特許第6870689号(P6870689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870689液晶素子及びその製造方法、並びに表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870689
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】液晶素子及びその製造方法、並びに表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20210426BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G02F1/1337 520
   G02F1/1334
【請求項の数】14
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-564586(P2018-564586)
(86)(22)【出願日】2018年1月23日
(86)【国際出願番号】JP2018002006
(87)【国際公開番号】WO2018139457
(87)【国際公開日】20180802
【審査請求日】2019年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2017-10532(P2017-10532)
(32)【優先日】2017年1月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】樫下 幸志
(72)【発明者】
【氏名】内山 克博
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−184031(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/072498(WO,A1)
【文献】 特開2014−026261(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/143860(WO,A1)
【文献】 特開2005−345567(JP,A)
【文献】 特開2011−059589(JP,A)
【文献】 特開2006−330309(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/115079(WO,A1)
【文献】 特開平02−064194(JP,A)
【文献】 特開平02−153322(JP,A)
【文献】 特開平08−036182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/1334
G02F 1/1347
C08F 2/48
C09K 19/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の基材と、
前記一対の基材において互いに対向する面にそれぞれ配置された電極と、
前記一対の基材間に配置され、液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物を硬化して形成された液晶層と、
前記一対の基材の少なくとも一方の電極配置面上に形成された液晶配向膜と、を備える液晶素子であって、
前記液晶組成物は、前記重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物を含み、
前記液晶層は、前記重合性化合物が重合したポリマーと前記液晶とが層中に混在された高分子分散型液晶層であり、
前記液晶素子は、偏光板を備えておらず、前記電極間に電圧が印加されていない状態では光を透過する透過状態となり、前記電極間に電圧が印加されている状態では光を散乱させる不透過状態となり、
前記液晶配向膜は、ポリ(メタ)アクリレートを含有する液晶配向剤により形成されてなり、
前記ポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を、重合に使用する単量体の全体量に対して1質量%以上用いて得られる重合体である、液晶素子。
【請求項2】
前記液晶配向剤中のポリ(メタ)アクリレートの含有割合が、前記液晶配向剤に含まれる重合体成分の合計量に対して3〜99質量%である、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項3】
前記液晶配向剤は、ポリシロキサンを更に含有する、請求項1又は2に記載の液晶素子。
【請求項4】
前記液晶配向剤は、光配向性基を有する重合体を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項5】
前記液晶配向剤は、シラン化合物を更に含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項6】
前記液晶配向剤は、架橋性基を有する化合物を更に含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項7】
前記液晶組成物は、色素を更に含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項8】
前記色素は、アゾ化合物及びアントラキノン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項7に記載の液晶素子。
【請求項9】
前記液晶組成物は、酸化防止剤を更に含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶素子と、非表示状態で透明となる透明ディスプレイと、を備える表示装置。
【請求項11】
各基材面に設けられた電極が対向するように配置された一対の基材と、液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物を硬化して形成された液晶層とを備え、前記液晶組成物は前記重合性化合物として単官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物を含み、前記液晶層は前記重合性化合物が重合したポリマーと前記液晶とが層中に混在された高分子分散型液晶層であり、前記電極間に電圧が印加されていない状態では光を透過する透過状態となり、前記電極間に電圧が印加されている状態では光を散乱させる不透過状態となる、偏光板を備えていない液晶素子の液晶配向膜を形成するための液晶配向剤であって、
ポリ(メタ)アクリレートを含有し、
前記ポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を、重合に使用する単量体の全体量に対して1質量%以上用いて得られる重合体である、液晶配向剤。
【請求項12】
各基材面に設けられた電極が対向するように配置された一対の基材間に、液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物を硬化して形成された液晶層を備える液晶素子の製造方法であって、
前記一対の基材の少なくとも一方の電極配置面上に液晶配向剤を塗布して液晶配向膜を形成する工程と、
前記液晶配向膜の形成後に前記一対の基材を、前記液晶組成物を含む層を介して前記電極が対向するように配置して液晶セルを構築する工程と、
前記液晶セルの構築後に前記重合性化合物を硬化させる工程と、を含み、
前記液晶組成物は、前記重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物を含み、
前記液晶層は、前記重合性化合物が重合したポリマーと前記液晶とが層中に混在された高分子分散型液晶層であり、
前記液晶素子は、偏光板を備えておらず、前記電極間に電圧が印加されていない状態では光を透過する透過状態となり、前記電極間に電圧が印加されている状態では光を散乱させる不透過状態となり、
前記液晶配向剤は、ポリ(メタ)アクリレートを含有し、
前記ポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を、重合に使用する単量体の全体量に対して1質量%以上用いて得られる重合体である、液晶素子の製造方法。
【請求項13】
前記電極配置面上に塗布した液晶配向剤を160℃以下で加熱する、請求項12に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項14】
前記一対の基材の少なくとも一方の電極配置面上に前記液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、前記塗膜に光照射することにより前記塗膜に液晶配向能を付与する、請求項12又は13に記載の液晶素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年1月24日に出願された日本出願番号2017−10532号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、液晶素子及びその製造方法、並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶素子としては、近年、透明電極が表面に形成された一対のフィルム基材の間に、液晶と高分子との複合材料からなる液晶層が配置された高分子分散型液晶素子が知られており、こうした高分子分散型液晶素子を調光素子として用いることが提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2の調光素子は、透明電極の電圧印加/電圧無印加の切り替えによって透明性が変化して調光機能を発現する。また、こうした調光機能を利用して、ショーウィンドウやスマートフォン、テレビ、モニタ、建築物、家具等において新たな機能を付与することが検討されている。高分子分散型液晶としては、例えばPDLC(Polymer Dispersed Liquid Cristal)やPNLC(Polymer Network Liquid Cristal)などが知られている。
【0004】
特許文献3には、有機EL素子からなる透明ディスプレイの背面に液晶表示パネルを配置した表示装置が提案されている。この表示装置では、液晶表示パネルに印加する電圧を制御することによって光透過性を制御し、これにより透明ディスプレイの表示の視認性を高めることが提案されている。また、特許文献4には、一対の電極間に電圧を印加していないときには光が透過して透明な状態になり、電圧印加時には光が散乱して非透明な状態になるリバース型液晶素子について開示されている。特許文献4に記載のリバース型液晶素子は、液晶を垂直に配向させる配向膜としてポリイミド膜を有し、このポリイミド膜によって、液晶層中の液晶分子の配向状態を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−3319号公報
【特許文献2】特開2013−148744号公報
【特許文献3】特開2008−083510号公報
【特許文献4】国際公開第2015/022980号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶テレビ等の液晶表示パネルにおける配向膜材料の設計において、液晶配向性や電気特性などの特性担保の観点から、従来、ポリイミド系材料が有効に用いられている。一方、液晶表示パネルと調光素子とでは、液晶配向膜に対して要求される各種特性の優先度が異なる。例えば、調光素子として用いる場合には、液晶配向性や電気特性等といった、表示品位に関する特性よりも、液晶素子の薄型化や形状の多様性に優れていることが求められる。
【0007】
液晶素子の薄型化や形状の多様性を改善する方法の一つとして、基材の薄型化や、材料の選択の幅を広げることが挙げられ、例えば高分子材料からなる基材を適用することが考えられる。また、高分子材料からなる基材を適用可能にするには、配向膜材料として用いる重合体につき、低沸点溶媒に対する溶解性に優れていることが要求される。しかしながら、ポリイミド系樹脂は一般に低沸点溶媒に溶けにくく、得られる塗膜において膜厚ムラや塗工ムラ、ピンホールが多く、均質な液晶配向膜を得ることができないことが懸念される。
【0008】
また、ポリイミド系樹脂を用いた液晶配向膜は着色しやすく、調光素子に適用した場合に、光透過状態での透明性が問題になることがある。さらに、調光素子は屋外での使用用途に適用されることが想定されるため、耐候性に優れていることが必要な場合もある。
【0009】
本開示は上記課題に鑑みなされたものであり、高分子材料からなる基材を適用する場合において、液晶配向膜が均質でありかつ透明性が高く、光透過特性及び光散乱特性が良好であり、調光機能を実現する上で十分な電気特性を示し、かつ耐候性に優れた液晶素子を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0011】
[1] 対向配置された一対の基材と、前記一対の基材において互いに対向する面にそれぞれ配置された電極と、前記一対の基材間に配置され、液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物を硬化して形成された液晶層と、前記一対の基材の少なくとも一方の電極配置面上に形成された液晶配向膜と、を備え、前記液晶組成物は、前記重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物及びスチレン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含み、前記液晶配向膜は、ポリ(メタ)アクリレートを含有する液晶配向剤により形成されてなる、液晶素子。
[2] 上記[1]の液晶素子と、非表示状態で透明となる透明ディスプレイと、を備える表示装置。
[3] それぞれの基材面に設けられた電極が対向するように配置された一対の基材間に、液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物を硬化して形成された液晶層を備える液晶素子の液晶配向膜を形成するための液晶配向剤であって、ポリ(メタ)アクリレートを含有する、液晶配向剤。
[4] それぞれの基材面に設けられた電極が対向するように配置された一対の基材間に、液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物を硬化して形成された液晶層を備える液晶素子の製造方法であって、前記一対の基材の少なくとも一方の電極配置面上に液晶配向剤を塗布して液晶配向膜を形成する工程と、前記液晶配向膜の形成後に前記一対の基材を、前記液晶組成物を含む層を介して前記電極が対向するように配置して液晶セルを構築する工程と、前記液晶セルの構築後に前記重合性化合物を硬化させる工程と、を含み、前記液晶組成物は、前記重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物及びスチレン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含み、前記液晶配向剤は、ポリ(メタ)アクリレートを含有する、液晶素子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、一対の基材として高分子材料からなる基材を適用した場合にも、均質で且つ透明性が高い液晶配向膜を有する液晶素子を得ることができる。また、高分子材料からなる基材を適用した場合にも、光透過特性及び光散乱特性が良好であり、調光機能を実現する上で十分な電気特性を示し、かつ耐候性に優れた液晶素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】液晶素子の概略構成を示す図。
図2】液晶素子の機能を説明する図。
図3】液晶素子と透明ディスプレイとを備える表示装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<液晶素子>
本実施形態の液晶素子10は、図1に示すように、第1基材11及び第2基材12からなる一対の基材と、第1基材11と第2基材12との間に配置された液晶層13と、を備えている。液晶層13は、ポリマー13aと液晶分子13bとが混在された高分子/液晶複合材料層である高分子分散型液晶層であり、本実施形態では、層中にポリマーネットワークが形成されたポリマー分散型液晶(PDLC)である。液晶素子10は、ポリマーネットワーク中に存在している液晶分子13bの配向を電界によって制御することにより、光を透過する透過状態と、光を散乱させる不透過状態とが切り替わる調光素子である。
【0016】
第1基材11及び第2基材12は、高分子材料からなる透明基材である。基材を構成する高分子材料としては、例えば、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート等の材料が挙げられる。なお、第1基材11及び第2基材12をガラス基板としてもよいが、液晶素子の薄型化及び軽量化を図るために、プラスチック基板であることが特に好ましい。
【0017】
第1基材及び第2基材12において、互いに対向する面には、透明電極16,17がそれぞれ配置されており、これら透明電極16,17によって電極対が構築されている。本実施形態において、透明電極16,17は透明導電膜であり、例えば酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜、又は炭素材料からなる膜である。なお、透明電極16,17は、例えば櫛歯状等の所定のパターンを有していてもよい。
【0018】
第1基材11及び第2基材12のそれぞれの電極配置面上には、液晶配向膜14,15が形成されている。液晶配向膜14,15は、液晶層13中の液晶分子の配向方位を規制する有機薄膜であり、本実施形態では、光配向性基を有する重合体を含む重合体組成物を用いて形成されてなる光配向膜である。なお、液晶配向膜14,15は、一対の基板の少なくとも一方に設けられていればよいが、配向安定性の観点から両方の基板に設けることが好ましい。液晶層13は、一対の基材と、一対の基材間において電極配置面の外縁部を囲むように配置されたシール剤(図示略)とによって囲まれた空間に液晶組成物を配置した後に液晶組成物を硬化することによって形成されている。液晶組成物には、液晶と重合性化合物とが含まれている。
【0019】
なお、液晶素子10は、第1基材11及び第2基材12の外側表面に偏光板を備えていない。そのため、光の吸収損失が少なく、光の利用効率が高い点で優れている。
【0020】
図2は、液晶素子10の機能を説明するための図であり、(a)は透明電極16,17間に電圧が印加されていない状態を示し、(b)は透明電極16,17間に電圧が印加されている状態を示す。液晶素子10はリバース型PDLCであり、透明電極16,17間に電圧が印加されていない状態では、入射光が一対の基板の一方から他方へ透過して透明な状態となり、透明電極16,17間に電圧が印加されている状態では、液晶分子13bの配向状態が変化することにより、入射光は散乱して非透明な状態となる。本実施形態では、図2に示すように、電圧無印加状態では、液晶分子13bの長軸方向が基板面に対して垂直な方向となることにより液晶素子10は透明な状態となり、電圧印加状態では、液晶分子13bが基板面に平行な方向に向かって回転することにより液晶素子10は非透明な状態となる。こうした電圧の印加/無印加の切り替えにより、液晶素子10は調光機能を発現する。液晶素子10は、例えばフィルム状や板状である。なお、液晶素子10は、印加電圧に応じて光透過率を可変とするものであってもよい。
【0021】
<液晶組成物>
次に、液晶層13の形成に用いる液晶組成物について説明する。液晶組成物は、液晶と重合性化合物とを含有する。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができる。
【0022】
重合性化合物としては、ラジカル重合性を示す化合物であることが好ましく、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物、及びスチレン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、「特定重合性化合物」ともいう。)を含むことが特に好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを含むことを意味する。
【0023】
重合性化合物の具体例としては、単官能(メタ)アクリレート化合物として、例えば、(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート類;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル系(メタ)アクリレート類;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコール系(メタ)アクリレート類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸系(メタ)アクリレート類;アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン等の窒素含有不飽和化合物;テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート等のハロゲン化(メタ)アクリレート類;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、などを;
【0024】
多官能(メタ)アクリレート化合物として、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシピバリル (メタ)アクリロイルオキシピバレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(例えば、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート)などを;
【0025】
多官能チオール化合物として、例えば、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2,5−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、3,7−ジチア−1,9−ノナンジチオール、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトベンゼン、1,2−ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ジメルカプト−5−メチル−ベンゼン、4,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス(2−メルカプトエチル)ベンゼン、チオール基含有カルボン酸と2価アルコールとのエステル類等のジチオール化合物;
イソシアヌル酸、トリメルカプトベンゼン、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、チオール基を有する多官能性ポリマー(例えば、商品名で、チオコールLP(登録商標)、ポリチオール(登録商標)(以上、東レ・ファインケミカル(株)製))、チオール基含有カルボン酸と多価アルコールとのポリエステル類、等のポリチオール化合物等を;スチレン系化合物として、例えばスチレン、メチルスチレン等を、それぞれ挙げることができる。
【0026】
重合性化合物は、1種を単独で用いてもよいが、光学特性を良好にする観点から、2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。具体的には、液晶組成物は、重合性化合物として単官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましく、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能チオール化合物を含有することがより好ましい。また、単官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物の少なくとも一部としてウレタン(メタ)アクリレート化合物が含有されていることが特に好ましい。
【0027】
液晶組成物中における重合性化合物の含有割合は、化合物の種類に応じて適宜選択される。例えば、単官能(メタ)アクリレート化合物の含有割合は、液晶の合計100質量部に対して、10〜300質量部とすることが好ましく、20〜200質量部とすることがより好ましい。多官能(メタ)アクリレート化合物の含有割合は、液晶の合計100質量部に対して、1〜200質量部とすることが好ましく、5〜100質量部とすることがより好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有させる場合、その含有割合は、液晶の合計100質量部に対して、1〜150質量部とすることが好ましく、5〜100質量部とすることがより好ましい。
多官能チオール化合物の含有割合は、液晶の合計100質量部に対して、0.5〜50質量部とすることが好ましく、1〜40質量部とすることがより好ましい。スチレン系化合物の配合割合は、液晶の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部とすることが好ましく、0.5〜20質量部とすることがより好ましい。
液晶組成物中における重合性化合物の含有割合(2種以上含む場合にはその合計量)は、液晶と重合性化合物との合計量に対して、1〜90質量%とすることが好ましく、5〜80質量%とすることがより好ましく、10〜75質量%とすることがさらに好ましい。
【0028】
特定重合性化合物の使用割合は、液晶組成物に含有させる重合性化合物の全体に対して、70質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましく、90質量%以上とすることがさらに好ましい。液晶組成物に含有させる重合性化合物は、特定重合性化合物からなることが特に好ましい。
【0029】
液晶組成物は、液晶及び重合性化合物以外のその他の成分を含有していてもよい。重合性化合物の重合性をさらに高めて、液晶層13中における(好ましくは、液晶層13の全体に亘って)ポリマーネットワークの形成を促進させる観点から、その他の成分として重合開始剤を含有することが好ましい。
【0030】
液晶組成物中に含有させる重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の照射によって重合性化合物の重合を開始可能な化合物(光開始剤)であることが好ましい。光開始剤としては、光照射によってラジカルを発生可能なラジカル重合開始剤であることが好ましく、その具体例としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−イソブトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノン、4,4’−ジメトキシベンジル、ジフェニルエタンジオン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(モルホリノ)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
【0031】
液晶組成物中における重合開始剤の含有割合は、硬化反応を速やかに行わせるとともに、過剰量の添加に起因する硬化性の低下を抑制する観点から、液晶組成物中に含まれる溶媒以外の成分(固形分)の合計質量に対して、0.1〜10質量%とすることが好ましく、0.5〜8質量%とすることがより好ましく、1〜7質量%とすることが更に好ましい。なお、重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
液晶組成物に配合されるその他の成分として、色素を用いてもよい。色素を用いることにより、液晶層13中に色素が分散された液晶素子10を得ることができる。また、本開示の液晶素子10によれば、液晶層13中に色素を分散させた場合にも、電圧の印加/無印加の切り替えによる光遮光性/光透過性の変化が明瞭であり、また、繰り返し駆動した場合の耐久性も良好である点で好ましい。
色素としては、二色性色素を好ましく用いることができる。使用する二色性色素は特に限定されず、公知の化合物を適宜用いることができるが、例えば、ポリヨウ素、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ジオキサジン化合物等が挙げられる。これらのうち、耐光性に優れ、しかも二色比が高い点で、アゾ化合物及びアントラキノン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、アゾ化合物が特に好ましい。なお、色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0033】
色素の配合割合(2種以上配合される場合には、その合計量)は、液晶組成物中の固形分の合計質量に対して、0.05〜5質量%とすることが好ましく、0.1〜3質量%とすることがより好ましい。
【0034】
液晶組成物は、液晶及び重合性化合物、並びに必要に応じて添加されるその他の成分が混合されることによって調製される。これらの成分を混合する処理は、常温で行ってもよいし、昇温しながら行ってもよい。また、適当な有機溶媒に各成分を溶解し、その後、例えば蒸留操作により溶媒を除去することも可能である。
【0035】
<液晶配向剤>
次に、液晶配向膜14,15を形成するために用いる液晶配向剤について説明する。当該液晶配向剤は、重合体成分としてポリ(メタ)アクリレートを含有する。なお、本明細書において「ポリ(メタ)アクリレート」は、ポリアクリレート及びポリメタクリレートを含む意味である。
【0036】
(ポリ(メタ)アクリレート)
ポリ(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する単量体(以下、「(メタ)アクリル系単量体」ともいう。)を重合開始剤の存在下で反応させる方法が挙げられる。液晶配向剤の調製に使用するポリ(メタ)アクリレートは、重合に使用する単量体の全体量に対する(メタ)アクリル系単量体の使用割合が、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。
【0037】
重合に使用する(メタ)アクリル系単量体は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ビニル安息香酸等の不飽和カルボン酸:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテル等の不飽和カルボン酸エステル:無水マレイン酸、無水イタコン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物等の不飽和多価カルボン酸無水物、等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル系単量体は、これらの一種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
重合に使用する(メタ)アクリル系単量体は、得られる液晶素子10の液晶配向性及び電気特性、並びに基材に対する液晶配向膜の接着性を良好にする観点から、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を含むことが好ましい。エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体の比率は、重合に使用する単量体の全体量に対して、1質量%以上とすることが好ましく、5質量%以上とすることがより好ましく、10質量%以上とすることがさらに好ましい。
【0039】
なお、重合に際しては、(メタ)アクリル系単量体以外の他の単量体を使用してもよい。他の単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物;スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;マレイミド基含有化合物などが挙げられる。他の単量体の比率は、ポリ(メタ)アクリレートの合成に使用する単量体の全体量に対して、80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましく、60質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0040】
液晶配向剤中に含有されるポリ(メタ)アクリレートは、以下に示す(a)〜(e)よりなる群に含まれる側鎖構造(以下、「特定側鎖構造」ともいう。)を有していないことが好ましい。
(a)炭素数8〜22のアルキル基
(b)炭素数6〜18のフッ素含有アルキル基
(c)ベンゼン環、シクロへキサン環及び複素環のいずれかの環と、炭素数1〜20のアルキル基又はフッ素含有アルキル基とが結合した基
(d)ベンゼン環、シクロへキサン環及び複素環よりなる群から選ばれる少なくとも1種の環を合計2個以上有する基
(e)ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の基
【0041】
特定側鎖構造の具体例としては、(a)のアルキル基として、例えばn−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等を;(b)のフッ素含有アルキル基として、例えば上記(a)のアルキル基の少なくとも1個の水素原子をフッ素原子で置換した基等を;(c)の基及び(d)の基として、例えば下記式(5)で表される基等を;(e)の基として、例えばコレスタニル基、コレステリル基、ラノスタニル基等を、それぞれ挙げることができる。
【化1】
(式(5)中、A〜Aは、それぞれ独立に、フェニレン基又はシクロへキシレン基であり、環部分に置換基を有していてもよい。R21は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜20のフッ素含有アルキル基、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜20のフッ素含有アルコキシ基、又はフッ素原子であり、R22及びR23は、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−、−OCO−又は炭素数1〜3のアルカンジイル基である。k、m及びnは、1≦k+m+n≦4を満たす0以上の整数である。R21が水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はフッ素原子の場合、k+m+n≧2を満たす。「*」は結合手を示す。)
【0042】
上記式(5)で表される基の具体例としては、例えば下記式(5−1)〜式(5−10)のそれぞれで表される基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。A〜Aが環部分に有していてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基等が挙げられる。k+m+nは、2〜4の整数であることが好ましい。
【化2】
(式中、「*」は結合手を示す。)
【0043】
(メタ)アクリル系単量体を用いた重合反応は、ラジカル重合により行うことが好ましい。当該重合反応に際して使用する重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;過酸化水素;これらの過酸化物と還元剤とからなるレドックス型開始剤等が挙げられる。これらの中でもアゾ化合物が好ましい。重合開始剤は、これらを一種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用割合は、反応に使用する単量体の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜50質量部であり、より好ましくは0.1〜40質量部である。
【0044】
(メタ)アクリル系単量体の重合反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。当該反応に使用する有機溶媒としては、例えばアルコール、エーテル、ケトン、アミド、エステル、炭化水素化合物などが挙げられる。これらの中でもアルコール及びエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましく、多価アルコールの部分エーテルを使用することがより好ましい。その好ましい具体例としては、例えばジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。なお、有機溶媒としては、これらの一種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
(メタ)アクリル系単量体の重合反応に際し、反応温度は、30〜120℃とすることが好ましく、60〜110℃とすることがより好ましい。反応時間は、1〜36時間とすることが好ましく、2〜24時間とすることがより好ましい。また、有機溶媒の使用量(a)は、反応に使用する単量体の合計量(b)が、反応溶液の全体量(a+b)に対して、0.1〜50質量%になるような量にすることが好ましい。ポリ(メタ)アクリレートを含有する反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリ(メタ)アクリレートを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0046】
ポリ(メタ)アクリレートにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、形成される液晶配向膜の液晶配向性を良好にするとともに、その液晶配向性の経時的安定性を確保する観点から、250〜500,000であることが好ましく、500〜100,000であることがより好ましく、1,000〜50,000であることがさらに好ましい。
【0047】
液晶配向剤中のポリ(メタ)アクリレートの含有割合は、低沸点溶媒を用いた場合の塗工性の改善効果を十分に得るとともに、透明性が十分に高い液晶素子10を得る観点から、液晶配向剤の重合体成分の合計量に対して、3〜99質量%であることが好ましい。当該含有割合の下限値について、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%であり、特に好ましくは50質量%である。また、ポリ(メタ)アクリレートの含有割合の上限値について、ポリ(メタ)アクリレートとは異なる重合体による各種特性の改善効果を得る場合、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。なお、ポリ(メタ)アクリレートは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
(その他の成分)
【0049】
液晶配向膜14,15の形成に用いる液晶配向剤は、耐候性の高い液晶素子10を得ることができる点で、ポリ(メタ)アクリレートとともに、シラン化合物及びポリシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。耐候性の改善効果が高く、かつポストベーク温度の更なる低温化を図ることができる点で、液晶配向剤はポリシロキサンを含有することが特に好ましい。また、基材に対する密着性をより高くできる点で、液晶配向剤はシラン化合物を含有することが好ましい。
【0050】
(ポリシロキサン)
ポリシロキサンは、例えば加水分解性のシラン化合物を加水分解・縮合することにより得ることができる。シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン化合物;メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルキル基又はアリール基含有アルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン等の硫黄含有アルコキシシラン化合物;
グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等の不飽和結合含有アルコキシシラン化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の窒素含有アルコキシシラン化合物;
トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物;などを挙げることができる。加水分解性シラン化合物は、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、「(メタ)アクリロキシ」は、「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」を含む意味である。
【0051】
上記の加水分解・縮合反応は、上記の如き加水分解性シラン化合物の1種又は2種以上と水とを、好ましくは適当な触媒及び有機溶媒の存在下で反応させることにより行う。反応に際し、水の使用割合は、加水分解性シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは1〜30モルである。使用する触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。触媒の使用量は、触媒の種類、温度などの反応条件などにより異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えばシラン化合物の合計量に対して、好ましくは0.01〜3倍モルである。使用する有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどが挙げられ、これらのうち、非水溶性又は難水溶性の有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒の使用割合は、反応に使用するシラン化合物の合計100質量部に対して、好ましくは10〜10,000質量部である。
【0052】
上記の加水分解・縮合反応は、例えば油浴などにより加熱して実施することが好ましい。その際、加熱温度は、130℃以下とすることが好ましく、加熱時間は、0.5〜12時間とすることが好ましい。反応終了後において、反応液から分取した有機溶媒層を、必要に応じて乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするポリシロキサンが得られる。なお、ポリシロキサンの合成方法は上記の加水分解・縮合反応に限らず、例えば加水分解性シラン化合物をシュウ酸及びアルコールの存在下で反応させる方法などにより行ってもよい。
【0053】
光配向性基やプレチルト角付与基(例えば、以下に示す垂直配向性基など)等の機能性基を側鎖に有するポリシロキサンを液晶配向剤に含有させてもよい。こうした機能性基を有するポリシロキサンは、例えば、原料の少なくとも一部に、エポキシ基含有の加水分解性シラン化合物を用いた重合により、エポキシ基を側鎖に有するポリシロキサンを合成し、次いでエポキシ基を有するポリシロキサンと、機能性基を有するカルボン酸とを反応させることにより得ることができる。あるいは、機能性基を有する加水分解性のシラン化合物をモノマーに用いた重合による方法を採用してもよい。
【0054】
エポキシ基含有ポリシロキサンとカルボン酸との反応は、好ましくは触媒及び有機溶媒の存在下で行われる。カルボン酸の使用割合は、エポキシ基含有ポリシロキサンが有するエポキシ基に対して、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10〜80モル%である。上記触媒としては、例えば有機塩基、エポキシ化合物の反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物などを用いることができる。触媒の使用割合は、エポキシ基含有ポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは100質量部以下である。
【0055】
使用する有機溶媒の好ましい具体例としては、2−ブタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及び酢酸ブチル等が挙げられる。有機溶媒は、固形分濃度が5〜50質量%となる割合で使用することが好ましい。上記反応における反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、反応時間は、好ましくは0.1〜50時間である。反応終了後においては、反応液から分取した有機溶媒層を、必要に応じて乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、機能性基を有するポリシロキサンを得ることができる。
【0056】
ポリシロキサンは、液晶分子を垂直配向させることが可能な基(以下、「垂直配向性基」ともいう。)を有していることが好ましい。垂直配向性基として具体的には、例えば、炭素数8〜22のアルキル基、炭素数6〜18のフッ素含有アルキル基、上記式(5)で表される基、及びステロイド骨格を有する炭素数17〜51の基等が挙げられる。垂直配向性基を有するポリシロキサンを液晶配向剤に含有させた場合、得られる液晶素子の光透過性及び光散乱性を一層良好にでき好適である。
【0057】
ポリシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜100,000であることがより好ましく、さらに1,000〜50,000であることが好ましい。
【0058】
液晶配向剤中のポリシロキサンの含有割合は、得られる液晶素子10の耐候性を十分に高くする観点から、液晶配向剤中の重合体成分の合計量に対して、1質量%以上とすることが好ましく、2質量%以上とすることがより好ましく、5質量%以上とすることがさらに好ましい。また、ポリシロキサンの含有割合の上限値は、97質量%以下とすることが好ましく、90質量%以下とすることがより好ましい。なお、ポリシロキサンは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
(シラン化合物)
液晶配向剤中に含有させるシラン化合物は、炭素−ケイ素結合を有する有機ケイ素化合物であり、その具体例としては、ポリシロキサンの合成に使用するシラン化合物として例示した加水分解性シラン化合物などが挙げられる。当該シラン化合物は、アルコキシシリル基(−Si(OR)3−r(Rはアルキル基であり、rは1〜3の整数である。複数のRは互いに同じでも異なっていてもよい。))を有することが好ましく、エポキシ基、アミノ基及びチオール基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するアルコキシシラン化合物がより好ましく、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物が特に好ましい。
【0060】
シラン化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、基材に対する密着性及び液晶素子10の耐候性の改善効果を十分に得る観点から、重合体の合計100質量部に対して、0.5質量部以上とすることが好ましく、1〜30質量部とすることがより好ましい。なお、シラン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
(光配向性基を有する重合体)
液晶配向膜14,15の形成に用いる液晶配向剤は、光配向性基を有する重合体を含有していることが好ましい。ここで、「光配向性基」とは、光照射による光異性化反応や光二量化反応、光分解反応、光フリース転位反応によって膜に異方性を付与する官能基を意味する。光配向性基の具体例としては、例えばアゾベンゼン又はその誘導体を基本骨格として含むアゾベンゼン含有基、桂皮酸又はその誘導体を基本骨格として含む桂皮酸構造含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含むカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含むベンゾフェノン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含むクマリン含有基、シクロブタン又はその誘導体を基本骨格として含むシクロブタン含有構造等が挙げられる。これらのうち、光に対する感度が高い点で、桂皮酸構造含有基が好ましく、例えば、下記式(1)で表される部分構造を有する基等が挙げられる。
【化3】
(式(1)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のフッ素含有アルキル基、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のフッ素含有アルコキシ基、又はフッ素原子である。aは0〜4の整数である。aが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。「*」は結合手を示す。)
【0062】
上記式(1)で表される部分構造において、2つの結合手「*」の一方は、下記式(4)で表される基に結合していることが好ましい。この場合、得られる液晶素子の光透過性及び光散乱性を高めることができ好適である。
【化4】
(式(4)中、R11は、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、シクロヘキシレン基又はビシクロヘキシレン基であり、環部分に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜20のフッ素含有アルキル基、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜20のフッ素含有アルコキシ基、又はフッ素原子を有していてもよい。R12は、式(1)中のベンゼン環に結合している場合には、単結合、炭素数1〜3のアルカンジイル基、酸素原子、硫黄原子、−CH=CH−、−NH−、−COO−又は−OCO−であり、式(1)中のカルボニル基に結合している場合には、単結合、炭素数1〜3のアルカンジイル基、酸素原子、硫黄原子又は−NH−である。「*」は結合手を示す。)
【0063】
光配向性基は、ポリ(メタ)アクリレートが有していてもよいが、ポリ(メタ)アクリレートとは異なる重合体が有していてもよい。光配向性基を有する重合体の主骨格としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド等が挙げられる。液晶素子10の信頼性及び耐候性を確保する観点で、光配向性基を有するポリシロキサンを好ましく用いることができる。
【0064】
光配向性基を有する重合体を合成する方法は特に制限されず、重合体の主骨格に応じて適宜選択すればよい。具体例としては、(1)光配向性基を有するモノマーを用いて重合する方法、(2)第1の官能基(例えばエポキシ基など)を側鎖に有する重合体を合成し、次いで第1の官能基と反応し得る第2の官能基(例えばカルボキシル基など)及び光配向性基を有する反応性化合物と、第1の官能基を有する重合体とを反応させる方法、等が挙げられる。光配向性基を有する重合体がポリシロキサンの場合、側鎖への導入効率が高い点で、(2)の方法によることが好ましい。
【0065】
液晶配向剤が、光配向性基を有する重合体と、光配向性基を有さない重合体とを含有する場合、光配向性基を有する重合体の含有割合は、液晶配向剤を用いて形成した塗膜に対し放射線照射によって十分な配向能を付与する観点から、液晶配向剤中の重合体成分の合計量に対して、1質量%以上とすることが好ましく、5〜99質量%とすることがより好ましい。
【0066】
液晶配向剤に含有される重合体成分は、上述したポリ(メタ)アクリレート及びポリシロキサンに限定されず、その他の重合体を含んでいてもよい。その他の重合体としては、例えば、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミド、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体等が挙げられる。その他の重合体としては、これらのうち、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、ポリアミック酸がより好ましい。
【0067】
上記その他の重合体の配合割合は、液晶配向剤中の重合体成分の合計量に対して、20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましく、5質量%以下とすることがさらに好ましい。なお、その他の重合体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0068】
(架橋剤)
液晶配向剤は、その他の成分として、架橋性基を有する化合物(以下、架橋剤ともいう。)を含有することが好ましい。架橋性基は、光や熱によって同一又は異なる分子間に共有結合を形成可能な基であり、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基を有する基(アルケニル基、ビニルフェニル基など)、エチニル基、エポキシ基(オキシラニル基、オキセタニル基)、カルボキシル基、(保護)イソシアネート基等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高い点で、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。なお、「(メタ)アクリロ」は、アクリロ及びメタクリロを含む意味である。架橋剤が有する架橋性基の数は、1個でもよく、複数個でもよい。液晶素子の信頼性を十分に高くする点で、好ましくは2個以上であり、2〜6個がより好ましい。
【0069】
架橋剤の具体例としては、例えば、フタル酸ジアリルなどのアリル基含有化合物;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系化合物;
マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、テトラカルボン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸、エチレングリコールビストリメート、プロピレングリコールビストリメート、4,4’−オキシジフタル酸、トリメリット酸無水物等のカルボン酸;
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等のエポキシ化合物;
トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネートを保護基で保護した(保護)イソシアネート化合物、などが挙げられる。架橋剤としては、これらの中でも、多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0070】
架橋剤の配合割合は、液晶配向性及び電気特性の改善効果を十分に得る観点から、液晶配向剤の調製に使用する重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部である。なお、架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(酸化防止剤)
液晶配向剤は、その他の成分として、酸化防止剤(重合禁止剤ともいう。)を含有することが好ましい。酸化防止剤は、紫外線や熱などのエネルギがきっかけとなって発生したラジカルや過酸化物を無効化し、重合を遅延又は禁止する機能を有する。このような酸化防止剤を配向膜中に含有させることにより、配向膜表面近傍に存在する液晶組成物中の重合性化合物の重合反応を抑制し、液晶の配向性の低下を抑制する効果が得られる点で好ましい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、アミン構造(好ましくは、ヒンダードアミン構造)を有する化合物、フェノール構造(好ましくは、ヒンダードフェノール構造)を有する化合物、アルキルホスフェート構造を有する化合物(リン系酸化防止剤)、チオエーテル構造を有する化合物(イオウ系酸化防止剤)、及びこれらの混合物(ブレンド系酸化防止剤)などが挙げられる。
【0072】
酸化防止剤の好ましい例としては、アミン構造を有する化合物として、例えばアデカスタブLA−52、LA−57、LA−63、LA−68、LA−72、LA−77、LA−81、LA−81、LA−82、LA−87、LA−402、LA−502(以上、ADEKA製)、CHIMASSORB119、CHIMASSORB2020、CHIMASSORB944、TINUVIN622、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN765、TINUVIN770、TINUVIN111、TINUVIN783、TINUVIN791(以上、BASFジャパン製)等を;
フェノール構造を有する化合物として、例えばアデカスタブAO−20、同AO−30、同AO−40、同AO−50、同AO−60、同AO−80、同AO−330(以上、ADEKA製)、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGAOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1330、IRGANOX1726、IRGANOX1425、IRGANOX1520、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX3114、IRGANOX3790、IRGANOX5057、IRGANOX565、IRGAMOD295(以上、BASFジャパン製)等を;
【0073】
リン系酸化防止剤として、例えばアデカスタブPEP−4C、同PEP−8、同PEP−36、HP−10、2112(以上、ADEKA製)、IRGAFOS168、GSY−P101(以上、堺化学工業製)、IRGAFOS168、IRGAFOS12、IRGAFOS126、IRGAFOS38、IRGAFOS P−EPQ(以上、BASFジャパン製)等を;
イオウ系酸化防止剤として、例えばアデカスタブAO−412、同AO−503(以上、ADEKA製)、IRGANOX PS 800、IRGANOX PS 802(以上、BASFジャパン製)等を;
ブレンド系酸化防止剤として、例えばアデカスタブA−611、同A−612、同A−613、同AO−37、同AO−15、同AO−18、328(以上、ADEKA製)、TINUVIN111、TINUVIN783、TINUVIN791(以上、BASFジャパン製)等を、それぞれ挙げることができる。酸化防止剤は、これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
液晶配向剤中における酸化防止剤の含有割合は、液晶配向剤の調製に使用する重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部であり、より好ましくは0.01〜10質量部であり、特に好ましくは0.1〜10質量部である。
【0075】
液晶配向剤に含有されるその他の成分としては、例えば、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤などが挙げられる。これらその他の成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で、各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0076】
(溶剤)
液晶配向剤は、重合体成分及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶剤中に溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,2−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0077】
液晶配向剤の調製に使用する有機溶媒は、ポストベーク温度を低くした場合(例えば、160℃以下とした場合)にも良好な素子特性を示す液晶配向膜を得るために、これらのうち、1気圧における沸点が160℃以下の化合物を、溶剤の合計量に対して40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0078】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10質量%の範囲である。固形分濃度が1質量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10質量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
【0079】
<液晶素子の製造方法>
次に、液晶素子10の製造方法について説明する。液晶素子10は、第1基材11及び第2基材12のそれぞれの電極配置面に液晶配向剤を塗布して液晶配向膜14,15を形成する工程Aと、液晶配向膜14,15を有する一対の基材を、液晶組成物の層を介して互いの電極配置面が対向するように配置して液晶セルを構築する工程Bと、液晶セルの構築後に重合性化合物を硬化させる工程Cと、を含む方法により製造することが好ましい。
【0080】
(工程A)
液晶配向剤の塗布は、第1基材11及び第2基材12のそれぞれの電極配置面上に、例えばオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法、インクジェット印刷法、バーコーター法、フレキソ印刷法などの公知の塗布方法により行う。液晶配向剤を塗布した後には、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、基材の種類に応じて設定されるが、140℃以下とすることが好ましく、120℃以下とすることがより好ましく、100℃以下とすることがさらに好ましい。プレベーク温度の下限値については、30℃以上とすることが好ましく、40℃以上とすることがより好ましい。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分である。
【0081】
その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて架橋反応を促進させることを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施されることが好ましい。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、高分子材料からなる基材を用いる場合、160℃以下とすることが好ましく、150℃以下とすることがより好ましく、110℃以下とすることが特に好ましい。液晶配向剤の重合体成分の少なくとも一部をポリ(メタ)アクリレートとすることによって低沸点溶剤への溶解性を改善することができ、これにより、ポストベーク温度を低くした場合にも、均質な配向膜を得ることができ、液晶素子10の液晶配向性及び電圧保持率を担保することが可能となる。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましく10〜120分である。
【0082】
(光配向処理)
液晶配向剤を用いて形成した塗膜に対しては、ラビング処理や光配向処理等を行うことによって液晶配向能を付与することが好ましい。本実施形態では、光照射することによって液晶配向能を付与する光配向処理を行う。
【0083】
光配向処理において、塗膜に対する光照射は、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線などの放射線を用いることができる。放射線は偏光であっても非偏光であってもよく、又はこれらを組み合わせて照射してもよい。露光方法は特に制限されず、例えば、直線偏光を基材面に垂直な方向又は斜め方向から照射する方法、非偏光を斜め方向から照射する方法などが挙げられる。
【0084】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。放射線の照射量は、好ましくは10〜50,000J/mであり、より好ましくは20〜10,000J/mである。光配向処理のための光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて、加熱中に塗膜に対して照射する方法、などにより行うことができる。
【0085】
(工程B)
工程Bでは、液晶配向膜を有する基材を2枚準備し、液晶配向膜が相対するように対向配置した2枚の基材間に、液晶及び重合性化合物を含有する液晶組成物の層を配置して液晶セルを製造する。具体的には、第1基材11及び第2基材12の周辺部をシール剤によって貼り合わせ、基材表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶組成物を注入充填した後、注入孔を封止する方法;一方の基材の液晶配向膜側の周辺部にシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶組成物を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基材を貼り合わせるとともに液晶を基材の全面に押し広げ、その後シール剤を硬化する方法(ODF方式)、などが挙げられる。シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0086】
(工程C)
工程Cでは、加熱及び光照射から選択される1種以上の処理を施すことによって、液晶組成物を硬化させる処理を行う。硬化反応の際の加熱温度は、使用する重合性化合物及び液晶の種類によって適宜に選択されるが、例えば40〜80℃の範囲の温度で加熱する。加熱時間は、好ましくは0.5〜5分である。光照射により硬化させる場合、照射光としては、200〜500nmの範囲の波長を有する非偏光の紫外線を好ましく使用することができる。光の照射量としては、50〜10,000mJ/cmとすることが好ましく、100〜5,000mJ/cmとすることがより好ましい。
【0087】
液晶素子10は種々の用途に適用可能であり、例えば、建物の窓や、室内外の仕切り(パーティション)、ショーウィンドウ、車両(自動車、航空機、船舶、鉄道など)の窓、室内外の各種広告、案内標識、家電機器、携帯電話、スマートフォン、各種モニタ、時計、携帯型ゲーム、パソコン、眼鏡、サングラス、医療機器、家具等の各種調光素子として有効に使用することができる。液晶素子10は、素子の厚みや硬さ、形状、用途等に応じて、そのまま使用してもよく、ガラスや透明樹脂等に貼り付けて使用してもよい。
【0088】
(液晶装置)
本開示の表示装置は、上述した液晶素子と、非表示状態で透明となる透明ディスプレイと、を備える。具体的には、図3に示すように、表示装置20は、透明ディスプレイ30の背面に液晶素子10が配置された構造となっており、液晶素子10が調光素子として機能することにより、透明ディスプレイ30の表示の視認性が変化するものとなっている。
【0089】
透明ディスプレイ30は、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)であり、一対のガラス基板と、透明電極材料で形成された陽極電極及び陰極電極と、陽極電極と陰極電極との間に形成された正孔輸送層及び発光層と、を備えている。透明ディスプレイ30は、電圧無印加の非表示状態では全面が透明であり、電圧印加されることで、電圧印加された画素が発光し、文字や画像等が表示される。
【0090】
図3の表示装置20において、液晶素子10及び透明ディスプレイ30が電圧無印加の状態では、表示装置20の全面が透明となる。そのため、例えば表示装置20がショーウィンドウの前面ガラスや後面ガラスとして適用された場合、ショーケースに陳列された商品や、店内の様子を屋外から視認することが可能となる。また、液晶素子10を電圧無印加にした状態のまま、透明ディスプレイ30に電圧が印加されることによって、透明ディスプレイ30に表示された文字や画像等はガラスに浮き出た状態で表示されることとなる。
【0091】
一方、液晶素子10に電圧が印加された状態では、透明ディスプレイ30の背面が遮光される。この場合、表示装置20に表示された文字や画像等と、表示装置20の背後の物体とが重ならないようにすることができ、透明ディスプレイ30の表示が見やすくなる。また、装飾性を高めることもできる。あるいは、表示装置20の前面や背面の明るさに応じて、液晶素子10の印加電圧を制御することによって、表示装置20の前面から背面への光の透過の度合いを可変にする構成としてもよい。
【0092】
なお、図3の表示装置20において、透明ディスプレイ30の一部の領域のみに調光素子10を配置する構成としてもよい。あるいは、透明ディスプレイ30の表示領域を複数に分割し、表示領域ごとに調光素子を配置することにより、表示領域ごとに透過率を変更可能な構成としてもよい。
【0093】
上記実施形態では、液晶配向膜14,15を光配向膜としたが、光配向処理を施さないものとしてもよい。この場合にも、液晶素子10の基材として高分子材料からなる基材を用いた場合において、液晶配向膜が均質であり、液晶配向膜の透明性が高く、光透過特性と光散乱特性とが良好であり、調光機能を実現する上で十分な電気特性を示し、かつ耐候性に優れた液晶素子を得ることができる。
【実施例】
【0094】
以下、本開示の内容を実施例により更に具体的に説明するが、本開示の内容は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0095】
以下の例において、重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及びエポキシ当量、並びに重合体溶液の溶液粘度は以下の方法により測定した。以下の実施例で用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。
【0096】
[重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn]
Mw及びMnは、以下の条件におけるGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C 2105に記載の塩酸−メチルエチルケトン法により測定した。
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0097】
以下の例で使用した化合物の略称と構造式との関係は以下のとおりである。なお、以下では便宜上、「式(X)で表される化合物」を単に「化合物(X)」と示す。
【0098】
(カルボン酸)
【化5】
【0099】
(重合性化合物)
【化6】
【0100】
(光開始剤)
【化7】
【0101】
(架橋剤)
【化8】
【0102】
(シラン化合物)
【化9】
【0103】
(酸化防止剤)
【化10】
【0104】
(二色性色素)
【化11】
【0105】
<ポリ(メタ)アクリレートの合成>
[合成例1]
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.2質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を仕込んだ。引き続き、メタクリル酸グリシジル80質量部及びスチレン20質量部を仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液温度を95℃に上昇させ、この温度を5時間保持し、重合体(Pac−1)を含む重合体溶液を得た。なお、重合体溶液の固形分濃度の測定結果から算出された反応終了後のモノマー消費率は99%であった。
【0106】
[合成例2]
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.2質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を仕込んだ。引き続き、メタクリル酸グリシジル50質量部及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル=メタクリラート50質量部を仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液温度を95℃に上昇させ、この温度を5時間保持し、重合体(Pac−2)を含む重合体溶液を得た。なお、重合体溶液の固形分濃度の測定結果から算出された反応終了後のモノマー消費率は99%であった。
【0107】
<エポキシ基を有するポリシロキサンの合成>
[合成例3]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有するポリシロキサンを粘調な透明液体として得た。このエポキシ基を有するポリシロキサンについて、H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。合成例3で得られたエポキシ基を有するポリシロキサン(SEp−1)の重量平均分子量(Mw)はMw=2,200であり、エポキシ当量は186g/モルであった。
【0108】
<機能性基を有するポリシロキサンの合成>
[合成例4]
100mLの三口フラスコに、合成例3で得たエポキシ基を有するポリシロキサン(SEp−1)18.4g、メチルイソブチルケトン70.8g、桂皮酸誘導体(CA−1)3.45g(ポリオルガノシロキサン(SEp−1)が有するエポキシ基100モル部に対して15モル部)、桂皮酸誘導体(CA−2)6.21g(ポリシロキサン(SEp−1)が有するエポキシ基100モル部に対して25モル部)及びテトラブチルアンモニウムブロミド1.03gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、ジエチレングリコールジエチルエーテル40g及びシクロヘキサン60gを追加し、この溶液を6回分液洗浄により水洗した後、ジエチレングリコールジエチルエーテルをさらに100g追加し、固形分濃度10質量%となるように溶媒を留去した。これにより、機能性基を有するポリシロキサンである重合体(S−1)を含有する固形分濃度10質量%のジエチレングリコールジエチルエーテル溶液を得た。重合体(S−1)の重量平均分子量Mwは17,000であった。
【0109】
[合成例5及び合成例6]
反応に用いるカルボン酸の種類及び量を下記表1に記載のとおりに変更した以外は、合成例4と同様に合成し、機能性基を有するポリシロキサンとして重合体(S−2)、(S−3)を得た。なお、表1中の数字は、ポリシロキサン(SEp−1)が有するエポキシ基100モル部に対するモル部数を表す。
【0110】
【表1】
【0111】
<ポリアミック酸の合成>
[合成例7]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物121.35g(合成に使用したジアミンの全体量100モル部に対して90モル部)、並びにジアミン化合物として3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニルを94.34g(同30モル部)及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル84.3g(同70モル部)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1200gに溶解し、30℃で6時間反応を行った。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。回収した沈殿物をメタノールで洗浄した後、減圧下40℃において15時間乾燥することにより、ポリアミック酸(以下、重合体(PA−1)とする。)を290g得た。得られた重合体(PA−1)をNMPにて20質量%となるように調製し、この溶液の粘度を測定したところ1310mPa・sであった。また、この重合体溶液を20℃において3日間静置したところ、ゲル化することはなく、保存安定性は良好であった。
【0112】
<ポリイミドの合成>
[合成例8]
テトラカルボン酸二無水物として2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物3.19g(12.8mmol)、並びにジアミン化合物として1,3−ジアミノ−4−[4−(トランス−4−n−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシメチル]ベンゼン4.59g(11.6mmol)及び3,5−ジアミノ安息香酸2.16g(14.2mmol)をNMP24.9gに溶解し、80℃で5時間反応を行った後、テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物2.50g(12.8mmol)、及びNMP12.4gを加え、40℃で8時間反応を行い、重合体濃度が25質量%のポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液30.0gにNMPを加えて6質量%に希釈した後、無水酢酸3.95g及びピリジン2.40gを加え、50℃で2時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。回収した沈殿物をメタノールで洗浄した後、減圧下100℃で乾燥することにより、ポリイミド(以下、重合体(PI−1)とする。)を得た。得られたポリイミドのイミド化率は55%であり、重量平均分子量は48,000であった。
【0113】
<液晶組成物の調製>
1.液晶組成物Iの調製
液晶(MLC−6608、メルク社製)を1.20g、重合性化合物として化合物(R−1)を1.20g、化合物(R−2)を0.60g、化合物(R−3)を0.12g及び化合物(R−4)を0.36g、並びに、光開始剤として化合物(P−1)を0.012g、を混合し、加熱した後に25℃まで冷却して液晶組成物Iを得た。
2.液晶組成物IIの調製
液晶(MLC−6608、メルク社製)を1.20g、下記に示す二色性色素を0.024g、重合性化合物として化合物(R−1)を1.20g、化合物(R−2)を0.60g、化合物(R−3)を0.12g及び化合物(R−4)を0.36g、並びに、光開始剤として化合物(P−1)を0.012g、を混合し、加熱した後に25℃まで冷却して液晶組成物IIを得た。
(二色性色素)
化合物(m−1)を6.0質量部、化合物(m−2)を2.0質量部、及び化合物(m−3)を2.0質量部、を混合したものを用いた。
【0114】
[実施例1]
<液晶配向剤の調製>
重合体成分として、合成例4で得た重合体(S−1)を含有するジエチレングリコールジエチルエーテル溶液を、重合体(S−1)に換算して20質量部に相当する量、及び合成例1で得た重合体(PAc−1)を含有する溶液を、重合体(PAc−1)に換算して80質量部に相当する量、並びに化合物(add−2)を5質量部混合し、これに溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加え、固形分濃度が4質量%、各溶媒の重量比がPGME:DEDG:PGMEA=30:20:50となるように調製した。次いで、この得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することにより液晶配向剤(A−1)を調製した。
【0115】
<液晶配向剤及び液晶素子の評価>
1.塗工性の評価
上記で調製した液晶配向剤(A−1)を、基材表面にITO電極を有するPETフィルム基材(PET−ITO基材)の電極配置面上にバーコーターを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換した120℃のオーブンで2分間加熱(ポストベーク)することにより、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。この塗膜を目視及び倍率100倍の顕微鏡で観察して、膜厚ムラ、塗工ムラ及びピンホールの有無を調べた。評価は、目視及び100倍の顕微鏡で観察しても膜厚ムラ、塗工ムラ及びピンホールがいずれも観察されなかった場合を塗工性「良好」、100倍の顕微鏡ではピンホールが観察されたが、目視で塗膜表面の塗工ムラが観察されなかった場合を塗工性「可」、目視により膜厚ムラ、塗工ムラ及びピンホールの少なくともいずれかが明確に観察された場合を塗工性「不良」として行った。本実施例では、目視及び100倍の顕微鏡でも、膜厚ムラ、塗工ムラ及びピンホールのいずれも観察されず、塗工性は「良好」であった。
【0116】
2.塗膜の透明性の評価
上記1.で得た塗膜に対し、分光光度計(日立製作所(株)製の150−20型ダブルビーム)を用いて、波長400nmにおける光線透過率(%)により塗膜の透明性を評価した。評価は、光線透過率が97%以上であった場合を透明性「良好」、97%未満であった場合を透明性「不良」とした。その結果、この塗膜の光線透過率は98.1%であり、透明性は「良好」であった。
【0117】
3.液晶素子の製造
上記1.で作製した塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて、313nmの輝線を含む偏光紫外線20mJ/cmを、基板法線から20°傾いた方向から照射して液晶配向膜を得た。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基材を一対(2枚)作成した。次いで、一方の基材の液晶配向膜を有する面に6μmのスペーサを塗布し、その後、スペーサを塗布した液晶配向膜面に、上記で調製した液晶組成物Iを滴下した。次いで、他方の基材の液晶配向膜面が向き合うように、2枚の基材をシール剤により貼り合わせ、液晶セルを得た。この液晶セルに、紫外線発光ダイオードを光源とする紫外線照射装置を用いて、波長365nm、紫外線強度15mW/cm、照射時間15秒、基材表面温度20℃の条件で紫外線を照射して液晶組成物Iを硬化させ、図1に示す液晶素子10を得た。
【0118】
4.光透過性の評価
電圧無印加状態での液晶素子のヘーズ(HAZE)を測定することにより、電圧無印加時の透明性を評価した。測定は、分光式ヘーズメータ(東京電色社製)を用いて行った。ヘーズ値が低いほど透明性が良好であることを意味する。その結果、本実施例では、ヘーズ値=2%であり、電圧無印加状態での透明性に優れていた。
5.光散乱性の評価
電圧印加状態での液晶素子の(HAZE)を測定することにより、電圧印加時の光散乱性について評価した。測定は、上記3.で製造した液晶素子に対し、交流駆動で20V印加し、上記4.と同様、分光式ヘーズメータ(東京電色社製)を用いて行った。ヘーズ値が高いほど光散乱性が良好であることを意味する。その結果、本実施例では、ヘーズ値=92%であり、電圧印加状態での光散乱性に優れていた。
【0119】
6.電圧保持率の評価
上記3.で製造した液晶素子に対し、23℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から1670ミリ秒後の電圧保持率(VHRBF)を測定したところ、電圧保持率は80.4%であった。なお、測定装置としては、(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
【0120】
7.耐候性の評価
上記3.で製造した液晶素子に対し、耐光性試験機(SUNTEST CPS+:東洋精機社製)によりキセノンランプ光(照度250W/m(300−800nm))を200時間照射した。光照射後の液晶素子につき、上記6.と同様の方法により電圧保持率を測定した。この値を光照射後電圧保持率(VHRAFXe)とした。電圧保持率の減少率ΔVHRXe(%)を下記数式(EX−1)から求め、減少率ΔVHRXeに基づき耐候性を評価した。
ΔVHRXe=((VHRBF−VHRAFXe)÷VHRBF)×100…(EX−1)
ΔVHRXeが5%未満であった場合を耐候性「良好」、5%以上10%未満であった場合を「可」、10%以上であった場合を「不良」と判断した。その結果、本実施例の液晶素子のΔVHRXeは3.5%であり、耐候性は「良好」であった。
また、200時間光照射した後の液晶素子につき、上記4.と同様の方法により電圧無印加状態でのヘーズ値を測定し、ヘーズ値に基づき耐候性を評価した。その結果、本実施例の液晶素子では、光照射後もヘーズ値は2%であり、光照射の前後で透明性は変わらなかった。
【0121】
[実施例2〜7及び比較例1]
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、液晶配向剤(A−1)の調製と同様に操作し、各液晶配向剤(A−2)〜(A−8)を調製した。また、各液晶配向剤(A−2)〜(A−8)を用いて、実施例1と同様に液晶素子の評価を行った。その結果を下記表3に示した。
【0122】
[実施例8]
1.液晶素子の製造及び評価
液晶組成物Iに代えて液晶組成物IIを使用した以外は、実施例1と同様にして液晶素子を製造した。また、得られた液晶素子を用いて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を下記表3に示した。
【0123】
実施例8では、上記1.で製造した液晶素子を用いて、さらに以下に示す評価(光透過性の評価、光遮断性の評価、及び繰り返し駆動耐久試験の評価)を行った。
2.光透過性の評価
電圧無印加状態での液晶素子の透過率を測定することにより、電圧無印加時の透明性を評価した。測定は、分光光度計(日立製作所(株)製の150−20型ダブルビーム)を用いて、波長400nmにおける光線透過率(%)により光透過性を評価した。透過率値が高いほど透明性が良好であることを意味する。その結果、本実施例では透過率=93%であり、電圧無印加状態での透明性に優れていた。
3.光遮断性の評価
電圧印加状態での液晶素子の透過率を測定することにより、電圧印加時の光遮断性について評価した。測定は、上記1.で製造した液晶素子に対し、交流駆動で40V印加し、上記2.と同様、分光光度計(日立製作所(株)製の150−20型ダブルビーム)を用いて行った。透過率値が低いほど光遮断性が良好であることを意味する。その結果、本実施例では透過率=5%であり、電圧印加状態での光遮断性に優れていた。
4.繰り返し駆動耐久試験の評価
液晶素子に対し、40Vの電圧を1秒間印加し、その後1秒間、無印加の状態にした。この操作を1800回繰り返した後に、上記2.及び上記3.と同様にして光透過性及び光遮断性を評価することにより、繰り返し駆動耐久試験の評価を行った。その結果、本実施例では、電圧無印加時の透過率=93%、電圧印加時の透過率=7%であり、駆動の前後において、電圧無印加時では透過率の変化が見られず、電圧印加時では透過率の増加は2%のみであった。この結果から、本実施例の液晶素子は繰り返し駆動耐久性に優れていると言える。
【0124】
【表2】
【0125】
表2中の配合量の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の合計100質量部に対する各化合物の配合割合(質量部)を示す。
表2中、略号は以下の通りである
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
GBL;γ−ブチロラクトン
【0126】
【表3】
【0127】
表3から分かるように、ポリ(メタ)アクリレートを含む液晶配向膜は、ポストベーク温度を低温(120℃)にした場合にも、均質でかつ透明性が高く、また、液晶素子の光透過特性及び光散乱特性が良好であった。加えて、得られた液晶素子は、電圧保持率も十分に高く、耐候性も良好であった。特に、ポリ(メタ)アクリレートとポリシロキサンとを液晶配向膜に含み、ポリ(メタ)アクリレートの比率が高い実施例1及び2は、塗工性、光透過性、光散乱性、電気特性及び耐候性が特に優れていた。また、液晶配向膜中に酸化防止剤を含む実施例7は、得られた液晶素子において、電圧無印加時のヘーズ値や耐候性評価後のヘーズ値が、酸化防止剤を液晶配向膜中に含まない実施例4と比較して優れていた。
また、液晶層に色素(二色性色素)を分散させた実施例8においても、得られた液晶素子の電圧保持率は十分に高く、耐候性も良好であった。また、液晶素子を電圧印加/無印加を繰り返し行った後でも光遮光性及び光透過性が共に良好であり、駆動耐久性に優れていた。この挙動は、配向膜側からのアシストによるものと考えられる。
これに対し、ポリイミドからなる液晶配向膜とした比較例1は、塗膜の塗工性及び透過率、並びに液晶素子の光透過性及び耐候性(ヘーズ値)が実施例よりも劣っていた。
【0128】
<透明ディスプレイと組み合わせたときの表示試験>
[実施例9]
透明ディスプレイの一方の外側表面に、実施例2で製造した液晶素子を重ね合せた表示装置を作製し、透明ディスプレイの表示を行ったところ、液晶素子の電圧無印加状態において透過性が良好であり、透明ディスプレイの表示の視認性は「良好」と判断された。
【0129】
[比較例2]
実施例9の液晶素子に代えて、偏光板方式の液晶素子を用いた以外は実施例9と同様に表示試験を行った。偏光板方式の液晶素子としては、一対のガラス基板の対向する面のそれぞれに透明電極及び液晶配向膜が形成されており、一対の基板間に液晶が充填され、周辺にシール剤を配置した液晶セルのガラス基板の外側に偏光板を配置したものを用いた。その結果、比較例2では、液晶素子の光透過性が悪く、透明ディスプレイの表示の視認性は「不良」と判断された。これは、アクリル樹脂を用いたPDLC素子の光透過性が良好であることを示すものといえる。一方、偏光板方式の液晶素子では、偏光板での光の吸収が存在するため、理論的に透過率は50%以上とならず、透明ディスプレイの視認性が劣る。以上のことから、透明ディスプレイに重ね合わせる表示素子として、ポリ(メタ)アクリレートを含む液晶配向膜を有する液晶素子10は特に優れているといえる。
【0130】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は上記実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0131】
10…液晶素子、11…第1基材、12…第2基材、13…液晶層、14,15…液晶配向膜、16,17…透明電極、20…表示装置、30…透明ディスプレイ
図1
図2
図3