(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、自動倉庫システムでは、大きな地震が発生した場合に商品が落下等により破損する被害が発生していた。特に地震が多い国では、被害を少なくするため、自動倉庫本体に耐震構造を施したり、地震速報データを取り込んで自動倉庫システムを停止させる制御を施したりしている。
【0005】
しかし、耐震構造を施したり、地震速報データを取り込んだりするためにはハード的対応が必要であり、地震対策コストが大きかった。また、地震対策を施しても発生状況や商品の入庫位置によっては地震の影響を抑えることができない問題点があった。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、地震による商品の高所からの落下破損を未然に抑制することのできる自動倉庫用計算機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、
倉庫に保管される商品の商品荷姿を検出するセンサと、
高さ方向に少なくとも下部エリアと上部エリアとに区分され、前記商品を保管可能なラックと、
入庫信号に応じて前記商品を前記ラックの指定位置に運ぶクレーンと、
を有する自動倉庫の自動倉庫用計算機であって、
前記商品荷姿から力学的な安定性に関する評価値を算出し、該評価値が前記商品の安定性を定めた安定条件を満たさない場合に、前記下部エリアを選択する保管エリア選択部と、
前記下部エリア内の空きスペースを指定する前記入庫信号を出力する入庫位置指示部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
1つの実施形態では、前記評価値は、前記商品の重心および底面の大きさであり、前記安定条件は、前記商品を規定角度傾けた場合に、前記重心から下方に向かう重心線が前記底面と交わること、を特徴とする。
【0009】
他の実施形態では、前記評価値は、前記商品の高さおよび横幅であり、前記安定条件は、前記高さに対する前記横幅が規定割合以上であること、を特徴とする。
【0010】
また別の実施形態では、前記評価値は、前記商品荷姿を撮像した画像を高さ方向に等分割した場合において、上部画像中に前記商品が占める上部商品面積と、下部画像中に前記商品が占める下部商品面積とであり、前記安定条件は、前記上部商品面積に対する前記下部商品面積が規定割合以上であること、を特徴とする。
【0011】
好ましくは、自動倉庫用計算機は、
前記商品に応じたコードを入力可能なコード入力部と、
商品コードと前記商品を保管すべきエリアとの対応関係が登録された商品マスタと、を備え、
前記保管エリア選択部は、
前記コードが前記商品マスタに含まれる商品コードである場合に、前記商品マスタから前記コードに対応する保管エリアを取得する登録商品保管エリア選択部と、
前記コードが前記商品マスタに含まれる商品コードでない場合であって前記評価値が前記安定条件を満たさない場合に、前記下部エリアを選択する未登録商品保管エリア選択部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る自動倉庫用計算機によれば、地震による商品の高所からの落下破損を未然に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る自動倉庫システムの構成を説明するための図である。自動倉庫システム1は、自動倉庫10と自動倉庫用計算機20を備える。
【0016】
(自動倉庫)
自動倉庫10は、複数の入出庫コンベア12、1台以上のセンサ13、1つ以上のラック14、複数のクレーン15、入庫処理部16を備える。
【0017】
入出庫コンベア12は、商品11をクレーン15による昇降位置まで搬送する。
【0018】
入出庫コンベア12の近傍には、倉庫に保管される商品11の商品荷姿を検出するセンサ13が配置されている。具体的には、商品11の立体形状を検出するため複数箇所にイメージセンサ(カメラ)、光学センサ、超音波センサ等が配置される。商品荷姿の情報は自動倉庫用計算機20へ送信される。
【0019】
ラック14は、保管エリアが高さ方向に少なくとも下部エリアと上部エリアとに区分され、商品11を保管可能な格納棚である。
【0020】
クレーン15は、商品11をラック14に入庫および商品11をラック14から出庫する装置である。入庫信号に応じて商品11をラック14の指定位置に運び入れ、出庫信号に応じて商品11をラック14の指定位置から運び出す。
【0021】
入庫処理部16は、自動倉庫用計算機20から受信した制御信号(入庫信号、出庫信号)に応じてクレーン15を制御する。制御結果は自動倉庫用計算機20へ送信される。
【0022】
(自動倉庫用計算機)
自動倉庫用計算機20は、コード入力部21、入庫コンベア在荷処理部22、自動倉庫在庫23、保管エリア選択部24、商品マスタ25、入庫位置指示部26、トラッキング27を備える。
【0023】
コード入力部21は、商品11に応じたコードを入力可能である。オペレータは、入出庫コンベア12に置かれた商品に商品コードがある場合は、その商品コードを入力する。一方、オペレータは、入出庫コンベア12に置かれた商品に商品コードがない場合は、伝票コード等を入力する。入力されたコードは入庫コンベア在荷処理部22および保管エリア選択部24へ送信される。
【0024】
入庫コンベア在荷処理部22は、コードを受信すると、自動倉庫在庫23からラック14の在荷情報(空き情報)を取得する。また、入庫コンベア在荷処理部22は、入庫処理部16の制御結果を受信して、自動倉庫在庫23に在荷情報を登録する。自動倉庫在庫23は、ラック14内の各位置の在荷情報を記憶するテーブルを有している。
【0025】
保管エリア選択部24は、登録商品保管エリア選択部と、未登録商品保管エリア選択部とを有する。
【0026】
登録商品保管エリア選択部は、コード入力部21に入力されたコードが商品マスタ25に含まれる商品コードである場合に、商品マスタ25からコードに対応する保管エリアを取得する。商品マスタ25には、商品コードと商品を保管すべきエリアとの対応関係が登録されている。具体的には、力学的な安定性の低い商品については下部エリアが、安定性の高い商品については上部エリアが予め指定されている。すなわち、入力されたコードに一致する商品コードがある場合には、商品マスタ25に登録された保管エリアに従って商品を入庫することで地震による商品の高所からの落下破損を未然に抑制することができる。なお、商品マスタ25には商品コードに対応するその他の情報(荷高さ、重量など)が含まれていても良い。
【0027】
ところで、商品マスタ25に登録されていない商品が入庫される場合もある。このような商品であっても適切な保管エリアを選択する必要がある。そのため、本発明では未登録商品保管エリア選択部を備える。
【0028】
未登録商品保管エリア選択部は、コード入力部21に入力されたコードが商品マスタ25に含まれる商品コードでない場合であって、商品11の力学的な安定性に関する評価値が商品の安定性を定めた安定条件を満たさない場合に、下部エリアを選択する。加えて未登録商品保管エリア選択部は、コードが商品マスタ25に含まれる商品コードでない場合であって評価値が安定条件を満たす場合に、上部エリアを選択する。この評価値は、商品荷姿から算出される。
【0029】
図2を参照して、本発明の実施の形態1に係る評価値と、安定条件について説明する。 実施の形態1では、商品荷姿から算出される商品11の力学的な安定性に関する評価値は、商品11の重心および底面の大きさである。重心は、商品の密度が均一であるとして計算してよい。一般に物体は、底面の広がり(底面積)が大きいほど安定しており、重心が低いほど安定している。
図2に示す商品11を傾けた角度が、商品11の重心から下方に向かう重心線が底面と交わる範囲であれば、商品11は元に戻る。一方、角度が前述の範囲を超えれば商品11は倒れてしまう。そこで、実施の形態1では、安定条件を、商品11を規定角度θ傾けた場合に、重心から下方に向かう重心線が底面と交わることとする。
【0030】
これによれば、商品マスタ25に無いコードが入力された場合には、センサ13で検出された商品荷姿に基づく商品11の力学的な安定性に関する評価値から安定性が判断される。そして、安定性が低い商品11は下部エリアに、そうでない商品11は上部エリアに入庫することで地震による商品の高所からの落下破損を未然に抑制することができる。
【0031】
入庫位置指示部26は、保管エリア選択部24に選択された保管エリア(上部エリア/下部エリア)内の空きスペースを指定する入庫信号を出力する。具体的には、入庫位置指示部26は、自動倉庫在庫23から取得されたラック14の在荷情報(空き情報)、および、トラッキング27から取得されたクレーン15の稼動情報や故障情報に基づいて、選択された保管エリア内の空きスペースを指定する。トラッキング27には、自動倉庫10から受信した各クレーン15の稼動情報や故障情報が記憶されており、使用中や故障中のクレーンは制御対象から外され、使用可能なクレーンを制御する入庫信号が出力される。
【0032】
図3、
図4を参照して自動倉庫10への入庫パターンの一例について説明する。この例では、保管エリアはラック14の高さ方向に3つに区分されている。低荷エリアは、不安定な商品を保管するエリアであり上述した下部エリアに相当する。低荷エリアの上方の一般エリアおよび高荷エリアは、上述した上部エリアに相当する。商品マスタ25には、商品コード毎に低荷エリア、一般エリア、高荷エリアのいずれかが保管エリアとして登録されている。各保管エリアにおいて入庫位置指示部26によって決定される入庫場所は優先順位が定められている。具体的には、選択された保管エリア内で地震の影響を小さくするため、入出庫クレーンに近い方から入庫し、また、低い段から優先して入庫するように入庫パターンA〜Cが定められている。
【0033】
(フローチャート)
図5は、上述した動作を実現するために、自動倉庫用計算機20が実行する処理ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、商品11が入出庫コンベア12に置かれる度に実行される。
【0034】
図5に示すルーチンでは、まずステップS100において、オペレータによりコード入力部21に商品11に対応する商品コードまたは伝票コード等が入力される。伝票コード等は商品11に対応する商品コードが無い場合に、商品コードの代わりに入力される。
【0035】
コードが入力されると、ステップS101において、入庫コンベア在荷処理部22は、自動倉庫在庫23から自動倉庫の在荷情報(空き情報)を取得する。在荷情報は保管エリア選択部24へ送信される。
【0036】
ステップS102において、保管エリア選択部24は、コードが商品マスタ25に含まれているか否かを検索する。コードが商品マスタ25内の商品コードと一致する場合は、ステップS103の処理に進む。
【0037】
ステップS103において、登録商品保管エリア選択部(保管エリア選択部24)は、商品マスタ25からコードに対応する保管エリアを取得する。保管エリアは入庫位置指示部26に通知される。その後、後述するステップS109の処理へ進む。
【0038】
一方、ステップS102において、コードが商品マスタ25内の商品コードと一致しない場合は、ステップS104の処理へ進む。
【0039】
ステップS104において、未登録商品保管エリア選択部(保管エリア選択部24)は、センサ13により検出された商品11の商品荷姿の情報を取得する。
【0040】
ステップS105において、未登録商品保管エリア選択部は、商品荷姿から力学的な安定性に関する評価値を計算する。実施の形態1では、評価値は商品11の重心および底面の大きさである。
【0041】
ステップS106において、未登録商品保管エリア選択部は、評価値が安定条件を満たすか否かを判定する。実施の形態1では、安定条件は、商品11を規定角度θ傾けた場合に、重心から下方に向かう重心線が底面と交わることである。安定条件を満たす場合は、ステップS107の処理へ進み上部エリア(
図4の高荷エリアまたは一般エリア)が選択される。一方、安定条件を満たさない場合は、ステップS108の処理へ進み下部エリアが選択される。
【0042】
上述したステップS103、S107、S108のいずれかの処理後、ステップS109において、入庫位置指示部26は、自動倉庫在庫23およびトラッキング27の情報に基づいて、選択された保管エリア内から入庫可能なラック14の空きスペースを指定し、入庫信号を出力する。
【0043】
(効果)
以上説明したように、
図5に示すルーチンによれば、商品11が商品マスタ25に登録されている場合は、商品マスタ25に登録された安定性を考慮した保管エリアに従って安定性の低い商品11を下部エリアに、安定性の高い商品11を上部エリアに入庫できる。加えて、本ルーチンによれば、商品11が商品マスタ25に登録されていない場合であっても、商品荷姿から商品11の力学的な安定性を評価し、安定性の低い商品11を下部エリアに、安定性の高い商品11を上部エリアに入庫できる。そのため、地震による商品の高所からの落下破損を未然に抑制することができ、地震発生時の影響を小さくできる。
【0044】
(変形例)
ところで、上述した実施の形態1の自動倉庫システムにおいては、選択された保管エリアに必ず商品11を入庫することを前提としているが、選択された保管エリアが満杯の場合もありうる。そのため、一つ上または一つ下のエリアから空きスペースを探すよう処理を拡張してもよい。ただし、下部エリア(低荷エリア)に入庫するよう決められた商品については他のエリアに振り返ることができないことを制約とすべきである。なお、この点は以下の実施の形態でも同様である。
【0045】
また、上述した実施の形態1の自動倉庫システムでは、ラック14を高さ方向に3つに区分(
図3、
図4)した例について説明したが、これに限定されるものではない。ラック14は高さ方向に2つ以上のエリアに区分されたものであればよい。
【0046】
(ハードウェア構成例)
図6は、本システムの自動倉庫用計算機20が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。
図1の自動倉庫用計算機20の各部は機能の一部を示し、各機能は処理回路により実現される。一態様として、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ91と少なくとも1つのメモリ92とを備える。他の態様として、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア93を備える。
【0047】
処理回路がプロセッサ91とメモリ92とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0048】
処理回路が専用のハードウェア93を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路で実現される。
【0049】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、評価値は商品の重心および高さ、安定条件は商品を規定角度傾けた場合に重心から下方に向かう重心線が底面と交わることとしている。ところで、保管される商品が直方体のような単純な形状に梱包されて保管される運用の場合もある。このような場合には、処理を単純化することもできる。そこで、実施の形態2では、保管商品が単純形状であることを前提として処理を単純化した。
【0050】
図7は、本発明の実施の形態2に係る評価値と安定条件について説明するための図である。実施の形態2では、商品荷姿から算出される商品11の力学的な安定性に関する評価値は、商品11の高さおよび横幅である。高さに対して横幅が大きいほど力学的な安定性は高いと考えられる。そこで、安定条件は、商品11の高さに対する横幅が規定割合以上であることとする。
【0051】
実施の形態2の処理ルーチンは、ステップS105における評価値は上述した商品11の高さおよび横幅である点、ステップS106における安定条件は商品11の高さに対する横幅が規定割合以上である点を除き上述した
図5と同様である。そのため、共通する処理については説明を省略する。
【0052】
以上説明したように、実施の形態2に係るシステムによれば、保管商品が単純形状である場合に、実施の形態1よりも単純な処理で地震による商品の高所からの落下破損を未然に抑制することができ、地震発生時の影響を小さくできる。
【0053】
実施の形態3.
実施の形態3では、保管商品が単純形状であることを前提として、上述した実施の形態2とは別の評価値および安定条件を用いることとする。
【0054】
図8は、本発明の実施の形態3に係る評価値と安定条件について説明するための図である。実施の形態3では、商品荷姿から算出される商品11の力学的な安定性に関する評価値は、商品荷姿を撮像した画像を高さ方向に等分割した場合において、上部画像中に商品11が占める上部商品面積と、下部画像中に商品11が占める下部商品面積とである。上部商品面積に比して下部商品面積が大きいほど力学的な安定性は高いと考えられる。そこで、安定条件は、上部商品面積に対する下部商品面積が規定割合以上であることとする。
【0055】
実施の形態3の処理ルーチンは、ステップS105における評価値は上述した上部画像中に商品11が占める上部商品面積と、下部画像中に商品11が占める下部商品面積とである点、ステップS106における安定条件は上部商品面積に対する下部商品面積が規定割合以上である点を除き上述した
図5と同様である。そのため、共通する処理については説明を省略する。
【0056】
以上説明したように、実施の形態3に係るシステムによれば、保管商品が単純形状である場合に、実施の形態1よりも単純な処理で地震による商品の高所からの落下破損を未然に抑制することができ、地震発生時の影響を小さくできる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。