(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記噴出し口は、工具の後方から前記出力部の先端を見たときに視界を遮らない位置に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアダスタ付き空気圧工具。
【背景技術】
【0002】
釘打ち作業の際にエアダスタで下地材の表面を清掃する場合がある。このとき、エアダスタ付きの釘打機を使用すれば、釘打機とエアダスタとを持ち替える必要がないので作業性が良い。
【0003】
しかしながら、従来のエアダスタ付きの釘打機では、ファスナーの打ち出し方向と圧縮空気の吹き出し方向が異なるように設定されていた。このため、作業者は、エアダスタを使用するときに釘打機の向きを変えなければならなかった。よって、作業性が悪く、対象物(木屑など)が小さい場合に狙いにくいという問題があった。
【0004】
こうした問題を解決したものとして、特許文献1記載の空気圧工具が存在する。この特許文献1記載の構成では、エアダスタの吹出しノズルをノーズ部の近傍に配置しており、ファスナーの打ち込み方向に沿って吹き出し口からエアを吹き出すようにしている。このような構成によれば、工具を持ち替えなくてもエアダスタを使用することができ、作業性がよい。また、打ち込み姿勢と同じ姿勢でエアの吹き出し方向を狙えるので、対象物(木屑など)が小さい場合でも狙いやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1記載の構成では、噴出し口をノーズ部の近傍に配置したため、確実にエアをノーズ部の先端方向に噴き出させることができる反面、ノーズ部付近の視認性が悪くなるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、エアをノーズ部の先端方向に噴き出させるとともに、ノーズ部付近の視認性を悪化させないエアダスタ付き空気圧工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、外部から供給された圧縮空気を使用してファスナーを打ち出すための打撃機構と、外部から供給された圧縮空気を使用して噴出し口からエアを噴き出すエアダスタ構造と、前記打撃機構を内蔵した出力部と、を備え、前記噴出し口は、前記出力部の側部に配置されて前記出力部の先端方向に向けて開口しており、前記出力部の側
面には、前記噴出し口の延長方向に
略平坦な助走部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記の通りであり、噴出し口は、出力部の側部に配置されて出力部の先端方向に向けて開口しており、出力部の側
面には、噴出し口の延長方向に
略平坦な助走部が設けられている。
【0010】
このような構成によれば、噴出し口とノーズ部との間に助走部を設けることで、ノーズ部から離れた位置に噴出し口を配置することができる。よって、ノーズ部の先端に部材を配置する必要がなく、ノーズ部付近の視認性が悪化しない。
【0011】
また、噴出し口から噴き出した空気は、助走部に沿って出力部の先端方向に流れるため、エアをノーズ部の先端方向に噴き出させることができる。
【0012】
また、助走部は出力部の側部に配置されており、外気に開放されている。このため、助走部に沿ってエアが流れるときに周囲の空気を引き込むように作用する。このように空気が引き込まれることで、最終的に噴きつけられるエアの流量を増やすことができる。
【0013】
また、助走部に沿って流れたエアは、助走部の終端縁において、コアンダ効果(流体が凸な曲面に沿って流れようとする性質)によって終端縁を回り込むように屈折して流れる。このため、噴出し口を出力部の側部で、かつ、ノーズ部から離れた位置に設けた場合でも、エアの流れを中央へと屈折させることができるので、工具を左右に傾けなくても狙った位置にエアを噴き出させることができる。
【0014】
また、エアの流速(噴出し口の開口径)や助走部の距離を変えるだけで屈折の角度を調整できるので、工具の用途によってエアの噴き出し方向を設定することもできる。例えば、躯体工事用の釘打機であれば、屈折の角度が小さくなるように調整し、比較的遠い位置(例えば3m)を狙ってエアを噴き出すように設定してもよい。また、内装工事用の釘打機であれば、屈折の角度が大きくなるように調整し、比較的近い位置(例えば0.5m)を狙ってエアを噴き出すように設定してもよい。
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態に係る空気圧工具10は、外部から供給された圧縮空気を使用してファスナーを打ち出すものであり、この外部から供給された圧縮空気を使用して噴出し口17からエアを噴き出すエアダスタ構造を備えている。このように空気圧工具10がエアダスタ構造を備えることで、工具を持ち替えなくても、ファスナーによる打ち込みと、エアダスタによる清掃とを行うことができる。
【0019】
この空気圧工具10は、
図1および
図2に示すように、内部に打撃機構を備えた出力部11と、出力部11から直交方向に突出するように設けられたグリップ12と、グリップ12に操作可能に設けられたトリガ13と、出力部11の先端に突出するように設けられたノーズ部14と、ノーズ部14の後方に接続されたマガジン15と、エアダスタ構造を作動させるために押下操作可能に設けられた操作部18と、を備える。
【0020】
出力部11に内蔵された打撃機構は、圧縮空気の力を利用してドライバを作動させ、ドライバによってファスナーを打ち込むようになっている。ドライバは、ファスナーを打ち出すためにノーズ部14の方向へと移動可能となっている。打ち込み方向に移動したドライバは、ノーズ部14内にセットされたファスナーを打ち出す。ドライバによって打ち出されたファスナーは、ノーズ部14の先端に開口する射出口14aから射出される。
【0021】
この空気圧工具10を作業者が使用するときには、グリップ12を握り込んで把持し、トリガ13を引き操作する。この操作により上記した打撃機構が作動してファスナーが打ち出される。
【0022】
なお、マガジン15内には、連結ファスナーが収容されており、この連結ファスナーの先頭のファスナーがノーズ部14の方向(打ち込み動作前のドライバの真下)へと順次供給されるようになっている。
【0023】
グリップ12の後端には、エア供給用のエアホースを接続するためのエンドキャップ部16が設けられている。特に図示しないが、エアホースはエアコンプレッサ等のエア供給源に接続されており、エア供給源から供給された圧縮空気を空気圧工具10に供給可能となっている。エアホースを介してエンドキャップ部16から供給された圧縮空気は、ハウジング内部に形成されたエアチャンバに貯留される。エアチャンバに貯留された圧縮空気は、打撃機構やエアダスタ構造に供給可能となっている。
【0024】
本実施形態に係るエアダスタ構造は、操作部18が操作されたときに、出力部11の側部に配置された噴出し口17から圧縮空気が噴き出すものである。本実施形態に係る操作部18は、作業者がグリップ12を把持したときに、グリップ12を把持した手で操作可能な位置に配置されている。具体的には、グリップ12を右手で握ったときに、右手の親指で操作可能な位置に配置されている。
【0025】
この操作部18は、
図2に示すように、弁体19を操作するためのものである。弁体19は、操作部18の押下操作に連動して摺動し、噴出し口17への圧縮空気の供給経路を遮断または開放し、かつ、噴出し口17への圧縮空気の供給量を調節できるように構成されている。この弁体19はバネで形成された弁体付勢部材20、24によって突出方向に付勢されている。弁体19は、弁体付勢部材20に付勢されることで、自然状態において圧縮空気の供給経路を遮断するように構成されている。そして、この弁体付勢部材20の付勢力に抗して操作部18が押し込み操作されたときに、弁体19が管路を開放する方向に移動するようになっている。
【0026】
弁体19の下流側には、継手部品21と、継手部品21に接続されたダスタ配管22と、が設けられている。弁体19が開くと、エアチャンバと継手部品21とが連通し、エアチャンバ内の圧縮空気が継手部品21を経由してダスタ配管22へと流れる。このダスタ配管22は噴出し口17へと続くように接続されているため、圧縮空気は噴出し口17から噴き出す。このように、操作部18を押し込み操作することで弁体19が開き、エアダスタ構造が作動するように構成されている。
【0027】
なお、ダスタ配管22は、出力部11の側面に取り付けられた配管カバー23によって覆われている。この配管カバー23には、噴出し口17を構成する開口が形成されている。この配管カバー23によって、ダスタ配管22は、出力部11の側面に沿って(出力部11の側面に対して略平行に)固定されている。そして、このダスタ配管22の延長線上に噴出し口17が設けられている。このため、噴出し口17から噴き出したエアは、出力部11の側面に沿って(出力部11の側面に対して略平行に)流れるようになっている。
【0028】
この噴出し口17は、継手部品21が取り付けられたハウジングの側部で開口している。このため、ダスタ配管22をノーズ部14まで延設する必要がない。
【0029】
また、噴出し口17は、出力部11の先端方向(ノーズ部14に接近する方向)に向けて開口している。このため、噴出し口17から噴き出したエアは、ノーズ部14に接近する方向へと流れるようになっている。
ここで、
図3および
図4に示すように、出力部11の側部には、噴出し口17の延長方向に設けられた助走部30と、助走部30の終端縁に設けられた角部31と、が形成されている。本実施形態においては、助走部30と角部31とが、ハウジングを形成する同一部材の表面に形成されている。助走部30および角部31を同一部材で形成することで、表面に凹凸が生じにくくなっている。
【0030】
助走部30は、出力部11の側面に形成された略平坦な面である。この助走部30は、噴出し口17から噴き出したエアの流れを阻害しないように、突起を設けずに形成されている。また、助走部30は、エアの流れに対して垂直な面上において、少なくとも1方向に開放された形状となっている。具体的には、助走部30は、エアの流れに対して垂直な面上において1方向にのみ壁(出力部11の側面)が設けられており、他の方向が開放された形状となっている。
【0031】
この助走部30を設けることで、ノーズ部14の先端と噴出し口17とが離れた位置に形成されている。本実施形態においては、少なくとも、噴出し口17からノーズ部14の先端までの距離が、ファスナーの長さよりも長くなるように設定されている。このため、噴出し口17は十分にノーズ部14から離れた位置に配置されている。
【0032】
このように配置することで、
図5に示すように、噴出し口17は、工具の後方から出力部11の先端(ノーズ部14)を見たときに視界を遮らない位置に設けられている。すなわち、空気圧工具10を持った作業者が打ち込み位置を確認するときに、どのような角度であっても、噴出し口17を形成する部材(ダスタ配管22や配管カバー23)とノーズ部14の先端とが直接的に重ならないようになっている。よって、エアダスタ構造を設けたことによる視認性の悪化は生じない。
【0033】
そして、この助走部30は、出力部11の側面に形成されているため、出力部11の側面が途切れる角部31を備える。本実施形態においては、出力部11の側面と前面とが交わる位置に角部31が形成されている。言い換えると、本実施形態に係る噴出し口17の噴き出し方向は、ノーズ部14よりもやや前方(グリップ12の長手方向に見て出力部11の方向。
図1における右方向)となっており、この噴出し口17の噴き出し方向の延長線上に角部31が形成されている。この角部31はR形状で形成されている。
【0034】
この角部31を設けることで、助走部30に沿って流れたエアは、コアンダ効果(流体が凸な曲面に沿って流れようとする性質)によって角部31を回り込むように屈折して流れる。このため、噴出し口17を出力部11の側部に設けた場合でも、エアの流れを中央へと屈折させることができる。例えば、
図2の位置関係で言えば、噴出し口17は射出口14aよりも左側に設けられているが、噴出し口17から噴き出したエアは角部31によって右方向へ屈折され、噴出し口17に近づくように誘導される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、噴出し口17は、出力部11の側部に配置されて出力部11の先端方向に向けて開口しており、出力部11の側部には、噴出し口17の延長方向に設けられた助走部30と、助走部30の終端縁に設けられた角部31と、が形成されている。
【0036】
このような構成によれば、噴出し口17とノーズ部14との間に助走部30を設けることで、ノーズ部14から離れた位置に噴出し口17を配置することができる。よって、ノーズ部14の先端に部材を配置する必要がなく、ノーズ部14付近の視認性が悪化しない。
【0037】
また、噴出し口17から噴き出した空気は、助走部30に沿って出力部11の先端方向に流れるため、エアをノーズ部14の先端方向に噴き出させることができる。このとき、助走部30に沿って流れたエアは、コアンダ効果によって角部31を回り込むように屈折して流れる。このため、噴出し口17を出力部11の側部で、かつ、ノーズ部14から離れた位置に設けた場合でも、エアの流れを中央へと屈折させることができるので、工具を左右に傾けなくても狙った位置にエアを噴き出させることができる。
【0038】
また、エアの流速(噴出し口17の開口径)や助走部30の距離を変えるだけで屈折の角度を調整できるので、工具の用途によってエアの噴き出し方向を設定することもできる。例えば、躯体工事用の釘打機であれば、屈折の角度が小さくなるように調整し、比較的遠い位置(例えば3m)を狙ってエアを噴き出すように設定してもよい。また、内装工事用の釘打機であれば、屈折の角度が大きくなるように調整し、比較的近い位置(例えば0
.5m)を狙ってエアを噴き出すように設定してもよい。
【0039】
また、助走部30は出力部11の側部に配置されており、外気に開放されている。このため、助走部30に沿ってエアが流れるときに周囲の空気を引き込むように作用する。このように空気が引き込まれることで、最終的に噴きつけられるエアの流量を増やすことができる。
【0040】
なお、上記した実施形態においては詳しく説明していないが、助走部30の側部にエアを誘導するガイド部材35を設けてもよい。また、ガイド部材35は、例えば
図3および
図4に示すように、エアの流れが助走部30を外れて逃げないようにするための突起36を備えるようにしてもよい。
【0041】
また、上記した実施形態においては、エアの噴き出し方向をノーズ部14よりもやや前方としたが、これに限らず、エアの噴き出し方向(噴出し口17の開口方向)をノーズ部14よりもやや下方(出力部11の長手方向に見てノーズ部14の方向。
図1における下方向)としてもよい。エアの噴き出し方向(噴出し口17の開口方向)をノーズ部14からずらすことで、ハウジングやマガジン15に形成された角部31に向けてエアを噴き出させることができる。
【0042】
また、
図6および
図7に示すように、エアの噴き出し方向を変更可能にしてもよい。例えば、出力部11の側面に回動部材40を設け、この回動部材40に噴出し口41を形成してもよい。回動部材40は、出力部11の側面と平行に回動可能となっており、回動部材40が回動操作されたときに噴出し口41の開口方向が変更されるようになっている。このように構成すれば、
図6に示すようにエアの噴き出し方向をノーズ部14よりもやや下方に設定したり、
図7に示すようにエアの噴き出し方向をノーズ部14よりもやや前方に設定したり、といった切り替えが可能となる。
【0043】
また、上記した実施形態においては、助走部30は、エアの流れに対して垂直な1方向にのみ壁(出力部11の側面)が設けられているようにしたが、これに限らず、助走部30は、少なくとも1方向に開放された形状であればよい。例えば、
図8(a)に示すように、助走部30に流路形成部材45を設けてもよい。流路形成部材45は、エアが流れる溝45aを備えている。この溝45aは、少なくとも1方向に開放された形状であり、筒状ではない。このように構成した場合でも、筒状部材を設けた場合よりも流路形成部材45の高さを抑制できるので、エアダスタ構造を設けたことによる視認性の悪化を防止できる。すなわち、
図8(b)に示すように、空気圧工具10を持った作業者が打ち込み位置を確認するときに、どのような角度であっても、噴出し口17を形成する部材(流路形成部材45など)によって視界が遮られないようにすることができる。また、助走部30が外気に開放されているため、助走部30に沿ってエアが流れるときに周囲の空気を引き込むように作用する。このように空気が引き込まれることで、最終的に噴きつけられるエアの流量を、筒状部材を設けた場合よりも増やすことができる。