(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2はそれぞれアルミニウム用ダイカスト装置を開示している。
【0003】
特許文献1のアルミニウム用ダイカスト装置は、給湯炉と、給湯管と、給湯接続管と、スリーブと、成形型と、を備えている。
【0004】
給湯炉には、アルミニウム溶湯が充填されている。さらに給湯炉には加圧手段が設けられている。給湯管の一端部は給湯炉に接続されている。給湯接続管の一端部は給湯管の他端部に同軸的に接続されている。スリーブの一部には給湯接続管の他端部が接続されている。さらにスリーブの一端部は成形型に接続されている。
【0005】
給湯接続管はセラミック製である。さらに給湯管の他端部はセラミック製の環状接続体により構成されている。
給湯接続管と環状接続体との対向面はいずれも鏡面加工され且つ両者は互いに接触している。
【0006】
さらに、このアルミニウム用ダイカスト装置は、環状接続体を給湯接続管側へ移動付勢することにより、給湯接続管と環状接続体の対向面どうしを接触させるスプリングを備えている。
【0007】
特許文献2のアルミニウム用ダイカスト装置も、給湯炉と、給湯管と、給湯接続管と、スリーブと、成形型と、を備えている。
【0008】
特許文献2の給湯接続管もセラミック製である。さらに、特許文献2では、給湯接続管のスリーブ側の端面とスリーブとの間に環状のパッキンが設けられている。
【0009】
特許文献1のアルミニウム用ダイカスト装置及び特許文献2のアルミニウム用ダイカスト装置の動作は基本的に同一である。
即ち、給湯炉において加圧手段によって加圧されたアルミニウム溶湯は、所定量ずつ給湯炉から給湯管に送られる。すると、給湯管に送られたアルミニウム溶湯は、給湯接続管を介してスリーブに送られる。さらにスリーブに接続された射出プランジャが動作すると、射出プランジャが発生する力によってスリーブ内のアルミニウム溶湯が成形型のキャビティに射出される。そしてキャビティ内でアルミニウム溶湯が凝固した後に成形型を型開きすれば、完成したアルミニウム製の鋳造品が得られる。
【発明の概要】
【0012】
特許文献1の給湯接続管及び環状接続体はセラミック製である。さらに特許文献2の給湯接続管もセラミック製である。
セラミックはアルミニウム溶湯と接触したときに化学反応を起こさない。
そのため、特許文献1及び特許文献2のアルミニウム用ダイカスト装置では、セラミック製品であるこれらの部材によって構成された流路をアルミニウム溶湯が流れるときに、これらの部材とアルミニウム溶湯とが化学反応を起こさない。従って、これらの部材によって構成された流路をアルミニウム溶湯は円滑に流れる。
【0013】
ところで、射出プランジャが動作するとき、並びに、成形型が型開き及び型締めするときに、ダイカスト装置全体に大きな振動が発生する。
そのため、特許文献1では、給湯接続管と環状接続体とが強い力で互いに接触するおそれがある。
セラミック製の給湯接続管及び環状接続体の機械的強度は高くない。
【0014】
一方、特許文献2では、給湯接続管のスリーブ側の端面とスリーブとの間にパッキンが設けられている。そのため、ダイカスト装置全体に大きな振動が発生したときに、セラミック製の給湯接続管が破損することを防止できるが、アルミニウム溶湯が給湯接続管側からスリーブ側へ流れるときに、アルミニウム溶湯の一部がパッキンの内周縁部に付着し且つ凝固するおそれがある。換言すると、パッキンが、アルミニウム溶湯の凝固の起点となるおそれがある。
そして、パッキンの内周縁部の広い領域に対してアルミニウム溶湯が付着し且つ凝固すると、凝固したアルミニウムによって給湯接続管とスリーブとの接続部において目詰まりが発生してしまう。換言すると、アルミニウム溶湯の給湯接続管側からスリーブ側への流れが不円滑になってしまう。
【0015】
本発明は、セラミック製である給湯管及び給湯接続管に振動による悪影響が及ぶこと、また給湯管、給湯接続管、及びスリーブの周辺部において不具合が発生することを防止できるアルミニウム用ダイカスト装置を提供することを目的とする。
【0017】
本発明は、アルミニウム溶湯が充填された溶湯充填部に一端部が接続され、且つ、前記溶湯充填部から前記アルミニウム溶湯が供給される給湯管と、
前記給湯管の他端部に対して一端部が同軸的に接続され、且つ、軸線が上下方向に延びる給湯接続管と、
一端部が成形型に接続され且つ自身の一部に前記給湯接続管の他端部が接続されたスリーブと、
を備え、
前記給湯管が、
前記給湯管の外周部を構成する金属製の第1外周部と、
前記給湯管の前記他端部の内周部を構成し且つ軸線が上下方向に延びるセラミック製の第1接続管部と、
を有し、
前記給湯接続管が、
前記給湯接続管の外周部を構成し、且つ、前記第1外周部に接続する金属製の第2外周部と、
前記給湯接続管の内周部を構成し、且つ、前記第1接続管部と同軸をなすセラミック製の第2接続管部と、
を有し、
前記第1接続管部と前記第2接続管部との対向面どうしの間に、前記アルミニウム溶湯が進入不能な大きさの第1クリアランスが形成される。
【0018】
本発明によれば、給湯管の他端部の内周部を構成するセラミック製の第1接続管部と、給湯接続管の内周部を構成するセラミック製の第2接続管部と、によって、アルミニウム溶湯用の流路が形成される。
【0019】
ところで、アルミニウム溶湯が進入可能な隙間寸法は、アルミニウム溶湯の性質(例えば、粘度)によって決まる一定範囲の大きさである。
そこで、本発明では、第1接続管部と第2接続管部の対向面どうしの間に、アルミニウム溶湯が進入不能な大きさの第1クリアランスを形成している。
【0020】
この第1クリアランスは、例えば、熱間時(即ち、アルミニウム溶湯が上記流路を流れるとき)において0.02〜0・19mmとなるように設定される。
【0021】
第1クリアランスをこのように設定すると、アルミニウム溶湯は第1クリアランスに進入不能になる。従って、給湯管及び給湯接続管の接続部からアルミニウム溶湯が給湯管及び給湯接続管の外側に漏れるのを防止できる。
【0022】
さらに第1クリアランスが形成されているので、ダイカスト装置に振動が発生したときに、第1接続管部と第2続管部とが接触するおそれが小さい。
そのため、第1接続管部及び第2接続管部が破損することを防止できる。
【0023】
さらに、第1接続管部と第2接続管部との間に、アルミニウム溶湯の凝固の起点となるパッキンが設けられていない。
そのため、給湯管と給湯接続管との接続部において目詰まりが発生することを防止できる。
【0024】
前記第2接続管部の前記他端部と金属製の前記スリーブとの間に、前記アルミニウム溶湯が進入不能な大きさの第2クリアランスが形成されてもよい。
【0025】
本発明をこのように構成すると、第2接続管部の他端部と金属製のスリーブとの間に、アルミニウム溶湯が進入不能な大きさの第2クリアランスが形成される。
この第2クリアランスは、例えば、熱間時において0.02〜0・20mmとなるように設定される。
【0026】
第2クリアランスをこのように設定すると、アルミニウム溶湯は第2クリアランスに進入不能になる。従って、給湯接続管とスリーブとの間からアルミニウム溶湯が給湯接続管の外側に漏れるのを防止できる。
【0027】
さらに第2クリアランスが形成されているので、ダイカスト装置に振動が発生したときに、第2接続管部とスリーブとが接触するおそれが小さい。
そのため、第2接続管部が破損することを防止できる。
【0028】
さらに、第2接続管部とスリーブとの間に、アルミニウム溶湯の凝固の起点となるパッキンが設けられていない。
そのため、給湯接続管とスリーブとの接続部において目詰まりが発生することを防止できる。
【0029】
前記給湯管の前記第1外周部が、下方から前記第1接続管部を支持する第1支持部を有してもよい。
【0030】
一般的に、金属製品及びセラミック製品は、寸法精度を高くしながら製造することが可能である。
そのため、金属製の第1外周部及びセラミック製の第1接続管部を、寸法精度を高くしながら製造できる。
従って、第1外周部の第1支持部が下方から第1接続管部を支持することにより、第1接続管部の上下方向位置を設計位置と同一又はほぼ同一にすることが可能になる。
従って、本発明をこのように構成すると、第1クリアランスを精度よく形成できるようになる。
【0031】
前記給湯接続管の前記第2外周部が、下方から前記第2接続管部を支持する第2支持部を有してもよい。
【0032】
金属製の第2外周部の第2支持部が下方からセラミック製の第2接続管部を支持することにより、第2接続管部の上下方向位置を設計位置と同一又はほぼ同一にすることが可能になる。
従って、本発明をこのように構成すると、第1クリアランス及び第2クリアランスを精度よく形成できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すようにダイカスト装置10は、主要な構成要素として、給湯炉15、給湯管20、給湯接続管35、スリーブ45、射出プランジャ50、固定治具53及び成形型60を備えている。
【0035】
給湯炉15(溶湯充填部)は、その外形を構成するケース16と、ケース16の内周側に設けられた空間形成部17と、を備えている。ケース16は金属製(例えば、鉄鋼)である。一方、空間形成部17は耐火レンガ製である。空間形成部17の内周側には溶湯充填空間18が形成されている。図示するように、溶湯充填空間18には高温状態に保持されたアルミニウム溶湯19が充填されている。さらに図示は省略してあるが、ケース16には、溶湯充填空間18内のアルミニウム溶湯19を加圧するための加圧手段が設けられている。
さらにケース16の一部には開口部16aが形成されている。また、空間形成部17には、一端が溶湯充填空間18に接続し且つ他端が開口部16aの内周側において開口する流路17aが形成されている。
【0036】
図1に示すように給湯管20の全体形状はクランク形状である。但し、給湯管20の全体形状はクランク形状である必要はなく、例えば直線形状であってもよい。
図1乃至
図3に示すように給湯管20は、その外形を構成する外周管部21と、外周管部21の内周側に位置する内周管部26と、第1接続管部30と、を備えている。
【0037】
図2に示すように、金属製(例えば、鉄鋼)である外周管部21の長手方向に対して直交する横断面形状は矩形である。さらに
図1に示すように、外周管部21の一方の端部は、給湯炉15のケース16の開口部16aに液密状態で固定されている。
図1に示すように外周管部21の長手方向の中央部より他方の端部(ケース16と反対側の端部)側に位置する部位は、中央部より一方の端部側に位置する部位よりも一段上方に位置する上段部22により構成されている。上段部22の上面22a及び下面22bは、互いに平行をなす水平面によって構成されている。
さらに
図2及び
図3に示すように、上段部22の上面22aの他方の端部には平面視円形の接続用凹部23が形成されている。接続用凹部23は、その軸線が上下方向に延びる円柱形状の凹部である。外周管部21の一部は、接続用凹部23の外周側及び直下に位置する略円筒状の第1外周部23aを構成している。換言すると、第1外周部23aは、接続用凹部23の外周側に位置する円筒形状の筒状部23a−1と、筒状部23a−1の下端部に接続し且つ接続用凹部23の底部の外周部の直下に位置する環状フランジである第1支持部23a−2と、を有している。第1支持部23a−2の上面23a−2aは水平面である。第1支持部23a−2の内周縁部によって囲まれた空間は貫通孔25を構成している。
【0038】
図1に示すように、外周管部21の内周側には、外周管部21と同軸をなす耐火レンガ製の内周管部26が設けられている。内周管部26の外周面は外周管部21の内周面に固定されている。
内周管部26の横断面の中央部には、内周管部26の全長に渡って断面円形の流路27が形成されている。流路27の一方の端部は、給湯炉15の流路17aに液密状態で接続されている。
さらに内周管部26の流路17aと反対側の端部には、貫通孔25の下端と連続する環状凹部28が形成されている。環状凹部28は貫通孔25と同軸且つ貫通孔25と同径である。
【0039】
図2及び
図3に示すように、セラミック製の第1接続管部30は、円筒形状の第1本体部31と、第1本体部31の上端部に固定された環状フランジである第1環状フランジ部32と、を一体的に有している。
第1本体部31は、上下方向に延びる軸線を中心とする円筒形状であり且つ貫通孔25及び環状凹部28と同軸をなす。第1本体部31の内周面は鏡面加工されている。第1本体部31の外径は、貫通孔25及び環状凹部28の径より僅かに小さい。第1本体部31の内径は流路27と略同径である。
第1環状フランジ部32の外径は、接続用凹部23の内径より僅かに小さく且つ貫通孔25及び環状凹部28の径より大きい。第1環状フランジ部32の下面32aは水平面である。
【0040】
図2及び
図3に示すように、第1接続管部30の第1環状フランジ部32の下面32aは外周管部21の第1支持部23a−2の上面23a−2aによって下方から支持されている。さらに、第1本体部31は貫通孔25及び環状凹部28の内部に位置している。
さらに、第1本体部31の下面から第1環状フランジ部32の下面までの上下方向距離は、第1支持部23a−2の上面23a−2aから環状凹部28の底面までの上下方向距離より僅かに短い。そのため、第1本体部31の下面は環状凹部28の底面から上方に離間している。
さらに、第1本体部31の下面と環状凹部28の底面との間には、第1本体部31の下面を環状凹部28の底面に固定するための接着剤が設けられている。そのため、第1本体部31の下面と環状凹部28の底面との間にアルミニウム溶湯19が侵入することはない。
【0041】
図2及び
図3に示すように給湯接続管35は、互いに別部材である第2外周部36及び第2接続管部41を備えている。
【0042】
金属製(例えば、鉄鋼)の第2外周部36は、上下方向に延びる軸線を中心とする略円筒形状である。第2外周部36の外周面の下端部には、第2外周部36の軸線を中心とする環状凹部37が形成されている。環状凹部37の天井面37aは水平面である。さらに環状凹部37の外周面(第2外周部36の軸線を中心とする円筒面)の外径は、接続用凹部23の径より小さい。
第2外周部36の内周面の下端部には、環状フランジである第2支持部38が内周側に向けて突設されている。第2支持部38の上面38aは水平面である。
第2外周部36の上面36aは水平面である。
第2外周部36の環状凹部37の天井面37aは上段部22(第1外周部23a)の上面22aによって下方から支持されている。天井面37aが上面22aに支持されると、第2外周部36は第1接続管部30と実質的に同軸をなし且つ第2外周部36の天井面37aより下方に位置する部位が接続用凹部23に位置する。
【0043】
図2及び
図3に示すように、セラミック製の第2接続管部41は、上下方向に延びる軸線を中心とする円筒形状の第2本体部42と、第2本体部42の外周面の下端近傍に固定された環状フランジである第2環状フランジ部43と、を一体的に有している。
第2本体部42は円筒形状である。第2本体部42の内周面は第1本体部31の内周面と同径であり且つ鏡面加工されている。第2本体部42の第2環状フランジ部43より下方に位置する部位の外径は第2支持部38の内径より僅かに小さい。
第2環状フランジ部43の外径は、第2外周部36の第2支持部38より上方に位置する部位の内径より僅かに小さい。第2環状フランジ部43の下面43aは水平面である。
【0044】
図2及び
図3に示すように、第2接続管部41の第2環状フランジ部43の下面43aは第2外周部36の第2支持部38の上面38aによって下方から支持されている。さらに、第2本体部42の第2環状フランジ部43より下方に位置する部位は第2支持部38の内周側に位置している。さらに第2接続管部41は第1接続管部30及び第2外周部36と実質的に同軸をなす。
さらに、第2環状フランジ部43の下面43aから第2接続管部41の下面までの上下方向距離は、上面22aに支持された第2外周部36の第2支持部38の上面38aから第1接続管部30の上面までの上下方向距離より僅かに短い。そのため、第2接続管部41の下面は第1接続管部30の上面から上方に離間している。即ち、第1接続管部30の上面と第2接続管部41の下面との間に
図3に示す第1クリアランスCL1が形成される。この第1クリアランスCL1は、例えば、冷間時(即ち、給湯炉15の溶湯充填空間18にアルミニウム溶湯19が充填されていないとき)において0.01〜0・18mmとなり且つ熱間時(即ち、アルミニウム溶湯19が第1接続管部30の第1本体部31及び第2接続管部41の第2本体部42の内部空間である流路を流れるとき)において0.02〜0・19mmとなるように設定されている。
さらに、第2接続管部41の上面41aは第2外周部36の上面36aより僅かに下方に位置する。
【0045】
第2外周部36の内周面と第2接続管部41の外周面との間に形成された環状空間には円筒形状のヒーター39が配設されている。ヒーター39は、図示を省略した電源から電力を供給されることにより発熱する。ヒーター39が発熱すると、ヒーター39の周辺に位置する部材が加熱される。
【0046】
金属製(例えば、鉄鋼)のスリーブ45は、その軸線が水平方向に延びる略円筒形状である。
図2に示すように、スリーブ45の上端部は水平に切り欠かれている。即ち、スリーブ45の上端部には水平面である上端面45aが形成されている。
スリーブ45の下面の一部には
図2及び
図3に示す接続用凹部46が形成されている。接続用凹部46の天井面46aは水平面である。
スリーブ45の内部には、スリーブ45の全長に渡って流路47が形成されている。流路47の両端部は共に開口している。
さらにスリーブ45の内部には、一端が天井面46aにおいて開口し且つ他端が流路47に接続する連通路48が形成されている。連通路48は、その軸線が上下方向に延びる円柱形状である。さらに連通路48の内径は第2接続管部41の第2本体部42の内径と実質的に同一である。
【0047】
スリーブ45は、接続用凹部46の天井面46aを上方から第2外周部36の上面36aに対して接触させることにより給湯接続管35に接続されている。換言すると、接続用凹部46の天井面46aは第2外周部36の上面36aによって下方から支持されている。スリーブ45を給湯接続管35に接続すると、連通路48と第2本体部42とが同軸をなし且つスリーブ45の給湯接続管35に対する水平方向の相対移動が規制される。
【0048】
接続用凹部46の天井面46aが第2外周部36の上面36aによって支持されると、天井面46aと第2接続管部41の上面41aとの間には、
図3に示す第2クリアランスCL2が形成される。
この第2クリアランスCL2は、例えば、冷間時において0.01〜0.16mmとなり且つ熱間時において0.02〜0・20mmとなるように設定されている。
【0049】
図3に示すように、スリーブ45の連通路48の下端は、第2接続管部41の第2本体部42の上端部と同軸状態で対向する。但し、スリーブ45の連通路48の下端と第2接続管部41の第2本体部42の上端部との間には第2クリアランスCL2が形成されている。
【0050】
図1に示すようにスリーブ45の流路47の一方の端部には射出プランジャ50が接続されている。
【0051】
図1及び
図2に示す固定治具53は、治具本体54、押さえ板58、及びナット59を備えている。
金属製の治具本体54は、水平板状の底板部55と、底板部55の両端部から上方に延びる一対の側板部56と、各側板部56の上面から上方に延びる一対のボルト57と、を一体的に有している。底板部55の上面55aは水平面である。
金属製の押さえ板58は平板である。押さえ板58の下面58aは水平面である。さらに押さえ板58には、押さえ板58を板厚方向に貫通する一対の貫通孔58bが形成されている。
【0052】
図1及び
図2に示すように、治具本体54の底板部55の上面55aは外周管部21の上段部22の下面22bに面接触しており、且つ、押さえ板58の下面58aがスリーブ45の上端面45aに対して面接触している。さらに、治具本体54の一対のボルト57が押さえ板58の対応する貫通孔58bをそれぞれ貫通している。そして、左右のボルト57の上部に対して押さえ板58の上方に位置する一対のナット59がそれぞれ螺合し、且つ、左右のナット59の下面が押さえ板58の上面にそれぞれ圧接されている。即ち、治具本体54の底板部55と押さえ板58とによって、第2外周部36の天井面37aと上段部22の上面22aとの接触状態、及び、スリーブ45の天井面46aと第2外周部36の上面36aとの接触状態が保持されている。
【0053】
図1に示すように、スリーブ45の流路47の他方の端部(射出プランジャ50と反対側の端部)には成形型60が接続されている。
成形型60は固定型61と可動型62とを備えている。
スリーブ45の流路47の他方の端部は、固定型61の内部に形成されたスプールに接続されている。なお、固定型61の内部には、スプールに接続するランナー及びランナーに接続するゲートが形成されている。
可動型62は図示を省略したアクチュエータの駆動力によって固定型61に対して相対移動可能である。即ち、可動型62は、固定型61と接触する型締め位置と、固定型61から離間する型開き位置と、の間を相対移動可能である。
【0054】
以上説明した構造を有するダイカスト装置10の基本動作は以下の通りである。
給湯炉15の溶湯充填空間18に充填されているアルミニウム溶湯19の中の一定量が、加圧手段によって加圧されながら、一定時間毎に流路17aへ供給される。流路17aに供給されたアルミニウム溶湯19は、流路17aを通り抜けた後に給湯管20の流路27へ供給される。
【0055】
すると流路27に供給されたアルミニウム溶湯19は、流路27の開口部16aと反対側の端部から第1接続管部30の第1本体部31の内部空間、第2接続管部41の第2本体部42の内部空間、及び連通路48を通ってスリーブ45の流路47へ供給される。さらにアルミニウム溶湯19は、第2接続管部41の第2本体部42の内部空間を流れるときにヒーター39によって加熱された第2本体部42によって加温される。
なお、第1本体部31の内周面及び第2本体部42の内周面は鏡面加工されているので、アルミニウム溶湯19が第1本体部31の内周面及び第2本体部42の内周面に付着するおそれは小さい。
【0056】
上述のように、第1接続管部30の上端と第2接続管部41の下端との間には第1クリアランスCL1が形成されている。さらに、スリーブ45の連通路48の下端と第2接続管部41の第2本体部42の上端部との間には第2クリアランスCL2が形成されている。
しかし、第1クリアランスCL1及び第2クリアランスCL2を上記寸法で設定しているため、第1接続管部30の上端と第2接続管部41の下端との間の隙間、及び、スリーブ45の連通路48の下端と第2接続管部41の第2本体部42の上端部との間の隙間にアルミニウム溶湯19は進入不能である。
さらに第1本体部31の下面と環状凹部28の底面との間には接着剤が設けられているため、第1本体部31の下面と環状凹部28の底面との間にアルミニウム溶湯19が侵入することはない。
従って、これらの隙間を通って、アルミニウム溶湯19が第2接続管部41の外周側及び/又は第1接続管部30の外周側に漏れ出すおそれはない。
【0057】
さらにアルミニウム溶湯19は、連通路48を通り抜けた後にスリーブ45の流路47に供給される。
そして、可動型62が型締め位置に位置し且つアルミニウム溶湯19が流路47に供給された状態で射出プランジャ50が作動すると、射出プランジャ50が発生する力によって流路47内に位置する所定量のアルミニウム溶湯19が固定型61へ供給される。すると、所定量のアルミニウム溶湯19は、固定型61の内部に形成されたスプール、ランナー及びゲートを介して、固定型61と可動型62との間に形成されたキャビティに射出される。
キャビティ内で所定量のアルミニウム溶湯19が固化するとアルミニウム製の成形品が完成する。そして、可動型62を型開き位置に移動させた後に図示を省略したイジェクタを作動させると、イジェクタによって成形品が成形型60から排出される。
【0058】
ところで、射出プランジャ50が動作するとき及びアクチュエータの駆動力によって可動型62が型開き位置と型締め位置との間を移動するときに、ダイカスト装置10全体に大きな振動が発生する。
しかし、セラミック製の第1接続管部30とセラミック製の第2接続管部41との間には第1クリアランスCL1が形成されている。従って、上記振動に起因して第1接続管部30と第2接続管部41とが接触するおそれは小さい。そのため、第1接続管部30及び第2接続管部41はセラミック製のため(金属製の場合と比べて)機械的強度が小さいものの、上記振動に起因して第1接続管部30及び/又は第2接続管部41が破損することを防止できる。
同様に、第2接続管部41とスリーブ45との間には第2クリアランスCL2が形成されている。従って、上記振動に起因して第2接続管部41とスリーブ45とが接触するおそれは小さい。そのため、第2接続管部41がスリーブ45と接触することにより破損することを防止できる。
【0059】
なお、金属製の外周管部21の上段部22と金属製の第2外周部36、及び、第2外周部36と金属製のスリーブ45とは互いに接触している。
しかし、これらの部材は金属製のため機械的強度が高い。
そのため、上記振動に起因してこれらの部材が破損することを防止できる。
【0060】
さらに本実施形態では第1接続管部30と第2接続管部41との間、及び、第2接続管部41とスリーブ45との間にはパッキンが設けられていない。
そのため、パッキンに付着しながら凝固したアルミニウム溶湯19によって、第1接続管部30と第2接続管部41との間、及び、第2接続管部41とスリーブ45との間において目詰まりが発生することを防止できる。
【0061】
また、一般的に、金属製品及びセラミック製品は、寸法精度を高くしながら製造することが可能である。換言すると、金属製品及びセラミック製品は、耐火レンガによって構成した製品と比べて、寸法精度を高くすることが可能である。
そして本実施形態では外周管部21の第1外周部23a(第1支持部23a−2)を金属製とし且つ第1接続管部30をセラミック製としているので、第1外周部23a(第1支持部23a−2)及び第1接続管部30の寸法精度を(これらを耐火レンガ製として場合と比べて)高くすることが可能である。そのため、第1外周部23aの第1支持部23a−2によって第1接続管部30を下方から支持することにより、第1接続管部30の上下方向位置を設計位置と同一又はほぼ同一にすることが可能である。
さらに第2外周部36(第2支持部38)を金属製とし且つ第2接続管部41(第2環状フランジ部43)をセラミック製としているので、第2外周部36(第2支持部38)及び第2接続管部41(第2環状フランジ部43)の寸法精度を(これらを耐火レンガ製として場合と比べて)高くすることが可能である。そのため、第2外周部36の第2支持部38によって第2接続管部41を下方から支持することにより、第2接続管部41の上下方向位置を設計位置と同一又はほぼ同一にすることが可能である。
このように本実施形態では、第1接続管部30の上下方向位置及び第2接続管部41の上下方向位置をそれぞれの設計位置と同一又はほぼ同一にすることが可能である。従って、第1クリアランスCL1及び第2クリアランスCL2を高い寸法精度で形成できる。
【0062】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるべきものではない。
たとえば、上記各隙間の第1クリアランスCL1及び第2クリアランスCL2の寸法は上記寸法には限定されない。即ち、各隙間の寸法はアルミニウム溶湯19が入り込まない程度の大きさであればどのような大きさであってもよい。