(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した前記離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、50℃でのtanδ50が、0.05以上0.2以下であり、175℃以下でのtanδ175が、0.15以上0.25以下である、請求項1または2に記載の離型フィルム。
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した前記離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、175℃での損失弾性率が、2.0MPa以上10MPa以下である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の離型フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0013】
本明細書中、数値範囲の説明における「a〜b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1〜5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0014】
本明細書中、MD方向とは、フィルムの流れ方向(MD:Machine Direction)を意図し、TD方向とは、MD方向に直交する方向であり、垂直方向(TD:Transverse Direction)を意図する。
【0015】
<離型フィルム>
図1は、本実施形態の離型フィルムの一例を模式的に示す断面図である。本実施形態の離型フィルム10は、少なくとも一方の面に離型層1を備えるものである。離型層1とは、離型フィルム10を使用して加熱加圧したのちに、対象物に対して離型性を発揮するものである。
【0016】
本実施形態の離型フィルム10は、以下の条件aで測定したタック力が150gf以上、700gf以下である。
【0017】
(条件a)
ステンレス鋼の直径5mmの円形面を押し込み速さ2mm/秒で当該離型フィルムの前記離型層側の面に押し付け、温度175℃、圧力4000gf、加圧時間150秒で保持した後、引抜速さ10mm/秒で前記離型層側の面から引き剥がす際にかかる荷重(gf)をタック力とする。
【0018】
本実施形態の離型フィルム10において、当該タック力は150gf以上であり、180gf以上が好ましく、200gf以上がより好ましい。当該タック力を上記下限値以上とすることにより、離型性を向上でき、離型フィルムが使用時の熱収縮をする前に離型ができるため、FPCに対しかかる熱収縮による応力が付加されるのを抑制できる。その結果、FPCの寸法安定性を向上し、歩留まりを良好にできる。
一方、本実施形態の離型フィルム10において、当該タック力は700gf以下であり、650gf以下が好ましく、600gf以下がより好ましい。当該タック力を上記上限値以下とすることにより、離型性、追従性のバランスを良好にしつつ、埋め込み性を向上できる。
【0019】
また、本実施形態の離型フィルム10は、以下の条件bを満たすことが好ましい。
(条件b)
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した離型フィルム10を、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、50℃でのtanδ
50が、0.05以上0.2以下であり、175℃以下でのtanδ
175が、0.15以上0.25以下である。
【0020】
本実施形態の離型フィルム10において、当該tanδ
50は0.05以上0.15以下であり、0.08以上0.15以下が好ましい。当該tanδ
50を上記下限値以上とすることにより、離型性を向上できる。一方で、当該tanδ
50を上記上限値以下とすることにより、離型フィルムに適度なこしを持たせることにより、離型性、追従性のバランスを良好にしつつ、埋め込み性を向上しやすくなる。
また、本実施形態の離型フィルム10において、当該tanδ
175は0.15以上0.25以下であり、0.20以上0.25以下が好ましい。当該当該tanδ
175を上記下限値以上とすることにより、離型フィルムの使用温度における適度な弾性を保持し、良好な離型性を得ることができ、かつ埋め込み性を向上することができる。一方で、当該当該tanδ
175を上記上限値以下とすることにより、離型フィルムの使用時に適度なこしを持たせることにより離型性、追従性のバランスを良好にすることができる。
【0021】
また、本実施形態の離型フィルム10は、以下の条件cを満たすことが好ましい。
(条件c)
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した離型フィルム10を、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、175℃での貯蔵弾性率が、10MPa以上40MPa以下である。
【0022】
本実施形態の離型フィルム10において、当該貯蔵弾性率は10MPa以上40MPa以下であり、15MPa以上37MPa以下が好ましい。当該貯蔵弾性率を上記下限値以上とすることにより、熱プレス成型時の良好な耐熱性が得られ、離型性を向上できる。一方で、当該当該貯蔵弾性率を上記上限値以下とすることにより、離型フィルム10に適度なこしを持たせることにより搬送時のシワの発生を抑制し、歩留まりを向上しやすくなるとともに、良好な追従性、埋め込み性が得られる。
【0023】
また、本実施形態の離型フィルム10は、以下の条件dを満たすことが好ましい。
(条件d)
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した離型フィルム10を、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、175℃での損失弾性率が、2.0MPa以上10MPa以下である。
【0024】
本実施形態の離型フィルム10において、当該損失弾性率は2.0MPa以上10MPa以下であり、3.0MPa以上5.5MPa以下が好ましい。当該損失弾性率を上記下限値以上とすることにより、搬送時などの取り扱い性を良好にしてシワ発生を抑制しつつ、耐熱性を高め、良好な離型性を得ることができ、かつ埋め込み性を向上することができる。一方、当該損失弾性率を上記上限値以下とすることにより、離型フィルムに適度なこしを持たせることにより離型性、追従性のバランスを良好にすることができる。
【0025】
動的粘弾性測定装置としては、特に限定されないが、DMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)、DMS7100(エスエスアイ・ナノテクノロジー社製)、DMS6100(エスエスアイ・ナノテクノロジー社製)等を使用することができる。
【0026】
また、本実施形態の離型フィルム10において、動摩擦係数は0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上がより好ましい。当該動摩擦係数を上記下限値以上とすることにより、滑りすぎる場合などが発生して、搬送時のずれや、巻き取り、巻きだし時にずれが生じ実用上使用できないなどの問題の発生を抑制できる。
一方、本実施形態の離型フィルム10において、当該動摩擦係数は0.7以下が好ましく、0.65以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。当該動摩擦係数を上記上限値以下とすることにより、滑り性を向上して搬送時のシワの発生を抑制し、歩留まりを向上しやすくなる。
【0027】
なお、当該動摩擦係数は、以下の条件eにより測定する。
(条件e)
一の離型フィルム10を幅6.5cm、長さ17cmの大きさにカットし、離型層1が上側となるようにして水平な台の上に貼り付け、他の離型フィルム10を、離型層1が外側となるようにして63cm角、重量202gのおもりに巻き付ける。一の離型フィルム10上に前記他の離型フィルムが巻き付けられた前記おもりを載せ、室温23±1℃、湿度50±0.5%RHの雰囲気下で、150mm/minの速度で当該おもりを水平方向へ移動させて摩擦力を測定し、5cm移動させた点での摩擦係数を動摩擦係数とする。
【0028】
本実施形態において、上記の条件a〜eを満たす離型フィルム10は、公知の技術を適切に組み合わせて制御することが重要であり、後述するように従来の製造方法とは異なる製造方法によって得られるものである。すなわち、以下のような公知技術を組み合わせて従来の製造方法とは異なる製造方法とすることで初めて、上記の条件a〜eを満たす離型フィルム10が得られる。
(i)離型層1の材料の選択
(ii)離型フィルム10(離型層1)の製造過程の温度管理
(iii)離型フィルム0(離型層1)への凹凸加工
上記(i)〜(iii)それぞれの詳細は、後述する。
【0029】
また、本実施形態の離型フィルム10全体の厚みが50μm以上200μm以下であることが好ましく、70μm以上180μm以下であることがより好ましく、90μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。
離型フィルム10全体の厚みを上記下限値以上とすることにより、離型フィルム10の取り扱い性を良好にし、シワの発生を抑制しやすくなる。
一方、離型フィルム10全体の厚みを上記上限値以下とすることにより、離型性、追従性のバランスを保持できる。
【0030】
なお、離型フィルム10全体の厚みは、離型フィルム10が離型層1のみからなる場合は、後述する離型層1の厚みと同様となる。
【0031】
[離型層]
離型層1の材料は、ポリエステル樹脂、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリプロピレン樹脂の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。これにより、上記条件a〜eを満たす離型フィルム10が得られるようになる。
【0032】
上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂(PHT)および、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等が挙げられる。
上記ポリアミド樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド等が挙げられる。脂肪族ポリアミドの具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6−6,6共重合体、ポリアミド11、ポリアミド12などが挙げられる。芳香族ポリアミドの具体例としては、ポリアミド61、ポリアミド66/6T、ポリアミド6T/6、ポリアミド12/6Tなどが挙げられる。
中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。
【0033】
また、離型層1として、延伸フィルムを使用してもよく、延伸は逐次二軸延伸、同時二軸延伸、およびチューブラー延伸等の公知の方法を用いて製造することができる。
【0034】
さらに、離型層1には、上記樹脂の他に、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等の着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコンゴム等の耐衝撃性付与剤、酸化チタン、炭酸カルシウムおよびタルク等の無機充填剤を含有させてもよい。
【0035】
離型層1のMD方向における離型面3の表面粗さRzは2μm〜20μmが好ましく、5〜20μmがより好ましく、8〜20μmがさらに好ましい。
表面粗さRzを上記下限値以上とすることにより、搬送時の滑りを良好にしてシワの発生を抑制しやすくなる。一方、表面粗さRzを上記上限値以下とすることにより、離型性と追従性のバランスを良好にしつつ、離型フィルムの凹凸形状がFPCに転写することを抑制できる。
なお、離型層1の離型面3となる面とは、離型フィルムの使用時において対象物と接する面である。
【0036】
表面粗さの制御方法は、離型フィルム10(または離型層1)の製造工程においてエンボス加工が施されたロールを用いてフィルムにエンボス模様を転写したり、離型層1の材料に粒子を配合する等、公知の方法で調整することができる。
【0037】
表面粗さRzは、JIS B0601 1994に準拠して測定される。
【0038】
離型層1の厚みは、離型フィルム10全体厚みに対して、5〜50%であることが好ましく、100%であってもよい。
離型層1の厚みを上記下限値以上とすることにより、離型フィルム10の剛性を高め、過度に変形し、シワが発生することを抑制しやすくなる。
【0039】
離型層1の厚みは、目的に応じて適宜設定されるが、例えば、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、一方、60μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。
【0040】
[多層構造]
本実施形態における離型フィルム10は、少なくとも一方の面に離型層1を有するものであればよく、上記の離型層1のみから構成されるものでもよく、他の機能を有する層を備える多層構造であってもよい。また、離型層1は、単層であってもよく、二層以上であってもよい。
また、離型層が2層以上である場合、各離型層は互いに同じ材料から形成されたものであってもよく、異なる材料から形成されたものであってもよい。また、複数の離型層1は、互いに異なる厚みであってもよい。
具体的には、例えば、離型フィルムの両面に異なる離型層を有する離型フィルムとしてもよい。この場合の離型フィルムを使用する際に対象物と接する面を有する方を離型層と言い、それ以外の面を副離型層と言うこともある。副離型層を有することにより、プレス機で熱プレスされた際に、熱板からの離型性が向上し、成形体やFPC等の積層体の製造における生産性を向上させることができる。また、例えば、離型フィルムは、離型層に接するクッション層をさらに有していてもよい。また、離型フィルムは、離型層、クッション層、及び副離型層の順で積層した三層構造としてもよい。
また、他の機能を有する層として、接着層、ガスバリア層等が挙げられる。接着層、ガスバリア層としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
以下、上記のクッション層について説明する。
【0041】
[クッション層]
クッション層は、柔軟性を有する樹脂が用いられることにより、離型フィルム全体にクッション性を付与するものである。これにより、離型フィルム使用時において、被着体に対して、プレス熱板からの熱及び圧力が均等に伝わりやすくなり、離型フィルムと被着体との密着性及び追従性、埋め込み性をさらに良好にできる。
【0042】
クッション層を形成する樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロプレン等のα−オレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を重合体成分として有するα−オレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂が挙げられる。これらは、単独であるいは複数併用しても構わない。中でも、α−オレフィン系共重合体が好ましい。このα−オレフィン系共重合体としては、エチレン等のα−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体、およびそれらの部分イオン架橋物等が挙げられる。さらに、良好なクッション機能を得る観点から、エチレン等のα−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を単独で用いたもの、または、ポリブチレンテレフタレートと1,4シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートとの混合物、α−オレフィン系重合体とエチレン等のα−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との混合物が好ましい。たとえば、エチレンとエチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)との混合物、ポリプロピレン(PP)とエチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)との混合物、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリプロピレン(PP)とエチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)との混合物、などがより好ましい。
【0043】
クッション層は、さらにゴム成分を含んでもよい。ゴム成分としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー材料、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム等のゴム材料等が挙げられる。
【0044】
クッション層には、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等の着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコンゴム等の耐衝撃性付与剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤を含有させてもよい。
【0045】
なお、クッション層を形成する方法としては、例えば、空冷または水冷インフレーション押出法、Tダイ押出法等の公知の方法が挙げられる。
【0046】
クッション層の厚さは、目的に応じて適宜設定されるが、離型フィルムの全体厚に対して、30〜95%が好ましく、50〜90%がより好ましい。
また、クッション層の厚みは、例えば、20μm以上130μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましく、50μm以上110μm以下がさらに好ましい。クッション層の厚さが上記下限値以上である場合には、離型フィルムのクッション性が低下することを抑制できる。クッション層の厚さが上記上限値以下である場合には、離型性の低下を抑制することができる。
【0047】
<離型フィルムの製造方法>
本実施形態の離型フィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、離型層とクッション層を、または離型層と、クッション層と副離型層を、別々に製造してから、ラミネーター等により接合して離型フィルムを得てもよく、そのまま接合してもよく、接着層を介して互いに接合してもよい。または、例えば、離型層とクッション層を、または離型層と、クッション層と副離型層を、空冷式または水冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で製膜する方法で離型フィルムを得てもよい。なかでも共押出Tダイ法で製膜する方法が各層の厚さ制御に優れる点で好適である。
以下、離型フィルムが離型層のみからなる場合について、当該離型フィルム(離型層)をTダイ押出法により製造する方法について説明する。
【0048】
図2は、本実施形態の離型フィルムの製造装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、離型層の原材料が加熱溶融された溶融物Mは、ダイス510を通過しフィルム状に成形されたのち、第1ロール530に誘導されると共にタッチロール520によって第1ロール530に固定化され、第1ロール530から脱離するまでの間に第1ロール530により冷却され、離型フィルム200となる。その後、離型フィルム200は、第2ロール540によりフィルム送り方向(
図1の矢印参照)下流側に送られ、最終的に巻取ロール(図示せず)に巻き取られる。
このとき、第1ロール530の温度は60〜110℃、タッチロール520の温度は20〜50℃、第2ロール540の温度は60〜90℃とすることが重要となる。各ロールの温度を上記のような範囲とすることで、フィルム状の溶融物Mが徐々に冷却されるようになるため、離型フィルム200の結晶性を高くすることができる。すなわち、離型層の結晶性が高くなる結果、動摩擦係数を小さくしやすくなり、また耐熱性を高め、弾性率を向上しやすくなる。その結果、適度な弾性が得られ、上記条件a〜dを制御できるようになる。また、巻取速度は、安定的に徐冷効果を得るために、20〜60m/sが好ましい。
さらに、表面にエンボス加工を施したタッチロール520を用いることにより、ダイス510を通過したフィルム表面に凹凸を付与する。一方、タッチロールを用いずに、エアナイフを用いることで、表面粗さを低くすることができる。
その結果、最終的に得られる離型フィルムの離型層の表面状態を制御することで、上記条件a〜eを満たす離型フィルムが得られる。なかでも、条件aのタック力は、熱時の貯蔵弾性率を制御することで得られやすくなる。
【0049】
なお、上記では、離型フィルムが離型層のみからなる場合について説明したが、離型フィルムが離型層以外の層を有する多層構造であっても、構わない。すなわち、離型層を製造する過程において、各ロールの温度管理を行い、かつ離型層へ適切な凹凸加工を行うことで条件a〜eを満たす離型フィルムを得ることができる。
【0050】
<離型フィルムの使用方法>
本実施形態の離型フィルムは、たとえば、フレキシブルプリント回路基板を作製する際に使用してもよい。この場合、離型フィルムは、フレキシブルフィルム上に形成された回路を保護するため、当該回路に対してカバーレイフィルムを加熱プレスして密着させる際に、カバーレイとプレス機との間に介在させて使用する。
具体的には、離型フィルムは、例えば、フレキシブルプリント配線基板の製造工程の一つであるカバーレイプレスラミネート工程において用いられる。より詳細には、離型フィ
ルムは、回路露出フィルムへのカバーレイフィルム接着時にカバーレイフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるためにカバーレイフィルムを包むように配置され、回路露出フィルム及びカバーレイフィルムと共にプレス機により加熱加圧される。この時、クッション性の向上のために、紙、ゴム、フッ素樹脂シート、ガラスペーパー等、またはこれらを組合せたものを離型フィルムとプレス機の間に挿入した上で加熱加圧することもできる。プレス機は、加圧を開始してから15分で常温から170℃まで昇温した後、35分間その温度に維持し、その後、50分かけて170℃から常温まで冷却する。このときのプレス圧力は、5〜15MPaで適宜調節される。
【0051】
また、本実施形態の離型フィルムは、以下の方法で使用してもよい。
まず、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている対象物の表面に対して、上記本実施形態に係る離型フィルムの離型層表面を配置する。そして、離型フィルムを配置した対象物に対し、金型内でプレス処理を行う。ここで、上述した熱硬化性樹脂は、半硬化状態であっても、硬化状態であってもよいが、半硬化状態であると、当該離型フィルムの作用効果が一層顕著なものとなる。特に、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む樹脂組成物である場合には、当該エポキシ樹脂が、硬化反応の中間の段階にあること、すなわち、Bステージ状態にあることが好ましい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
少なくとも一方の面に離型層を備える離型フィルムであって、
前記離型層は、ポリエステル樹脂、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリプロピレン樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含み、
以下の条件で測定したタック力が150gf以上、700gf以下である、離型フィルム。
(条件)
ステンレス鋼の直径5mmの円形面を押し込み速さ2mm/秒で当該離型フィルムの前記離型層側の面に押し付け、温度175℃、圧力4000gf、加圧時間150秒で保持した後、引抜速さ10mm/秒で前記離型層側の面から引き剥がす際にかかる荷重(gf)をタック力とする。
<2>
前記離型層の表面粗さRzが、2μm〜20μmである、<1>に記載の離型フィルム。
<3>
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した前記離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、50℃でのtanδ50が、0.05以上0.2以下であり、175℃以下でのtanδ175が、0.15以上0.25以下である、<1>または<2>に記載の離型フィルム。
<4>
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した前記離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、175℃での貯蔵弾性率が、10MPa以上40MPa以下である、<1>乃至<3>いずれか一つに記載の離型フィルム。
<5>
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した前記離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、175℃での損失弾性率が、2.0MPa以上10MPa以下である、<1>乃至<4>いずれか一つに記載の離型フィルム。
<6>
前記離型フィルム全体の厚みが50μm以上、200μm以下である、<1>乃至<5>いずれか一つに記載の離型フィルム。
<7>
<1>乃至<6>のいずれか一つに記載の離型フィルムの前記一方の離型面が対象物側になるように、前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、
前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、
を含み、
前記離型フィルムを配置する前記工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される面が、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている、成型品の製造方法。
<8>
前記成型品が、フレキシブル回路基板である、<7>に記載の成型品の製造方法。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
[原材料の準備]
離型フィルムを製造するための原材料として、それぞれ、以下のものを用意した。
・熱可塑性樹脂材料
ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂I(TPX、三井化学社製、「DX820」)
ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂II(TPX、三井化学社製、「RT18」)
ポリブチレンテレフタレート樹脂I(PBT、長春石油化学社製、「1100−630S」)
ポリブチレンテレフタレート樹脂II(PBT、長春石油化学社製、「1100−211H」)
ポリブチレンテレフタレート樹脂III(PBT、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「ノバデュラン、5505S」)
低密度ポリエチレン(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製、「R300A」)
ポリプロピレン(PP、住友化学社製、「FH1016」)
エチレン−ビニル酢酸共重合体(EVA、三井・ダウ ポリケミカル社製:「エバフレックス V5961」)
【0055】
<実施例1>
まず、第1熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物として、それぞれ、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂I(DX820)で構成されるものを用意した。また、第3熱可塑性樹脂組成物として、低密度ポリエチレン(R300A)50重量部と、ポリプロピレン(FH1016)30重量部と、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂I20重量部とで構成されるものを用意した。
次いで、第1熱可塑性樹脂組成物、第3熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物を用いて、押出機のTダイ内で積層させて1つの溶融樹脂積層体を形成後、冷却固化して、第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、第3熱可塑性樹脂組成物からなるクッション層と、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層とがこの順で積層された積層体を形成し、離型フィルムを得た。
また、離型フィルムの作製には、
図2に示すような製造装置を用い、エンボス加工が施されたタッチロール520の温度を50℃、第1ロール530の温度を110℃とし、第2ロール540の温度を60℃とした。巻取速度は、20m/sとした。
なお、得られた離型フィルムにおいて、第1離型層の平均厚さは25μm、クッション層の平均厚さは70μm、第2離型層の平均厚さは25μmであった。
【0056】
<実施例2>
まず、第1熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物として、それぞれ、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂II(RT18)で構成されるものを用意した。また、第3熱可塑性樹脂組成物として、エチレン−ビニル酢酸共重合体(V5921)40重量部と、ポリプロピレン(FH1016)30重量部と、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂I30重量部とで構成されるものを用意した。
次いで、第1熱可塑性樹脂組成物、第3熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物を用いて、押出機のTダイ内で積層させて、1つの溶融樹脂積層体を形成後、冷却固化して、第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、第3熱可塑性樹脂組成物からなるクッション層と、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層とがこの順で積層された積層体を形成し、離型フィルムを得た。
また、離型フィルムの作製には、
図2に示すような製造装置を用い、タッチロール520の温度を50℃、第1ロール530の温度を90℃とし、第2ロール540の温度を60℃とした。巻取速度は、22m/sとした。
なお、得られた離型フィルムにおいて、第1離型層の平均厚さは10μm、クッション層の平均厚さは100μm、第2離型層の平均厚さは10μmであった。
【0057】
<実施例3>
まず、第1熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物として、それぞれ、ポリブチレンテレフタレート樹脂I(1100−630S)50質量部と、ポリブチレンテレフタレート樹脂III(5505S)50質量部で構成されるものを用意した。また、第3熱可塑性樹脂組成物として、エチレン−ビニル酢酸共重合体(V5921)50重量部と、ポリプロピレン(FH1016)30重量部と、ポリブチレンテレフタレート樹脂I(1100−630S)20重量部とで構成されるものを用意した。
次いで、第1熱可塑性樹脂組成物、第3熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物を用いて、押出機のTダイ内で積層させて、1つの溶融樹脂積層体を形成後、冷却固化して、第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、第3熱可塑性樹脂組成物からなるクッション層と、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層とがこの順で積層された積層体を形成し、離型フィルムを得た。
また、離型フィルムの作製には、
図2に示すような製造装置を用い、タッチロール520の温度を50℃、第1ロール530の温度を90℃とし、第2ロール540の温度を60℃とした。巻取速度は、25m/sとした。
なお、得られた離型フィルムにおいて、第1離型層の平均厚さは20μm、クッション層の平均厚さは70μm、第2離型層の平均厚さは20μmであった。
【0058】
<実施例4>
第1熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物として、それぞれ、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂II(RT18)で構成されるものを用意し、巻取速度は、25m/sとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
なお、得られた離型フィルムにおいて、第1離型層の平均厚さは12μm、クッション層の平均厚さは46μm、第2離型層の平均厚さは12μmであった。
【0059】
<比較例1>
図2に示す製造装置を用いてフィルムを作製した際の、タッチロール520の温度は30℃、第1ロール530の温度を60℃とした以外は、実施例1と同様にして、離型フィルムを作製した。
【0060】
<比較例2>
第1熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂II(1100−211H)で構成されるものを用意した以外は、実施例3と同様にして離型フィルムを作製した。
【0061】
各実施例で得られた離型フィルムについて、以下の測定、および評価を行った。評価結果を表1に示す。
なお、動的粘弾性測定装置としては、DMS6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いた。
【0062】
(a)タック力
ステンレス鋼の直径5mmの円形面を押し込み速さ2mm/秒で当該離型フィルムの前記離型層側の面に押し付け、温度175℃、圧力4000gf、加圧時間150秒で保持した後、引抜速さ10mm/秒で前記離型層側の面から引き剥がす際にかかる荷重(gf)をタック力とした。
【0063】
(b)tanδ
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した前記離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、50℃でのtanδ
50、175℃以下でのtanδ
175をそれぞれ求めた。
【0064】
(c)貯蔵弾性率
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した前記離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、175℃での貯蔵弾性率を求めた。
【0065】
(d)損失弾性率
MD方向に厚さ100μm、幅4mm、長さ20mmに成形した前記離型フィルムを、動的粘弾性測定装置で、引張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで測定したときの、175℃での損失弾性率を求めた。
【0066】
(e)動摩擦係数
一の前記離型フィルムを幅6.5cm、長さ17cmの大きさにカットし、前記離型層が上側となるようにして水平な台の上に貼り付け、他の前記離型フィルムを、前記離型層が外側となるようにして63cm角、重量202gのおもりに巻き付けた。前記一の離型フィルム上に前記他の離型フィルムが巻き付いた前記おもりを載せ、室温23±1℃、湿度50±0.5%RHの雰囲気下で、150mm/minの速度で当該おもりを水平方向へ移動させて摩擦力を測定し、5cm移動させた点での摩擦係数を求めた。これを3回繰り返し、平均値を動摩擦係数とした。
【0067】
(表面粗さRz)
離型フィルムの離型層側の面のMD方向について、JIS B0601 1994に準拠して測定した。
【0068】
(追従性:外観しわ)
L/Sが100/100μmの電気配線が形成された絶縁基板(FPC)表面に対し、接着剤がコーティングされている側の面が接触するように開口部を有するカバーレイを仮止めした試験片を作製した。次いで、離型フィルムを試験片に175℃、11MPa、120secの条件でロールツーロールプレス機にて加圧貼付して、加圧直後に200mm/sで搬送しつつ、前記試験片と当該離型フィルムとを引き剥がした。試験片表面について、JPCA規格の「7.5.7.2項しわ」に準じて測定した。
◎:シワ発生率 1.0%未満
○:シワ発生率 1.0%以上、2.0%未満
×:シワ発生率 2.0%以上
【0069】
(離型性)
L/Sが100/100μmの電気配線が形成された絶縁基板(FPC)表面に対し、接着剤がコーティングされている側の面が接触するように開口部を有するカバーレイを仮止めした試験片を作製した。次いで、離型フィルムにおける第1の離型層の第1の離型面が、上記試験片のカバーレイを有する側の面と対向するように、上記離型フィルムと、上記試験片とを重ねあわせた後、真空条件下175℃、2MPa、真空引き20秒、2分間の熱プレス処理を施し、成型品を得た。
引っ張り試験機(エーアンドデイ社製Force gauge AD−4932A−50N)を用いて、180°方向に約1000mm/分の速度で、離型面とサンプルの剥離力を測定した。測定はプレス直後に実施し、以下の基準に基づいて離型性を評価した。評価結果を表1に示す。
◎:0.5N以下
○:0.5N超1.0N未満
×:1.0N以上
【0070】
(埋め込み性:接着剤流れ出し)
まず、有沢製作所製のカバーレイ(CMタイプ)に1mm角の開口部を作成した。次に、フレキシブル配線板用銅張積板の表面に対して、接着剤がコーティングされている側の面が接触するように上記開口部を有するカバーレイを仮止めした試験片を作製した。次いで、離型フィルムにおける第1の離型層の第1の離型面が、上記試験片のカバーレイを有する側の面と対向するように、上記離型フィルムと、上記試験片とを重ねあわせた後、真空条件下175℃、2MPa、真空引き20秒、2分間の熱プレス処理を施し、成型品を得た。このようにして得られた成型品について、カバーレイに形成した開口部内に、該カバーテープの表面にコーティングされている接着剤が上記開口部の外縁部からしみ出した形状(接着剤のしみだし形状)を観察し、以下の基準に基づいて追従性を評価した。
◎:接着剤のしみだし形状の凹凸差が、70μm未満であった。
○:接着剤のしみだし形状の凹凸差が、70μm以上、100μm未満であった。
×:接着剤のしみだし形状の凹凸差が、100μm以上であった。
【0071】
【表1】
【解決手段】本発明の離型フィルム10は、少なくとも一方の面に離型層1を備え、離型層1は、ポリエステル樹脂、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリプロピレン樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含み、以下の条件で測定したタック力が150gf以上、700gf以下である。
(条件)ステンレス鋼の直径5mmの円形面を押し込み速さ2mm/秒で離型フィルム10の離型層1側の面に押し付け、温度175℃、圧力4000gf、加圧時間150秒で保持した後、引抜速さ10mm/秒で離型層1側の面から引き剥がす際にかかる荷重(gf)をタック力とする。