特許第6870635号(P6870635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6870635慣性計測装置、移動体、携帯型電子機器、及び電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870635
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】慣性計測装置、移動体、携帯型電子機器、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/00 20130101AFI20210426BHJP
   G01C 19/5614 20120101ALI20210426BHJP
   G01C 19/5726 20120101ALI20210426BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20210426BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20210426BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20210426BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20210426BHJP
   G01C 21/20 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G01C19/00 Z
   G01C19/5614
   G01C19/5726
   G08G1/16 C
   H01L41/113
   B60W30/02
   G01P15/18
   G01P15/125 Z
   G01C21/20
【請求項の数】15
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2018-42387(P2018-42387)
(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公開番号】特開2019-158425(P2019-158425A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2021年1月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100187539
【弁理士】
【氏名又は名称】藍原 由和
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕介
(72)【発明者】
【氏名】今井 信行
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5061264(JP,B1)
【文献】 特開平7−301541(JP,A)
【文献】 特開2015−179002(JP,A)
【文献】 特開2015−148450(JP,A)
【文献】 特開2015−135349(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/064790(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00
B60W 30/02
G01C 19/5614
G01C 19/5726
G01P 15/125
G01P 15/18
G08G 1/16
H01L 41/113
G01C 21/00−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に装備される測位システムにおいてT[秒]毎に測位結果を出力する衛星測位用受信機と組み合わせて用いられる慣性計測装置であって、
前記移動体の前後方向をX軸、前記移動体の左右方向をY軸、前記X軸と前記Y軸との直交する方向をZ軸としたときに、
前記X軸回りの角速度を検出し、第1の角速度信号を出力するX軸角速度センサーと、
前記Y軸回りの角速度を検出し、第2の角速度信号を出力するY軸角速度センサーと、
前記Z軸回りの角速度を検出し、第3の角速度信号を出力するZ軸角速度センサーと、
前記X軸方向の加速度を検出し、第1の加速度信号を出力するX軸加速度センサーと、
前記Y軸方向の加速度を検出し、第2の加速度信号を出力するY軸加速度センサーと、
前記Z軸方向の加速度を検出し、第3の加速度信号を出力するZ軸加速度センサーと、
を備え、
前記Z軸角速度センサーは、前記移動体が移動速度V[m/秒]でT秒間移動する間の前記第3の角速度信号に基づく位置誤差P[m]が、
Pp≧P=(V/Bz)×(1−cos(Bz×T))
(但し、前記第3の角速度信号のバイアス誤差がBz[deg/秒]、T秒間移動する間の所定の許容最大位置誤差がPp[m]である)
を満たし、
前記X軸角速度センサーは、前記第1の角速度信号のバイアス誤差Bx[deg/秒]が、Bz<Bx、を満たし、
前記Y軸角速度センサーは、前記第2の角速度信号のバイアス誤差By[deg/秒]が、Bz<By、を満たす、
慣性計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
Bz<0.5×Bx、且つ、Bz<0.5×By
を満たす慣性計測装置。
【請求項3】
移動体に装備される測位システムに用いられる慣性計測装置であって、
前記移動体の前後方向をX軸、前記移動体の左右方向をY軸、前記X軸と前記Y軸との直交する方向をZ軸としたときに、
前記X軸回りの角速度を検出し、第1の角速度信号を出力するX軸角速度センサーと、
前記Y軸回りの角速度を検出し、第2の角速度信号を出力するY軸角速度センサーと、
前記Z軸回りの角速度を検出し、第3の角速度信号を出力するZ軸角速度センサーと、
前記X軸方向の加速度を検出し、第1の加速度信号を出力するX軸加速度センサーと、
前記Y軸方向の加速度を検出し、第2の加速度信号を出力するY軸加速度センサーと、
前記Z軸方向の加速度を検出し、第3の加速度信号を出力するZ軸加速度センサーと、
を備え、
前記X軸角速度センサーの前記第1の角速度信号のアラン分散をBISx[deg/時間]とし、
前記Y軸角速度センサーの前記第2の角速度信号のアラン分散をBISy[deg/時間]とし、
前記Z軸角速度センサーの前記第3の角速度信号のアラン分散をBISz[deg/時間]としたとき、
BISz<0.5×BISx、且つ、BISz<0.5×BISy、
を満たす、
慣性計測装置。
【請求項4】
請求項3において、
BISx>5、BISy>5、且つ、BISz<2.5、
を満たす慣性計測装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、
Bx>1140[deg/時間]、By>1140[deg/時間]、且つ、Bz<570[deg/時間]、
である慣性計測装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、
前記X軸角速度センサーは、Ngx[個]のセンサー素子を有して構成され、
前記Y軸角速度センサーは、Ngy[個]のセンサー素子を有して構成され、
前記Z軸角速度センサーは、Ngz[個]のセンサー素子を有して構成され、
Ngz>Ngx、且つ、Ngz>Ngy,
を満たす慣性計測装置。
【請求項7】
請求項6において、
Ngz≧2
を満たす慣性計測装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかにおいて、
前記Z軸角速度センサーは、
水晶の電気軸、機械軸、及び光学軸からなる直交座標系において、
前記電気軸と前記機械軸とで規定される平面に沿った主面を有する基部と、
前記基部から、一方が前記機械軸のプラス方向へ延出され、他方が前記機械軸のマイナス方向へ延出された1対の検出用振動腕と、
前記基部から、一方が前記電気軸のプラス方向へ延出され、他方が前記電気軸のマイナス方向へ延出された1対の連結腕と、
前記各連結腕から、一方が前記機械軸のプラス方向へ延出され、他方が前記機械軸のマイナス方向へ延出された各1対の駆動用振動腕と、
前記基部から延出される少なくとも2本の梁と、
前記各梁の先端部に接続される支持部と、
を含み、
各前記梁の1つである水晶からなる第1の梁が、前記電気軸方向において、前記基部よりプラス側に位置する前記連結腕と、前記機械軸方向において、前記基部よりプラス側に位置する前記検出用振動腕との間の前記基部の外縁から延出され、
前記第1の梁は、
前記基部から前記電気軸のプラス方向に延出する第1延出部と、
前記第1延出部から前記機械軸のプラス方向に延出する第2延出部と、
前記第2延出部から前記電気軸のマイナス方向に延出する第3延出部と、
を含む、
慣性計測装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記X軸角速度センサーおよび前記Y軸角速度センサーは、Si−MEMS型角速度センサーであり、
前記X軸加速度センサー、前記Y軸加速度センサーおよび前記Z軸加速度センサーは、Si−MEMS型加速度センサーである、
慣性計測装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記X軸角速度センサー、前記Y軸角速度センサー、前記X軸加速度センサー、前記Y軸加速度センサーおよび前記Z軸加速度センサーを収容する容器、
を更に備えた慣性計測装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかにおいて、
前記第1の角速度信号および前記第1の加速度信号は、前記移動体のロール角の算出基準信号となり、
前記第2の角速度信号および前記第2の加速度信号は、前記移動体のピッチ角の算出基準信号となる、
慣性計測装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の慣性計測装置と、
前記慣性計測装置の出力信号に基づいて、加速、制動および操舵のうちの少なくとも1つを制御する制御部と、
を具備し、
自動運転の実施或いは不実施を、前記慣性計測装置の出力信号に基づいて切り替える、
移動体。
【請求項13】
開口部を有するケースと、
前記ケース内に収容された請求項1乃至11の何れかに記載の慣性計測装置と、
前記ケース内に収容され、前記慣性計測装置の出力信号を処理する処理部と、
表示画面を前記開口部に向けて前記ケースに収容された表示部と、
前記開口部を塞ぐ透光性カバーと、
を備えた携帯型電子機器。
【請求項14】
請求項1乃至11の何れかに記載の慣性計測装置と、
前記慣性計測装置の出力信号に基づいて所定の制御を行う制御部と、
を備えた電子機器。
【請求項15】
請求項1乃至11の何れかに記載の慣性計測装置と、
前記慣性計測装置の出力信号に基づいて姿勢制御を行う姿勢制御部と、
を備えた移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性計測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1〜3に開示されているように、3軸の角速度センサーと、3軸の加速度センサーとを有する種々の慣性計測装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−251803号公報
【特許文献2】特開2014−228489号公報
【特許文献3】特開2017−20829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の慣性計測装置においては、ロール角を測定する角速度センサーと、ピッチ角を測定する角速度センサーと、ヨー角を測定する角速度センサーとは、設置向きが異なるだけで同一仕様の角速度センサーが用いられていた。そのため、各角速度センサーの測定誤差が同程度であった。
【0005】
慣性計測装置を含む測位システムを移動体に装備する場合、角速度センサーによって測定される移動体のロール角、ピッチ角、ヨー角それぞれの測定値について、要求される精度が同程度であれば問題はない。しかし、実際には、ヨー角の測定値は、ロール角やピッチ角に比べて高い精度であることが望ましいという知見を得た。
【0006】
本発明は、この知見に基づいて考案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、移動体に装備される測位システムにおいてT[秒]毎に測位結果を出力する衛星測位用受信機と組み合わせて用いられる慣性計測装置であって、前記移動体の前後方向をX軸、前記移動体の左右方向をY軸、前記X軸と前記Y軸との直交する方向をZ軸としたときに、前記X軸回りの角速度を検出し、第1の角速度信号を出力するX軸角速度センサーと、前記Y軸回りの角速度を検出し、第2の角速度信号を出力するY軸角速度センサーと、前記Z軸回りの角速度を検出し、第3の角速度信号を出力するZ軸角速度センサーと、前記X軸方向の加速度を検出し、第1の加速度信号を出力するX軸加速度センサーと、前記Y軸方向の加速度を検出し、第2の加速度信号を出力するY軸加速度センサーと、前記Z軸方向の加速度を検出し、第3の加速度信号を出力するZ軸加速度センサーと、を備え、前記Z軸角速度センサーは、前記移動体が移動速度V[m/秒]でT秒間移動する間の前記第3の角速度信号に基づく位置誤差P[m]が、Pp≧P=(V/Bz)×(1−cos(Bz×T))(但し、前記第3の角速度信号のバイアス誤差がBz[deg/秒]、T秒間移動する間の所定の許容最大位置誤差がPp[m]である)を満たし、前記X軸角速度センサーは、前記第1の角速度信号のバイアス誤差Bx[deg/秒]が、Bz<Bx、を満たし、前記Y軸角速度センサーは、前記第2の角速度信号のバイアス誤差By[deg/秒]が、Bz<By、を満たす、慣性計測装置である。
【0008】
第1の発明によれば、Z軸角速度センサーのバイアス誤差Bzは、X軸角速度センサーのバイアス誤差BxおよびY軸角速度センサーのバイアス誤差Byに対して小さいので、ヨー角となるZ軸回りの角速度が、ロール角となるX軸回りの角速度およびピッチ角となるY軸回りの角速度より高い精度で得られることになる。Z軸角速度センサーのバイアス誤差Bzは、移動体が、衛星測位用受信機による測位結果の出力間隔であるT秒移動する間の位置誤差を、所定の許容最大位置誤差Pp以下とする値である。従って、衛星測位用受信機と組み合わせた測位システムとして移動体に装備されたときに、衛星測位用受信機の測位結果の出力間隔であるT秒間の位置誤差が所定の許容最大位置誤差以下とするような、慣性航法の精度を確保できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、Bz<0.5×Bx、且つ、Bz<0.5×By、を満たす慣性計測装置である。
【0010】
第2の発明によれば、Z軸角速度センサーのバイアス誤差Bzを、X軸角速度センサーのバイアス誤差Bx、Y軸角速度センサーのバイアス誤差By、それぞれの0.5倍以下とすることができる。
【0011】
第3の発明は、移動体に装備される測位システムに用いられる慣性計測装置であって、前記移動体の前後方向をX軸、前記移動体の左右方向をY軸、前記X軸と前記Y軸との直交する方向をZ軸としたときに、前記X軸回りの角速度を検出し、第1の角速度信号を出力するX軸角速度センサーと、前記Y軸回りの角速度を検出し、第2の角速度信号を出力するY軸角速度センサーと、前記Z軸回りの角速度を検出し、第3の角速度信号を出力するZ軸角速度センサーと、前記X軸方向の加速度を検出し、第1の加速度信号を出力するX軸加速度センサーと、前記Y軸方向の加速度を検出し、第2の加速度信号を出力するY軸加速度センサーと、前記Z軸方向の加速度を検出し、第3の加速度信号を出力するZ軸加速度センサーと、を備え、前記X軸角速度センサーの前記第1の角速度信号のアラン分散をBISx[deg/時間]とし、前記Y軸角速度センサーの前記第2の角速度信号のアラン分散BISyを[deg/時間]とし、前記Z軸角速度センサーの前記第3の角速度信号のアラン分散をBISz[deg/時間]としたとき、BISz<0.5×BISx、且つ、BISz<0.5×BISy、を満たす、慣性計測装置である。
【0012】
第3の発明によれば、Z軸角速度センサーのアラン分散BISzは、X軸角速度センサーのアラン分散BISx、Y軸角速度センサーのアラン分散BISyに対して小さいので、ヨー角の測定値が、ロール角、ピッチ角より高い精度で得られることになる。また、Z軸角速度センサーのアラン分散BISzを、X軸角速度センサーのアラン分散BISx、Y軸角速度センサーのアラン分散BISy、それぞれの0.5倍未満とすることができる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、BISx>5、BISy>5、且つ、BISz<2.5、を満たす慣性計測装置である。
【0014】
第4の発明によれば、Z軸角速度センサーのアラン分散BISzを、2.5[deg/時間]未満とし、X軸角速度センサーのアラン分散BISx、Y軸角速度センサーのアラン分散BISyを、5[deg/時間]超、とすることができる。
【0015】
第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、Bx>1140[deg/時間]、By>1140[deg/時間]、且つ、Bz<570[deg/時間]、を満たす慣性計測装置である。
【0016】
第5の発明によれば、Z軸角速度センサーのバイアス誤差Bzを、570[deg/時間]未満とし、X軸角速度センサーのバイアス誤差Bx、及びY軸角速度センサーのバイアス誤差Byを、1140[deg/時間]超、とすることができる。
【0017】
第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、前記X軸角速度センサーは、Ngx[個]のセンサー素子を有して構成され、前記Y軸角速度センサーは、Ngy[個]のセンサー素子を有して構成され、前記Z軸角速度センサーは、Ngz[個]のセンサー素子を有して構成され、Ngz>Ngx、且つ、Ngz>Ngy、を満たす慣性計測装置である。
【0018】
第6の発明によれば、Z軸角速度センサーを、X軸角速度センサーおよびY軸角速度センサーより多い個数のセンサー素子で構成することで、Z軸角速度センサーのバイアス誤差BzがX軸角速度センサーおよびY軸角速度センサーのバイアス誤差Bx,Byに対して、小さくなるように構成することができる。
【0019】
第7の発明は、第6の発明において、Ngz≧2、を満たす慣性計測装置である。
【0020】
第7の発明によれば、Z軸角速度センサーを、2[個]以上のセンサー素子を有するように構成することができる。
【0021】
Z軸角速度センサーの構成としては、例えば第8の発明を採用することができる。すなわち、第8の発明は、第1乃至第7の発明の何れかにおいて、水晶の電気軸、機械軸、及び光学軸からなる直交座標系において、前記Z軸角速度センサーは、前記電気軸と前記機械軸とで規定される平面に沿った主面を有する基部と、前記基部から、一方が前記機械軸のプラス方向へ延出され、他方が前記機械軸のマイナス方向へ延出された1対の検出用振動腕と、前記基部から、一方が前記電気軸のプラス方向へ延出され、他方が前記電気軸のマイナス方向へ延出された1対の連結腕と、前記各連結腕から、一方が前記機械軸のプラス方向へ延出され、他方が前記機械軸のマイナス方向へ延出された各1対の駆動用振動腕と、前記基部から延出される少なくとも2本の梁と、前記各梁の先端部に接続される支持部と、を含み、各前記梁の1つである水晶からなる第1の梁が、前記電気軸方向において、前記基部よりプラス側に位置する前記連結腕と、前記機械軸方向において、前記基部よりプラス側に位置する前記検出用振動腕との間の前記基部の外縁から延出され、前記第1の梁は、前記基部から前記電気軸のプラス方向に延出する第1延出部と、前記第1延出部から前記機械軸のプラス方向に延出する第2延出部と、前記第2延出部から前記電気軸のマイナス方向に延出する第3延出部と、を含む、慣性計測装置である。
【0022】
第9の発明は、第8の発明において、前記X軸角速度センサーおよび前記Y軸角速度センサーは、Si−MEMS型角速度センサーであり、前記X軸加速度センサー、前記Y軸加速度センサーおよび前記Z軸加速度センサーは、Si−MEMS型加速度センサーである、慣性計測装置である。
【0023】
第9の発明によれば、X軸角速度センサーおよびY軸角速度センサーを、Si−MEMS型角速度センサーとし、X軸加速度センサー、Y軸加速度センサーおよびZ軸加速度センサーを、Si−MEMS型加速度センサーとすることで、Z軸角速度センサーと比較して低コストに構成することが可能である。
【0024】
第10の発明は、第9の発明において、前記X軸角速度センサー、前記Y軸角速度センサー、前記X軸加速度センサー、前記Y軸加速度センサーおよび前記Z軸加速度センサーを収容する容器、を更に備えた慣性計測装置である。
【0025】
第10の発明によれば、X軸角速度センサー、Y軸角速度センサー、X軸加速度センサー、Y軸加速度センサーおよびZ軸加速度センサーを、容器に収容してパッケージ化することが可能となる。
【0026】
第11の発明は、第1乃至第10の発明の何れかにおいて、前記第1の角速度信号および前記第1の加速度信号は、前記移動体のロール角の算出基準信号となり、前記第2の角速度信号および前記第2の加速度信号は、前記移動体のピッチ角の算出基準信号となる、慣性計測装置である。
【0027】
第11の発明によれば、X軸角速度センサーおよびY軸角速度センサー単独で測定されるロール角およびピッチ角は、ヨー角に比較して低い精度であるが、X軸加速度センサーおよびY軸加速度センサーの加速度信号を基準信号とすることで、これらの基準信号を用いない場合に比べて高い精度でロール角およびピッチ角を得ることが可能となる。
【0028】
第12の発明は、第1乃至第11の発明の何れかの慣性計測装置と、前記慣性計測装置の出力信号に基づいて、加速、制動および操舵のうちの少なくとも1つを制御する制御部と、を具備し、自動運転の実施或いは不実施を、前記慣性計測装置の出力信号に基づいて切り替える、移動体である。
【0029】
第12の発明によれば、移動体の自動運転を高品質に行うことが可能となる。
【0030】
第13の発明は、開口部を有するケースと、前記ケース内に収容された第1乃至第11の発明の何れかの慣性計測装置と、前記ケース内に収容され、前記慣性計測装置の出力信号を処理する処理部と、表示画面を前記開口部に向けて前記ケースに収容された表示部と、前記開口部を塞ぐ透光性カバーと、を備えた携帯型電子機器である。
【0031】
第13の発明によれば、慣性航法を利用した携帯型電子機器を実現できる。
【0032】
第14の発明は、第1乃至第11の発明の何れかの慣性計測装置と、前記慣性計測装置の出力信号に基づいて所定の制御を行う制御部と、を備えた電子機器である。
【0033】
第14の発明によれば、慣性航法を利用した電子機器を実現できる。
【0034】
第15の発明は、第1乃至第11の発明の何れかの慣性計測装置と、前記慣性計測装置の出力信号に基づいて姿勢制御を行う姿勢制御部と、を備えた移動体である。
【0035】
第15の発明によれば、移動体の姿勢制御を高品質に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態の測位システムの機能ブロック図。
図2】第1実施形態のセンサー座標系の説明図。
図3】第1実施形態の位置誤差の説明図。
図4】第1実施形態の慣性航法演算による位置の算出の説明図。
図5】第1実施形態の経過時間とヨー角の誤差との関係の一例。
図6】第1実施形態の経過時間と位置誤差との関係の一例。
図7】第1実施形態のアラン分散の一例。
図8】第1実施形態の経過時間とヨー角の誤差との関係の一例。
図9】第1実施形態の経過時間と位置誤差との関係の一例。
図10】第2実施形態のセンサーユニットの斜視図。
図11】第2実施形態のセンサーユニットの斜視図。
図12】第2実施形態のセンサーユニットの分解斜視図。
図13】第2実施形態の回路基板の斜視図。
図14】第3実施形態の水晶ジャイロセンサー素子の模式平面図。
図15】第4実施形態のジャイロセンサーの斜視図。
図16】第4実施形態のジャイロセンサーの断面図。
図17】第4の実施形態のジャイロセンサーの斜視図。
図18】第5実施形態の物理量センサーの模式平面図。
図19】第6実施形態の物理量検出装置の模式図。
図20】第6実施形態の物理量検出装置の斜視図。
図21】第6実施形態の物理量検出装置の斜視図。
図22】第7実施形態のジャイロセンサー素子の模式平面図。
図23】第8実施形態の物理量センサーの模式平面図。
図24】第9実施形態の物理量センサーの模式平面図。
図25】第10実施形態の物理量センサーの概略平面図。
図26】第10実施形態の物理量センサーの概略断面図。
図27】第11実施形態の移動体測位装置の全体システムを示すブロック図。
図28】第11実施形態の移動体測位装置の作用を示す図。
図29】第12実施形態の電子機器の斜視図。
図30】第13実施形態の電子機器の斜視図。
図31】第14実施形態の携帯型電子機器の平面図。
図32】第14実施形態の携帯型電子機器の概略構成を示すブロック図。
図33】第15実施形態の移動体の斜視図。
図34】第16実施形態のシステムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0038】
[第1実施形態]
<システム構成>
図1は、第1実施形態の測位システム1000の構成を示すブロック図である。測位システム1000は、移動体に装備して用いられ、当該移動体の位置を計測する。移動体としては、自転車、バイク、トラックやバスを含む四輪自動車、トラクター等の農業機械、ブルドーザーやショベルカー等の移動可能な建設機械、などの概水平面である地面を移動する車両であれば何れでも良く、特に限定されない。図1に示すように、測位システム1000は、衛星測位用受信機であるGPS(Global Positioning System)モジュール1002と、慣性計測装置であるIMU(Inertial Measurement Unit)100と、演算部1004とを備える。
【0039】
GPSモジュール1002は、GPS衛星から送信されるGPS衛星信号を受信し、受信したGPS衛星信号に基づき、日時や、緯度経度で表される位置、速度、姿勢を含むGPS測位情報を計測する。なお、衛星測位用受信機はGNSS(Global Navigation Satellite System)の受信機であればよく、GPSではなく、GLONASS(Global Navigation Satellite System)やGALILEO、Beidou(BeiDou Navigation Satellite System)等の他の衛星測位システムを利用した衛星測位用受信機としても良い。
【0040】
IMU100は、角速度センサー110、及び、加速度センサー120を有するセンサーユニットである。
【0041】
角速度センサー110は、IMU100に対応付けられた3次元直交座標系であるセンサー座標系における角速度を計測するセンサーであり、ジャイロセンサーとも呼ばれる。角速度センサー110は、X軸回りの角速度を検出し、第1の角速度信号として出力するX軸角速度センサー112と、Y軸回りの角速度を検出し、第2の角速度信号として出力するY軸角速度センサー114と、Z軸回りの角速度を検出し、第3の角速度信号として出力するZ軸角速度センサー116と、を有する。
【0042】
加速度センサー120は、角速度センサー110と同じ、IMU100に対応付けられた3次元直交座標系であるセンサー座標系における加速度を計測する。加速度センサー120は、X軸方向の加速度を検出し、第1の加速度信号として出力するX軸加速度センサー122と、Y軸方向の加速度を検出し、第2の加速度信号として出力するY軸加速度センサー124と、Z軸方向の加速度を検出し、第3の加速度信号として出力するZ軸加速度センサー126と、を有する。
【0043】
演算部1004は、GPSモジュール1002、及び、IMU100による計測データを用いて、当該測位システム1000の位置を算出する。例えば、IMU100の計測データを用いた慣性航法演算を行って、測位システム1000の位置を算出する。そして、GPSモジュール1002からGPS測位情報が出力されると、このGPS測位情報を用いて、慣性航法演算によって算出した位置を補正する。これは、GPSモジュール1002による測位情報は、IMU100の計測データを用いた慣性航法演算による位置に比較して高精度であるが、IMU100の計測データの出力間隔と比較して、GPS測位情報の出力間隔(測位間隔)が長いためである。例えば、IMU100は10ミリ秒毎に計測データを出力し、GPSモジュール1002は1秒毎にGPS測位情報を出力する。
【0044】
<センサー座標系>
測位システム1000は、IMU100に対応付けられた3次元直交座標系であるセンサー座標系が移動体の方向に対して所定関係を満たすように、当該移動体に固定して装備される。図2は、センサー座標系と移動体1100の移動方向との関係を説明する図である。図2では、測位システム1000が、移動体1100の一例である四輪自動車に装備される例を示している。センサー座標系のX軸は、移動体1100の前後方向とし、前方向(直進方向)をX軸正方向とする。また、センサー座標系のY軸は、移動体1100の左右方向とし、右方向をY軸正方向とする。そして、センサー座標系のZ軸は、X軸及びY軸との直交方向とし、移動体1100の下方向をZ軸正方向とする。
【0045】
第1実施形態では、移動体1100は概水平面を移動するため、XY平面が移動体の移動面となり、Z軸正方向は、重力方向に一致するとみなせる。そして、移動体1100の姿勢は、X軸回りのロール(Roll)角、Y軸回りのピッチ(Pitch)角、Z軸回りのヨー(Yaw)角、で表現される。また、移動体1100は概水平面を移動するので、姿勢であるロール角は移動体1100の左右方向の傾きに相当し、ピッチ角は移動体1100の前後方向の傾き、ヨー角は移動体1100の移動方向の転換或いは方位、に相当する。
【0046】
<角速度センサー>
第1実施形態の特徴として、角速度センサー110は、バイアス誤差(静止時出力誤差)B、及び、バイアス安定性を表すアラン分散BISが、次の特性を有するように構成されている。つまり、Z軸角速度センサー116は、X軸角速度センサー112及びY軸角速度センサー114に比較して“高精度”に構成される。
【0047】
(A)バイアス誤差
X軸角速度センサー112、Y軸角速度センサー114、及び、Z軸角速度センサー116は、X軸角速度センサー112の出力信号のバイアス誤差をBx[deg/秒]、Y軸角速度センサー114の出力信号のバイアス誤差をBy[deg/秒]、Z軸角速度センサー116の出力信号のバイアス誤差をBz[deg/秒]、としたとき、これらのバイアス誤差Bx,By,Bzが、次式(1a)〜(1c)を満たすように構成されている。
P≦(V/Bz)×(1−cos(Bz×T)) …(1a)
Bz<Bx …(1b)
Bz<By …(1c)
式(1a)において、「T」は、GPSモジュール1002の測位間隔[秒]であり、GPSモジュール1002から演算部1004へ測位結果が出力される間隔である。「P」は、移動体1100が、移動速度V[m/秒]でT秒間移動する間の、角速度センサー110の出力信号のバイアス誤差Bに起因する位置誤差[m]である。
【0048】
図3は、位置誤差Pを説明する図である。図3は、移動体1100を上方から俯瞰した図、つまり、センサー座標系におけるXY平面図を示している。実際の移動方向を本来の移動方向として、実線で示している。移動体1100の前方方向がX軸正方向であるため、実際の移動方向もX軸正方向である。時刻tにおける移動体1100の位置M1が既知であるとして、IMU100の計測データを用いた慣性航法演算によって算出される位置であって、時刻tにおける移動体1100の位置を「M2」とする。この位置M2と本来の進行方向との間の距離が、移動体1100が時刻tから時刻tまで移動する間に、角速度センサー110の出力信号のバイアス誤差Bに起因して生じる位置誤差Pである。
【0049】
IMU100の計測データに基づく慣性航法演算で算出される位置は、本来の移動方向に対してずれが生じるが、この位置のずれは、IMU100の計測データに基づく姿勢の誤差によって生じる。具体的には、第1実施形態では、移動体1100は概水平面を移動するので、姿勢であるヨー角の誤差によって生じる。
【0050】
慣性航法演算において、姿勢は、角速度センサー110の出力信号である角速度を時間積分することで算出される。すなわち、X軸角速度センサー112の出力信号を時間積分することでX軸回りであるロール(Roll)角が算出され、Y軸角速度センサー114の出力信号を時間積分することでY軸回りであるピッチ(Pitch)角が算出され、Z軸角速度センサー116の出力信号を時間積分することでZ軸回りであるヨー(Yaw)角が算出される。しかし、角速度センサー110の出力信号はバイアス誤差Bを含むため、算出される姿勢にも誤差が含まれることになる。また、角速度センサー110の出力信号を時間積分することから、時間経過とともに、算出される姿勢に含まれる誤差が増大してゆくことになる。
【0051】
一方で、姿勢は、加速度センサー120の出力信号からも算出することができる。具体的には、加速度センサー120は、常時、重力加速度Gを検出している。すなわち、X軸加速度センサー122は重力加速度のX軸方向成分を検出し、Y軸加速度センサー124は重力加速度GのY軸方向成分を検出し、Z軸加速度センサー126は重力加速度GのZ軸方向成分を検出している。このため、静止状態における加速度センサー120の各軸の出力信号に基づく各軸の重力加速度成分を合成することで、センサー座標系に対する重力加速度Gの方向、つまり、現実空間におけるセンサー座標系の姿勢である移動体1100の姿勢を算出することができる。
【0052】
また、加速度センサー120の出力信号にもバイアス誤差が含まれるため、加速度センサー120の出力信号から算出される姿勢にも誤差が含まれる。しかし、加速度センサー120の出力信号から算出される姿勢に含まれる誤差は、時間経過に伴って増大するような誤差ではなく、経時的には安定した誤差である。従って、加速度センサー120の出力信号から算出した姿勢を補完的に利用することで、角速度センサー110の出力信号のバイアス誤差Bに関わらず、経時的に安定した精度の姿勢の算出が可能である。
【0053】
しかし、第1実施形態のように、概水平面を移動する移動体1100の場合、センサー座標系のZ軸は、重力加速度方向に概一致した方向となる。このため、移動体1100のヨー角が変化しても、重力加速度GのZ軸方向成分は殆ど変化しない。従って、ヨー角については、加速度センサー120の出力信号による補完はほぼ不可能或いは極めて困難である。
【0054】
図3に示したように、移動体1100が概水平面を移動する場合、IMU100の計測データを用いた慣性航法演算で算出される位置のずれは、姿勢であるヨー角の誤差によって生じる。ヨー角は、Z軸角速度センサー116の出力信号から算出されるが、Z軸角速度センサー116の出力信号のバイアス誤差Bzが積算されることで、ヨー角の誤差が時間経過とともに増大してゆく。
【0055】
図4は、慣性航法演算による位置の算出を説明する図である。移動体1100は、概水平面を移動速度V[m/秒]で直線移動しているとする。また、Z軸角速度センサー116のバイアス誤差をBz[deg/秒]とする。時刻tにおける移動体1100の位置M1が既知であるとして、IMU100の計測データを用いた慣性航法演算によって移動体1100の位置を算出すると、時間経過につれて姿勢であるヨー角の誤差が増加してゆくため、その位置の軌跡は、直線方向である本来の移動方向に対して徐々に離れるような軌跡を描く。
【0056】
慣性航法演算では、所定の微少時間Δt毎に、Z軸角速度センサー116の出力信号からヨー角を求め、求めたヨー角の方向に移動速度Vで移動したとして、次の時刻tの位置を算出する、ことを繰り返す。微少時間Δt[秒]の間に生じるヨー角の誤差Δθ[deg]は、次式(2)となる。
Δθ=Bz×Δt …(2)
そして、微少時間Δt[秒]の間に生じる位置誤差Δp[m]は、次式(3)となる。
Δp=V×T×sinΔθ …(3)
【0057】
この位置誤差Δpを、時刻tから、T秒後の時刻t(=t+T)まで時間積分することで、移動速度V[m/秒]で、時刻tから時刻tまでのT秒間に移動した場合に生じる位置誤差P[m]が、次式(4)のように求められる。
P=(V/Bz)×(1−cos(Bz×T)) …(4)
【0058】
上述のように、GPSモジュール1002から測位間隔T毎に出力される高精度のGPS測位情報を用いて、慣性航法演算で算出した位置を修正することができる。そのため、少なくとも、測位間隔Tの間に生じる位置誤差Pが、所定の許容最大位置誤差Pp以下となればよい。許容最大位置誤差Ppをどの程度とするかは、移動体1100の使用目的等によって決まる。従って、式(4)によって算出される位置誤差Pが所定の許容最大位置誤差Pp以下となることを表す式(1a)が、Z軸角速度センサー116のバイアス誤差Bzが満たすべき条件式となる。
【0059】
また、X軸角速度センサー112のバイアス誤差Bx、及び、Y軸角速度センサー114のバイアス誤差Byについては、上述のように、加速度センサー120の出力信号によって補完することができるので、Z軸角速度センサー116のバイアス誤差Bzより低い精度であって良い。但し、水平状態にある移動体1100が横転したと検出されてしまうほどの低い精度は望ましくないので、X軸角速度センサー112のバイアス誤差Bx、及び、Y軸角速度センサー114のバイアス誤差Byは、次式(5a),(5b)を満たすことを条件とする。
T×Bx<90[度] ・・(5a)
T×By<90[度] ・・(5b)
【0060】
続いて、角速度センサー110のバイアス誤差Bx,By,Bzの具体例を考察する。具体的には、移動体として、自動運転制御される農業機械や移動可能な建設機械、運搬作業車を想定する。近年、農業機械や建設機械などにおける自動運転制御の実現のため、これに装備する測位システム1000の計測位置にセンチメートル・オーダーの精度が求められている。つまり、田植え機等の農業機械や、ショベルカー等の建設機械、フォークリフト等の運搬作業車などを自動運転制御する場合、移動速度は時速15km程度以下の低速であるが、その使用目的から、位置の精度が非常に重要である。この位置精度の要求に応えるために必要な角速度センサー110のバイアス誤差Bx,By,Bzを求めてみる。すなわち、移動体1100の移動速度Vが、農業機械や建設機械、運搬作業車の一般的な移動速度である15[km/h]であるとして、姿勢であるヨー角の誤差と、このヨー角の誤差によって生じる位置誤差と、を算出した。算出にあたり、バイアス誤差Bzが、それぞれ、0[deg/時間]、360[deg/時間]、570[deg/時間]、760[deg/時間]、890[deg/時間]、1010[deg/時間]、1140[deg/時間]、である7種類のZ軸角速度センサー116を想定した。
【0061】
図5は、経過時間と、姿勢であるヨー角の誤差との関係を示すグラフであり、図6は、経過時間と、位置誤差との関係を示すグラフである。位置誤差は、バイアス誤差Bz、及び、移動速度V、から、式(4)に従って求められる。図5に示すように、ヨー角は、Z軸角速度センサー116の出力信号を時間積分して求められるので、ヨー角の誤差は、経過時間に比例して増加している。また、経過時間が同じであっても、バイアス誤差Bzが大きいほど、ヨー角の誤差も大きくなる。従って、図6に示すように、位置誤差も、経過時間の増加に伴って大きくなる、また、経過時間が同じであっても、バイアス誤差Bzが大きいほど、ヨー角の誤差が大きくなるので、位置誤差も大きくなる。
【0062】
一般的に、GPSモジュール1002の測位間隔Tは、1[秒]である。この測位間隔Tの間は、GPS測位情報が出力されない時間間隔であり、GPS測位情報に基づく位置の補正が行えない期間に相当する。位置精度がセンチメートル・オーダーの精度を満たすためには、この測位間隔Tの間の位置誤差を10cm以下とする必要がある。従って、図6によれば、経過時間がGPSモジュール1002の測位間隔Tである1[秒]の時点における位置誤差が100mm(=10cm)以下とするには、Z軸角速度センサー116のバイアス誤差Bzは、570[deg/時間]以下である必要がある。
【0063】
そして、X軸角速度センサー112のバイアス誤差Bx、及び、Y軸角速度センサー114のバイアス誤差Byは、これより大きい1140[deg/時間]を超えていても問題ない。つまり、Z軸角速度センサー116のバイアス誤差Bzは、X軸角速度センサー112のバイアス誤差Bx、及び、Y軸角速度センサー114のバイアス誤差Byより小さい必要がある。具体的には、次式(6a)〜(6c)を満たすようにすれば良い。
Bx>1140[deg/時間] …(6a)
By>1140[deg/時間] …(6b)
Bz<570[deg/時間] …(6c)
【0064】
これによれば、次式(7a),(7b)に示すように、バイアス誤差Bzは、バイアス誤差Bx,Byの50%以下(0.5≒570/1140)であることが望ましいといえる。
Bz<0.5×Bx …(7a)
Bz<0.5×By …(7b)
【0065】
(B)バイアス安定性(アラン分散)
次に、測位システム1000を装備する移動体を、例えば、自動運転制御される農業機械や建設機械等であるとする。農業機械や建設機械は、周囲の建物や森林等によるマルチパス等に起因してGPS衛星信号を受信できない環境で利用されることが想定される。このような環境であっても、要求される計測位置の長期安定性に係る精度を確保できることを、以下に説明する。
【0066】
具体的には、X軸角速度センサー112、Y軸角速度センサー114、及び、Z軸角速度センサー116は、X軸角速度センサー112の出力信号のアラン分散をBISx[deg/時間]、Y軸角速度センサー114の出力信号のアラン分散をBISy[deg/時間]、Z軸角速度センサー116の出力信号のアラン分散をBISz[deg/時間]、としたとき、これらのアラン分散BISx、BISy、BISzが、次式(8a),(8b)を満たすように構成されている。
BISz<0.5×BISx …(8a)
BISz<0.5×BISy …(8b)
【0067】
バイアス安定性を決定する1/fノイズ(ゆらぎ)は、カルマンフィルター等のバイアス誤差Bの推定手段においてモデル化されない、つまり、除去されないため、長期間に亘るバイアス誤差の積算による姿勢の誤差の増大の要因となる。
【0068】
図7は、アラン分散曲線の一例であり、特性が異なる3種類の角速度センサーを例示している。一般的に、アラン分散σは、時定数(平均化時間)τの増加に伴って減少したのち、一定値に収束するような曲線を描く。この一定値を、第1実施形態のバイアス安定性を表すアラン分散BISとする。図7の例では、アラン分散BISが、それぞれ、2.5[deg/時間],5[deg/時間],10[deg/時間]、である3種類の角速度センサーについて例示している。
【0069】
続いて、角速度センサー110のアラン分散BISx,BISy,BISzの具体例を考察する。上述のバイアス誤差Bzの具体例の考察と同様に、移動体として、自動運転制御される農業機械や建設機械、運搬作業車を想定する。そして、移動体の移動速度Vを、農業機械や建設機械、運搬作業車が自動運転で作業を実施する際の高めの速度である15[km/h]として、姿勢であるヨー角の誤差と、位置誤差と、を算出した。算出にあたり、アラン分散BISzが、2.5[deg/時間]、5[deg/時間]、10[deg/時間]、である3種類のZ軸角速度センサー116を想定した。
【0070】
図8は、経過時間と、姿勢であるヨー角の誤差との関係を示すグラフであり、図9は、経過時間と、位置誤差との関係を示すグラフである。図8に示すように、ヨー角の誤差は、経過時間の増加に伴って増加している。また、経過時間が同じであっても、アラン分散BISzが大きいほど、ヨー角の誤差も大きくなる。従って、図9に示すように、位置誤差も、経過時間の増加に伴って大きくなる、また、経過時間が同じであっても、アラン分散BISzが大きいほど、位置誤差も大きくなる。
【0071】
アラン分散による位置誤差は、比較的長期間に亘り、角速度センサー110のバイアス誤差Bが積算されるような場合に問題となる。想定する農業機械や建設機械には、周囲の建物や森林等によるマルチパス等に起因したGPS衛星信号を受信できない或いは受信信号が弱信号となる環境で利用されること、作業運搬車はGPS衛星信号を受信できない屋内で利用されること、が想定される。そこで、GPS衛星信号が30秒間受信されない場合に、自動運転として誤差が過大に過ぎると判断され得る15[cm]程度の位置誤差を担保することを考えてみる。
【0072】
図9によれば、経過時間が30秒の時点における位置誤差が15cm(=150mm)以下とするには、Z軸角速度センサー116のアラン分散BISzは、2.5[deg/時間]である必要がある。そして、X軸角速度センサー112のアラン分散BISx、及び、Y軸角速度センサー114のアラン分散BISyは、これより大きい5[deg/時間]以上であっても問題ない。つまり、Z軸角速度センサー116のアラン分散BISzは、X軸角速度センサー112のアラン分散BISx、及び、Y軸角速度センサー114のBISyより小さい必要がある。具体的には、次式(9a)〜(9c)を満たすようにすれば良い。
BISx≧5[deg/時間] …(9a)
BISy≧5[deg/時間] …(9b)
BISz≦2.5[deg/時間] …(9c)
【0073】
これによれば、上式(8a),(8b)に示したように、アラン分散BISzは、アラン分散BISx,BISyの50%(0.5=2.5/5)以下であることが望ましいといえる。
【0074】
<作用効果>
このように、第1実施形態において、Z軸角速度センサー116は、バイアス誤差B及びアラン分散BISが、X軸角速度センサー112及びY軸角速度センサー114よりも小さく構成されている。つまり、Z軸角速度センサー116は、X軸角速度センサー112及びY軸角速度センサー114より“高精度”に構成されている。
【0075】
具体的には、Z軸角速度センサー116は、バイアス誤差Bzが、X軸角速度センサー112、Y軸角速度センサー114のバイアス誤差Bx,Byよりも小さく、且つ、測位システム1000を装着した移動体がGPSモジュール1002の測位間隔であるT[秒]移動する間の位置誤差を、所定の許容最大位置誤差Pp以下とする値である。これにより、測位システム1000による位置誤差を、許容最大位置誤差Pp以下とすることができる。また、Z軸角速度センサー116のアラン分散BISzは、X軸角速度センサー112、Y軸角速度センサー114のアラン分散BISxz,BISyよりも小さい。これにより、所定時間の間、GPS衛星信号が受信できないことがあっても、測位システム1000による位置誤差を所定の許容範囲内とすることができる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。以降では、第1実施形態との差異について主に述べることとし、第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第2実施形態は、第1実施形態におけるIMU100であるセンサーユニットの実施形態である。
【0077】
<センサーユニットの概要>
図10は、第2実施形態に係るセンサーユニット160の被装着面19への固定状態を説明するための斜視図である。また図11は、センサーユニット160の概要を図10の被装着面19側からみた斜視図である。まず、第2実施形態に係るセンサーユニット160の概要について説明する。
【0078】
図10図11において、センサーユニット160は、移動体としての自動車や、ロボットなどの運動体(被装着装置)の姿勢や、挙動(慣性運動量)を検出する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)である。センサーユニット160は、複数の慣性センサーを備えており、例えば、互いに直交する3軸の各軸の方向に作用する加速度を検出する3軸の加速度センサー120と、各軸回りに作用する角速度を検出する3軸の角速度センサー110と、を備えている。
【0079】
センサーユニット160は、平面形状が四角形状の直方体であり、四角形の対角方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、固定部としてのネジ穴2が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2に、2本のネジ5を通して、自動車などの被装着体(装置)の被装着面19に、センサーユニット160を固定した状態で使用する。なお、上記の形状は一例であり、部品の選定や設計変更により、例えば、各種ウェアラブル電子機器、スマートフォン、デジタルカメラ、等に搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
【0080】
図11に示すように、センサーユニット160の被装着面側からみた表面には、開口部4が形成されている。開口部4の内部(内側)には、プラグ型(オス)のコネクター10が配置されている。コネクター10は、複数のピンが並んで配置されている。コネクター10には、被装着装置からソケット型(メス)のコネクター(図示せず)が接続されて、センサーユニット160への電力供給やセンサーユニット160が検出した検出データの出力などの電気信号の送受信が、センサーユニット160と被装着装置との間で行われる。
【0081】
<センサーユニットの構成>
図12は、図11と同じ方向からみて示すセンサーユニット160の分解斜視図である。続いて、図12を主体に、適宜図10および図11を交えながらセンサーユニット160の構成について詳細に説明する。図12に示すように、センサーユニット160は、アウターケース1、環状の緩衝材6、センサーモジュール7などから構成されている。換言すれば、アウターケース1の内部3に、環状の緩衝材6を介在させて、センサーモジュール7を搭載した構成となっている。センサーモジュール7は、インナーケース8と、回路基板9とから構成されている。なお、説明を解り易くするために、部位名をアウターケース、インナーケースとしているが、第1ケース、第2ケースと呼び換えても良い。
【0082】
アウターケース1は、アルミニウムを箱状に削り出した台座である。材質は、アルミニウムに限定するものではなく、亜鉛やステンレスなど他の金属や、樹脂、または、金属と樹脂の複合材などを用いても良い。アウターケース1の外形は、前述したセンサーユニット160の全体形状と同様に、平面形状が四角形状の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、それぞれネジ穴2が形成されている。なお、アウターケース1の外形が、平面形状が四角形状の直方体で蓋のない箱状である一例について説明したが、これに限らず、アウターケース1の外形の平面形状は、例えば6角形や8角形などの多角形であってもよいし、その多角形の頂点部分の角部が面取りされていたり、各辺が曲線状であったり、外形が円形状であってもよい。
【0083】
<回路基板の構成>
図13は、回路基板9の斜視図である。以下に、複数の慣性センサーが搭載されている回路基板9の構成について説明する。回路基板9は、複数のスルーホールが形成された多層基板であり、ガラスエポキシ基板を用いている。なお、ガラエポ基板に限定するものではなく、複数の慣性センサーや、電子部品、コネクターなどを実装可能なリジットな基板であれば良い。例えば、コンポジット基板や、セラミック基板を用いても良い。回路基板9の表面(インナーケース8側の面)には、コネクター10、3軸の角速度センサーと3軸の加速度センサーが収納されている多軸の慣性センサー17と、高精度角速度センサー18などが実装されている。コネクター10は、プラグ型(オス)のコネクターであり、複数のピンが等ピッチで配置されている2列の接続端子を備えている。端子数は、設計仕様に応じて適宜変更しても良い。
【0084】
高精度角速度センサー18は、重力方向であるZ軸方向における1軸の角速度を検出するジャイロセンサーである。センサーユニット160が搭載されている移動体において、予め設定された移動体の直進方向をX軸、前記移動体の重力方向をZ軸、前記X軸と前記Z軸とに直交するY軸としたとき、Z軸回りの角速度を検出し、Z軸回りの角速度信号を出力するZ軸角速度センサーとして機能し、当該Z軸回りの角速度信号に基づいて、センサーユニット160は、移動体のZ軸回りのヨー(YAW)角を算出する。
【0085】
高精度角速度センサー18の好適な例としては、水晶を材料とし、振動する物体に加わるコリオリの力から角速度を検出する共振周波数変化型水晶ジャイロセンサーを用いている。また、高精度角速度センサー18は、水晶ジャイロセンサーに限定するものではなく、静電容量変化型Si(シリコン)−MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)角速度センサーが複数個、マルチ接続されてなるマルチのジャイロセンサーであっても良い。
【0086】
また、多軸の慣性センサー17は、X軸回りの角速度を検出し、第1の角速度信号を出力するX軸角速度センサー112と、Y軸回りの角速度を検出し、第2の角速度信号を出力するY軸角速度センサー114と、Z軸回りの角速度を検出し、第3の角速度信号を出力するZ軸角速度センサー116と、X軸方向での加速度を検出し、第1の加速度信号を出力するX軸加速度センサー122と、Y軸方向での加速度を検出し、第2の加速度信号を出力するY軸加速度センサー124と、Z軸方向での加速度を検出し、第3の加速度信号を出力するZ軸加速度センサー126と、を含む。ここで、単独で回路基板9に実装されている高精度角速度センサー18が、Z軸回りの角速度を検出し、Z軸回りの角速度信号を出力するZ軸角速度センサー116として機能しているので、多軸の慣性センサー17には、Z軸角速度センサーは、必ずしも搭載されている必要はない。多軸の慣性センサー17にZ軸角速度センサーが搭載されている場合は、設計仕様等に応じて、高精度角速度センサー18と、機能的な役割を適宜分担してもよい。
【0087】
多軸の慣性センサー17に搭載されている加速度センサー120は、1デバイス(1チップ)で、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の加速度を検出(検知)可能な、静電容量変化型Si−MEMS加速度センサーを用いている。つまり、多軸の慣性センサー17に搭載されている加速度センサー120は、X軸方向での加速度を検出し、第1の加速度信号を出力するX軸加速度センサー122と、Y軸方向での加速度を検出し、第2の加速度信号を出力するY軸加速度センサー124と、Z軸方向での加速度を検出し、第3の加速度信号を出力するZ軸加速度センサー126と、を含む。
【0088】
なお、この静電容量変化型Si−MEMS加速度センサーに限定するものではなく、加速度が検出可能なセンサーであれば良い。例えば、周波数変化型の水晶加速度センサー、ピエゾ抵抗型加速度センサー、及び熱検知型加速度センサーであっても良いし、または、前述の高精度角速度センサー18のように、各軸ごとに1つの加速度センサーを設ける構成であっても良い。
【0089】
回路基板9の裏面(アウターケース1側の面)には、制御IC11が実装されている。制御IC11は、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、センサーユニット160の各部を制御する。記憶部には、加速度、および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。なお、回路基板9には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
【0090】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を説明する。以降では、第1及び第2実施形態との差異について主に述べることとし、第1及び第2実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第3実施形態は、第2実施形態における高精度角速度センサー18である水晶ジャイロセンサー素子の実施形態である。
【0091】
<高精度角速度センサーの構成>
第3実施形態の高精度角速度センサー18において、材料に水晶(SiO)を採用することにより、水晶の結晶性の高さから優れた高いQ値を有し、インピーダンス特性や周波数温度特性が広い温度範囲で安定した特性を示すことができる。一般的に、水晶のQ値は約30,000であるのに対して、静電容量型角速度センサー素子を構成するSi−MEMSのQ値は約5,000であり、水晶のQ値の6分の一と、極めて低い。水晶のQ値は、Si−MEMSのQ値よりも極めて高いため、水晶で構成された高精度角速度センサー18においては、Si−MEMSの駆動電圧よりも低い駆動電圧でも振幅が大きく、ノイズの小さい振動特性が得られるため、Si−MEMSに比べてS/N比が大きい優れた特性が得られる。
【0092】
図14は、第3実施形態の水晶ジャイロセンサー素子200を示す模式平面図である。水晶ジャイロセンサー素子200は、圧電材料である水晶を基材(主要部分を構成する材料)として形成されている。水晶は、電気軸と呼ばれるX軸、機械軸と呼ばれるY軸及び光学軸と呼ばれるZ軸を有している。そして、水晶ジャイロセンサー素子200は、水晶結晶軸において直交するX軸及びY軸で規定される平面に沿って切り出されて平板状に加工され、平面と直交するZ軸方向に所定の厚みを有している。なお、所定の厚みは、発振周波数(共振周波数)、外形サイズ、加工性などにより適宜設定される。
【0093】
第3実施形態で述べるX軸、Y軸およびZ軸は、水晶の結晶軸である電気軸、機械軸および光学軸を示すものであり、前述の第1実施形態において述べているIMU100に対応付けられた3次元直交座標系であるセンサー座標系におけるX軸、Y軸およびZ軸とは、意味を異にするものであることを付言しておく。
【0094】
また、水晶ジャイロセンサー素子200をなす平板は、水晶からの切り出し角度の誤差を、X軸、Y軸およびZ軸の各々につき多少の範囲で許容できる。例えば、X軸を中心に0度から2度の範囲で回転して切り出したものを使用することができる。Y軸及びZ軸についても同様である。水晶ジャイロセンサー素子200は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング(ウエットエッチングまたはドライエッチング)により形成されている。なお、水晶ジャイロセンサー素子200は、1枚の水晶ウエハーから複数個取り出すことが可能である。
【0095】
図14に示すように、水晶ジャイロセンサー素子200は、所謂、ダブルT型と呼ばれる構成となっている。水晶ジャイロセンサー素子200は、中心部分に位置する基部210と、基部210からY軸に沿って、直線状に、一方がY軸のプラス方向へ延出され、他方がY軸のマイナス方向へ延出された1対の検出用振動腕211a,211bとを備える。更に、水晶ジャイロセンサー素子200は、検出用振動腕211a,211bと直交するように、基部210からX軸に沿って、直線状に、一方がX軸のプラス方向へ延出され、他方がX軸のマイナス方向へ延出された1対の連結腕213a,213bを備える。更に、水晶ジャイロセンサー素子200は、検出用振動腕211a,211bと平行になるように、各連結腕213a,213bの先端側からY軸に沿って、直線状に、一方がY軸のプラス方向へ延出され、他方がY軸のマイナス方向へ延出された各1対の駆動用振動腕214a,214b,215a,215bを備える。
【0096】
また、水晶ジャイロセンサー素子200は、検出用振動腕211a,211bに、図示しない検出電極が形成され、駆動用振動腕214a,214b,215a,215bに、図示しない駆動電極が形成されている。水晶ジャイロセンサー素子200は、検出用振動腕211a,211bで、角速度を検出する検出振動系を構成し、連結腕213a,213bと駆動用振動腕214a,214b,215a,215bとで、水晶ジャイロセンサー素子200を駆動する駆動振動系を構成している。
【0097】
また、検出用振動腕211a,211bのそれぞれの先端部には、重り部212a,212bが形成され、駆動用振動腕214a,214b,215a,215bのそれぞれの先端部には、重り部216a,216b,217a,217bが形成されている。これにより、水晶ジャイロセンサー素子200は、小型化および角速度の検出感度の向上が図られている。なお、検出用振動腕211a,211bには、重り部212a,212bが含まれ、駆動用振動腕214a,214b,215a,215bには、重り部216a,216b,217a,217bが含まれている。
【0098】
さらに、水晶ジャイロセンサー素子200は、基部210から4本の梁220a、220b,221a,221bが延出されている。梁220aは、連結腕213aと検出用振動腕211aとの間の基部210の外縁から延出されている。第1の梁としての梁220bは、X軸方向において、基部210よりプラス側に位置する連結腕213bと、Y軸方向において、基部210よりプラス側に位置する検出用振動腕211aとの間の基部210の外縁から延出されている。梁221aは、連結腕213aと検出用振動腕211bとの間の基部210の外縁から延出されている。そして、第2の梁としての梁221bは、X軸方向において、基部210よりプラス側に位置する連結腕213bと、Y軸方向において、基部210よりマイナス側に位置する検出用振動腕211bとの間の基部210の外縁から延出されている。
【0099】
梁220bは、基部210からX軸に沿って、X軸のプラス方向に延出する第1延出部220b1と、第1延出部220b1の先端部からY軸に沿って、Y軸のプラス方向に延出する第2延出部220b2と、第2延出部220b2の先端部からX軸に沿って、X軸のマイナス方向に延出する第3延出部220b3とを含む第1折り返し部220cを有して構成されている。
【0100】
梁221bは、基部210からX軸に沿って、X軸のプラス方向に延出する第4延出部221b1と、第4延出部221b1の先端部からY軸に沿って、Y軸のマイナス方向に延出する第5延出部221b2と、第5延出部221b2の先端部からX軸に沿って、X軸のマイナス方向に延出する第6延出部221b3とを含む第2折り返し部221cを有して構成されている。
【0101】
なお、水晶ジャイロセンサー素子200の各梁220a、220b,221a,221bは、水晶ジャイロセンサー素子200の重心Gに対して回転対称である。具体的には、梁220aと梁221bとが、水晶ジャイロセンサー素子200の重心Gを回転中心として回転対称形状であり、梁221aと梁220bとが、水晶ジャイロセンサー素子200の重心Gを回転中心として回転対称形状である。これにより、梁220aには、第2折り返し部221cと回転対称形状の折り返し部220dが形成され、梁221aには、第1折り返し部220cと回転対称形状の折り返し部221dが形成されている。
【0102】
梁220a、220bの先端部は、Y軸方向において、検出用振動腕211aよりプラス側に位置しX軸に沿って延在する支持部222に接続され、梁221a,21bの先端部は、Y軸方向において、検出用振動腕211bよりマイナス側に位置しX軸に沿って延在する支持部223に接続されている。なお、支持部222と支持部223とは、水晶ジャイロセンサー素子200の重心Gを回転中心として、回転対称形状となっていることが、バランス上好ましい。水晶ジャイロセンサー素子200は、支持部222,223が後述する支持台などに固定されることにより、支持される。
【0103】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態を説明する。以降では、第1乃至第3実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第3実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第4実施形態は、第2実施形態における高精度角速度センサー18である物理量センサーの実施形態である。
【0104】
図15図16図17に示す電子デバイスの一例としてのジャイロセンサー(物理量センサー)300は、角速度を検出する機能素子としての水晶ジャイロセンサー素子32と水晶ジャイロセンサー素子32を支持する支持部を構成する第1支持基材39aおよび第2支持基材39bと、水晶ジャイロセンサー素子32および第1支持基材39aと第2支持基材39bとに分割された支持部を一括して収納するパッケージ35と、を備えている。水晶ジャイロセンサー素子32は、例えば、第3実施形態における水晶ジャイロセンサー素子200である。パッケージ35は、ベース36およびベース36に接合されるリッド37を有している。
【0105】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態を説明する。以降では、第1乃至第4実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第4実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第5実施形態は、第2実施形態における高精度角速度センサー18である物理量センサーの実施形態である。
【0106】
図18に示す物理量センサー400は、Z軸回りの角速度ωzを検出することのできるSi−MEMS型角速度センサー素子である。
【0107】
図18に示すように、素子部404の形状は、仮想直線αに対して対称である。また、素子部404は、仮想直線αの両側に配置された駆動部41A、41Bを有している。駆動部41Aは、歯状の可動駆動電極411Aと、歯状をなし可動駆動電極411Aと噛み合って配置された固定駆動電極412Aと、を有している。同様に、駆動部41Bは、歯状の可動駆動電極411Bと、歯状をなし可動駆動電極411Bと噛み合って配置された固定駆動電極412Bと、を有している。
【0108】
また、固定駆動電極412Aは、可動駆動電極411Aよりも外側(仮想直線αから遠い側)に位置し、固定駆動電極412Bは、可動駆動電極411Bよりも外側(仮想直線αから遠い側)に位置している。また、固定駆動電極412A、412Bは、それぞれ、マウント221の上面に接合され、基板402に固定されている。また、可動駆動電極411A、411Bは、それぞれ、配線73と電気的に接続されており、固定駆動電極412A、412Bは、それぞれ、配線74と電気的に接続されている。
【0109】
また、素子部404は、駆動部41Aの周囲に配置された4つの固定部42Aと、駆動部41Bの周囲に配置された4つの固定部42Bと、を有している。そして、各固定部42A、42Bは、マウントの上面に接合され、基板402に固定されている。
【0110】
また、素子部404は、各固定部42Aと可動駆動電極411Aとを連結する4つの駆動バネ43Aと、各固定部42Bと可動駆動電極411Bとを連結する4つの駆動バネ43Bと、を有している。各駆動バネ43AがX軸方向に弾性変形することで可動駆動電極411AのX軸方向への変位が許容され、各駆動バネ43BがX軸方向に弾性変形することで可動駆動電極411BのX軸方向への変位が許容される。
【0111】
配線73、74を介して可動駆動電極411A、411Bと固定駆動電極412A、412Bとの間に駆動電圧を印加すると、可動駆動電極411Aと固定駆動電極412Aとの間および可動駆動電極411Bと固定駆動電極412Bとの間にそれぞれ静電引力が発生し、可動駆動電極411Aが駆動バネ43AをX軸方向に弾性変形させつつX軸方向に振動すると共に、可動駆動電極411Bが駆動バネ43BをX軸方向に弾性変形させつつX軸方向に振動する。駆動部41A、41Bは、仮想直線αに対して対称的に配置されているため、可動駆動電極411A、411Bは、互いに接近、離間を繰り返すようにX軸方向に逆相で振動する。そのため、可動駆動電極411A、411Bの振動がキャンセルされ、振動漏れを低減することができる。以下では、この振動モードを駆動振動モードとも言う。
【0112】
なお、第5実施形態の物理量センサー400では、静電引力によって駆動振動モードを励振させる静電駆動方式となっているが、駆動振動モードを励振させる方式としては、特に限定されず、例えば、圧電駆動方式、磁場のローレンツ力を利用した電磁駆動方式等を適用することもできる。
【0113】
また、素子部404は、駆動部41A、41Bの間に配置された検出部44A、44Bを有している。検出部44Aは、歯状に配置された複数の電極指を備えた可動検出電極441Aと、歯状に配置された複数の電極指を備え可動検出電極441Aの電極指と噛み合って配置された固定検出電極442A、443Aと、を有している。固定検出電極442A、443Aは、Y軸方向に並んで配置され、可動検出電極441Aの中心に対してY軸方向プラス側に固定検出電極442Aが位置し、Y軸方向マイナス側に固定検出電極443Aが位置している。また、固定検出電極442A、443Aは、それぞれ、可動検出電極441AをX軸方向両側から挟み込むようにして1対配置されている。
【0114】
なお、可動検出電極441Aは、可動駆動電極411Aと異なる質量を有している。第5実施形態では、可動検出電極441Aの質量は、可動駆動電極411Aの質量よりも大きい。ただし、これに限定されず、可動検出電極441Aの質量は、可動駆動電極411Aの質量と等しくてもよいし、可動駆動電極411Aの質量よりも小さくてもよい。
【0115】
同様に、検出部44Bは、歯状に配置された複数の電極指を備えた可動検出電極441Bと、歯状に配置された複数の電極指を備え可動検出電極441Bの電極指と噛み合って配置された固定検出電極442B、443Bと、を有している。固定検出電極442B、443Bは、Y軸方向に並んで配置され、可動検出電極441Bの中心に対してY軸方向プラス側に固定検出電極442Bが位置し、Y軸方向マイナス側に固定検出電極443Bが位置している。また、固定検出電極442B、443Bは、それぞれ、可動検出電極441BをX軸方向の両側から挟み込むようにして1対配置されている。
【0116】
なお、可動検出電極441Bは、可動駆動電極411Bと異なる質量を有している。第5実施形態では、可動検出電極441Bの質量は、可動駆動電極411Bの質量よりも大きい。ただし、これに限定されず、可動検出電極441Bの質量は、可動駆動電極411Bの質量と等しくてもよいし、可動駆動電極411Bの質量よりも小さくてもよい。
【0117】
可動検出電極441A、441Bは、それぞれ、配線73と電気的に接続され、固定検出電極442A、443Bは、それぞれ、配線75と電気的に接続され、固定検出電極443A、442Bは、それぞれ、配線76と電気的に接続されている。物理量センサー400の駆動時には、可動検出電極441Aと固定検出電極442Aとの間および可動検出電極441Bと固定検出電極443Bとの間に静電容量Caが形成され、可動検出電極441Aと固定検出電極443Aとの間および可動検出電極441Bと固定検出電極442Bとの間に静電容量Cbが形成される。
【0118】
また、素子部404は、検出部44A、44Bの間に配置された2つの固定部451、452を有している。固定部451、452は、それぞれ、マウントの上面に接合され、基板402に固定されている。固定部451、452は、Y軸方向に並び、間隔を空けて配置されている。なお、第5実施形態では、固定部451、452を介して可動駆動電極411A、411Bや可動検出電極441A、441Bが配線73と電気的に接続されている。
【0119】
また、素子部404は、可動検出電極441Aと固定部42A、451、452とを接続する4つの検出バネ46Aと、可動検出電極441Bと固定部42B、451、452とを接続する4つの検出バネ46Bと、を有している。各検出バネ46AがX軸方向に弾性変形することで可動検出電極441AのX軸方向への変位が許容され、Y軸方向に弾性変形することで可動検出電極441AのY軸方向への変位が許容される。同様に、各検出バネ46BがX軸方向に弾性変形することで可動検出電極441BのX軸方向への変位が許容され、Y軸方向に弾性変形することで可動検出電極441BのY軸方向への変位が許容される。
【0120】
また、素子部404は、駆動部41Aと検出部44Aとの間に位置し、可動駆動電極411Aと可動検出電極441Aとを接続する逆相バネ47Aと、駆動部41Bと検出部44Bとの間に位置し、可動駆動電極411Bと可動検出電極441Bとを接続する逆相バネ47Bと、を有している。可動検出電極441Aは、逆相バネ47AがX軸方向に弾性変形することで可動駆動電極411Aに対してX軸方向に変位することができる。同様に、可動検出電極441Bは、逆相バネ47BがX軸方向に弾性変形することで可動駆動電極411Bに対してX軸方向に変位することができる。
【0121】
Si−MEMS型角速度センサー素子を、水晶ジャイロセンサー素子と同等な駆動電圧(例えば1.8V)で駆動させると安定した振動特性が得られないため、駆動電圧(例えば1.8V)に対して、更にバイアス生成回路を用いて、十数Vのバイアス電圧(例えば15V)を生成してSi−MEMS型角速度センサー素子を駆動させる必要が生じる。しかしながら、バイアス生成回路に起因して発生するノイズが大きくなるため、S/N比(Signal to Noise Ratio)を大きくすることができず、水晶ジャイロセンサー素子のような低ノイズの電気的特性を得ることは困難である。
【0122】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態を説明する。以降では、第1乃至第5実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第4実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第6実施形態は、第2実施形態における高精度角速度センサー18である物理量検出装置の実施形態である。
【0123】
第6の実施形態の物理量検出装置300は、複数の物理量検出素子302がマルチ接続されてなる。物理量検出素子302は、例えば、第5実施形態における物理量センサー400である。
【0124】
このように構成されている物理量検出装置300では、複数の物理量検出素子302が端子307(出力信号用),端子308(GND(グランド)端子)を介して物理量検出回路の端子XP,XNと電気的に接続されているので、物理量検出素子302の個数をM、M個の物理量検出素子302から出力される信号に含まれる物理量成分をそれぞれs1、s2、…、sMとすると、物理量検出回路の端子XP,XNから入力される信号に含まれる物理量成分Sは次式(10)で表される。
【数1】
【0125】
M個の物理量検出素子302の構造が同じであり、式(10)において、s1≒s2=…=sM=sとすると、式(10)は次式(11)のように変形される。
【数2】
【0126】
一方、M個の物理量検出素子302から物理量検出回路の端子307,308を介して同時に出力される白色雑音成分には相関がない。従って、M個の物理量検出素子302から出力される信号に含まれる白色雑音成分をそれぞれn1、n2、…、nMとすると、物理量検出回路の端子XP,XNから入力される信号に含まれる白色雑音成分Nは次式(12)で表される。
【数3】
【0127】
M個の物理量検出素子302の構造が同じであり、式(12)において、(n1≒(n2=…=(nM=(nとすると、式(12)は次式(13)のように変形される。
【数4】
【0128】
式(11)を式(13)で割ると次式(14)が得られる。
【数5】
【0129】
式(14)は、物理量検出回路の端子XP,XNから入力される信号のS/N比(Signal to Noise Ratio)はM個の物理量検出素子302の各々の出力信号のS/N比の√M倍(例えば、M=4であれば2倍)になることを示している。従って、第6実施形態の物理量検出装置300によれば、出力される角速度信号のS/N比が向上する。
【0130】
図19に示した実装形態によれば、複数の物理量検出素子302が共通の基板360に搭載されるので、隣り合う物理量検出素子302間の距離を小さくすることが可能であり、また、配線361,362,363が基板360に設けられているため各物理量検出素子302と配線361,362,363との距離を小さくなり、物理量検出装置300の小型化に有利である。
【0131】
図20に示した実装形態及び図21に示した実装形態によれば、複数の物理量検出素子302がそれぞれ搭載された複数の容器310が積層されているので、複数の物理量検出素子302の配置面積が小さくなり、物理量検出装置300の小型化が可能である。さらに、図20に示した実装形態及び図21に示した実装形態によれば、各端子307,308を端子XP,XNと電気的に接続するための配線を専用の配線基板に設ける必要がないので、物理量検出装置300の小型化に有利である。
【0132】
従って、第6実施形態に係る高精度角速度センサー18を前述の如き複数のSi−MEMS型角速度センサー素子としての物理量検出素子302を複数個マルチ接続して構成することにより、高精度角速度センサー18から出力される角速度信号のS/N比を向上させることが可能となる。
【0133】
なお、第6実施形態では、Z軸角速度センサー116である高精度角速度センサー18について説明したが、X軸角速度センサー112およびY軸角速度センサー114についても同様に、複数のセンサー素子である物理量検出素子302をマルチ接続した物理量検出装置300として構成することができる。この場合、センサー素子は、例えば、後述の第7実施形態におけるジャイロセンサー素子としても良い。
【0134】
そして、Z軸角速度センサー116を構成するセンサー素子の個数Ngzを、X軸角速度センサー112を構成するセンサー素子の個数Ngx、Y軸角速度センサー114を構成するセンサー素子の個数Ngyより多くすることで、Z軸角速度センサー116を、X軸角速度センサー112及びY軸角速度センサー114に比較して“高精度”にすることができる。例えば、Z軸角速度センサー116を構成するセンサー素子の個数Ngzを、2個より大きい値、つまり3個以上とすると好適である。センサー素子の個数が多いほど、その平均値や中央値を利用する等の統計演算や数値解析が可能となるため“高精度”となるのである。
【0135】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態を説明する。以降では、第1乃至第6実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第6実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第7実施形態は、第1実施形態におけるX軸角速度センサー112およびY軸角速度センサー114であって、第2実施形態における多軸の慣性センサー17に搭載されているジャイロセンサー素子の実施形態である。
【0136】
図22に示すジャイロセンサー素子500は、X軸まわりの角速度を検知することのできる角速度センサーである。図22に示すジャイロセンサー素子500は、Y軸方向に並んだ2つの構造体50(50a,50b)と、2つの固定検出部59(59a,59b)と、を有している。2つの構造体50a,50bは、図22に向かって上下対称に構成されており、互いに同様の構成を有する。
【0137】
各構造体50は、質量部51と、複数の固定部52と、複数の弾性部53と、複数の駆動部54(可動駆動電極)と、複数の固定駆動部55,56(固定駆動電極)と、検出部571,572(可動検出電極)と、複数の梁部58と、を有している。質量部51は、駆動部54と、フレーム573、検出部571,572および梁部58を含んで一体的に形成されている。即ち、検出部571,572は質量部51に含まれる形状となっている。
【0138】
質量部51の外形は、Z軸方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という)において、四角形の枠状をなしており、前述の通り駆動部54、フレーム573、検出部571,572を内包している。具体的には、互いに平行にY軸方向に沿って延びている1対の部分と、この1対の部分の端部同士を接続していて互いに平行にX軸方向に沿って延びている1対の部分と、で構成されている。
【0139】
固定部52は、1つの構造体50に対して4つ設けられており、各固定部52は、基板に固定される。また、各固定部52は、平面視において、質量部51の外側に配置されており、第7実施形態では、質量部51の各角部に対応した位置に配置されている。なお、図示では、構造体50aの−Y軸側に位置する固定部52と構造体50bの+Y軸側に位置する固定部52とを共通の固定部としている。
【0140】
弾性部53は、1つの構造体50に対して本実施例では4つ設けられており、各弾性部53は、平面視において、質量部51の一部と固定部52とを接続している。第7実施形態では弾性部53は、質量部51におけるフレーム573の角部に接続されているが、これに限らず質量部51を固定部52に対して変位可能な位置であれば良い。図22では、Y軸方向に質量部51を変位し得るように構成されている。また、各弾性部53は、図示では、平面視において、蛇行形状をなし、X軸方向に沿って延びる第1部分と、Y軸方向に沿って延びている第2部分とを有する。なお、駆動部54の形状は、所望の駆動方向(第7実施形態ではY軸方向)に弾性変形することが可能な構成であれば図示の形状に限定されない。
【0141】
駆動部54は、1つの構造体50に対して8つ設けられており、各駆動部54は、質量部51のY軸方向に沿って延びている部分に接続されている。具体的には、4つの駆動部54が質量部51の+X側に位置し、残りの4つの駆動部54が質量部51の−X側に位置している。各駆動部54は、質量部51からX軸方向に延出している幹部と、該幹部からY軸方向に延出している複数の枝部と、を備えた歯形状をなしている。
【0142】
固定駆動部55,56は、それぞれ、1つの構造体50に対して8つ設けられており、各固定駆動部55,56は、前述した基板の上面23に固定されている。また、各固定駆動部55,56は、駆動部54に対応した歯形状をなし、駆動部54を間に挟んで設けられている。
【0143】
検出部571,572は、それぞれ、平面視形状が四角形状なす板状部材であり、質量部51の内側に配置され、梁部58によって質量部51に接続されている。検出部571,572は、それぞれ、回動軸J4まわりに回動(変位)可能となっている。
【0144】
また、固定検出部59(固定検出電極)は、検出部571,572に対向している。また、固定検出部59は、検出部571,572と離間している。
【0145】
また、上述した構成の質量部51と、弾性部53と、駆動部54と、固定駆動部55の一部と、固定駆動部56の一部と、検出部571,572と、梁部58とは、基板の上方に設けられ、基板2と離間している。
【0146】
上述したような構造体50は、リン、ボロン等の不純物がドープされた導電性のシリコン基板をエッチングによってパターニングすることで一括形成されている。
【0147】
また、固定検出部59の構成材料としては、例えば、アルミニウム、金、白金、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)等を用いることができる。
【0148】
なお、図示はしないが、固定部52と、固定駆動部55と、固定駆動部56と、固定検出部59aと、固定検出部59bとは、それぞれ、図示しない配線および端子に電気的に接続されている。これら配線および端子は、例えば基板上に設けられている。
【0149】
以上、ジャイロセンサー素子500の構成について簡単に説明した。このような構成のジャイロセンサー素子500は、次のようにして角速度ωxを検出することができる。
【0150】
まず、ジャイロセンサー素子500が有する駆動部54と固定駆動部55,56との間に駆動電圧を印加すると、固定駆動部55,56と駆動部54との間に周期的に強度が変化する静電引力が生じる。これにより、各弾性部53の弾性変形を伴って各駆動部54がY軸方向に振動する。このとき、構造体50aが有する複数の駆動部54と、構造体50bが有する複数の駆動部54とは、Y軸方向に互いに逆位相で振動(駆動振動)する。
【0151】
このように駆動部54がY軸方向に振動している状態で、ジャイロセンサー素子500に角速度ωxが加わると、コリオリ力が働き、検出部571,572が回動軸J4回りに変位する。このとき、構造体50aが備える検出部571,572と、構造体50bが備える検出部571,572とは、互いに反対方向に変位する。例えば、構造体50aが備える検出部571,572が、それぞれ+Z軸方向に変位したとき、構造体50bが備える検出部571,572が、それぞれ−Z軸方向に変位する。また、構造体50aが備える検出部571,572が、それぞれ−Z軸方向に変位したとき、構造体50bが備える検出部571,572が、それぞれ+Z軸方向に変位する。
【0152】
このように検出部571,572が変位(検出振動)することにより、検出部571,572と固定検出部59との間の距離が変化する。この距離の変化に伴って、検出部571,572と固定検出部59との間の静電容量が変化する。そして、この静電容量の変化量に基づいて、ジャイロセンサー素子500に加わった角速度ωxを検出することができる。
【0153】
なお、X軸角速度センサー112について説明したが、Y軸角速度センサー114についても同様である。
【0154】
[第8実施形態]
次に、第8実施形態を説明する。以降では、第1乃至第7実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第7実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第8実施形態は、第1実施形態におけるX軸加速度センサー122およびY軸加速度センサー124であって、第2実施形態における多軸の慣性センサー17に搭載されている物理量センサーの実施形態である。
【0155】
図23に示す物理量センサー600は、X軸方向の加速度Axを検出することのできる加速度センサーである。このような物理量センサー600は、基部602と、基部602に設けられ、X軸方向の加速度Ax(物理量)を検出する素子部604と、を有している。また、素子部604は、基部602に取り付けられている固定電極部64と、基部602に対してX軸方向(物理量の検出軸方向である第1方向)に変位可能な可動部65と、可動部65に設けられている可動電極部66と、を有している。また、固定電極部64は、Y軸方向(検出軸に交差(第8実施形態では直交)する方向である第2方向)に沿って並んで配置されている第1固定電極部641および第2固定電極部642を有している。また、第1固定電極部641は、第1幹部643と、第1幹部643のY軸方向(第2方向)の両側に設けられ、長手方向が前記第2方向に沿っている複数の第1固定電極指645と、を有している。また、第2固定電極部642は、第2幹部644と、第2幹部644からY軸方向(第2方向)の両側に設けられ、長手方向が前記第2方向に沿っている複数の第2固定電極指646と、を有している。また、可動電極部66は、Y軸方向(第2方向)に沿って並んで配置されている第1可動電極部661および第2可動電極部662を有している。また、第1可動電極部661の少なくとも一部は、第1幹部643のY軸方向(第2方向)の両側に位置され、長手方向が前記第2方向に沿って、第1固定電極指645とX軸方向(第1方向)に対向している複数の第1可動電極指663を有している。また、第2可動電極部662の少なくとも一部は、第2幹部644のY軸方向(第2方向)の両側に位置され、長手方向が前記第2方向に沿って、第2固定電極指646とX軸方向(第1方向)に対向している複数の第2可動電極指664を有している。このような構成とすることで、第1可動電極指663および第1固定電極指645間の静電容量、第2可動電極指664および第2固定電極指646間の静電容量を十分に大きく保ちつつ、第1、第2固定電極指645,646および第1、第2可動電極指663,664をそれぞれ短くすることができる。そのため、電極指645,646,663,664が破損し難く、優れた耐衝撃性を有する物理量センサー600となる。
【0156】
なお、X軸加速度センサー122に就いて説明したが、Y軸加速度センサー124についても同様である。
【0157】
[第9実施形態]
次に、第9実施形態を説明する。以降では、第1乃至第8実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第8実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第9実施形態は、第1実施形態におけるZ軸角速度センサー116であって、第2実施形態における多軸の慣性センサー17に搭載されている物理量センサーの実施形態である。
【0158】
図24は、第9実施形態の物理量センサー700の模式平面図である。可動体720は、第1可動部720aと、第2可動部720bと、を有している。可動体720は、平面視で、回転軸を境として、回転軸と直交する方向の一方側に第1可動部720aと、直交する方向の他方側に第2可動部720bと、第1可動部720aと第2可動部720bとを接続している第5梁部および第6梁部と、を含み、開口部726は、平面視で、第5梁部と第6梁部との間に配置され、第3梁部は、第1梁部と第5梁部とを接続し、第4梁部は、第2梁部と第6梁部とを接続している。
【0159】
第1可動部720aは、平面視において(Z軸方向からみて)、支持軸Qの一方側(図示の例では−X軸方向側)に位置している。第2可動部720bは、平面視において、支持軸Qの他方側(図示の例では+X軸方向側)に位置している。
【0160】
可動体720に鉛直方向の加速度(例えば重力加速度)が加わった場合、第1可動部720aと第2可動部720bとの各々に回転モーメント(力のモーメント)が生じる。ここで、第1可動部720aの回転モーメント(例えば反時計回りの回転モーメント)と第2可動部720bの回転モーメント(例えば時計回りの回転モーメント)とが均衡した場合には、可動体720の傾きに変化が生じず、加速度を検出することができない。したがって、鉛直方向の加速度が加わったときに、第1可動部720aの回転モーメントと、第2可動部720bの回転モーメントとが均衡せず、可動体720に所定の傾きが生じるように、可動体720が設計される。
【0161】
物理量センサー700では、支持軸Qを、可動体720の中心(重心)から外れた位置に配置することによって(支持軸Qから第1可動部720a,第2可動部720bの先端までの距離を異ならせることによって)、第1可動部720a,第2可動部720bが互いに異なる質量を有している。
【0162】
すなわち、可動体720は、支持軸Qを境にして、一方側(第1可動部720a)と他方側(第2可動部720b)とで質量が異なる。図示の例では、支持軸Qから第1可動部720aの端面723までの距離は、支持軸Qから第2可動部720bの端面724までの距離よりも大きい。また、第1可動部720aの厚さと、第2可動部720bの厚さとは、等しい。したがって、第1可動部720aの質量は、第2可動部720bの質量よりも大きい。
【0163】
このように、第1可動部720a,第2可動部720bが互いに異なる質量を有することにより、鉛直方向の加速度が加わったときに、第1可動部720aの回転モーメントと、第2可動部720bの回転モーメントと、を均衡させないことができる。したがって、鉛直方向の加速度が加わったときに、可動体720に所定の傾きを生じさせることができる。
【0164】
なお、図示はしないが、支持軸Qを可動体720の中心に配置し、かつ、第1可動部720a,第2可動部720bの厚さを互いに異ならせることによって、第1可動部720a,第2可動部720bが互いに異なる質量を有するようにしてもよい。このような場合にも、鉛直方向の加速度が加わったときに、可動体720に所定の傾きを生じさせることができる。
【0165】
可動体720は、基板702と離間して設けられている。可動体720は、凹部11の上方に設けられている。可動体720と基板702との間には、間隙が設けられている。これにより、可動体720は、揺動することができる。
【0166】
可動体720は、支持軸Qを境にして設けられた第1可動電極721および第2可動電極722を有している。第1可動電極721は、第1可動部720aに設けられている。第2可動電極722は、第2可動部720bに設けられている。
【0167】
第1可動電極721は、可動体720のうち、平面視において第1固定電極750と重なる部分である。第1可動電極721は、第1固定電極750との間に静電容量C1を形成する。すなわち、第1可動電極721と第1固定電極750とによって静電容量C1が形成される。
【0168】
第2可動電極722は、可動体720のうち、平面視において第2固定電極752と重なる部分である。第2可動電極722は、第2固定電極752との間に静電容量C2を形成する。すなわち、第2可動電極722と第2固定電極752とによって静電容量C2が形成される。物理量センサー700では、可動体720が導電性材料(不純物がドープされたシリコン)で構成されることによって、可動電極721,722が設けられている。すなわち、第1可動部720aが第1可動電極721として機能し、第2可動部720bが第2可動電極722として機能している。
【0169】
静電容量C1および静電容量C2は、例えば、可動体720が水平な状態で、互いに等しくなるように構成されている。可動電極721,722は、可動体720の動きに応じて位置が変化する。この可動電極721,722の位置に応じて、静電容量C1,C2が変化する。可動体720には、支持部730を介して、所定の電位が与えられる。
【0170】
可動体720には、可動体720を貫通する貫通孔725が形成されている。これにより、可動体720が揺動する際の空気の影響(空気の抵抗)を低減することができる。貫通孔725は、複数形成されている。図示の例では、貫通孔725の平面形状は、正方形である。
【0171】
可動体720には、可動体720を貫通する開口部726が設けられている。開口部726は、平面視において、支持軸Q上に設けられている。図示の例では、開口部726の平面形状は、長方形である。
【0172】
支持部730は、基板702上に設けられている。支持部730は、開口部726に位置している。支持部730は、可動体720を支持している。支持部730は、第1固定部と、第2固定部と、第1梁部41と、第2梁部42と、第3梁部43と、第4梁部44と、を有している。
【0173】
第1固定部および第2固定部は、基板702に固定されている。第1固定部,第2固定部は、平面視において、支持軸Qを挟んで設けられている。図示の例では、第1固定部は、支持軸Qの−X軸方向側に設けられ、第2固定部は、支持軸Qの+X軸方向側に設けられている。
【0174】
[第10実施形態]
次に、第10実施形態を説明する。以降では、第1乃至第9実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第9実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第10実施形態は、第2実施形態における多軸の慣性センサー17の実施形態である。
【0175】
次に、第10実施形態に係る物理量センサーを、図25および図26を参照して説明する。図25は、第10実施形態に係る物理量センサー800の概略構成を示す平面図である。なお、説明の便宜上、図25では樹脂パッケージを透視した状態を示している。図26は、第10実施形態に係る物理量センサー800の概略構成を示す断面図である。なお、以下では、互いに直交する三つの軸をX軸、Y軸およびZ軸を用いて説明する。また、説明の便宜上、Z軸方向からみたときの平面視において、センサー素子側である+Z軸方向側の面を上面、これと反対側となる−Z軸方向側の面を下面として説明することがある。
【0176】
図25および図26に示すように、第10実施形態に係る物理量センサー800は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの加速度を独立して検知することのできる3軸加速度センサーと、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの角速度を独立して検知することのできる3軸角速度センサーとを加えた6軸センサーとして利用可能である。
【0177】
このような物理量センサー800は、フレーム871と、フレーム871上に配置されている回路素子としてのIC(integrated circuit)840と、Z軸方向からの平面視で、IC840のX方向の両側に一つずつ配置されているセンサー素子としての加速度センサー素子820および角速度センサー素子830と、それらの構成部位を覆う樹脂パッケージ884と、を有している。なお、フレーム871は、図示しない接合部材を介して回路基板872に取り付けられている。また、加速度センサー素子820および角速度センサー素子830は、フレーム871の上面に、接合材としての樹脂接着材818を介して取り付けられている。また、IC840は、フレーム871の上面に、接着層841を介して取り付けられている。第10実施形態では、フレーム871が、加速度センサー素子820および角速度センサー素子830が取り付けられている基板に相当する。
【0178】
IC840は、例えば、加速度センサー素子820や角速度センサー素子830を駆動する駆動回路や、加速度センサー素子820からの信号に基づいてX軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の加速度を検出する検出回路、角速度センサー素子830からの信号に基づいてX軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の角速度を検出する検出回路、およびそれぞれの検出回路からの信号を所定の信号に変換して出力する出力回路等が含まれている。
【0179】
また、IC840は、上面に複数の電極パッド(不図示)を有し、各電極パッドがボンディングワイヤー874,876を介して回路基板872に設けられている接続端子875,877に電気的に接続されている。また、他の各電極パッドがボンディングワイヤー879を介して加速度センサー素子820の端子878に電気的に接続されている。また、他の各電極パッドがボンディングワイヤー882を介して角速度センサー素子830の端子181に電気的に接続されている。これらにより、IC840は、加速度センサー素子820や角速度センサー素子830を制御することができる。
【0180】
加速度センサー素子820および角速度センサー素子830は、樹脂接着材818によりフレーム871に取り付けられる。
【0181】
回路基板872の下面には、複数の外部端子885が設けられている。複数の外部端子885は、回路基板872の上面に設けられている接続端子875,877のそれぞれと対応し、図示しない内部配線などを介して電気的に接続されている。
【0182】
[第11実施形態]
次に、第11実施形態を説明する。以降では、第1乃至第10実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第10実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第11実施形態は、移動体測位装置の実施形態である。
【0183】
図27は、第11実施形態に係る移動体測位装置3000の全体システムを示すブロック図である。図28は、図27に示す移動体測位装置3000の作用を示す図である。
【0184】
図27に示す移動体測位装置3000は、移動体に装着して用い、当該移動体の測位を行うための装置である。移動体としては、特に限定されず、自転車、自動車(四輪自動車およびバイクを含む)、電車、飛行機、船等のいずれでもよいが、第11実施形態では四輪自動車として説明する。移動体測位装置3000は、慣性計測装置3100(IMU)と、演算処理部3200と、GPS受信部3300と、受信アンテナ3400と、位置情報取得部3500と、位置合成部3600と、処理部3700と、通信部3800と、表示部3900と、を有している。なお、慣性計測装置3100としては、例えば、第1実施形態におけるIMU100を用いることができる。
【0185】
慣性計測装置3100は、3軸の加速度センサー3110と、3軸の角速度センサー3120と、を有している。演算処理部3200は、加速度センサー3110からの加速度データおよび角速度センサー3120からの角速度データを受け、これらデータに対して慣性航法演算処理を行い、慣性航法測位データ(移動体の加速度および姿勢を含むデータ)を出力する。
【0186】
また、GPS受信部3300は、受信アンテナ3400を介してGPS衛星からの信号(GPS搬送波。位置情報が重畳された衛星信号)を受信する。また、位置情報取得部3500は、GPS受信部3300が受信した信号に基づいて、移動体測位装置3000(移動体)の位置(緯度、経度、高度)、速度、方位を表すGPS測位データを出力する。このGPS測位データには、受信状態や受信時刻等を示すステータスデータも含まれている。
【0187】
位置合成部3600は、演算処理部3200から出力された慣性航法測位データおよび位置情報取得部3500から出力されたGPS測位データに基づいて、移動体の位置、具体的には移動体が地面のどの位置を走行しているかを算出する。例えば、GPS測位データに含まれている移動体の位置が同じであっても、図28に示すように、地面の傾斜等の影響によって移動体の姿勢が異なっていれば、地面の異なる位置を移動体が走行していることになる。そのため、GPS測位データだけでは移動体の正確な位置を算出することができない。そこで、位置合成部3600は、慣性航法測位データ(特に、移動体の姿勢に関するデータ)を用いて、移動体が地面のどの位置を走行しているのかを算出する。なお、当該判定は、三角関数(鉛直方向に対する傾きθ)を用いた演算によって比較的簡単に行うことができる。
【0188】
位置合成部3600から出力された位置データは、処理部3700によって所定の処理が行われ、測位結果として、表示部3900に表示されるようになっている。また、位置データは、通信部3800によって外部装置に送信されるようになっていてもよい。
【0189】
以上、移動体測位装置3000について説明した。このような移動体測位装置3000は、前述したように、慣性計測装置3100と、測位用衛星から位置情報が重畳された衛星信号を受信するGPS受信部3300(受信部)と、受信した衛星信号に基づいて、GPS受信部3300の位置情報を取得する位置情報取得部3500(取得部)と、慣性計測装置3100から出力された慣性航法測位データ(慣性データ)に基づいて、移動体の姿勢を演算する演算処理部3200(演算部)と、算出された姿勢に基づいて位置情報を補正することにより、移動体の位置を算出する位置合成部3600(算出部)と、を含んでいる。これにより、IMU100である慣性計測装置3100の効果を享受でき、信頼性の高い移動体測位装置3000が得られる。
【0190】
また、上述では、衛星測位システムとしてGPS(Global Positioning System)を用いて説明したが、他の全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用してもよい。例えば、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)、等の衛星測位システムのうち1または2以上を利用してもよい。また、衛星測位システムの少なくとも1つにWAAS(Wide Area Augmentation System)、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)等の静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS:Satellite-based Augmentation System)を利用してもよい。
【0191】
[第12実施形態]
次に、第12実施形態を説明する。以降では、第1乃至第11実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第11実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第12実施形態は、電子機器の実施形態である。
【0192】
図29は、第12実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。図29に示すスマートフォン1200(携帯電話機)は、本発明の電子機器を適用したものである。スマートフォン1200には、第2実施形態におけるセンサーユニット160と、センサーユニット160から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210(制御部)と、が内蔵されている。センサーユニット160によって検出された検出データ(角速度データ)は、制御回路1210に送信され、制御回路1210は、受信した検出データからスマートフォン1200の姿勢や挙動を認識して、表示部1208に表示されている表示画像を変化させたり、警告音や効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させることができる。
【0193】
このようなスマートフォン1200(電子機器)は、センサーユニット160と、センサーユニット160から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210(制御部)と、を有している。
【0194】
[第13実施形態]
次に、第13実施形態を説明する。以降では、第1乃至第12実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第12実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第13実施形態は、電子機器の実施形態である。
【0195】
図30は、第13実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。図30に示すデジタルスチールカメラ1300は、電子機器の一例である。デジタルスチールカメラ1300は、ケース1302を備え、このケース1302の背面には表示部1310が設けられている。表示部1310は、CCD(Charge Coupled Device)による撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。そして、撮影者が表示部1310に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押すと、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。また、デジタルスチールカメラ1300には、第2実施形態のセンサーユニット160と、センサーユニット160から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1320(制御部)と、が内蔵されている。センサーユニット160は、例えば、手振れ補正に用いられる。
【0196】
このようなデジタルスチールカメラ1300(電子機器)は、第2実施形態におけるセンサーユニット160と、センサーユニット160から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1320(制御部)と、を有している。そのため、センサーユニット160の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0197】
なお、第13実施形態の電子機器は、パーソナルコンピューターおよび携帯電話機、デジタルスチールカメラの他にも、例えば、スマートフォン、タブレット端末、時計(スマートウォッチを含む)、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等に適用することができる。
【0198】
[第14実施形態]
次に、第14実施形態を説明する。以降では、第1乃至第13実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第13実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第14実施形態は、携帯型電子機器の実施形態である。
【0199】
図31は、第14実施形態に係る携帯型電子機器を示す平面図である。図32は、図31に示す携帯型電子機器の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0200】
図31に示す腕時計型の活動計1400(アクティブトラッカー)は、携帯型電子機器の一種であるリスト機器である。活動計1400は、バンド1401によってユーザーの手首等の部位(被検体)に装着される。また、活動計1400は、デジタル表示の表示部1402を備えると共に、無線通信が可能である。第2実施形態におけるセンサーユニット160は、加速度を測定する加速度センサー1408や角速度を計測する角速度センサー1409として活動計1400に組込まれている。
【0201】
活動計1400は、加速度センサー1408および角速度センサー1409が収容されたケース1403と、ケース1403に収容され、加速度センサー1408および角速度センサー1409からの出力データを処理する処理部1410と、ケース1403に収容されている表示部1402と、ケース1403の開口部を塞いでいる透光性カバー1404と、を備えている。また、透光性カバー1404の外側にはベゼル1405が設けられている。また、ケース1403の側面には複数の操作ボタン1406、1407が設けられている。
【0202】
図32に示すように、加速度センサー1408は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の加速度を検出し、検出した3軸加速度の大きさおよび向きに応じた信号(加速度信号)を出力する。また、角速度センサー1409は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の角速度を検出し、検出した3軸角速度の大きさおよび向きに応じた信号(角速度信号)を出力する。
【0203】
表示部1402を構成する液晶ディスプレイ(LCD)では、種々の検出モードに応じて、例えば、GPSセンサー1411や地磁気センサー1412を用いた位置情報、移動量や加速度センサー1408や角速度センサー1409などを用いた運動量などの運動情報、脈拍センサー1413などを用いた脈拍数などの生体情報、もしくは現在時刻などの時刻情報などが表示される。なお、温度センサー1414を用いた環境温度を表示することもできる。
【0204】
通信部1415は、ユーザー端末と図示しない情報端末との間の通信を成立させるための各種制御を行う。通信部1415は、例えば、Bluetooth(登録商標)(BTLE:Bluetooth Low Energyを含む)、Wi−Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)、Zigbee(登録商標)、NFC(Near field communication)、ANT+(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応した送受信機や、USB(Universal Serial Bus)等の通信バス規格に対応したコネクターを含んで構成される。
【0205】
処理部1410(プロセッサー)は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。処理部1410は、記憶部1416に格納されたプログラムと、操作部1417(例えば操作ボタン1406、1407)から入力された信号とに基づき、各種の処理を実行する。処理部1410による処理には、GPSセンサー1411、地磁気センサー1412、圧力センサー1418、加速度センサー1408、角速度センサー1409、脈拍センサー1413、温度センサー1414、計時部1419の各出力信号に対するデータ処理、表示部1402に画像を表示させる表示処理、音出力部1420に音を出力させる音出力処理、通信部1415を介して情報端末と通信を行う通信処理、バッテリー1421からの電力を各部へ供給する電力制御処理などが含まれる。
【0206】
このような活動計1400では、少なくとも以下のような機能を有することができる。
1.距離:高精度のGPS機能により計測開始からの合計距離を計測する。
2.ペース:ペース距離計測から、現在の走行ペースを表示する。
3.平均スピード:平均スピード走行開始から現在までの平均スピードを算出し表示する。
4.標高:GPS機能により、標高を計測し表示する。
5.ストライド:GPS電波が届かないトンネル内などでも歩幅を計測し表示する。
6.ピッチ:1分あたりの歩数を計測し表示する。
7.心拍数:脈拍センサーにより心拍数を計測し表示する。
8.勾配:山間部でのトレーニングやトレイルランにおいて、地面の勾配を計測し表示する。
9.オートラップ:事前に設定した一定距離や一定時間を走った時に、自動でラップ計
測を行う。
10.運動消費カロリー:消費カロリーを表示する。
11.歩数:運動開始からの歩数の合計を表示する。
【0207】
このような活動計1400(携帯型電子機器)は、加速度センサー1408や角速度センサー1409等の物理量センサーと、物理量センサーが収容されているケース1403と、ケース1403に収容され、物理量センサーからの出力データを処理する処理部1410と、ケース1403に収容されている表示部1402と、ケース1403の開口部を塞いでいる透光性カバー1404と、を含んでいる。
【0208】
また、前述したように、活動計1400は、GPSセンサー1411(衛星測位システム)を含み、ユーザーの移動距離や移動軌跡を計測することができる。そのため、利便性の高い活動計1400が得られる。
【0209】
なお、活動計1400は、ランニングウォッチ、ランナーズウォッチ、デュアスロンやトライアスロン等マルチスポーツ対応のランナーズウォッチ、アウトドアウォッチ、および衛星測位システム、例えばGPSを搭載したGPSウォッチ、等に広く適用できる。
【0210】
[第15実施形態]
次に、第15実施形態を説明する。以降では、第1乃至第14実施形態との差異について主に述べることとし、第1乃至第14実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与して重複する説明を省略する。第15実施形態は、移動体の実施形態である。
【0211】
図33は、第15実施形態における移動体の一例である自動車の構成を示す斜視図である。
【0212】
図33に示すように、自動車1500に、第2実施形態におけるセンサーユニット160が内蔵されており、例えば、センサーユニット160によって車体1501の姿勢を検出することができる。センサーユニット160の検出信号は、車体の姿勢を制御する姿勢制御部としての車体姿勢制御装置1502に供給され、車体姿勢制御装置1502は、その信号に基づいて車体1501の姿勢を検出し、検出結果に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪1503のブレーキを制御したりすることができる。また、センサーユニット160は、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、自動運転用慣性航法の制御機器、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。
【0213】
また、移動体に適用されるセンサーユニット160は、上記の例示の他にも、例えば、二足歩行ロボットや電車などの姿勢制御、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター、およびドローンなどの遠隔操縦あるいは自律式の飛行体の姿勢制御、農業機械(農機)、もしくは建設機械(建機)などの姿勢制御において利用することができる。以上のように、各種移動体の姿勢制御の実現にあたって、センサーユニット160、およびそれぞれの制御部(不図示)が組み込まれる。
【0214】
このような移動体は、第2実施形態におけるセンサーユニット160、および制御部(不図示)を備えているので、優れた信頼性を有している。
【0215】
[第16実施形態]
第16実施形態は、第15実施形態の移動体1500において、自動運転を可能とする実施形態である。
【0216】
図33に示す自動運転される移動体1500に用いられるADAS(Advanced Driver Assistance Systems)ロケーターは、センサーモジュール1610を含む慣性センサーの他に、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)受信機、地図データを格納した地図データベースを有する。ADASロケーターは、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサーの計測結果とを組み合わせることにより、移動体の走行位置をリアルタイムで測定する。ADASロケーターは、地図データベースから地図データを読み出す。センサーモジュール1610を含むADASロケーターからの出力は自動運転制御部1620に入力される。自動運転制御部1620は、ADASロケーターからの出力(センサーモジュール610からの検出信号を含む)に基づいて、移動体1500の加速、制動、及び操舵の少なくともいずれかを制御する。
【0217】
図34は、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)ロケーターに係るシステム1600を示すブロック図である。切替部1630は、ADASロケーターからの出力の変化(センサーモジュール1610からの検出信号の変化を含む)に基づいて、自動運転制御部1620での自動運転の実施或いは不実施を切り替える。切替部1630は、例えば、ADASロケーター中のセンサー(センサーモジュール1610を含む)の検出能力が低下した異常時に、自動運転の実施から不実施に切り替える信号を制御部1620に出力する。
【符号の説明】
【0218】
1000…測位システム、1002…GPSモジュール、1004…演算部、100…IMU、110…角速度センサー、112…X軸角速度センサー、114…Y軸角速度センサー、116…Z軸角速度センサー、120…加速度センサー、122…X軸加速度センサー、124…Y軸加速度センサー、126…Z軸加速度センサー、1100…移動体
図1
図2
図3
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図5
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