特許第6870594号(P6870594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧

<>
  • 特許6870594-超音波センサ 図000002
  • 特許6870594-超音波センサ 図000003
  • 特許6870594-超音波センサ 図000004
  • 特許6870594-超音波センサ 図000005
  • 特許6870594-超音波センサ 図000006
  • 特許6870594-超音波センサ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870594
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】超音波センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/521 20060101AFI20210426BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20210426BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20210426BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G01S7/521 B
   G01S15/931
   B60R11/02 W
   H04R1/02 330
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-228110(P2017-228110)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-100713(P2019-100713A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】都築 威夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 岳人
【審査官】 渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102013011186(DE,A1)
【文献】 特開2017−175291(JP,A)
【文献】 実開昭57−039188(JP,U)
【文献】 特開2014−227090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 − 7/64
15/00 − 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体部品(V3)に装着されるように構成された超音波センサ(1)であって、
中心軸線(CL)と平行な軸方向に延設された柱状の超音波マイクロフォン(3)と、前記超音波マイクロフォンの前記軸方向における先端側の突出部(31)を突出させつつ基端側の被支持部(32)を支持するマイクロフォン支持部(4)とを有する、センサ本体(2)と、
前記超音波マイクロフォンにおける前記突出部を被覆するように設けられ、合成樹脂系弾性材料により筒状に形成された、クッション部材(5)と、
前記中心軸線から放射状に延びる径方向における前記超音波マイクロフォンよりも外側に設けられ、前記クッション部材の前記軸方向における先端側の露出部(53)を露出させつつ基端側の被挟持部(54)を前記超音波マイクロフォンにおける前記突出部の外周面との間で挟持するように構成された、リテーナ部(6)と、
前記車体部品に形成された貫通孔である取付孔(V4)に前記超音波マイクロフォンにおける前記突出部および前記クッション部材における前記露出部を挿入し且つ前記リテーナ部を前記車体部品に固定することで当該超音波センサを前記車体部品に装着した車載状態にて、前記車体部品と前記クッション部材における前記露出部との隙間を閉塞するように、前記クッション部材における前記露出部上に密着状態で設けられた、防水シール(7)とを備え、
前記防水シールは、前記クッション部材における前記露出部と前記リテーナ部との隙間を閉塞するように設けられた、超音波センサ。
【請求項2】
前記防水シールは、前記取付孔と前記クッション部材における前記露出部との隙間を閉塞するように設けられた、請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記防水シールは、充填材である、請求項1または2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記防水シールは、ゴム製のリング状部材である、請求項1または2に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記防水シールは、前記クッション部材とは異なる音響特性の材質により構成された、請求項1〜4のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記防水シールは、音響減衰率が水より大きい材質によって構成された、請求項1〜5のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記マイクロフォン支持部は、前記超音波マイクロフォンにおける前記被支持部を弾性的に支持するように合成樹脂系弾性材料により形成された弾性支持部材(41)を有し、
前記クッション部材は、前記弾性支持部材とは別体に形成された、請求項1〜6のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項8】
前記車体部品はフロントグリルである、請求項1〜7のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水等の浸入により性能に悪影響が及ぶことのない、超音波センサの実装構造を開示する。具体的には、特許文献1に開示された実装構造においては、外面に露出する外板に孔が開けられ、この孔に超音波センサが挿入される。外板の内面には、超音波センサの固定用のリブが設けられる。このリブには、振動吸収体を介して、超音波センサが固定される。超音波センサの鉛直下方にある、外板、リブもしくは振動吸収体には、水抜き孔が設けられる。水抜き孔は、超音波センサの筐体と、外板、リブもしくは振動吸収体との間に形成される空間に連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3999187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の車載用の超音波センサは、主として、バンパーに装着される。すなわち、公知の車載用の超音波センサにおいて、上記の「外板」は、主として、バンパーである。超音波センサがバンパーに装着される場合、装着部分における防水構造を実現することは、比較的容易である。このため、この場合、装着部分における浸水量は比較的少ない。また、仮に浸水が発生しても、上記のような水抜き孔により、良好な排水が行われ得る。
【0005】
一方、障害物検知性能上の理由、あるいは、車両意匠上の理由等により、車載用の超音波センサがフロントグリルに装着される場合があり得る。この場合、フロントグリルに上記のような水抜き孔を設けることは、意匠上あるいは構造上、困難である。バンパーあるいはフロントグリル等の車体部品に対する超音波センサの装着部分にて、外部から浸入した水が保持されると、保持された水中の振動伝播により、不要な反射波が増大し、これにより誤検知等の不具合が生じ得る。
【0006】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、車体部品に装着されるように構成された超音波センサにおいて、車載状態での降雨等による浸水に伴う性能悪化の発生を、良好に抑制可能な構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の超音波センサ(1)は、車体部品(V3)に装着されるように構成されている。この超音波センサは、中心軸線(CL)と平行な軸方向に延設された柱状の超音波マイクロフォン(3)と前記超音波マイクロフォンの前記軸方向における先端側の突出部(31)を突出させつつ基端側の被支持部(32)を支持するマイクロフォン支持部(4)とを有するセンサ本体(2)と、前記超音波マイクロフォンにおける前記突出部を被覆するように設けられ合成樹脂系弾性材料により筒状に形成されたクッション部材(5)と、前記中心軸線から放射状に延びる径方向における前記超音波マイクロフォンよりも外側に設けられ前記クッション部材の前記軸方向における先端側の露出部(53)を露出させつつ基端側の被挟持部(54)を前記超音波マイクロフォンにおける前記突出部の外周面との間で挟持するように構成されたリテーナ部(6)と、前記車体部品に形成された貫通孔である取付孔(V4)に前記超音波マイクロフォンにおける前記突出部および前記クッション部材における前記露出部を挿入し且つ前記リテーナ部を前記車体部品に固定することで当該超音波センサを前記車体部品に装着した車載状態にて前記車体部品と前記クッション部材における前記露出部との隙間を閉塞するように前記クッション部材における前記露出部上に密着状態で設けられた防水シール(7)とを備えている。前記防水シールは、前記クッション部材における前記露出部と前記リテーナ部との隙間を閉塞するように設けられる。
【0008】
かかる構成を有する前記超音波センサにおいては、前記センサ本体における前記超音波マイクロフォンの、前記軸方向における先端側の前記突出部は、前記マイクロフォン支持部から突出している。前記クッション部材は、前記超音波マイクロフォンにおける前記突出部を被覆する。前記リテーナ部は、前記クッション部材の前記軸方向における先端側の前記露出部を露出させつつ、基端側の前記被挟持部を前記超音波マイクロフォンにおける前記突出部の前記外周面との間で挟持する。
【0009】
前記車体部品に形成された貫通孔である前記取付孔に、前記超音波マイクロフォンにおける前記突出部および前記クッション部材における前記露出部を挿入し、且つ、前記リテーナ部を前記車体部品に固定することで、前記超音波センサが前記車体部品に装着される。前記超音波センサを前記車体部品に装着した前記車載状態にて、前記防水シールは、前記車体部品と前記クッション部材における前記露出部との前記隙間を閉塞するように、前記クッション部材における前記露出部上に密着状態で設けられる。また、前記防水シールは、前記クッション部材における前記露出部と前記リテーナ部との隙間を閉塞するように設けられる。
【0010】
かかる構成においては、前記車載状態における、前記車体部品と前記クッション部材における前記露出部との前記隙間が、前記防水シールによって良好に閉塞される。このため、外部から浸入した水が前記隙間に保持されることが、良好に抑制され得る。したがって、かかる構成によれば、前記車載状態での降雨等による浸水に伴う性能悪化の発生を、良好に抑制することが可能となる。
【0011】
なお、明細書および特許請求の範囲の欄における、各手段に付された括弧付きの参照符号は、同手段と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。よって、本発明の技術的範囲は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る超音波センサを搭載した車両の外観図である。
図2図1に示された超音波センサの側断面図である。
図3図2の一部を拡大した側断面図である。
図4図2に示されたリテーナ部の外観を示す斜視図である。
図5】変形例に係る超音波センサの側断面図である。
図6図5の一部を拡大した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施形態の構成における、前後左右上下の各方向を、図中矢印で定義する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがあるため、当該実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0014】
(構成)
図1を参照すると、車両Vは、いわゆる四輪自動車であって、平面視にて略矩形状の車体V1を備えている。車体V1の前端部には、車体部品である、バンパーV2およびフロントグリルV3が装着されている。フロントグリルV3は、バンパーV2の上方に配置されている。
【0015】
バンパーV2およびフロントグリルV3には、超音波センサ1を取り付けるための貫通孔である取付孔V4が形成されている。具体的には、本実施形態においては、取付孔V4は、バンパーV2の両角部に設けられている。また、フロントグリルV3には、2個の取付孔V4が、左右対称に設けられている。
【0016】
超音波センサ1は、バンパーV2およびフロントグリルV3に装着されるように構成されている。以下、図2図4を参照しつつ、フロントグリルV3に装着される超音波センサ1の構成の詳細について説明する。
【0017】
図2および図3を参照すると、超音波センサ1の本体部分を構成するセンサ本体2は、超音波マイクロフォン3と、マイクロフォン支持部4とを有している。また、超音波センサ1は、クッション部材5と、リテーナ部6と、防水シール7とを有している。
【0018】
超音波マイクロフォン3は、超音波を送受信可能に構成されている。すなわち、超音波マイクロフォン3は、指向軸に沿った方向に探査波を送信するとともに、車両Vの周囲に存在する物体による反射波を受信するように構成されている。超音波マイクロフォン3は、指向軸と平行な中心軸線CLを有する柱状の外形形状を有している。具体的には、本実施形態においては、超音波マイクロフォン3は、中心軸線CLと平行な軸方向に延設された円柱状に形成されている。
【0019】
超音波マイクロフォン3は、突出部31と被支持部32とを有している。突出部31は、超音波マイクロフォン3の軸方向における先端側の部分であって、マイクロフォン支持部4から前方に突設されている。「軸方向における先端側」とは、超音波センサ1すなわちセンサ本体2にて、超音波マイクロフォン3が突出する側であって、図中前側に相当する。被支持部32は、超音波マイクロフォン3の軸方向における基端側の部分であって、マイクロフォン支持部4の内部に埋設されている。「軸方向における基端側」は、「軸方向における先端側」とは反対側である。
【0020】
マイクロフォン支持部4は、弾性支持部材41と、センサケース42とを有している。弾性支持部材41は、超音波マイクロフォン3における被支持部32を弾性的に支持するように、シリコーンゴム等の合成樹脂系弾性材料により形成されている。具体的には、弾性支持部材41は、軸方向における先端側に向かって開口する有底筒状の外形形状を有していて、内側の空間に超音波マイクロフォン3における被支持部32を収容するように構成されている。
【0021】
センサケース42は、ポリブチレンテレフタレート等の硬質の合成樹脂によって一体に形成されている。センサケース42は、軸方向における先端側の部分にて、弾性支持部材41の外周面を覆いつつ弾性支持部材41を収容するように構成されている。すなわち、マイクロフォン支持部4は、超音波マイクロフォン3の軸方向における先端側の突出部31を突出させつつ、基端側の被支持部32を弾性的に支持するようになっている。
【0022】
センサケース42には、複数の係合片43が設けられている。係合片43は、センサケース42の外周面から上下方向に突設されている。
【0023】
クッション部材5は、超音波マイクロフォン3における突出部31を密着状態で被覆するように設けられている。本実施形態においては、クッション部材5は、非発泡性シリコーンゴム等の合成樹脂系弾性材料により、継ぎ目なく一体に形成されている。合成樹脂系弾性材料は、粘弾性材料あるいはエラストマとも称される。本実施形態においては、クッション部材5は、筒状部51とフランジ部52とを有している。
【0024】
筒状部51は、中心軸線CLに沿って設けられた円筒状の部分であって、円筒内面状の内周面を有している。この内周面は、超音波マイクロフォン3における突出部31の円柱面状の外周面と密着するように形成されている。フランジ部52は、筒状部51の軸方向における基端部すなわち後端部から径方向における外側に突出したリング状に形成されている。径方向とは、中心軸線CLから放射状に延びる方向である。
【0025】
超音波センサ1をフロントグリルV3に装着する前に、センサ本体2にクッション部材5およびリテーナ部6を仮に装着した状態を、仮組状態と称する。この仮組状態にて、クッション部材5の、軸方向における先端側の露出部53は、リテーナ部6から露出するようになっている。また、この露出部53は、車載状態にて、取付孔V4の内周面と密着するようになっている。車載状態とは、超音波センサ1をフロントグリルV3に装着した状態である。クッション部材5の、軸方向における基端側の被挟持部54は、仮組状態および車載状態にてリテーナ部6によって係止される部分であって、筒状部51の軸方向における基端部とフランジ部52とを含む。
【0026】
リテーナ部6は、超音波センサ1すなわちセンサ本体2をフロントグリルV3に装着するために用いられる部品であって、仮組状態および車載状態にて、超音波マイクロフォン3およびマイクロフォン支持部4よりも径方向における外側に設けられている。本実施形態においては、リテーナ部6は、クッション部材5の軸方向における先端側の露出部53を露出させつつ、基端側の被挟持部54を超音波マイクロフォン3における突出部31の外周面との間で挟持するように構成されている。
【0027】
図2図4を参照すると、リテーナ部6は、本体保持部61と、係合孔62と、挟持部63と、フランジ係止部64と、グリル固定部65とを有している。リテーナ部6は、ABS樹脂等の硬質の合成樹脂によって一体に形成されている。
【0028】
本体保持部61は、仮組状態および車載状態にてセンサケース42を覆うように、筒状に形成されている。係合孔62は、本体保持部61における、仮組状態および車載状態にて係合片43に対応する位置に設けられている。すなわち、リテーナ部6は、本体保持部61の内側の空間にセンサ本体2を収容しつつ係合孔62に係合片43を係合させた状態にて、センサ本体2を保持するように構成されている。
【0029】
挟持部63は、リテーナ部6の軸方向における先端側に設けられた略円筒状の部分である。挟持部63は、仮組状態および車載状態にて、超音波マイクロフォン3およびクッション部材5よりも径方向における外側に設けられている。すなわち、挟持部63は、仮組状態および車載状態にて、クッション部材5における被挟持部54を、超音波マイクロフォン3における突出部31との間で挟持するように設けられている。また、挟持部63は、車載状態にて、フロントグリルV3の内面すなわち裏面における、取付孔V4の周囲の部分と、防水シール7によって充填される所定の隙間を挟んで対向するようになっている。
【0030】
具体的には、中心軸線CLに沿って設けられた挟持部63の、軸方向における先端部は、フランジ係止部64を有している。フランジ係止部64は、挟持部63の軸方向における先端部から、径方向における内側に向かって突出する、リング状に形成されている。フランジ係止部64は、クッション部材5における筒状部51の外径と略同一の内径を有している。また、フランジ係止部64は、径方向における突出量が、クッション部材5におけるフランジ部52の径方向における突出量と略同一となるように形成されている。
【0031】
すなわち、フランジ係止部64は、クッション部材5における筒状部51の、被挟持部54に対応する部分と密着するように形成されている。また、フランジ係止部64は、クッション部材5におけるフランジ部52と、防水シール7を挟んで軸方向に対向するようになっている。さらに、フランジ係止部64の、軸方向における先端面は、車載状態にてフロントグリルV3の裏面と防水シール7によって充填される所定の隙間を挟んで対向するように、リング状に形成されている。
【0032】
図4を参照すると、グリル固定部65は、本体保持部61よりも、径方向における外側に配置されている。グリル固定部65は、超音波センサ1をフロントグリルV3に装着する際に、フロントグリルV3に固定されるようになっている。
【0033】
図2および図3を参照すると、本実施形態においては、防水シール7は、クッション部材5における露出部53および被挟持部54の上に、密着状態で設けられている。防水シール7は、非発泡性シリコーンゴム等の合成樹脂系弾性材料によって形成された充填材であって、車載状態にて取付孔V4の周囲に形成される、水を保持可能な隙間に充填されている。
【0034】
すなわち、防水シール7は、車載状態にて、フロントグリルV3とリテーナ部6とクッション部材5との隙間を閉塞するように設けられている。車載状態とは、より詳細には、超音波マイクロフォン3における突出部31と、これを被覆するクッション部材5における露出部53とを、取付孔V4に挿入し、且つ、リテーナ部6をフロントグリルV3に固定することで、超音波センサ1をフロントグリルV3に装着した状態である。
【0035】
具体的には、本実施形態においては、防水シール7は、取付孔V4と、クッション部材5における露出部53との隙間を閉塞するように設けられている。また、防水シール7は、クッション部材5における被挟持部54と、リテーナ部6における挟持部63との隙間を閉塞するように設けられている。さらに、防水シール7は、フロントグリルV3の内面すなわち裏面と、フランジ係止部64の軸方向における先端面との隙間を閉塞するように設けられている。なお、本実施形態においては、防水シール7は、クッション部材5とは異なる音響特性、具体的には、クッション部材5の材質よりも音響減衰率が高い材質によって構成されている。すなわち、防水シール7は、浸水時の水中の振動伝播に起因する誤検知の抑制の観点から、音響インピーダンスが水と異なり、音響減衰率が水より大きい材質によって構成されている。
【0036】
(効果)
以下、本実施形態の構成により奏される効果について、各図面を参照しつつ説明する。
【0037】
超音波センサ1をフロントグリルV3に装着する際には、まず、フロントグリルV3にリテーナ部6が固定される。次に、取付孔V4の内縁から、リテーナ部6における挟持部63の内周面に至る範囲に、防水シール7を形成するための充填材が塗布される。
【0038】
一方、センサ本体2における超音波マイクロフォン3の、軸方向における先端側の突出部31は、マイクロフォン支持部4から突出している。センサ本体2にクッション部材5が装着されると、クッション部材5は、超音波マイクロフォン3における突出部31を密着状態で被覆する。
【0039】
その後、超音波マイクロフォン3およびクッション部材5側から、センサ本体2をリテーナ部6に挿入する。超音波マイクロフォン3における突出部31が、クッション部材5により被覆されつつ略円筒状の挟持部63内に挿通された状態で、係合片43が係合孔62と係合する。また、フランジ係止部64と、クッション部材5におけるフランジ部52とが、防水シール7を挟んで、軸方向に対向する。これにより、センサ本体2は、リテーナ部6に保持される。
【0040】
このように、クッション部材5が装着されたセンサ本体2を、リテーナ部6に対して装着することで、車載状態が実現される。すなわち、フロントグリルV3に形成された貫通孔である取付孔V4にクッション部材5における露出部53を挿入し、且つ、リテーナ部6をフロントグリルV3に固定することで、超音波センサ1がフロントグリルV3に装着される。
【0041】
リテーナ部6における挟持部63は、クッション部材5の軸方向における先端側の露出部53を露出させつつ、基端側の被挟持部54を超音波マイクロフォン3における突出部31の外周面との間で挟持する。具体的には、フランジ係止部64は、筒状部51における被挟持部54に対応する部分と密着する。また、フランジ係止部64は、防水シール7を挟んで、クッション部材5におけるフランジ部52と軸方向に対向することで、クッション部材5における被挟持部54を係止する。すなわち、フランジ係止部64と、クッション部材5におけるフランジ部52との間に、防水シール7が挟持される。
【0042】
フロントグリルV3に対する超音波センサ1の装着部分にて、降雨あるいは洗車等の際に外部から浸入した水が保持されるような隙間が生じることがあり得る。かかる隙間は、典型的には、フロントグリルV3における取付孔V4の周辺にて、フロントグリルV3および/またはリテーナ部6とクッション部材5との間に生じる。かかる隙間に外部から浸入した水が保持されると、保持された水中の振動伝播により、不要な反射波が増大し、これにより誤検知等の不具合が生じ得る。
【0043】
この点、バンパーV2に超音波センサ1を装着する場合、特許文献1に記載の通り、バンパーV2の内面すなわち裏面側にセンサ固定用のリブを設けるとともに、かかるリブに水抜き孔を設けることで、上記の不具合の発生を良好に抑制することが可能である。しかしながら、フロントグリルV3に超音波センサ1を装着する場合、フロントグリルV3に上記のようなリブおよび水抜き孔を設けることは、意匠上あるいは構造上、困難である。
【0044】
そこで、本実施形態においては、防水シール7は、車載状態にてフロントグリルV3とリテーナ部6とクッション部材5との隙間を閉塞するように、クッション部材5の上に密着状態で設けられる。かかる構成においては、車載状態における、フロントグリルV3における取付孔V4の周辺の隙間が、防水シール7によって良好に閉塞される。このため、外部から浸入した水が隙間に保持されることが、良好に抑制され得る。したがって、かかる構成によれば、車載状態での降雨等による浸水に伴う性能悪化の発生を、良好に抑制することが可能となる。
【0045】
本実施形態においては、防水シール7は、取付孔V4と、クッション部材5における露出部53との隙間を閉塞するように設けられている。また、防水シール7は、クッション部材5における被挟持部54と、リテーナ部6における挟持部63との隙間を閉塞するように設けられている。さらに、防水シール7は、フロントグリルV3の内面と、フランジ係止部64の軸方向における先端面との隙間を閉塞するように設けられている。したがって、かかる構成によれば、車載状態における、フロントグリルV3における取付孔V4の周辺の隙間が、防水シール7によって良好に閉塞される。このため、外部から浸入した水が隙間に保持されることが、よりいっそう良好に抑制され得る。
【0046】
本実施形態においては、防水シール7は、シリコーンゴム等の合成樹脂系弾性材料によって形成された充填材である。すなわち、本実施形態においては、車載状態における、フロントグリルV3とクッション部材5における露出部53との間の水を保持可能な隙間を、充填剤によって充填することで、超音波センサ1の装着部分における浸水が良好に抑制され得る。また、防水シール7は、クッション部材5とは異なる音響特性、具体的には、音響減衰率が高い材質によって構成されている。すなわち、防水シール7は、浸水時の水中の振動伝播に起因する誤検知の抑制の観点から、音響インピーダンスが水と異なり、音響減衰率が水より大きい材質によって構成されている。したがって、かかる構成によれば、超音波センサ1における、車載状態での降雨等による浸水に伴う性能悪化の発生が、簡易な装置構成あるいは装着工程によって、良好に抑制され得る。
【0047】
本実施形態においては、クッション部材5は、弾性支持部材41とは別体に形成されている。これにより、超音波マイクロフォン3における突出部31とクッション部材5との良好な密着性が得られる。
【0048】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0049】
本発明は、超音波センサ1をフロントグリルV3に装着する態様に限定されない。すなわち、上記実施形態の構成は、超音波センサ1をバンパーV2に装着する態様に対しても、好適に適用され得る。また、上記実施形態の構成は、超音波センサ1を車体パネルに装着する態様に対しても、好適に適用され得る。超音波センサ1をバンパーV2あるいは車体パネルに装着する場合、超音波センサ1の装着対象に応じて、リテーナ部6の構成が適宜変更され得る。
【0050】
超音波センサ1は、超音波を送受信可能な構成に限定されない。すなわち、例えば、超音波センサ1は、超音波の発信のみが可能な構成を有していてもよい。あるいは、超音波センサ1は、他の超音波センサ1から発信された超音波である探査波の、車両Vの周囲に存在する物体による反射波を受信する機能のみを有するものであってもよい。
【0051】
センサ本体2、クッション部材5、およびリテーナ部6の構成も、上記実施形態に記載の具体例に限定されない。すなわち、センサ本体2、クッション部材5、およびリテーナ部6の構成の細部に対しては、本発明によって奏される効果を減殺しない範囲内において、適宜変更が可能である。
【0052】
防水シール7が設けられる位置は、車載状態あるいは仮組状態における、フロントグリルV3およびリテーナ部6とクッション部材5との接合部での隙間の発生具合によって、適宜設定される。但し、車載状態にて取付孔V4の周囲に形成される、水を保持可能な隙間は、取付孔V4とクッション部材5における露出部53とが対向する部分に発生しやすい。特に、フランジ係止部64の軸方向における先端部と、フロントグリルV3の裏面と、クッション部材5における露出部53の外周面とが対向する部分に、水を保持可能な隙間が発生しやすい。
【0053】
したがって、防水シール7は、少なくとも、取付孔V4とクッション部材5における露出部53とが対向する部分に設けられる。具体的には、例えば、防水シール7は、クッション部材5における露出部53と、取付孔V4の内周面とが対向する部分に設けられ得る。また、例えば、防水シール7は、クッション部材5における露出部53と、取付孔V4の軸方向における基端側の開口端とが対向する部分に設けられ得る。すなわち、防水シール7は、フランジ係止部64の軸方向における先端部と、フロントグリルV3の裏面と、クッション部材5における露出部53の外周面とが対向する部分に設けられ得る。これにより、車載状態での降雨等による浸水に伴う性能悪化の発生を良好に抑制するための、最低限の構成が実現され得る。
【0054】
超音波センサ1をフロントグリルV3に装着する際の工程も、上記の具体例に限定されない。すなわち、例えば、仮組状態のセンサ本体2、クッション部材5およびリテーナ部6の組立体に対して、防水シール7を形成するための充填材を塗布あるいは充填してもよい。あるいは、例えば、仮組状態を形成するに先立って、リテーナ部6における挟持部63の内周面に、防水シール7を形成するための充填材を塗布した後に、仮組状態を形成してもよい。その後、上記の組立体を、フロントグリルV3に装着してもよい。
【0055】
防水シール7は、充填材に限定されない。すなわち、例えば、図5および図6を参照すると、防水シール7は、ゴム製のリング状部材であってもよい。防水シール7をゴム製のリング状部材とすることにより、超音波センサ1における、車載状態での降雨等による浸水に伴う性能悪化の発生が、簡易な装置構成あるいは装着工程によって、良好に抑制され得る。
【0056】
各部を構成する材質も、上記実施形態に示された具体例に限定されない。すなわち、例えば、防水シール7の音響減衰率および音響インピーダンスは、材質、すなわち、材料の種類、硬さ、密度、等によって調整可能である。このため、防水シール7を構成する材質は、浸水時の水中の振動伝播に起因する誤検知の抑制の観点から、音響インピーダンスが水と異なり、音響減衰率が水より大きくなる範囲で、適宜調整され得る。
【0057】
上記実施形態においては、防水シール7は、クッション部材5とは異なる音響特性の材質により構成されていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、クッション部材5も、防水シール7と同様に、音響インピーダンスが水と異なり、音響減衰率が水より大きい材質によって構成されていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、非含水性および非透水性を確保する観点から、クッション部材5および防水シール7は、非発泡性材料によって構成されていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、非含水性および非透水性を有する単泡性の発泡材料であれば、クッション部材5および/または防水シール7を構成する材料として、良好に選択され得る。
【0059】
上記の説明において、互いに継ぎ目無く一体に形成されていた複数の構成要素は、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されてもよい。同様に、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されていた複数の構成要素は、互いに継ぎ目無く一体に形成されてもよい。
【0060】
上記の説明において、互いに同一の材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに異なる材料によって形成されてもよい。同様に、互いに異なる材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに同一の材料によって形成されてもよい。
【0061】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0062】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。更に、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0063】
1 超音波センサ
2 センサ本体
3 超音波マイクロフォン
31 突出部
32 被支持部
4 マイクロフォン支持部
5 クッション部材
53 露出部
54 被挟持部
6 リテーナ部
7 防水シール
図1
図2
図3
図4
図5
図6