(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ローラ支持部は、前記緩衝部材として、前記押付ローラを回転自在に支持する板バネ部材を有することを特徴とする請求項9に記載のフィラメントワインディング装置。
前記折り返しガイド治具は、前記折り返しガイド治具の周方向において複数のガイド片に分割可能であることを特徴とする請求項12に記載のフィラメントワインディング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、例えば高弾性のピッチ系炭素繊維束を用いて、繊維束の層を以下のように形成することで、従来よりもさらに高剛性のカーボンロールが得られることが、本願発明者らにより知見された。すなわち、繊維束がマンドレルの軸方向に略平行に貼り付けられた0度配向層と、マンドレルの軸方向に対して一方側に傾けて巻き付けられた+θ配向層と、上記軸方向に対して他方側に傾けて巻き付けられた−θ配向層と、を形成すると良いことが知見された。このようなカーボンロールは、高剛性のため固有振動数が高く、高速で回転しても振動が抑制されやすいので、高速回転用の部材として、フィルム製造機械や印刷機械等の産業機械の巻き付けロール、及び、自動車のプロペラシャフト等に好適に利用されうる。
【0005】
ここで、特許文献1に記載のフィラメントワインディング装置を用いて0度配向層を形成するためには、マンドレルを回転させずに軸方向に移動させながら、樹脂が含浸された繊維束をヘリカル巻き装置から引き出してマンドレルに貼り付ける必要がある。しかしながら、マンドレルを回転させずに移動のみさせると、マンドレルに繊維束が巻き付けられないので、繊維束に付与されるテンションが弱くなる。このため、繊維束が自重でたるみ、繊維束の配置が乱れやすくなる。また、マンドレルの側部や底部等に貼り付けられる繊維束を目標位置に貼り付けることが難しく、0度配向層の形成が困難であるという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、マンドレルの軸方向に沿って繊維束をマンドレルに貼り付ける際に、繊維束の配向の安定性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明のフィラメントワインディング装置は、樹脂が含浸された複数の繊維束が巻き付けられるマンドレルを支持可能であり、且つ、マンドレルの軸方向に移動可能な支持ユニットと、前記マンドレルの周方向において放射状に配列され、且つ、前記複数の繊維束を前記マンドレルへそれぞれ案内する複数の繊維束ガイド部を有し、前記複数の繊維束ガイド部を経由して前記複数の繊維束を前記マンドレルに供給するヘリカルユニットと、を備え、前記複数の繊維束ガイド部のそれぞれは、前記マンドレルに供給されている前記繊維束を、前記軸方向に移動している前記マンドレルの周面に押し付ける押付ローラを有し、前記押付ローラは、前記軸方向と直交するローラ軸方向に延びるローラ軸を回転中心として、前記マンドレルの周面に接触して従動回転可能であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、繊維束が、繊維束ガイド部の押付ローラによってマンドレルの周面に押し付けられることで、樹脂の粘性によってマンドレルに貼り付けられる。これにより、マンドレルが回転しておらず繊維束に付与されるテンションが弱い場合でも、マンドレルに供給されている繊維束がたるむ前に当該繊維束をマンドレルに貼り付けることができ、繊維束を目標位置に貼り付けやすくすることができる。したがって、マンドレルの軸方向に沿って繊維束をマンドレルに貼り付けやすくすることができる。
【0009】
第2の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第1の発明において、前記繊維束ガイド部は、前記押付ローラよりも繊維束走行方向における上流側に配置され、前記押付ローラによって前記マンドレルに押し付けられる前の前記繊維束のテンションを受け止めるテンション受け部材を有することを特徴とするものである。
【0010】
マンドレルを回転させずに繊維束をマンドレルに貼り付ける場合でも、マンドレルが軸方向に移動することで、ある程度のテンションが、マンドレルに供給される繊維束に付与される。このテンションは、押付ローラをマンドレルから浮かせるように作用するので、当該テンションが押付ローラにそのまま作用すると、押付ローラが繊維束をマンドレルに押し付ける力が弱まるおそれがある。本発明では、押付ローラよりも上流側に配置されたテンション受け部材によって、繊維束に付与されたテンションが受け止められる。これにより、テンション受け部材よりも下流側に位置する押付ローラにテンションがそのまま作用することを抑制できるので、押付ローラによる押し付け力が弱まることを抑制できる。
【0011】
第3の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第2の発明において、前記テンション受け部材は、ローラであることを特徴とするものである。
【0012】
例えば、折れやすい繊維束(上述したピッチ系炭素繊維束等が、これに該当する)をマンドレルに貼り付ける場合、テンション受け部材が固定されていると、繊維束がテンション受け部材に擦られることで折れるおそれがある。本発明では、繊維束をローラに沿って滑らかに走行させることができるため、繊維束が折れることを抑制できる。
【0013】
第4の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第1〜第3のいずれかの発明において、前記ヘリカルユニットは、前記繊維束ガイド部を前記マンドレルの径方向に移動させるガイド移動機構を有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明では、マンドレルの外径に応じて繊維束ガイド部の径方向における位置を調整することで、押付ローラによって、様々な外径を有するマンドレルの周面に繊維束を押し付けることができる。
【0015】
第5の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第1〜第4のいずれかの発明において、前記支持ユニットは、前記軸方向において往復移動可能であり、前記繊維束ガイド部は、複数の前記押付ローラを有し、前記押付ローラとして、前記支持ユニットが前記軸方向における一方側へ移動しているときに前記繊維束を前記マンドレルの周面に押し付ける第1押付ローラと、前記第1押付ローラよりも前記軸方向における他方側に配置され、前記支持ユニットが前記軸方向における前記他方側へ移動しているときに前記繊維束を前記マンドレルの周面に押し付ける第2押付ローラと、が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、支持ユニットが往復移動可能な構成において、マンドレルが軸方向における一方に移動しているときには第1押付ローラによって、他方に移動しているときには第2押付ローラによって、繊維束をマンドレルの周面に押し付けることができる。これにより、マンドレルの往路及び復路の両方において繊維束をマンドレルに貼り付けることができるため、繊維束を効率的にマンドレルに貼り付けることができる。
【0017】
第6の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第1〜第5のいずれかの発明において、前記マンドレルは、前記軸方向に延びる円筒形状を有し、前記押付ローラは、前記押付ローラの軸心を含む断面において、前記ローラ軸方向における中央に向かうほど径が小さくなるように湾曲している縮径部分を有することを特徴とするものである。
【0018】
例えば、押付ローラが円筒状である場合、湾曲した周面を有するマンドレルに対する押付ローラの接触面積が小さいため、マンドレルの周面に繊維束が押し付けられにくくなるおそれがある。本発明では、押付ローラの縮径部分をマンドレルの周面に沿わせやすくすることができるため、押付ローラのマンドレル周面との接触面積を大きくすることができる。したがって、マンドレルの周面に繊維束を安定的に押し付けることができる。
【0019】
第7の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第6の発明において、前記押付ローラの、前記縮径部分よりも前記ローラ軸方向における両外側には、ローラ端部分がそれぞれ形成されており、前記押付ローラの前記断面において、前記ローラ端部分は、前記縮径部分の外縁の前記ローラ軸方向の端における接線よりも、前記押付ローラの径方向における内側に位置し、前記ローラ端部分の外縁と前記縮径部分の外縁とのなす角が、鈍角であることを特徴とするものである。
【0020】
縮径部分がローラ軸方向における端まで形成されていると、押付ローラの断面において、ローラ軸方向における端面と、縮径部分の外縁とのなす角が鋭角になる(鋭くなる)ため、以下の問題が生じやすくなる。すなわち、マンドレルの周方向において、現在繊維束が貼り付けられている位置と別の位置に繊維束が既に貼り付けられている場合、押付ローラの端部が上記別の位置の繊維束に接触すると、押付ローラの端部によって当該繊維束がめくり上げられるおそれがある。
【0021】
本発明では、ローラ端部分の外縁と縮径部分の外縁とのなす角が鈍角となっている。つまり、縮径部分(繊維束に接触しやすい部分)がローラ軸方向における端まで形成されている場合と比べて、縮径部分の端部近傍がなだらかな形状となっている。これにより、縮径部分のローラ軸方向における端部が、既にマンドレルに貼り付けられている繊維束に接触しても、当該繊維束がめくり上げられにくくなる。
【0022】
第8の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第7の発明において、前記ローラ端部分は、前記断面において、矩形状であることを特徴とするものである。
【0023】
本発明では、ローラ端部分の断面が矩形状(すなわち、ローラ端部が円筒状であり、ローラ端部の径が一定)であるため、製造時の加工を容易化することができる。
【0024】
第9の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第1〜第8のいずれかの発明において、前記繊維束ガイド部は、前記押付ローラを回転自在に支持するローラ支持部と、前記ローラ支持部が取り付けられるガイド支持体と、を備え、前記ローラ支持部は、前記押付ローラの前記マンドレルへの押し付け力の変動を吸収する緩衝部材を有することを特徴とするものである。
【0025】
本発明では、押付ローラによる押し付け力が、マンドレル周面の微小な凹凸や支持ユニットの微小な振動等、何らかの原因により変動した場合でも、緩衝部材によって押し付け力の変動を吸収できる。したがって、押し付け力が弱くなり過ぎることで繊維束がマンドレルにうまく貼り付けられなくなることや、押し付け力が強くなり過ぎることで押付ローラ等への負荷が過大になることを抑制することができる。
【0026】
第10の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第9の発明において、前記ローラ支持部は、前記緩衝部材として、前記押付ローラを回転自在に支持する板バネ部材を有することを特徴とするものである。
【0027】
本発明では、板バネ部材によって、押付ローラの支持、及び、押付ローラによる押し付け力の変動吸収の両方を行うことができる。つまり、押付ローラの支持用の部材と緩衝部材とを別個に設ける必要がない。したがって、部品の数の増加を抑えてコスト増大を抑制することができる。
【0028】
第11の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第9又は第10の発明において、前記ローラ支持部は、前記押付ローラを両持ち支持していることを特徴とするものである。
【0029】
押付ローラが片持ち支持されている場合、ローラ軸方向において、支持されている側の端部と比べて、支持されていない側の端部が大きく変位しやすくなる。このため、押付ローラのローラ軸がマンドレルの周面に対して傾きやすくなり、繊維束がマンドレルに安定的に貼り付けられにくくなるおそれがある。本発明では、押付ローラが両持ち支持されているので、押付ローラのローラ軸方向における一端部が他端部と比べて大きく変位することを抑制でき、押付ローラがマンドレルの周面に対して傾くことを抑制できる。したがって、繊維束をマンドレルに安定的に貼り付けやすくすることができる。
【0030】
第12の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第5の発明において、前記支持ユニットを制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記複数の繊維束が前記マンドレルの前記軸方向における一方側の端部から他方側の端部まで貼り付けられるように前記支持ユニットを前記軸方向における前記一方側に移動させた後、前記マンドレルへ供給されている各繊維束の一部分が前記マンドレルの前記他方側の端部からはみ出るように、前記支持ユニットを前記軸方向における前記一方側にさらに移動させ、前記複数の繊維束の、前記マンドレルの前記端部からはみ出たはみ出し部分が、環状の折り返しガイド治具によって囲われた状態で、前記支持ユニットを前記軸方向における前記他方側に引き返させることを特徴とするものである。
【0031】
第5の発明のように、支持ユニットが往復移動可能な構成においては、マンドレルの端まで貼り付けられた繊維束を切断せずに軸方向に折り返させて、繊維束を連続的にマンドレルに貼り付けるのが、生産効率上好ましい。但し、繊維束がマンドレルの端部まで貼り付けられた後、マンドレルをそのまま逆走させることで繊維束を折り返させると、繊維束に付与されているテンションによって、マンドレルの端部に貼り付けられた繊維束が軸方向に引っ張られて剥がれてしまうおそれがある。
【0032】
本発明では、制御部によって、支持ユニットを軸方向における一方側に移動させることで繊維束がマンドレルに貼り付けられた後、マンドレルの他方側の端部から各繊維束の一部分がはみ出させられる。そして、複数の繊維束のはみ出し部分が環状の折り返しガイド治具によって囲われた状態で、支持ユニットが他方側に引き返すと、複数の繊維束が折り返しガイド治具の径方向における内側から外側に案内されつつ、他方側に折り返させられる。支持ユニットがさらに他方側に移動すると、折り返しガイド治具は、繊維束のテンションによってマンドレル側へ引き寄せられる。マンドレルのサイズに応じた適切なサイズの折り返しガイド治具を用いることで、引き寄せられた折り返しガイド治具は、マンドレルの端面に接触して受け止められる。このため、折り返した繊維束が軸方向に引っ張られても、繊維束は折り返し治具によって受け止められるため、マンドレルから剥がれることが防止される。これにより、支持ユニットをさらに他方側に移動させると、繊維束の貼り付けを引き続き行うことができる。したがって、マンドレルを往復移動させて繊維束を連続的にマンドレルに貼り付けることができる。
【0033】
第13の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第12の発明において、前記折り返しガイド治具は、前記折り返しガイド治具の周方向において複数のガイド片に分割可能であることを特徴とするものである。
【0034】
例えば、径方向外側から内側に亘って細いスリットが形成された折り返しガイド治具を用い、当該治具の径方向内側に繊維束を手作業等で入れることで、繊維束を囲うこともできる。但し、その場合、繊維束をスリットに通す際に、折り返しガイド治具のスリット形成部分に繊維束が接触すると、繊維束が損傷するおそれがある。本発明では、複数のガイド片を連結させることで、折り返しガイド治具を形成しつつ、当該治具の径方向における外側から繊維束を囲うことができる。つまり、繊維束を囲うために繊維束をスリット等に通す必要がないため、繊維束の損傷を抑制できる。
【0035】
第14の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第12又は第13の発明において、前記折り返しガイド治具は、円環形状を有することを特徴とするものである。
【0036】
例えば、周方向において多角形状を有する折り返しガイド治具を用いても繊維束を囲うことができるが、そのような折り返しガイド治具を用いた場合、繊維束が折り返しガイド治具の角に当たる等して損傷するおそれがある。本発明では、折り返しガイド治具が円環形状を有する(すなわち、全体的に滑らかな形状を有する)ため、繊維束の損傷を抑制できる。
【0037】
第15の発明のフィラメントワインディング装置は、前記第12〜第14のいずれかの発明において、前記折り返しガイド治具の最大外径が、前記マンドレルの外径以下であることを特徴とするものである。
【0038】
本発明では、折り返しガイド治具が複数の繊維束を囲っている状態で、折り返しガイド治具がマンドレルよりも径方向外側に突出することを抑制できる。このため、支持ユニットを他方側に引き返させるときに、折り返しガイド治具がヘリカルユニットの押付ローラ等と干渉することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本発明の実施の形態について、
図1〜
図16を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、
図1に示す方向を前後左右方向とする。また、前後左右方向と直交する方向を、重力が作用する上下方向とする。
【0041】
(フィラメントワインディング装置の概略構成)
まず、フィラメントワインディング装置1の概略構成について、
図1を用いて説明する。フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、クリールスタンド3と、コントロールパネル4と、を備える。
【0042】
巻付装置2は、マンドレルMに繊維束Fを巻き付けるためのものである。本実施形態における繊維束Fは、例えば、ピッチ系炭素繊維束と呼ばれる高弾性の炭素繊維等の繊維材料に、熱硬化性の合成樹脂材が含浸されたものである。ピッチ系炭素繊維束は、高弾性である半面、折れやすいという性質を有する。マンドレルMは、例えば、自動車のプロペラシャフト等を製造するための芯材であり、円筒形状を有する。なお、巻付装置2の詳細については後述する。
【0043】
クリールスタンド3は、後述するヘリカル巻ユニット40(本発明のヘリカルユニット)に繊維束Fを供給するためのものである。クリールスタンド3は、支持フレーム11と、支持フレーム11に支持された複数のボビン支持部12とを有する。支持フレーム11は、概ね左右対称に配置されており、支持フレーム11の左右方向における中央部には、巻付装置2の一部が配設される配設空間13が形成されている(なお、配設空間13内の詳細については、図示を省略している)。複数のボビン支持部12には、ヘリカル巻ユニット40に供給される繊維束Fが巻かれているボビンBが、それぞれ回転可能に支持されている。
【0044】
コントロールパネル4は、制御装置5と、表示部6と、操作部7とを有する。制御装置5は、巻付装置2の各部の動作を制御する。表示部6は、巻付装置2によるマンドレルMへの繊維束の巻付条件等を表示する。操作部7は、オペレータが巻付装置2による巻付条件等を制御装置5に入力するためのものである。
【0045】
(巻付装置の構成)
次に、巻付装置2の構成について、
図2及び
図3を用いて説明する。巻付装置2は、基台15と、支持ユニット20(第1支持ユニット21及び第2支持ユニット22)と、フープ巻ユニット30と、ヘリカル巻ユニット40と、を備える。
【0046】
基台15は、支持ユニット20、フープ巻ユニット30、及び、ヘリカル巻ユニット40を支持するためのものである。基台15は、前後方向に延びている。基台15上には、前側から第1支持ユニット21、フープ巻ユニット30、ヘリカル巻ユニット40、第2支持ユニット22の順で、前後方向に並べて配置されている。また、基台15の上面には、前後方向に延びる複数のレール16が配設されている。支持ユニット20及びフープ巻ユニット30は、レール16上に配置され、レール16に沿って前後方向に移動可能に構成されている。ヘリカル巻ユニット40は、クリールスタンド3の配設空間13の前端部において、基台15に固定されている(
図1参照)。
【0047】
支持ユニット20は、フープ巻ユニット30よりも前側に配置される第1支持ユニット21と、ヘリカル巻ユニット40よりも後側に配置される第2支持ユニット22と、を有する。支持ユニット20は、マンドレルMの軸方向(前後方向)に延びる支持軸23を中心として、マンドレルMを回転可能に支持する。支持ユニット20は、支持ユニット20をレール16に沿って前後方向に移動させるための移動用モータ24と、マンドレルMを回転させるための回転用モータ25と、を有する(
図3参照)。移動用モータ24及び回転用モータ25は、制御装置5によって駆動制御される。
【0048】
フープ巻ユニット30は、マンドレルMに対して繊維束をフープ巻きする(マンドレルMの軸方向に対して概ね直角な方向に繊維束を巻き付ける)ためのものである。フープ巻ユニット30は、本体部31と、回転部材32と、を有する。本体部31は、レール16上に配置されており、回転部材32をマンドレルMの軸周りに回転可能に支持する。回転部材32は、円板形状を有する部材である。回転部材32の径方向中央部には、マンドレルMが通過可能な円形の通過穴34が形成されている。フープ巻ユニット30には、それぞれ繊維束が巻かれている複数のボビン33が取り付けられている。複数のボビン33は、回転部材32の周方向に等間隔で配置されている。
【0049】
フープ巻ユニット30は、
図3に示すように、フープ巻ユニット30をレール16に沿って前後方向に移動させるための移動用モータ35と、回転部材32を回転させるための回転用モータ36と、を有する。移動用モータ35及び回転用モータ36は、制御装置5によって駆動制御される。制御装置5は、マンドレルMが相対的に通過穴34を通過するようにフープ巻ユニット30をレール16に沿って往復移動させながら、回転部材32を回転させる。これにより、複数のボビン33がマンドレルMの軸周りに公転し、複数の繊維束が複数のボビン33から引き出される。引き出された複数の繊維束は、マンドレルMの表面に一斉にフープ巻きされる。
【0050】
本実施形態のヘリカル巻ユニット40は、マンドレルMに対して繊維束Fをヘリカル巻きする(マンドレルMの軸方向に対して概ね平行な方向に繊維束を巻き付ける)ためのものであるとともに、後述する0度配向層をマンドレルMに形成可能にするためのものである。ヘリカル巻ユニット40は、本体部41と、複数のガイド42と、複数のノズル43と、テンション付与装置(不図示)と、を有する。本体部41は、基台15に立設配置されている。本体部41の左右方向における中央部には、マンドレルMが前後方向に通過可能な円形の通過穴44が形成されている。通過穴44の周方向に沿って、複数のガイド42及び複数のノズル43(本実施形態では、それぞれ12個ずつ)が配置されている。通常のヘリカル巻きを行う場合、クリールスタンド3に配置されている複数のボビンBから引き出された複数の繊維束は、複数のガイド42を経由して、複数のノズル43に通される。ノズル43は、マンドレルMの径方向に沿って延びており、当該径方向における外側から内側に向けて繊維束Fを案内する。ノズル43は、後述するガイド移動機構80(
図8参照)によって、径方向に伸縮可能に構成されている。
【0051】
ヘリカル巻ユニット40は、
図3に示すように、複数のノズル43を伸縮させるためのガイド移動用モータ45を有する。ガイド移動用モータ45は、制御装置5によって駆動制御される。制御装置5は、マンドレルMが通過穴44を通過するように、支持ユニット20をレール16に沿って往復移動させながら、複数のノズル43をマンドレルMの外形に合わせて伸縮させる。これにより、複数のノズル43から引き出された複数の繊維束Fが、マンドレルMの表面に一斉にヘリカル巻きされる。回転しながら移動するマンドレルMに繊維束Fが巻き付けられることで、テンション付与装置(不図示)により、繊維束Fには所定のテンションが付与される。
【0052】
巻付装置2でマンドレルMへの繊維束の巻き付け動作を開始する際には、まず、例えば、オペレータが繊維束の糸端をテープ等でマンドレルMに固定する。或いは、繊維束の糸端の固定等を自動化するための装置を設けてもよい。繊維束の糸端がマンドレルMに固定された後、制御装置5が各モータ24、25、35、36、45(
図3参照)を駆動制御することで、支持ユニット20に支持されたマンドレルMに対して、フープ巻ユニット30によってフープ巻きを施すことができるとともに、ヘリカル巻ユニット40によってヘリカル巻きを施すことができる。このようにして、マンドレルMに繊維束が巻き付けられたカーボンロールが製造される。カーボンロールは、軽量、高剛性等の特性を有する。
【0053】
ここで、近年、例えば、上述したピッチ系炭素繊維束を用いて、繊維束Fの層を以下のように形成することで、従来よりもさらに高剛性のカーボンロールが得られることが、本願発明者らにより知見された。すなわち、繊維束FがマンドレルMの軸方向に略平行に貼り付けられた0度配向層と、マンドレルMの軸方向に対して一方側に傾けて巻き付けられた+θ配向層と、上記軸方向に対して他方側に傾けて巻き付けられた−θ配向層と、を形成すると良いことが知見された。
【0054】
0度配向層を形成するためには、マンドレルMを回転させずに前後方向に移動させながら、繊維束Fをヘリカル巻ユニット40から引き出してマンドレルMに貼り付ける必要がある。しかしながら、マンドレルMを回転させずに移動のみさせると、上述した通常のヘリカル巻きを行う場合(マンドレルMを回転させながら移動させて繊維束FをマンドレルMに巻き付ける場合)と比べて、繊維束Fに付与されるテンションが弱くなる。このため、繊維束Fが自重でたるみやすくなり、マンドレルの側部や底部等に貼り付けられる繊維束を目標位置に貼り付けることが難しくなるおそれがある。そこで、ヘリカル巻ユニット40は、前後方向に沿って繊維束FをマンドレルMに貼り付けやすくするため、以下のような構成を備える。
【0055】
(0度配向層形成のための構成)
0度配向層を形成しやすくするための構成について、
図4〜
図8を用いて説明する。
図4は、ヘリカル巻ユニット40の上側部分の正面図である。
図5は、後述する繊維束ガイド部50の斜視図である。
図6(a)〜(c)は、繊維束ガイド部50の正面図、平面図及び側面図である。
図7は、押付ローラ54の、軸心Cを含む断面図である。
図8(a)は、
図4のVIII−VIII断面図である。
図8(b)は、後述する押付ローラ54がマンドレルMに接触している状態を示す図である。
【0056】
図4に示すように、ヘリカル巻ユニット40の前面には、放射状に配列された複数のノズル43にそれぞれ対応して、複数(本実施形態では12個)の繊維束ガイド部50が設けられる。複数の繊維束ガイド部50は、回転せず前後方向に移動のみしているマンドレルMへ複数の繊維束Fをそれぞれ案内し、且つ、マンドレルMに複数の繊維束Fをそれぞれ貼り付けるためのものである。複数の繊維束ガイド部50は、ヘリカル巻ユニット40に対して着脱可能であり、マンドレルMに0度配向層を形成する際にヘリカル巻ユニット40に取り付けられ、通過穴44の周方向(すなわち、マンドレルMの周方向)に放射状に配置される。各繊維束ガイド部50は、後述する接続部材83(
図8参照)を介して、ノズル43に固定されている。これにより、複数の繊維束ガイド部50は、マンドレルMの径方向に移動可能である。
【0057】
(繊維束ガイド部)
繊維束ガイド部50の構成について、
図5〜
図7を用いて説明する。なお、
図5及び
図6における繊維束ガイド部50は、
図4における12時の位置にある繊維束ガイド部50を示している。
図5及び
図6に示されている上下方向は、マンドレルMの径方向と一致する。
図5及び
図6に示されている左右方向は、後述する押付ローラ54の軸方向(以下、ローラ軸方向とする)と一致する。
【0058】
図5及び
図6に示すように、繊維束ガイド部50は、ガイド支持体51と、押付ローラ支持部52と、拡幅ローラ53と、押付ローラ54と、を有する。繊維束ガイド部50は、ガイド支持体51によって繊維束FをマンドレルMの径方向における外側から内側(
図5及び
図6における上方から下方)へ案内し、拡幅ローラ53によって繊維束Fを拡幅する。さらに、繊維束ガイド部50は、押付ローラ支持部52に支持された押付ローラ54によって、マンドレルMに繊維束Fを押し付ける。押付ローラ支持部52、拡幅ローラ53及び押付ローラ54は、繊維束ガイド部50に2つずつ設けられ、前後対称に配置されている。以降、必要に応じて、前方の押付ローラ支持部52等の符号の末尾には“F”を、後方の押付ローラ支持部52等の符号の末尾には“R”を、それぞれ付記する。
【0059】
まず、ガイド支持体51について説明する。ガイド支持体51は、繊維束FをマンドレルMの径方向における外側から内側(すなわち、繊維束走行方向における上流側から下流側)へ案内するためのものである。ガイド支持体51は、上側部材61と、中間部材62、63と、下側部材64、65とを有する。ガイド支持体51において、マンドレルMの径方向における外側から内側へ順に、上側部材61、中間部材62及び63、下側部材64及び65が配置されており、ガイド支持体51は、全体としてマンドレルMの径方向に延びた形状を有する。
【0060】
上側部材61は、ヘリカル巻ユニット40に移動可能に接続されるためのものである(詳細は後述する)とともに、ローラ軸方向端部に中間部材62、63がそれぞれ接続されるためのものである。上側部材61は、左右方向(ローラ軸方向)に延び、上方から見て概ねU字形状を有する部材である(
図5及び
図6(b)参照)。中間部材62、63は、上下方向(マンドレルMの径方向)に延びた形状を有する部材である(
図5及び
図6(a)、(c)参照)。中間部材62の上部は上側部材61の左端部に、中間部材63の上部は上側部材61の右端部に、それぞれ固定されている。中間部材62、63の上下方向における途中部分は、左右方向に屈曲している(
図5及び
図6(a)参照)。これにより、中間部材62、63は、板バネとして機能し、例えば、繊維束Fの貼り付け中において繊維束ガイド部50の微小振動等を抑制する。
【0061】
下側部材64、65は、2つの拡幅ローラ53を回転自在に支持するためのものである。下側部材64、65は、
図6(b)に示すように、前後方向に延び、上方から見て略U字形状を有する。下側部材64は中間部材62の下部に、下側部材65は中間部材63の下部に、それぞれ固定されている。下側部材64、65は、前後に並べられた2つの拡幅ローラ53を回転自在に両持ち支持する(
図5及び
図6(c)参照)。また、下側部材64には、前後方向に延びるガイド棒66(
図6(b)のハッチング部分)が取り付けられている。同様に、下側部材65には、ガイド棒67が取り付けられている。ガイド棒66、67は、ローラ軸方向に並べて配置され、これらの間に繊維束Fが通される。これにより、ガイド支持体51によって案内されている繊維束Fが、ローラ軸方向にずれることが抑制される。
【0062】
次に、拡幅ローラ53について説明する。2つの拡幅ローラ53(本発明のテンション受け部材)は、マンドレルMの径方向における外側から内側へ案内される繊維束Fを拡幅するためのものであるとともに、繊維束Fのテンションを受け止めるためのものである。2つの拡幅ローラ53は、例えば、円筒形状を有する樹脂製のローラである。2つの拡幅ローラ53は、下側部材64、65によって回転自在に両持ち支持されており、走行する繊維束Fが接触することで従動回転可能である。拡幅ローラ53の軸方向は、マンドレルMの軸方向と直交している。下側部材64、65の前側部分には拡幅ローラ53Fが、後側部分には拡幅ローラ53Rが、それぞれ支持されている(
図5及び
図6(c)参照)。
【0063】
拡幅ローラ53F、53Rは、前後方向において互いに離間しており、これらの間に繊維束Fが通されるように構成されている。拡幅ローラ53Fは、マンドレルMが前方へ移動しているときに繊維束Fが接触するように配置されている。拡幅ローラ53Rは、マンドレルMが後方へ移動しているときに繊維束Fが接触するように配置されている。また、2つの拡幅ローラ53は、2つの押付ローラ54よりも上方(マンドレルMの径方向における外側)に配置されており(
図6(c)参照)、マンドレルMに接触しないように構成されている。
【0064】
次に、押付ローラ支持部52(本発明のローラ支持部)について説明する。
図5及び
図6に示すように、2つの押付ローラ支持部52は、ガイド支持体51の前後両端部に1つずつ取り付けられている。より具体的には、2つの押付ローラ支持部52は、下側部材64、65の前後両端部に取り付けられている。
【0065】
2つの押付ローラ支持部52は、それぞれ板バネ部材71、72(本発明の緩衝部材)を有する。板バネ部材71、72は、前後方向から見て、概ねL字状の部材である。前方の押付ローラ支持部52Fに設けられた板バネ部材71Fは、下側部材64の前端部に取り付けられて前方に延びている。板バネ部材71Fの前側部分は下方(マンドレルMの径方向内側)に延び、押付ローラ54Fの回転軸の一方側端部を支持している。同様に、板バネ部材72Fは、下側部材65の前端部に取り付けられ、押付ローラ54Fの回転軸の他方側端部を支持している。つまり、板バネ部材71F、72Fにより、押付ローラ54Fが回転自在に両持ち支持されている。押付ローラ54Fによる押し付け力が、マンドレルMの周面の微小な凹凸等、何らかの原因により変動した場合でも、板バネ部材71F、72Fにより、押し付け力の変動が吸収される。
【0066】
同様に、後側の押付ローラ支持部52Rは、板バネ部材71R、72Rを有する。板バネ部材71R、72Rは、押付ローラ54Rを回転自在に両持ち支持し、且つ、押付ローラ54RのマンドレルMへの押し付け力の変動を吸収する。
【0067】
次に、2つの押付ローラ54について、
図5〜
図7を用いて説明する。2つの押付ローラ54は、繊維束FをマンドレルMに押し付けることで、前後方向(マンドレルMの軸方向)に沿って繊維束FをマンドレルMに貼り付けるためのものである。2つの押付ローラ54の周面は、例えば、ゴム又はウレタン等の、可撓性及び/又は弾性を有する部材で形成されている。2つの押付ローラ54の軸方向は、マンドレルMの軸方向と直交している(
図4参照)。
図5及び
図6に示すように、前側の押付ローラ54F(本発明の第1押付ローラ)は押付ローラ支持部52Fに、後側の押付ローラ54R(本発明の第2押付ローラ)は押付ローラ支持部52Rに、それぞれ回転自在に両持ち支持されている。押付ローラ54F、54Rは、走行する繊維束Fが接触することで従動回転可能である。押付ローラ54Fは、マンドレルMが前方(本発明の一方)へ移動しているときに繊維束FをマンドレルMに押し付けるように配置されている。押付ローラ54Rは、マンドレルMが後方 (本発明の他方)へ移動しているときに繊維束FをマンドレルMに押し付けるように配置されている。
【0068】
押付ローラ54の、軸心Cを含む断面の形状について、
図7を用いて説明する。押付ローラ54は、ローラ本体55と、回転軸56とを有する。ローラ本体55は、縮径部分55aと、ローラ端部分55bと、ローラ端部分55cとを有する。押付ローラ54の回転中心である回転軸56の軸方向(ローラ軸方向)において、2つの二点鎖線で挟まれた部分が縮径部分55aであり、ローラ軸方向において縮径部分55aの両外側にそれぞれ形成された部分がローラ端部分55b、55cである。
【0069】
縮径部分55aは、ローラ軸方向における中央に向かうにつれて径が小さくなるように湾曲している。つまり、縮径部分55aは、マンドレルMの周面に沿いやすい形状となっている。ローラ端部分55bの断面は、矩形状である。つまり、ローラ端部分55bは、円筒形状を有する。ローラ端部分55cは、ローラ端部分55bと同様の形状及び大きさを有する。
【0070】
図7に示される断面における縮径部分55aの外縁55dと、ローラ端部分55bの外縁55eとのなす角について説明する。外縁55dと外縁55eとのなす角、すなわち、外縁55dのローラ軸方向の端(点100)における接線101と、外縁55eとのなす角θは、90°よりも大きい(つまり、鈍角である)。外縁55dと、ローラ端部分55cの外縁とのなす角についても同様である。また、
図7に示すように、ローラ端部分55bは、押付ローラ54の径方向において、接線101よりも内側に位置している。ローラ端部分55cについても同様である。
【0071】
(ガイド移動機構)
次に、以上の構成を有する繊維束ガイド部50をマンドレルMの径方向に移動させるガイド移動機構80について、
図8を用いて説明する。
図8(a)は、
図4のVIII−VIII断面図である。
図8(b)は、
図8(a)の状態から、繊維束ガイド部50がマンドレルMの径方向における内側に移動した後の状態を示す図である。
【0072】
図8(a)、(b)に示すように、ガイド移動機構80は、ヘリカル巻ユニット40の本体部41に取り付けられている。ガイド移動機構80は、一例として、スパイラル軸81と、ボールナット82と、接続部材83と、前述したノズル43と、前述したガイド移動用モータ45とを有する。ガイド移動機構80においては、スパイラル軸81が回転することで、ボールナット82、及び、ボールナット82に取り付けられたノズル43がマンドレルMの径方向に移動する。さらに、ノズル43の先端部に取り付けられた接続部材83に、繊維束ガイド部50が取り付けられており、繊維束ガイド部50がノズル43と一体的に移動する。以下、より詳細について説明する。
【0073】
スパイラル軸81は、本体部41の前端部41aの後面に取り付けられたC字状の支持部材84に回転可能に支持されている。スパイラル軸81は、マンドレルMの径方向に延びている。スパイラル軸81には、雄ねじが形成されている。スパイラル軸81は、ガイド移動用モータ45によって回転駆動される(矢印102参照)。ボールナット82の前側部分には雌ねじが形成されている。ボールナット82は、スパイラル軸81に螺合されている。ボールナット82の後側部分には、ノズル43が取り付けられている。ノズル43は、ボールナット82と一体的に移動可能となっている(矢印103参照)。マンドレルMの径方向において、ノズル43の外側端部には、L字状の接続部材83が取り付けられている。接続部材83は、ノズル43と接続された部分から前方に延び、前端部がマンドレルMの径方向における内側に延びている。繊維束ガイド部50のガイド支持体51は、接続部材83に取り付けられている。具体的には、ガイド支持体51の上側部材61が、接続部材83の前端部の径方向内側端部に固定されている。以上の構成を有するガイド移動機構80によって、繊維束ガイド部50は、マンドレルMの径方向に移動可能となっている(矢印104参照)。ガイド移動機構80によって繊維束ガイド部50の位置を調整することで、押付ローラ54が、マンドレルMの周面に接触可能である(
図8(b)参照)。
【0074】
(繊維束の供給経路)
次に、マンドレルMへの繊維束Fの供給経路について説明する。0度配向層の形成の際、繊維束Fは、ヘリカル巻ユニット40のガイド42(
図4参照)によって案内された後、ノズル43を経由せずに、繊維束ガイド部50のガイド支持体51によって、マンドレルMの径方向における外側から内側へ案内される(
図8(b)参照)。さらに、繊維束Fは、拡幅ローラ53(
図8(b)においては、拡幅ローラ53F)に接触して拡幅されつつ案内され、押付ローラ54(
図8(b)においては、押付ローラ54F)によってマンドレルMに押し付けられる。このように、ヘリカル巻ユニット40によって、繊維束ガイド部50を経由して、繊維束FがマンドレルMに供給される。
【0075】
(貼り付け動作)
次に、以上の構成を備えるフィラメントワインディング装置1において、0度配向層を形成するときの動作(すなわち、繊維束Fを前後方向に沿ってマンドレルMに貼り付ける貼り付け動作)について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は、繊維束FがマンドレルMに供給されており、且つ、繊維束FがマンドレルMに貼り付けられている様子を示す図である。
図10(a)は、繊維束ガイド部50の押付ローラの形状が本実施形態の押付ローラ54の形状と異なる場合の、押付ローラとマンドレルMとの接触状態を示す図である。
図10(b)は、押付ローラ54とマンドレルMとの接触状態を示す図である。なお、ここでは、複数の繊維束ガイド部50のうち、
図4における12時の位置にある繊維束ガイド部50を経由して供給される繊維束Fについてのみ説明するが、他の繊維束Fについても同様である。
【0076】
貼り付け動作を開始する際には、まず、オペレータが、繊維束FをボビンBからマンドレルMまで繊維束ガイド部50を経由して案内させた後、繊維束Fの先端部をテープ等でマンドレルMの端部(例えば前端部。
図9参照)に固定する。次に、制御装置5(
図3参照。本発明の制御部)が、ガイド移動用モータ45(
図3参照)を制御してガイド移動機構80(
図8参照)を動作させ、繊維束ガイド部50をマンドレルMの径方向内側に移動させて、押付ローラ54をマンドレルMに接触させる。これにより、押付ローラ54がマンドレルMの周面に押し付けられ、繊維束Fの、押付ローラ54とマンドレルMの間に挟まれている部分が、マンドレルMに押し付けられる。
【0077】
次に、制御装置5は、移動用モータ24(
図3参照)を制御して、支持ユニット20を前方に移動させることで、ヘリカル巻ユニット40に対してマンドレルMを前方に移動させる(
図9参照)。これにより、繊維束Fは、ボビンBから引き出されながら走行し、拡幅ローラ53Fによって拡幅された後、押付ローラ54FによってマンドレルMに押し付けられ、樹脂の粘性によってマンドレルMに貼り付けられる。これにより、繊維束Fは、自重でたわむよりも前に、マンドレルMに貼り付けられやすくなる。なお、本実施形態における貼り付け動作の際には、制御装置5は回転用モータ25(
図3参照)を駆動させない。すなわち、貼り付け動作の際にはマンドレルMは回転しない。
【0078】
ここで、マンドレルMが回転していなくても、マンドレルMが軸方向に移動することで、繊維束Fにはある程度のテンションが付与されている。このテンションは、押付ローラ54Fを浮かせるように作用する。但し、このテンションは、拡幅ローラ53Fによって受け止められるため、拡幅ローラ53Fよりも繊維束走行方向における下流側に配置された押付ローラ54Fにそのままテンションが作用することが抑制される。
【0079】
制御装置5が、さらに移動用モータ24を駆動させて支持ユニット20を前方に移動させることで、マンドレルMの後端部まで繊維束が貼り付けられる。この時点で、1回の貼り付け動作が完了する。なお、逆に、繊維束FをマンドレルMの後端部から前端部まで貼り付ける場合は、繊維束Fは、繊維束ガイド部50の後側部分に配置された拡幅ローラ53R及び押付ローラ54Rによって案内される。
【0080】
ここで、例えば、
図10(a)、(b)に示すように、マンドレルMの軸方向に沿って繊維束F1を貼り付ける際、繊維束F1が貼り付けられる位置とは別の位置に、既に、繊維束F2がマンドレルMの軸方向に沿って貼り付けられている場合が想定される。この場合、
図10(a)に示すように、押付ローラが、ローラ軸方向における両端部まで湾曲している(すなわち、両端部まで縮径部分
155aが形成されている)ような押付ローラ154である場合、押付ローラ154の端面と縮径部分
155aの外縁とのなす角θaが鋭角となり、マンドレルMが軸方向に移動したときに、押付ローラ154によって繊維束F2がめくり上げられるおそれがある。この点、本実施形態の押付ローラ54では、ローラ端部分55bの外縁55eと、縮径部分55aの外縁
55dとのなす角θが鈍角となっている(
図7参照)。ローラ端部分55cについても同様である。つまり、
図10(a)に示されるような場合と比べて、
図10(b)に示すように、縮径部分55aの端部近傍がなだらかな形状となっている。これにより、縮径部分55aのローラ軸方向における端部が、仮に繊維束F2に接触しても、繊維束F2がめくり上げられにくい。
【0081】
(0度配向層の形成)
次に、マンドレルMの軸方向に沿った0度配向層をマンドレルMの全周に亘って形成する具体的な手順について、
図11〜
図16を用いて説明する。
図11は、繊維束FをマンドレルMに貼り付けて0度配向層を形成する手順を示すフローチャートである。
図12は、繊維束Fの往復貼り付け(後述するシーケンスS102)の具体的手順を示すフローチャートである。他の図については、必要に応じて適宜説明する。
【0082】
本実施形態においては、12個の繊維束ガイド部50を用いて複数の繊維束FをマンドレルMの全周に亘って貼り付けるので、1つのボビンBから供給される繊維束Fは、マンドレルMの全周の1/12に亘って、それぞれマンドレルMに貼り付けられることとなる。このため、マンドレルMの外径によっては、上述した1回の貼り付け動作を終えた後、マンドレルMを回転させて繊維束Fの幅の分だけ周方向に動かし、繊維束Fがまだ貼り付けられていない部分に繊維束Fを貼り付けるという動作を繰り返す必要がある。そのためには、マンドレルMの端まで貼り付けられた繊維束Fを切断せずに軸方向に折り返させて、繊維束Fを連続的にマンドレルに貼り付けるのが、生産効率上好ましい。但し、繊維束FがマンドレルMの端部まで貼り付けられた後、マンドレルMをそのまま逆走させることで繊維束Fを折り返させると、繊維束Fに付与されているテンションによって、マンドレルMの端部に貼り付けられた繊維束Fが軸方向に引っ張られて剥がれるおそれがある。そこで、本実施形態では、以下の方法を用いて0度配向層を形成する。
【0083】
0度配向層の形成手順の概要について説明する。まず、前述したように、繊維束Fの先端部をマンドレルMの端部に固定する(S101)。次に、貼り付け動作、マンドレルMの回転、及び、繊維束FをマンドレルMの軸方向における一方から他方に折り返させる折り返し動作(詳細は後述する)を繰り返し行うことで、繊維束FをマンドレルMに往復で貼り付ける(S102)。最後に、マンドレルMの全周に亘って貼り付けられた繊維束Fの、マンドレルMの軸方向における両端部を、例えば、フープ巻ユニット30によってフープ巻きすることで固定する(S103)。
【0084】
(繊維束の往復貼り付けの手順)
次に、繊維束FをマンドレルMに往復で貼り付ける手順(S102)の詳細について説明する。
【0085】
具体的な手順の説明に先立って、繊維束Fを軸方向に折り返させる折り返し動作の際に使用されるリングガイド200(本発明の折り返しガイド治具)の構造について、
図13を用いて説明する。
図13(a)は、リングガイド200の全体図である。
図13(b)は、リングガイド200の分解図である。
図13(c)は、
図13(b)を矢印XIII(c)で示される方向から見た図である。
【0086】
リングガイド200は、複数の繊維束Fを軸方向に折り返させる際に、複数の繊維束Fを囲う(
図13参照)ための治具である。リングガイド200は、
図13(a)に示すように、断面円形の円環形状を有する。リングガイド200の外径は、マンドレルMの外径と略等しい(
図13(c)参照)。
図13(b)に示すように、リングガイド200は、半円環状の2つのガイド片201、202に分割可能になっている。ガイド片201とガイド片202は、例えば、以下のようにして連結可能になっている。すなわち、
図13(b)、(c)に示すように、ガイド片201の一方の端部には係合孔201aが、他方の端部には係合爪201bが形成されている。ガイド片202の、係合爪201bと対向する端部には係合孔202aが、係合孔201aと対向する端部には係合爪202bが形成されている(
図13(b)参照)。係合孔201aと係合爪202bとが互いに係合し、且つ、係合孔202aと係合爪201bとが互いに係合することで、ガイド片201とガイド片202とが互いに連結される。
【0087】
次に、繊維束FをマンドレルMに往復で貼り付ける具体的な手順について、
図14〜
図16を用いて説明する。
図14(a)〜(d)及び
図15(a)〜(c)は、ヘリカル巻ユニット40及びマンドレルMを側方から見たときの、マンドレルM及び繊維束Fの動きを示す図である。
図16(a)〜(c)は、ヘリカル巻ユニット40及びマンドレルMを上方から見た図である。なお、
図14及び
図15においては、
図4における12時及び6時の位置にある繊維束ガイド部50及び繊維束Fを図示している。
図16においては、
図4における12時の位置にある繊維束ガイド部50及び繊維束Fを図示している。また、支持ユニット20(
図2等参照)の図示は省略している。
【0088】
まず、制御装置5は、繊維束Fの先端部がマンドレルMの前端部に固定された状態で、移動用モータ24(
図3参照)を制御して、支持ユニット20及びマンドレルMを後方から前方に移動させる(
図14(a)及び
図16(a)参照)。これにより、マンドレルMの前端部から後端部まで繊維束Fが貼り付けられる(S201)。
【0089】
次に、制御装置5は、支持ユニット20をさらに前方に移動させる。これにより、マンドレルMの前端部から、マンドレルへ供給されている各繊維束の一部分がはみ出る(
S202。
図14(b)参照)。この状態で、制御装置5は、ガイド移動用モータ45(
図8参照)を制御してガイド移動機構80(
図8参照)を動作させ、繊維束ガイド部50をマンドレルMの径方向内側へ移動させる(
図14(b)の矢印参照)。これにより、繊維束Fの、マンドレルMの前端部からはみ出たはみ出し部分Faが、マンドレルMの径方向内側に寄せられる。この状態で、オペレータは、前述したリングガイド200ではみ出し部分Faを囲う(S203。
図14(b)参照)。
【0090】
リングガイド200ではみ出し部分Faが囲われている状態で、制御装置5は、繊維束ガイド部50をマンドレルMの径方向外側へ移動させ、貼り付け動作時の位置に戻す。次に、制御装置5は、回転用モータ25(
図3参照)を制御して、マンドレルMを回転させて繊維束Fの幅だけ周方向に動かしつつ、移動用モータ24(
図3参照)を制御して、支持ユニット20及びマンドレルMを後方に引き返させる(S204)。なお、本実施形態において、マンドレルMの回転方向は、前方から見て時計回りである。
【0091】
これにより、複数の繊維束Fがリングガイド200の径方向における内側から外側に案内されつつ、後方に折り返させられる折り返し動作が行われる(
図14(c)参照)。また、リングガイド200が断面円形状を有していることから、繊維束Fがリングガイド200に沿って滑らかに折り返させられる。このため、ピッチ系炭素繊維束等の折れやすい繊維束Fを扱う場合でも、繊維束Fが折れることが抑制される。ここで、マンドレルMの回転及び移動(引き返し)は同時に行わなくても良く、いずれか一方を先に、他方を後に行っても良い。なお、本実施形態においては、折り返し動作におけるマンドレルMの回転方向が前方から見て時計回りであるため、
図14(c)において、マンドレルMに貼り付けられた繊維束Fのうち下側の繊維束Fは、紙面奥側に隠れている(以降の図においても同様)。
【0092】
制御装置5が支持ユニット20をさらに後方に移動させると、リングガイド200は、繊維束Fのテンションによって前方(マンドレルM側)へ引き寄せられる(
図14(d)参照)。引き寄せられたリングガイド200は、マンドレルMの端面に接触して受け止められるため、繊維束Fが前方に引っ張られても、繊維束Fはリングガイド200によって受け止められる。このため、繊維束FがマンドレルMから剥がれることが防止される。
【0093】
次に、制御装置5は、支持ユニット20を後方に移動させて(
図15(a)及び
図16(b)参照)、複数の繊維束FをマンドレルMの後端部から前端部まで貼り付ける(S205)。なお、オペレータは、この時点では、リングガイド200をまだ取り外さない。つまり、この時点では、はみ出し部分Faを囲っている状態が保たれている。リングガイド200の外径はマンドレルMの外径と略等しいため、リングガイド200が押付ローラ54と干渉することが抑制されている。
【0094】
次に、制御装置5は、支持ユニット20をさらに後方に移動させて、各繊維束Fの一部分をマンドレルMの前端部からはみ出させ(S206。
図15(b)参照)、繊維束ガイド部50をマンドレルMの径方向内側へ移動させる(
図15(b)の矢印参照)。次に、オペレータは、はみ出し部分Faを囲っているリングガイド200とは別のリングガイド200(リングガイド200a)で、前側のはみ出し部分Fbを囲う(S207。
図15(b)参照)。さらに、制御装置5は、繊維束ガイド部50をマンドレルMの径方向外側へ移動させた後、マンドレルMを繊維束Fの幅だけ周方向に回転させつつ前方に引き返させる(S208)。これにより、再びマンドレルMの前端部から後端部まで繊維束Fを貼り付けることが可能になる(
図15(c)、
図16(c)参照)。
【0095】
以上の動作の繰り返しにより、繊維束FをマンドレルMの全周に亘って貼り付けることが可能になる。なお、オペレータは、マンドレルMの全周に亘って0度配向層が形成されるまで、リングガイド200を取り外さない。オペレータは、折り返し動作のたびに、新たなリングガイド200で繊維束Fのはみ出し部分を囲う。このため、折り返し動作を行うたびにリングガイド200の数が増え、複数のリングガイド200がマンドレルMの軸方向に並ぶこととなる。マンドレルMの全周に亘って0度配向層が形成された後は、上述したように、フープ巻き等により繊維束Fの両端部を固定し、その後、はみ出し部分Fa等を切断することで、複数のリングガイド200の回収が可能になる。
【0096】
以上のように、繊維束Fが、繊維束ガイド部50の押付ローラ54によってマンドレルMの周面に押し付けられることで、樹脂の粘性によってマンドレルMに貼り付けられる。これにより、マンドレルMが回転しておらず繊維束Fに付与されるテンションが弱い場合でも、マンドレルMに供給されている繊維束Fがたるむ前に繊維束FをマンドレルMに貼り付けることができ、繊維束Fを目標位置に貼り付けやすくすることができる。したがって、マンドレルMの軸方向に沿って繊維束FをマンドレルMに貼り付けやすくすることができる。
【0097】
また、押付ローラ54よりも上流側に配置された拡幅ローラ53によって、繊維束Fに付与されたテンションが受け止められる。これにより、押付ローラ54にテンションがそのまま作用することを抑制できるので、押付ローラに54よる押し付け力が弱まることを抑制できる。
【0098】
また、繊維束Fを拡幅ローラ53に沿って滑らかに走行させることができるため、繊維束Fが折れることを抑制できる。
【0099】
また、マンドレルMの外径に応じて繊維束ガイド部50の位置を調整することで、押付ローラ54によって、様々な外径を有するマンドレルMの周面に繊維束Fを押し付けることができる。
【0100】
また、マンドレルMが前方に移動しているときには押付ローラ54Fによって、後方に移動しているときには押付ローラ54Rによって、繊維束FをマンドレルMの周面に押し付けることができる。これにより、マンドレルMの往路及び復路の両方において繊維束FをマンドレルMに貼り付けることができるため、繊維束Fを効率的にマンドレルMに貼り付けることができる。
【0101】
また、押付ローラ54が縮径部分55aを有するため、縮径部分55aをマンドレルMの周面に沿わせやすくすることができ、押付ローラ54のマンドレル周面との接触面積を大きくすることができる。したがって、マンドレルMの周面に繊維束Fを安定的に押し付けることができる。
【0102】
また、ローラ端部分55bの外縁55eと縮径部分55aの外縁55dとのなす角が鈍角となっている。つまり、縮径部分55a(繊維束に接触しやすい部分)がローラ軸方向における端まで形成されている場合と比べて、縮径部分55aの端部近傍がなだらかな形状となっている。これにより、縮径部分55aのローラ軸方向における端部が、既にマンドレルMに貼り付けられている繊維束Fに接触しても、当該繊維束Fがめくり上げられにくくなる。
【0103】
また、ローラ端部の断面が矩形状(すなわち、ローラ端部が円筒状であり、ローラ端部の径が一定)であるため、製造時の加工を容易化することができる。
【0104】
また、押付ローラ54による押し付け力が何らかの原因により変動した場合でも、板バネ部材71、72によって押し付け力の変動を吸収できる。したがって、押し付け力が弱くなり過ぎることで繊維束FがマンドレルMにうまく貼り付けられなくなることや、押し付け力が強くなり過ぎることで押付ローラ54等への負荷が過大になることを抑制することができる。
【0105】
また、板バネ部材71、72によって、押付ローラ54の支持、及び、押付ローラ54による押し付け力の変動吸収の両方を行うことができる。つまり、押付ローラの支持用の部材と緩衝部材とを別個に設ける必要がない。したがって、部品の数の増加を抑えてコスト増大を抑制することができる。
【0106】
また、押付ローラ54が両持ち支持されているので、押付ローラ54のローラ軸方向における一端部が他端部と比べて大きく変位することを抑制でき、押付ローラ54がマンドレルMの周面に対して傾くことを抑制できる。したがって、繊維束FをマンドレルMに安定的に貼り付けやすくすることができる。
【0107】
また、制御装置5によって、支持ユニット20が軸方向における一方側に移動することで繊維束FがマンドレルMに貼り付けられた後、マンドレルMの他方側の端部から各繊維束Fの一部分がはみ出させられる。そして、複数の繊維束のはみ出し部分Faがリングガイド200によって囲われた状態で、支持ユニット20が他方側に引き返すと、複数の繊維束Fがリングガイド200の径方向における内側から外側に案内されつつ、他方側に折り返させられる。これにより、支持ユニット20をさらに他方側に移動させると、繊維束Fの貼り付けを引き続き行うことができる。したがって、マンドレルMを往復移動させて繊維束Fを連続的にマンドレルMに貼り付けることができる。さらに、折れやすいピッチ系炭素繊維を取り扱う場合においても、断面円形のリングガイド200によって繊維束Fを滑らかに折り返させることができるため、繊維束Fが折れることを抑制できる。
【0108】
また、複数のガイド片201、202を連結させることで、リングガイド200を形成しつつ、リングガイド200の径方向における外側から繊維束Fを囲うことができる。つまり、リングガイド200によって繊維束Fを囲う際に、繊維束Fがリングガイド200に接触することが抑制されるので、繊維束Fの損傷を抑制できる。
【0109】
また、リングガイド200が円環形状を有する(すなわち、全体的に滑らかな形状を有する)ため、繊維束Fの損傷を抑制できる。
【0110】
また、リングガイド200の外径がマンドレルMの外径と略等しいため、リングガイド200が複数の繊維束を囲っている状態で、リングガイド200がマンドレルよりも径方向外側に突出することを抑制できる。このため、支持ユニット20を引き返させるときに、リングガイド200が押付ローラ54等と干渉することを抑制できる。
【0111】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0112】
(1)前記実施形態において、繊維束ガイド部50の押付ローラ54のローラ端部分55b、55cが円筒形状であるものとしたが、これには限られない。押付ローラ54の径方向において、ローラ端部分55bが接線101よりも内側に位置していれば良い。ローラ端部分55cにおいても同様である。
【0113】
(2)前記までの実施形態において、押付ローラ54のローラ端部分55b、55cの形状を工夫することで繊維束Fのめくり上げを抑制するものとしたが、これには限られない。すなわち、縮径部分55aが押付ローラ54の端部まで形成されていても良い。このような構成においても、例えば、ガイド移動機構80を利用して押付ローラ54とマンドレルMとの位置関係を適切に調整する等して、繊維束Fのめくり上げを抑制しても良い。
【0114】
(3)前記までの実施形態において、押付ローラ54が縮径部分55aを有するものとしたが、これには限られない。例えば、押付ローラ54全体が円筒形状を有していても良い。
【0115】
(4)前記までの実施形態において、押付ローラ54が押付ローラ支持部52によって両持ち支持されているものとしたが、これには限られない。押付ローラ54は、片持ち支持されていても良い。
【0116】
(5)前記までの実施形態において、押付ローラ支持部52の板バネ部材71、72が、押付ローラ54を支持する支持部材と、押し付け力の変動を吸収する緩衝部材とを兼ねるものとしたが、これには限られない。押付ローラ支持部52は、支持部材と緩衝部材とを別個に有していても良い。
【0117】
(6)前記までの実施形態において、繊維束ガイド部50のガイド支持体51に設けられた拡幅ローラ53が、本発明のテンション受け部材に相当するものとしたが、これには限られない。例えば、拡幅ローラ53の代わりに、ガイド支持体51の下側部材64、65に、固定されたテンション受け部材が設けられていても良い。このような構成でも、柔らかく折れにくい繊維束を用いる場合、当該繊維束のテンションを受け止めることは可能である。
【0118】
或いは、ガイド支持体51にテンション受け部材が設けられていなくても良い。このような構成でも、例えば、マンドレルMをゆっくり移動させることで、繊維束のテンションを弱く抑え、押付ローラ54の押し付け力への影響を抑える等しても良い。
【0119】
(7)前記までの実施形態において、マンドレルMが円筒形状であるものとしたが、これには限られない。例えば、マンドレルMの外径が軸方向において変化するものである場合、繊維束Fの貼り付け動作中にガイド移動機構80を動作させ、押付ローラ54による押し付け力が一定になるように繊維束ガイド部50の位置を調整しても良い。
【0120】
(8)前記までの実施形態において、ヘリカル巻ユニット40がガイド移動機構80を有しており、様々な径のマンドレルMに繊維束Fを貼り付け可能であるものとしたが、これには限られない。例えば、所定の径のマンドレルMにのみ繊維束Fを貼り付けるヘリカル巻ユニット40においては、コスト削減のためガイド移動機構80を省いても良い。
【0121】
(9)前記までの実施形態において、繊維束Fを往復で貼り付ける際に使用されるリングガイド200が、2つのガイド片201、202に分割可能であるものとしたが、3つ以上に分割可能であっても良い。また、ガイド片同士が完全に分かれる構成でなくても良く、例えば、一部のガイド片がヒンジによって互いにつながっていても良い。
【0122】
(10)前記までの実施形態において、リングガイド200が円環形状を有しているものとしたが、これには限られない。例えば、
図17(a)に示すように、十二角形状のリングガイド210を用いても良い(なお、リングガイド210は、2つのガイド片211、212に分割可能である)。つまり、円環形状に限らず、環状(本発明では、環状とは、多角形状のリング等、繊維束Fを囲うことが可能な形状という広い意味を有するものとする)の折り返しガイド治具を用いて、繊維束Fを折り返させても良い。なお、リングガイド210と押付ローラ54等との干渉を抑制するため、リングガイド210の最大外径(角における径方向のサイズ)は、マンドレルMの外径以下であることが好ましい。
【0123】
(11)前記までの実施形態において、リングガイド200が分割可能であるものとしたが、これには限られない。例えば、
図17(b)に示すように、リングガイド220がスリット221を有しており、繊維束Fをリングの内側に入れることで繊維束Fを囲うことが可能な構成であっても良い。このようなリングガイド220の形状も、本発明の環状に含まれる。なお、この場合、リングガイド220で繊維束Fを囲う際に繊維束Fを傷つけないように、手作業等で慎重に繊維束Fを扱うことが必要となる。
【0124】
(12)前記までの実施形態において、リングガイド200等を用いて繊維束Fを折り返させるものとしたが、これには限られない。例えば、以下のようにして繊維束Fを往復で貼り付けても良い。すなわち、マンドレルMの前端部から後端部まで繊維束Fを貼り付けた後、繊維束Fを切断し、マンドレルMを少しだけ回転させ、まだマンドレルMに貼り付けられていない繊維束Fの先端部をマンドレルMの後端部に固定する。その上で、マンドレルMを前方から後方に移動させることで、マンドレルMの後端部から前端部まで繊維束Fが貼り付けられる。このような作業の繰り返しにより、繊維束Fを往復でマンドレルMに貼り付けても良い。
【0125】
(13)前記までの実施形態において、貼り付け動作では、マンドレルMを回転させずに軸方向にのみ移動させるものとしたが、マンドレルMをわずかに回転させながら軸方向に移動させることで、軸方向からわずかに傾けた層を形成しても良い。
【0126】
(14)前記までの実施形態において、支持ユニット20が往復移動可能であり、且つ、繊維束ガイド部50が2つの押付ローラ54F、54Rを有するものとしたが、これには限られない。すなわち、
図18に示すように、フィラメントワインディング装置1aが、前後方向に並べられた複数のヘリカル巻ユニット40aを備えており、各ヘリカル巻ユニット40aに取り付けられた繊維束ガイド部50aが、押付ローラ54を1つのみ有する構成でも良い。これにより、複数のヘリカル巻ユニット40aによって、マンドレルMの全周に亘って0度配向層を形成することを可能としても良い。