(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、デバイスの歩留まり向上が可能な静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、第1部分と、前記第1部分の外周に設けられる第2部分と、を有し、冷却ガスが導入されるガス導入路が設けられた導電性のベースプレートと、前記第1部分の上に設けられ、ウエハを吸着可能に構成されており、前記ガス導入路と連通する少なくとも一つの貫通孔を有するセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板に内蔵された第1吸着電極と、を備えた第1静電チャック部と、前記第2部分の上に設けられ、フォーカスリングを吸着可能に構成されており、冷却ガスが導入可能な少なくとも一つの貫通孔を有するセラミック層を備えた第2静電チャック部と、を備え、前記セラミック層は、前記第2静電チャック部が前記フォーカスリングを吸着した際に前記フォーカスリングと接する第1層を少なくとも有し、前記第1層の緻密度は前記セラミック誘電体基板の緻密度よりも小さくなるよう構成される、静電チャックである。
【0010】
プラズマ処理が高度化するに伴い、低パーティクルかつ耐プラズマ性に優れた緻密なセラミックが求められている。一方で、本発明者らは、プラズマ処理が高度化するに伴い、プラズマ処理装置に入力される熱量が増大し、ウエハ外周に位置するフォーカスリング部分に特に多量の熱が貯留しデバイスの歩留まりが低下することを新たに見出した。また、フォーカスリングは厚さが厚いため、外周に熱がさらに溜まりやすく外周部分の温度が上昇してしまい、ウエハの外周側におけるデバイスの歩留まりの低下が課題であった。
この静電チャックによれば、ウエハを吸着する第1静電チャック部をセラミック誘電体基板で構成する一方、フォーカスリングを吸着する第2静電チャック部をセラミック層で構成し、さらにセラミック層の緻密度をセラミック誘電体基板よりも小さくしている。外周部分にあたる第2静電チャック部のセラミック層の緻密度を比較的低下させているため、フォーカスリングに供給されるガス量を増やすとともに、外周部分に均一にガスをいきわたらせることができる。また、第1静電チャック部をセラミック誘電体基板で構成してウエハ吸着部分における低パーティクルおよび耐プラズマを確保しつつ、第2静電チャック部をセラミック層で構成し、その緻密度を下げる(多孔質)ことで外周部分における熱の課題を効果的に解決することができ、低パーティクルと均熱とを両立して、デバイスの歩留まりを向上させることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において前記セラミック層は、前記第2部分と前記第1層との間に設けられた第2層をさらに有する静電チャックである。
【0012】
この静電チャックによれば、導電性のベースプレートと第1層との間に第2層を設けているため、例えば、ベースプレートの温度変化に伴うセラミック層の第1層への熱影響が緩和されることとなり、また更には第2層を高抵抗層とすれば、プラズマ発生のための高周波(RF)が印加されるベースプレートからセラミック層の第1層が電気的に独立することとなり、第2静電チャック部において安定した吸着力を発現可能となる。また、例えばベースプレートを下部電極として高周波電力を印加した場合におけるセラミック層の絶縁破壊を抑制することもできる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、前記第2層の緻密度は前記第1層の緻密度よりも大きい静電チャックである。
【0014】
この静電チャックによれば、フォーカスリング側に位置する第1層の緻密度が相対的に小さいため、セラミック層の上面側にガスを効率的に供給でき、フォーカスリングの冷却性能をより高めることができる。また、例えば高周波電力が印加されるベースプレート側の絶縁性をより一層高めることができ、第2静電チャック部の絶縁破壊を抑制することができる。
【0015】
第4の発明は、第2の発明において、前記第1層の緻密度は前記第2層の緻密度よりも大きい静電チャックである。
【0016】
この静電チャックによれば、上記構成をとることにより、第1層の耐プラズマ性を確保しつつ、第2層に積極的に冷却ガスが流れることで冷却能を担保することができる。また第1層が準熱緩和層となることでより均熱性を確保できることができる。
【0017】
第5の発明は、第2〜第4のいずれか1つの発明において、前記第1層は、前記フォーカスリング側の第1上面と、前記第1上面とは反対側の第1下面とを有し、前記第2層は、前記第1層側の第2上面と、前記第2上面とは反対側の第2下面とを有し、前記第1上面の表面粗さは、前記第2下面の表面粗さよりも小さい静電チャックである。
【0018】
この静電チャックによれば、第2下面の表面粗さを相対的に大きくすることで、第2層がベースプレートに食い込んでベースプレートとの接触面積を増やすことができ、冷却効率を高めることができる。また、第1上面の表面粗さを相対的に小さくしているため、ベースプレート表面よりも表面粗さが小さいフォーカスリング表面との接触面積を増やすことができ、フォーカスリングを効率的に冷却できるとともに、フォーカスリングをより強固に吸着することができる。
【0019】
第6の発明は、第2〜第5のいずれか1つの発明において、前記第1層と前記第2層とは接して設けられ、前記第1層と前記第2層との間には境界面(boundary)が設けられており、前記第1上面の表面粗さは、前記境界面の表面粗さよりも小さい静電チャックである。
【0020】
この静電チャックによれば、境界面の表面粗さを相対的に大きくすることで、境界面での接触面積を増やすことができ、冷却効率を高めることができる。また、第1上面の表面粗さを相対的に小さくしているため、フォーカスリング表面との接触面積を増やすことができ、フォーカスリングを効率的に冷却できるとともに、フォーカスリングをより強固に吸着することができる。
【0021】
第7の発明は、第2〜第6のいずれか1つの発明において、前記第2静電チャック部は、前記セラミック層に内蔵された第2吸着電極をさらに備え、前記第1層は、前記フォーカスリング側の第1上面と、前記第1上面とは反対側の第1下面とを有し、また前記第2層は前記第1層側の第2上面と、前記第2上面とは反対側の第2下面とを有し、前記第2吸着電極は第1下面と第2上面との間に設けられ、前記第2吸着電極は、前記第1下面側の第2電極上面と、前記第2電極上面とは反対側の前記第2電極下面とを備え、前記第2電極上面の表面粗さは、前記第2電極下面の表面粗さよりも小さい静電チャックである。
【0022】
この静電チャックによれば、第2電極上面の表面粗さを相対的に小さくしているので、第2吸着電極の上に位置する第1層の厚みばらつきを小さくすることができ、フォーカスリングをより安定的に吸着することができ、結果としてフォーカスリングを安定的かつ効率的に冷却できる。一方、第2吸着電極はセラミック層(第1層と第2層の間)に内蔵されるため、例えば、材料の熱膨張係数差などにより剥離等の不具合が生じる恐れがある。第2電極下面の表面粗さを相対的に大きくしているため、セラミック層との密着性と冷却効率とを両立させることができる。
【0023】
第8の発明は、第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記第1層は、前記第1上面および前記第1下面に対して垂直であって、前記第1静電チャック部側の第1内側面と、前記第1内側面と反対側の第1外側面とを含み、前記第1外側面が前記第2層で被覆された静電チャックである。
【0024】
この静電チャックによれば、低パーティクルおよび耐プラズマ性と、冷却性および均熱性と、を両立させることができる。
【0025】
第9の発明は、第8の発明において、前記セラミック層のエッジ部を含むエッジ領域は、前記第1層と前記第2層とを含み、前記第1上面側になるほど前記第1層の割合が増加する静電チャックである。
【0026】
この静電チャックによれば、低パーティクルおよび耐プラズマ性と、冷却性および均熱性と、を両立させることができる。
【0027】
第10の発明は、第1〜第9のいずれか1つの発明において、前記セラミック層において、第1上面のエッジ部は面取りされている静電チャックである。
【0028】
この静電チャックによれば、熱負荷が大きい外周エッジ部からのパーティクル発生を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の態様によれば、デバイスの歩留まりを向上させることができる静電チャックが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0032】
図1は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。
図1に表したように、静電チャック900は、導電性のベースプレート50と、ウエハWを吸着可能に構成された第1静電チャック部100と、フォーカスリングFを吸着可能に構成された第2静電チャック部200と、を備える。
【0033】
ベースプレート50は、第1部分51と、第2部分52とを有する。X−Y平面(後述)において、第2部分52は、第1部分51の外周に設けられる。第2部分52は環状である。ベースプレート50には、ヘリウムなどの冷却ガスが導入されるガス導入路53が設けられる。ベースプレート50において、第1部分51の上に第1静電チャック部100が設けられ、第2部分52の上に第2静電チャック部200が設けられる。
【0034】
本願明細書において、ベースプレート50(第1部分51)から第1静電チャック部100に向かう方向をZ軸方向とする。Z軸方向と直交する方向の1つをX軸方向、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向ということにする。本願明細書において、「面内」とは、例えばX−Y平面内である。
【0035】
ベースプレート50についてさらに説明する。
図1に示すように、第1部分51の上面の高さ(Z軸方向の位置)は、第2面の上面の高さよりも高い。ベースプレート50は第2部分52が第1部分51よりも低い階段形状になっている。第2部分52が静電チャック900の外周Pの一部を構成している。第1部分51は静電チャック900の中央Cを含んでいる。
【0036】
第1静電チャック部100は、セラミック誘電体基板30と、第1吸着電極10と、を備える。セラミック誘電体基板30は、ガス導入路53と連通する少なくとも一つの貫通孔35を有する。第1吸着電極10は、セラミック誘電体基板30に内蔵されている。
セラミック誘電体基板30は、ウエハW側の第1主面30aと、第1主面30aと反対側の第2主面30bと、を有する。貫通孔35は、第1主面30aに設けられた複数の溝34と連通しており、ガス導入路53から導入された冷却ガスを溝34を介して第1主面30a全体に分配する。第1主面30aには複数の凸部33が設けられる。第1吸着電極10に電圧が印加されると、ウエハWが凸部33を介して第1静電チャック部100に吸着保持される。
【0037】
第2静電チャック部200は、セラミック層40と、第2吸着電極20と、を備える。セラミック層40は、ガス導入路53と連通する少なくとも一つの貫通孔45を有している。第2吸着電極20は、セラミック層40に内蔵されている。
セラミック層40は、第2静電チャック部200がフォーカスリングFを吸着した際にフォーカスリングFと接する第1層41を少なくとも有する。第1層41は、フォーカスリングF側の第1上面41uと、第1上面41uとは反対側の第1下面41bとを有している。第2吸着電極20は、第1上面41u側の第2電極上面20uと、第2電極上面20uとは反対側の第2電極下面20bとを備えている。第2吸着電極20に電圧が印加されると、フォーカスリングFが第1上面41uにより第2静電チャック部200に吸着保持される。
【0038】
静電チャック900では、セラミック層40の第1層41の緻密度は、セラミック誘電体基板30の緻密度よりも小さくなるよう構成されている。すなわち、第1層41のほうがセラミック誘電体基板30よりも粗に構成されている。プラズマ処理が高度化するに伴い、低パーティクルかつ耐プラズマ性に優れた緻密なセラミックが求められている。一方で、本発明者らは、プラズマ処理が高度化するに伴い、プラズマ処理装置に入力される熱量が増大し、ウエハ外周に位置するフォーカスリング部分に特に多量の熱が貯留しデバイスの歩留まりが低下することを新たに見出した。また、フォーカスリングは厚さが厚いため、外周に熱がさらに溜まりやすく外周部分の温度が上昇してしまい、ウエハの外周側におけるデバイスの歩留まりの低下が課題であった。
【0039】
そこで、静電チャック900においては、外周部分にあたる第2静電チャック部200のセラミック層40の緻密度を比較的低下させているため、フォーカスリングFに供給されるガス量を増やすとともに、外周部分に均一にガスをいきわたらせることができる。つまり、第1静電チャック部100をセラミック誘電体基板30で構成してウエハ吸着部分における低パーティクルおよび耐プラズマを確保しつつ、第2静電チャック部200をセラミック層40で構成し、その緻密度を下げる、例えば多孔質層とすることで、外周部分における熱の課題を効果的に解決することができ、低パーティクルと均熱とを両立して、デバイスの歩留まりを向上させることができる。
【0040】
ウエハ1枚当たりのチップ収率を向上させるためには、エッジ近傍のエッチングレートをコントロールし、エッジ近傍のチップ良品数を向上させることが必要である。エッジ近傍のチップ収率を向上させるためには、ウエハ中心からエッジ部にかけてのエッチング状態、つまり半径方向のエッチング状態を均一化させる方法および構造が必要である。
従来より、ウエハエッジ近傍のエッチング状態を均一化させる方法、構造として、ウエハの外周にフォーカスリングと称されるリング状の部材を配置し、エッチングプロセス時のウエハ中央部と外周部のプラズマ環境を均一化させ、エッチングの偏りを抑制する技術が採用されている。エッチングの偏りを抑制する手法の一つに、エッジリング部の領域に温度制御手法を組み込むことで、ウエハエッジ近傍のエッチング状態を均一化させる手法が挙げられる。
【0041】
静電チャック900では、簡便な方法、構造で高密度プラズマに直接曝されるウエハW部分の耐パーティクル性の確保と、フォーカスリングF部分の均熱とを両立させることができる。
【0042】
静電チャック900においては、第2静電チャック部200を設け、高い静電吸着力によりフォーカスリングFと静電吸着面(第1上面41u)とを強固に密着させることで、高熱伝導を確保し、特に熱がたまりやすい外周部分を効果的に冷却させる。さらに、静電吸着面(第1上面41u)の緻密度を下げる、例えば多孔質層とすることで、より簡便な方法、構造で低圧損で大流量の冷却ガス(Heガス等)を流通させ、高い熱交換効率を実現することができる。
なお、セラミック層40表面(第1上面41u)に、溝や凸部(ドット)を設けてもよい(図示しない)。
【0043】
セラミック層40およびセラミック誘電体基板30の緻密度の評価方法について述べる。
セラミック層40、セラミック誘電体基板30それぞれの断面画像を取得する。画像の取得には走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)を用いる。セラミック層40を例に説明すると、セラミック層40の断面を含むよう第2静電チャック部200を切断し、サンプルの断面を樹脂包埋して機械研磨を行う。具体的にはセラミック層40を含むようにZ軸方向に貫通するように試験片を採取する。採取方法は、例えば、ヘリカル加工、ウォータージェット切断加工などである。なおイオンミリング法により観察断面を作成しても良い。試験片の断面を鏡面が出るまで研磨し、サンプルをPt蒸着してSEM観察を行う。観察倍率は断面組織を適切に観察できる200〜3000倍程度(一例として500倍など)とし、加速電圧5kV〜15kV程度とする。ばらつきを把握するために5視野の観察を行う。第1層41とセラミック誘電体基板30の緻密度の大小が目視にて判断が困難な場合には、これらの観察像について、市販の二次元画像解析ソフト「Win Roof」にて解析し、気孔率を算出して大小関係を比較することができる。気孔率が少ないほど緻密度が高い。気孔率を算出する場合、気孔率は5視野の平均値とする。セラミック誘電体基板30についても同様に緻密度を評価することができる。
【0044】
図4(a)及び
図4(b)は、セラミック層40、セラミック誘電体基板30の断面SEM像である。
図4(a)がセラミック層40(第1層41)、
図4(b)がセラミック誘電体基板30にそれぞれ対応している。
図4(a)、(b)に示すように、この例では目視により、第1層41の緻密度は、セラミック誘電体基板30の緻密度よりも小さいことがわかる。
【0045】
図2は、実施形態に係る静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図2は第2静電チャック部200の拡大図である。
図2に示す例では、セラミック層40はベースプレート50の第2部分52と第1層41との間に設けられた第2層42をさらに備えている。第2層42は、第1層41側の第2上面42uと、第2上面42uとは反対側の第2下面42bとを有している。この例では、第2吸着電極20は第1層41と第2層42との間に設けられる。より具体的には、第2吸着電極20は、第1下面41bと第2上面42uとの間に設けられる。なお、吸着電極20を第1層41に内蔵、すなわち、第1上面41uと第1下面41bとの間に第2吸着電極20を配置してもよい。
この例では、第1層41の少なくとも一部は第2層42と接して設けられ、第1層41と第2層42との間には境界面B(boundary)が設けられている。具体的には第2上面42uの少なくとも一部は第1下面41bと接して設けられている。なお、第1層41と第2層42との間に他の層を備えていてもよい。
【0046】
静電チャック900においては、導電性のベースプレート50と第1層41との間に第2層42を設けているため、例えば、ベースプレート50の温度変化に伴うセラミック層40の第1層41への熱影響が緩和されることとなり、また更には第2層42を高抵抗層とすれば、プラズマ発生のための高周波(RF)が印加されるベースプレート50からセラミック層40の第1層41が電気的に独立することとなり、第2静電チャック部200において安定した吸着力を発現可能となる。また、例えばベースプレート50を下部電極として高周波電力を印加した場合におけるセラミック層40の絶縁破壊を抑制することもできる。
【0047】
ベースプレート50は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属製である。
【0048】
セラミック誘電体基板30は、例えば焼結セラミックによる平板状の基材である。例えば、セラミック誘電体基板30は、酸化アルミニウム(アルミナ:Al
2O
3)を含む。セラミック誘電体基板としては、高絶縁性材料である、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などを用いることができる。例えば、セラミック誘電体基板30は、高純度の酸化アルミニウムで形成される。セラミック誘電体基板30における酸化アルミニウムの濃度は、例えば、90質量パーセント(mass%)以上100mass%以下、好ましくは、95質量パーセント(mass%)以上100mass%以下、より好ましくは、99質量パーセント(mass%)以上100mass%以下である。高純度の酸化アルミニウムを用いることで、セラミック誘電体基板30の耐プラズマ性を向上させることができる。なお、酸化アルミニウムの濃度は、蛍光X線分析などにより測定することができる。
【0049】
セラミック層40において、第1層41は、例えば、セラミック誘電体層である。具体的には、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックに他の金属酸化物を添加した化合物を用いることができる。例えば、酸化アルミニウムに酸化チタンを添加した化合物を用いることも好ましい。一例として、第1層41はセラミック溶射膜である。
【0050】
セラミック層40において、第2層42は、例えば、セラミック絶縁層である。第2層42は、例えば酸化アルミニウム、酸化イットリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素の少なくともいずれかを含む。好ましくは酸化アルミニウムからなる。一例として、第2層42はセラミック溶射膜である。第2層42は、アルミニウムで構成されるベースプレート50を陽極酸化処理したアルマイト層でもよい。
【0051】
静電チャック900において、セラミック層40の第2層42の緻密度は、例えば、第1層41の緻密度よりも大きい。すなわち、セラミック層40においては、一例として、ベースプレート50側に位置する第2層42のほうが第1層41よりも緻密である。フォーカスリングF側に位置する第1層41の緻密度が相対的に小さいため、セラミック層40の上面側にガスを効率的に供給でき、フォーカスリングFの冷却性能をより高めることができる。また、例えば高周波電力が印加されるベースプレート50側の絶縁性をより一層高めることができ、第2静電チャック部200の絶縁破壊を抑制することができる。
【0052】
静電チャック900において、セラミック層40の第1層41の緻密度は、例えば、第2層42の緻密度よりも大きい。すなわち、セラミック層40においては、一例として、フォーカスリングF側に位置する第1層41のほうが第2層42よりも緻密である。そのため第1層41の耐プラズマ性を確保しつつ、第2層42に積極的に冷却ガスが流れることで冷却能を担保することができる。また第1層41が準熱緩和層となることでより均熱性を確保できる。
【0053】
次に、静電チャック900において、セラミック層40(第1層41、第2層42)、およびセラミック誘電体基板30の厚さの関係について述べる。ここで、「厚さ」とは、第1層41などの構成要素のZ軸方向に沿う長さである。
第1層41の厚さは、例えば、セラミック誘電体基板30の厚さよりも小さい。すなわち第1層41のほうがセラミック誘電体基板30よりも薄い。そのため、より熱量がたまりやすい外周側(第2部分52)に位置する第2静電チャック部200のセラミック層40(第1層41)を相対的に薄くしているため、フォーカスリングFの効果的な冷却が可能となる。
【0054】
次に、静電チャック900において、セラミック層40(第1層41、第2層42)、および第2吸着電極20の表面粗さの関係について述べる。
ここで、「表面粗さ」とは、例えば、算術平均粗さ(Ra)を意味し、下記の方法で算出することが可能である。ここでは、セラミック層40の第1上面41uと第2下面42bを例にとって説明する。第1上面41uおよび第2下面42bを含むように試験片を切り出し、樹脂埋めしたものを研磨した後、SEM(Scanning Electron Microscope)を用い観察する。100〜1000倍で撮影したSEM画像からJIS B 0601:2013に準拠した方法にて、算術平均粗さRaを算出する。なお、第2下面42bの表面粗さRa-2bは、第2下面42bとベースプレート50の第2部分52との界面をなぞった輪郭曲線を用いて算出する。
【0055】
静電チャック900において、例えば、第1上面41uの表面粗さRa-1uは、第2下面42bの表面粗さRa-2bよりも小さい。第2下面42bの表面粗さを相対的に大きくすることで、第2層42がベースプレート50に食い込んでベースプレート50との接触面積を増やすことができ、冷却効率を高めることができる。また、第1上面41uの表面粗さを相対的に小さくしているため、ベースプレート50表面よりも表面粗さが小さいフォーカスリングF表面との接触面積を増やすことができ、フォーカスリングFを効率的に冷却できるとともに、フォーカスリングFをより強固に吸着することができる。
【0056】
静電チャック900において、例えば、第1上面41uの表面粗さRa-1uは、第1層41と第2層42との間の境界面Bの表面粗さRa-Bよりも小さい。境界面Bの表面粗さを相対的に大きくすることで、境界面Bでの接触面積を増やすことができ、冷却効率を高めることができる。また、第1上面41uの表面粗さを相対的に小さくしているため、フォーカスリングF表面との接触面積を増やすことができ、フォーカスリングFを効率的に冷却できるとともに、フォーカスリングFをより強固に吸着することができる。
【0057】
静電チャック900において、例えば、第2電極上面20uの表面粗さは、第2電極下面20bの表面粗さよりも小さい。第2電極上面20uの表面粗さを相対的に小さくしているので、第2吸着電極20の上に位置する第1層41の厚みばらつきを小さくすることができ、フォーカスリングF表面との接触面積を増やすことができる。これにより、フォーカスリングFをより安定的に吸着することができ、結果としてフォーカスリングFを安定的かつ効率的に冷却できる。一方、第2吸着電極20はセラミック層40に内蔵される(第1層41と第2層42との間)ため、例えば、材料の熱膨張係数差などにより剥離等の不具合が生じる恐れがある。第2電極下面20bの表面粗さを相対的に大きくしているため、セラミック層40との密着性と冷却効率とを両立させることができる。
【0058】
図3(a)および
図3(b)は、実施形態に係る静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図3(a)および
図3(b)を用いて、セラミック層40のエッジ部40eを含むエッジ領域Eの変形例について説明する。
図3(a)に示すように、静電チャック900において、例えば、第1層41は、第1上面41uおよび第1下面41bに対して垂直であって、第1静電チャック部100側の第1内側面41i(
図2参照)と、第1内側面41iと反対側の第1外側面41oとを含み、第1外側面41oが第2層42で被覆されている。
【0059】
図3(b)に示すように、静電チャック900において、例えば、第1外側面41oの一部が第2層42で被覆されていてもよい。この例では、セラミック層40のエッジ部40eを含むエッジ領域Eは、第1層41と第2層42とを含み、第1上面41u側になるほど第1層41の割合が増加している。すなわち、第1上面41uから第1下面41bにかけて第1外側面41oが内側に傾斜した状態で第2層42が被覆している。
図3(a)、(b)に示す静電チャック900においては、低パーティクルおよび耐プラズマ性と、冷却性および均熱性と、を両立させることができる。
【0060】
ここで、エッジ部40eとは、セラミック層40において上面と外側面とが接する部分である。
図2の例では、第1上面41uと第1外側面41oとが接する部分がエッジ部40eである。エッジ領域Eとは、エッジ部40eを含む領域をいう。
【0061】
また、第1内側面41iが第2層42で被覆されていてもよい。これによって、ベースプレート50への電流経路が遮断され、第1層41への印加電圧が安定し吸着力が安定する。
【0062】
図3(b)において、セラミック層40の、例えば第1上面41のエッジ部40eが面取りされていてもよい(図示しない)。そのため、熱負荷が大きい外周エッジ部からのパーティクル発生を効果的に抑制することができる。
【0063】
図1を再び参照しつつ、静電チャック900についてさらに説明する。
セラミック誘電体基板30は、第1主面30aと、第2主面30bと、を有する。第1主面30aは、吸着の対象物であるウエハWが載置される面である。第2主面30bは、第1主面30aとは反対側の面である。吸着の対象物であるウエハWとは、例えば、シリコンウエハなどの半導体基板である。
【0064】
セラミック誘電体基板30の内部には、第1吸着電極10が設けられる。第1吸着電極10は、Z軸方向において、第1主面30aと、第2主面30bと、の間に設けられる。すなわち、第1吸着電極10は、セラミック誘電体基板30の中に挿入されるように設けられる。第1吸着電極10は、例えば、セラミック誘電体基板30に一体焼結されることで内蔵されてもよい。
【0065】
第1吸着電極10の形状は、セラミック誘電体基板30の第1主面30a及び第2主面30bに沿った薄膜状である。
第1吸着電極10は、吸着用電源(
図5の吸着用電源505)と接続される。第1静電チャック部100において、吸着用電源から第1吸着電極10に電圧(吸着用電圧)を印加することによって、第1吸着電極10の第1主面30a側に電荷を発生させ、静電力によって対象物であるウエハWを吸着保持する。吸着用電源は、直流(DC)電流または交流(AC)電流を第1吸着電極10に供給する。吸着用電源は、例えば、DC電源である。吸着用電源は、例えば、AC電源であってもよい。
【0066】
第1吸着電極10は、例えば、金属製である。第1吸着電極10は、例えば、Ag、Pd、Pt、Mo、及びWの少なくともいずれかを含む。第1吸着電極10は、例えば、金属とセラミックスとを含んでいてもよい。
【0067】
セラミック層40は、第3主面40aと、第4主面40bと、を有する。第3主面40aは、吸着の対象物であるフォーカスリングFが載置される面である。第4主面40bは、第3主面40aとは反対側の面である。吸着の対象物であるフォーカスリングFは、例えば、ケイ素(シリコン)や炭化ケイ素(SiC)を含む。前述のとおり、セラミック層40が第1層41および第2層42を有する場合、第1上面41uが第3主面40aを構成し、第2下面42bが第4主面40bを構成している。
図1に示すように、この例では、第3主面40aはZ軸方向においてセラミック誘電体基板30の第2主面30bよりも下側に位置している。
【0068】
また、この例では、セラミック層40の内部には、第2吸着電極20が設けられる。第2吸着電極20は、Z軸方向において、第3主面40aと、第4主面40bと、の間に設けられる。すなわち、第2吸着電極20は、セラミック層40の中に挿入されるように設けられる。第2吸着電極20は、例えば、溶射、印刷、CVD、PVD等によりセラミック層40に内蔵されてもよい。
【0069】
第2吸着電極20の形状は、セラミック層40の第3主面40a及び第4主面40bに沿った薄膜状である。
第2吸着電極20は、吸着用電源(
図5の吸着用電源506)と接続される。第2静電チャック部200において、吸着用電源から第2吸着電極20に電圧(吸着用電圧)を印加することによって、第2吸着電極20の第3主面40a側に電荷を発生させ、静電力によって対象物であるフォーカスリングFを吸着保持する。吸着用電源は、直流(DC)電流またはAC電流を第2吸着電極20に供給する。吸着用電源は、例えば、DC電源である。吸着用電源は、例えば、AC電源であってもよい。
第1吸着電極10用の電源と第2吸着電極20用の電源とは別々であってもよいし、同じであってもよい。
【0070】
第2吸着電極20は、例えば、金属製である。第2吸着電極20は、例えば、Ag、Pd、Pt、Mo、及びWの少なくともいずれかを含む。第2吸着電極20は、例えば、金属とセラミックスとを含んでいてもよい。
【0071】
第1吸着電極10が金属とセラミックスとを含み、第2吸着電極20が金属とセラミックスとを含む場合、第1吸着電極10に含まれる金属の体積とセラミックスの体積との合計に対する金属の体積の割合は、第2吸着電極20に含まれる金属の体積とセラミックスの体積との合計に対する金属の体積の割合と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
第1吸着電極10には、セラミック誘電体基板30の第2主面30b側に延びる接続部81が設けられている。接続部81は、例えば、第1吸着電極10と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)である。接続部81は、ロウ付けなどの適切な方法によって接続された金属端子でもよい。
【0073】
第2吸着電極20には、セラミック層40の第4主面40b側に延びる接続部82が設けられている。接続部82は、例えば、第2吸着電極20と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)である。接続部82は、ロウ付けなどの適切な方法によって接続された金属端子でもよい。あるいは、接続部82は溶射により形成されてもよい。
接続部82は第2吸着電極20とベースプレート50とを電気的に接続するよう設けられ、吸着用電源(
図5の吸着用電源506)がベースプレートに接続されていてもよい。
例えば、セラミック層40において、第1層41と第2層42との間であって、第2吸着電極20と接する第3層(図示しない)をさらに設け、この第3層と接続部82とを接して設けてもよい。
【0074】
ベースプレート50は、例えば、セラミック誘電体基板30を支持する部材である。セラミック誘電体基板30は、接着部材60によってベースプレート50の上に固定される。接着部材60としては、例えばシリコーン接着剤が用いられる。
【0075】
ベースプレート50は、例えば、上部50aと下部50bとに分けられており、上部50aと下部50bとの間に連通路55が設けられている。連通路55の一端側は、入力路56に接続され、連通路55の他端側は、出力路57に接続される。
【0076】
ベースプレート50は、第1静電チャック部100および第2静電チャック部200の温度調整を行う役目も果たす。例えば、第1静電チャック部100および第2静電チャック部200を冷却する場合には、入力路56からヘリウムガスなどの冷却媒体を流入し、連通路55を通過させ、出力路57から流出させる。これにより、冷却媒体によってベースプレート50の熱を吸収し、その上に取り付けられたセラミック誘電体基板30およびセラミック層40を冷却することができる。一方、第1静電チャック部100および第2静電チャック部200を保温する場合には、連通路55内に保温媒体を入れることも可能である。セラミック誘電体基板30、セラミック層40およびベースプレート50に発熱体を内蔵させることも可能である。ベースプレート50、セラミック誘電体基板30およびセラミック層40の温度を調整することで、第1静電チャック部100によって吸着保持される対象物であるウエハWおよび/または第2静電チャック部200によって吸着保持される対象物であるフォーカスリングFの温度を調整することができる。
【0077】
前述のとおり、この例では、セラミック誘電体基板30の第1主面30a側に、溝34が設けられている。溝34は、第1主面30aから第2主面30bに向かう方向(Z軸方向)に窪み、X−Y平面内において連続して延びている。溝34が設けられていない部分を凸部33とすると、対象物であるウエハWは、凸部33に載置される。第1主面30aは、対象物であるウエハWの裏面と接する面である。すなわち、第1主面30aは、凸部33の上面を含む平面である。第1静電チャック部100に載置された対象物であるウエハWの裏面と溝34との間に空間が形成される。
【0078】
セラミック誘電体基板30は、溝34と接続された貫通孔35を有する。貫通孔35は、第2主面30bから第1主面30aにかけて設けられる。すなわち、貫通孔35は、第2主面30bから第1主面30aまでZ軸方向に延び、セラミック誘電体基板30を貫通する。
【0079】
凸部33の高さ(溝34の深さ)、凸部33及び溝34の面積比率、形状等を適宜選択することで、対象物であるウエハWの温度やウエハWに付着するパーティクルを好ましい状態にコントロールすることができる。
【0080】
ベースプレート50には、ガス導入路53が設けられる。ガス導入路53は、例えば、ベースプレート50を貫通するように設けられる。ガス導入路53は、ベースプレート50を貫通せず、他のガス導入路53の途中から分岐してセラミック誘電体基板30側まで設けられていてもよい。また、ガス導入路53は、ベースプレート50の複数箇所に設けられてもよい。
【0081】
ガス導入路53は、貫通孔35と連通する。すなわち、ガス導入路53に流入した伝達ガス(ヘリウム(He)等)は、ガス導入路53を通過した後に、貫通孔35に流入する。
【0082】
貫通孔35に流入した伝達ガスは、貫通孔35を通過した後に、対象物であるウエハWと溝34との間に設けられた空間に流入する。これにより、ウエハWを伝達ガスによって直接冷却することができる。
【0083】
セラミック層40は、貫通孔45を有する。貫通孔45は、第4主面40bから第3主面40aにかけて設けられる。すなわち、貫通孔45は、第4主面40bから第3主面40aまでZ軸方向に延び、セラミック層40を貫通する。第2静電チャック部200においても第1静電チャック部100と同様に、ガス導入路53は、貫通孔45と連通する。すなわち、ガス導入路53に流入した伝達ガス(ヘリウム(He)等)は、ガス導入路53を通過した後に、貫通孔45に流入する。
貫通孔45に流入した伝達ガスは、貫通孔45を通過した後に、対象物であるフォーカスリングFを直接冷却する。静電チャック900において、第1層41は、例えば溶射により形成された場合、その緻密度が低いため、伝達ガスは例えば、第1層41内を拡散することができる。したがって、第1層41の第1上面41u全体に伝達ガスをいきわたらせることができ、フォーカスリングFをより効率よく冷却することができる。
【0084】
第1吸着電極10の厚さは、例えば、1μm〜100μmである。第2吸着電極20の厚さは、例えば、1μm〜100μmである。第2吸着電極20の厚さを、例えば、第1吸着電極10の厚さよりも大きくしてもよい。第2吸着電極20を例えばプラズマ発生用の高周波電極(RF電極)としても用いてもよい。
ここで、第1吸着電極10および/または第2吸着電極20の厚さとは、第1吸着電極10および/または第2吸着電極20のZ軸方向の長さをいう。
【0085】
以下、第2静電チャック部200の作製方法について説明する。
【0086】
ベースプレート50の第2部分52の上に、第2層42を例えば溶射により形成する。第2層42は例えばAl
2O
3層である。第2層42の厚さは、例えば、50μm〜5000μmである。次に第2吸着電極20を例えば溶射により形成する。次に第1層41を例えば溶射により形成する。第1層41は例えばAl
2O
3-TiO
2層である。TiO
2の添加量は、例えば1wt%〜15wt%である。第1層41の厚さは、例えば、50〜500μmである。
第2静電チャック部200を形成した後、第1静電チャック部100を接着部材60を介してベースプレート50の第1部分51上に設けてもよい。
【0087】
第1吸着電極10は、例えば、スクリーン印刷、ペーストの塗布(スピンコート、コーター、インクジェット、ディスペンサーなど)及び蒸着などにより形成される。例えば、第1主面30aを下にした状態で、複数回に分けて各層を積層させて第1吸着電極10を形成することができる。
【0088】
図5は、実施形態に係る静電チャック900を備えたウエハ処理装置を模式的に表す断面図である。
図5に表したように、ウエハ処理装置500は、処理容器501と、高周波電源504と、吸着用電源505と、上部電極510と、静電チャック900と、を備えている。処理容器501の天井には、処理ガスを内部に導入するための処理ガス導入口502、及び、上部電極510が設けられている。処理容器501の底板には、内部を減圧排気するための排気口503が設けられている。第1静電チャック部100は、処理容器501の内部において、上部電極510の下に配置されている。第1静電チャック部100において、第1吸着電極10は、吸着用電源505と接続されている。第2静電チャック部200において、第2吸着電極20は、吸着用電源506と接続されている。
【0089】
高周波電源504からベースプレート50及び上部電極510に電圧(高周波電圧)が印加されると、高周波放電が起こり処理容器501内に導入された処理ガスがプラズマにより励起、活性化されて、対象物であるウエハWが処理される。
【0090】
吸着用電源505から第1吸着電極10に電圧(吸着用電圧)が印加されると、第1吸着電極10の第1主面30a側に電荷が発生し、静電力によって対象物であるウエハWが第1静電チャック部100に吸着保持される。吸着用電源506から第2吸着電極20に電圧(吸着用電圧)が印加されると、第2吸着電極20の第3主面40a側に電荷が発生し、静電力によって対象物であるフォーカスリングFが第2静電チャック部200に吸着保持される。
【0091】
図6は、実施形態の変形例に係る静電チャックを模式的に表す断面図である。
図7は、実施形態の変形例に係る静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図8(a)および
図8(b)は、実施形態の変形例に係る静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図9は、実施形態の変形例に係る静電チャックを備えたウエハ処理装置を模式的に表す断面図である。
図6、
図7、
図8(a)、
図8(b)、及び
図9に表したように、実施形態の変形例に係る静電チャック900Aでは、セラミック層40において、第2吸着電極20が省略されている。セラミック層40は、第1層41と、第2層42と、を有し、第1層41と第2層42とは、境界面Bを介して直接接するように設けられている。
【0092】
また、この例では、ベースプレート50をフォーカスリングF用の吸着電極としている。より具体的には、ベースプレート50は、吸着用電源(
図9の吸着用電源506)と接続される。第2静電チャック部200において、吸着用電源からベースプレート50に電圧(吸着用電圧)を印加することによって、ベースプレート50の第4主面40b側の面に電荷を発生させ、静電力によって対象物であるフォーカスリングFを吸着保持する。
第1吸着電極10用の電源とベースプレート50用の電源とは別々であってもよいし、同じであってもよい。
【0093】
実施形態の変形例に係る静電チャック900Aは、第2吸着電極20を省略し、ベースプレート50をフォーカスリングF用の吸着電極とする以外は、上述の実施形態に係る静電チャック900と実質的に同じであるため、他の部分の説明は省略する。
【0094】
実施形態の変形例に係る静電チャック900Aにおいても、導電性のベースプレート50と第1層41との間に第2層42を設けているため、例えば、プラズマ発生のための高周波(RF)が印加されるベースプレート50から、セラミック層40の第1層41が独立することとなり、ベースプレート50の温度変化のセラミック層40への影響が緩和され、第2静電チャック部200において安定した吸着力を発現可能となる。また、例えばベースプレート50を下部電極として高周波電力を印加した場合におけるセラミック層40の絶縁破壊を抑制することもできる。
【0095】
以上、説明したように、実施形態によれば、デバイスの歩留まりを向上できる静電チャックを提供することができる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、静電チャックが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。