特許第6870620号(P6870620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870620光拡散剤、光拡散性樹脂組成物および成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870620
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】光拡散剤、光拡散性樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20210426BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20210426BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20210426BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G02B5/02 B
   G02B1/04
   C08F220/18
   C08F220/26
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-565477(P2017-565477)
(86)(22)【出願日】2017年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2017001864
(87)【国際公開番号】WO2017135066
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2019年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-20431(P2016-20431)
(32)【優先日】2016年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】河野 和起
【審査官】 酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/069332(WO,A1)
【文献】 特開平09−281339(JP,A)
【文献】 特開平11−302330(JP,A)
【文献】 特開2012−082387(JP,A)
【文献】 特開2006−307200(JP,A)
【文献】 特開2008−094987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00−5/136
G02B 1/00−1/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)と、
前記構成単位(A)との共重合が可能な多価ビニル系構成単位(B)と
を含み、前記構成単位(A)は1種単独である、共重合体からなるポリマー微粒子を含んでなる光拡散剤:
【化9】
[式(1)中、
Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S−、−SO−、−SO−およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり(ここで、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;あるいは、RおよびRは、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜10の環状アルキル基を形成していてもよい);
Yは、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、または炭素数6〜10のアリーレン基であり;
は、水素原子またはメチル基であり;
およびRは、各々独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;
mは、0〜10の整数であり;
nは、1または2の整数であり;
pは、0〜4の整数であり;
qは、0〜5の整数である]。
【請求項2】
mは0の整数である、請求項1に記載の光拡散剤。
【請求項3】
Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−SO−または−SO−である請求項1または2に記載の光拡散剤。
【請求項4】
pおよびqは共に0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光拡散剤。
【請求項5】
前記構成単位(B)は、ジビニル構成単位である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光拡散剤。
【請求項6】
前記構成単位(B)は、ビスフェノール系またはナフチル系のジビニル構成単位である請求項5に記載の光拡散剤。
【請求項7】
前記構成単位(A)は、前記共重合体に対して10〜90質量%の量で含まれ、前記構成単位(B)は、前記共重合体に対して10〜90質量%の量で含まれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光拡散剤。
【請求項8】
前記共重合体は、平均粒子径0.1〜100μmのポリマー微粒子である請求項1〜7のいずれか1項に記載の光拡散剤。
【請求項9】
前記光拡散剤に対して0〜10質量%の無機粒子を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光拡散剤。
【請求項10】
基材樹脂と、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光拡散剤とを含む光拡散性樹脂組成物。
【請求項11】
前記基材樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される請求項10に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項12】
前記光拡散剤は、前記基材樹脂100質量部に対して10〜100質量部の量で含まれる請求項10または11に記載の光拡散性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の光拡散性樹脂組成物を用いて成形された成形体。
【請求項14】
前記成形体は、板、シートまたはフィルムである請求項13に記載の成形体。
【請求項15】
下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)と、
前記構成単位(A)との共重合が可能な多価ビニル系構成単位(B)と
を含み、前記構成単位(A)は1種単独である、共重合体からなるポリマー微粒子
【化10】
[式(1)中、
Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S−、−SO−、−SO−およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり(ここで、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;あるいは、RおよびRは、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜10の環状アルキル基を形成していてもよい);
Yは、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、または炭素数6〜10のアリーレン基であり;
は、水素原子またはメチル基であり;
およびRは、各々独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;
mは、0〜10の整数であり;
nは、1または2の整数であり;
pは、0〜4の整数であり;
qは、0〜5の整数である]。
【請求項16】
mは0の整数である、請求項15に記載のポリマー微粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散剤、基材樹脂と光拡散剤とを含む光拡散性樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
光拡散性を有する樹脂成形体は、照明器具のカバー、パソコン、テレビ等の表示装置におけるバックライト、自動車メーター、看板等の光拡散性が要求される用途において幅広く使用されている。これらの用途においては、光源からの光を均一に拡散させるために、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の透明基材樹脂中に光拡散剤を分散させて得られる樹脂組成物の成形体(例えば、シート、フィルム等)が用いられている。光拡散剤としては、架橋アクリル系粒子、架橋シリコーン系粒子、架橋スチレン系粒子等の架橋構造を有する有機粒子;炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、フッ化カルシウム等の無機粒子;ガラス短繊維等の無機繊維等が従来使用されている。また、これらの光拡散剤は、塗料、インキ等に配合されることにより塗膜表面に艶消し効果を付与できることから、建材や自動車などに用いられる塗料の艶消し剤としても広く使用される。
【0003】
上記のような用途で使用される樹脂成形体の特性としては、光の透過性および拡散性が最も重要であり、光をできるだけ透過させ、且つ全体に広がった状態で拡散することが求められる。従って、光透過性と光拡散性とを両立可能な成形体を得るべく、光拡散剤の開発および改良、ならびに基材樹脂と光拡散剤との適した組合せを見出すための研究がなされている。
【0004】
一般的に、光拡散剤の添加量を増やすと、光拡散性は向上するものの、光透過性は低下する傾向にあるため、光透過性と光拡散性とを両立することは容易ではない。また、用途によっても要求される光学特性(例えば、光透過性および光拡散性の程度)が異なるため、用途に応じた光学特性を有するような種々の樹脂成形体および光拡散剤が開発されている。また、近年では、光拡散性樹脂成形体の用途拡大に伴い、光透過性、光拡散性等の光学特性に加えて、耐熱性、耐候性、難燃性、耐衝撃性等の物性も重視されるようになってきている。
【0005】
例えば、特許文献1には、酸化ジルコニウム等の無機粒子である光拡散剤と透明樹脂とを含む光拡散性シートが開示されている。しかし、ここで光拡散剤として使用されている無機粒子は、基材樹脂との屈折率差が大きいことや粒子の表面積が大きいことに起因して光拡散性シートに入射した光を反射してしまい、光透過性を低下させるという問題、および光拡散性シートの強度を低下させるという問題を有している。
【0006】
また、特許文献2には、含硫黄重合体の粒子からなる光拡散剤が開示されている。特許文献2の光拡散剤は有機粒子であるため、上記無機粒子を使用した場合の問題は生じないが、硫黄原子を含むことによる臭気の問題および耐候性が低いという問題がある。
【0007】
さらに、特許文献3には、ジビニルビフェニル化合物を構成単位として含む共重合体を光拡散剤として使用することが記載されている。特許文献3には、この光拡散剤が優れた光拡散性と光透過性を両立できることが記載されているが、ジビニルビフェニル化合物を含むことにより、基材樹脂中での分散性の低下、表面硬度の低下等の問題が生じ得る。
【0008】
このように種々の光拡散剤が開発されているが、樹脂成形体に高い光拡散性および光透過性を付与し得る光拡散剤が求められているのはもちろんのこと、樹脂成形体に光学特性以外の好ましい物性を付与し得る光拡散剤、光学特性とその他の物性との間でバランスのとれた樹脂成形体を提供し得る光拡散剤等も求められている。すなわち、光拡散性樹脂成形体の用途に応じて望ましい特性を付与し得る光拡散剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−59107号公報
【特許文献2】特開平9−281339号公報
【特許文献3】特開平11−302330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、光拡散性、光透過性、表面硬度等に優れた樹脂成形体を得られる光拡散剤、それを含む樹脂組成物および成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の骨格を有する(メタ)アクリレート単量体と多価ビニル系単量体とを共重合させて得られるポリマー粒子を光拡散剤として用いることにより、光拡散性、光透過性、表面硬度等に優れた樹脂成形体を得られることを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、例えば以下のとおりである。
[1] 下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)と、
前記構成単位(A)との共重合が可能な多価ビニル系構成単位(B)と
を含む共重合体を含んでなる光拡散剤:
【化1】
[式(1)中、
Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S−、−SO−、−SO−およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり(ここで、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;あるいは、RおよびRは、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜10の環状アルキル基を形成していてもよい);
Yは、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、または炭素数6〜10のアリーレン基であり;
は、水素原子またはメチル基であり;
およびRは、各々独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;
mは、0〜10の整数であり;
nは、1または2の整数であり;
pは、0〜4の整数であり;
qは、0〜5の整数である]。
[2] mは0〜3の整数である、[1]に記載の光拡散剤。
[3] Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−SO−または−SO−である[1]または[2]に記載の光拡散剤。
[4] pおよびqは共に0である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光拡散剤。
[5] 前記構成単位(B)は、ジビニル構成単位である[1]〜[4]のいずれかに記載の光拡散剤。
[6] 前記構成単位(B)は、ビスフェノール系またはナフチル系のジビニル構成単位である[5]に記載の光拡散剤。
[6−1] 前記構成単位(B)は、下記一般式(2)で表される化合物に由来する構成単位または下記一般式(3)で表される化合物に由来する構成単位を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の光拡散剤。
【化2】
[式(2)および(3)中、
Xは、単結合、−[C(R)(R)]−、−C(=O)−、−O−、−SO−、または−SO−から選択される二価の基であり(ここで、RおよびRは、各々独立に、水素原子、メチル基、フェニル基およびフェニルフェニル基から各々独立に選択され、または、RおよびRは、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜13の環状アルキル基を形成しており;nは、1〜10の整数である);
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、およびハロゲン原子から選択され;
10は、水素原子またはメチル基であり;
YおよびZは、それぞれ独立に、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、または炭素数6〜10のアリーレン基であり;
pおよびqは、それぞれ独立に、0〜4の整数である]。
[7] 前記構成単位(A)は、前記共重合体に対して10〜90質量%の量で含まれ、前記構成単位(B)は、前記共重合体に対して10〜90質量%の量で含まれる、[1]〜[6]のいずれかに記載の光拡散剤。
[8] 前記共重合体は、平均粒子径0.1〜100μmのポリマー微粒子である[1]〜[7]のいずれかに記載の光拡散剤。
[9] 前記光拡散剤に対して0〜10質量%の無機粒子を含有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の光拡散剤。
[10] 基材樹脂と、[1]〜[9]のいずれかに記載の光拡散剤とを含む光拡散性樹脂組成物。
[11] 前記基材樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される[10]に記載の光拡散性樹脂組成物。
[12] 前記光拡散剤は、前記基材樹脂100質量部に対して10〜100質量部の量で含まれる[10]または[11]に記載の光拡散性樹脂組成物。
[12−1] 前記基材樹脂と光拡散剤の合計100質量部に対して、0〜10質量%の無機粒子を含有する、[10]〜[12]のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物。
[13] [10]〜[12]のいずれかに記載の光拡散性樹脂組成物を用いて成形された成形体。
[14] 前記成形体は、板、シートまたはフィルムである[13]に記載の成形体。
[15] 下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)と、
前記構成単位(A)との共重合が可能な多価ビニル系構成単位(B)と
を含む共重合体:
【化3】
[式(1)中、
Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S−、−SO−、−SO−およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり(ここで、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;あるいは、RおよびRは、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜10の環状アルキル基を形成していてもよい);
Yは、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、または炭素数6〜10のアリーレン基であり;
は、水素原子またはメチル基であり;
およびRは、各々独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;
mは、0〜10の整数であり;
nは、1または2の整数であり;
pは、0〜4の整数であり;
qは、0〜5の整数である]。
[16] mは0〜3の整数である、[15]に記載の共重合体。
[17] Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−SO−または−SO−である[15]または[16]に記載の共重合体。
[18] pおよびqは共に0である、[15]〜[17]のいずれかに記載の共重合体。
[19] 前記構成単位(B)は、ジビニル構成単位である[15]〜[18]に記載の共重合体。
[20] 前記構成単位(B)は、ビスフェノール系またはナフチル系のジビニル構成単位である[19]に記載の共重合体。
[20−1] 前記構成単位(B)は、下記一般式(2)で表される化合物に由来する構成単位または下記一般式(3)で表される化合物に由来する構成単位を含む、[15]〜[20]のいずれかに記載の共重合体。
【化4】
[式(2)および(3)中、
Xは、単結合、−[C(R)(R)]−、−C(=O)−、−O−、−SO−、または−SO−から選択される二価の基であり(ここで、RおよびRは、各々独立に、水素原子、メチル基、フェニル基およびフェニルフェニル基から各々独立に選択され、または、RおよびRは、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜13の環状アルキル基を形成しており;nは、1〜10の整数である);
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、およびハロゲン原子から選択され;
10は、水素原子またはメチル基であり;
YおよびZは、それぞれ独立に、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、または炭素数6〜10のアリーレン基であり;
pおよびqは、それぞれ独立に、0〜4の整数である]。
[21] 前記構成単位(A)は、前記共重合体に対して10〜90質量%の量で含まれ、前記構成単位(B)は、前記共重合体に対して10〜90質量%の量で含まれる、[15]〜[20]のいずれかに記載の共重合体。
[22] 平均粒子径0.1〜100μmのポリマー微粒子である、[15]〜[21]のいずれかに記載の共重合体。
[23] 前記光拡散剤に対して0〜10質量%の無機粒子を含有する、[15]〜[22]のいずれかに記載の共重合体。
[24] [15]〜[23]のいずれかに記載の共重合体を含んでなる、塗料用艶消し剤。
[25] [24]に記載の塗料用艶消し剤を含む、塗料組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光拡散性、光透過性、表面硬度等に優れた樹脂成形体を得られる光拡散剤、それを含む樹脂組成物および成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。また、2016年2月5日に出願し、本願優先権主張の基礎となる特願JP2016-20431号の特許請求の範囲、明細書、図面及び要約書の開示内容は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0014】
本発明の一実施形態は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)と、前記構成単位(A)との共重合が可能な多価ビニル系構成単位(B)とを含む共重合体(以下「(メタ)アクリル系共重合体」とも称する)に関する。実施形態の(メタ)アクリル系共重合体は、例えば光拡散剤として使用される。
【0015】
1.光拡散剤
本発明の光拡散剤は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)と、構成単位(A)との共重合が可能な多価ビニル系構成単位(B)とを含む(メタ)アクリル系共重合体を含んでなる。
【化5】
【0016】
本発明の光拡散剤が基材樹脂中に分散した構成を有する樹脂成形体は、優れた光拡散性および光透過性を有する。本発明の光拡散剤が、樹脂成形体に上記のような光学特性を付与できる理由は定かではないが、以下のように推測される。本発明の光拡散剤は、前述の一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)を有することから、基材樹脂として一般的に使用される、アクリル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂に代表される様々な樹脂との分散性に優れるため、光拡散性と光透過性を兼ね備えることが可能であると考える。
本発明の光拡散剤は、基材樹脂に対する分散性に優れるため、基材樹脂中に均一に分散して存在することができる。このような優れた分散性も、上記光学特性に寄与しているものと考えられる。
【0017】
また、本発明の光拡散剤は、主成分を(メタ)アクリレート構成単位とすることができることから、樹脂成形体に表面硬度を付与することもできる。表面硬度に優れた樹脂成形体は、表面にハードコート層を設けることなく使用することができるため、ハードコート層を形成する工程を減らすことができ、また、経済的でもある。
このように、本発明の光拡散剤を含む樹脂成形体は、上述したような優れた特性を有するため、これらの特性が要求される用途、例えば、照明器具のカバー、パソコン、テレビ等の表示装置におけるバックライト、自動車メーター、看板等において幅広く使用することができる。
【0018】
以下、光拡散剤に含まれる各成分について、順に説明する。
[1](メタ)アクリル系共重合体
光拡散剤の主要成分である(メタ)アクリル系共重合体は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)と、構成単位(A)との共重合が可能な多価ビニル系構成単位(B)とを含む。
【0019】
(1)(メタ)アクリレート構成単位(A)
(メタ)アクリレート構成単位(A)は、以下の一般式(1)で表される構造を有する。なお、本明細書において、アクリレート構成単位とメタクリレート構成単位とをあわせて(メタ)アクリレート構成単位と称する。
【化6】
【0020】
一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)は、エステル部分にベンゼン環を2つ以上有し、かつエステル部位の酸素原子とベンゼン環が直接結合していない点に構造上の特徴を有する。
【0021】
上記一般式(1)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0022】
Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S−、−SO−、−SO−およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、フェニル基またはフェニルフェニル基である。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0023】
Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−SO−、または−SO−が好ましく、単結合、−C(R)(R)−、−O−、または−SO−がより好ましく、単結合、メチレン基、または−O−が特に好ましい。RおよびRは、好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、フェニル基およびフェニルフェニル基から各々独立に選択され、より好ましくは水素原子である。
およびRは、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜10の環状アルキル基を形成していてもよい。
Yは、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、または炭素数6〜10のアリーレン基である。これらのうち、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、エチレンまたはプロピレンがより好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0024】
およびRは、各々独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基またはフェニルフェニル基である。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
およびRは、好ましくはメチル基、メトキシ基、クロロ基、ブロモ基およびフェニル基から各々独立に選択され、より好ましくはフェニル基である。
【0025】
mは、0〜10の整数であり、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0である。
nは、1または2の整数であり、好ましくは1である。
pは、0〜4の整数であり、好ましくは0〜1の整数であり、より好ましくは0である。
qは、0〜5の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0である。
【0026】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、4−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、4−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、2−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、4−ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、3−ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、2−ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、4−フェネチルベンジル(メタ)アクリレート、3−フェネチルベンジル(メタ)アクリレート、2−フェネチルベンジル(メタ)アクリレート、4−フェネチルフェネチル(メタ)アクリレート、3−フェネチルフェネチル(メタ)アクリレート、2−フェネチルフェネチル(メタ)アクリレート、4−(4−メチルフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(4−メチルフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(4−メチルフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−(4−メトキシフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(4−メトキシフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−(4−ブロモフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(4−ブロモフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(4−ブロモフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−ベンゾイルベンジル(メタ)アクリレート、3−ベンゾイルベンジル(メタ)アクリレート、2−ベンゾイルベンジル(メタ)アクリレート、4−(フェニルスルフィニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(フェニルスルフィニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(フェニルスルフィニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−(フェニルスルフォニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(フェニルスルフォニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(フェニルスルフォニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−((フェノキシカルボニル)オキシ)ベンジル(メタ)アクリレート、3−((フェノキシカルボニル)オキシ)ベンジル(メタ)アクリレート、2−((フェノキシカルボニル)オキシ)ベンジル(メタ)アクリレート、4−(((メタ)アクリロキシ)メチル)フェニルベンゾエート、3−(((メタ)アクリロキシ)メチル)フェニルベンゾエート、2−(((メタ)アクリロキシ)メチル)フェニルベンゾエート、フェニル4−(((メタ)アクリロキシ)メチル)ベンゾエート、フェニル3−(((メタ)アクリロキシ)メチル)ベンゾエート、フェニル2−(((メタ)アクリロキシ)メチル)ベンゾエート、4−(1−フェニルシクロヘキシル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(1−フェニルシクロヘキシル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(1−フェニルシクロヘキシル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、3−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4−(フェニルチオ)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(フェニルチオ)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(フェニルチオ)ベンジル(メタ)アクリレートおよび3−メチル−4−(2−メチルフェニル)ベンジルメタクリレートを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、好ましくは4−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、4−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、2−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは4−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、4−ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、4−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4−(フェニルスルフォニル)ベンジル(メタ)アクリレートである。
【0027】
(2)多価ビニル系構成単位(B)
本明細書において、「多価ビニル系構成単位」とは、構成単位(A)との共重合が可能な重合性ビニル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位を意味する。多官能アクリレートモノマー中の重合性ビニル基の数は、2〜6個であることが好ましく、2〜4個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。従って、多価ビニル系構成単位(B)は、ジビニル構成単位であることが特に好ましい。多価ビニル系構成単位(B)としては、1種類の構成単位のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
多価ビニル系構成単位(B)としては、構成単位(A)と共重合することが可能な重合性ビニル基を2つ以上有する多官能アクリレートに由来するものであれば使用することが可能であるが、成形体の光拡散性を向上させるためには、屈折率の高いものを使用することが好ましい。具体的には、ビスフェノール系、ビフェニル系およびナフチル系の多価ビニル系構成単位が好ましく、ビスフェノール系の多価ビニル系構成単位が好ましく、ビスフェノール系の多価ビニル系構成単位がより好ましい。ここで、ビスフェノール系の多価ビニル系構成単位とは、ビスフェノール骨格および2つ以上のビニル基を有する化合物に由来する構成単位を意味する。ビフェニル系の多価ビニル系構成単位とは、ビフェニル骨格および2つ以上のビニル基を有する化合物に由来する構成単位を意味する。ナフチル系の多価ビニル系構成単位とは、ナフチル骨格および2つ以上のビニル基を有する化合物に由来する構成単位を意味する。
【0029】
多価ビニル系構成単位(B)としては、ビスフェノール系のジビニル構成単位またはナフチル系のジビニル構成単位が特に好ましい。
ビスフェノール系のジビニル構成単位としては、例えば以下の一般式(2)で表される化合物に由来する構成単位が挙げられ、ナフチル系のジビニル構成単位としては、例えば以下の一般式(3)で表される化合物に由来する構成単位が挙げられる。
【化7】
【0030】
一般式(2)において、Xは、単結合、−[C(R)(R)]−、−C(=O)−、−O−、−SO−、または−SO−が好ましく、単結合、−[C(R)(R)]−、−O−、または−SO−がより好ましく、単結合または−[C(R)(R)]−が特に好ましい。RおよびRは、好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基およびフェニルフェニル基から各々独立に選択され、より好ましくはメチル基である。
およびRは、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜13の環状アルキル基を形成していてもよい。例えば、Xは、2価のフルオレンでありうる。
nは、1から10が好ましく、1から6がより好ましく、1から4がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0031】
一般式(2)および(3)において、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、およびハロゲン原子から選択される。これらのうち、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基および炭素数6〜15のアリール基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基およびフェニル基がより好ましく、水素原子、メチル基、およびフェニル基が特に好ましい。また、RとRが連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。
【0032】
上記一般式(2)および(3)において、YおよびZは、それぞれ独立に、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、または炭素数6〜10のアリーレン基である。これらのうち、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、エチレンまたはプロピレンがより好ましく、エチレンが特に好ましい。
上記一般式(2)および(3)において、R10は、水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である
【0033】
pおよびqは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、0〜2であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、pおよびqが共に0または1であることがさらに好ましく、pおよびqが共に1であることが特に好ましい。
【0034】
式(2)および(3)で表される化合物としては、具体的には、9,9’−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]メタン、1,1’−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]スルフォキシド、ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]スルファイド、ビス(4−(2−(メタ) (メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]スルホン、ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]ケトン、4,4’−ジ(メタ)アクリロイルオキシビフェニル、2,6−ジ(メタ)アクリロイルオキシナフタレン等が挙げられる。中でも、9,9’−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパンが好ましく、9,9’−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンがより好ましい。
【0035】
(3)(メタ)アクリル系共重合体
(メタ)アクリレート構成単位(A)と多価ビニル系構成単位(B)とを重合させて得られる(メタ)アクリル系共重合体において、構成単位(A)と構成単位(B)の割合は特に限定されないが、共重合体に対して構成単位(A)が10〜90質量%の量で含まれ、構成単位(B)が10〜90質量%の量で含まれることが好ましい。構成単位(A)が10質量%以上であると、共重合体の屈折率が高く、基材樹脂との分散性が良好となる。(B)が10質量%以上であると、十分に架橋が進行し、溶剤不溶な共重合体とすることができる。
【0036】
(メタ)アクリル系共重合体に対して構成単位(A)が20〜90質量%の量で含まれ、構成単位(B)が10〜80質量%の量で含まれることがより好ましい。また、(メタ)アクリル系共重合体に対して構成単位(A)が40〜90質量%の量で含まれ、構成単位(B)が10〜60質量%の量で含まれることが特に好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系共重合体は、必要に応じて、構成単位(A)および(B)以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位は、共重合体の特性に悪影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリレート;エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸系ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド等のマレイミド系単量体;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,3−ブチレンジメタクリレート等の架橋剤に由来する構成単位を挙げることができる。これらのうち、好ましくはメタクリレート、アクリレート、およびシアン化ビニル単量体に由来する構成単位であり、共重合体の熱分解を抑制するという観点から、より好ましくはアクリレートに由来する構成単位である。これらの構成単位は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
その他の構成単位を含有する場合、共重合体に対して0.1〜10質量%の量で含まれることが好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい。その他の構成単位の含有率が0.1質量%以上であれば、共重合体の熱分解を抑制することができ、10質量%以下であれば、光拡散剤としての特性に影響を及ぼさない。
【0039】
(メタ)アクリル系共重合体を得るための重合方法は、特に限定されないが、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の公知の方法を使用することができる。好ましくは懸濁重合法や塊状重合法であり、より好ましくは懸濁重合法である。また、重合に必要な添加剤等は必要に応じて適宜添加することができる。添加剤としては、例えば、懸濁安定剤、界面活性剤、重合開始剤、乳化剤、分散剤、連鎖移動剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの添加剤としては、(メタ)アクリル系共重合体の製造において通常使用されているものを使用することができる。
【0040】
重合温度は、構成単位(A)および(B)の構造および質量比、重合開始剤等の添加剤の種類によって変わるが、50℃〜150℃が好ましく、70℃〜130℃がより好ましい。なお、重合は多段階で昇温して行ってもかまわない。
【0041】
重合時間は、重合方法、構成単位(A)および(B)の構造および質量比、重合開始剤等の添加剤の種類によって変わるが、目的の温度で1時間〜8時間が好ましく、2時間〜6時間がより好ましい。なお、目的の温度に昇温するまでの時間が前記重合時間にさらに加わる。
【0042】
重合反応は、常圧または加圧下で行われ得る。反応圧力は、重合方法、構成単位(A)および(B)の構造および質量比等によって変わるが、0MPa(常圧)〜3MPaで重合するのが好ましく、0MPa(常圧)〜1MPaで重合するのがより好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態によると、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構成単位(A)と、構成単位(A)との共重合が可能な多価ビニル系構成単位(B)と
を含む共重合体が提供される:
【化8】
[式(1)中、
Xは、単結合、−C(R)(R)−、−C(=O)−、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S−、−SO−、−SO−およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり(ここで、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;あるいは、RおよびRは、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜10の環状アルキル基を形成していてもよい);
Yは、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、または炭素数6〜10のアリーレン基であり;
は、水素原子またはメチル基であり;
およびRは、各々独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基またはフェニルフェニル基であり;
mは、0〜10の整数であり;
nは、1または2の整数であり;
pは、0〜4の整数であり;
qは、0〜5の整数である]。
【0044】
[2]光拡散剤の特性
上述した方法によって得られる(メタ)アクリル系共重合体は、ビーズ状のポリマー微粒子であり、そのまま光拡散剤として使用することができる。一実施形態の光拡散剤は、光拡散剤100質量%に対して、上記(メタ)アクリル系共重合体を50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、一層好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上)を含む。あるいは、得られたビーズ状のポリマー粒子表面をコーティング、金属蒸着等によって被覆して、光拡散剤として使用することもできる。
光拡散剤に含まれる上記(メタ)アクリル系共重合体以外の他の成分としては、重合の際に添加されうる上記添加剤(例えば、懸濁安定剤、界面活性剤、重合開始剤、乳化剤、分散剤、連鎖移動剤)、無機粒子、光拡散剤粒子の表面コーティング剤(金属等)などが挙げられる。
【0045】
光拡散剤の平均粒子径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは1〜30μm、特に好ましくは10〜30μm、最も好ましくは15〜25μmである。ここで、平均粒子径とは、体積平均粒子径のことであり、算出方法は実施例に記載するとおりである。
平均粒子径を上記範囲とすることにより、樹脂成形体に十分な光拡散性を付与することができ、また、光拡散剤の添加量に見合った光拡散効果を得られる。平均粒子径は、例えば、懸濁安定剤の添加量を調整することにより制御することができる。一般に懸濁安定剤の添加量が多いほど粒径が小さくなる傾向がある。
【0046】
光拡散剤は、実施形態の(メタ)アクリル系共重合体に加えて、無機粒子を配合してもよい。ただし、従来より光拡散剤として使用される金属酸化物粒子などの無機粒子は、一般に、基材樹脂との屈折率差が大きいことや粒子の表面積が大きいことに起因して、光拡散剤を含む光拡散性シートに入射した光を反射してしまい光透過性を低下させる問題や、光拡散性シートの強度を低下させる問題を引き起こす傾向がある。したがって、光拡散性および光透過性、ならびに機械的強度を両立する観点から、無機粒子の含有量は、前記光拡散剤(100質量%)に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%、さらに好ましくは0〜1質量%、特に好ましくは無機粒子を含まない(0質量%)。
【0047】
無機粒子としては特に制限されないが、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物粒子(好ましくは無機酸化物ナノ粒子)が挙げられる。
本発明の光拡散剤は、無機粒子を含まない場合であっても、優れた光拡散性を発揮することができる。
【0048】
光拡散剤は、臭気の問題および耐候性の面から、硫黄原子を含む重合体の粒子(含硫黄粒子)の含有量が小さいことが好ましい。含硫黄粒子の含有量は、前記光拡散剤(100質量%)に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%、さらに好ましくは0〜1質量%、特に好ましくは含硫黄粒子を含まない(0質量%)
【0049】
本発明の光拡散剤は、光拡散性の観点から、屈折率が高いことが好ましく、具体的には屈折率が1.58以上であることが好ましく、1.59以上であることがより好ましく、1.6以上であることがさらに好ましい。また、光拡散剤の屈折率は、光拡散剤を分散させる基材樹脂の屈折率よりも高いことが好ましい。それは、正面方向への出射光を多くすることにより、輝度を向上させることができるためである。一方、本発明の光拡散剤が基材樹脂よりも低い屈折率を有していたとしても、本発明の光拡散剤は比較的高い屈折率を有しているため、光拡散剤と基材樹脂との間の屈折率差を下記に記載するような適切な範囲とすることができる。そのため、比較的高い屈折率を有する基材樹脂に対しても、本発明の光拡散剤は問題なく使用することができる。
【0050】
上述したように、光拡散剤と基材樹脂との間の屈折率差は小さいことが好ましく、具体的には、屈折率差が0.005〜0.1であることが好ましく、0.01〜0.05であることがより好ましい。屈折率差が上記範囲内であれば、十分な光拡散性が得られ、また、正面方向への出射光が十分得られることにより輝度にも優れる。
ここで、屈折率とは、測定波長589nm、測定温度23℃での屈折率を意味する。
【0051】
なお、本発明の光拡散剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を任意の組合せおよび比率で併用してもよい。
【0052】
2.光拡散性樹脂組成物
本発明の一実施形態によると、基材樹脂と上記光拡散剤とを含む光拡散性樹脂組成物が提供される。基材樹脂としては、上述したとおり、光拡散剤よりも屈折率が低く、光拡散剤との屈折率差が小さいものが好ましく、具体的には、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびアクリル系樹脂が好ましく、ポリカーボネート系樹脂およびポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0053】
光拡散性樹脂組成物における光拡散剤の含有量は、基材樹脂100質量部に対して10〜100質量部が好ましく、15〜80質量部がより好ましく、20〜75質量部が特に好ましい。基材樹脂100質量部に対する光拡散剤の含有量が10質量部以上であると、光拡散性樹脂組成物の成形体が十分な光拡散性を有し、光源も隠蔽することができる。一方、光拡散剤の含有量が100質量部以下であれば、光拡散剤の量が多すぎることによる光透過性の低下を防ぐことができ、照明器具等に使用した場合の輝度の低下も防ぐことができる。
特定の実施形態の光拡散性樹脂組成物は、基材樹脂100質量部に対して55〜75質量部の光拡散剤を含有する。本発明の光拡散剤は基材樹脂との分散性に優れるため、基材樹脂に対する光拡散剤の配合割合を大きくすることが可能であり、かかる形態においては、光透過性を維持しつつ、光拡散性および硬度が特に優れた成形体を得ることが可能となる。
【0054】
光拡散性樹脂組成物は、基材樹脂および光拡散剤の他に、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、樹脂、添加剤等が挙げられる。添加してもよい樹脂としては、例えば、ABS、HIPS、PS、PAS等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;他の熱可塑性樹脂を配合したエラストマー等のポリマーアロイを挙げることができる。これらの樹脂の含量は、光拡散性樹脂組成物の光学特性および基材樹脂が本来有する耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の物性を損なわない範囲であることが好ましく、具体的には基材樹脂と光拡散剤の合計100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。
【0055】
また、上記樹脂組成物が含有していてもよい添加剤としては、例えば、安定剤、強化剤、耐候剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、染顔料、およびフルオロオレフィンを挙げることができる。具体的には、成形体の強度、剛性、難燃性等を向上させるために、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維等を用いることができる。さらに、耐薬品性等の改良のためにポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、耐衝撃性を向上させるためのコアシェル2層構造からなるゴム状弾性体等を含有していてもよい。
【0056】
上記安定剤としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ジフェニルヒドロゲンフォスファイト、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「IRGANOX 1076」、チバ・ジャパン(株)製)を挙げることができる。また、上記耐候剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンを挙げることができる。
【0057】
光拡散性樹脂組成物は、添加剤として無機粒子を配合してもよいが、均一分散性の観点から、無機粒子の含有量は、基材樹脂と光拡散剤の合計100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0〜5質量部、さらに好ましくは0〜1質量部、特に好ましくは無機粒子を含まない(0質量部)。
無機粒子としては特に制限されないが、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)などの無機酸化物粒子(好ましくは無機酸化物ナノ粒子)が挙げられる。
【0058】
光拡散性樹脂組成物の製造方法としては、基材樹脂中に光拡散剤を分散できる方法であれば使用することができる。光拡散剤が基材樹脂と相溶性を有する場合には、光拡散剤を基材樹脂に直接添加することができる。あるいは、基材樹脂および光拡散剤を任意の溶媒に溶解し、溶液の状態で得てもよい。任意の溶媒に先に光拡散剤を溶解してから、その溶液を基材樹脂に添加してもよい。さらには、基材樹脂および光拡散剤を混合し、それをペレタイザーを用いてペレット化して、樹脂組成物のペレットとしてもよい。
【0059】
3.成形体
本発明の一実施形態によると、光拡散性樹脂組成物を用いて成形された成形体が提供される。成形体の形状、模様、色、大きさ等に制限はなく、これらは成形体の用途に応じて設定することができる。例えば、成形体は、シート、フィルム、板等の形態であってよい。例えば、実施形態の成形体は、照明カバー、液晶表示装置の光拡散板などの光学用部材である。
【0060】
成形体の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上、例えば90〜95%、または90〜93%である。また、光拡散性の指標となるヘイズは、80%以上であることが好ましく、例えば80〜90%または80〜85%である。全光線透過率とヘイズが共に上記範囲内にある場合、光透過性と光拡散性に優れ、両者のバランスのとれた成形体が得られる。また、成形体の鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましい。
【0061】
成形体の成形方法としては、特に限定されず、一般的に使用される方法を用いることができる。例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、ブロー成形、押出成形、積層成形、カレンダー成形、注型成形等が挙げられる。
【0062】
4.艶消し剤
実施形態の光拡散剤は、塗料、インキ等に配合されることにより塗膜表面に艶消し効果を付与できることから、塗料の艶消し剤としても使用される。すなわち、本発明の一形態は、上記(メタ)アクリル系共重合体を含んでなる塗料用艶消し剤を提供する。実施形態の艶消し剤を含む塗料組成物を用いて塗膜を形成すると、光沢感を抑えた質感などの優れた意匠性を有する塗膜表面が得られる。また、自動車内装品の表面に艶消し仕上げを施すことにより、反射光の低減による安全性の向上を図ることができる。
【0063】
本発明では、上記で説明した形態の光拡散剤の粒子をそのまま塗料用艶消し剤として使用することができる。実施形態の塗料組成物は、本発明の塗料用艶消し剤、バインダー樹脂、および、必要に応じて、溶剤、公知の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤が含まれる。塗料組成物における塗料用艶消し剤の配合量は塗料の種類や所望の艶消しの程度に応じて適宜設定すればよい。一例をあげると、本発明の塗料用艶消し剤の配合量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜200質量部(例えば0.5〜100質量部または0.5〜50質量部)である。
【0064】
塗料用バインダー樹脂としては、公知の樹脂を適宜選択することができる。例えば、一般に有機溶剤に可溶なアクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ニトロセルロース樹脂等が挙げられる。また、水溶性、サスペンジョン、エマルションの前記樹脂も例示することができる。塗料用バインダー樹脂は、通常、有機溶剤もしくは水で希釈して用いる。
【0065】
塗料組成物の調製方法としては、例えば、攪拌機、ニーダー、ミキサー等で、塗料用艶消し剤、バインダー樹脂、および、必要に応じて、溶剤、添加剤等を混合する方法が挙げられる。
配合した塗料組成物を基材に塗布し乾燥することによって、塗膜を得ることができる。塗布方法としては、例えば、スプレー塗装、ロール塗装、刷毛塗り等が挙げられる。
本発明の艶消し剤は、光学材料、家電などの電気製品の表面の艶消し塗料、建材や自動車の外装や自動車の内装品などに用いられる塗料を形成するために好適に用いられる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明について実施例を参照して詳述するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。実施例中の「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0067】
また、実施例および比較例における各物性の測定は、以下の方法により行った。
1.体積平均粒子径
以下の製造例で製造した(メタ)アクリル系共重合体にメタノールを加えて
、樹脂濃度が5質量%となるように調整し、均一に拡散させた。その後、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(株式会社セイシン企業製、レーザーマイクロンサイザーLMS−300)を用いて粒子径分布測定を行い、得られた粒子径分布から体積平均粒子径を算出した。
【0068】
具体的には、粒子径の小さなものから順に、d1、d2、・・・、di、・・・dkの粒子径を持つ粒子群について、粒子1個当たりの体積をViとした場合に、体積平均粒子径(MV)は、以下の式で算出される。
【数1】
【0069】
2.屈折率
以下に記載する(メタ)アクリル系共重合体a〜eの製造に使用した材料と同じ組成の単量体の混合物100質量部に、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(開始剤)1質量部を溶解させた。この溶解物を幅50mm、長さ100mm、厚さ1mmのガラスモールド中に注入した。この後、40℃で10時間重合させ、次いで40℃から80℃まで5時間かけて昇温させながら重合させ、更に100℃で1時間重合させた。得られた重合体を冷却後、ガラスモールドから剥離することにより、屈折率測定用の試験片とした。測定は、多波長アッべ屈折率計DR−M2(株式会社アタゴ社製)を用いて行った。測定条件は、測定波長:589nm、測定温度:23℃とした。
【0070】
3.鉛筆硬度
実施例で作製した光拡散板の表面にすり傷が観察されない鉛筆硬度を、JIS K5600−5−4に準じて測定した。
【0071】
4.全光線透過率、ヘイズ
ヘーズメーターNDH4000(日本電色工業(株)製)を用いて、実施例で作製した光拡散板についてJIS K 7136に準じて全光線透過率およびヘイズの測定を行った
。なお、測定は、光拡散板の樹脂溶液を塗布した面から光を入射させて行った。
【0072】
<製造例1:(メタ)アクリル系共重合体aの合成>
撹拌装置が装備された加温可能な丸底セパラブルフラスコ中に、脱イオン水200質量部、第三リン酸カルシウム(懸濁安定剤)2.0質量部、ラウリル硫酸ナトリウム(懸濁安定助剤)0.1質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.01質量部を加えた後、撹拌した。別途、単量体としての4−フェニルベンジルメタクリレート60質量部および9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン40質量部;2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(開始剤)0.5質量部;ならびにノルマル−オクチルメルカプタン(nOM)(連鎖移動剤)0.5質量部を混合して均一にしたモノマー溶液を調製し、反応容器内に加えた。窒素で反応容器内を置換した後、75℃で2時間、続いて90℃で2時間反応を行って、重合反応を完結させた。得られたビーズ状の重合体を水洗後、乾燥し、(メタ)アクリル系共重合体aを得た。
【0073】
<製造例2:(メタ)アクリル系共重合体bの合成>
撹拌装置が装備された加温可能な高圧反応器中に、脱イオン水200質量部、第三リン酸カルシウム(懸濁安定剤)2.0質量部、ラウリル硫酸ナトリウム(懸濁安定助剤)0.1質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)0.01質量部を加えた後、撹拌した。別途、単量体としての4−フェニルベンジルメタクリレート60質量部および9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン40質量部;パーブチルE(日油株式会社製)(開始剤)0.3質量部;ならびにノルマル−オクチルメルカプタン(nOM)(連鎖移動剤)0.5質量部を混合して均一にしたモノマー溶液を調製し、反応容器内に加えた。窒素で反応容器内を満たし、0MPa(常圧)から0.1MPaに加圧した。110℃で1時間、続いて120℃で2時間反応を行って重合反応を完結させた。得られたビーズ状の重合体を水洗後、乾燥し、(メタ)アクリル系共重合体bを得た。
【0074】
<製造例3:(メタ)アクリル系共重合体cの合成>
4−フェニルベンジルメタクリレートに替えて2−フェニルベンジルメタクリレートを使用したことを除き、製造例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体cを得た。
【0075】
<製造例4:(メタ)アクリル系共重合体dの合成>
4−フェニルベンジルメタクリレートに替えて4−フェノキシベンジルメタクリレートを使用したことを除き、製造例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体dを得た。
【0076】
<製造例5:(メタ)アクリル系共重合体eの合成>
4−フェニルベンジルメタクリレートに替えて4−ベンジルベンジルメタクリレートを使用したことを除き、製造例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体eを得た。
【0077】
<製造例6:(メタ)アクリル系共重合体fの合成>
9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンに替えて4,4’−イソプロピリデンジフェノールジメタクリレートを使用したことを除き、製造例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体fを得た。
【0078】
<製造例7:(メタ)アクリル系共重合体gの合成>
9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンに替えて2,2’−ビス[4−(2−メタアクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパンを使用したことを除き、製造例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体gを得た。
【0079】
<製造例8:(メタ)アクリル系共重合体hの合成>
4−フェニルベンジルメタクリレートおよび9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンの配合量をそれぞれ90質量部および10質量部に変更したことを除き、製造例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体hを得た。
【0080】
<製造例9:(メタ)アクリル系共重合体iの合成>
4−フェニルベンジルメタクリレートおよび9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンの配合量をそれぞれ40質量部および60質量部に変更したことを除き、製造例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体iを得た。
【0081】
表1に、上記(メタ)アクリル系共重合体a〜iの組成と平均粒子径をまとめた。
【0082】
【表1】
【0083】
<実施例1>
基材樹脂としての非晶性ポリエステル樹脂であるバイロン200(東洋紡績株式会社製;屈折率:1.556)20質量部、製造例1で得られた(メタ)アクリル系共重合体a 10質量部、トルエン40質量部、およびメチルエチルケトン20質量部を混合し、よく攪拌することにより、樹脂溶液Aを調製した。次に、基材である厚み100μmのポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製;コスモシャインA4100)の一方の面に、樹脂溶液Aを塗布し(塗布量:20μm(固形分))、100℃で120秒乾燥させた後、40℃で2日間エージングを行うことで、光拡散板を得た。
【0084】
<実施例2>
非晶性ポリエステル樹脂であるバイロン200(東洋紡績株式会社製;屈折率:1.556)の量を15質量部とし、トルエンの量を30質量部としたことを除き、実施例1と同様の方法で樹脂溶液Bを調製した。この樹脂溶液Bを使用して、実施例1と同様の方法で光拡散板を製造した。
【0085】
<実施例3>
上記製造例2で得られた(メタ)アクリル系共重合体bを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で樹脂溶液Cを調製した。この樹脂溶液Cを使用して、実施例1と同様の方法で光拡散板を製造した。
【0086】
<実施例4>
上記製造例3で得られた(メタ)アクリル系共重合体cを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で樹脂溶液Dを調製した。この樹脂溶液Dを使用して、実施例1と同様の方法で光拡散板を製造した。
【0087】
<実施例5>
上記製造例4で得られた(メタ)アクリル系共重合体dを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で樹脂溶液Eを調製した。この樹脂溶液Eを使用して、実施例1と同様の方法で光拡散板を製造した。
【0088】
<実施例6>
上記製造例5で得られた(メタ)アクリル系共重合体eを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で樹脂溶液Fを調製した。この樹脂溶液Fを使用して、実施例1と同様の方法で光拡散板を製造した。
【0089】
<実施例7>
上記製造例6で得られた(メタ)アクリル系共重合体fを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で樹脂溶液Hを調製した。この樹脂溶液Hを使用して、実施例1と同様の方法で光拡散板を製造した。
【0090】
<実施例8>
上記製造例7で得られた(メタ)アクリル系共重合体gを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で樹脂溶液Iを調製した。この樹脂溶液Iを使用して、実施例1と同様の方法で光拡散板を製造した。
【0091】
<実施例9>
上記製造例8で得られた(メタ)アクリル系共重合体hを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で樹脂溶液Jを調製した。この樹脂溶液Jを使用して、実施例1と同様の方法で光拡散板を製造した。
【0092】
<実施例10>
上記製造例9で得られた(メタ)アクリル系共重合体iを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で樹脂溶液Kを調製した。この樹脂溶液Kを使用して、実施例1と同様の方法で光拡散板を製造した。
【0093】
<比較例1>
透明樹脂として非晶性ポリエステル樹脂であるバイロン200(東洋紡績株式会社製)を30質量部、トルエン40質量部、メチルエチルケトン20質量部を含む溶液を調製し、よく攪拌することにより、樹脂溶液Gを得た。次に、基材である厚み100μmのポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製;コスモシャインA4100)の一方の面に、前記樹脂溶液Gを塗布し(塗布量:20μm(固形分))、100℃で120秒乾燥させた後、40℃で2日間エージングを行うことで、光拡散板を得た。
【0094】
実施例1〜10および比較例1で得られた光拡散板の評価結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2より、本発明の光拡散剤((メタ)アクリル系共重合体a〜i)を使用することにより、光拡散性および光透過性に優れ、さらには硬度の高い成形体を製造できることが分かる。
特に、基材樹脂としてのポリエステル樹脂に対する光拡散剤の配合割合が増加した実施例2は、同一の光拡散剤を用いた実施例1と比較して光透過性の低下を抑制しつつ、光拡散性(ヘイズ)および硬度の向上を図ることができることがわかる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。