特許第6870533号(P6870533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870533電気部品付ワイヤーハーネスおよび電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870533
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】電気部品付ワイヤーハーネスおよび電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20210426BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H02G3/30
   B60R16/02 623A
   H01B7/00 301
   H01B7/40 307Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-160343(P2017-160343)
(22)【出願日】2017年8月23日
(65)【公開番号】特開2019-41458(P2019-41458A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃司
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 進也
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 真也
(72)【発明者】
【氏名】松村 雄高
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−063436(JP,A)
【文献】 特開昭61−271707(JP,A)
【文献】 特開昭61−245410(JP,A)
【文献】 特開昭63−176757(JP,A)
【文献】 特開昭64−067809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
B60R 16/02
H01B 7/00
H01B 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に組付け可能な電気部品付ワイヤーハーネスであって、
車両に配設されるベース材と、
前記ベース材に沿って配設されて前記ベース材上に固定されたワイヤーハーネスと、
前記ワイヤーハーネスの端部が接続された少なくとも1つの電気部品と、
を備え
前記ベース材は、車体においてダッシュパネルとフロアパネルとのうち少なくとも一方を覆うサイレンサであり、
前記サイレンサは、前記ダッシュパネルを覆うダッシュサイレンサ領域部を含み、
前記少なくとも1つの電気部品は、前記ワイヤーハーネスのうち前記ダッシュサイレンサ領域部に配設された部分の端部に接続されると共に前記ダッシュパネルに配設されるダッシュパネル側電気部品を含む、電気部品付ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載の電気部品付ワイヤーハーネスであって、
前記少なくとも1つの電気部品は、電子制御ユニットを含む、電気部品付ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気部品付ワイヤーハーネスであって、
前記ワイヤーハーネスはフラットに形成されている、電気部品付ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項3に記載の電気部品付ワイヤーハーネスであって、
前記ワイヤーハーネスにおける電線が前記ベース材に直接固定されている、電気部品付ワイヤーハーネス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気部品付ワイヤーハーネスであって、
前記ダッシュパネル側電気部品は、前記ダッシュサイレンサ領域部に固定されている第1ダッシュパネル側電気部品を含む、電気部品付ワイヤーハーネス。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気部品付ワイヤーハーネスであって、
前記ダッシュパネル側電気部品は、前記ダッシュサイレンサ領域部に固定されていない第2ダッシュパネル側電気部品を含む、電気部品付ワイヤーハーネス。
【請求項7】
車両に組付け可能な電気部品付ワイヤーハーネスと、
前記電気部品付ワイヤーハーネスが組み付けられるダッシュパネルと、
を備え、
前記電気部品付ワイヤーハーネスは、
車両に配設されるベース材と、
前記ベース材に沿って配設されたワイヤーハーネスと、
前記ワイヤーハーネスの端部が接続された少なくとも1つの電気部品と、
を備え、
前記ベース材は、車体において前記ダッシュパネルとフロアパネルとのうち少なくとも一方を覆うサイレンサであり、
前記サイレンサは、前記ダッシュパネルを覆うダッシュサイレンサ領域部を含み、
前記少なくとも1つの電気部品は、前記ワイヤーハーネスのうち前記ダッシュサイレンサ領域部に配設された部分の端部に接続されると共に前記ダッシュパネルに配設されるダッシュパネル側電気部品を含み、
前記ダッシュパネルが車室外側に開くように、開閉可能に形成されている、電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電気部品付ワイヤーハーネスと、
前記電気部品付ワイヤーハーネスが組み付けられる組付対象と、
を備え、
前記電気部品がメンテナンス可能に組み付けられている、電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両において電気部品およびこれに接続されるワイヤーハーネスを組み付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インストルメントパネルの裏側に配設されるリンフォースメントにワイヤーハーネスを組み付ける技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−88408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、リンフォースメントに組付けられたワイヤーハーネスの端部は、当該車両組付け時に、別途車両に組付けられたECUなどの電気部品に接続されることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記の様にワイヤーハーネスの端部の電気部品への接続を車両組付け時に行う場合、車両組付け時の作業工数が多くなる恐れがあった。また、組付場所によっては、狭い場所での作業が必要となる恐れがあった。
【0006】
そこで本発明は、予めワイヤーハーネスの端部との接続がなされた電気部品を車両に容易に組み付けることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、車両に組付け可能な電気部品付ワイヤーハーネスであって、車両に配設されるベース材と、前記ベース材に沿って配設されて前記ベース材上に固定されたワイヤーハーネスと、前記ワイヤーハーネスの端部が接続された少なくとも1つの電気部品と、を備える。
【0008】
第2の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第1の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記少なくとも1つの電気部品は、電子制御ユニットを含む。
【0009】
第3の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第1又は第2の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記ワイヤーハーネスはフラットに形成されている。
【0010】
第4の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第3の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記ワイヤーハーネスにおける電線が前記ベース材に直接固定されている。
【0011】
また第1の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスにおいて、前記ベース材は、車体においてダッシュパネルとフロアパネルとのうち少なくとも一方を覆うサイレンサである。
【0012】
また第1の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスにおいて、前記サイレンサは、前記ダッシュパネルを覆うダッシュサイレンサ領域部を含み、前記少なくとも1つの電気部品は、前記ワイヤーハーネスのうち前記ダッシュサイレンサ領域部に配設された部分の端部に接続されると共に前記ダッシュパネルに配設されるダッシュパネル側電気部品を含む。
【0013】
の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第1から第4のいずれか1つの態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記ダッシュパネル側電気部品は、前記ダッシュサイレンサ領域部に固定されている第1ダッシュパネル側電気部品を含む。
【0014】
の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第1から第5のいずれか1つの態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記ダッシュパネル側電気部品は、前記ダッシュサイレンサ領域部に固定されていない第2ダッシュパネル側電気部品を含む。
【0015】
の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造は、車両に組付け可能な電気部品付ワイヤーハーネスと、前記電気部品付ワイヤーハーネスが組み付けられる前記ダッシュパネルと、を備え、前記電気部品付ワイヤーハーネスは、車両に配設されるベース材と、前記ベース材に沿って配設されたワイヤーハーネスと、前記ワイヤーハーネスの端部が接続された少なくとも1つの電気部品と、を備え、前記ベース材は、車体においてダッシュパネルとフロアパネルとのうち少なくとも一方を覆うサイレンサであり、前記サイレンサは、前記ダッシュパネルを覆うダッシュサイレンサ領域部を含み、前記少なくとも1つの電気部品は、前記ワイヤーハーネスのうち前記ダッシュサイレンサ領域部に配設された部分の端部に接続されると共に前記ダッシュパネルに配設されるダッシュパネル側電気部品を含み、前記ダッシュパネルが車室外側に開くように、開閉可能に形成されている。
【0016】
の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造は、第1から第のいずれか1つの態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスと、前記電気部品付ワイヤーハーネスが組み付けられる組付対象と、を備え、前記電気部品がメンテナンス可能に組み付けられている。
【発明の効果】
【0017】
各態様によると、電気部品付ワイヤーハーネスにおけるベース材を車両に配設することによって、ワイヤーハーネスの端部との接続がなされた電気部品を設置場所又はその近傍に配置することが容易となる。これにより、予めワイヤーハーネスの端部との接続がなされた電気部品を車両に容易に組み付けることができる。
【0018】
特に、第2の態様によると、ワイヤーハーネスの端部が接続された電子制御ユニットを容易に車両に組み付けることができる。
【0019】
特に、第3の態様によると、電気部品付ワイヤーハーネスにおける高さが高くなることを抑制できる。これにより、車両において電気部品付ワイヤーハーネスを配設可能な箇所が増える。
【0020】
特に、第4の態様によると、電気部品付ワイヤーハーネスにおける高さが高くなることを抑制できる。
【0021】
また、第1の態様によると、サイレンサと共に電気部品を組み付けることができる。
【0022】
また、第1の態様によると、電気部品の一部をベース材と共にダッシュパネルに配設することが容易となる。これにより、これまでデッドスペースとなりがちであったダッシュパネル近傍のスペースを有効活用できる。
【0023】
特に、第の態様によると、ベース材を車両に組み付ける際に第1ダッシュパネル側電気部品を固定位置の近傍に位置させることが容易となる。
【0024】
特に、第の態様によると、ベース材を車両に組み付ける際に第2ダッシュパネル側電気部品を固定位置の近傍に位置させることが容易となる。
【0025】
特に、第の態様によると、車室外側から電気部品をメンテナンスすることが可能となる。
【0026】
特に、第の態様によると、電気部品をメンテナンスすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る電気部品付ワイヤーハーネスが車両に組付けられる位置関係を示す説明図である。
図2】実施形態に係る電気部品付ワイヤーハーネスを示す概略斜視図である。
図3】実施形態に係る電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造を示す説明図である。
図4】電線とベース材との固定方法の一例を示す説明図である。
図5】電線とベース材との固定方法の別の一例を示す説明図である。
図6】変形例に係る電気部品付ワイヤーハーネスを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
{実施形態}
以下、実施形態に係る電気部品付ワイヤーハーネスおよびその組付構造について説明する。
【0029】
図1は、実施形態に係る電気部品付ワイヤーハーネス10が車両に組付けられる位置関係を示す説明図である。図2は、実施形態に係る電気部品付ワイヤーハーネス10を示す概略斜視図である。図3は、実施形態に係る電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造1を示す説明図である。
【0030】
電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造1は、電気部品付ワイヤーハーネス10と、電気部品付ワイヤーハーネス10が組み付けられる組付対象と、を備える。本例は、組付対象がダッシュパネル80を含む事例である。
【0031】
より詳細には、電気部品付ワイヤーハーネス10は、ベース材20と、ベース材20に配設されたワイヤーハーネス30と、ワイヤーハーネス30の端部が接続された電気部品50と、を備える。電気部品付ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス30の端部が電気部品50に接続された状態で、車両に組付け可能に構成されている。
【0032】
ベース材20は、車両に配設される。本例では、ベース材20は、車体においてダッシュパネル80とフロアパネル88とのうち少なくとも一方を覆うサイレンサ21であるものとして説明する。特に本例では、サイレンサ21が、ダッシュパネル80を覆うダッシュサイレンサ領域部22と、フロアパネル88を覆うフロアサイレンサ領域部26との両方を含むものとして説明する。
【0033】
従って、本例における電気部品付ワイヤーハーネス10の組付対象は、車体におけるダッシュパネル80と、フロアパネル88とを含む。ここで、フロアパネル88は、車体において床部を構成する部分である。また、ダッシュパネル80は、フロアパネル88に立設されて車体において車室の前方を区画し、車室内外を仕切る仕切壁部を構成する部分である。つまり、ダッシュパネル80より車体後方が車室内となり、ダッシュパネル80より車体前方が車室外となる。一般的な乗用車では、ダッシュパネル80より車体前方がエンジンルームとなるため、以下では、ダッシュパネル80より車体前方がエンジンルームであるものとして説明する。
【0034】
ここでは、ダッシュパネル80は、フロアパネル88に連なり、緩やかに立ち上がるロア部81と、ロア部81に連なり、ロア部81よりも傾斜した(ここでは垂直方向に延在する)アッパ部82とを含んでいる。なお、図3に示す例では、アッパ部82の上方部分は、カウル90に連なっている。カウル90は、フード92(ボンネット、リッドなどとも言う)と、フロントウインドシールド94との間に位置する部分である。また、ダッシュパネル80のアッパ部82に対してそれよりも車室内側にはインストルメントパネル96およびリンフォースメント98が配設される。
【0035】
また、ダッシュパネル80には、エンジンルームと車室内との間に延びるワイヤーハーネス30を通すための貫通孔83が形成されている。さらにここでは、ダッシュパネル80が開閉可能に形成されている。より詳細にはダッシュパネル80は、車室外側に開くように、開閉可能に形成されている。図2に示す例では、ダッシュパネル80のアッパ部82の本体部84に対して一部が切り離されて開閉部85をなし、本体部84とヒンジ86を介して連結されている。
【0036】
上述したように、サイレンサ21は、ダッシュパネル80を覆うダッシュサイレンサ領域部22と、フロアパネル88を覆うフロアサイレンサ領域部26とを含む。この際、サイレンサ21において、ダッシュサイレンサ領域部22とフロアサイレンサ領域部26とが一体成形されているものとして説明する。係るサイレンサ21は、例えば、不織布、繊維が圧縮されて接着剤等で固められたもの、発泡樹脂、又は発泡樹脂のチップが圧縮されて固められたものなどを用いることが考えられる。ここではダッシュサイレンサ領域部22は、フロアサイレンサ領域部26から緩やかに立ち上がる第1部分23と、第1部分23から鉛直方向に延びる第2部分24とを有している。第1部分23はロア部81を覆う部分であり、第2部分24はアッパ部82を覆う部分である。
【0037】
なお、図2に示す例では、ダッシュサイレンサ領域部22における第1部分23、第2部分24、およびフロアサイレンサ領域部26が平坦なシート状に形成されているが、これらの部分には車体の凹凸形状に応じた凹凸形状が形成されている場合も考えられる。また、サイレンサ21には、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル、シフトレバー(セレクトレバー)などの部材用の穴部が形成されている場合も考えられる。また、図3に示す例では、サイレンサ21に対して車室内側にフロアマット70が設けられている。フロアマット70は車室内に露出する部分である。なお、フロアマット70がサイレンサ21と一体とされている場合もあり得る。
【0038】
ワイヤーハーネス30は、ベース材20であるサイレンサ21に沿って配設されている。図2に示す例では、ワイヤーハーネス30は、ベース材20に対して車室内側に配設されているが、このことは必須の構成ではない。ワイヤーハーネス30がベース材20に対して車室外側に配設される場合もあり得る。また図2に示す例では、ワイヤーハーネス30は、比較的多数の電線が集まった幹線部32と、幹線部32から枝分かれする枝線部36とを含む。
【0039】
幹線部32は、例えば、ダッシュサイレンサ領域部22からフロアサイレンサ領域部26にかけて車両の前後方向に延びる前後方向延在部33と、ダッシュサイレンサ領域部22における第1部分23において車両の左右方向に延びる第1左右方向延在部34と、同じくダッシュサイレンサ領域部22における第2部分24において車両の左右方向に延びる第2左右方向延在部35とを有している。
【0040】
前後方向延在部33は、車両の左右方向両端側にそれぞれ設けられている。前後方向延在部33には、第1中継コネクタ40が設けられている。第1中継コネクタ40は、例えば、当該ワイヤーハーネス30とは別に設けられるインストルメントパネル96に接地される機器用のワイヤーハーネスに設けられた中継コネクタと接続される。インストルメントパネル96用のワイヤーハーネスは、例えば、リンフォースメント98に沿って配設されるワイヤーハーネスである。ここでは、第1中継コネクタ40は、前後方向延在部33のうち第1左右方向延在部34と第2左右方向延在部35との間の部分から延びる枝線部36の端部に設けられている。当該枝線部36の端部は第1部分23に対して法線方向に延びている。なお、前後方向延在部33は、図2に示されている部分よりも後方側で、例えば、中継コネクタを介してドアハーネス、リヤハーネス等に接続されることなどが考えられる。
【0041】
第1左右方向延在部34からは、複数(ここでは、3本)の枝線部36が延びており、2本の枝線部36の端部には、別途車体に組付けられる電気部品と接続されるコネクタ42が設けられている。また、1本の枝線部36の端部には、電気部品50が接続されている。
【0042】
第2左右方向延在部35からは複数の枝線部36が延びており、ここでは、複数(ここでは5つ)の電気部品50がそれぞれ枝線部36に接続されている。また、第2左右方向延在部35には、第2中継コネクタ41が設けられている。第2中継コネクタ41は、例えば、エンジンルーム側に配設される別のワイヤーハーネスに設けられる中継コネクタと接続される。例えば、係る中継コネクタから延びる電線がダッシュパネル80の貫通孔83に挿通される。第2中継コネクタ41は、ダッシュサイレンサ領域部22における第1部分23を貫通する態様で設けられている。
【0043】
もっとも図2に示す例は、ワイヤーハーネス30の配設形態の一例であり、ワイヤーハーネス30の配設形態はこれに限られるものではない。また、ワイヤーハーネス30は複数の電線31を含む(図4参照)が、図2に示す例では複数の電線31が省略されて描かれている。
【0044】
ここでは、ワイヤーハーネス30はフラットに形成されている。例えば図4に示すように、ワイヤーハーネス30における電線31がベース材20に対して平行に配設されることによって、ワイヤーハーネス30はフラットに形成される。
【0045】
またここでは、ワイヤーハーネス30における電線31がベース材20に直接固定されている。係る固定手段としては、特に限定されるものではないが、例えば図4に示すように、糸Tによってベース材20に縫い付けられていることが考えられる。なお、縫い方については特に限定されるものではなく、ミシンを用いた本縫い又は環縫いであってもよいし、手縫いであってもよい。また例えば図5に示すように、ワイヤーハーネス30における電線31の絶縁被覆とベース材20とが超音波溶着されていることも考えられる。このほか、ワイヤーハーネス30における電線31が接着剤又は両面粘着テープなどの接着性又は粘着性を有する介在物によってベース材20に直接固定されていることも考えられる。
【0046】
電気部品50は、少なくとも1つ設けられている。電気部品50には、ワイヤーハーネス30の端部が接続されている。電気部品50は、例えば、図4に示すようにワイヤーハーネス30の端部に設けられた接続用のコネクタ42を介してワイヤーハーネス30と接続される。また、コネクタ42を介さずに電線31の端部が直接接続されるものであってもよい。ここで本明細書における電気部品50は、コネクタ42などの単なる中継部品ではなく、導電以外の何らかの機能を有する部品を言う。ここでは電気部品50は、電子制御ユニット(以下、ECUと称する)を含む。以下では、図2に示されている電気部品50は、すべてECUであるものとして説明するが、ECU以外の電気部品50であってもよい。係るECUとしては、例えば、車体の電装品の制御を行うボディECU、ABS(Antilock Brake System)に関する制御を行うABS−ECU、又は、車両のエアバッグの制御を行うエアバッグECUなどであることが考えられる。ECU以外の電気部品50としては、例えば、電力供給に係る部品、信号伝達に係る部品等、より具体的にはリレー、ヒューズ等が考えられる。
【0047】
ここでは、電気部品50は、ダッシュパネル側電気部品を含む。ダッシュパネル側電気部品は、ワイヤーハーネス30のうちダッシュサイレンサ領域部22に配設された部分の端部に接続される。また、ダッシュパネル側電気部品は、ダッシュパネル80に配設される。
【0048】
具体的にはダッシュパネル側電気部品は、ダッシュサイレンサ領域部22に固定されている第1ダッシュパネル側電気部品を含む。図2に示されている電気部品50は、すべてダッシュパネル側電気部品であり、かつ第1ダッシュパネル側電気部品である。ダッシュパネル側電気部品が、ダッシュサイレンサ領域部22に固定されていない第2ダッシュパネル側電気部品を含む場合もあり得る。この事例について詳しくは後述する。
【0049】
ダッシュサイレンサ領域部22のうち第1部分23に固定されている電気部品50aは、第1左右方向延在部34の長手方向ほぼ中央に設けられており、車体において運転席と助手席との間に配設される。これにより電気部品50aが第1部分23に固定されている場合でも、踏まれることを抑制できる。
【0050】
ダッシュサイレンサ領域部22のうち第2部分24に固定されている電気部品50b、50c、50d、50e、50fは、第2左右方向延在部35の長手方向に沿って間隔をあけて設けられている。このうち電気部品50b、50cは、第2左右方向延在部35に対して下方に設けられ、電気部品50d、50e、50fは、第2左右方向延在部35に対して上方に設けられている。
【0051】
ここでは各電気部品50は、外形が偏平に形成されるとともに、偏平面をベース材20に向けて配設されている。これにより、ベース材20からの突出寸法を小さくできる。特に、ダッシュパネル80に配設される電気部品50が偏平とされることによって、車両前後方向における電気部品50の配設スペースを小さくすることができる。
【0052】
電気部品50は、メンテナンス可能に組み付けられている。ここで、上述したようにダッシュパネル80に開閉部85が設けられている。このため、図2に示すようにフード92および開閉部85を開けることによって、車室外から電気部品50をメンテナンス可能となる。このとき開閉部85の領域は、適宜設定されていればよいが、例えば、電気部品50b、50c、50d、50e、50fが固定される部分又は電気部品50d、50e、50fが固定される部分が開閉部85とされることが考えられる。また、電気部品50b、50c、50d、50e、50fが固定される部分よりも上方部分が開閉部85とされることも考えられる。また開閉部85の開閉量は、車室外から電気部品50をメンテナンス可能であれば、特に限定されるものではない。この際、電気部品50b、50d、50eは、第2左右方向延在部35に対して左寄りに設けられ、電気部品50c、50fは、第2左右方向延在部35に対して右寄りに設けられている。これにより、車室外側から電気部品50b、50c、50d、50e、50fをメンテナンスする際、作業者が電気部品50b、50c、50d、50e、50fに届きやすくなりメンテナンス作業が容易となる。なお、図2に示す例では、開閉部85が開く際、ベース材20および電気部品50の一部が開閉部85と共に回動しているが、回動しなくてもよい。
【0053】
上記態様によると、電気部品付ワイヤーハーネス10におけるベース材20を車両に配設すると、ベース材20にワイヤーハーネス30が配設されているため、ワイヤーハーネス30の端部との接続がなされた電気部品50を車両における設置場所又はその近傍に配置することが容易となる。これにより、予めワイヤーハーネス30の端部との接続がなされた電気部品50を車両に容易に組み付けることができる。
【0054】
また電気部品50がECUを含むため、ワイヤーハーネス30の端部が接続されたECUを容易に車両に組み付けることができる。
【0055】
またワイヤーハーネス30における電線31がフラットに配設されているため、電気部品付ワイヤーハーネス10における高さが高くなることを抑制できる。これにより、車両において電気部品付ワイヤーハーネス10を配設可能な箇所が増える。このとき電線31がベース材20に直接固定されているため、電気部品付ワイヤーハーネス10における高さが高くなることをより効果的に抑制できる。
【0056】
また、ベース材20がサイレンサ21であるため、サイレンサ21と共に電気部品50を組み付けることができる。このとき電気部品50がダッシュパネル側電気部品を含むため、電気部品50の一部をベース材20と共にダッシュパネル80に配設することが容易となる。これにより、これまでデッドスペースとなりがちであったダッシュパネル80近傍のスペースを有効活用できる。さらに、ダッシュパネル側電気部品がベース材20に固定された第1ダッシュパネル側電気部品を含むため、ベース材20を車両に組み付ける際に第1ダッシュパネル側電気部品を固定位置の近傍に位置させることが容易となる。
【0057】
またダッシュパネル80が車室外側に開くように開閉可能に形成されているため、車室外側から電気部品50をメンテナンスすることが可能となる。
【0058】
{変形例}
図6は、変形例に係る電気部品付ワイヤーハーネス10Aを示す概略斜視図である。
【0059】
変形例に係る電気部品付ワイヤーハーネス10Aにおいてダッシュパネル側電気部品は、ダッシュサイレンサ領域部22Aに固定されていない第2ダッシュパネル側電気部品を含む。図6に示す例では、電気部品50d、50e、50fが第2ダッシュパネル側電気部品とされる。この際、サイレンサ21Aにおけるダッシュサイレンサ領域部22Aの第2部分24Aが実施形態に係る第2部分24よりも短く形成されている。これに伴い、第2中継コネクタ41の第2部分24Aへの固定が解消されている。
【0060】
この場合、電気部品50d、50e、50fは、ダッシュパネル80に直接固定されることが考えられる。特にこの場合、電気部品50d、50e、50fは、ダッシュパネル80の開閉部85に直接固定されることが考えられる。この際、電気部品50d、50e、50fに接続されるワイヤーハーネス30Aの枝線部36に余長部38が形成されている。余長部38は、電線31が電気部品50d、50e、50fと接続されるに当たり、開閉部85の閉状態における最小寸法よりも十分に長く設定されている部分である。余長部38が形成されることにより、開閉部85が開いた際、電気部品50d、50e、50fが開閉部85と共に回動可能となり、メンテナンス可能とされている。
【0061】
なお、本例においても、電気部品50a、50b、50cは、ダッシュサイレンサ領域22Aに固定された第1ダッシュパネル側電気部品である。もっとも、第1ダッシュパネル側電気部品が含まれない場合もあり得る。
【0062】
本態様によると、ベース材20を車両に組み付ける際に第2ダッシュパネル側電気部品を固定位置の近傍に位置させることが容易となる。また、本態様によっても電気部品50をメンテナンスすることが可能となる。
【0063】
そのほか、実施形態において、ワイヤーハーネス30はフラットに形成されているものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。例えば、ワイヤーハーネス30は、丸断面形状を呈するように束ねられていてもよい。
【0064】
また実施形態において、ワイヤーハーネス30における電線31がベース材20に直接固定されているものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。例えば、電線31がシート材に固定され、当該シート材がベース材20に固定されていてもよい。
【0065】
また実施形態において、ベース材20がサイレンサ21であるものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。ベース材20は、例えば、トリムなどである場合も考えられる。またベース材20がサイレンサ21である場合でも、サイレンサ21がダッシュサイレンサ領域部22と、フロアサイレンサ領域部26とを両方含むことは必須の構成ではなく、いずれか一方のみである場合もあり得る。またサイレンサ21がダッシュサイレンサ領域部22と、フロアサイレンサ領域部26とを両方含む場合でも、両者が一体成形されていることは必須の構成ではなく、両者が別体である場合もあり得る。
【0066】
また実施形態において、ダッシュパネル80が開閉するものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。ダッシュパネル80が開閉しない場合もあり得る。この場合、電子機器は室内側からアクセスされてメンテナンス可能に組み付けられているとよい。
【0067】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0068】
本明細書及び図面には下記の各態様が開示される。
第1の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、車両に組付け可能な電気部品付ワイヤーハーネスであって、車両に配設されるベース材と、前記ベース材に沿って配設されたワイヤーハーネスと、前記ワイヤーハーネスの端部が接続された少なくとも1つの電気部品と、を備える。
第2の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第1の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記少なくとも1つの電気部品は、電子制御ユニットを含む。
第3の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第1又は第2の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記ワイヤーハーネスはフラットに形成されている。
第4の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第3の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記ワイヤーハーネスにおける電線が前記ベース材に直接固定されている。
第5の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第1から第4のいずれか1つの態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記ベース材は、車体においてダッシュパネルとフロアパネルとのうち少なくとも一方を覆うサイレンサである。
第6の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第5の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記サイレンサは、前記ダッシュパネルを覆うダッシュサイレンサ領域部を含み、前記少なくとも1つの電気部品は、前記ワイヤーハーネスのうち前記ダッシュサイレンサ領域部に配設された部分の端部に接続されると共に前記ダッシュパネルに配設されるダッシュパネル側電気部品を含む。
第7の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第6の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記ダッシュパネル側電気部品は、前記ダッシュサイレンサ領域部に固定されている第1ダッシュパネル側電気部品を含む。
第8の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスは、第6又は第7の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスであって、前記ダッシュパネル側電気部品は、前記ダッシュサイレンサ領域部に固定されていない第2ダッシュパネル側電気部品を含む。
第9の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造は、第6から第8のいずれか1つの態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスと、前記電気部品付ワイヤーハーネスが組み付けられる前記ダッシュパネルと、を備え、前記ダッシュパネルが車室外側に開くように、開閉可能に形成されている。
第10の態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造は、第1から第8のいずれか1つの態様に係る電気部品付ワイヤーハーネスと、前記電気部品付ワイヤーハーネスが組み付けられる組付対象と、を備え、前記電気部品がメンテナンス可能に組み付けられている。
各態様によると、電気部品付ワイヤーハーネスにおけるベース材を車両に配設することによって、ワイヤーハーネスの端部との接続がなされた電気部品を設置場所又はその近傍に配置することが容易となる。これにより、予めワイヤーハーネスの端部との接続がなされた電気部品を車両に容易に組み付けることができる。
特に、第2の態様によると、ワイヤーハーネスの端部が接続された電子制御ユニットを容易に車両に組み付けることができる。
特に、第3の態様によると、電気部品付ワイヤーハーネスにおける高さが高くなることを抑制できる。これにより、車両において電気部品付ワイヤーハーネスを配設可能な箇所が増える。
特に、第4の態様によると、電気部品付ワイヤーハーネスにおける高さが高くなることを抑制できる。
特に、第5の態様によると、サイレンサと共に電気部品を組み付けることができる。
特に、第6の態様によると、電気部品の一部をベース材と共にダッシュパネルに配設することが容易となる。これにより、これまでデッドスペースとなりがちであったダッシュパネル近傍のスペースを有効活用できる。
特に、第7の態様によると、ベース材を車両に組み付ける際に第1ダッシュパネル側電気部品を固定位置の近傍に位置させることが容易となる。
特に、第8の態様によると、ベース材を車両に組み付ける際に第2ダッシュパネル側電気部品を固定位置の近傍に位置させることが容易となる。
特に、第9の態様によると、車室外側から電気部品をメンテナンスすることが可能となる。
特に、第10の態様によると、電気部品をメンテナンスすることが可能となる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0069】
1 電気部品付ワイヤーハーネスの組付構造
10 電気部品付ワイヤーハーネス
20 ベース材
21 サイレンサ
22 ダッシュサイレンサ領域部
26 フロアサイレンサ領域部
30 ワイヤーハーネス
31 電線
38 余長部
50 電気部品
80 ダッシュパネル
85 開閉部
88 フロアパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6