(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
「リチウムイオン二次電池」
図1は、第1実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の模式図である。
図1に示すリチウムイオン二次電池100は、発電素子40と外装体50と非水電解液(図示略)とを備える。外装体50は、発電素子40の周囲を被覆する。発電素子40は、接続された一対の端子60、62によって外部と接続される。非水電解液は、外装体50内に収容されている。
【0023】
(発電素子)
発電素子40は、正極20と負極30とセパレータ10とを備える。
【0024】
<負極>
図2は、第1実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の負極の断面模式図である。
図2は、負極30を負極集電体32が広がる面内方向と交差(略直交)する面で切断した断面図である。負極30は、例えば、負極集電体32と負極活物質層34とを有する。
【0025】
[負極集電体]
負極集電体32は、例えば、導電性の板材である。負極集電体32は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属薄板である。負極集電体32の平均厚みは、例えば、10μm以上30μm以下である。
【0026】
[負極活物質層]
負極活物質層34は、負極集電体32の少なくとも一面に接する。負極活物質層34は、例えば、負極集電体32の両面に接する。負極活物質層34は、負極集電体32に沿って、面内方向に広がる。
【0027】
負極活物質層34の平均厚みは、負極集電体32の平均厚みの0.8倍以上2.0倍以下であり、好ましくは平均厚みの0.9倍以上1.5倍以下である。負極活物質層34の平均厚みは、例えば、8μm以上30μm以下である。負極活物質層34の平均厚みは、負極活物質層34の厚みを異なる10点で測定した平均値である。負極活物質層34の平均厚みが薄い系は、エネルギー密度が低くなりやすい。また負極活物質層34の平均厚みが薄い系は、電子及びリチウムイオンの導電パスを確保することが難しく、レート特性が低くなりやすい。
【0028】
負極活物質層34は、複数の負極活物質と、複数の導電助剤とを有する。負極活物質層34は、必要に応じてバインダーを有してもよい。
【0029】
負極活物質層34は、例えば、負極活物質と導電助剤とバインダーとを所定の割合で含む。例えば、負極活物質層34の負極活物質の質量%を70質量%以上85質量%以下とし、導電助剤の質量%を3質量%以上10質量%以下とし、バインダーの質量%を10質量%以上20質量%以下としてもよい。
【0030】
負極活物質層34は、分散部341と凝集物342とに分けられる。分散部341は、負極活物質と導電助剤が分散した領域である。例えば、分散部341において、負極活物質と導電助剤とは均一分散している。凝集物342は、負極活物質又は導電助剤が凝集したものである。
【0031】
凝集物342は、周囲長が5μm以上62μm以下である。凝集物342の周囲長は、負極活物質層34が広がる面と交差(略直交)する切断面における凝集物342の周囲の長さである。凝集物342は、周囲長が15μm以上の凝集物を含むことが好ましく、20μm以上の凝集物を含むことがより好ましく、30μm以上の凝集物を含むことがさらに好ましい。
【0032】
凝集物342は、扁平凝集物を含む。扁平凝集物は、形状に異方性を有する凝集物である。扁平凝集物の有無は、負極活物質層34が広がる面と交差(略直交)する第1の方向に沿って負極活物質層34を等間隔に切断した異なる切断面の5画像、及び、第1の方向と直交する第2の方向に沿って負極活物質層34を等間隔に切断した異なる切断面の5画像で判断する。
【0033】
扁平凝集物は、負極活物質層34が広がる面と交差(略直交)するいずれかの切断面において、短軸長さを長軸長さで割った扁平率が0.33以上0.80以下である。扁平凝集物の短軸長さ及び長軸長さは、扁平凝集物を内包する最も小さい楕円の長軸方向の長さと短軸方向の長さである。扁平凝集物の形状は不定形でもよい。凝集物342は、全て扁平凝集物であることが好ましい。
【0034】
扁平凝集物は、面内方向に配向していることが好ましい。「面内方向に配向する」とは、負極活物質層34が広がる面内方向に対する長軸の傾き角が45度以内であることを意味する。また扁平凝集物の長軸方向は、面内方向と略一致することが好ましい。扁平凝集物の長軸方向が面内方向と略一致するとは、扁平凝集物の長軸方向のxy平面に対する傾き角が10度以下であることを意味する。
【0035】
負極活物質層34は、一つ以上の凝集物342を含む。負極活物質層34は、凝集物342として活物質凝集物のみを有してもよく、導電助剤凝集物のみを有してもよく、活物質凝集物と導電助剤凝集物とを両方有してもよい。
【0036】
凝集物342は、負極活物質層34が広がる面と交差(略直交)する切断面において、300μmの幅の間に、1個以上5個以下あることが好ましい。凝集物342の数は、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定でき、10画像の平均値として求める。
【0037】
凝集物342は、負極活物質が凝集した活物質凝集物と、導電助剤が凝集した導電助剤凝集物に分けられる。活物質凝集物は、主に負極活物質を含む。活物質凝集物は、基本的には、負極活物質のみからなるが、不純物として導電助剤やバインダーを一部に含む場合もある。活物質凝集物は、負極活物質を90%以上含む。導電助剤凝集物は、主に導電助剤を含む。導電助剤凝集物は、基本的には、導電助剤のみからなるが、不純物として負極活物質やバインダーを一部に含む場合もある。導電助剤凝集物は、導電助剤を90%以上含む。
【0038】
活物質凝集物の平均粒径は、例えば、負極活物質の平均粒径の3倍以上である。活物質凝集物は、平均粒径が負極活物質の平均粒径の6倍以上のものを含むことが好ましく、平均粒径が負極活物質の平均粒径の10倍以上のものを含むことがより好ましい。
【0039】
導電助剤凝集物の平均粒径は、例えば、導電助剤の平均粒径の40倍以上である。導電助剤凝集物は、平均粒径が導電助剤の平均粒径の60倍以上のものを含むことが好ましく、平均粒径が導電助剤の平均粒径の80倍以上のものを含むことがより好ましい。
【0040】
凝集物の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した切断面における短軸長さと長軸長さの平均値であり、10画像中にある凝集物の平均値として求められる。
【0041】
負極活物質は、イオンを吸蔵・放出可能な化合物である。負極活物質は、例えば、公知のリチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質である。負極活物質は、例えば、炭素材料である。炭素材料は、例えば、イオンを吸蔵・放出可能な黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノチューブ、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素である。負極活物質の平均粒径は、例えば、100nm以上500nm以下である。
【0042】
導電助剤は、負極活物質層34における負極活物質間の電子伝導性を高める。導電助剤は、例えば、カーボンブラック類等のカーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物である。導電助剤は、カーボンブラック等の炭素材料が好ましい。
【0043】
バインダーは、活物質同士を結合する。バインダーは、公知のものを用いることができる。バインダーは、例えば、フッ素樹脂である。フッ素樹脂は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等である。
【0044】
上記の他に、バインダーは、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムでもよい。またバインダーは、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂等でもよい。
【0045】
<正極>
図1に示すように、正極20は、例えば、正極集電体22と正極活物質層24とを有する。
【0046】
[正極集電体]
正極集電体22は、例えば、導電性の板材である。正極集電体22は、例えば、負極集電体32と同様の構成である。
【0047】
[正極活物質層]
正極活活物質層24は、例えば、正極活物質と導電助剤とバインダーとを備える。正極活物質のみで十分な導電性を確保できる場合は、正極活物質層24は導電材を含んでいなくてもよい。
【0048】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンとカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能な電極活物質を用いることができる。
【0049】
正極活物質は、例えば、複合金属酸化物である。複合金属酸化物は、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMnO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
xCo
yMn
zM
aO
2の化合物(一般式中においてx+y+z+a=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、0≦a<1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMPO
4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、LiNi
xCo
yAl
zO
2(0.9<x+y+z<1.1)である。正極活物質は、有機物でもよい。例えば、正極活物質は、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンでもよい。
【0050】
導電助剤及びバインダーは、負極活物質層34における導電助剤及びバインダーと同様の材料を用いることができる。
【0051】
<セパレータ>
セパレータ10は、正極20と負極30とに挟まれる。セパレータ10は、正極20と負極30とを隔離し、正極20と負極30との短絡を防ぐ。セパレータ10は、正極20及び負極30に沿って面内に広がる。リチウムイオンは、セパレータ10を通過できる。
【0052】
セパレータ10は、例えば、電気絶縁性の多孔質構造を有する。セパレータ10は、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いはセルロース、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。セパレータ10は、例えば、固体電解質であってもよい。固体電解質は、例えば、高分子固体電解質、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質である。
【0053】
(端子)
端子60、62は、それぞれ正極20と負極30とに接続されている。正極20に接続された端子60は正極端子であり、負極30に接続された端子62は負極端子である。端子60、62は、外部との電気的接続を担う。端子60、62は、アルミニウム、ニッケル、銅等の導電材料から形成されている。接続方法は、溶接でもネジ止めでもよい。端子60、62は短絡を防ぐために、絶縁テープで保護することが好ましい。
【0054】
(外装体)
外装体50は、その内部に発電素子40及び非水電解液を密封する。外装体50は、非水電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止する。
【0055】
外装体50は、例えば
図1に示すように、金属箔52と、金属箔52の各面に積層された樹脂層54と、を有する。外装体50は、金属箔52を高分子膜(樹脂層54)で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムである。
【0056】
金属箔52としては例えばアルミ箔を用いることができる。樹脂層54には、ポリプロピレン等の高分子膜を利用できる。樹脂層54を構成する材料は、内側と外側とで異なっていてもよい。例えば、外側の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等を用い、内側の高分子膜の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を用いることができる。
【0057】
(非水電解液)
非水電解液は、外装体50内に封入され、発電素子40に含浸している。
非水電解液は、例えば、非水溶媒と電解質とを有する。電解質は、非水溶媒に溶解している。
【0058】
非水溶媒は、例えば、環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、を含有する。環状カーボネートは、電解質を溶媒和する。環状カーボネートは、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートである。環状カーボネートは、プロピレンカーボネートを少なくとも含むことが好ましい。鎖状カーボネートは、環状カーボネートの粘性を低下させる。鎖状カーボネートは、例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。非水溶媒は、その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等を有してもよい。
【0059】
非水溶媒中の環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は体積にして1:9〜1:1にすることが好ましい。
【0060】
電解質は、例えば、リチウム塩である。電解質は、例えば、LiPF
6、LiClO
4、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiCF
3CF
2SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3CF
2SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiN(CF
3CF
2CO)
2、LiBOB等である。リチウム塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。電離度の観点から、電解質はLiPF
6を含むことが好ましい。
【0061】
「リチウムイオン二次電池の製造方法」
まず負極30を作製する。負極集電体32は、例えば、市販のものを用いる。負極集電体32の少なくとも一面に、ペースト状の負極スラリーを塗る。塗布方法は、特に制限はない。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。負極スラリーは、負極活物質と導電助剤とバインダーと溶媒とを混合してペースト化したものである。また負極スラリーには、負極活物質又は導電助剤の凝集物を添加する。凝集物は、負極活物質又は導電助剤を複合化処理して得られる。複合化処理は、例えば、メカニカルアロイング法である。複数の負極活物質又は複数の導電助剤を機械的に混合して、凝集物が得られる。
【0062】
次いで、負極スラリー中の溶媒を除去する。除去方法は特に限定されない。例えば、負極スラリーが塗布された負極集電体32を、80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させる。次いで、得られた塗膜をプレスして、負極活物質層34を高密度化することで、負極30が得られる。プレスの手段は、例えばロールプレス機、静水圧プレス機等を用いることができる。
【0063】
次いで、正極20を作製する。正極20は、負極30と同様に作製できる。正極集電体22の少なくとも一面に、ペースト状の正極スラリーを塗る。正極スラリーは、正極活物質、バインダー、導電助剤及び溶媒を混合し、ペースト化したものである。正極スラリーを正極集電体22に塗布し、乾燥することで正極20が得られる。
【0064】
次いで、作製した正極20及び負極30の間にセパレータ10が位置するようにこれらを積層して、発電素子40を作製する。発電素子40が捲回体の場合は、正極20、負極30及びセパレータ10の一端側を軸として、これらを捲回する。
【0065】
最後に、発電素子40を外装体50に封入する。非水電解液は外装体50内に注入する。非水電解液を注入後に減圧、加熱等を行うことで、発電素子40内に非水電解液が含浸する。熱等を加えて外装体50を封止することで、リチウムイオン二次電池100が得られる。
【0066】
第1実施形態にかかるリチウムイオン二次電池は、後述する実施例で示すように、負極活物質が扁平凝集物を含むことで、レート特性が向上している。
【0067】
この原因は明確ではないが、所定のサイズの扁平凝集物の存在により、負極活物質層34内におけるリチウムイオン伝導性と電子伝導性とのうちの少なくとも一方が向上しているためではないかと考えられる。
【0068】
レート特性は、0.2CのCCCV充電後の0.2C放電容量を基準とし、急速放電させた際の容量維持率である。レート特性が高いほど、急速放電において電池の性能を十分発揮できる。活物質層内におけるリチウムイオン伝導性および電子伝導性は、レート特性に大きな影響を及ぼす。
【0069】
活物質凝集物は、主に、活物質からなる。活物質凝集物中では活物質同士がバインダーを介さず直接接触しており、リチウムイオン伝導性が向上しているのではないかと予想される。また導電助剤凝集物は、主に、導電助剤からなる。導電助剤凝集物中では、導電助剤同士がバインダーを介さず直接接触しており、電子伝導性が向上しているのではないかと予想される。
【0070】
また凝集物が所定の扁平形状であることで、活物質層内におけるリチウムイオン伝導性と電子伝導性とのうちの少なくとも一方が向上しやすくなっているのではないかと予想される。電子又はリチウムイオンにとって、扁平凝集物の長軸方向は移動しやすい。そのため、扁平凝集物の長軸方向が電子又はリチウムイオンにとっての幹線経路となり、電子又はリチウムイオンの移動が容易になっているのではないかと考えられる。扁平凝集物の長軸方向が面内方向に配向すると、面内方向にパスが確保され、よりレート特性が向上する。
【0071】
一方で、凝集物のサイズが大きくなりすぎると、レート特性は低下する。これは、凝集物が大きすぎると、負極活物質層34内における分散性が低くなりすぎ、負極活物質層34内の抵抗が増大したためと予想される。
【0072】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例】
【0073】
「実施例1」
まず、負極を作製した。負極は、負極活物質と導電助剤とバインダーとを混合し、負極合材を作製した。負極活物質は平均粒径500nmのグラファイト、導電助剤は平均粒径20nmのカーボンブラック、バインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)とした。負極活物質と導電助剤とバインダーは質量比で65:13:22とした。負極活物質及び導電助剤は、らいかい機で混練してから負極合材を作製した。この負極合剤を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極スラリーを作製した。そして、厚さ10μmの銅箔の一面に、負極スラリーを塗布した。塗布後に、100℃で乾燥させ、溶媒を除去して負極活物質層を形成した。負極活物質層の厚みは15μmであり、負極集電体の厚みの1.5倍であった。
【0074】
同条件で作製した負極の断面をSEMで確認した。その結果、活物質凝集物と導電助剤凝集物とが、300μmの幅の範囲内にそれぞれ一つずつ存在した。活物質凝集物は、周囲長が30μm、扁平率が0.5であった。導電助剤凝集物は、周囲長が40μm、扁平率が0.8であった。
【0075】
次いで、正極を作製した。正極は、正極活物質と導電材とバインダーとを混合し、正極合材を作製した。正極活物質はニッケル−マンガン−コバルト(NCA)、導電材はカーボンブラック、バインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)とした。正極活物質と導電材とバインダーは、質量比で95:2:3の割合とした。この正極合材を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極スラリーを作製した。そして、厚さ15μmのアルミニウム箔の一面に、正極スラリーを塗布した。塗布後に、100℃で乾燥させ、溶媒を除去して正極活物質層を形成した。
【0076】
(評価用リチウムイオン二次電池の作製 フルセル)
作製した負極と正極とを、厚さ10μmのポリプロピレン製のセパレータを介して交互に積層し、負極6枚と正極5枚とを積層することで積層体を作製した。さらに、積層体の負極において、負極活物質層を設けていない銅箔の突起端部にニッケル製の負極リードを取り付けた。また積層体の正極においては、正極活物質層を設けていないアルミニウム箔の突起端部にアルミニウム製の正極リードを超音波溶接機によって取り付けた。
【0077】
そしてこの積層体を、ラミネートフィルムの外装体内に挿入して周囲の1箇所を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成した。外装体内には、非水電解液を注入した。非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で3:7とした溶媒中に、リチウム塩として1.0M(mol/L)のLiPF
6が添加したものとした。そして、残りの1箇所を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封し、リチウムイオン二次電池(フルセル)を作製した。
【0078】
レート特性は、二次電池充放電試験装置を用いて測定した。レート特性は、電圧範囲を4.2Vから3.0Vまでとし、フルセル設計容量当たり1C=1000mAhとし、3C放電容量維持率(%)で評価した。3C放電容量維持率は、0.2Cの電流値でCCCV充電(定電流定電圧充電、終止電流値が0.05C)を行い0.2Cの電流値で放電したときの放電容量に対して、0.2Cの電流値でCCCV充電(定電流定電圧充電、終止電流値が0.05C)を行い3Cで放電したときの放電容量の割合であり、以下の式(1)で表される。
(3C容量維持率(%))=(0.2CCCV充電/3C放電容量)/(0.2CCCV充電/0.2C放電容量)×100 ・・・(1)
【0079】
「実施例2〜6、比較例1〜5」
実施例2〜6及び比較例1〜5は、負極活物質及び導電助剤の周囲長、扁平率及び存在数、らいかい機で混練する時間、及び、負極集電体に対する負極活物質層の厚みを変えた点が実施例1と異なる。凝集物は負極活物質および導電助剤をそれぞれらいかい機で撹拌することにより作製した。その凝集体はふるいを用いて大きさを分類した。分類した凝集物をSEMにて観察し、周囲長と扁平率が異なっていることを確認した。これにより分別した凝集体を各サンプルにそれぞれ混合した。混練時間の違いにより活物質凝集物及び導電助剤凝集物の周囲長、扁平率が変化した。
【0080】
実施例1〜6及び比較例1〜5の条件及び測定結果を表1にまとめた。表1において、厚み比は、負極活物質層の厚みを負極集電体の厚みで割った値である。容量維持率は、上記の3C容量維持率であり、レート特性を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
「実施例7〜9」
実施例7〜9は、負極活物質層内における活物質凝集物の数を実施例1と変更した。活物質凝集物数は、負極スラリーを作製する際に、周囲長30μmの活物質凝集物を固形分量に対して1.3×(n−1)%添加することで調整した。ここで、nは活物質凝集物数に対応する。なお、表における凝集物数は、活物質凝集物数と導電助剤凝集物数を足した値である。
【0083】
実施例7〜9の条件及び測定結果を表2にまとめた。表2には、比較のため、実施例1、実施例3、実施例4、実施例6の結果を同時に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
「実施例10〜13」
実施例10〜13は、活物質の平均粒子サイズを変更した点が実施例1と異なる。実施例10〜13の条件及び測定結果を表3にまとめた。表3には、比較のため、実施例1の結果を同時に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
「実施例14〜17」
実施例14〜17は、導電助剤の平均粒子サイズを変更した点が実施例1と異なる。実施例14〜17の条件及び測定結果を表4にまとめた。表4には、比較のため、実施例1の結果を同時に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
「実施例18〜22」
実施例18〜22は、負極活物質層における負極活物質、導電助剤、バインダーの構成比率を変更した点が実施例1と異なる。実施例18〜22の条件及び測定結果を表5にまとめた。表5には、比較のため、実施例1の結果を同時に示す。
【0090】
【表5】