(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、前記表面と前記第1仮想直線とが形成する角度が第1角度であり、
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の1つの前記線状部に直交する方向に沿う断面において、前記小開口の前記縁と前記大開口の前記縁とを結ぶ仮想直線が第2仮想直線であり、前記表面と前記第2仮想直線とが形成する角度が第2角度であり、
前記第2角度は、前記第1角度よりも大きく、
前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部との間の距離は、前記表面と前記小開口の前記縁を含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下であり、
前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下である
請求項1に記載の蒸着マスク。
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、前記表面と前記第1仮想直線とが形成する角度が第1角度であり、
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の1つの前記線状部に直交する方向に沿う断面において、前記小開口の前記縁と前記大開口の前記縁とを結ぶ仮想直線が第2仮想直線であり、前記表面と前記第2仮想直線とが形成する角度が第2角度であり、
前記複数のマスク孔を形成することは、
前記第2角度が、前記第1角度よりも大きく、
前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部との間の距離が、前記表面と前記小開口の前記縁を含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下であり、
前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下であるように、前記金属シートに前記複数のマスク孔を形成する
請求項6に記載の蒸着マスクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸着マスクのマスク孔は、蒸着マスクの表面に直交する平面に沿う断面において、逆錘台状を有している。マスク孔の小開口は、表示素子に求められる形状に応じた形状を有している。四角形状などの多角形状を有した表示素子を形成するために、マスク孔の小開口は、通常、蒸着マスクの表面と対向する平面視において、角部を含む形状を有する。
【0005】
一方で、蒸着源から蒸着マスクに飛行する蒸着材料において、蒸着材料が飛行する方向と、蒸着マスクの表面とが形成する角度が、蒸着材料の飛行角度である。蒸着マスクに向けて飛行する蒸着材料には、様々な飛行角度を有した蒸着材料が含まれる。大開口の中央部近傍からマスク孔に進入する蒸着材料のほとんどは、蒸着材料の飛行角度によらず、大開口から小開口まで到達する。
【0006】
これに対して、大開口の縁近傍からマスク孔に進入する蒸着材料の一部は、小開口まで到達することなく、マスク孔を区画する側面に堆積する。特に、大開口の縁のなかでも角部近傍からマスク孔に進入する蒸着材料の多くは、マスク孔を区画する側面によって小開口に到達することが妨げられる。そのため、蒸着材料が小開口を通過することを通じて形成された蒸着パターンでは、蒸着パターンの膜厚にばらつきが生じ、結果として、蒸着パターンを備える表示素子内において輝度のむらが生じる。
【0007】
なお、こうした課題は、マスク孔が逆錘台状以外の形状を有する場合にも共通する。例えば、マスク孔が表面から裏面に向けた逆錘台形状を有する大孔部と、裏面から表面に向けて錘台形状を有する小孔部とを含み、大孔部が小孔部に繋がることによって形成された開口が、上述した小開口として機能する場合にも共通している。
【0008】
本発明は、蒸着パターンの膜厚におけるばらつきを抑制可能にした蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための蒸着マスクは、金属製の蒸着マスクである。蒸着源に対向するように構成された表面と、逆錘台状を有した孔部を各々含む複数のマスク孔と、を備える。各マスク孔の前記孔部は、前記蒸着マスクの前記表面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、前記表面に位置し、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁における前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している形状の縁を有する大開口と、を備える。前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲む。
【0010】
上記課題を解決するための蒸着マスクの製造方法は、金属シートの表面および裏面の少なくとも一方にレジストマスクを形成することと、前記レジストマスクを用いて、前記金属シートに複数のマスク孔を形成することと、を含む。前記複数のマスク孔を形成することは、逆錘台状を有した孔部を各々含む前記複数のマスク孔を、各マスク孔の前記孔部が、前記金属シートが広がる平面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、前記表面に位置し、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁における前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している形状の縁を有する大開口と、を備え、前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲むように、前記金属シートに形成する。
【0011】
上記課題を解決するための表示装置の製造方法は、上記蒸着マスクの製造方法による蒸着マスクを準備することと、前記蒸着マスクを用いた蒸着によってパターンを形成することと、を含む。
【0012】
上記蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法によれば、蒸着源に対向する表面に位置する大開口の縁が、多角形状における角部を多角形状の外側に向けて張り出した形状を有するため、大開口の角部の近傍からマスク孔に進入する蒸着材料が、小開口に到達しやすくなる。それゆえに、蒸着パターンの膜厚におけるばらつきを抑えることが可能である。
【0013】
上記蒸着マスクにおいて、前記表面と直交し、かつ、前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、前記表面と前記第1仮想直線とが形成する角度が第1角度であり、前記表面と直交し、かつ、前記小開口の1つの前記線状部に直交する方向に沿う断面において、前記小開口の前記縁と前記大開口の前記縁とを結ぶ仮想直線が第2仮想直線であり、前記表面と前記第2仮想直線とが形成する角度が第2角度であり、前記第2角度は、前記第1角度よりも大きく、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記角部と前記大開口の前記角部との間の距離は、前記表面と前記小開口の前記縁を含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下であり、前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下であってよい。
【0014】
上記蒸着マスクの製造方法において、前記表面と直交し、かつ、前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、前記表面と前記第1仮想直線とが形成する角度が第1角度であり、前記表面と直交し、かつ、前記小開口の1つの前記線状部に直交する方向に沿う断面において、前記小開口の前記縁と前記大開口の前記縁とを結ぶ仮想直線が第2仮想直線であり、前記表面と前記第2仮想直線とが形成する角度が第2角度であり、前記複数のマスク孔を形成することは、前記第2角度が、前記第1角度よりも大きく、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記角部と前記大開口の前記角部との間の距離が、前記表面と前記小開口の前記縁を含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下であり、前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下であるように、前記金属シートに前記複数のマスク孔を形成してもよい。
【0015】
上記蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法によれば、小開口の縁における角部と大開口の縁における角部との間の距離を拡張し、かつ、マスク孔を区画する側面において、小開口の縁における角部と大開口の縁における角部とを繋ぐ部分における傾斜角を縮小することが可能であるため、蒸着材料が、小開口の縁における角部を通過しやすくなる。加えて、小開口の縁における角部が曲率を有することによって、蒸着材料が、小開口の縁における角部をさらに通過しやすくなる。結果として、蒸着パターンにおいて、角部の膜厚が中央部の膜厚よりも小さくなることが抑えられるため、蒸着パターンの膜厚におけるばらつきを抑えることができる。
【0016】
上記蒸着マスクにおいて、前記蒸着マスクは、前記表面とは反対側の面である裏面をさらに備え、前記複数の小開口は、前記裏面に位置してもよい。この蒸着マスクによれば、蒸着対象に形成される蒸着パターンに応じた形状を有した小開口が表面と裏面との間に位置する場合に比べて、蒸着対象に蒸着パターンを形成する際に、小開口と蒸着対象との間の距離を小さくすることが可能である。そのため、小開口が表面と裏面との間に位置する場合に比べて、蒸着対象に形成された蒸着パターン内での膜厚におけるばらつきを抑えることが可能である。
【0017】
上記蒸着マスクにおいて、前記蒸着マスクは、1μm以上20μm以下の厚さを有してもよい。この蒸着マスクによれば、蒸着マスクの厚さが20μmを超える場合に比べて、蒸着マスクを形成するための金属シートを貫通することが可能な大開口の大きさを小さくすることが可能である。そのため、蒸着マスクの厚さが20μmを超える場合に比べて、蒸着マスクが、複数のマスク孔をより高い密度で備えることが可能である。
【0018】
上記蒸着マスクにおいて、前記蒸着マスクを形成する材料は、鉄ニッケル系合金、または、鉄ニッケルコバルト系合金であってもよい。この蒸着マスクによれば、蒸着マスクを用いてガラス基板に対して蒸着を行う場合に、蒸着マスクおよびガラス基板の加熱に伴って、蒸着マスクの膨張度合いとガラス基板の膨張度合いとの差が過度に大きくなることが抑えられる。そのため、蒸着マスクを用いてガラス基板に形成された蒸着パターンの精度が、蒸着マスクの膨張率とガラス基板の膨張率との差に起因して低下することが抑えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蒸着パターンの膜厚におけるばらつきを抑えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1から
図10を参照して、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法における一実施形態を説明する。以下では、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、マスク装置、および、実施例を順に説明する。
【0022】
[蒸着マスク]
図1から
図5を参照して、蒸着マスクを説明する。
図1は、蒸着マスクが備えるパターン領域、および、周辺領域の一部を示している。
【0023】
図1が示す蒸着マスク10は、金属製である。蒸着マスク10は、蒸着源に対向する表面10Fと裏面10Rとを備えている。蒸着マスク10は、逆錘台状を有した孔部を含む複数のマスク孔11を備えている。蒸着マスク10において、複数のマスク孔11が形成された領域がパターン領域R1であり、パターン領域R1を囲む領域であって、かつ、マスク孔11が形成されていない領域が周辺領域R2である。
【0024】
本実施形態において、複数のマスク孔11は千鳥状に並んでいる。なお、複数のマスク孔11は、千鳥状以外の配置規則に従って並んでいてもよい。千鳥状以外の規則は、例えば正方格子であってよい。
【0025】
蒸着マスク10は、例えば、1μm以上20μm以下の厚さTを有する。パターン領域R1での厚さは、周辺領域R2の厚さよりも小さくてもよい。この場合には、蒸着マスク10の厚さは、周辺領域R2での厚さである。蒸着マスク10を形成する材料は、鉄ニッケル系合金である。鉄ニッケル系合金は、例えば36質量%のニッケルを含む合金、すなわちインバーであってよい。言い換えれば、蒸着マスク10は、実質的に鉄ニッケル系合金からなる。
【0026】
図2は、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見たマスク孔11の形状を示している。
図2が示すように、マスク孔11は、小開口11Sと大開口11Lとを含んでいる。小開口11Sは、孔部における一方の開口である。表面10Fと対向する視点から見て、大開口11Lは、小開口11Sを取り囲んでいる。本実施形態では、小開口11Sは、蒸着マスク10の裏面10Rに位置している。小開口11Sは、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、複数の角部11SCと、角部11SC間に位置する線状部11SLとを含む多角形状の縁11SEを有している。
【0027】
本実施形態では、小開口11Sの縁11SEは、四角形状を有している。小開口11Sの縁11SEは、4つの線状部11SLと、4つの角部11SCとを備えている。4つの線状部11SLは、互いに平行な一対の線状部11SLを2組含み、各組に含まれる線状部11SLは、他の組に含まれる線状部11SLと直交する方向に沿って延びている。各角部11SCは、互いに直交する方向に沿って延びる線状部11SLによって挟まれ、かつ、所定の曲率を有した線分である。小開口11Sにおいて、互いに平行な線状部11SL間の距離が、小開口幅WSである。
【0028】
大開口11Lは、各孔部における他方の開口である。大開口11Lは、小開口11Sの縁11SEが有する多角形状における角部が多角形状の外側に向けて張り出した形状の縁11LEを有している。すなわち、大開口11Lは、小開口11Sの縁11SEにおける角部11SCが小開口11Sの縁11SEに対して外側に向けて張り出している形状の縁11LEを有する。大開口11Lは、蒸着マスク10の表面10Fに位置している。大開口11Lは、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、小開口11Sと同数の角部11LCを有した形状の縁11LEを有している。表面10Fと対向する視点から見て、小開口11Sの縁11SEにおける角部11SCと、大開口11Lの縁11LEにおける角部11LCとの間の距離における最大値が、角部間距離DCである。
【0029】
本実施形態では、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、大開口11Lの縁11LEは、4つの線状部11LLと、4つの角部11LCとを備えている。4つの線状部11LLは、互いに平行な一対の線状部を2組含み、各組に含まれる線状部11LLは、他の組に含まれる線状部11LLと直交する方向に沿って延びている。蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、4つの線状部11LLは、小開口11Sと略相似な形状を有した仮想縁VEに含まれる。
【0030】
大開口11Lの縁11LEはさらに、仮想縁VEから、小開口11Sから離れる方向に向けて張り出した張出部11LPを4つ備えている。各張出部11LPは、互いに直交する2つの線状部11LLによって挟まれている。蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、各張出部11LPによって区画される領域は、略三角形状を有している。各角部11LCは、互いに異なる1つの張出部11LPに属している。蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、各角部11LCは、その角部11LCが属する張出部11LPのなかで、小開口11Sからの距離が最も大きい部分を含んでいる。張出部11LPにおいて、角部11LCが有する角度が、第3角度θ3である。第3角度θ3は、角部11LCを挟む2つの線状部によって形成される角度である。詳細には、仮想縁VEと張出部11LPが交わる部分の各々における張出部11LPの接線によって形成される角度である。
【0031】
マスク孔11を区画する側面11SDは、大開口11Lと小開口11Sとを繋いでいる。側面11SDは、大開口11Lから小開口11Sに向けて、蒸着マスク10の表面10Fと平行な断面におけるマスク孔11の面積が小さくなるような傾斜を有している。すなわち、マスク孔11は、蒸着マスク10の表面10Fと直交する断面において、逆錘台状を有している。このように、本実施形態では、各マスク孔11は、逆錘台状を有する1つの孔部によって形成されている。
【0032】
以下、蒸着マスク10の断面構造を示す
図3および
図4を参照して、マスク孔11の形状をより詳しく説明する。なお、
図3は、
図2に示されるIII‐III線に沿う断面であって、小開口11Sの対角方向に沿う断面での蒸着マスク10の構造を示している。これに対して、
図4は、
図2に示されるIV‐IV線に沿う断面であって、小開口11Sの縁11SEにおける1つの線状部11SLに直交する方向に沿う断面での蒸着マスク10の構造を示している。
【0033】
図3が示すように、蒸着マスク10の表面10Fと直交し、かつ、小開口11Sの対角方向に沿う断面において、小開口11Sの縁11SEにおける角部11SCと大開口11Lの縁11LEにおける角部11LCとを結ぶ仮想直線が第1仮想直線L1である。第1仮想直線L1は、小開口11Sの角部11SCと、当該小開口11Sの角部11SCに対応する大開口11Lの角部11LCを結ぶ仮想直線である。すなわち、第1仮想直線L1は、小開口11Sの角部11SCと、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て当該角部11SCからの距離が最も小さい大開口11Lの角部11LCとを結ぶ仮想直線である。
図3が示す例では、マスク孔11を区画する側面11SDが、第1仮想直線L1よりも裏面10Rに向けて窪む弧状を有している。なお、蒸着マスク10の表面10Fと直交し、かつ、小開口11Sの対角方向に沿う断面において、マスク孔11を区画する側面11SDは、第1仮想直線L1よりも表面10Fに向けて突き出た弧状を有してもよい。あるいは、側面11SDは、第1仮想直線L1に一致していてもよい。
【0034】
蒸着マスク10の表面10Fと第1仮想直線L1とが形成する角度が、第1角度θ1である。なお、蒸着マスク10の表面10Fと蒸着マスク10の裏面10Rとは略平行であることから、裏面10Rと第1仮想直線L1とが形成する角度は、第1角度θ1に等しい。
【0035】
角部間距離DCは、蒸着マスク10の表面10Fと小開口11Sの縁11SEを含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下である。本実施形態では、蒸着マスク10の表面10Fと小開口11Sの縁11SEを含む平面との間の距離は、蒸着マスク10の厚さTに等しい。上述したように、蒸着マスク10の厚さTは、例えば1μm以上20μm以下であってよい。そのため、角部間距離DCは、例えば1μm以上30μm以下の範囲に含まれるいずれかの値であることができる。
【0036】
図4が示すように、蒸着マスク10の表面10Fと直交し、かつ、小開口11Sの縁11SEにおける1つの線状部11SLに直交する方向に沿う断面において、小開口11Sの縁11SEと大開口11Lの縁11LEとを結ぶ仮想直線が第2仮想直線L2である。
図4が示す例では、マスク孔11を区画する側面11SDが、第2仮想直線L2よりも裏面10Rに向けて窪む弧状を有している。なお、蒸着マスク10の表面10Fと直交し、かつ、小開口11Sの縁11SEにおける1つの線状部11SLに直交する方向に沿う断面において、マスク孔11を区画する側面11SDは、第2仮想直線L2よりも表面10Fに向けて突き出た弧状を有してもよい。あるいは、側面11SDは、第2仮想直線L2に一致していてもよい。
【0037】
蒸着マスク10の表面10Fと第2仮想直線L2とが形成する角度が、第2角度θ2である。なお、蒸着マスク10の表面10Fと蒸着マスク10の裏面10Rとは略平行であることから、裏面10Rと第2仮想直線L2とが形成する角度は、第2角度θ2に等しい。第2角度θ2は、第1角度θ1よりも大きい。
【0038】
図5は、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見た小開口11Sの一部を拡大して示している。
図5が示すように、また、上述したように、小開口11Sの縁11SEにおける角部11SCは、曲率を有している。角部11SCは、曲率中心Cが小開口11S内に位置するような曲率を有している。角部11SCの曲率半径Rは、4.5μm以下である。
【0039】
[蒸着マスクの製造方法]
図6から
図9を参照して、蒸着マスク10の製造方法を説明する。
蒸着マスク10の製造方法は、金属シートの表面および裏面の少なくとも一方にレジストマスクを形成することと、レジストマスクを用いて、金属シートに複数のマスク孔を形成することと、を含んでいる。以下、図面を参照して、蒸着マスク10の製造方法をより詳しく説明する。なお、
図6、
図7、および、
図9では、図示の便宜上、金属シートに形成されるマスク孔を模式的に示している。
【0040】
図6が示すように、蒸着マスク10を製造する際には、まず、金属シート10Mを準備する。金属シート10Mを形成する材料は、例えば鉄ニッケル系合金である。鉄ニッケル系合金は、例えばインバーであってよい。金属シート10Mは、例えば1μm以上50μm以下の厚さを有する。なお、金属シート10Mの厚さが、蒸着マスク10の厚さTよりも厚い場合には、金属シート10Mに対してレジスト層を形成する前に、金属シート10Mをエッチングすることによって、金属シート10Mの厚さを蒸着マスク10に求められる厚さにまで薄くすることが可能である。
【0041】
次いで、金属シート10Mの表面10MFにレジスト層RLを形成する。レジスト層RLは、ポジ型のレジストによって形成されてもよいし、ネガ型のレジストによって形成されてもよい。レジスト層RLは、ドライフィルムレジストが金属シート10Mの表面10MFに貼り付けられることによって、金属シート10Mの表面に形成されてもよい。あるいは、レジスト層RLは、レジスト層RLを形成するための材料を含む塗液を金属シート10Mの表面10MFに塗布することによって形成されてもよい。
【0042】
図7が示すように、レジスト層RLに対する露光と現像とが行われることによって、レジスト層RLからレジストマスクRMが形成される。レジストマスクRMは、金属シート10Mに形成されるマスク孔の形状に応じた形状を有するマスク孔RMhを有している。
【0043】
図8は、金属シート10Mの表面10MFと対向する視点から見たレジストマスクRMの平面構造を示している。なお、
図8が示すレジストマスクRMが有するマスク孔RMhの形状は、マスク孔RMhが有することが可能な形状の一例である。
【0044】
図8が示すように、マスク孔RMhは、マスク孔RMhを区画する縁RMhEを有している。マスク孔RMhの縁RMhEは、多角形状の仮想縁RMhVにおける角部が多角形状の外側に向けて張り出した形状を有している。
図8が示す例では、マスク孔RMhの縁RMhEは、四角形状の仮想縁RMhVにおける角部が四角形状の外側に向けて張り出した形状を有している。マスク孔RMhの縁RMhEが有する形状は、レジストマスクRMを用いて形成された大開口11Lの縁11LEが有する形状に略等しい。また、仮想縁RMhVが有する形状は、小開口11Sの縁11SEが有する形状に略等しい。
【0045】
マスク孔RMhの縁RMhEは、4つの張出部RMhPと、4つの線状部RMhLとを備えている。マスク孔RMhの縁RMhEにおいて、1つの張出部RMhPは、2つの線状部RMhLによって挟まれている。仮想縁RMhVは、4つの線状部RMhLを含んでいる。各張出部RMhPは、1つの角部RMhCを有している。金属シート10Mの表面10MFと対向する視点から見て、各張出部RMhPによって区画される領域は、略三角形上を有している。各張出部RMhPの形状は、大開口11Lの縁11LEが有する張出部11LPの形状に略等しい。
【0046】
マスク孔RMhにおいて、互いに略平行である2つの線状部RMhL間の距離が、マスク孔幅WRMhである。仮想縁RMhVの角部と、当該角部から張り出した張出部RMhPの角部RMhCとの間の距離が、角部補正値RMhDCである。張出部RMhPにおいて、角部RMhCが有する角度が、第4角度θ4である。マスク孔RMhにおいて、マスク孔幅WRMh、角部補正値RMhDC、および、第4角度θ4の少なくとも1つが変わることによって、金属シート10Mに形成されるマスク孔の形状が変わる。
【0047】
図9が示すように、レジストマスクRMを用いたウェットエッチングによって、金属シート10Mに複数のマスク孔11Mが形成される。これにより、金属シート10Mの表面10MFと裏面10MRとに開口を有するマスク孔11Mが形成される。金属シート10MからレジストマスクRMが取り除かれることによって、上述した蒸着マスク10が得られる。なお、金属シート10Mにおいて、表面10MFが蒸着マスク10の表面10Fに対応し、裏面10MRが蒸着マスク10の裏面10Rに対応し、かつ、マスク孔11Mが蒸着マスク10のマスク孔11に対応する。
【0048】
[マスク装置]
図10を参照して、マスク装置を説明する。
図10が示すように、マスク装置20は、フレーム21と、複数の蒸着マスク10とを備えている。
図10が示す例では、マスク装置20は、3つの蒸着マスク10を備えているが、マスク装置20は、2つ以下の蒸着マスク10を備えてもよいし、4つ以上の蒸着マスク10を備えてもよい。フレーム21は、複数の蒸着マスク10を支持することが可能な矩形枠状を有している。フレーム21は、蒸着を行うための蒸着装置に取り付けられる。フレーム21は、各蒸着マスク10が位置する範囲のほぼ全体にわたり、フレーム21を貫通するフレーム孔21Hを有する。
【0049】
各蒸着マスク10は、1つの方向に沿って延びる帯状を有している。各蒸着マスク10は、複数のパターン領域R1と、パターン領域R1を取り囲む周辺領域R2とを備えている。
図10が示す例では、蒸着マスク10は3つのパターン領域R1を有しているが、蒸着マスク10は、2つ以下のパターン領域R1を有してもよいし、4つ以上のパターン領域R1を有してもよい。
【0050】
各蒸着マスク10における周辺領域R2のなかで、蒸着マスク10が延びる方向において複数のパターン領域R1を挟む一対の部分が、それぞれフレーム21に固定される。蒸着マスク10は、接着または溶着などによってフレーム21に固定される。
【0051】
蒸着マスク10を用いて表示装置を製造する方法は、上述した蒸着マスク10の製造方法による蒸着マスク10を準備することと、蒸着マスク10を用いた蒸着によってパターンを形成することとを含む。
【0052】
表示装置の製造方法では、まず、蒸着マスク10を搭載したマスク装置20を蒸着装置の真空槽内に取り付ける。この際に、ガラス基板などの蒸着対象と裏面10Rとが対向し、かつ、蒸着源と表面10Fとが対向するように、マスク装置20を真空槽内に取り付ける。そして、蒸着装置の真空槽に蒸着対象を搬入し、蒸着源によって蒸着材料を昇華させる。これにより、小開口11Sに追従した形状を有するパターンが、蒸着対象において小開口11Sと対向する領域に形成される。本実施形態において、蒸着材料は、表示装置の一例である有機EL表示装置の画素を形成するための有機発光材料である。なお、蒸着材料は、表示装置の画素回路が有する画素電極を形成するための導電性材料であってもよい。
【0053】
[実施例]
表1から表3を参照して実施例を説明する。
[実施例1]
20μmの厚さを有したインバー製の金属シートを準備した。48%塩化第二鉄を用いて金属シートをエッチングすることによって、金属シートの厚さを3.5μmまで薄くした。次いで、ポジ型のレジスト(THMR‐iP5700、東京応化工業(株)製)(THMRは登録商標)を用いて、金属シートの表面にレジスト層を形成した。そして、レジスト層を露光し、露光されたレジスト層を現像することによって、レジストマスクを形成した。これにより、レジストマスクの表面と対向する視点から見て、
図8が示すマスク孔と同様の形状を有したマスク孔を備えるレジストマスクを形成した。
【0054】
実施例1では、以下に示す表1に記載のように、1つのマスク孔において、マスク孔幅WRMhが18.3μmであり、角部補正値RMhDCが3.3μmであり、第4角度θ4の設計値が30.2°であることが認められた。これにより、蒸着マスクの小開口幅WSにおける目標値が20μmであり、マスク孔のピッチにおける目標値が30μmであるように複数のマスク孔を形成した。
【0055】
そして、レジストマスクを用いたウェットエッチングによって、金属シートに複数のマスク孔を形成した。この際に、エッチング液として48%塩化第二鉄を用いた。金属シートのエッチングにおいて、金属シートに形成された孔部が金属シートの裏面に達する時間を1とした場合に、金属シートのエッチング時間を2に設定した。すなわち、エッチング時間は、ウェットエッチングが施される金属シートの厚さTに応じた長さに設定した。最後に、エッチング後の金属シートを60℃の10%水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬することによって、金属シートからレジストマスクを取り除いた。これによって、実施例1の蒸着マスクを得た。
【0056】
[実施例2]
実施例1において、金属シートの厚さを20μmから4.0μmまで薄くし、マスク孔幅WRMhが18.0μmであり、角部補正値RMhDCが3.0μmであり、かつ、第4角度θ4が30.1°である以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の蒸着マスクを得た。
【0057】
[実施例3]
実施例1において、金属シートの厚さを20μmから4.5μmまで薄くし、マスク孔幅WRMhが17.8μmであり、角部補正値RMhDCが2.8μmであり、かつ、第4角度θ4が30.2°である以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の蒸着マスクを得た。
【0058】
[実施例4]
実施例2において、角部補正値RMhDCが2.0μmであり、かつ、第4角度θ4が30.3°である以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例4の蒸着マスクを得た。
【0059】
[実施例5]
実施例2において、角部補正値RMhDCが2.5μmであり、かつ、第4角度θ4が29.9°である以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例5の蒸着マスクを得た。
【0060】
[実施例6]
実施例4において、角部補正値RMhDCが1.5μmであり、かつ、第4角度θ4が29.8°である以外は、実施例4と同様の方法によって、実施例6の蒸着マスクを得た。
【0061】
[実施例7]
実施例1において、角部補正値RMhDCが4.3μmであり、かつ、第4角度θ4が30.0°である以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例7の蒸着マスクを得た。
【0062】
[比較例1]
実施例1において、角部補正値RMhDCが0.8μmであり、かつ、第4角度θ4が29.9°である以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例1の蒸着マスクを得た。
【0064】
[測定結果]
実施例1から実施例7の蒸着マスク、および、比較例1の蒸着マスクについて、共焦点レーザー顕微鏡(OLS‐4000、オリンパス(株)製)を用いて各種の寸法などを測定した。各蒸着マスクの測定結果は、以下の表2に示す通りであった。
【0066】
表2が示すように、実施例1の蒸着マスクでは、裏面と対向する方向から撮影した透過像によって、略20μmの幅を有し、略正方形状を有した小開口が、略10μmの間隔で正方格子状に並んでいることが認められた。なお、互いに平行な一対の線状部間の距離を小開口の幅として測定した。また、実施例2から実施例6の蒸着マスク、および、比較例1の蒸着マスクにおいても、略20μmの幅を有し、略正方形状を有した小開口が、略10μmの間隔で正方格子状に並んでいることが認められた。これに対して、実施例7の蒸着マスクでは、各小開口の幅が略20μmではあるものの、角部のエッチングが進み過ぎた結果、各小開口の縁が、左右方向および上下方向の両方においてくびれた四角形状を有することが認められた。
【0067】
また、実施例1から実施例7のいずれにおいても、大開口の縁が、四角形状における角部が正方形状の外側に向けて張り出した形状を有することが認められた。これに対して、比較例1では、大開口の縁が、略正方形状を有し、かつ、正方形状の角部が正方形状の外側に向けて張り出していないことが認められた。
【0068】
第1角度θ1は、実施例1において30.2°であり、実施例2において31.1°であり、実施例3において30.5°であることが認められた。また、第1角度θ1は、実施例4において31.0°であり、実施例5において30.1°であることが認められた。さらに、第1角度θ1は、実施例6において45.0°であり、実施例7において29.9°であり、比較例1において45.2°であることが認められた。
【0069】
第2角度θ2は、実施例1において45.1°であり、実施例2において44.8°であり、実施例3において44.7°であることが認められた。また、第2角度θ2は、実施例4において45.2°であり、実施例5において45.3°であることが認められた。また、第2角度θ2は、実施例6において44.9°であり、実施例7において44.7°であり、比較例1において45.0°であることが認められた。
【0070】
このように、実施例1から実施例5の蒸着マスク、および、実施例7の蒸着マスクでは、第2角度θ2が第1角度θ1よりも大きいことが認められた。これに対して、実施例6および比較例1では、第1角度θ1が第2角度θ2よりも大きいことが認められた。
【0071】
角部間距離DCは、実施例1および実施例2において4.9μmであり、実施例3において5.1μmであり、実施例4において4.0μmであり、実施例5において4.6μmであることが認められた。また、角部間距離DCは、実施例6において3.3μmであり、実施例7において6.2μmであり、比較例1において2.6μmであることが認められた。
【0072】
すなわち、蒸着マスクの厚さTに対する角部間距離DCの比(DC/T)は、実施例1において1.4であり、実施例2において1.2であり、実施例3において1.1であることが認められた。また、蒸着マスクの厚さTに対する角部間距離DCの比は、実施例4において1.0であり、実施例5において1.2であることが認められた。また、蒸着マスクの厚さTに対する角部間距離DCの比は、実施例6において0.8であり、実施例7において1.8であり、比較例1において0.7であることが認められた。このように、実施例1から実施例5の蒸着マスクでは、蒸着マスクの厚さTに対する角部間距離DCの比が1以上1.5以下の範囲に含まれる一方で、実施例6および実施例7の蒸着マスク、および、比較例1の蒸着マスクでは、蒸着マスクの厚さTに対する角部間距離DCの比が1以上1.5以下の範囲には含まれないことが認められた。
【0073】
また、小開口の縁が備える角部の曲率半径Rは、実施例1において3.0μmであり、実施例2において3.2μmであり、実施例3において3.9μmであることが認められた。また、曲率半径Rは、実施例4において4.4μmであり、実施例5において3.8μmであり、実施例6において7.2μmであることが認められた。また、曲率半径Rは、比較例1において8.5μmであることが認められた。このように、実施例1から実施例5の蒸着マスクでは、曲率半径Rが4.5μm以下である一方で、実施例6および比較例1の蒸着マスクでは、曲率半径Rが4.5μmを超えることが認められた。なお、実施例7では、小開口の縁が左右方向および上下方向の両方においてくびれを有し、角部において曲率を有しないことが認められた。
【0074】
また、第3角度θ3は、実施例1において51.6°であり、実施例2において51.5°であり、実施例3において51.6°であることが認められた。第3角度θ3は、実施例4において51.8°であり、実施例5において51.1°であり、実施例6において51.0°であることが認められた。第3角度θ3は、実施例7において51.3°であり、比較例1において51.1°であることが認められた。なお、比較例1における第3角度θ3は、大開口が有する角部における角度に設定した。
【0075】
[評価結果]
実施例1から実施例7の蒸着マスクの各々、および、比較例1の蒸着マスクの各々を用いて、蒸着対象に蒸着パターンを形成した。この際に、蒸着対象としてガラス基板を用い、かつ、蒸着パターンを形成するための蒸着材料として有機発光材料を用いた。
【0076】
各蒸着マスクを用いて、15行かつ15列で格子状に並ぶ四角形の蒸着パターンを形成した。そして、当該蒸着パターンのうち、中央に位置する9行かつ9列の蒸着パターンについて、膜厚のばらつきを算出した。この際に、各蒸着パターンの中央部における膜厚を測定し、当該膜厚を蒸着パターンの膜厚における最大値MMと見なした。また、各蒸着パターンの角部における膜厚を測定し、当該膜厚を蒸着パターンの膜厚における最小値Mmと見なした。なお、表面形状測定器(Dektak 6M、Veecо社製)を用いて各蒸着パターンの膜厚を測定した。そして、以下の式(1)に基づき算出した膜厚のばらつきが5%以下である場合を「○」とし、10%以下である場合を「△」とし、10%を超える場合を「×」とした。
100×{(MM−Mm)/(MM+Mm)}/2(%) …式(1)
上記式(1)に従って算出した膜厚のばらつきは、以下の表3に示す通りであった。
【0078】
表3が示すように、実施例1から実施例5、および、実施例7の蒸着マスクを評価した結果は「○」であり、実施例6の蒸着マスクを評価した結果は「△」である一方で、比較例1の蒸着マスクを評価した結果は「×」であることが認められた。このように、実施例1から実施例7の蒸着マスクによれば、比較例1に比べて、蒸着パターンにおける膜厚のばらつきが抑えられることが認められた。
【0079】
また、厚さTに対する角部間距離DCの比が1未満である場合には、1以上である場合に比べて、蒸着パターンにおける膜厚のばらつきが大きくなる傾向が認められた。これに対して、厚さTに対する角部間距離DCの比が1.5を超える場合には、蒸着パターンにおける膜厚のばらつきは小さい一方で、蒸着パターンの縁が、所望の多角形状に対してくびれた形状を有することが認められた。このように、蒸着パターンにおける膜厚のばらつきを抑え、かつ、蒸着パターンにおける形状の精度を高めるためには、厚さTに対する角部間距離DCの比が1以上1.5以下であることが好ましいと言える。
【0080】
さらに、曲率半径Rが4.5μmを超える場合には、4.5μm以下である場合に比べて、蒸着パターンにおける膜厚のばらつきが大きくなる傾向が認められた。つまり、蒸着パターンにおける膜厚のばらつきを抑えるためには、曲率半径Rが4.5μm以下であることが好ましいと言える。
【0081】
以上説明したように、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法における一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)大開口11Lの角部11LCの近傍からマスク孔11に進入する蒸着材料が、小開口11Sに到達しやすくなるため、蒸着パターンの膜厚におけるばらつきが抑えられる。
【0082】
(2)蒸着パターンにおいて、角部の膜厚が中央部の膜厚よりも小さくなることが抑えられるため、蒸着パターンの膜厚におけるばらつきを抑えることができる。
【0083】
(3)蒸着対象に形成される蒸着パターンに応じた形状を有した小開口11Sが表面10Fと裏面10Rとの間に位置する場合に比べて、小開口11Sと蒸着対象との間の距離を小さくすることが可能であるため、蒸着対象に形成された蒸着パターン内での膜厚におけるばらつきを抑えることが可能である。
【0084】
(4)蒸着マスク10の厚さが20μmを超える場合に比べて、金属シート10Mを貫通することが可能な大開口11Lの大きさを小さくすることが可能であるため、蒸着マスク10が、複数のマスク孔11をより高い密度で備えることが可能である。
【0085】
(5)蒸着マスク10およびガラス基板の加熱に伴って、蒸着マスク10の膨張度合いとガラス基板の膨張度合いとの差が過度に大きくなることが抑えられるため、ガラス基板に形成された蒸着パターンの精度が、蒸着マスク10の膨張率とガラス基板の膨張率との差に起因して低下することが抑えられる。
【0086】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[大開口]
・大開口11Lの縁11LEが含む張出部11LPの形状は、以下のように変更することができる。すなわち、以下に参照する各図面が示すように、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、張出部11LPが区画する領域は、多様な形状を有することが可能である。
【0087】
例えば、張出部11LPが区画する領域は、
図11が示すように、略長方形状を有してもよいし、
図12が示すように、逆台形状を有してもよい。また、張出部11LPが区画する領域は、
図13が示すように、略台形状を有してもよいし、
図14が示すように、略長方形状を有し、かつ、角部11LCが直線状を有してもよい。またあるいは、張出部11LPが区画する領域は、
図15が示すように、略正方形状を有し、かつ、張出部11LPが有する3つの角部が仮想縁VEよりも外側に位置してもよい。またあるいは、張出部11LPが区画する領域は、
図16が示すように、略円状を有してもよい。
【0088】
張出部11LPが区画する領域が上述したいずれの形状を有する場合であっても、大開口11Lの縁11LEが、小開口11Sの縁11SEが有する多角形状の角部が多角形状から外側に向けて張り出した形状を有することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0089】
また、張出部11LPが区画する領域が上述したいずれの形状を有する場合であっても、角部間距離DCが蒸着マスク10の厚さTに対する1倍以上1.5倍以下であることが可能である。これにより、マスク孔11を区画する側面11SDにおいて、小開口11Sの縁11SEにおける角部11SCと大開口11Lの縁11LEにおける角部11LCとを繋ぐ部分における傾斜角を縮小することが可能である。
【0090】
[角部の数]
・小開口11Sの縁11SEは、四角形状以外の多角形状を有してもよい。小開口11Sは、例えば5つ以上の角部11SCを有した多角形状を有してもよい。大開口11Lの縁11LEは、例えば5つ以上の角部11LCを有してもよい。
【0091】
図17は、小開口11Sの縁11SEが有する形状における1つの変更例を示している。
図17が示すように、小開口11Sの縁11SEは、略正八角形状を有している。小開口11Sの縁11SEは、8つの線状部11SLと8つの角部11SCとを含んでいる。各角部11SCにおける曲率半径Rは、上述した実施形態と同様、4.5μm以下である。
【0092】
大開口11Lの縁11LEは、8つの線状部11LL、8つの角部11LC、および、8つの張出部11LPを含んでいる。各角部11LCは、互いに異なる1つの張出部11LPに属している。各張出部11LPが区画する領域は、
図11に示される変更例と同様、略長方形状を有し、角部11LCが曲率を有している。なお、各張出部11LPには、
図2、および、
図12から
図16を参照して先に説明した各張出部11LPを適用することが可能である。
【0093】
なお、小開口11Sの縁11SEが四角形状以外の多角形状を有する場合には、蒸着マスク10の表面10Fに直交し、かつ、小開口11Sにおける1つの角部11SCと、当該角部11SCに対応する大開口11Lにおける角部11LCとを含む平面に沿う断面において、第1仮想直線L1を定義することが可能である。また、小開口11Sの縁11SEが四角形状以外の多角形状を有する場合には、蒸着マスク10の表面10Fに直交し、かつ、小開口11Sにおける1つの線状部11SLと、当該線状部11SLと平行な大開口11Lの線状部11LLとを含む平面に沿う断面において、第2仮想直線L2を定義することができる。
【0094】
[マスク孔]
・マスク孔は、2つの孔部を有してもよい。
すなわち、
図18が示すように、蒸着マスク30が備えるマスク孔31は、1つの孔部である大孔部31aと、他の孔部である小孔部31bとを含んでもよい。蒸着マスク30の厚さ方向における途中にて、大孔部31aが小孔部31bに繋がっている。大孔部31aは、表面30Fに大開口31Lを有し、かつ、大開口31Lとは反対側の開口である小開口31Sを有している。小孔部31bは、大孔部31aとともに小開口31Sを共有し、かつ、小開口31Sとは反対側の開口であって、裏面30Rに開口する裏面開口31Rを有している。なお、大孔部31aと小孔部31bとが繋がる部分と、裏面30Rとの間の距離がステップハイトSHである。シャドウ効果に起因する輝度のむらを蒸着パターンにおいて抑える上では、ステップハイトSHは小さいことが好ましい。マスク孔31が2つの孔部を備える場合には、蒸着マスク30における解像度の低下を抑えつつ、蒸着マスク30の厚さを厚くすることが可能である。
【0095】
また、蒸着マスク30の表面30Fと、小開口31Sの縁を含む平面との間の距離Dは、上述した実施形態と同様、角部間距離DCが当該距離Dの1倍以上1.5倍以下であるような大きさを有することが可能である。
【0096】
この場合にも、蒸着マスク30の大開口31Lが、小開口31Sの縁が有する多角形状の角部が多角形状から張り出した形状を有することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0097】
・蒸着マスク10が備えるマスク孔11は、以下の条件のうちの少なくとも1つを満たさなくてもよい。
【0098】
(条件A)第2角度θ2が、第1角度θ1よりも大きい。
(条件B)角部間距離DCが、蒸着マスク10の表面と小開口11Sの縁11SEを含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下である。
(条件C)小開口11Sの縁11SEにおける角部11SCの曲率半径Rが、4.5μm以下である。
【0099】
マスク孔11が、条件Aから条件Cの少なくとも1つを満たさない場合であっても、大開口11Lの縁11LEが、小開口11Sの縁11SEが有する多角形状の角部が多角形状の外側に向けて張り出した形状を有することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0100】
[蒸着マスクを形成する材料]
・蒸着マスク10を形成する材料は、鉄ニッケル系合金以外の金属であってもよい。蒸着マスク10を形成する材料は、鉄ニッケルコバルト系合金、例えば、32質量%のニッケルと4質量%以上5質量%以下のコバルトとを含む合金、すなわちスーパーインバーなどであってもよい。蒸着マスク10を形成する材料は、鉄クロムニッケル系合金、すなわちクロムニッケル系ステンレス鋼であってもよい。クロムニッケル系ステンレス鋼は、例えばSUS304であってよい。なお、鉄クロムニッケル系合金は、鉄ニッケル系合金、および、鉄ニッケルコバルト系合金に比べて熱膨張係数が大きい。そのため、蒸着時において蒸着マスク10の温度が上昇する度合いが小さい場合には、鉄クロムニッケル系合金を用いてもよく、また、蒸着マスク10の温度が上昇する度合いがより大きい場合には、鉄ニッケル系合金、または、鉄ニッケルコバルト系合金を用いることが好ましい。
【0101】
この場合であっても、大開口11Lの縁11LEが、小開口11Sの縁11SEが有する多角形状の角部が多角形状から外側に向けて張り出した形状を有することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0102】
[蒸着マスクの厚さ]
・蒸着マスクの厚さは、20μmよりも厚くてもよい。この場合であっても、大開口11Lの縁11LEが、小開口11Sの縁11SEが有する多角形状の角部が多角形状の外側に向けて張り出した形状を有することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0103】
[蒸着マスク]
・蒸着マスク10は、パターン領域R1に相当するマスク部と、周辺領域R2に相当するサブフレームとを備えてもよい。この場合には、サブフレームは、マスク部とは別体であり、かつ、サブフレームは、サブフレーム孔を有している。そして、各マスク部は、互いに異なるサブフレーム孔を塞ぐように、サブフレームに対して取り付けられる。結果として、蒸着マスク10において、マスク部の数とサブフレーム孔の数とは同数となる。マスク部は、接着によってサブフレームに取り付けられてもよいし、溶着によってサブフレームに取り付けられてもよい。
【0104】
なお、この場合には、サブフレームによってマスク部を支持することが可能であるため、マスク部と周辺部とが一体である場合に比べて、マスク部の厚さを薄くすることが可能である。マスク部を形成する際には、マスク部に対してマスク孔を形成する前に、マスク部の両面をエッチングすることによって、マスク部の厚さを薄くすることが可能である。なお、薄いマスク部を形成する場合には、マスク部の取扱性を向上する目的で、マスク部の厚さを薄くするためのエッチング、および、マスク部にマスク孔を形成するためのエッチングにおいて、マスク部を支持する支持層にマスク部を積層してもよい。支持層は、サブフレームにマスク部を取り付けた後に、マスク部から取り外されればよい。
金属製の蒸着マスクであって、蒸着源に対向するように構成された表面と、逆錘台状を有した孔部を各々含む複数のマスク孔とを備える。各マスク孔の孔部は、蒸着マスクの表面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、表面に位置し、表面と対向する視点から見て、小開口の縁における角部が小開口の縁に対して外側に向けて張り出している形状の縁を有する大開口とを備える。表面と対向する視点から見て、大開口が小開口を取り囲む。