特許第6870719号(P6870719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6870719
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】取り外し装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/00 20060101AFI20210426BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B66B7/00 K
   B66B11/08 M
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-202607(P2019-202607)
(22)【出願日】2019年11月7日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康雅
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−261946(JP,A)
【文献】 特開2015−182177(JP,A)
【文献】 実開昭63−047876(JP,U)
【文献】 実開昭57−136668(JP,U)
【文献】 実開昭54−147000(JP,U)
【文献】 特開2005−279809(JP,A)
【文献】 特開平02−249887(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01407857(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00─ 7/12
B66B 11/00─11/08
F16C 35/00─39/06
F16C 43/00─43/08
B25B 25/00─33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1径部と前記第1径部より径が大きい第2径部とを有する軸の前記第1径部に設けられた軸受けを前記軸から取り外すための装置であって、
保持部材と、
前記第2径部より前記第1径部に近い前記軸の端面に対向する第1位置に配置された前記保持部材を、前記端面から離れるように変位させる変位部材と、
爪部材と、
前記保持部材に設けられ、前記爪部材を支持する支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、前記保持部材が前記第1位置に配置された状態で、前記爪部材の先端が前記第2径部と前記軸受けとの境界部分に対向するように前記爪部材を支持し、
前記支持部材は、前記第1位置に配置された前記保持部材が前記端面から離れるように変位すると、前記先端が前記第1径部に近づいた後に前記端面に近づくように前記爪部材を変位させる取り外し装置。
【請求項2】
前記爪部材に、前記保持部材が前記第1位置に配置された状態で前記軸受けの外周面に対向する規制面が形成され、
前記第1位置に配置された前記保持部材が前記端面から離れるように変位することによって前記先端が前記第1径部に近づくと、前記先端が前記第1径部に接触する前に前記規制面が前記軸受けに接触する請求項1に記載の取り外し装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記保持部材が前記第1位置に配置された状態で前記軸の周囲に配置され、
前記支持部材に、前記保持部材が前記第1位置に配置された状態で前記端面に近づくに従って前記軸の外周面から離れる押し付け面が形成され、
前記爪部材は、前記押し付け面に沿って変位可能となるように前記支持部材に支持された請求項1又は請求項2に記載の取り外し装置。
【請求項4】
複数の前記爪部材が備えられ、
前記複数の爪部材は、前記保持部材が前記第1位置に配置された状態で、前記軸の周囲に等間隔に配置される請求項3に記載の取り外し装置。
【請求項5】
前記保持部材にねじ孔が形成され、
前記変位部材は、前記ねじ孔にねじ込まれ、前記保持部材が前記第1位置に配置された状態で先端が前記端面に接触する請求項1から請求項4の何れか一項に記載の取り外し装置。
【請求項6】
前記軸は、駆動綱車が固定される軸であり、
前記駆動綱車に、エレベーターの主ロープが巻き掛けられる請求項1から請求項5の何れか一項に記載の取り外し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸から軸受けを取り外すための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エレベーター装置が記載されている。特許文献1に記載されたエレベーター装置は、機械室に巻上機を備える。巻上機は駆動綱車を有する。駆動綱車に主ロープが巻き掛けられる。駆動綱車の軸は、軸受けによって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−11140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸受けは、軸に形成された段差によって位置決めされることが多い。例えば、軸は、第1径部と第1径部より径が大きい第2径部とを有する。軸受けは、第1径部に設けられ、第2径部に隣接するように配置される。この時、軸受けが第2径部から突出する量が小さいと、市販の工具を用いて軸受けを引き抜くことができず、軸受けを軸から取り外すことが困難になるといった問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされた。この発明の目的は、軸受けを軸から容易に取り外すことができる取り外し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る取り外し装置は、保持部材と、第2径部より第1径部に近い軸の端面に対向する第1位置に配置された保持部材を、端面から離れるように変位させる変位部材と、爪部材と、保持部材に設けられ、爪部材を支持する支持部材と、を備える。支持部材は、保持部材が第1位置に配置された状態で、爪部材の先端が第2径部と軸受けとの境界部分に対向するように爪部材を支持する。支持部材は、第1位置に配置された保持部材が端面から離れるように変位すると、先端が第1径部に近づいた後に端面に近づくように爪部材を変位させる。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る取り外し装置を使用することにより、軸受けを軸から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】エレベーター装置の例を示す図である。
図2】巻上機の一部の例を示す図である。
図3図2に示すA部の拡大図である。
図4】取り外し装置を用いて軸受けを取り外す方法を説明するための図である。
図5】取り外し装置を用いて軸受けを取り外す方法を説明するための図である。
図6】案内部材の例を示す図である。
図7図6のD−D断面を示す図である。
図8】爪部材の例を示す図である。
図9】軸受けの取り外し手順を説明するための図である。
図10】軸受けの取り外し手順を説明するための図である。
図11】軸受けの取り外し手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照し、本発明を説明する。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
図1は、エレベーター装置の例を示す図である。エレベーター装置は、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、主ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。
【0011】
主ロープ4は、巻上機5の駆動綱車6に巻き掛けられる。かご1は、駆動綱車6の回転に応じて移動する。制御装置7は、駆動綱車6の回転及び停止を制御する。かご1の移動は、制御装置7によって制御される。
【0012】
図1は、昇降路3の上方の機械室8に巻上機5及び制御装置7が設置される例を示す。巻上機5及び制御装置7は、昇降路3に設置されても良い。巻上機5が昇降路3に設置される場合、巻上機5は、昇降路3の頂部に設置されても良いし、昇降路3のピットに設置されても良い。
【0013】
図2は、巻上機5の一部の例を示す図である。図2は、巻上機5のうち駆動綱車6を支持する部分を示す。巻上機5は、駆動綱車6の他に、軸9、歯車10、軸受け11、軸受け12、及びハウジング13を備える。
【0014】
駆動綱車6は、軸9に固定される。図2は、駆動綱車6が軸9のうち端面9aに近い部分に固定される例を示す。歯車10は、軸9に固定される。巻上機5の電動機(図示せず)の出力軸の回転が、減速機(図示せず)を介して歯車10に伝えられる。歯車10が回転することにより、軸9を介して駆動綱車6が回転する。
【0015】
軸9は、軸受け11及び軸受け12を介してハウジング13に設けられる。駆動綱車6を支える軸9には、大きな荷重が作用する。このため、軸受け11及び軸受け12として、円筒コロ軸受けが用いられることが好ましい。軸受け11及び軸受け12として、円錐コロ軸受けといった他の種類の軸受けが用いられても良い。
【0016】
図2に示す例では、軸9は、第1径部14、第2径部15、及び第3径部16を備える。第2径部15は、軸9の中で最も径が大きい部分である。第2径部15は、第1径部14と第3径部16との間に配置される。第1径部14の径は、第2径部15の径より小さい。第1径部14と第2径部15との境界部分に、段差が形成される。同様に、第3径部16の径は、第2径部15の径より小さい。第2径部15と第3径部16との境界部分に、段差が形成される。図2は、第1径部14の径と第3径部16の径とが同じである例を示す。
【0017】
図3は、図2に示すA部の拡大図である。軸受け11は、第1径部14と第2径部15との間に形成された段差に合わせて、第1径部14に設けられる。軸受け11は、内輪11a、コロ11b、及び外輪11cを備える。内輪11aは、第2径部15に隣接する。内輪11aは、側面が第2径部15の端面15aに接触するように第1径部14に設けられる。
【0018】
軸受け12は、第3径部16と第2径部15との間に形成された段差に合わせて、第3径部16に設けられる。軸受け12の内輪は、第2径部15に隣接する。例えば、軸受け12の内輪は、側面が第2径部15のもう一方の端面に接触するように第3径部16に設けられる。
【0019】
次に、軸受け11及び軸受け12を軸9から取り外すための取り外し装置20について説明する。図4及び図5は、取り外し装置20を用いて軸受け11を取り外す方法を説明するための図である。図5は、図4のB−B断面を示す。図4は、図5のC−C断面に相当する図である。図4及び図5は、軸受け11を軸9から取り外すために、外輪11c及びコロ11bが内輪11aから予め外された状態を示す。即ち、第1径部14には内輪11aのみが固定されている。なお、図4では軸9を簡略化しており、軸9のうち駆動綱車6が取り付けられる部分等の記載を省略している。
【0020】
取り外し装置20は、例えば保持部材21、変位部材22、爪部材23、及び支持部材24を備える。
【0021】
保持部材21は、例えば円盤状の部材である。保持部材21には、中央部分にねじ孔21aが形成される。保持部材21には、ねじ孔21aの周囲に多数の貫通孔21bが等間隔に形成される。図4及び図5は、保持部材21に8個の貫通孔21bが形成される例を示す。
【0022】
図4及び図5は、保持部材21が第1位置に配置された状態を示す。第1位置に配置された保持部材21は、表面21cが軸9の端面9aに対向する。端面9aは、軸9に形成された2つの端面のうち、第2径部15より第1径部14に近い端面である。保持部材21が第1位置に配置されると、ねじ孔21aの中心軸は軸9の中心軸に一致する。
【0023】
変位部材22は、第1位置に配置された保持部材21を、端面9aから離れるように軸9の中心軸に沿って変位させるための部材である。本実施の形態に示す例では、変位部材22は押しボルトである。変位部材22は、ねじ孔21aにねじ込まれることによって保持部材21に支持される。変位部材22は、保持部材21の表面21cから突出する。図4に示すように、変位部材22の先端は軸9の端面9aに接触する。なお、軸9は、例えば旋盤加工によって製造される。このため、軸9の端面9aには、旋盤加工時に設けられたセンター穴9bが形成されている。図4は、変位部材22の先端がセンター穴9bに配置された例を示す。
【0024】
支持部材24は、保持部材21に設けられる。爪部材23は、支持部材24によって支持される。本実施の形態に示す例では、支持部材24が8個の爪部材23を支持する例を示す。
【0025】
支持部材24は、複数のボルト25と案内部材26とを備える。例えば、支持部材24は、保持部材21に形成された貫通孔21bと同じ数のボルト25を備える。ボルト25は、一方の端部が保持部材21の貫通孔21bに通される。ボルト25にねじ込まれた2つのナット27が保持部材21を挟み込むことにより、ボルト25は保持部材21に固定される。ボルト25は、その中心軸が軸9の中心軸と平行になるように、保持部材21の表面21cから突出する。保持部材21には、貫通孔21bのそれぞれに対して、1本のボルト25が取り付けられる。
【0026】
案内部材26は、全体として環状である。案内部材26に、保持部材21に形成された貫通孔21bと同じ数の貫通孔26aが形成される。ボルト25のもう一方の端部は、貫通孔26aに通される。ボルト25にねじ込まれた2つのナット28が案内部材26を挟み込むことにより、案内部材26はボルト25に固定される。案内部材26には、貫通孔26aのそれぞれに対して、1本のボルト25が取り付けられる。図4及び図5に示す状態では、軸9は案内部材26の中央部分を貫通する。案内部材26は、保持部材21の表面21cに対向するように、軸9の周囲に配置される。
【0027】
図6は、案内部材26の例を示す図である。図6は、案内部材26の正面図を示す。図7は、図6のD−D断面を示す図である。案内部材26は、図4に示すように、保持部材21が第1位置に配置された状態で、爪部材23の先端が第2径部15と内輪11aとの境界部分に対向するように爪部材23を支持する。また、案内部材26は、第1位置に配置された保持部材21が軸9の端面9aから離れるように変位すると、爪部材23の先端が第1径部14に近づいた後に軸9の中心軸に沿って端面9aに近づくように爪部材23を変位させる。このような機能を実現するため、本実施の形態に示す案内部材26には、案内板29及び規制板30が備えられる。
【0028】
案内板29は、全体として環状である。案内板29は、表面29aが保持部材21の表面21cに対向するように、ボルト25を介して保持部材21に設けられる。案内板29に、爪部材23を押すための押し付け面29bが形成される。押し付け面29bは、表面29aから離れるに従って径が小さくなるすり鉢状の傾斜面である。図4に示す状態では、押し付け面29bは、軸9の端面9aに近づくに従って軸9の外周面から離れるように配置される。
【0029】
案内板29は、爪部材23が押し付け面29bに沿って変位可能となるように爪部材23を支持する。案内板29には、爪部材23の変位を案内するための案内溝29cが形成される。本実施の形態に示す例では、8個の爪部材23が案内板29に支持されるため、案内板29には8本の案内溝29cが形成される。図5に示す状態において、案内板29に支持された8個の爪部材23は、軸9の周囲に等間隔に配置される。
【0030】
規制板30は、環状の板部材である。規制板30は、ボルト31によって案内板29に固定される。規制板30は、案内板29の表面29d側から案内溝29cを塞ぐように案内板29に取り付けられる。表面29dは、表面29aが向く方向とは反対の方向を向く。上述したように、爪部材23は、押し付け面29bに沿って変位可能となるように案内板29に支持される。案内板29に対する爪部材23のこの変位は、爪部材23が規制板30に接触することによって止まる。
【0031】
図8は、爪部材23の例を示す図である。図8(a)は、爪部材23の正面図を示す。図8(b)は、爪部材23の側面図を示す。図8(c)は、爪部材23の底面図を示す。爪部材23は、軸受け11を軸9から取り外す際に、内輪11aに実際に接触する。爪部材23は、例えば楔部32、ガイド部33、及び連結部34を備える。
【0032】
楔部32は、全体として扇形状である。楔部32の先端部分は、図8(b)に示すように楔形状である。楔部32の先端32a(爪部材23の先端と同義)は、図8(a)に示すように、軸受け11の内輪11aの外形に合うように凹状に湾曲する。また、楔部32の先端部分に、規制面32bが形成される。規制面32bは、先端32aが向く方向と同じ方向を向く。即ち、規制面32bは、爪部材23の正面視において下方を向く。規制面32bは、保持部材21が第1位置に配置された図4及び図5に示す状態において、内輪11aの外周面に対向する。
【0033】
楔部32に、支持部材24からの力を受けるための受け面32cが形成される。受け面32cは、先端32aが向く方向とは反対の方向を向く湾曲した傾斜面である。受け面32cは、保持部材21が第1位置に配置された図4及び図5に示す状態において、案内板29の押し付け面29bに対向する。
【0034】
ガイド部33は、板状の部材である。ガイド部33は、案内溝29cの内部に配置され、案内溝29cの内部を移動する。楔部32とガイド部33とは連結部34によって連結される。ガイド部33と連結部34とは、全体としてT形状をなす。
【0035】
次に、図9から図11も参照し、取り外し装置20を用いて軸受け11を取り外す手順について説明する。図9から図11は、軸受け11の取り外し手順を説明するための図である。上述したように、軸受け11を取り外すためには、先ず、外輪11c及びコロ11bを内輪11aから取り外す。そして、取り外し装置20を、図4及び図5に示すように軸9に取り付ける。
【0036】
上述したように、図4及び図5に示す状態では、保持部材21は第1位置に配置される。保持部材21が第1位置に配置された状態では、変位部材22は、保持部材21から突出し、先端がセンター穴9bに配置される。爪部材23は、楔部32の先端32aが第2径部15と内輪11aとの境界部分に対向する。この時、楔部32の先端32aは、第2径部15の縁と内輪11aの縁とによって形成される僅かな溝に押し込まれる。
【0037】
図4及び図5に示す状態で変位部材22が特定の方向に回転すると、保持部材21は、軸9の端面9aから離れるように、即ちE方向に変位する。保持部材21に設けられた支持部材24は、保持部材21とともにE方向に変位する。支持部材24がE方向に変位すると、楔部32の受け面32cが案内板29の押し付け面29bに押される。これにより、爪部材23は、支持部材24から力を受ける。
【0038】
支持部材24がE方向への変位を開始する際に、楔部32の先端32aは、第2径部15と内輪11aとの境目に押し込まれている。このため、爪部材23のE方向への変位は内輪11aによって阻害される。支持部材24がE方向に変位することによって爪部材23が押し付け面29bに押されると、爪部材23は、楔部32の先端32aが第1径部14に接近するようにF方向に変位する。図9は、爪部材23が支持部材24に押されてF方向に僅かに変位した状態を示す。爪部材23がF方向に変位することにより、内輪11aは楔部32に押されてE方向に変位する。図9に示す状態では、楔部32の先端32aは、第2径部15の端面15aと内輪11aとの間に形成された空間に配置される。
【0039】
図10は、爪部材23が図9に示す状態からF方向に更に押し込まれた状態を示す。変位部材22が特定の方向に回転することによって保持部材21がE方向に一定の距離だけ変位すると、規制面32bが内輪11aの外周面に接触する。この時、楔部32の先端32aは、第1径部14の外周面に達していない。先端32aが第1径部14に接触する前に規制面32bが内輪11aに接触することにより、爪部材23が軸9に押し付けられることを防止できる。
【0040】
また、図10に示す状態では、爪部材23が規制板30に接触している。このため、図10に示す状態から保持部材21がE方向に移動すると、爪部材23は規制板30に押されてE方向に変位する。これにより、内輪11aは、爪部材23に押されてE方向に移動する。図11は、図10に示す状態から内輪11aがE方向に更に移動して、内輪11aが軸9から引き抜かれた状態を示す。
【0041】
本実施の形態に示す取り外し装置20を使用することにより、軸9に設けられた軸受け11を容易に取り外すことができる。即ち、作業者は、取り外し装置20を図4及び図5に示すように軸9に取り付けた後、変位部材22を特定の方向に回転させ続ければ良い。取り外し装置20を軸9に取り付けた直後は、変位部材22を回転させることによって、第2径部15と内輪11aとの間に爪部材23の先端が押し込まれる。このため、内輪11aが第2径部15から殆ど突出していないような場合でも、楔部32の先端32aを内輪11aに掛けることができる。また、爪部材23が規制板30に接触した後は、変位部材22を回転させることによって内輪11aを軸9の軸方向に移動させることができる。作業者は、変位部材22を回転させるといった同じ動作を続けることにより、軸受け11を軸9から取り外すことができる。
【0042】
エレベーター装置では、駆動綱車6を支持する軸9の軸受け11として、円筒コロ軸受け或いは円錐コロ軸受けが用いられることが多い。このような軸受けが採用されると、内輪11aと第2径部15との間に段差が形成され難く、市販の工具を用いて内輪11aを引き抜くことが困難になる。本実施の形態に示す取り外し装置20は、エレベーター装置の改修時等、駆動綱車6を支持する軸9の軸受け11を取り外す際に特に有効な手段となり得る。
【0043】
本実施の形態では、取り外し装置20を使用する際に、外輪11c及びコロ11bを内輪11aから予め外しておく例について説明した。これは一例である。外輪11c及びコロ11bを内輪11aから取り外す作業は必要に応じて実施すれば良い。
【符号の説明】
【0044】
1 かご、 2 つり合いおもり、 3 昇降路、 4 主ロープ、 5 巻上機、 6 駆動綱車、 7 制御装置、 8 機械室、 9 軸、 9a 端面、 9b センター穴、 10 歯車、 11 軸受け、 11a 内輪、 11b コロ、 11c 外輪、 12 軸受け、 13 ハウジング、 14 第1径部、 15 第2径部、 15a 端面、 16 第3径部、 20 取り外し装置、 21 保持部材、 21a ねじ孔、 21b 貫通孔、 21c 表面、 22 変位部材、 23 爪部材、 24 支持部材、 25 ボルト、 26 案内部材、 26a 貫通孔、 27 ナット、 28 ナット、 29 案内板、 29a 表面、 29b 押し付け面、 29c 案内溝、 29d 表面、 30 規制板、 31 ボルト、 32 楔部、 32a 先端、 32b 規制面、 32c 受け面、 33 ガイド部、 34 連結部
【要約】
【課題】軸受けを軸から容易に取り外すことができる取り外し装置を提供する。
【解決手段】取り外し装置20は、保持部材21、変位部材22、爪部材23、及び支持部材24を備える。支持部材24は、保持部材21が第1位置に配置された状態で、爪部材23の先端が第2径部15と軸受け11との境界部分に対向するように爪部材23を支持する。支持部材24は、第1位置に配置された保持部材21が端面9aから離れるように変位すると、爪部材23の先端が第1径部14に近づいた後に端面9aに近づくように爪部材23を変位させる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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図11