(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る第1のイメージセンサ装置は、入射光像を電気的な画像信号に変換するイメージセンサ素子と、イメージセンサ素子を気密に収容する容器と、を備え、容器は、イメージセンサ素子と対向して配置され入射光像を透過する光入射窓と、容器の一部を構成する絶縁部材、及び絶縁部材を貫通し所定方向に並ぶ板状の複数の導体を含み、容器の内部と外部とを電気的に導通させるフィードスルーと、を有し、互いに隣り合う導体のうち一方の導体の絶縁部材に埋め込まれた部分の板面を含む仮想平面と、他方の導体の絶縁部材に埋め込まれた部分の板面を含む仮想平面とが互いに交差するか若しくは離間している。
【0011】
本発明者の知見によれば、フィードスルーの絶縁部材に生じる亀裂は、板状導体と絶縁部材との界面を起点として、該界面に生じる応力に垂直な面に沿って伸展する傾向がある。従って、複数の板状導体の板面が一つの仮想平面に沿って面一に並ぶ従来のフィードスルーでは、互いに隣り合う板状導体間で応力に垂直な面同士が重なり、亀裂が生じやすくなる。これに対し、上記のイメージセンサ装置では、互いに隣り合う導体のうち一方の導体の絶縁部材に埋め込まれた部分の板面を含む仮想平面と、他方の導体の絶縁部材に埋め込まれた部分の板面を含む仮想平面とが互いに交差するか若しくは離間している。言い換えれば、これらの仮想平面は互いに一致していない。これにより、各板状導体への力によって絶縁部材と板状導体との界面に生じる応力に垂直な面(すなわち亀裂が生じやすい面)が、隣り合う板状導体間で互いに重ならない。このように、互いに隣り合う板状導体間で応力を分散させることにより、絶縁部材に亀裂を生じにくくすることができる。故に、上記のイメージセンサ装置によれば、絶縁部材に生じる亀裂を低減できる。
【0012】
第1のイメージセンサ装置において、各導体の板面は所定方向に対して傾斜してもよい。これにより、各板状導体により絶縁部材に生じる応力線の延伸方向が複数の板状導体間で互いに交差するか若しくは離間するので、複数の板状導体間で応力を分散させて、絶縁部材の亀裂を更に生じにくくすることができる。この場合、各導体の板面と所定方向との成す角は30°以上であってもよい。これにより、互いに隣り合う板状導体間で応力を効果的に分散させて、絶縁部材の亀裂を更に生じにくくすることができる。
【0013】
第1のイメージセンサ装置において、各導体の板面は所定方向に沿っていてもよい。このような形態であっても、上記のイメージセンサ装置によれば、互いに隣り合う板状導体間で応力を分散させて、絶縁部材の亀裂を生じにくくすることができる。
【0014】
第1のイメージセンサ装置において、各導体の絶縁部材に埋め込まれた部分の断面形状が長方形であってもよい。このような場合、長方形の角部に位置する絶縁部材に応力が集中しやすく亀裂が生じ易いので、上記のイメージセンサ装置が特に有効である。
【0015】
また、一実施形態に係る第2のイメージセンサ装置は、入射光像を電気的な画像信号に変換するイメージセンサ素子と、イメージセンサ素子を気密に収容する容器と、を備え、容器は、イメージセンサ素子と対向して配置され入射光像を透過する光入射窓と、容器の一部を構成する絶縁部材、及び絶縁部材を貫通し所定方向に並ぶ板状の複数の導体を含み、容器の内部と外部とを電気的に導通させるフィードスルーと、を有し、各導体は、容器の内側の一端を含む第1部分と、容器の外側の他端を含む第2部分と、絶縁部材に埋め込まれた第3部分と、を含み、第1部分及び第2部分の断面形状が長方形であり、第3部分の断面形状が円形若しくは楕円形である。
【0016】
この第2のイメージセンサ装置では、絶縁部材の内側面と外側面との間を貫通する導体の第3部分が円形断面若しくは楕円形断面を有する。このように、導体の絶縁部材に接する部分が角のない形状を有することによって、絶縁部材に生じる応力を分散させ、絶縁部材に亀裂を生じにくくすることができる。
【0017】
また、一実施形態に係る撮像装置は、上記いずれかのイメージセンサ装置と、容器の外部に位置する複数の導体の端部と電気的に接続された基板と、基板から得られる信号を画像信号に変換する信号処理部と、を備える。この撮像装置によれば、上記いずれかのイメージセンサ装置を備えることにより、絶縁部材に生じる亀裂を低減できる。
【0018】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るイメージセンサ装置及び撮像装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、一実施形態による撮像装置1Aの構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示されるように、本実施形態の撮像装置1Aは、レンズ3と、制御ICを内蔵するイメージセンサ装置10Aと、制御基板4と、コントローラ5と、信号処理部6と、信号記憶部7と、画像表示部8とを備える。イメージセンサ装置10Aは、入射光像Laを電気的な画像信号Saに変換するイメージセンサ素子と、イメージセンサ素子の動作を制御する制御IC(Integrated Circuit)と、イメージセンサ素子及び制御ICを気密に収容する容器と、を備える。レンズ3は、集光レンズであって、イメージセンサ素子と対向して配置される。レンズ3は、イメージセンサ素子に入射光像Laを結像させる。入射光像Laは赤外光像であり、その波長域は例えば0.7μm〜1000μmである。
【0020】
制御基板4は、イメージセンサ装置10Aと電気的に接続され、イメージセンサ素子から出力された画像信号Saを信号処理部6へ送る。制御基板4は、配線基板と、配線基板上に実装された電子部品とを有する。また、制御基板4は、コントローラ5からの制御信号Scを受けて、信号処理部6への画像信号Saの送信を制御する。信号処理部6は、制御基板4から受けた画像信号Saを画像データDaに変換する。コントローラ5及び信号処理部6は、例えば、多数の論理回路が集積された大規模集積回路、或いは、CPU及びメモリを有し所定のプログラムによって動作するコンピュータによって構成される。信号記憶部7は、制御基板4から出力された画像信号Sa、及び信号処理部6において生成された画像データDaのうち少なくとも一方を保存する。画像表示部8は、画像データDaを信号処理部6から受け、表示画面に表示する。
【0021】
図2は、一実施形態によるイメージセンサ装置10Aの外観を示す斜視図である。
図3は、イメージセンサ装置10Aの正面図である。
図4は、
図2のIV−IV線に沿ったイメージセンサ装置10Aの部分断面図である。
図2〜
図4に示されるように、本実施形態のイメージセンサ装置10Aは、本体部11及び小型冷却機12を備える。本体部11は、光入射窓13(
図2では図示を省略)、気密封止筐体14、ヘッド15、マウント16、イメージセンサ素子17、枠部18、及びフィードスルー20Aを有する。光入射窓13、気密封止筐体14、枠部18、及びフィードスルー20Aは、イメージセンサ素子17を収容する容器11aを構成する。
【0022】
光入射窓13は、入射光像Laを透過する板状の部材である。光入射窓13は、後述するイメージセンサ素子17と対向して配置されている。光入射窓13の構成材料は、入射光像Laの波長に応じて決定される。例えば、入射光像Laの波長が1.2μm〜6μmである場合、光入射窓13の構成材料としてはシリコンが選択される。入射光像Laの入射方向から見た光入射窓13の形状は円形である。光入射窓13の周縁部には、光入射窓13を保持するための円環状の枠部18が取り付けられている。枠部18は、例えば金属製である。枠部18と光入射窓13とは、気密を維持するように互いに密着している。
【0023】
気密封止筐体14は、或る方向A1に沿って延びる略円筒状の外観を有する。気密封止筐体14の構成材料は、例えばステンレスといった金属である。気密封止筐体14の外周面は、本体部11の外周面を構成する。方向A1における気密封止筐体14の一端には、光入射窓13を保持する枠部18が気密に固定されている。これにより、方向A1における気密封止筐体14の開口が、光入射窓13によって閉じられる。方向A1は、光入射窓13の厚さ方向と一致する。すなわち、方向A1は、入射光像Laの入射方向と一致する。
【0024】
より具体的には、気密封止筐体14は、円環状の第1部材14a、円環状の第2部材14b、及び略円筒状の第3部材14cを含んで構成されている。第1部材14a及び第2部材14bは、方向A1において第3部材14cと枠部18との間に並んで配置されている。第1部材14a、第2部材14b及び第3部材14cは、方向A1から見て互いに重なっている。すなわち、第1部材14a、第2部材14b及び第3部材14cの各内部空間は、方向A1に沿って連通している。枠部18は、例えばボルトといった締結部材19aによって第1部材14aの一端面に固定されている。枠部18と第1部材14aとの隙間は、気密に封止されている。第3部材14cの一端面は、例えばボルトといった締結部材19bによって第2部材14bの一端面に固定されている。第2部材14bと第3部材14cとの隙間は、気密に封止されている。第3部材14cの他端面は、例えばボルトといった締結部材19cによって小型冷却機12に固定されている。第3部材14cと小型冷却機12との隙間は、気密に封止されている。第1部材14aの他端面と第2部材14bの他端面との間には、フィードスルー20Aが挟持されている。言い換えれば、第1部材14aと第2部材14bとは、フィードスルー20Aを介して互いに接合され、一体化されている。
【0025】
第3部材14cの外側面からは、真空引き用の一つのチューブ14dが突出している。チューブ14dは気密封止筐体の内部空間に通じている。チューブ14dを介して気密封止筐体14の内部が真空引きされたのち(若しくは不活性ガスが充填されたのち)、チューブ14dの先端は気密に封じられる。
【0026】
ヘッド15は、気密封止筐体14の内部に設けられた、方向A1に沿って延びる略円筒状の金属製の部材である。ヘッド15の外周面は、気密封止筐体14の内周面と空隙を介して対向している。この空隙は、真空状態に維持されるか、不活性ガスが充填されている。方向A1におけるヘッド15の一端は閉じられており、他端は小型冷却機12に固定されている。他端側の開口には、小型冷却機12のピストン31が挿入される。ヘッド15の内部には空間32が設けられており、方向A1に沿ったピストン31の往復動作によって、空間32の容積が増加と減少とを繰り返す。空間32にはヘリウムガスが封入されており、空間32の容積の変化に伴い、ヘッド15の温度が低下する。方向A1におけるヘッド15の一端は方向A1と交差する平坦面となっており、該平坦面上にマウント16が設けられる。
【0027】
マウント16は、イメージセンサ素子17を搭載する板状の部材である。マウント16は、方向A1から見て四角形状を呈している。マウント16の一方の板面はヘッド15の平坦面に接合されており、他方の板面はイメージセンサ素子17を収容するための凹部を成している。マウント16の構成材料は、例えば窒化アルミニウムといったセラミックスである。マウント16は、イメージセンサ素子17をヘッド15に固定するとともに、イメージセンサ素子17とヘッド15とを熱的に結合する。
イメージセンサ素子17は、入射光像Laを電気的な画像信号Saに変換する半導体素子である。イメージセンサ素子17は、例えばインジウムガリウム砒素といった半導体材料によって主に構成され、波長が0.9μm〜1.7μmに感度を有する赤外センサアレイである。イメージセンサ素子17は、光入射窓13、気密封止筐体14、ヘッド15、枠部18、及びフィードスルー20Aによって構成される容器11a内に気密に収容されている。方向A1から見たイメージセンサ素子17の平面形状は例えば四角形であり、マウント16の平面形状の相似形である。
【0028】
図5は、マウント16及びイメージセンサ素子17の周辺構造を概略的に示す断面図である。
図5に示されるように、マウント16は、ヘッド15と対向する裏面16aと、裏面16aの反対側に設けられた搭載面16bとを有する。搭載面16bは、凹部の底面を構成している。搭載面16b上には制御IC33が実装されており、更にその上にイメージセンサ素子17が実装されている。制御IC33は、例えば銀ペーストといった導電性接着剤34を介して搭載面16bに固定されている。イメージセンサ素子17は、光入射面とは反対側の裏面に設けられた複数のバンプ電極35を介して、制御IC33と電気的に接続されている。制御基板4との間で信号を授受するための制御IC33の複数の端子は、マウント16上に設けられた複数の端子にそれぞれボンディングワイヤBWで接続され、更にその端子からフィードスルーへもボンディングワイヤで接続されている。
【0029】
ここで、フィードスルー20Aの詳細な構造について説明する。
図6(a)は、フィードスルー20A及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。同図において光入射窓13及び枠部18の図示は省略されている。
図6(b)は、
図6(a)のB部の拡大図である。
【0030】
フィードスルー20Aは、容器11aの内部に設けられた制御IC33と、容器11aの外部に設けられた制御基板4とを電気的に導通させるための構造体である。フィードスルー20Aは、絶縁部材21と、複数の導体22とを有する。絶縁部材21は、気密封止筐体14の第1部材14a及び第2部材14bと共通の中心軸線を有する円環状の部材であって、イメージセンサ素子17を収容する容器11aの一部を構成する。絶縁部材21は、容器11aの内側を向く内側面21aと、容器11aの外側を向く外側面21bとを有し、容器11aの内部と外部とを仕切る。絶縁部材21の材料としては、電気絶縁性及び気密性の観点から、例えばガラス、セラミック、或いは樹脂といった絶縁材料が用いられる。これらの材料は、フィードスルー20Aに求められる耐圧性能や耐熱性能に応じて選択される。
【0031】
複数の導体22は、例えばステンレスといった金属(若しくは、高い硬度が必要な場合には合金)に例えば金メッキされた導電性の部材である。複数の導体22は、板状であり、絶縁部材21の内側面21aと外側面21bとの間を貫通している。また、複数の導体22は、絶縁部材21の周方向(本実施形態における所定方向)に一列に並んでいる。該周方向において、複数の導体22の間隔は均一である。また、該周方向において、複数の導体22は全周にわたって配置されている。複数の導体22の両端のうち、容器11aの内部に位置する一端は、ボンディングワイヤを介してマウント16上の複数の端子とそれぞれ電気的に接続されている。容器11aの外部に位置する他端は、例えば半田等の導電性接着剤を介して制御基板4に導電接合される。なお、制御基板4は、円形の開口を有しており、本体部11が該開口に挿入される形で複数の導体22と接している。
【0032】
図7(a)及び
図7(b)は、それぞれ本実施形態の導体22の側面図及び正面図である。導体22は、外側面21bと交差する方向を長手方向とする板状を呈しており、互いに対向する一対の板面22d,22eを有している。導体22は、長手方向に並ぶ第1部分22a、第2部分22b、および第3部分22cを有する。第1部分22aは、容器11aの内側に位置する一端を含む。第2部分22bは、容器11aの外側に位置する他端を含む。第3部分22cは、第1部分22aと第2部分22bとの間に設けられ、絶縁部材21に埋め込まれている。導体22の長手方向に垂直な断面における第1部分22a、第2部分22b、および第3部分22cの断面形状は、長方形である。すなわち、一対の板面22d,22eは互いに略平行である。
【0033】
図7(b)に示されるように、第1部分22a及び第2部分22bの一対の板面22d,22eは、複数の導体22の並び方向A2に沿っている。そして、複数の導体22の第1部分22aは、容器11aの内側において方向A2に沿って並んで配置され、複数の導体22の第2部分22bは、容器11aの外側において方向A2に沿って並んで配置されている。各導体22の第1部分22aの板面22dは或る仮想平面に沿って面一に並んでおり、各導体22の第2部分22bの板面22dは該仮想平面に沿って面一に並んでいる。これに対し、第3部分22cの一対の板面22d,22eは、並び方向A2に対して傾斜している。第1部分22aと第3部分22cとの間の部分、及び第2部分22bと第3部分22cとの間の部分が捻れることにより、このような構成が実現されている。
【0034】
図8は、外側面21bにおける複数の導体22の配置を示す図である。
図8において、複数の導体22は、外側面21bに沿って切断された断面として示されている。また、
図8には、各導体22の第3部分22cの板面22dを含む仮想平面P1と、各導体22の第3部分22cの板面22eを含む仮想平面P2と、複数の導体22の並び方向A2に沿って延びる基準平面P3とが示されている。
【0035】
上述したように、絶縁部材21に埋め込まれた導体22の第3部分22cの板面22d,22eは、複数の導体22の並び方向A2に対して傾斜している。従って、複数の導体22の仮想平面P1は、基準平面P3に対して傾斜しており、且つ互いに一致して(重なって)いない。同様に、複数の導体22の仮想平面P2は、基準平面P3に対して傾斜しており、且つ互いに一致して(重なって)いない。並び方向A2に対する板面22dの傾斜角θが複数の導体22において互いに等しい場合、複数の導体22から延びる仮想平面P1は、一定の間隔をあけて離間し、互いに平行に延びる。また、並び方向A2に対する板面22dの傾斜角θが複数の導体22において互いに異なる場合、複数の導体22から延びる仮想平面P1は、互いに交差する。仮想平面P2に関しても同様である。複数の導体22の各板面22d,22eと並び方向A2との成す角θは、例えば30°以上であり、一実施例では45°である。
【0036】
以上に説明した本実施形態の撮像装置1A及びイメージセンサ装置10Aによって得られる効果について、従来の課題とともに説明する。
図18(a)は、比較例に係るイメージセンサ装置のフィードスルー120及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。同図において光入射窓13及び枠部18の図示は省略されている。
図18(b)は、
図18(a)のC部の拡大図である。
図18に示されるように、フィードスルー120では、板状の複数の導体122が所定方向に並んで配置され、且つ各導体122の板面が或る仮想平面に沿って面一に並んでいる。これにより、制御基板4と複数の導体122との導電接着が容易となる。
【0037】
しかしながら、制御基板4と複数の導体122とを導電性接着剤によって固着する際、導体122に力が加わり、絶縁部材21の導体貫通用の孔付近に応力が発生する。或いは、複数の導体122と制御基板4とが固着された後の制御基板4への外力によっても、導体122を介して絶縁部材21に同様の応力が発生する。このような応力によって絶縁部材21に亀裂CLが生じ、容器の気密状態を維持できなくなる虞がある。本発明者の知見によれば、フィードスルー120の絶縁部材21に生じる亀裂CLは、板状導体122と絶縁部材21との界面を起点として、該界面に生じる応力に垂直な面に沿って伸展する傾向がある。従って、複数の板状導体122の板面が一つの仮想平面に沿って面一に並ぶフィードスルー120では、互いに隣り合う板状導体122間で応力に垂直な面同士が重なり、亀裂CLが生じやすくなる。
【0038】
このような課題に対し、本実施形態のイメージセンサ装置10Aでは、互いに隣り合う導体22のうち一方の導体22の絶縁部材21に埋め込まれた部分22cの板面22d,22eを含む仮想平面P1,P2と、他方の導体22の絶縁部材21に埋め込まれた部分22cの板面22d,22eを含む仮想平面P1,P2とが、互いに交差するか若しくは離間している。言い換えれば、隣り合う仮想平面P1同士及び仮想平面P2同士は、互いに一致していない。これにより、各板状導体22への力によって絶縁部材21と各板状導体22との界面に生じる応力に垂直な面(すなわち亀裂が生じやすい面)が、隣り合う板状導体22間で互いに重ならない。このように、互いに隣り合う板状導体22間で応力を分散させることにより、絶縁部材21に亀裂CLを生じにくくすることができる。故に、本実施形態のイメージセンサ装置10Aによれば、絶縁部材21に生じる亀裂CLを低減でき、イメージセンサ装置の信頼性を向上することができる。
【0039】
また、本実施形態のように、各導体22の板面22d,22eは並び方向A2に対して傾斜してもよい。これにより、各板状導体22により絶縁部材21に生じる応力線の延伸方向が、複数の板状導体22間で互いに交差するか若しくは離間する。従って、複数の板状導体22間で応力を分散させて、絶縁部材21の亀裂CLを更に生じにくくすることができる。この場合、各導体22の板面22d,22eと並び方向A2との成す角θは30°以上であってもよい。これにより、互いに隣り合う板状導体22間で応力を効果的に分散させて、絶縁部材21の亀裂CLを更に生じにくくすることができる。
【0040】
また、本実施形態のように、各導体22の絶縁部材21に埋め込まれた部分22cの断面形状は長方形であってもよい。このような場合、長方形の角部に位置する絶縁部材21に応力が集中しやすく亀裂CLが生じ易いので、本実施形態のイメージセンサ装置10Aの構成が特に有効である。
【0041】
(第1変形例)
図9(a)は、上記実施形態の第1変形例に係るイメージセンサ装置のフィードスルー20B及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。同図において光入射窓13及び枠部18の図示は省略されている。
図9(b)は、
図9(a)のD部の拡大図である。本変形例のフィードスルー20Bは、絶縁部材21と、複数の導体23と、複数の導体24とを有する。絶縁部材21の構成は、前述した実施形態と同様である。導体23,24は、板状であり、絶縁部材21の内側面21aと外側面21bとの間を貫通している。また、導体23,24は、絶縁部材21の周方向に交互に並んでいる。該周方向において、導体23,24の間隔は均一である。また、該周方向において、導体23,24は全周にわたって配置されている。導体23,24の両端のうち、容器11aの内部に位置する一端は、ボンディングワイヤを介してマウント16上の複数の端子と電気的に接続されている。容器11aの外部に位置する他端は、例えば半田等の導電性接着剤を介して制御基板4に導電接合される。
【0042】
導体24は、外側面21bと交差する方向を長手方向とする板状を呈しており、互いに対向する一対の板面を有している。一対の板面は共に平坦であり、複数の導体24の並び方向A2に沿っている。また、導体24は外側面21bと交差する方向に沿って真っ直ぐに延びている。これに対し、導体23は、導体24とは異なる下記の形状を有する。
【0043】
図10は、本変形例の導体23の形状を示す斜視図である。導体23は、外側面21bと交差する方向を長手方向とする板状を呈しており、方向A1において互いに対向する一対の板面23d,23eを有する。また、導体23は、長手方向に並ぶ第1部分23a、第2部分23b、および第3部分23cを有する。第1部分23aは、容器11aの内側に位置する一端を含む。第2部分23bは、容器11aの外側に位置する他端を含む。第3部分23cは、第1部分23aと第2部分23bとの間に設けられ、絶縁部材21に埋め込まれている。導体23の長手方向に垂直な断面における各部分23a〜23cの断面形状は、長方形である。すなわち、一対の板面23d,23eは互いに平行である。
【0044】
各部分23a〜23cの一対の板面23d,23eは、複数の導体23の並び方向A2に沿っている。そして、複数の導体23の第1部分23aは、容器11aの内側において方向A2に沿って導体24と交互に並んで配置され、複数の導体23の第2部分23bは、容器11aの外側において方向A2に沿って導体24と交互に並んで配置されている。各導体23の第1部分23aの板面23dは、導体24とともに或る仮想平面に沿って面一に並んでおり、各導体23の第2部分23bの板面23dは、導体24とともに該仮想平面に沿って面一に並んでいる。
【0045】
各導体23の第3部分23cの位置は、第1部分23a及び第2部分23bの位置に対して厚さ方向にシフトしている。すなわち、第3部分23cは、第1部分23a及び第2部分23bに対して、方向A1における気密封止筐体14の第1部材14a側(若しくは、気密封止筐体14の第2部材14b側でもよい)に配置されている。第1部分23aと第3部分23cとの間の部分、及び第2部分23bと第3部分23cとの間の部分が板面23d,23eと交差する方向に屈曲することにより、このような構成が実現されている。
【0046】
図11は、外側面21bにおける導体23,24の配置を示す図である。
図11において、導体23,24は、外側面21bに沿って切断された断面として示されている。また、
図11には、各導体23の第3部分23cの板面23dを含む仮想平面P6と、各導体23の第3部分23cの板面23eを含む仮想平面P7と、各導体24の一方の板面24dを含む仮想平面P4と、各導体24の他方の板面24eを含む仮想平面P5とが示されている。
【0047】
上述したように、絶縁部材21に埋め込まれた導体23の第3部分23cは、第1部分23a及び第2部分23bに対して方向A1に変位している。従って、互いに隣り合う導体23,24の仮想平面P6,P4は互いに一致せず(重ならず)、一定の間隔をあけて離間し、互いに平行に延びる。同様に、互いに隣り合う導体23,24の仮想平面P7,P5は互いに一致せず(重ならず)、一定の間隔をあけて離間し、互いに平行に延びる。
【0048】
このように、本変形例においても、互いに隣り合う導体23,24のうち一方の導体23の絶縁部材21に埋め込まれた部分23cの板面23d,23eを含む仮想平面P6,P7と、他方の導体24の絶縁部材21に埋め込まれた部分の板面24d,24eを含む仮想平面P4,P5とが、互いに離間している。これにより、各板状導体23,24への力によって絶縁部材21と各板状導体23,24との界面に生じる応力に垂直な面(すなわち亀裂が生じやすい面)が、隣り合う導体23,24間で互いに重ならない。このように、互いに隣り合う板状導体23,24間で応力を分散させることにより、絶縁部材21に亀裂CLを生じにくくすることができる。なお、導体23同士、及び導体24同士では応力に垂直な面が重なるが、導体同士の間隔が比較例(
図18を参照)と比べて拡がるので、亀裂が生じやすい面の重なりによる影響を低減できる。故に、本変形例によれば、上記実施形態と同様に、絶縁部材21に生じる亀裂CLを低減できる。なお、方向A2における板状導体23,24の幅をW1とし、板状導体23同士の間隔および板状導体24同士の間隔をD1とするとき、その比(D1/W1)は、例えば3以上である。方向A2における板状導体23,24の幅が異なる場合には、小さい方の幅をW1とする。
【0049】
また、上記実施形態では導体22の板面22d,22eが並び方向A2に対して傾斜しているが、本変形例のように、導体23の板面23d,23e、及び導体24の板面24d,24eは並び方向A2に沿っていてもよい。このような形態であっても、互いに隣り合う板状導体23,24間で応力を分散させて、絶縁部材21の亀裂CLを生じにくくすることができる。
【0050】
(第2変形例)
図12(a)は、上記実施形態の第2変形例に係るイメージセンサ装置のフィードスルー20C及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。同図において光入射窓13及び枠部18の図示は省略されている。
図12(b)は、
図12(a)のE部の拡大図である。
【0051】
本変形例のフィードスルー20Cは、絶縁部材21と、複数の導体24と、複数の導体25とを有する。絶縁部材21の構成は、前述した実施形態と同様である。また、複数の導体24の形状は、前述した第1変形例と同様である。導体25は、板状であり、絶縁部材21の内側面21aと外側面21bとの間を貫通している。導体24,25は、絶縁部材21の周方向に交互に並んでいる。該周方向において、導体24,25の間隔は均一である。また、該周方向において、導体24,25は全周にわたって配置されている。導体24,25の両端のうち、容器11aの内部に位置する一端は、ボンディングワイヤを介してマウント16上の複数の端子と電気的に接続されている。容器11aの外部に位置する他端は、例えば半田等の導電性接着剤を介して制御基板4に導電接合される。
【0052】
図13は、本変形例の導体25の形状を示す斜視図である。導体25は、外側面21bと交差する方向を長手方向とする板状を呈しており、方向A1において互いに対向する一対の板面25d,25eを有する。また、導体25は、長手方向に並ぶ第1部分25a、第2部分25b、および第3部分25cを有する。第1部分25aは、容器11aの内側に位置する一端を含む。第2部分25bは、容器11aの外側に位置する他端を含む。第3部分25cは、第1部分25aと第2部分25bとの間に設けられ、絶縁部材21に埋め込まれている。導体25の長手方向に垂直な断面における各部分25a〜25cの断面形状は、長方形である。すなわち、一対の板面25d,25eは互いに平行である。
【0053】
各部分25a〜25cの一対の板面25d,25eは、導体24,25の並び方向A2に沿っている。そして、第2部分25bは、容器11aの外側において方向A2に沿って導体24と交互に並んで配置されている。第2部分25bの板面25dは、導体24の板面24d(
図11を参照)とともに或る仮想平面に沿って面一に並んでいる。第1部分25aは、容器11aの内側において方向A2に沿って並んで配置されている。第1部分25aの板面25dは、導体24の板面24dとは離間した別の仮想平面に沿って面一に並んでいる。換言すれば、方向A1における第1部分25aの位置が、同方向における導体24の一端の位置と異なっている。このため、絶縁部材21の内側面21aには段差が設けられている。導体25が第1部分25aから第3部分25cにわたって真っ直ぐに延びる一方、第2部分25bと第3部分25cとの間の部分が板面25d,25eと交差する方向に屈曲することにより、このような構成が実現されている。
【0054】
本変形例においても、外側面21bにおける導体24,25の配置は、
図11に示された導体23,24の配置と同様となる。すなわち、互いに隣り合う導体24,25の各板面から延びる仮想平面は互いに一致せず(重ならず)、一定の間隔をあけて離間し、互いに平行に延びる。これにより、各板状導体24,25への力によって絶縁部材21に生じる応力の延伸方向が、隣り合う板状導体24,25間で互いに重ならない。従って、互いに隣り合う板状導体24,25間で応力を分散させて、絶縁部材21に亀裂CLを生じにくくすることができる。故に、本変形例によれば、上記実施形態と同様に、絶縁部材21に生じる亀裂CLを低減できる。
【0055】
(第3変形例)
図14(a)は、上記実施形態の第3変形例に係るイメージセンサ装置のフィードスルー20D及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。同図において光入射窓13及び枠部18の図示は省略されている。
図14(b)は、フィードスルー20Dを部分的に拡大して示す側面図である。
図14(c)は、フィードスルー20Dが有する導体26の長手方向に沿った断面図である。
【0056】
本変形例のフィードスルー20Dは、絶縁部材21と、複数の導体26とを有する。絶縁部材21の構成は、前述した実施形態と同様である。複数の導体26は、絶縁部材21の周方向に並んでおり、絶縁部材21の内側面21aと外側面21bとの間を貫通している。該周方向において、複数の導体26の間隔は均一である。また、該周方向において、複数の導体26は全周にわたって配置されている。導体26の両端のうち、容器11aの内部に位置する一端は、ボンディングワイヤを介してマウント16上の複数の端子と電気的に接続されている。容器11aの外部に位置する他端は、例えば半田等の導電性接着剤を介して制御基板4に導電接合される。
【0057】
導体26は、外側面21bと交差する方向を長手方向としており、
図14(c)に示されるように、長手方向に並ぶ第1部分26a、第2部分26b、および第3部分26cを有する。第1部分26aは、容器11aの内側に位置する一端を含む。第2部分26bは、容器11aの外側に位置する他端を含む。第3部分26cは、第1部分26aと第2部分26bとの間に設けられ、絶縁部材21に埋め込まれている。導体26の長手方向に垂直な断面における第1部分26a及び第2部分26bの断面形状は、長方形である。すなわち、第1部分26aの一対の板面26d,26eは互いに平行であり、第2部分26bの一対の板面26f,26gは互いに平行である。
【0058】
板面26d〜26gは、複数の導体26の並び方向A2に沿っている。そして、複数の導体26の第1部分26aは、容器11aの内側において方向A2に沿って並んで配置され、複数の導体26の第2部分26bは、容器11aの外側において方向A2に沿って並んで配置されている。各導体26の第1部分26aの板面26dは、或る仮想平面に沿って面一に並んでおり、各導体26の第2部分26bの板面26fは、該仮想平面に沿って面一に並んでいる。
【0059】
導体26の長手方向に垂直な断面における第3部分26cの断面形状は、円形若しくは楕円形である。第3部分26cの外径(円の直径若しくは楕円の長径)は、第1部分26aと第2部分26bの横幅(長方形断面の長辺の長さ)と略等しい。このような導体26の形状は、例えば円柱状(若しくは楕円柱状の)金属棒の両端部を平板状に潰すことによって形成される。
【0060】
本変形例では、絶縁部材21の内側面21aと外側面21bとの間を貫通する導体26の第3部分26cが円形断面若しくは楕円形断面を有する。このように、絶縁部材21に接する第3部分26cが角のない形状を有することによっても、絶縁部材21に生じる応力を分散させ、絶縁部材21に亀裂を生じにくくすることができる。
【0061】
(第4変形例)
図15(a)は、上記実施形態の第4変形例に係るイメージセンサ装置のフィードスルー20E及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。同図において光入射窓13及び枠部18の図示は省略されている。
図15(b)は、フィードスルー20Eを部分的に拡大して示す側面図である。
【0062】
本変形例のフィードスルー20Eは、上記実施形態のフィードスルー20Aが有する絶縁部材21に代えて、絶縁部材27を有する。絶縁部材27は、上記実施形態の絶縁部材21とは異なり、方向A1(光入射方向)から見て四角形状(正方形状、長方形状、或いは台形状)を呈している。絶縁部材21は、マウント16及びイメージセンサ素子17を収容する容器の内側を向く内側面27aと、該容器の外側を向く外側面27bとを有し、該容器の内部と外部とを仕切る。絶縁部材27は、上記実施形態の絶縁部材21と同様に、例えばガラス、セラミック、或いは樹脂といった絶縁体からなる。
【0063】
内側面27a及び外側面27bは、方向A1と直交する方向A3に沿って真っ直ぐに延びている。すなわち、上記実施形態では複数の導体22の並び方向A2が円周面に沿っていたが、本変形例では、複数の導体22の並び方向A3が平面に沿っている。方向A3において、複数の導体22の間隔は均一である。このような形態であっても、上記実施形態と同様の作用効果を好適に奏することができる。
【0064】
図16(a)は、本変形例の別の形態に係るフィードスルー20F及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。
図16(b)は、フィードスルー20Fを部分的に拡大して示す側面図である。このフィードスルー20Fは、上述したフィードスルー20Eの複数の導体22に代えて、複数の導体23及び複数の導体24を有する。導体23,24の形状は、前述した第1変形例(
図9,
図10を参照)と同様である。また、
図17(a)は、本変形例の更に別の形態に係るフィードスルー20G及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。
図17(b)は、フィードスルー20Gを部分的に拡大して示す側面図である。このフィードスルー20Gは、上述したフィードスルー20Eの複数の導体22に代えて、複数の導体24及び複数の導体25を有する。導体24,25の形状は、前述した第2変形例(
図12,
図13を参照)と同様である。例えばこれらのような形態であっても、上記実施形態と同様の作用効果を好適に奏することができる。
【0065】
本発明によるイメージセンサ装置及び撮像装置は、上述した実施形態及び各変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態及び各変形例を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、上記実施形態では複数の導体22の第3部分22cの傾斜方向が揃っている場合を例示したが、第3部分22cの傾斜方向は導体22毎に異なっていてもよい。例えば、互いに隣接する導体22において第3部分22cの傾斜方向が互いに逆であってもよい。また、第3部分22cの傾斜角度θは、導体22毎に異なっていてもよい。また、第1変形例及び第2変形例では、屈曲した導体23(または25)と真っ直ぐな導体24とが交互に配置されているが、互いに逆向きに屈曲した2種類の導体が交互に配置されてもよい。