(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定温度270℃での前記共重合体のせん断速度に対するせん断粘度のフローカーブ(流動曲線)を、Cross−WLFモデルを用いてフィッティングすることにより求められる、ゼロせん断粘度(η0(Pa・s))と、
測定温度270℃、せん断速度100(1/s)での前記共重合体のせん断粘度(η100(Pa・s))との比(η0/η100)が、4.0以上である請求項1に記載の共重合体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本開示の共重合体は、実質的に、エチレン(Et)単位、テトラフルオロエチレン(TFE)単位およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位のみからなる。
【0011】
本開示の共重合体において、Et単位とTFE単位とのモル比(Et単位/TFE単位)は、52.0/48.0〜56.0/44.0の範囲内である。モル比(Et単位/TFE単位)が高すぎると、優れた成形性を損なうことなく、イエローインデックスが低い成形品を得ることができず、モル比(Et単位/TFE単位)が低すぎると、優れた成形性を損なうことなく、ヘイズ値が低く、引張弾性率が高い成形品を得ることができない。
【0012】
モル比(Et単位/TFE単位)としては、所望の寸法および形状を有する成形品をより一層容易に得ることができるとともに、ヘイズ値およびイエローインデックスがより一層低く、引張弾性率がより一層高い成形品を得ることができることから、好ましくは52.4/47.6以上であり、より好ましくは53.0/47.0以上であり、さらに好ましくは54.0/46.0以上であり、好ましくは55.8/44.2以下であり、さらに好ましくは55.6/44.4以下である。
【0013】
本開示の共重合体のHFP単位の含有量は、共重合体を構成する全単量体単位に対して、19.0〜21.0モル%である。HFP単位の含有量が多すぎると、優れた成形性を損なうことなく、引張弾性率が高い成形品を得ることができず、HFP単位の含有量が少なすぎると、優れた成形性を損なうことなく、ヘイズ値が低い成形品を得ることができない。
【0014】
本開示の共重合体のHFP単位の含有量としては、所望の寸法および形状を有する成形品をより一層容易に得ることができるとともに、ヘイズ値およびイエローインデックスがより一層低く、引張弾性率がより一層高い成形品を得ることができることから、好ましくは19.2モル%以上であり、より好ましくは19.4モル%以上であり、さらに好ましくは19.6モル%以上であり、好ましくは20.8モル%以下であり、より好ましくは20.6モル%以下である。
【0015】
本開示の共重合体は、実質的にEt単位、TFE単位およびHFP単位のみからなり、これら3種類の単量体単位の含有量が適切に調整されたものであることから、本開示の共重合体を成形材料として用いることにより、所望の寸法および形状を有する成形品を容易に得ることができるとともに、ヘイズ値およびイエローインデックスが低く、引張弾性率が高い成形品を得ることができる。特に、本開示の共重合体は、押出成形用共重合体、ブロー成形用共重合体などとして好適である。
【0016】
従来の共重合体を押出成形により成形した場合、押出機から押し出された直後の、冷却硬化する前の溶融状態の押出物(成形品)が、非常に変形しやすい。したがって、溶融状態の成形品が冷却硬化される過程において、成形品が伸びて厚みが薄くなったり、曲がったりして、所望の寸法および形状を有する成形品を得ることが容易ではない。たとえば、従来の共重合体を押出機から押し出し、押出物をカッターにより切断してペレットを作製する場合、押出物が変形しやすいと、切断の際に大きく変形するなどして、同一の寸法および形状を有するペレットが得られないことがある。さらに、冷却硬化した後の成形品についても、濁りまたは着色が観察されたり、柔らかすぎて変形しやすかったりする問題がある。
【0017】
一方、たとえば、本開示の共重合体を押出成形した場合、押出機から押し出された直後の押出物についても、寸法安定性および形状安定性に優れていることから、所望の寸法および形状を有する成形品を容易に得ることができる。さらに、得られる成形品は、ヘイズ値およびイエローインデックスが低く、透明性に優れているだけでなく、引張弾性率が高く、変形しにくい。また、本開示の共重合体からは、引張伸びの大きい成形品が得られる。たとえば、本開示の共重合体を押出機から押し出し、押出物をカッターにより切断してペレットを作製する場合、押出物の切断および切断後の押出物の冷却のいずれの段階においても押出物が変形しにくいことから、所望の寸法および形状を有しており、なおかつ、ヘイズ値およびイエローインデックスが低く、透明性に優れるペレットを得ることができる。
【0018】
本開示の共重合体は、実質的に、Et単位、TFE単位およびHFP単位のみからなる。したがって、本開示の共重合体は、微量(たとえば、0.1モル%未満、0.05モル%未満)の他の単量体単位を含有してもよいし、他の単量体単位を含有しなくてもよいが、他の単量体単位を含有する場合には、その含有量を本開示の共重合体の優れた効果を損なわない範囲内とする必要がある。本開示の共重合体は、Et単位、TFE単位およびHFP単位のみからなることも好ましい。
【0019】
本開示の共重合体における各単量体単位の含有割合は、共重合体を構成する単量体単位の種類に応じて、たとえば、NMR、元素分析を適宜組み合わせることで算出することができる。
【0020】
本開示の共重合体は、ゼロせん断粘度(η
0(Pa・s))とせん断粘度(η
100(Pa・s))との比(η
0/η
100)が、4.0以上であることが好ましい。比(η
0/η
100)が4.0以上であることによって、共重合体に高せん断力を加えた際に、共重合体の溶融粘度が容易に低下し、容易に成形することができるとともに、せん断熱によるヘイズ値およびイエローインデックスの上昇を抑制できる。一方で、せん断力を加えない状態では、共重合体が適度な溶融粘度を保つことから、成形直後の溶融状態の成形品が冷却硬化される過程において、成形品が伸びて厚みが薄くなったり、曲がったりすることを防止することができ、所望の寸法および形状を有する成形品を容易に得ることができる。
【0021】
たとえば、共重合体をブロー成形する場合においても、共重合体の比(η
0/η
100)が4.0以上であることによって、押出機中で共重合体を溶融させる際のせん断熱の発生を十分に抑制でき、せん断熱による悪影響を抑制して、ヘイズ値およびイエローインデックスが低いブロー成形品を得ることができる。さらに、押出物(パリソン)が変形しにくいことから、ドローダウンを十分に抑制でき、所望の寸法および形状を有するブロー成形品を容易に得ることができる。
【0022】
本開示の共重合体の比(η
0/η
100)としては、所望の寸法および形状を有する成形品をより一層容易に得ることができることから、より好ましくは4.3以上であり、さらに好ましくは4.6以上であり、特に好ましくは4.9以上であり、最も好ましくは5.2以上である。また、共重合体の比(η
0/η
100)としては、高せん断力を加えた場合に、溶融粘度が必要以上に低下して、却って成形が困難になる場合があることから、好ましくは7.5以下であり、より好ましくは6.5以下であり、さらに好ましくは6.0以下である。
【0023】
せん断粘度(η
100(Pa・s))は、測定温度270℃、せん断速度100(1/s)で測定する共重合体のせん断粘度である。せん断粘度(η
100(Pa・s))は、たとえば、回転式レオメータを用いて、周波数を100(rad/s)として、共重合体のせん断粘度を測定し、周波数(rad/s)をせん断速度(γ)に変換することにより、求めることができる。変換においては、Cox−Merz則より周波数(rad/s)とせん断速度(γ)とを同値とする。
【0024】
ゼロせん断粘度(η
0(Pa・s))は、測定温度270℃で、共重合体の各周波数(rad/s)に対するせん断粘度(η)を測定し、Cox−Merz則より各周波数(rad/s)とせん断速度(γ)とを同値として、周波数(rad/s)をせん断速度(γ)に変換し、共重合体のせん断速度(γ)に対するせん断粘度(η)のフローカーブ(流動曲線)を、Cross−WLFモデルを用いてフィッティングすることにより求めることができる。
【0025】
本開示の共重合体のせん断粘度(η
100(Pa・s))としては、好ましくは100〜500Pa・sであり、より好ましくは100〜450Pa・sであり、さらに好ましくは100〜400Pa・sであり、特に好ましくは100〜350Pa・sである。
【0026】
共重合体のせん断粘度(η
100)が高くなると、溶融状態の成形品の変形を抑制できたり、溶融状態の成形品を冷却する際の共重合体の結晶化が適度な速度で進行し、冷却硬化した後の成形品のヘイズ値およびイエローインデックスが低くできたりする傾向があるが、溶融押出が困難になる傾向がある。
【0027】
一方、共重合体のせん断粘度(η
100)が低くなると、溶融押出が容易となる傾向があるが、溶融成形直後であって、冷却硬化する前の成形品が変形しやすかったり、溶融状態の成形品を冷却する際に共重合体が急速に結晶化し、冷却硬化した後の成形品のヘイズ値およびイエローインデックスが高くなったりする傾向がある。
【0028】
本開示の共重合体は、実質的にEt単位、TFE単位およびHFP単位のみからなり、これら3種類の単量体単位の含有量が適切に調整されたものであることから、せん断粘度(η
100)が低く、容易に溶融押出できる場合であっても、冷却硬化する前の成形品が変形しにくく、所望の寸法および形状を有する成形品を容易に得ることができるとともに、ヘイズ値およびイエローインデックスが低く、引張弾性率が高い成形品を得ることができる。
【0029】
共重合体の比(η
0/η
100)およびせん断粘度(η
100)は、重合に供する各単量体の量を適切に調整しながら、重合開始剤の量、重合圧力、重合時間などを適切に調整することによって、調整することができる。
【0030】
本開示の共重合体のメルトフローレート(MFR)としては、所望の寸法および形状を有する成形品をより一層容易に得ることができるとともに、ヘイズ値およびイエローインデックスがより一層低く、引張弾性率がより一層高い成形品を得ることができることから、好ましくは1〜80g/10分であり、より好ましくは10g/10分以上であり、さらに好ましくは15g/10分以上であり、より好ましくは70g/10分以下であり、さらに好ましくは65g/10分以下である。
【0031】
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠し、メルトインデクサーを用いて測定することができる。具体的には、測定温度265℃、荷重5kgで、内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出する共重合体の質量(g/10分)として求めることができる。
【0032】
本開示の共重合体の融点としては、所望の寸法および形状を有する成形品をより一層容易に得ることができるとともに、ヘイズ値およびイエローインデックスがより一層低く、引張弾性率がより一層高い成形品を得ることができることから、好ましくは135℃以下であり、より好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは125℃以下であり、特に好ましくは120℃以下であり、最も好ましくは115℃以下であり、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは105℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上である。本開示の共重合体の融点が上記範囲内であれば、たとえば、本開示の共重合体と汎用樹脂との共押出成形が可能となったり、本開示の共重合体の汎用3Dプリンタでの成形が可能となったりする。
【0033】
融点は、示差走査熱量計を用い、ASTM D4591に準拠して測定することができる。具体的には、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分にて共重合体の熱測定を行い、得られる吸熱曲線のピークにあたる温度を融点とすることができる。
【0034】
本開示の共重合体は、低い融点を有すると同時に、低いMFRを有することも好ましい。融点およびMFRがいずれも低い共重合体は、所望の寸法および形状を有する成形品をより一層容易に得ることができるとともに、ヘイズ値およびイエローインデックスがより一層低く、引張弾性率がより一層高い成形品を得ることができる点で優れている。本開示の共重合体としては、100〜135℃以下の融点および1〜80g/10分以下のMFRを有する共重合体であってよく、100〜130℃以下の融点および10〜70g/10分以下のMFRを有する共重合体であってよく、100〜125℃以下の融点および10〜65g/10分以下のMFRを有する共重合体であってよい。
【0035】
本開示の共重合体の引張弾性率としては、適度な形状保持性および柔軟性を有する成形品が得られることから、好ましくは250MPa以上であり、より好ましくは300MPa以上であり、さらに好ましくは350MPa以上であり、特に好ましくは400MPa以上であり、好ましくは600MPa以下であり、より好ましくは550MPa以下であり、さらに好ましくは500MPa以下である。
【0036】
引張弾性率は、ASTM D1708に準じて、25℃において50mm/minの引張速度で共重合体の引張試験を行うことにより、測定することができる。
【0037】
本開示の共重合体の引張伸びとしては、変形した場合でも破断しにくい成形品が得られることから、好ましくは350%以上であり、より好ましくは440%以上であり、さらに好ましくは480%以上であり、好ましくは700%以下であり、より好ましくは600%以下であり、さらに好ましく500%以下である。
【0038】
引張伸びは、ASTM D1708に準じて、25℃において50mm/minの引張速度で共重合体の引張試験を行うことにより、測定することができる。
【0039】
本開示の共重合体のヘイズ値は、好ましくは14%以下であり、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下であり、好ましくは2%以上であり、より好ましくは4%以上である。共重合体のヘイズ値は、2.0mmの厚みを有する共重合体のシートについて、ヘイズメーターを用いて、ASTM D1003に従い、測定することができる。
【0040】
本開示の共重合体のイエローインデックス(YI)としては、好ましくは−10以下であり、より好ましくは−12以下であり、さらに好ましくは−15以下であり、好ましくは−40以上である。共重合体のイエローインデックスは、2.0mmの厚みを有する共重合体のシートについて、測色色差計を用いて、ASTM D1925に従い、測定することができる。
【0041】
本開示の共重合体は、重合開始剤の存在下に、テトラフルオロエチレン、エチレン、およびヘキサフルオロプロピレンを、各単量体単位が上述した含有量の範囲内となるように、共重合することにより製造することができる。
【0042】
共重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等であってよいが、工業的に実施が容易である点で、乳化重合または懸濁重合が好ましく、懸濁重合がより好ましい。
【0043】
重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できるが、油溶性ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0044】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえば、
ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類;
t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類;
ジt−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類;
などが代表的なものとしてあげられる。
【0045】
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、[(RfCOO)−]
2(Rfは、パーフルオロアルキル基、ω−ハイドロパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基)で表されるジアシルパーオキサイドが挙げられる。
【0046】
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、たとえば、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロプロピオニル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどが挙げられる。
【0047】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイドなどの有機過酸化物、t−ブチルパーマレート、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
【0048】
上記の共重合においては、界面活性剤、連鎖移動剤、および、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0049】
界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、たとえば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。なかでも、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合性酸素を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)、炭素数4〜20の直鎖または分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。界面活性剤の添加量(対重合水)は、好ましくは50〜5000ppmである。
【0050】
連鎖移動剤としては、たとえば、エタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。連鎖移動剤の添加量は、用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01〜20質量%の範囲で使用される。
【0051】
溶媒としては、水や、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
【0052】
懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CH
3CClF
2、CH
3CCl
2F、CF
3CF
2CCl
2H、CF
2ClCF
2CFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CF
2ClCFClCF
2CF
3、CF
3CFClCFClCF
3等のクロロフルオロアルカン類;CF
3CFHCFHCF
2CF
2CF
3、CF
2HCF
2CF
2CF
2CF
2H、CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2H等のハイドロフルオロアルカン類;CH
3OC
2F
5、CH
3OC
3F
7CF
3CF
2CH
2OCHF
2、CF
3CHFCF
2OCH
3、CHF
2CF
2OCH
2F、(CF
3)
2CHCF
2OCH
3、CF
3CF
2CH
2OCH
2CHF
2、CF
3CHFCF
2OCH
2CF
3等のハイドロフルオロエーテル類;パーフルオロシクロブタン、CF
3CF
2CF
2CF
3、CF
3CF
2CF
2CF
2CF
3、CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
3等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性および経済性の面から、水性媒体に対して10〜100質量%が好ましい。
【0053】
重合温度としては特に限定されず、0〜100℃であってよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量および蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0〜9.8MPaGであってよい。
【0054】
本開示の共重合体は、いかなる形態であってもよく、水性分散液、粉末、ペレット等であってよい。
【0055】
本開示の共重合体は、様々な成形品に成形することができ、得られる成形品は、ヘイズ値およびイエローインデックスが低く、引張弾性率が高いものである。また、本開示の共重合体は、所望の寸法および形状を有する成形品に容易に成形できる。
【0056】
成形品の形状としては特に限定されず、たとえば、ホース、パイプ、チューブ、シート、シール、ガスケット、パッキン、フィルム、タンク、ローラー、ボトル、容器等であってもよい。
【0057】
共重合体の成形方法は、特に限定されず、たとえば、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形、射出成形、ロト成形、ロトライニング成形、静電塗装等が挙げられる。押出成形を用いる場合は、パイプやチューブを容易に製造することができる。本開示には、上述の共重合体を押出成形、ブロー成形などで成形する成形品の製造方法も含まれる。
【0058】
特に、本開示の共重合体は、高せん断力を加えることによって、溶融粘度が容易に低下し、せん断力を加えない状態では、適度な溶融粘度が保たれることから、溶融成形によって好適に成形することができ、押出成形、ブロー成形のような金型を用いない溶融成形によって一層好適に成形することができる。
成形温度としては、好ましくは共重合体の融点以上であり、より好ましくは180℃以上であり、さらに好ましくは220℃以上であり、特に好ましくは240℃以上であり、最も好ましくは260℃以上であり、好ましくは340℃以下である。本開示の共重合体は、このように高温で溶融させた場合でも、所望の寸法および形状を有する成形品を、高い生産性で、容易に製造することができる。
【0059】
本開示の共重合体に、充填剤、可塑剤、加工助剤、離型剤、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤、脱フッ化水素剤などを混合した後、成形してもよい。充填剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、マイカ、シリカ、タルク、セライト、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム等が挙げられる。導電剤としてはカーボンブラック等があげられる。可塑剤としては、ジオクチルフタル酸、ペンタエリスリトール等が挙げられる。加工助剤としては、カルナバワックス、スルホン化合物、低分子量ポリエチレン、フッ素系助剤等が挙げられる。脱フッ化水素剤としては有機オニウム、アミジン類等が挙げられる。
【0060】
本開示の共重合体から得られる成形品は、ヘイズ値およびイエローインデックスが低く、引張弾性率が高いものであるため、透明チューブとして好適に使用できる。透明チューブとしては、特に限定されないが、各種液体を流通させるための透明チューブであってよく、一例を挙げると、外観の審美性に優れていることが求められる液体製品、たとえば、液体フレグランスを含むフレグランス製品において、液体フレグランスを流通させるための透明チューブ等として好適に用いることができる。
【0061】
また、本開示の共重合体は、以下の成形品の成形材料としても好適に利用できる。
すなわち、このような成形品としては、たとえば、
食品包装用フィルム、食品製造工程で使用する流体移送ラインのライニング材、パッキン、シール材、シート等の食品製造装置用流体移送部材;
薬品用の薬栓、包装フィルム、薬品製造工程で使用される流体移送ラインのライニング材、パッキン、シール材、シート等の薬液移送部材;
化学プラントや半導体工場の薬液タンクや配管の内面ライニング部材;
自動車の燃料系統並びに周辺装置に用いられるO(角)リング・チューブ・パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材等、自動車のAT装置に用いられるホース、シール材等の燃料移送部材;
自動車のエンジンならびに周辺装置に用いられるキャブレターのフランジガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、シール材、ホース等、自動車のブレーキホース、エアコンホース、ラジエーターホース、電線被覆材等のその他の自動車部材;
半導体製造装置のO(角)リング、チューブ、パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材、ロール、ガスケット、ダイヤフラム、継手等の半導体装置用薬液移送部材;
塗装設備用の塗装ロール、ホース、チューブ、インク用容器等の塗装・インク用部材;
飲食物用のチューブまたは飲食物用ホース等のチューブ、ホース、ベルト、パッキン、継手等の飲食物移送部材、食品包装材、ガラス調理機器;
廃液輸送用のチューブ、ホース等の廃液輸送用部材;
高温液体輸送用のチューブ、ホース等の高温液体輸送用部材;
スチーム配管用のチューブ、ホース等のスチーム配管用部材;
船舶のデッキ等の配管に巻き付けるテープ等の配管用防食テープ;
電線被覆材、光ファイバー被覆材、太陽電池の光起電素子の光入射側表面に設ける透明な表面被覆材および裏面剤等の各種被覆材;
ダイヤフラムポンプのダイヤフラムや各種パッキン類等の摺動部材;
農業用フィルム、各種屋根材・側壁等の耐侯性カバー;
建築分野で使用される内装材、不燃性防火安全ガラス等のガラス類の被覆材;
家電分野等で使用されるラミネート鋼板等のライニング材;
海底油田またはガス田において海底から海面上に物資を輸送するライザー管;
原油や天然ガスの流体移送金属配管の最内面および最外面のコーティング材料、ライニング材料;
等が挙げられる。
【0062】
上記自動車の燃料系統に用いられる燃料移送部材としては、さらに、燃料ホース、フィラーホース、エバポホース等が挙げられる。上記燃料移送部材は、耐サワーガソリン用、耐アルコール燃料用、耐メチルターシャルブチルエーテル・耐アミン等ガソリン添加剤入燃料用の燃料移送部材として使用することもできる。
【0063】
上記薬品用の薬栓・包装フィルムは、酸等に対し優れた耐薬品性を有する。また、上記薬液移送部材として、化学プラント配管に巻き付ける防食テープも挙げることができる。
【0064】
上記成形品としては、また、自動車のラジエータタンク、薬液タンク、ベロース、スペーサー、ローラー、ガソリンタンク、廃液輸送用容器、高温液体輸送用容器、漁業・養魚タンク等が挙げられる。
【0065】
上記成形品としては、さらに、自動車のバンパー、ドアトリム、計器板、食品加工装置、調理機器、撥水撥油性ガラス、照明関連機器、OA機器の表示盤・ハウジング、電照式看板、ディスプレイ、液晶ディスプレイ、携帯電話、プリント基盤、電気電子部品、雑貨、ごみ箱、浴槽、ユニットバス、換気扇、照明枠等に用いられる部材も挙げられる。
【0066】
また、本開示の共重合体は、該共重合体からなる粉体塗料とすることもできる。このような粉体塗料は、平均粒子径が10〜500μmであってよい。平均粒子径はレーザー回析式粒度分布測定機を用いて測定できる。このような粉体塗料を静電塗装により基材の上に吹きつけた後、焼成することにより、発泡痕の無い塗膜を得ることができる。
【0067】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0068】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0070】
<共重合体の単量体組成>
共重合体の粉末、および、核磁気共鳴装置AC300(Bruker−Biospin社製)を用い、測定温度を、(ポリマーの融点+20)℃として
19F−NMR測定を行い、各ピークの積分値から共重合体の単量体組成を求めた。単量体の種類によっては元素分析を適宜組み合わせて、共重合体の単量体組成を求めてもよい。
【0071】
<メルトフローレート(MFR)>
共重合体のペレット、および、メルトインデクサー(安田精機製作所社製)を用いて、ASTM D1238に従い、265℃、5kg荷重下で、内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出する共重合体の質量(g/10分)をMFRとして求めた。
【0072】
<融点>
共重合体の粉末、および、示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用いて、ASTM D4591に従い、昇温速度10℃/分で熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから、共重合体の融点を求めた。
【0073】
<せん断粘度(η)>
共重合体の粉末またはペレットを280℃で圧縮成形し、厚み1.0mmのシート状の成形品を得た。得られたシート状の成形品および回転式レオメータ(MCR302,Anton Paar社製)を用いて、以下の測定条件で、周波数を0.1(rad/s)から100(rad/s)までの範囲で変化させて、16点の共重合体のせん断粘度(η)を測定した。Cox−Merz則より各周波数(rad/s)とせん断速度(γ)とを同値とした。測定値のうち、せん断速度が100(1/s)でのせん断粘度(η
100)を表1に示す。
測定温度:270℃
測定歪量:0.1%
測定治具:直径25mmの平行円盤
測定ギャップ間距離:0.5mm
【0074】
また、各周波数(rad/s)をCox−Merz則により変換したせん断速度(γ)に対して測定されたせん断粘度(η)のフローカーブ(流動曲線)を、Cross−WLFモデルを用いてフィッティングすることにより、ゼロせん断粘度(η
0(Pa・s))を算出した。ゼロせん断粘度(η
0(Pa・s))は、フィッティングパラメータの1つとして求められる。
【0075】
<形状保持試験>
共重合体の粉体またはペレットを280℃で圧縮成形し、厚み2.0mmのシート状の成形品を得た。得られた成形品を切り刻み、得られた細片2gを、メルトインデクサー(安田精機製作所社製)のシリンダに投入し、270℃で5分間加熱した。270℃に加熱した共重合体を、5kgの荷重をかけて、ノズルから僅かな量の共重合体を流出させ、流出した共重合体をカットした。その後、無荷重の状態で、ノズルから共重合体を流出させ、10分間あたりに流出する共重合体の質量(mg/10分)を求めた。
【0076】
形状保持試験において、ノズルからの流出量が少ない共重合体は、共重合体を押出成形機中で溶融してダイから押し出すことにより押出物とした場合に、未硬化状態の押出物(ダイから押し出された後、冷却されて硬化するまでの押出物)が変形しにくく、所望の寸法および形状に成形しやすい点で優れている。
【0077】
<ヘイズ値>
共重合体の粉末またはペレットを280℃で圧縮成形し、厚み2.0mmのシート状の成形品を得た。ヘイズメーター(東洋精機社製 ヘイズガードII)を用いて、ASTM D1003に従い、得られたシート状の成形品のヘイズ値を測定した。
【0078】
<イエローインデックス(YI)>
共重合体の粉末またはペレットを280℃で圧縮成形し、厚み2.0mmのシート状の成形品を得た。測色色差計ZE6000(日本電色工業社製)を用いて、ASTM D1925に従い、得られたシート状の成形品のイエローインデックスを測定した。
【0079】
<引張弾性率および引張伸び>
共重合体の粉末またはペレットを280℃で圧縮成形し、厚み1.5mmのシート状の成形品を得た。ASTM D1708 マイクロダンベルを用いて、試験片を作製した。オートグラフ(島津製作所社製 AGS−J 5kN)を用いて、ASTM D1708に従い、25℃において50mm/minの引張速度で引張試験を行い、得られたダンベル状試験片の引張弾性率および引張伸びを測定した。
【0080】
実施例1
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、900gのHFPを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、115gのTFE、2.5gのEtを圧入し、その後に、12.1gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=36.2/42.4/21.4(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.2MPaに保って、13時間40分攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、230gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
実施例2
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、900gのHFPを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、115gのTFE、2.5gのEtを圧入し、その後に、12.1gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=36.2/42.4/21.4(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.2MPaに保って、12時間攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、191gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
実施例3
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、900gのHFPを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、115gのTFE、2.5gのEtを圧入し、その後に、12.1gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=36.2/42.4/21.4(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.2MPaに保って、15時間攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、270gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
実施例4
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、900gのHFPを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、115gのTFE、2.5gのEtを圧入し、その後に、12.1gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=34.6/43.3/22.1(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.2MPaに保って、10時間30分攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、165gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
実施例5
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、900gのHFPを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、117gのTFE、1.9gのEtを圧入し、その後に、12.1gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=37.6/41.9/20.5(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.2MPaに保って、12時間30分攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、220gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
実施例6
撹拌機付き175Lオートクレーブに51.6Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、40.2kgのHFPを仕込み、攪拌速度220rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、5.7kgのTFE、183gのEtを圧入し、その後に、47gのシクロヘキサン、773gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=36.2/42.4/21.4(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.28MPaに保って、30時間30分攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、32.2kgの共重合体の粉末を作製した。また、単軸押出し機を用いて共重合体の粉末を押出して、共重合体のペレットを作製した。共重合体のペレットを用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
比較例1
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、900gのHFPを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、127gのTFE、2.0gのEtを圧入し、その後に、12.1gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=39.6/39.5/20.9(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.22MPaに保って、14時間45分攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、265gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
比較例2
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、900gのHFPを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、111gのTFE、1.1gのEtを圧入し、その後に、12.1gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=44.0/36.0/20.0(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.2MPaに保って、17時間40分攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、294gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
比較例3
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、840gのHFPを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、110gのTFE、5.5gのEtを圧入し、その後に、12.1gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=34.1/47.4/18.5(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.28MPaに保って、10時間30分攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、141gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
比較例4
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、320gのパーフルオロシクロブタン、610gのHFP、0.303gのシクロヘキサンを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、128gのTFE、4.7gのEtを圧入し、その後に、24.2gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=40.9/44.6/14.5(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.15MPaに保って、5時間20分攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、165gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
比較例5
ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの投入量を、12.1gに変更した以外は、比較例4と同様にして、共重合体の粉末を作製した。6時間攪拌を継続し、165gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
比較例6
撹拌機付き4Lオートクレーブに1.2Lの脱イオン水を投入し、オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、900gのHFPを仕込み、攪拌速度750rpmで攪拌しながら、系内を35℃に加温した。次いで、90gのTFE、3.8gのEtを圧入し、その後に、12.1gのジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFE/Et/HFP=31.8/43.4/24.8(モル比)の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.15MPaに保って、12時間30分攪拌を継続した。次いで、放圧して、系内圧力を大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥することによって、155gの共重合体の粉末を作製した。共重合体の粉末を用いて、共重合体の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1の結果が示すとおり、実質的にEt単位、TFE単位およびHFP単位のみからなり、これら3種類の単量体単位の含有量が適切に調整された各実施例の共重合体は、形状保持試験において、無荷重状態でのノズルからの共重合体の流出量が少ない。したがって、各実施例の共重合体を用いることによって、所望の寸法および形状を有する成形品を容易に得ることができる。また、各実施例の共重合体から得られる成形品は、ヘイズ値およびイエローインデックスが低く、引張弾性率が高く、引張伸びが大きい。
【0094】
たとえば、ヘイズ値について確認すると、実施例3の共重合体は、比較例5の共重合体とせん断粘度(η
100)が同等であるにも関わらず、実施例3の共重合体から得られる成形品は、比較例5の共重合体から得られる成形品よりもヘイズ値が小さい。比較例4と比較例5との対比から明らかであるように、共重合体のせん断粘度(η
100)が大きくなると成形品のヘイズ値が小さくなる傾向が観られることから、共重合体のせん断粘度(η
100)が同等であるにも関わらず、成形品のヘイズ値が小さいという優れた効果は、3種類の単量体単位の含有量を適切に調整したことによるものと推測される。
【0095】
また、形状保持試験の結果について確認すると、実施例3の共重合体は、比較例5の共重合体とせん断粘度(η
100)が同等であるにも関わらず、比較例5の共重合体よりも、無荷重状態でのノズルからの共重合体の流出量が少ない。同様に、実施例2の共重合体は、比較例4の共重合体とせん断粘度(η
100)が同等であるにも関わらず、比較例5の共重合体よりも、無荷重状態での共重合体のノズルからの流出量が少ない。たとえば、比較例4と比較例5との対比から明らかであるように、共重合体のせん断粘度(η
100)だけを低下させた場合には、無荷重状態でのノズルからの共重合体の流出量が非常に多くなってしまう。したがって、共重合体のせん断粘度(η
100)が同等であるにも関わらず、無荷重状態でのノズルからの共重合体の流出量が少ないという優れた効果は、3種類の単量体単位の含有量を適切に調整したことによるものと推測される。
【課題】所望の寸法および形状を有する成形品を容易に得ることができるとともに、ヘイズ値およびイエローインデックスが低く、引張弾性率が高い成形品を得ることができる共重合体を提供すること。
【解決手段】実質的に、エチレン単位、テトラフルオロエチレン単位およびヘキサフルオロプロピレン単位のみからなる共重合体であって、エチレン(Et)単位とテトラフルオロエチレン(TFE)単位とのモル比(Et単位/TFE単位)が、52.0/48.0〜56.0/44.0であり、ヘキサフルオロプロピレン単位の含有量が、前記共重合体を構成する全単量体単位に対して、19.0〜21.0モル%である共重合体を提供する。