52を往復移動させているが、第1ギア70のみでアーム部材52を往復移動させる構成や、第1ギア70および第2ギア71を含む3つ以上のギアを用いてアーム部材52を往復移動させる構成であってもよい。また、上記実施形態ではフィードローラー30aおよびリタードローラー30bを用いてピックアップローラー29aにより送出された用紙を1枚ずつ捌きながら給送しているが、リタードローラー30bに代えて分離パッドを用いることもできる。
【0060】
また、本実施形態では第1コイルバネ57の付勢力による第1ギア70および第2ギア71の回転を規制する規制機構として、第1ラチェット歯73a、第2ラチェット歯73bおよび押圧バネ75を用いているが、これに限らず、他の構成で第1ギア70および第2ギア71の回転を規制することもできる。