特許第6870608号(P6870608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870608
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】印刷配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20210426BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H05K1/11 N
   H05K1/11 H
   H05K3/40 K
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-501927(P2017-501927)
(86)(22)【出願日】2016年2月19日
(86)【国際出願番号】JP2016000898
(87)【国際公開番号】WO2016136222
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-32759(P2015-32759)
(32)【優先日】2015年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】櫃岡 祥之
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−017828(JP,A)
【文献】 特開2002−064271(JP,A)
【文献】 特開平05−152744(JP,A)
【文献】 特開昭47−021661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、前記絶縁層の一方の面側に形成された第一の導体層と、前記絶縁層の他方の面側に形成された第二の導体層とを備えた印刷配線板であって、
前記第一の導体層と前記第二の導体層とは、前記絶縁層を前記一方の面側から前記他方の面側へ向かって貫通する貫通孔に充填された導体を通して電気的に導通しており、
前記貫通孔は、前記絶縁層の前記一方の面側から前記他方の面側へ向かって開口径が漸減する漸減形状部と、前記漸減形状部において開口径が最少である最少開口径部で連通する円筒形状部とを備え、
前記最少開口径部の開口径は、前記円筒形状部の開口径よりも大きく、
前記円筒形状部は、前記他方の面を開口するように延びており、
前記円筒形状部の開口径は、50μm以上60μm以下の範囲内であり、
前記円筒形状部の、前記絶縁層の厚さ方向の長さは、50μm以上60μm以下の範囲内であり、
前記絶縁層の前記貫通孔が形成された部分の厚さは、60μm以上200μm以下の範囲内であり、
前記絶縁層の前記漸減形状部が形成された部分の厚さは、前記貫通孔が形成された部分の厚さより30μm以上小さい値であり、
前記円筒形状部の前記長さ/前記開口径比(アスペクト比)は、1以下であることを特徴とする印刷配線板。
【請求項2】
前記漸減形状部の最大開口径は、60μm以上120μm以下の範囲内であり、
前記最少開口径部は、前記漸減形状部において開口径が最少であり、且つ、前記漸減形状部の底面であり、
前記円筒形状部は、前記漸減形状部の底面の一部を残すように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷配線板。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の印刷配線板の製造方法であって、
前記貫通孔をレーザー加工によって形成する工程と、
その後、前記貫通孔をめっきで充填して、前記第一の導体層と前記第二の導体層を電気的に導通させる工程と、を有し、
前記貫通孔を形成する工程では、前記円筒形状部を、前記他方の面を開口するように形成し、
前記最少開口径部の開口径は、前記円筒形状部の前記他方の面側の開口径よりも大きく、
前記円筒形状部の開口径は、50μm以上60μm以下の範囲内であり、
前記円筒形状部の、前記絶縁層の厚さ方向の長さは、50μm以上60μm以下の範囲内であり、
前記絶縁層の前記貫通孔が形成された部分の厚さは、60μm以上200μm以下の範囲内であり、
前記絶縁層の前記漸減形状部が形成された部分の厚さは、前記貫通孔が形成された部分の厚さより30μm以上小さい値であり、
前記円筒形状部の前記長さ/前記開口径比(アスペクト比)は、1以下であることを特徴とする印刷配線板の製造方法。
【請求項4】
前記貫通孔を形成する工程では、前記絶縁層の前記一方の面側から前記絶縁層に第一のレーザーを照射して、前記漸減形状部を形成し、前記絶縁層の前記一方の面側から前記漸減形状部の底面に第二のレーザーを照射して、前記円筒形状部を形成することを特徴とする請求項に記載の印刷配線板の製造方法。
【請求項5】
前記貫通孔を形成する工程では、前記絶縁層に前記第一のレーザーを照射する前に、前記絶縁層の前記一方の面であって前記第一のレーザーを照射する領域以外の領域に金属箔を形成することを特徴とする請求項に記載の印刷配線板の製造方法。
【請求項6】
前記貫通孔を形成する工程では、前記絶縁層の前記一方の面側から前記絶縁層に第一のレーザーを照射して、前記漸減形状部を形成し、前記絶縁層の前記一方の面側から前記漸減形状部の底面に、その一部を残すように第二のレーザーを照射して、前記円筒形状部を形成し、
前記第一のレーザーを照射する領域の最大径は、60μm以上120μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の印刷配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷配線板には、例えば、絶縁層をその厚さ方向に貫通する貫通孔と、その貫通孔を充填する導体とを備えたものがある。
上記構成をした印刷配線板およびその製造方法に関する技術としては、例えば、特許文献1又は特許文献2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4248353号公報
【特許文献2】特許第4963495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に係る印刷配線板及びその製造方法では、貫通孔内への導体の充填効率を高め、且つ、接続信頼性を確保することが困難となる場合があるといった課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、特別な装置を用いることなく、貫通孔内へのめっき液の循環を容易にし、貫通孔内への導体の充填効率を高めることができ、且つ、接続信頼性を確保することができる印刷配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る印刷配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の一方の面側に形成された第一の導体層と、前記絶縁層の他方の面側に形成された第二の導体層とを備えた印刷配線板であって、前記第一の導体層と前記第二の導体層とは、前記絶縁層を前記一方の面側から前記他方の面側へ向かって貫通する貫通孔に充填された導体を通して電気的に導通しており、前記貫通孔は、前記絶縁層の前記一方の面側から前記他方の面側へ向かって開口径が漸減する漸減形状部と、前記漸減形状部において開口径が最少である最少開口径部で連通する円筒形状部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る印刷配線板であれば、貫通孔内への導体の充填効率を高めることができ、且つ、接続信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る印刷配線板の製造方法を示す部分説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る印刷配線板の製造方法を示す部分説明図である。
図3】貫通孔内におけるめっき液の循環を示す説明図である。
図4】従来技術に係る印刷配線板の製造方法の一例を示す部分説明図である。
図5】従来技術に係る印刷配線板の製造方法の別の一例を示す部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態について、添付図面を用いて説明する。なお、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で示す場合がある。
【0010】
(印刷配線板の構造)
本発明の実施形態に係る印刷配線板は、導体層と絶縁層とが交互に積層した印刷配線板を前提とする。そして、その印刷配線板には、二以上の導体層同士を電気的に導通させるための貫通孔が設けてある。そして、その貫通孔は、貫通孔の途中までは、絶縁層の一方の面側から他方の面側に向かって開口径が漸減する形状をしており、貫通孔の途中からは、他方の面側に向かって円筒形状をしている。より詳しくは、本発明の実施形態に係る印刷配線板は、図2(a)に示すように、絶縁樹脂(絶縁層)2と、絶縁樹脂2の表面(一方の面)2a側に形成されためっき銅(第一の導体層)3aと、絶縁樹脂2の裏面(他方の面)2b側に形成されためっき銅(第二の導体層)3bとを備えた印刷配線板を前提としている。そして、めっき銅3aとめっき銅3bとは、絶縁樹脂2を表面2a側から裏面2b側へ向かって貫通する貫通孔8に充填されためっき銅(導体)3cを通して電気的に導通している。さらに、貫通孔8は、絶縁樹脂2の表面2a側から裏面2b側へ向かって開口径が漸減するすり鉢形状部(漸減形状部)8aと、すり鉢形状部8aにおいて開口径が最少である最少開口径部で連通する円筒形状部8bとを備えている。
【0011】
このような構成をした貫通孔8であれば、貫通孔8を設ける場合に、片面側(例えば、表面2a側)から開口径が漸減するすり鉢形状部8a、円筒形状部8bを順に加工できるため、位置ずれのない形状とすることができる。また、電解銅めっきを実施して、貫通孔8をめっき銅3cで充填する場合、めっきの初期に、貫通孔8の円筒形状部8bを少ないめっき量で塞ぐことができる。これにより貫通孔8は、開口径の広い表面2a側から見ると、めっき銅3の底を有する通常のビアと同じものとなる。その後のめっき銅3の充填は、従来から実績のあるビアの充填よりも、良好に実施できる。本実施形態に係る印刷配線板は、このようにして貫通孔8の埋め込みを容易にし、接続信頼性を確保できる印刷配線板及びその製造方法とすることができる。
【0012】
(印刷配線板の製造方法)
次に、本実施形態に係る印刷配線板の製造方法について、具体的に説明する。
図1(a)は、銅箔1、絶縁樹脂2、銅箔1をこの順に重ねて熱圧着処理を行い形成した積層板の断面模式図である。絶縁樹脂2の厚さdは、60μm〜200μm範囲内である。なお、後述する貫通孔8を形成する領域(以下、「貫通孔形成領域」とも表記する)に設けられた銅箔を「銅箔1a」と表記する。
【0013】
図1(b)は、貫通孔形成領域に設けられた銅箔1aを除去した積層板の断面模式図である。図1(b)に示すように、銅箔1の一部を選択的に除去、即ち貫通孔形成領域に設けられた銅箔1aを除去して、銅箔1にウィンドウ部Wを形成するには、例えば、公知技術であるサブトラクティブ工法を用いることができる。具体的には、まず、貫通孔形成領域に設けられた銅箔1aの表面を露出させるように、銅箔1上にレジストパターン(図示せず)を形成する。その後、エッチングによって、その銅箔1aを除去する。最後に、銅箔1上に形成したレジストを剥離除去する。ここで、銅箔1に形成したウィンドウ部Wの開口径D1は、60μmより大きく、120μmを超えない範囲内であることが望ましい。
【0014】
図1(c)は、図1(b)に示したウィンドウ部Wから露出した絶縁樹脂2に第一のレーザー加工を施した後の断面模式図である。銅箔1aを除去して銅箔1にウィンドウ部Wを形成した後、図1(c)に示すように、ウィンドウ部Wから露出した絶縁樹脂2にレーザーを照射して、絶縁樹脂2に深さd1のすり鉢形状をした孔、即ちすり鉢形状部8aを形成する(第一のレーザー加工)。換言すると、第一のレーザー加工として、絶縁樹脂2にレーザーを照射して、絶縁樹脂2を貫通しないようにすり鉢形状部8aを絶縁樹脂2に形成する。このすり鉢形状部8aの深さd1の値は、絶縁樹脂2の厚さdより30μm以上小さい値であることが望ましい。こうして形成したすり鉢形状部8aの最大開口径は、ウィンドウ部Wの開口径D1とほぼ同じである。
【0015】
図1(d)は、図1(c)に示したすり鉢形状部8aの底面に第二のレーザー加工を施した後の断面模式図である。絶縁樹脂2にすり鉢形状部8aを形成した後、図1(d)に示すように、絶縁樹脂2に深さd2の円筒形状をした孔、即ち円筒形状部8bをすり鉢形状部8aと連通するように形成する。換言すると、第二のレーザー加工として、すり鉢形状部8aの底面(すり鉢形状部8aにおいて開口径が最少である最少開口径部)に、表面2a側からレーザーを照射して、すり鉢形状部8aに連通し、絶縁樹脂2を貫通する円筒形状部8bを絶縁樹脂2に形成する。
こうして形成された円筒形状部8bの開口径D2は、30μm以上60μm以下の範囲内であり、深さd2は、30μm以上60μm以下の範囲内である。円筒形状部8bの開口径D2や深さd2の値がそれぞれ上記上限値を超える場合と、その後、すり鉢形状部8aと円筒形状部8bとを備える貫通孔8内をめっき銅3cで充填をする際に充填するめっき量が嵩んでしまうおそれがある。また、円筒形状部8bの開口径D2や深さd2の値がそれぞれ上記下限値に満たない場合には、貫通孔8における接続信頼性が確保できなくなるおそれがある。
【0016】
図1(e)は、図1(d)に示した貫通孔8を形成した後、銅箔1を除去した後の断面模式図である。絶縁樹脂2に、すり鉢形状部8aと円筒形状部8bとを備える貫通孔8を形成した後、図1(e)に示すように、銅箔1を除去する。その後、絶縁樹脂2の表面2a及び裏面2bの導通を確保するため、無電解銅めっきによって絶縁樹脂2の全面に薄く銅を析出させる。換言すると、貫通孔8が形成された絶縁樹脂2に無電解銅めっきを実施し、絶縁樹脂2の露出面全体に銅の薄膜(図示せず)を形成する。
【0017】
図2(a)は、貫通孔8をめっき銅3cで充填した後の積層板の断面模式図である。絶縁樹脂2の露出面全体に銅の薄膜(図示せず)を形成した後、例えば、フィルドビアめっき浴を用いて、貫通孔8が形成された絶縁樹脂2に電解銅めっきを実施すことで、図2(a)に示すように、貫通孔8をめっき銅3cで充填する。こうすることで、電解銅めっきの工程の初期に、貫通孔8に備わる円筒形状部8bをめっき銅3cで塞ぐことができる。これにより、すり鉢形状部8aは、表面2a側から見ると、めっき銅3cの底を有する通常のビアと同じものとなる。その後、従来技術を用いて、そのビアをめっき銅3cで充填する。
【0018】
なお、上述のように、貫通孔8が形成された絶縁樹脂2に無電解銅めっきを施した後に、図2(b)及び図2(c)に示すように、めっきレジストのパターン形成を行い、貫通孔8をめっき銅3cで充填すると同時にパターンめっきによって配線パターンを形成する工法、いわゆるセミアディティブ工法を選択することもできる。より詳しくは、まず、図1(e)に示す絶縁樹脂2を形成した後に、無電解銅めっきの実施によって絶縁樹脂2の露出面全体に薄く銅(図示せず)を析出させる。次に、絶縁樹脂2の表面2a及び裏面2bの両方に、ドライフィルムレジスト4を設ける。その後、このドライフィルムレジストに配線のパターンを形成し、電解銅めっきを実施することで、図2(b)に示すように、貫通孔8をドライフィルムレジスト4のパターン間をめっき銅3cで充填する。この後、図2(c)に示すように、ドライフィルムレジスト4と、薄く析出させた銅(図示せず)とを共に除去する。
あるいは、図1(e)に示す絶縁樹脂2を形成した後に、まず、無電解銅めっきの実施によって絶縁樹脂2の露出面全体に薄く銅(図示せず)を析出させ、その後、電解銅めっきの実施によってその全面を一様にめっき銅3で覆い、その後、エッチングレジストをパターン形成し、最後にエッチングを行うことにより配線パターンを形成する工法、いわゆるサブトラクティブ工法を選択することもできる。
【0019】
以上、説明した本発明の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲での改変が可能である。
【0020】
(変形例)
上記実施形態では、積層板の片面、例えば、表面2a上に形成された銅箔1にサブトラクティブ工法により孔(ウィンドウ部W)を形成し、この部分にレーザー加工を行い、貫通孔8を形成しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、先に銅箔1を全てエッチングにより取り除き、貫通孔形成領域に第一及び第二のレーザー加工をそれぞれ直接実施して、絶縁樹脂2に貫通孔8を形成してもよい。
【0021】
[実施例]
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
<実施例1>
下記に示す工程により貫通孔8を備える積層板を作成した。
両面銅張積層板MCL−E−679FG(絶縁層厚さ150μm、プライマ付き銅箔厚さ12μm 日立化成製)を準備し、その積層板の両面に備わる銅箔1を、硫酸過水系エッチング液を用いてその厚さが6μmになるまで薄化した。こうして、図1(a)に示す積層板であって、銅箔1の厚さが6μmである積層板を得た。
【0022】
次に、サブトラクティブ工法により、開口径D1が100μmの孔(ウィンドウ部W)を銅箔1上に形成した。こうして、図1(b)に示す積層板を得た。
そして、上記孔(ウィンドウ部W)から露出した絶縁樹脂2に、第一のレーザー加工として、UV−YAGレーザー(スポット径110μm)を照射して、開口径が100μmのすり鉢形状をなす孔、即ちすり鉢形状部8aを形成した。こうして、図1(c)に示す積層板を得た。なお、本実施例におけるすり鉢形状部8aの深さd1は、100μmであった。
【0023】
続いて、すり鉢形状部8aを形成した絶縁樹脂2に、第二のレーザー加工として、UV−YAGレーザー(スポット径40μm)を照射して、開口径D2が50μmの円筒形状をなす孔、即ち円筒形状部8bを形成し、すり鉢形状部8aと円筒形状部8bとを備える貫通孔8を形成した。こうして、図1(d)に示す積層板を得た。なお、本実施例における円筒形状部8bの深さd2は、50μmであり、円筒形状部8bにおけるアスペクト比(深さd2/開口径D2)は、1.0であった。
【0024】
次に、銅箔1を、硫酸過水系エッチング液を用いて全て除去した。こうして、図1(e)に示す絶縁樹脂2を得た。
次に、その絶縁樹脂2を、液温70℃の過マンガン酸カリウム60g/Lとマンガン酸カリウム15g/Lとの混合水溶液に30分浸漬させてデスミア処理を施した。その後、無電解銅めっき(1.0μm)、電解銅めっき(20μm)を順次実施した。こうして、貫通孔8をめっき銅3cで充填すると同時に、絶縁樹脂2の両面(表面2aと裏面2b)にめっき銅3aとめっき銅3bをそれぞれ設けて層間導通させた。こうして、図2(a)に示す積層板(印刷配線板)を得た。
こうして作成された、実施例1の積層板(印刷配線板)は、貫通孔8内のめっき銅3cに空隙を生じることなく、貫通孔8をめっき銅3cによって埋め込むことができた。
【0025】
<実施例2>
絶縁層厚さ60μmの両面銅張積層板を用い、すり鉢形状部8aの深さd1を30μmとし、円筒形状部8bの深さd2を30μmとし、円筒形状部8bの開口径D2を30μmとした以外は、実施例1と同様にした。こうして、実施例2の積層板(印刷配線板)を得た。
【0026】
<実施例3>
絶縁層厚さ100μmの両面銅張積層板を用い、すり鉢形状部8aの深さd1を150μmとし、円筒形状部8bの深さd2を50μmとし、円筒形状部8bの開口径D2を50μmとした以外は、実施例1と同様にした。こうして、実施例3の積層板(印刷配線板)を得た。
【0027】
<実施例4>
絶縁層厚さ200μmの両面銅張積層板を用い、すり鉢形状部8aの深さd1を150μmとし、円筒形状部8bの深さd2を40μmとし、円筒形状部8bの開口径D2を60μmとした以外は、実施例1と同様にした。こうして、実施例4の積層板(印刷配線板)を得た。
【0028】
<比較例1>
絶縁層厚150μmの両面銅張積層板を用い、すり鉢形状部8aの深さd1を60μmとし、円筒形状部8bの深さd2を90μmとし、円筒形状部8bの開口径D2を60μmとした以外は、実施例1と同様にした。こうして、比較例1の積層板(印刷配線板)を得た。
こうして作成された、比較例1の積層板(印刷配線板)は、円筒形状部8bを埋め込んだめっき銅3cに空隙が生じていた。
【0029】
<比較例2>
絶縁層厚さ170μmの両面銅張積層板を用い、両面銅張積層板の片面からUV−YAGレーザーを照射し、開口径D2が60μmのほぼ円筒形状をなす貫通孔加工を行い、それ以外の工程は実施例1と同様にした。こうして、比較例2の積層板(印刷配線板)を得た。
こうして作成された、比較例2の積層板(印刷配線板)は、貫通孔が開口部付近で閉塞し、貫通孔内部に大きな空隙が生じており、めっき銅3cの厚さを充分確保することができなかった。
【0030】
<比較例3>
絶縁層厚さ250μmの両面銅張積層板を用い、すり鉢形状部8aの深さd1を200μmとし、円筒形状部8bの深さd2を50μmとし、円筒形状部8bの開口径D2を50μmとした以外は、実施例1と同様にした。こうして、比較例3の積層板(印刷配線板)を得た。
こうして作成された、比較例3の積層板(印刷配線板)は、貫通孔8が開口部付近で閉塞し、貫通孔8内部に大きな空隙が生じており、めっき銅(導体)3cの厚さを充分確保することができなかった。
【0031】
(ボイドの有無)
上述した各実施例及び各比較例に係る積層板の貫通孔のフィリングを、ボイドの有無で判定した。下記表1に結果を示した。すり鉢形状部8aの深さd1が30〜150μm、円筒形状部8bの深さd2が30〜50μm、円筒形状部8bの開口径D2が30〜60μm、円筒形状部8bにおけるアスペクト比が1以下、絶縁樹脂2の厚さdが60〜200μmの範囲の積層板では、ボイドは確認されなかった。一方、比較例1〜3ではボイドが確認された。このように、本発明の実施例1〜4では、フィリングは全て良好な結果が得られた。
【0032】
【表1】
【0033】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る発明は、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態に係る印刷配線板は、絶縁樹脂2と、絶縁樹脂2の表面2a側に形成されためっき銅3aと、絶縁樹脂2の裏面2b側に形成されためっき銅3bとを備えている。そして、めっき銅3aとめっき銅3bとは、絶縁樹脂2を表面2a側から裏面2b側へ向かって貫通する貫通孔8に充填されためっき銅3cを通して電気的に導通している。さらに、貫通孔8は、絶縁樹脂2の表面2a側から裏面2b側へ向かって開口径が漸減するすり鉢形状部8aと、すり鉢形状部8aにおいて開口径が最少である最少開口径部(底面)で連通する円筒形状部8bとを備えている。
【0034】
このような構成によれば、配線の高密度化が求められる電子部品を実装する面に円筒形状部8bの面がくるように貫通孔8を形成する。それによって、円筒形状部8b側の配線引き出し部分のランドパターンを小径化することができる。また、少ないめっき量でも確実にめっき銅3を埋め込むことができるため、貫通孔8直上へのビア形成が可能になることから、高密度な印刷配線板の回路設計が可能になる。
また、本実施形態の貫通孔8は、片面(例えば、表面2a)側から、すり鉢形状部8a、円筒形状部8bの順に形成する。このため、従来技術に係る、印刷配線板を表面及び裏面のそれぞれの方向から加工して貫通孔を形成する場合と比較して、より高い位置精度で貫通孔8を形成することができる。また、円筒形状部8bに空隙を生じることなくめっき銅3cを埋め込むことができるため、接続信頼性を確保することができる。
【0035】
(2)また、本実施形態では、絶縁樹脂2の貫通孔8が形成された部分の厚さdを、60μm以上200μm以下の範囲内としてもよい。
このような構成によれば、貫通孔8内へのめっき銅3cの充填効率をより高めることができ、且つ、接続信頼性を確実に確保することができる。
【0036】
(3)また、本実施形態では、円筒形状部8bの開口径D2を、30μm以上60μm以下の範囲内とし、円筒形状部8bの絶縁樹脂2の厚さ方向における長さd2を、30μm以上60μm以下の範囲内とし、円筒形状部8bのアスペクト比(長さd2/開口径D2)を、1以下としてもよい。
このような構成によれば、貫通孔8内へのめっき銅3cの充填効率をより高めることができ、且つ、接続信頼性を確実に確保することができる。
【0037】
(4)本実施形態に係る印刷配線板の製造方法は、貫通孔8をレーザー加工によって形成する工程と、その後、電解銅めっきを実施することで、貫通孔8にめっき銅3cを充填して、めっき銅3aとめっき銅3bとを電気的に導通させる工程と、を有している。
本実施形態の貫通孔8は、図3(a)に示すように、貫通孔8の途中までは、絶縁樹脂2の表面2a側から裏面2b側に向かって開口径が漸減するすり鉢形状(テーパー形状)をしており、貫通孔8の途中からは円筒形状をしている。通常、印刷配線板では小径化が求められるのは片面(例えば、表面2a)だけであり、もう一方(例えば、裏面2b)は比較的大きくても良い。このすり鉢形状を設けることにより貫通孔8へのめっき液の十分な循環を確保することができ、めっき銅3cによる埋め込みが実現できる。
【0038】
また、図3(a)に示される構造であれば、円筒形状部8bの内部において、図3(b)に示されるようにすり鉢形状側の方が他方の開口側よりもめっき液の流速が遅いため、電解めっき抑制剤の効果が抑制され、図3(c)に示されるように先に閉塞させることができる。なお、図3では、めっき液の流速の度合いを矢印の大きさで示している。
【0039】
(5)また、本実施形態の貫通孔8を形成する工程では、絶縁樹脂2の表面2a側から絶縁樹脂2に第一のレーザーを照射して、すり鉢形状部8aを形成し、絶縁樹脂2の表面2a側からすり鉢形状部8aの底面に第二のレーザーを照射して、円筒形状部8bを形成してもよい。
このような構成によれば、平面視における、すり鉢形状部8aと円筒形状部8bとの重なり度合いを高めることができる。
【0040】
(6)また、本実施形態の貫通孔8を形成する工程では、絶縁樹脂2に第一のレーザーを照射する前に、絶縁樹脂2の表面2aであって第一のレーザーを照射する領域(貫通孔形成領域)以外の領域に銅箔1を形成してもよい。
このような構成によれば、すり鉢形状部8aを形成する位置の精度を高めることができる。
【0041】
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例または実施形態も網羅すると解すべきである。
【0042】
(参考例)
上述した技術的特徴を備えない積層板(印刷配線板)を、本発明の参考例として、以下、簡単に説明する。
近年の電子機器の軽薄短小化の要請により、電子部品のモジュール化・高集積化が進み、それらを実装する印刷配線板もまた小面積化・薄型化が進み、その電子回路も狭ピッチ化が求められている。このため、印刷配線板と電子部品の接続の精度や信頼性の要求も高くなってきている。
【0043】
現在製造されている印刷配線板において、層間接続を担う貫通孔は、メカニカルドリルによる円筒形状か、レーザードリルによる、加工面の開口面積が広く、加工反対面の開口面積が狭い、いわば円錐を途中で切断したような形状をしているのが通常である。
貫通孔が狭ピッチ化・小径化すると、貫通孔内への導体充填と、貫通孔内の導体の断面積の確保が困難となることがある。そこで、めっきによって導体を貫通孔に充填したり、配線板に直接スキージングして貫通孔に導電性ペーストを充填して、導体層同士を電気的に接続する方法も採用されている。例えば、貫通孔にめっきを埋め込む工法で用いられる配線板では、貫通孔の形状が円筒形状のもの(特許文献1)や、テーパー形状の孔を付き合わせたもの(特許文献2)がある。
しかしながら、上記貫通孔の形状が小径の円筒形状である場合には、例えば、貫通孔への導電性ペーストの充填が困難となることがある。また、めっきによって導体を貫通孔に埋め込む工法を用いた場合には、貫通孔内へのめっき液の循環が悪く、特殊なめっき装置が必要となり効率も悪く生産性の低下が避けられないことがある。
【0044】
また、テーパー形状の貫通孔の場合、片面の開口径が大きくなってしまうため、十分な小径化が困難となる。
また、テーパー形状の孔を付き合わせた貫通孔の場合、両面の対になるテーパー形状の孔同士の位置合わせの精度の問題により、最小孔径部分の径が小さくなる。その結果、多くの貫通孔において接続不良を生じてしまうことがある。
以下、テーパー形状の孔5aを付き合わせた貫通孔5を備えた積層板(印刷配線板)の製造方法と、円筒形状の貫通孔6を備えた積層板(印刷配線板)の製造方法とについて、詳しく説明する。
【0045】
図4は、従来技術である、テーパー形状の孔5aを付き合わせた貫通孔5を備えた積層板(印刷配線板)の製造方法を断面で示す説明図である。
図4(a)に示すように、まず、絶縁樹脂2の表面2a及び裏面2bに銅箔1をそれぞれ形成し、貫通孔形成領域の銅箔1aが除去されたウィンドウ部Wを有する積層板を形成する。貫通孔形成領域における選択的な銅箔1の除去には、公知技術であるサブトラクティブ工法であるエッチングを用いる。このとき、形成するウィンドウ部Wの位置合わせ精度から、図4(a)に示すように、ウィンドウ部Wの形成位置にずれが発生する場合がある。
【0046】
続いて、図4(b)に示すように、銅箔1のウィンドウ部Wから露出した絶縁樹脂2を、その表面2a側と裏面2b側からそれぞれレーザー加工して、貫通孔5を形成する。
この後に、図4(c)に示すように、電解めっきにより、めっき銅3cで貫通孔5を充填する。なお、貫通孔5の充填には、例えば、セミアディティブ工法や、サブトラクティブ工法を用いることができる。
【0047】
このようにして積層板(印刷配線板)を製造した場合に、絶縁樹脂2の表面2a側と裏面2b側に形成した2つのウィンドウ部Wの位置合わせ精度が良くないと、図4(b)に示したように、表面2a側と裏面2b側からの孔(ビアホール)の重なりがずれて、貫通孔5の孔径最小部分5bの形が歪むことがある。すなわち、表面2a側と裏面2b側から形成した孔(ビアホール)が重なって形成される孔径最小部分5bの径が、表裏の孔(ビアホール)の位置合わせのずれた距離だけ孔径が小さくなる。
そのため、孔径最小部分5bの孔径が小さくなることにより、めっき銅3cの断面積を確保できず、導通信頼性が低下することがある。
【0048】
図5は、円筒形状の貫通孔6のめっきによる埋め込みを採用した製造方法の説明図である。
この形状の貫通孔6では、絶縁樹脂2の厚さが60μmを上回る場合は、公知技術である電解めっきの方法を用いると、表面2a側と裏面2b側にそれぞれ設けられた開口部6a、6bが貫通孔6の内部よりも先に閉塞することがある。このため、貫通孔6の内部に大きな空隙を生じて、めっき銅3cの断面積を確保できず、導通信頼性が低下することがある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る印刷配線板及びその製造方法によると、貫通孔内への導体の充填効率を高め、且つ、接続信頼性を確保することが可能となる。このため、本発明に係る印刷配線板であれば、モジュール化・高集積化が進んだ電子部品への利用が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1: 銅箔
1a:貫通孔形成領域に設けられた銅箔
2: 絶縁樹脂
2a:絶縁樹脂の表面
2b:絶縁樹脂の裏面
3: めっき銅
3a:表面側に設けられためっき銅
3b:裏面側に設けられためっき銅
3c:貫通孔を充填するめっき銅
4: ドライフィルムレジスト
5: 貫通孔
5a:テーパー形状の孔
5b:孔径最小部分
6: 貫通孔
6a:表面側に設けられた開口部
6b:裏面側に設けられた開口部
7: めっき液の流れ方向と流速を表す矢印
8: 貫通孔
8a:すり鉢形状部
8b:円筒形状部
D1:ウィンドウ部の開口径
D2:円筒形状部分の開口径
d: 絶縁樹脂の厚さ
d1:第一のレーザー加工による加工深さ
d2:第二のレーザー加工による加工深さ
W: ウィンドウ部
図1
図2
図3
図4
図5