(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゲイン設定部は、前記ゲイン目標値まで前記ゲインを増加させるときの前記ゲインの増加速度である復帰速度を、前記復帰時設定ゲイン、操舵トルク、操舵角、操舵角速度及び車速の少なくとも1つ、或いはこれらのうちの2つ以上の組み合わせに基づき設定する請求項1に記載の電動パワーステアリング制御装置。
前記ゲイン設定部は、前記復帰速度を、前記復帰時設定ゲインが大きいほど大きな値に設定し、前記復帰時設定ゲインが小さいほど小さな値に設定する復帰速度設定部を備える請求項2に記載の電動パワーステアリング制御装置。
前記ゲイン設定部は、前記復帰速度設定部で設定した前記復帰速度を、操舵トルク、操舵角、操舵角速度及び車速の少なくとも1つ、或いはこれらのうちの2つ以上の組み合わせに基づき補正する復帰速度補正部を備える請求項3に記載の電動パワーステアリング制御装置。
前記目標値設定部は、前記バッテリ用電圧センサで検出した電圧が前記通常電圧よりも低い第1低電圧領域内にある場合には、前記ゲイン目標値を当該電圧の大きさに応じた値に設定する請求項1から4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング制御装置。
前記目標値設定部は、前記バッテリ用電圧センサで検出した電圧が前記第1低電圧領域よりも低い第2低電圧領域内にある場合には、前記ゲイン目標値を前記通常値と「0」との間の設定値に設定する請求項5に記載の電動パワーステアリング制御装置。
前記目標値設定部は、前記バッテリ用電圧センサで検出した電圧が前記通常電圧よりも高い第1高電圧領域内にある場合には、前記ゲイン目標値を前記通常値と「0」との間の設定値に設定する請求項1から6の何れか1項に記載の電動パワーステアリング制御装置。
前記目標値設定部は、前記バッテリ用電圧センサで検出した電圧が前記第1高電圧領域よりも高い第2高電圧領域内にある場合には、前記ゲイン目標値を「0」に設定する請求項7に記載の電動パワーステアリング制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、従来の電動パワーステアリング制御装置において、以下の課題を発見した。従来の電動パワーステアリング制御装置では、
図5に示すようにエンジンに接続されたスターター・モータが起動されると、スターター・モータに瞬間的に大きな電流が流れ、バッテリの電圧が降下する。そして、バッテリの電圧の降下により、アシスト力が低減し、ステアリングホイールが急に重くなるという操作感覚を与えてしまう可能性がある。
また、縁石に乗り上げたりして操舵反力を受けると、モータの回生電流が生じて瞬間的にバッテリ電流が上昇することがある。この場合も回路保護のためにアシスト力が低減しステアリングホイールが急に重くなり、一定期間その状態が継続して、操作感覚に違和感を与えてしまう可能性がある。
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング制御装置の一例を、
図1〜
図11を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の例に限定されるものではない。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0010】
(電動パワーステアリング制御装置の全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング制御装置の全体構成を示す図である。
図1の電動パワーステアリング制御装置1は、ステアリング軸側でアシスト力を加えるコラム式EPS(Electric Power Steering)に適用したものである。
図1に示すように、本実施形態の電動パワーステアリング制御装置1は、ステアリングホイール2と、ステアリング軸3と、ピニオン入力軸4と、トルクセンサ5と、減速機構6と、ラックアンドピニオン7と、ロッド8L、8Rと、モータ9と、操舵角センサ10と、車速センサ11と、バッテリ12と、ECU(Electronic Control Unit)13とを備えている。
【0011】
ステアリングホイール2には、ステアリング軸3の一端側が接続されている。ステアリング軸3の他端側には、トルクセンサ5の入力側が接続されている。トルクセンサ5の出力側には、ピニオン入力軸4の一端側が接続されている。トルクセンサ5は、1つのトーションバーとこのトーションバーを挟むように両端に取り付けられた2つのレゾルバとからなり、トーションバーの一端側を入力とし、他端側を出力とする入出力間で生じるトーションバーの捻れ量等を2つのレゾルバで検出することで、ステアリングホイール2による操舵トルクTを検出する。検出された操舵トルクTは、ECU13に出力される。
【0012】
ピニオン入力軸4の途中には、減速機構6が連結されている。減速機構6は、モータ9から出力されるアシスト力をピニオン入力軸4の他端側に伝達する。また、ピニオン入力軸4の他端側には、ラックアンドピニオン7を構成するラック軸のラック溝に噛合可能なピニオンギヤが形成されている。ラックアンドピニオン7では、ピニオン入力軸4の回転運動をラック軸の直線運動に変換する。また、ラック軸の両端には、ロッド8L、8Rが連結されている。ロッド8L、8Rの端部には、ナックル等を介して操舵輪14L、14Rが連結されている。これにより、ピニオン入力軸4が回転すると、ラックアンドピニオン7、ロッド8L、8R等を介して操舵輪14L、14Rの実操舵角が変化する。すなわち、ピニオン入力軸4の回転に従った操舵輪14L、14Rの操舵が可能となっている。
【0013】
操舵角センサ10は、ステアリングホイール2の操舵角δを検出する。車速センサ11は、車速Vを検出する。検出された操舵角δ及び車速Vは、ECU13に出力される。
バッテリ12は、モータ9、ECU13、スターター・モータ、カーエアコン、カーナビ、オーディオ等、電動パワーステアリング制御装置1が搭載される車両の各種電装品に電力を供給する。また、バッテリ12は、オルタネータで発電された電力が充電される。
【0014】
ECU13は、
図2に示すように、トルク検出回路15と、操舵角検出回路16、車速検出回路17、モータ用電流センサ18と、バッテリ用電圧センサ19と、チャージポンプ回路20と、チャージポンプ用電圧センサ21と、MCU(Micro Control Unit)22と、FET(Field Effect Transistor)ドライバ24と、モータ駆動FET25とを備えている。
【0015】
トルク検出回路15は、トルクセンサ5から操舵トルクTが入力される。また、操舵角検出回路16は、操舵角センサ10から操舵角δが入力される。車速検出回路17は、車速センサ11から車速Vが入力される。入力された操舵トルクT、操舵角δ及び車速Vのそれぞれは、MCU22に出力される。また、モータ用電流センサ18は、モータ9に流れる電流の電流値iU、iV、iWを検出する。
図2では、モータ9として、U相コイル、V相コイル及びW相コイルを有する三相モータを用いた一例を示している。電流値iUはU相コイルに流れる電流であり、電流値iVはV相コイルに流れる電流の電流値であり、電流値iWはW相コイルに流れる電流の電流値である。検出されたモータ9の電流値iU、iV、iWは、MCU22に出力される。さらに、バッテリ用電圧センサ19は、バッテリ12の電圧を検出する。検出されたバッテリ12の電圧は、MCU22に出力される。
【0016】
チャージポンプ回路20は、バッテリ12の電圧を昇圧する。昇圧された電圧は、FETドライバ24に印加される。チャージポンプ用電圧センサ21は、チャージポンプ回路20によって昇圧された電圧を検出する。検出された電圧は、MCU22に出力される。
MCU22は、メモリ26を有している。メモリ26は、MCU22が実行可能な各種プログラムを記憶している。また、メモリ26は、各種プログラムの実行時に各種データを記憶する。データとしては、例えば、後述するゲインG、ゲイン目標値G
*等が挙げられる。メモリ26としては、例えば、RAM(Random Access Memory)を採用できる。
【0017】
また、MCU22は、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられると、メモリ26が記憶している各種プログラムからアシスト力制御プログラムを読み出して実行する。そして、アシスト力制御プログラムにより、
図3に示すように、電流指令値演算部27、電流指令値補正部28、三相変換部37及びPWM(Pulse Width Modulation)駆動部23をソフトウェアによって実現する。
電流指令値演算部27は、トルク検出回路15から出力される操舵トルクT、及び車速検出回路17から出力される車速Vに基づき、アシストマップを用いて、モータ9が出力するアシスト力の制御のための電流指令値を算出する。アシストマップとしては、例えば、操舵トルクT及び車速Vが入力されると、それらの入力に応じて、電流指令値を出力するマップを用いる。算出された電流指令値は、電流指令値補正部28に出力される。
【0018】
電流指令値補正部28は、電流指令値演算部27から出力される電流指令値に、後述するゲイン設定部33で設定されるゲインGを乗算して、補正後の電流指令値を得る。ゲインGは、バッテリ12の電圧が予め定められた通常電圧の範囲外にある場合には、「1.0」未満の数値に設定され、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲外から範囲内に入った場合には「1.0」未満の数値から「1.0」まで連続的に変更されて、「1.0」に維持される。通常電圧としては、例えばモータ9でアシスト力を適切に出力可能なバッテリ12の正常電圧を採用できる。これにより、バッテリ12の電圧が、モータ9でアシスト力を適切に出力可能な正常電圧である場合には、ゲインGが「1.0」に維持されて、電流指令値演算部27から出力される電流指令値がそのまま補正後の電流指令値となる。一方、バッテリ12の電圧が、モータ9でアシスト力を適切に出力できない異常電圧である場合には、電流指令値演算部27から出力される電流指令値を低減させたものが、補正後の電流指令値となる。算出された補正後の電流指令値は、三相変換部37に出力される。
【0019】
三相変換部37は、電流指令値補正部28から出力される補正後の電流指令値を、モータ9のU相コイルの電流指令値、V相コイルの電流指令値、及びW相コイルの電流指令値に変換させる。変換後の電流指令値それぞれは、PWM駆動部23に出力される。
PWM駆動部23は、三相変換部37から出力される変換後の電流指令値に基づき、変換後の電流指令値の大きさに応じたアシスト力をモータ9に出力させるためのPWM信号を算出する。すなわち、変換後の電流指令値が大きいほど、大きいアシスト力をモータ9に出力させるPWM信号を算出する。PWM信号の算出方法としては、例えば、変換後の電流指令値iU*、iV*、iW*と、モータ用電流センサ18で検出されたモータ9の電流値iU、iV、iWとの差(iU*−iU)、(iV *−iV)、(iW *−iW)を基にPI制御値を演算し、演算したPI制御値を基にPWM演算を行って、モータ9のU相コイルに対応するPWM信号、V相コイルに対応するPWM信号、及びW相コイルに対応するPWM信号を算出する方法を採用できる。算出されたPWM信号は、FETドライバ24に出力される。
【0020】
FETドライバ24は、チャージポンプ回路20から印加された電圧による電力を用い、PWM駆動部23が出力するPWM信号に従ってモータ駆動FET25を駆動する。
モータ駆動FET25は、FETドライバ24で駆動されると、バッテリ12から供給される電力を用いて、モータ9に駆動電流を供給する。電流指令値演算部27、電流指令値補正部28、三相変換部37、PWM駆動部23、FETドライバ24及びモータ駆動FET25が、ゲイン設定部33から出力されるゲインG、及びトルク検出回路15から出力される操舵トルクTに基づきモータ9が出力するアシスト力を制御する制御部29を構成する。
【0021】
このように構成することにより、電動パワーステアリング制御装置1では、ステアリングホイール2による操舵トルクTをトルクセンサ5で検出する。そして、この操舵トルクT等に応じた電流指令値をECU13のMCU22で演算し、さらに、この電流指令値に基づきPWM信号をPWM駆動部23から出力し、このPWM信号に基づきFETドライバ24でモータ駆動FET25を駆動する。これにより、電動パワーステアリング制御装置1は、モータ駆動FET25からモータ9に駆動電流を供給し、モータ9でアシスト力を発生し、運転者のステアリングホイール2による操舵を補助可能となっている。
【0022】
また、MCU22は、アシスト力制御プログラムと同時に、メモリ26からゲイン設定プログラムを読み出して実行する。そして、ゲイン設定プログラムにより、初期化部30、電圧取得部31、目標値設定部32及びゲイン設定部33を実現する。初期化部30、電圧取得部31、目標値設定部32及びゲイン設定部33はゲイン設定処理を実行する。
【0023】
(ゲイン設定処理)
次に、初期化部30、電圧取得部31、目標値設定部32及びゲイン設定部33が実行するゲイン設定処理について説明する。
図4に示すように、まずステップS101では、初期化部30が、初期化処理を実行する。すなわち、メモリ26の所定領域に所定の初期値を設定する処理を行う。これにより、ゲインG及びゲイン目標値G
*のそれぞれが「1.0」に設定される。
続いてステップS102に移行して、電圧取得部31が、バッテリ用電圧センサ19から出力されるバッテリ12の電圧を取得する。バッテリ12の電圧は、数百μs〜数ms毎に取得されるようにする。なお、バッテリ12の電圧としては、例えば、単数又は複数個(3個以上)の電圧データによる移動平均値等を用いるようにしてもよい。
【0024】
続いてステップS103に移行して、目標値設定部32が、ステップS102で取得したバッテリ12の電圧が、通常電圧、第1低電圧領域、第2低電圧領域、第1高電圧領域及び第2高電圧領域の何れの領域内にあるかを判定する。また、各領域の大小関係は、第2高電圧領域>第1高電圧領域>通常電圧>第1低電圧領域>第2低電圧領域となっている。そして、目標値設定部32が、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲内にあると判定した場合には、ステップS104に移行する。一方、第1低電圧領域又は第2低電圧領域内にあると判定した場合には、ステップS110に移行する。また一方、第1高電圧領域又は第2高電圧領域内にあると判定した場合には、ステップS112に移行する。
【0025】
ステップS104では、ゲイン設定部33が、ステップS102で取得したバッテリ12の電圧が通常電圧の範囲外から範囲内に復帰したか否かを判定する。復帰の有無を判定する方法としては、例えば、直前のステップS103よりも1回前に実行されたステップS103において、バッテリ12の電圧が第1低電圧領域又は第1高電圧領域内にあったと判定された場合に、ステップS102で取得したバッテリ12の電圧が通常電圧の範囲外から範囲内に復帰したと判定する方法を用いることができる。そして、ゲイン設定部33が、復帰したと判定した場合には(Yes)、ステップS105に移行する。一方、復帰していないと判定した場合には(No)、ステップS108に移行する。
【0026】
ステップS105では、ゲイン設定部33が、バッテリ12の電圧の通常電圧の範囲外から範囲内への復帰時に設定されていたゲインG(以下、「復帰時設定ゲインGr」とも呼ぶ)が予め定められた所定閾値Gth(例えば、「0.7」)よりも大きいか否かを判定する。具体的には、メモリ26に記憶されているゲインGを復帰時設定ゲインGrとして、その復帰時設定ゲインGrが所定閾値Gth「0.7」よりも大きいか否かを判定する。
そして、復帰時設定ゲインGrが所定閾値Gth「0.7」よりも大きいと判定した場合には(Yes)、ステップS106に移行する。一方、復帰時設定ゲインGrが所定閾値Gth「0.7」以下であると判定した場合には(No)、ステップS107に移行する。
【0027】
ステップS106では、ゲイン設定部33が、ステップS108で用いる変動速度dG/dtを比較的速い第1復帰速度dG
1/dtに設定した後、ステップS108に移行する。
ステップS107では、ゲイン設定部33が、ステップS108で用いる変動速度dG/dtを比較的遅い第2復帰速度dG
2/dtに設定した後、ステップS108に移行する。第2復帰速度dG
2/dtとしては、第1復帰速度dG
1/dtよりも遅い速度が用いられる。
ステップS108では、目標値設定部32が、ゲイン目標値G
*を予め定めた通常値(例えば、「1.0」)に設定する。なお、通常値としては、所定閾値Gth「0.7」よりも大きい数値であればよく、「1.0」以外の数値を用いるようにしてもよい。
【0028】
続いてステップS109に移行して、ゲイン設定部33が、ステップS108で設定したゲイン目標値G
*に基づきゲインGを設定する。具体的には、ゲイン目標値G
*にゲインGが近づくように、メモリ26が記憶しているゲインGにステップS106又はS107で設定した変動速度dG/dtに更新時間toを乗算した乗算結果を加算し、加算結果をメモリ26が記憶しているゲインGに上書きする。更新時間toとしては、メモリ26が記憶しているゲインGの上書きが前回行われてから現在までに経過した時間を用いる。
【0029】
また同時に、制御部29が、メモリ26に記憶させたゲインG、及びトルクセンサ5から出力される操舵トルクTに基づき、モータ9が出力するアシスト力を制御する。具体的には、電流指令値補正部28が、メモリ26が記憶しているゲインGに、電流指令値演算部27で算出された電流指令値を乗算して、補正後の電流指令値を得る。続いて、三相変換部37が、補正後の電流指令値を、モータ9のU相コイル、V相コイル及びW相コイルの電流指令値に変換する。続いて、PWM駆動部23が、変換後の電流指令値を基にモータ9のU相コイル、V相コイル及びW相コイルのPWM信号を出力し、FETドライバ24が、出力されたPWM信号に従ってモータ駆動FET25を駆動し、モータ駆動FET25が、モータ9に駆動電流を供給する。そして、ステップS102に戻り、ステップS102→S103→S104→S108→S109といった変化を繰り返し、ゲインGの設定・モータ9への駆動電流の供給を繰り返すことで、ゲインGがゲイン目標値G
*まで直ちに又は徐々に増加され、モータ9によるアシスト力が直ちに又は徐々に増加される。
【0030】
一方、ステップS110では、目標値設定部32は、ステップS102で取得したバッテリ12の電圧が第1低電圧領域内及び第2低電圧領域内のどちらにあるかを判定する。
そして、第1低電圧領域内にあると判定した場合には、バッテリ12の電圧に応じてゲイン目標値G
*を設定する。具体的には、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲と第1低電圧領域との境界値と一致する場合には、ゲイン目標値G
*を通常値「1.0」とする。
また、バッテリ12の電圧が第1低電圧領域と第2低電圧領域との境界値と一致する場合には、ゲイン目標値G
*を設定値(例えば、「0.5」)とする。設定値としては、通常値「1.0」と「0」との間の数値であればよく、「0.5」以外の数値を用いるようにしてもよい。さらに、バッテリ12の電圧が、それら2つの境界値の間にある場合、つまり第1低電圧領域内にある場合には、ゲイン目標値G
*をバッテリ12の電圧の大きさに応じた値に設定する。すなわち、電圧の大きさに応じて通常値「1.0」〜設定値「0.5」の間で直線的に変化させる。一方、バッテリ12の電圧が第2低電圧領域内にあると判定した場合には、ゲイン目標値G
*を設定値「0.5」に設定する。
【0031】
続いてステップS111に移行して、ゲイン設定部33が、ステップS110で設定したゲイン目標値G
*に基づきゲインGを設定した後、ステップS102に戻る。具体的には、ゲイン目標値G
*にゲインGが近づくように、メモリ26が記憶しているゲインGに、所定速度dG
o1/dtに更新時間toを乗算した乗算結果を加算又は減算し、算出結果をメモリ26が記憶しているゲインGに上書きする。更新時間toとしては、メモリ26が記憶しているゲインGの上書きが前回行われてから現在までの経過時間を用いる。
【0032】
これにより、制御部29が、メモリ26に記憶させたゲインG、及びトルクセンサ5から出力される操舵トルクTに基づき、モータ9が出力するアシスト力を制御する。具体的には、電流指令値補正部28が、メモリ26が記憶しているゲインGに、電流指令値演算部27で算出された電流指令値を乗算して、補正後の電流指令値を得る。続いて、三相変換部37が、補正後の電流指令値を、モータ9のU相コイル、V相コイル及びW相コイルの電流指令値に変換する。続いて、PWM駆動部23が、変換後の電流指令値を基にモータ9のU相コイル、V相コイル及びW相コイルのPWM信号を出力し、FETドライバ24が、出力されたPWM信号に従ってモータ駆動FET25を駆動し、モータ駆動FET25が、モータ9に駆動電流を供給する。このようなステップS110におけるゲイン目標値G
*の設定、ステップS111におけるゲインGの設定・モータ9への駆動電流の供給を何度も繰り返し、ゲインGをゲイン目標値G
*まで少しずつ低下又は増加させ、モータ9によるアシスト力を少しずつ低下又は増加させる。
【0033】
一方、ステップS112では、目標値設定部32は、ステップS102で取得したバッテリ12の電圧が第1高電圧領域内及び第2高電圧領域内のどちらにあるかを判定する。
そして、バッテリ12の電圧が第1高電圧領域内にあると判定した場合には、ゲイン目標値G
*を設定値「0.5」に設定する。一方、バッテリ12の電圧が第2高電圧領域内にあると判定した場合には、ゲイン目標値G
*を「0」に設定する。
続いてステップS113に移行して、ゲイン設定部33が、ステップS112で設定したゲイン目標値G
*に基づきゲインGを設定した後、ステップS102に戻る。具体的には、ステップS111と同様に、ゲイン目標値G
*にゲインGが近づくように、メモリ26が記憶しているゲインGに、所定速度dG
o2/dtに更新時間toを乗算した乗算結果を加算又は減算し、算出結果をメモリ26が記憶しているゲインGに上書きする。更新時間toとしては、メモリ26が記憶しているゲインGの上書きが前回行われてから現在までの経過時間を用いる。
【0034】
これにより、制御部29が、メモリ26に記憶させたゲインG、及びトルクセンサ5から出力される操舵トルクTに基づき、モータ9が出力するアシスト力を制御する。具体的には、電流指令値補正部28が、電流指令値演算部27で算出された電流指令値に、メモリ26が記憶しているゲインGを乗算して、補正後の電流指令値を得る。続いて、三相変換部37が、補正後の電流指令値を、モータ9のU相コイル、V相コイル及びW相コイルの電流指令値に変換する。続いて、PWM駆動部23が、変換後の電流指令値を基にモータ9のU相コイル、V相コイル及びW相コイルの電流指令値に基にPWM信号を出力し、FETドライバ24が、出力されたPWM信号に従ってモータ駆動FET25を駆動し、モータ駆動FET25が、モータ9に駆動電流を供給する。このようなステップS112におけるゲイン目標値G
*の設定、ステップS113におけるゲインGの設定・モータ9への駆動電流の供給を何度も繰り返し、ゲインGをゲイン目標値G
*まで少しずつ低下又は増加させ、モータ9によるアシスト力を少しずつ低下又は増加させる。
【0035】
(動作その他)
次に、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング制御装置1の動作について、図面を参照して説明する。
まず、
図5に示すように、エンジンに接続されたスターター・モータが起動され、スターター・モータに瞬間的に大きな電流が流れることで、
図6(a)の時刻t
0に示すように、バッテリ12の電圧の降下が開始されたとする。そして、
図6(a)の時刻t
1に示すように、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲内から第1低電圧領域に変化したとする。すると、ECU13が、
図6(b)の時刻t
1に示すように、バッテリ12の電圧の低減に応じてゲイン目標値G
*を低減し、
図6(c)の時刻t
1に示すように、低減したゲイン目標値G
*に近づくようにゲインGを低減させる。これにより、モータ9によって出力されるアシスト力が低減するように、モータ9が制御される。
【0036】
続いて、
図6(a)の時刻t
2に示すように、バッテリ12の電圧が第1低電圧領域から第2低電圧領域に変化すると、ECU13が、
図6(b)の時刻t
2に示すように、電圧の低減に応じたゲイン目標値G
*の低減を停止し、ゲイン目標値G
*を設定値(例えば「0.5」)に維持し、
図6(c)の時刻t
2に示すように、設定値「0.5」に維持されたゲイン目標値G
*に近づくようにゲインGを低減させる。これにより、アシスト力が、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲内にあるときに出力されるアシスト力(以下、「通常時アシスト力」とも呼ぶ)の50%まで緩やかに低減するようにモータ9が制御される。
【0037】
続いて、バッテリ12の電圧の復帰(上昇)が開始され、
図6(a)の時刻t
3に示すように、バッテリ12の電圧が第2低電圧領域から第1低電圧領域に変化したとする。すると、ECU13が、
図6(b)の時刻t
3に示すように、ゲイン目標値G
*の設定値「0.5」への維持をやめ、バッテリ12の電圧の増大に応じてゲイン目標値G
*を増大し、
図6(c)の時刻t
3に示すように、増大したゲイン目標値G
*に近づくようにゲインGを増大する。これにより、アシスト力が増大するように、モータ9が制御される。
【0038】
続いて、
図6(a)の時刻t
4に示すように、バッテリ12の電圧が第1低電圧領域から通常電圧の範囲内に復帰したとする。すると、ECU13が、
図6(b)の時刻t
4に示すように、電圧の増大に応じたゲイン目標値G
*の増大を停止し、ゲイン目標値G
*を通常値(例えば「1.0」)に維持し、
図6(c)の時刻t
4に示すように、通常値「1.0」に維持されたゲイン目標値G
*に近づくようにゲインGを増大させる。その際、復帰時のゲインG、つまりメモリ26が記憶していた復帰時設定ゲインGrが所定閾値Gth「0.7」よりも大きかったとする(例えばGr=0.8)。すると、ゲインGの変動速度dG/dtとして、比較的速い第1復帰速度dG
1/dtが採用される。これにより、
図6(c)の時刻t
4〜時刻t
5に示すように、ゲインGがゲイン目標値G
*「1.0」まで直ちに増大し、アシスト力が通常時アシスト力まで直ちに増大するようにモータ9が制御される。
【0039】
一方、復帰時設定ゲインGrが所定閾値Gth「0.7」以下であったとする(例えば、Gr=0.5)。すると、ゲインGの変動速度dG/dtとして、比較的遅い第2復帰速度dG
2/dtが採用される。これにより、ゲインGがゲイン目標値G
*「1.0」まで徐々に増大し、アシスト力が通常時アシスト力まで徐々に増大するようにモータ9が制御される。
続いて、タイヤが縁石に乗り上げて操舵反力を受け、モータ9に回生電流が生じ、
図6(a)の時刻t
6に示すように、バッテリ12の電圧の上昇が開始されたとする。そして、
図6(a)の時刻t
7に示すように、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲内から第1高電圧領域に変化すると、ECU13が、
図6(b)の時刻t
7に示すように、ゲイン目標値G
*を通常値「1.0」から設定値「0.5」に切り替え、
図6(c)の時刻t
7に示すように、設定値「0.5」に切り替えたゲイン目標値G
*に近づくようにゲインGを低減させる。これにより、アシスト力が低減するように、モータ9が制御される。
【0040】
続いて、
図6(a)の時刻t
8に示すように、バッテリ12の電圧が第1高電圧領域から第2高電圧領域に変化したとする。すると、ECU13が、
図6(b)の時刻t
8に示すように、ゲイン目標値G
*を設定値「0.5」から「0」に切り替え、
図6(c)の時刻t
8に示すように、「0」に切り替えたゲイン目標値G
*に近づくようにゲインGを低減する。これにより、アシスト力が「0」まで低減するようにモータ9が制御される。
続いて、バッテリ12の電圧の復帰(下降)が開始され、
図6(a)の時刻t
9に示すように、バッテリ12の電圧が第2高電圧領域から第1高電圧領域に変化したとする。すると、ECU13が、
図6(b)の時刻t
9に示すように、ゲイン目標値G
*を「0」から設定値「0.5」に切り替え、
図6(c)の時刻t
9に示すように、設定値「0.5」に切り替えたゲイン目標値G
*に近づくようにゲインGを低減させる。これにより、アシスト力が通常時アシスト力の50%まで低減するようにモータ9が制御される。
【0041】
続いて、
図6(a)の時刻t
10に示すように、バッテリ12の電圧が第1高電圧領域から通常電圧の範囲内に復帰したとする。すると、ECU13が、
図6(b)の時刻t
10に示すように、ゲイン目標値G
*を設定値「0.5」から通常値「1.0」に切り替え、
図6(c)の時刻t
10に示すように、通常値「1.0」に切り替えたゲイン目標値G
*に近づくようにゲインGを増大させる。その際、復帰時に設定されていたゲインG、つまり、メモリ26に記憶されていたゲインG(復帰時設定ゲインGr)が所定閾値Gth「0.7」よりも小さかったとする(例えば、Gr=0.5)。すると、ゲインGの変動速度dG/dtとして、比較的遅い第2復帰速度dG
2/dtが採用される。これにより、
図6(c)の時刻t
10〜時刻t
11に示すように、ゲインGがゲイン目標値G
*「1.0」まで徐々に増大し、アシスト力が通常時アシスト力まで徐々に増大するようにモータ9が制御される。
【0042】
一方、
図6(c)の時刻t
12〜t
16のうちの時刻t
15に示すように、復帰時設定ゲインGrが所定閾値Gth「0.7」よりも大きかったとする(例えば、Gr=0.8)。すると、ECU13によって、ゲインGの変動速度dG/dtとして、比較的速い第1復帰速度dG
1/dtが採用される。これにより、ゲインGがゲイン目標値G
*「1.0」まで直ちに増大し、アシスト力が通常時アシスト力まで直ちに増大するようにモータ9が制御される。
すなわち、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング制御装置1によれば、バッテリ12の電圧が第1低電圧領域から通常電圧の範囲内へ復帰するときや、電圧が第1高電圧領域から通常電圧の範囲内へ復帰するときのゲインGが所定閾値Gthよりも大きいときに、ゲインGを即復帰させ、アシスト力を直ちに増加させる。一方、上記ゲインGが所定閾値Gth以下である場合に、ゲインGを除変させアシスト力を徐々に増加させる。
【0043】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング制御装置1は、バッテリ12から電力を供給され、ステアリングホイール2による操舵を補助するためのアシスト力を出力するモータ9と、バッテリ12の電圧を検出するバッテリ用電圧センサ19と、バッテリ用電圧センサ19で検出した電圧に基づきモータ9が出力するアシスト力の制御に用いられるゲインGの目標値であるゲイン目標値G
*を設定する目標値設定部32と、目標値設定部32で設定したゲイン目標値G
*に基づきゲインGを設定するゲイン設定部33と、ステアリングホイール2による操舵トルクTを検出するトルクセンサ5と、ゲイン設定部33で設定したゲインG及びトルクセンサ5で検出した操舵トルクTに基づきモータ9が出力するアシスト力を制御する制御部29とを備えるようにした。
【0044】
そして、目標値設定部32は、バッテリ用電圧センサ19で検出した電圧が予め定めた通常電圧の範囲内にある場合には、ゲイン目標値G
*を予め定めた通常値「1.0」に設定し、バッテリ用電圧センサ19で検出した電圧が通常電圧の範囲外にある場合には、ゲイン目標値G
*を通常値「1.0」未満の値に設定するようにした。また、ゲイン設定部33は、バッテリ用電圧センサ19で検出した電圧が通常電圧の範囲外から範囲内に復帰する時にゲイン設定部33で設定されていたゲインGである復帰時設定ゲインGrが予め定めた所定閾値Gth「0.7」よりも大きいか否かを判定し、所定閾値Gth「0.7」よりも大きいと判定した場合にはゲイン目標値G
*まで直ちに増加するようにゲインGの設定を行うようにした。一方所定閾値Gth「0.7」以下であると判定した場合にはゲイン目標値G
*まで徐々に増加するようにゲインGの設定を行うようにした。
【0045】
それゆえ、例えば、
図6の時刻t
4、t
10、t
15に示すように、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲内へ復帰したときのゲインGが大きい場合には、ゲインGがゲイン目標値G
*まで直ちに増加されるため、ステアリングホイール2を重く感じる時間を短縮することができる。また、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲内へ復帰したときのゲインGが小さい場合には、ゲインGがゲイン目標値G
*まで徐々に増加されるため、ステアリングホイール2が急に軽くなることを防止できる。そのため操舵感覚を向上可能な電動パワーステアリング制御装置1を提供することができる。
【0046】
また、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング制御装置1は、バッテリ12の電圧を基にゲイン目標値G*を設定し、ゲイン目標値G*を基にゲインGを設定し、ゲインGを基にアシスト力を制御する構成としたため、運転者の操舵フィーリングの悪化を抑制することができる。特に、操舵中にバッテリ電圧変動があった場合等に効果的である。
ちなみに、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲外にあるときに、ゲイン目標値G
*を「1.0」未満の値に設定しない場合には、バッテリ12を劣化させる可能性や他の機器の故障を誘発する可能性、モータ駆動FET25が熱損傷する可能性がある。またゲインGが所定閾値Gth以下であるときにも、ゲイン目標値G
*まで直ちに増加するようにゲインGを設定する場合には、トルクが抜けたような操舵違和感を感じさせる可能性がある。
【0047】
これに対し、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング制御装置1は、バッテリ12の電圧が通常電圧の範囲外にあるときに、ゲイン目標値G
*を「1.0」未満の値に設定するため、バッテリ12の劣化を防止でき、他の機器の故障の誘発を防止でき、モータ駆動FET25の熱損傷を防止できる。また、ゲインGが所定閾値Gth「0.7」以下であるときには、ゲイン目標値G
*まで徐々に増加するようにゲインGを設定するため、運転者に対してトルクが抜けたような操舵違和感を感じさせることを防止できる。
【0048】
(変形例)
(1)本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング制御装置1では、ゲイン設定部33が、ゲイン目標値G
*までゲインGを増加させるときのゲインGの増加速度(第1復帰速度dG
1/dt及び第2復帰速度dG
2/dtの少なくとも一方の速度を指す。以下、「復帰速度」とも呼ぶ)を一定値とする例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、復帰速度を、バッテリ12の電圧の通常電圧の範囲外から範囲内への復帰時にゲイン設定部33で設定されていたゲインG(復帰時設定ゲインGr)の値に応じて設定する構成としてもよい。具体的には、復帰速度を、復帰時設定ゲインGrが大きいほど大きな値に設定し、復帰時設定ゲインGrが小さいほど小さな値に設定する構成としてもよい。
【0049】
(2)また、例えば、ゲイン設定部33が、復帰速度を、復帰時設定ゲインGr、操舵トルクT、操舵角δ、操舵角速度dδ/dt及び車速Vの少なくとも1つ、或いはこれらのうちの2つ以上の組み合わせに基づき設定する構成としてもよい。具体的には、例えば、
図7に示すように、MCU22が、操舵角速度算出部34をソフトウェアで実現し、ゲイン設定部33が、復帰速度設定部35と復帰速度補正部36とを備える構成としてもよい。
操舵角速度算出部34は、操舵角検出回路16からの操舵角δに基づき、操舵角速度dδ/dtを算出する。算出された操舵角速度dδ/dtは、ゲイン設定部33に出力される。
【0050】
復帰速度設定部35は、復帰速度を、復帰時設定ゲインGrが大きいほど大きな値に設定し、復帰時設定ゲインGrが小さいほど小さな値に設定する。また、復帰速度補正部36は、復帰速度設定部35で設定した復帰速度を、操舵トルクT、操舵角δ、操舵角速度dδ/dt及び車速Vの少なくとも1つ、或いはこれらのうちの2つ以上の組み合わせに基づき補正する。例えば、操舵トルクT、操舵角δ、操舵角速度dδ/dt及び車速Vの少なくとも何れかが所定閾値よりも小さく、操舵フィーリングに違和感を感じ難い場合には、復帰速度設定部35で設定された復帰速度を大きくする。一方、操舵トルクT、操舵角δ、操舵角速度dδ/dt及び車速Vの少なくとも何れかが所定閾値以上であり、運転者が操舵フィーリングに違和感を感じ易い場合には、復帰速度設定部35で設定された復帰速度を小さくする。これにより、ゲインGに対するレートリミッタとして適切に動作させ、操舵フィーリングの悪化を最小にしつつ、ゲインGを早く通常の状態に復帰させることができる。
【0051】
(3)また、操舵トルクTや操舵角δ、操舵角速度dδ/dt、車速V等を基に復帰速度を設定する他の方法としては、補正を用いない方法であってもよい。具体的には、ステップS106の変動速度dG/dtの設定時に、ゲイン設定部33が、第1復帰速度dG
1/dtの設定処理を実行する。第1復帰速度dG
1/dtの設定処理を実行すると、
図8に示すようにまずステップS201で、ゲイン設定部33が、第1復帰速度dG
1/dtの復帰速度を操舵トルクT等を考慮して設定する復帰時特性制御を行うか否かを判定する。そして、復帰時特性制御を行わないと判定した場合には(No)、ステップS202に移行する。一方、復帰時特性制御を行うと判定した場合には(Yes)、ステップS203に移行する。
【0052】
ステップS202では、ゲイン設定部33が、
図9、
図10に示すように、ゲインGが1次直線G=a・t+bで増加するように第1復帰速度dG
1/dtを設定する。ここでa、bは固定値である。
図10では、T
1がゲインGの復帰開始時(電圧が通常電圧の範囲内に戻ったとき)、T
2が復帰完了時、a
1が復帰開始時のゲインG、a
2が復帰完了時のゲインG(=1.0)である。上記G=a・t+bに当てはめると、a=(a
2−a
1)/( T
2−T
1)、b=a
1となる。
【0053】
一方、ステップS203では、ゲイン設定部33が、操舵トルクT、操舵角δ、操舵角速度dδ/dt及び車速Vの少なくとも何れかが所定閾値よりも大きいかを判定する。例えば、(1)操舵トルクTの絶対値が第1閾値よりも大きい、(2)操舵角δの絶対値が第2閾値よりも大きい、(3)操舵角速度dδ/dtの絶対値が第3閾値よりも大きい、(4)車速Vが第4閾値よりも大きい、という4つの条件の何れか1つ以上が満たされているかを判定し、満たされていると判定した場合に、操舵トルクT、操舵角δ、操舵角速度dδ/dt及び車速Vの少なくとも何れかが所定閾値よりも大きいと判定する。そして、所定閾値よりも大きいと判定した場合には、ゲインGが下方向に凸の2次曲線G=a・t
2+bで緩いカーブで増加するように第1復帰速度dG
1/dtを設定した後、この設定処理を終了する。
【0054】
一方、所定閾値よりも小さいと判定した場合には、ゲインGが上方向に凸の曲線G=a・t
1/2+bで早めに立ち上がるカーブで増加するように第1復帰速度dG
1/dtを設定した後、この設定処理を終了する。なお、上記した2次曲線の関数の「t
2」や「t
1/2」が含む「2」を変数として、「t
3」や「t
1/3」等のように、より高次の関数を用いてもよい。
また、ステップS107の変動速度dG/dtの設定時には、ゲイン設定部33が、第2復帰速度dG
2/dtの設定処理を実行し、上述した第1復帰速度dG
1/dtの設定方法と同様の方法で、第2復帰速度dG
2/dtを設定する。第2復帰速度dG
2/dtとしては、ステップS202やS203で設定される第1復帰速度dG
1/dtよりも遅い速度が設定される。
【0055】
(4)また、本実施形態では、本発明に係る電動パワーステアリング制御装置1を、モータ9による操舵アシスト力をステアリング軸3に加えるコラム式EPSに適用する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、
図11に示すようにモータ9による操舵アシスト力をラック軸に直接に加える下流方式EPSに適用する構成としてもよい。
操舵感覚を向上可能な電動パワーステアリング制御装置を提供する。バッテリ(12)の通常電圧の範囲内にある場合には、ゲイン目標値を通常値に設定し、バッテリ(12)の電圧が通常電圧の範囲外にある場合には、ゲイン目標値を通常値未満の値に設定する。そして、バッテリ(12)の電圧が通常電圧の範囲外から範囲内に復帰する時に設定されていたゲインが所定閾値よりも大きいか否かを判定し、所定閾値よりも大きいと判定した場合には、ゲイン目標値まで直ちに増加するようにゲインの設定を行う。一方、所定閾値以下であると判定した場合には、ゲイン目標値まで徐々に増加するようにゲインの設定を行う。