(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
物件のフロアをイメージした設定画面において、前記フロアの各部に設置された各環境センサの位置の入力操作、及び、前記フロアに設置された間仕切りの位置の入力操作を受付可能な入力受付手段と、
前記各環境センサから収集される環境データの実測値から、前記各環境センサの設置箇所間の環境データの推定値を補間計算し、前記フロアの環境データを値に応じて色分けして表現したコンター図を、前記実測値と前記推定値と前記入力受付手段が受け付けた前記各環境センサの位置情報とに基づいて生成するコンター図生成手段と、を備え、
前記コンター図生成手段は、前記入力受付手段で位置入力された前記間仕切りが、少なくとも何れか一対の前記環境センサ同士の間に位置する場合、
前記間仕切りの一方の側のコンター図の領域については、前記一方の側にある環境センサの実測値及び前記間仕切りにおける仮想位置に設定された仮想センサの環境データの推定値を基にした補間計算を行ない、前記一方の側にある環境センサから前記間仕切り部分までの間を色分けして表現した前記コンター図を、前記実測値と前記推定値と前記位置情報の他に前記間仕切りの情報も用いて生成し、
前記間仕切りの他方の側のコンター図の領域については、前記他方の側にある環境センサの実測値及び前記間仕切りにおける仮想位置に設定された仮想センサの環境データの推定値を基にした補間計算を行ない、前記他方の側にある環境センサから前記間仕切り部分までの間を色分けして表現した前記コンター図を、前記実測値と前記推定値と前記位置情報の他に前記間仕切りの情報も用いて生成する、
室内環境の解析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
室内環境は、例えば、空調設備の運用状態や通用口の扉の開閉状態、建物の各フロアに設置されている照明器具その他の電気製品類から発生する熱等に左右される。よって、室内環境に関わる空調設備等の諸設備の運用課題を的確に捉えるには、現状の室内環境を正確に把握できることが望ましい。そこで、室内の温度分布等の環境データを値に応じて色分けして表現したコンター図を用いることにより、現状の室内環境を視覚的に捉えることが考えらえるが、例えば、建物全体の空調設備の運用課題を把握するには、フロア全体のコンター図を生成する必要があり、この場合、フロアの各部に離散的に設置されたセンサから収集される環境データを基に、センサの設置箇所間の環境データの推定値を補間計算してコンター図を生成することになる。ところが、フロアには居室や書庫といった諸目的の空間を形成するための間仕切りが設置されることが一般的である。間仕切りは、通常、通気性の無い板材等で構築されるため、間仕切りによって分断された両空間相互を行き交う気流は遮断される。よって、フロアの各部の環境データは、間仕切りの部分において臨界値的な特異な差分を発現するのが自然であるが、フロアの各部に離散的に設置されたセンサの設置箇所間の環境データの推定値を補間計算して生成されるコンター図では、間仕切りを挟む両側部分で概ね同じような推定値が算出されることになるため、このような臨界値的な特異な差分が現れない。すなわち、間仕切りの境界が曖昧で、実際の環境データの分布とは異なることが客観的に明らかなコンター図が生成されることになる。したがって、このようなコンター図を使って室内環境を把握すると、諸設備の運用課題を誤認する虞がある。
【0005】
そこで、本願は、間仕切りが設置されたフロアであっても、当該フロアに離散配置されたセンサから収集される環境データを基にしたコンター図を適正に生成可能にする室内環境の解析装置、方法およびプログラムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、間仕切りの一方の側のコンター図の領域については当該一方の側にある環境センサの実測値を基に色分けして表現を行い、他方の側のコンター図の領域については当該他方の側にある環境センサの実測値を基に色分けして表現することにした。
【0007】
詳細には、本発明は、室内環境の解析装置であって、物件のフロアをイメージした設定画面において、フロアの各部に設置された各環境センサの位置の入力操作、及び、フロア
に設置された間仕切りの位置の入力操作を受付可能な入力受付手段と、各環境センサから収集される環境データの実測値から、各環境センサの設置箇所間の環境データの推定値を補間計算し、フロアの環境データを値に応じて色分けして表現したコンター図を、実測値と推定値と入力受付手段が受け付けた各環境センサの位置情報とに基づいて生成するコンター図生成手段と、を備え、コンター図生成手段は、入力受付手段で位置入力された間仕切りが、少なくとも何れか一対の環境センサ同士の間に位置する場合、間仕切りの一方の側のコンター図の領域については、一方の側にある環境センサの実測値を、一方の側にある環境センサから間仕切り部分までの間を色分けして表現し、間仕切りの他方の側のコンター図の領域については、他方の側にある環境センサの実測値を基に、他方の側にある環境センサから間仕切り部分までの間を色分けして表現する。
【0008】
ここで、物件とは、室内空間を形成する構造物全般をいい、例えば、ビルディング、工場、プラント、研究施設、地下街、住宅、駅舎、鉄道車両、バス、航空機、宇宙船、その他のあらゆる構造物が含まれる。また、環境センサとは、室内環境を測定するセンサであり、例えば、温度センサ、湿度センサ、その他の各種センサが挙げられる。また、環境データとは、室内環境を数値で表したデータであり、例えば、温度のデータ、湿度のデータ、その他のデータが挙げられる。また、間仕切りとは、空間を仕切る部材であり、例えば、通気性を有しない壁材や板材の他、通気性を有する有孔の壁材や板材、カーテン、ロールスクリーン、その他の各種部材が挙げられる。
【0009】
上記の解析装置であれば、間仕切りの一方の側のコンター図の領域については、当該一方の側にある環境センサの実測値を基に間仕切り部分の環境データの値が決定される。そして、当該一方の側にある環境センサから間仕切り部分までの間の環境データの推定値が、当該環境センサの実測値および当該決定された値に基づいて補間計算される。よって、当該一方の側のコンター図については、間仕切りの他方の側にある環境センサの実測値の影響を受けることなく生成される。他方の側のコンター図の領域についても同様である。
【0010】
すなわち、上記の解析装置が行うコンター図の生成処理においては、間仕切りの一方の側の領域と他方の側の領域とが、互いに切り離された状態で色分けして表現されることになる。したがって、上記の解析装置によって生成されるコンター図は、間仕切りがある部分全体を俯瞰して見た場合、間仕切りの境界が明確な図となる。これにより、フロアの環境状況を正確に把握し、フロアの環境に関わる空調設備等の運用課題を的確に捉えることが可能になる。
【0011】
また、本発明は、方法およびプログラムの側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、コンピュータが、物件のフロアをイメージした設定画面において、フロアの各部に設置された各環境センサの位置の入力操作、及び、フロアに設置された間仕切りの位置の入力操作を受付可能な入力受付処理と、各環境センサから収集される環境データの実測値から、各環境センサの設置箇所間の環境データの推定値を補間計算し、フロアの環境データを値に応じて色分けして表現したコンター図を、実測値と推定値と入力受付処理で受け付けた各環境センサの位置情報とに基づいて生成するコンター図生成処理と、を実行し、コンター図生成処理では、入力受付処理で位置入力された間仕切りが、少なくとも何れか一対の環境センサ同士の間に位置する場合、間仕切りの一方の側のコンター図の領域については、一方の側にある環境センサの実測値を基に、一方の側にある環境センサから間仕切り部分までの間を色分けして表現し、間仕切りの他方の側のコンター図の領域については、他方の側にある環境センサの実測値を基に、他方の側にある環境センサから間仕切り部分までの間を色分けして表現する、室内環境の解析方法であってもよい。
【0012】
また、本発明は、例えば、室内環境の解析装置であって、物件のフロアをイメージした設定画面において、フロアの各部に設置された各環境センサの位置の入力操作を受付可能
な入力受付手段と、各環境センサから収集される環境データの実測値から、各環境センサの設置箇所間の環境データの推定値を補間計算し、フロアの環境データを値に応じて色分けして表現したコンター図を、実測値と推定値と入力受付手段が受け付けた各環境センサの位置情報とに基づいて生成するコンター図生成手段と、を備えた室内環境の解析装置であって、入力受付手段は、フロアに設置された間仕切りの位置の入力操作を受付けるとともに、コンター図生成手段は、間仕切りと、間仕切りに近接する各環境センサとの間で、フロアの環境データを値に応じて色分けして表現したコンター図を生成するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記の室内環境の解析装置、方法およびプログラムであれば、間仕切りが設置されたフロアであっても、当該フロアに離散配置されたセンサから収集される環境データを基にしたコンター図を適正に生成可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0016】
図1は、室内環境の解析システム全体をイメージした図である。本実施形態の解析システム1は、
図1に示されるように、建物T(本願でいう「物件」の一例である)に用意された解析装置2、通信ネットワーク3、無線アクセスポイント4、無線中継装置5、無線温湿度センサ6を備える。通信ネットワーク3は、建物T内に敷設された構内の通信ネットワークであり、例えば、有線ケーブルや無線の電波を用いたLAN(Local Area Network)が挙げられる。無線アクセスポイント4は、建物Tのフロアの各部に設置された無線温湿度センサ6を通信ネットワーク3に無線接続するためのアクセスポイントであり、建物Tのフロア等に設置される。無線中継装置5は、無線アクセスポイント4から比較的離れていて無線アクセスポイント4と無線で通信することが困難な無線温湿度センサ6が存在する場合に、必要に応じて適宜用意される無線中継装置であり、建物Tのフロア等に設置される。無線温湿度センサ6は、温度や湿度を電気的に計測する素子、計測した温度や湿度を数値データに変換するプロセッサ、数値データを無線で発信する無線通信インタフェース、無線温湿度センサ6の内部部品に電力を供給するバッテリ等を備える電子機器であり、例えば、無線温湿度センサ6が設置されている箇所の温度や湿度のデータを、通信ネットワーク3や無線アクセスポイント4等を通じて解析装置2へ送ることができる。無線温湿度センサ6は、解析システム1で室内環境を計測したい建物Tのフロアの適宜の箇所に設置される。解析装置2は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、通信インタフェース等を備えており、コンピュータプログラムを実行することにより各種の機能部を実現する。
【0017】
解析装置2は、例えば、解析システム1の室内環境を計測する室内環境計測用のコンピュータプログラムを実行することにより、各種の機能部を実現する。解析装置2は、室内環境計測用のコンピュータプログラムを実行することにより、例えば、各種の入力操作を受け付ける入力受付部21、解析装置2のモニタに表示するコンター図等の画像情報を生成する演算処理部22(本願でいう「コンター図生成手段」の一例である)、演算処理部22が生成した画像データをモニタに表示する表示処理部23(本願でいう「コンター図表示手段」の一例である)を実現する。
【0018】
以下、解析システム1の使用方法や、解析システム1において実現される解析処理の内容について説明する。
【0019】
本実施形態の解析システム1の使用に際しては、まず、以下に示すような初期設定(コンター図の設計)が行われる。
図2は、解析装置2のモニタに表示される設定画面の第1例を示した図である。解析装置2で初期設定の操作が行われると、解析装置2のモニタには、無線温湿度センサ6が設置された建物Tのフロアを模擬したグラフィック表示のフロアN1を中央に配した設定画面G01が表示される。フロアN1は、建物Tにある1つのフロア全体を示しており、例えば、
図2を見ると判るように、建物Tに設けられている柱等の構造物、人が乗るエレベータ等の昇降装置類、その他の物が図示されている。
【0020】
設定画面G01では、建物Tのフロアに設置されている無線温湿度センサ6に対応する位置に、無線温湿度センサ6を模擬したグラフィック表示を配置する操作が行われる。
図3は、解析装置2のモニタに表示される設定画面の第2例を示した図である。解析装置2の操作者は、設定画面G01の画面において各種アイコンをポインタPで操作し、建物T
のフロアに実際に設置された無線温湿度センサ6に対応する位置に、無線温湿度センサ6を模擬したグラフィック表示のアイコン(以下、センサN2という)を配置する。
【0021】
また、設定画面G01では、センサN2を配置する操作の他、建物Tのフロアに設置されている間仕切りに対応する位置に、間仕切りを模擬したグラフィック表示を配置する操作が行われる。
図4は、解析装置2のモニタに表示される設定画面G01の第3例を示した図である。解析装置2の操作者は、設定画面G01の画面で各種アイコンをポインタPで操作し、建物Tのフロアに実際に設置されている間仕切りに対応する位置に、間仕切りを模擬したグラフィック表示の間仕切りN3を配置する。間仕切りN3は、例えば、
図4において符号R1が示すように、フロアの隅に設けられた部屋の壁に相当する部位に配置される。また、間仕切りN3は、例えば、
図4において符号R3と符号R4が示すような非閉鎖空間同士、或いは、符号R4と符号R5が示すような非閉鎖空間同士を隔てる衝立に相当する部位に配置される。
図4では、何れの間仕切りN3も、建物Tの外壁面を形成するフロアの内壁面に接触する状態で図示されているが、間仕切りN3は、建物Tの外壁面を形成するフロアの内壁面から離間していてもよい。
【0022】
また、初期設定に際しては、設定画面G01でフロアN1に配置されたセンサN2と、実際に建物Tのフロアの各部に設置されている各無線温湿度センサ6との対応関係を設定する操作が行われる。
図5は、解析装置2のモニタに表示される設定画面の第4例を示した図である。解析装置2で信号一覧の画面を呼び出す操作が行われると、解析装置2のモニタには、センサN2と無線温湿度センサ6との対応関係の一覧を示した設定画面G02が表示される。設定画面G02において「タグ名称」と表示されている欄の値は、建物Tのフロアに設置された無線温湿度センサ6に各々付与されている固有の識別子を示している。無線温湿度センサ6は、温度測定機能と湿度測定機能の両方を有しており、温度測定値と湿度測定値の両方を出力する。このことから、二つの固有の識別子が一つの無線温湿度センサに対して設定され、それぞれ温度測定機能と湿度測定機能に割り当てられている。また、設定画面G02において「信号名称」と表示されている欄の値は、設定画面G01でフロアN1に配置されたセンサN2に各々付与されている固有の名称を示している。信号名称は、個々の無線温湿度センサに割り当てられる四桁の番号、および2文字(温度または湿度)の組み合わせで構成される。また、設定画面G02において「現在値」と表示されている欄の値は、無線温湿度センサ6で計測される環境データ(温度や湿度のデータ)の実測値の現在の値を示す。各無線温湿度センサ6から発信される計測データが解析装置2で収集されていない状態においては、設定画面G02の「現在値」の欄には「‐」が表示される。各センサN2と無線温湿度センサ6との対応関係は、設定画面G02で何れかの列を選択操作すると呼び出されるセンサ毎の設定画面で変更することが可能である。解析システム1では、各無線温湿度センサ6から個別のタイミングで発信されて解析装置2で五月雨式に収集される各環境データと、建物Tのフロアにおける位置との対応関係が、設定画面G02で設定された対応関係のテーブルを参照することにより特定されることになる。無線温湿度センサ6は、さらにCO
2濃度を測定する機能を有していても良い
。この無線温湿度センサ6は、CO
2濃度測定機能に対して、タグ名称が付与されるとと
もに、信号名称が四桁の番号と2文字(濃度)との組み合わせで構成される。
【0023】
初期設定の内容に関しては以上の通りである。上記一連の初期設定に関わる処理は、主に入力受付部21が司る。解析システム1の使用に際しては、以上のような初期設定が行われた後、室内環境の計測が開始される。すなわち、解析装置2は建物Tのフロアの空調設備に対して稼働指示を発し、フロア空調が行なわれている環境下で、室内環境の計測を開始する。解析装置2は所定時間(例えば、10分)毎に各無線温湿度センサ6から発信される環境データの収集を行う。この収集操作が解析装置2で行われると、無線温湿度センサ6から発信された環境データ(例えば、温度、湿度、CO
2濃度)が、タグ名称と紐
づけられて、収集時刻とともに、解析システム1に設けられている記憶装置(例えば、解
析装置2に内蔵の記録装置や、通信ネットワーク3に接続されているデータ収録用のサーバ)に格納される。
【0024】
図6は、解析装置2に表示されるコンター図の一例を示した第1の図である。解析装置2でコンター図の表示を要求する操作が行われると、解析装置2には、無線温湿度センサ6から収集された環境データの実測値を基に生成されたコンター
図2D画面G03が表示される。コンター
図2D画面G03のコンター図は、フロアの各部の環境データを値に応じて色分けして表現したものであり、
図6に示す例では、フロアの各部の温度が値に応じた濃淡の網掛けで表現されている。
図6に示すコンター
図2D画面G03より、領域R1は、他の領域R2,R3,R4,R5よりも比較的低温であることが判る。また、領域R2は、概ね均一な温度分布であることが判る。また、領域R3は、他の領域R1,R2,R4,R5に比べると全体的に比較的高温であることが判る。また、領域R4は、領域R2と概ね同じような温度であるが、領域R5の暖かい空気の影響を部分的に受けていることが判る。また、領域R5は、中心部が周辺部よりも高温で、温度分布のばらつきが領域R1,R2,R3,R4よりも比較的大きいことが判る。
【0025】
コンター
図2D画面G03のコンター図を生成する処理は、主に演算処理部22が司る。演算処理部22は、コンター図を生成するに際し、次のような処理を行う。すなわち、演算処理部22は、各無線温湿度センサ6から収集される温度等の環境データの実測値と、初期設定で設定されたセンサN2の位置情報とに基づいて、各センサN2の設置箇所間の環境データの推定値を補間計算する。そして、演算処理部22は、フロアの環境データを、実測値や推定値に応じて色分けして表現したコンター図を生成する。画面G03に表示されるコンター図は、画面G03で指定される時刻(例えば、2017/02/01 15:10)のコンター図である。また、画面G03では、環境データのうち、温度を表示することが指定されているので、温度の実測値や推定値に応じて色分けして表現したコンター図が表示処理部23によりモニタに表示される。また、演算処理部22は、生成したコンター図を、画像ファイル(例えば、jpeg形式)として、収集時刻に紐づけて記憶装置に格納する。記憶装置は、解析装置2が通信ネットワーク3に接続されているデータ収録用のサーバである。演算処理部22は、同時に、温度に加え、湿度およびCO
2濃
度の実測値や推定値に応じて色分けして表現したコンター図を作成し、データ収録用のサーバに格納する。これにより、温度と湿度と濃度のコンター図が簡単に切り換えられてモニタ表示できる。このようにして、室内環境の環境データが色(
図6では濃淡)に変換して表示される。演算処理部22は、画面G03で時刻が指定される都度、コンター図の生成を行っても良いし、無線温湿度センサ6から収集される温湿度等の環境データがデータ収録用のサーバに格納される都度、コンター図の生成を行って、画像ファイルをデータ収録用のサーバに格納するようにしても良い。
【0026】
なお、コンター
図2D画面G03のコンター図は、現在の環境データを示す図に限られない。コンター
図2D画面G03には、再生や一時停止、早送り、巻き戻し、早送り再生等のアイコンを配したコントロールボタンCRが配置されており、ポインタPでこれらのアイコンをクリックすることにより、再生状態の変更操作を行うことが可能である。よって、解析装置2の操作者は、例えば、コンター
図2D画面G03で再生ボタン等をクリックし、所望する日時の環境データを示したコンター図を解析装置2にアニメーション表示させることができる。コンター
図2D画面G03のコントロールボタンCRでこれらの操作が行われると、表示処理部23は、演算処理部22によって生成され、記憶装置に蓄積された各時刻のコンター図のイメージデータを記憶装置から読み出し、解析装置2のモニタに出力する。
【0027】
図7は、コントロールボタンCRが操作された際に行われる画像データの処理内容をイメージで示した図である。演算処理部22が逐次生成するコンター図のイメージデータは
、解析システム1に設けられている記憶装置に蓄積される。記憶装置に蓄積されるコンター図のイメージデータは、例えば、10分毎に生成され、蓄積される。そして、コンター
図2D画面G03のコントロールボタンCRが操作されると、解析装置2は、記憶装置に蓄積された各時刻のコンター図のイメージデータを読み出し、モニタに表示する。モニタに表示されるコンター図は、コントロールボタンCRの操作によって指定された再生速度や再生方向に合わせて変化する。例えば、コントロールボタンCRで早送り操作が行われれば、記憶装置に蓄積されている各時刻のコンター図が時刻順に次々と読み出され、モニタに表示されるコンター図が実際の速度よりも数倍から数十倍の速度で再生される。また、例えば、コントロールボタンCRで巻き戻し操作が行われれば、記憶装置に蓄積されている各時刻のコンター図が過去に遡って順に読み出され、モニタに表示されるコンター図が逆再生される。本実施形態の解析システム1では、各時刻のコンター図のイメージデータが記憶装置に蓄積されているため、コントロールボタンCRで早送りや巻き戻し等の操作が行われた際に、各無線温湿度センサ6から収集された環境データを基にしたコンター図の生成処理が不要であり、操作内容に応じた再生速度や再生方向でコンター図を直ちに表示することができる。
【0028】
図6を再度参照しながらコンター
図2D画面G03の説明を続ける。コンター
図2D画面G03には、3D表示ボタンF1やデータ表示切替ボタンF2、色分布表示切替ボタンF3、リアルタイム表示切替ボタンF4が配置されている。3D表示ボタンF1は、解析装置2の操作者が複数のフロアのコンター図を階層的に表示したい場合に操作されるボタンである。また、データ表示切替ボタンF2は、コンター図に重畳的に表示される環境データの数値を表示あるいは非表示したい場合に操作されるボタンである。また、色分布表示切替ボタンF3は、コンター図の色分布を表示あるいは非表示したい場合に操作されるボタンである。また、リアルタイム表示切替ボタンF4は、コンター
図2D画面G03に表示されているコンター図を解析装置2の操作者がリアルタイム表示にしたい場合に操作されるボタンである。このようにして、環境データが色(または濃淡)で、かつ連続的な変化として表示される。解析装置2の操作者は、建物Tの室内環境、すなわち空調状態を視覚的にかつ直感的に把握することができる。解析装置2の操作者は、視覚的にかつ直感的に室内環境の変化を把握できるので、室内環境の温湿度やCO
2濃度の調整指示を解析
装置2から空調設備に対して的確に指示することができる。また、操作者は、エネルギ管理の施策立案も的確に実施できる。
【0029】
ところで、フロアに設置された間仕切りに対する何らの特別な演算処理を施すことなく、単に、各無線温湿度センサ6から収集される環境データの実測値とセンサN2の位置情報とに基づいて、各センサN2の設置箇所間の環境データの推定値を補間計算する場合、次のようなコンター図が生成されることになる。
図8は、比較例に係るコンター図の一例を示した図である。フロアに設置された間仕切りに対する何らの特別な演算処理を施すことなく、単に、各無線温湿度センサ6から収集される環境データの実測値とセンサN2の位置情報とに基づいて、各センサN2の設置箇所間の環境データの推定値を補間計算する場合、間仕切りが発揮する気流の遮断効果は補間計算で考慮されないため、間仕切りの部分における環境データの推定値には、臨界値的な特異な差分は発現しない。すなわち、間仕切りの部分における環境データの推定値は、間仕切りを挟む両側部分で概ね同じような値を取ることになる。したがって、このような推定値を使って生成されるコンター図は、例えば、
図8に示すように、領域R1,R2,R3,R4,R5を仕切る間仕切りの境界が曖昧な図となる。このようなコンター図は、実際の環境データの分布と異なることが客観的に明らかである。したがって、このようなコンター図が解析装置2のモニタに表示されると、解析装置2の操作者が、建物Tのフロアの環境状況を誤認したり、特定のフロアにおける空調設備等の運用課題を見落としたりする可能性がある。そこで、本実施形態の解析システム1では、コンター図を生成する処理に際し、以下のような処理を行っている。
【0030】
<間仕切りによる分断処理の第1例>
図9は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第1の図である。例えば、
図9において符号P01〜P11で示す箇所が、初期設定で指定されたセンサN2の配置箇所と仮定する。そして、符号P09〜P11が配置されている領域が、符号P01〜P08が配置されている領域から間仕切りで分断されたものと仮定する。センサN2や間仕切りN3が初期設定においてこのような位置関係に設定された場合、演算処理部22では、例えば、P01〜P11に配置された複数のセンサN2の中から間仕切りに至近のセンサN2を抽出する処理が行われる。
【0031】
図10は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第2の図である。P01〜P11に配置された複数のセンサN2の中から間仕切りに至近のセンサN2を抽出する処理としては、例えば、各センサN2から間仕切りまでの最短距離をP01〜P11の全てについて算出し、その中から距離が比較的近いものを抽出する処理が挙げられる。例えば、P01〜P11に各々配置されているセンサN2と間仕切りとの位置関係が
図9に示したような位置関係にある場合であれば、間仕切りに至近のセンサN2としては、
図10に示すように、P04〜P11が抽出される。
【0032】
図11は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第3の図である。間仕切りに至近のセンサN2を抽出する処理が行われた後は、間仕切りにおけるセンサN2に至近の位置にそれぞれ仮想センサ(P21〜P24,P27〜P30)を設定する処理が行われる。また、センサN2が配置されている箇所(P01〜P11)、仮想センサが設定されている箇所(P21〜P24,P27〜P30)、及び間仕切りの始点や終点となる箇所(P25,26)を、コンター図の表示に用いる表示モデルの節点として設定し、各節点を結ぶグリッド(
図11の破線)によって画定される三角形の領域(以下、「タイル」という)を縦横に配したポリゴンを生成する処理が行われる。
【0033】
図12は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第4の図である。ポリゴンを生成する処理が行われた後は、ポリゴンの各節点における環境データの推定値を計算する処理が行われる。各仮想センサにおける環境データの推定値は、近隣に実際に配置されているセンサN2の環境データを用いて算出される。例えば、P22に配置されている仮想センサの環境データは、至近のP06に配置されているセンサN2の環境データと同じ値と推定される。P21,P24,P27,P28に各々配置されている仮想センサの環境データの値も、P22に配置されている仮想センサの環境データの値と同様に推定される。また、例えば、3つの箇所(P04,P05,P07)に取り囲まれる箇所(P26)に配置されている仮想センサの環境データの値は、例えば、P04とP05とP07に各々配置されているセンサN2の環境データの値の平均値と推定される。また、2つの箇所(P23,P28)の間に位置(P25)に位置する間仕切りの端部(始点または終点)における環境データの値は、例えば、P23とP28に各々配置されているセンサN2の環境データの値の平均値と推定される。
【0034】
ポリゴンの各節点における環境データの値(実測値や推定値)が全て算出された後は、ポリゴンの各タイル内における環境データの補間計算が行われ、補間計算によって算出された値に沿って模様が連続的に変化する塗装(グラデーション)を施したグラフィックデータがタイル毎に生成される。そして、生成されたグラフィックデータを各タイルに嵌め込んだポリゴンがコンター図として表示される。
【0035】
<間仕切りによる分断処理の第2例>
図13は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第5の図である。コンター図を生成する際の内部処理としては、上記した第1例の態様ではなく、以下に示す第2例
の態様が適用されることもある。すなわち、間仕切りにおける仮想センサの位置を決定する処理としては、上記第1例で示したような至近距離によるものの他に、例えば、至近の一対のセンサN2の中間地点を間仕切りにおける仮想センサの位置として決定する処理が挙げられる。例えば、各センサN2から間仕切りまでの最短距離をP01〜P11の全てについて算出し、その中から距離が比較的近いものを抽出する処理を終えた後、抽出された各センサN2の中間地点を間仕切りにおける仮想センサの位置として決定する。
【0036】
例えば、P01〜P11に各々配置されているセンサN2と間仕切りとの位置関係が
図9に示したような位置関係にある場合であれば、間仕切りに至近のセンサN2としてP04〜P11に配置されているものが抽出される。よって、例えば、抽出されたセンサN2の各位置(P04〜P11)から見て中間地点となる間仕切りの位置を決定される場合、間仕切りにおけるP05とP06の中間地点であれば、
図13に示されるように、P42が仮想センサの位置として決定される。
図13に示すP41、P45,P46もP42と同様に決定される。
【0037】
図14は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第6の図である。間仕切りにおける仮想センサの位置を決定する処理が行われた後は、センサN2が配置されている箇所(P01〜P11)、仮想センサが設定されている箇所(P41、P42,P45,P46)、及び間仕切りの始点や終点となる箇所(P43,44)を、コンター図の表示に用いる表示モデルの節点として設定し、各節点を結ぶグリッド(
図14の破線)によって画定される三角形のタイルを縦横に配したポリゴンを生成する処理が行われる。
【0038】
図15は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第7の図である。ポリゴンを生成する処理が行われた後は、ポリゴンの各節点における環境データの推定値を計算する処理が行われる。本第2例においても、上記第1例と同様、各仮想センサにおける環境データの推定値は、近隣に実際に配置されているセンサN2の環境データを用いて算出されるが、その算出方法が上記第1例とやや異なる。本第2例においては、各仮想センサが近隣の実センサの中間地点に配置されているため、仮想センサにおける環境データの推定値には、一対の実センサが示す実測値の中間値が採用される。例えば、P42に配置されている仮想センサの環境データは、至近のP06およびP05に配置されている各センサN2の環境データの値の中間値と推定される。中間値は、P05に配置されているセンサN2の環境データの値と、P06に配置されているセンサN2の環境データの値の合計値を2で除算した値(すなわち、平均値)を採ってもよいし、或いは、P05から仮想センサまでの距離とP06から仮想センサまでの距離との差分に応じた値を採ってもよい。前者の平均値を採る場合、
図15に示されるように、P05にあるセンサN2の環境データの値が「19.2℃」、P06にあるセンサN2の環境データの値が「18.9℃」であれば、P42にある仮想センサの環境データの推定値は、両者の平均値である「19.1℃」となる。
【0039】
ポリゴンの各節点における環境データの値(実測値や推定値)が全て算出された後は、上記第1例と同様、ポリゴンの各タイル内における環境データの補間計算が行われ、補間計算によって算出された値に沿って模様が連続的に変化する塗装を施したグラフィックデータがタイル毎に生成される。そして、生成されたグラフィックデータを各タイルに嵌め込んだポリゴンがコンター図として表示される。
【0040】
<間仕切りにおける分断処理の第3例>
図16は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第8の図である。本第3例では、間仕切りが第1例や第2例のように閉鎖空間を形成しておらず、単なる衝立状になっている場合を例に説明する。すなわち、センサN2については第1例や第2例と同様、
図16において符号P01〜P11で示す箇所に初期設定で配置されているものの、符号
P01〜P06が配置されている領域と、符号P07〜P11が配置されている領域との間にある間仕切りが両領域を分断していないと仮定する。センサN2や間仕切りN3が初期設定においてこのような位置関係に設定された場合、演算処理部22では、例えば、P01〜P11に配置された複数のセンサN2の中から間仕切りに至近のセンサN2を抽出する処理が行われる。
【0041】
図17は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第9の図である。P01〜P11に配置された複数のセンサN2の中から間仕切りに至近のセンサN2を抽出する処理が行われると、例えば、
図17に示すように、間仕切りに至近のセンサN2としてP04〜P7,P09,P11が抽出される。そして、抽出された各センサN2の中間地点を間仕切りにおける仮想センサの位置として決定する処理が行われる。
図17に示す例であれば、間仕切りに至近のセンサN2として抽出された箇所(P04〜P7,P09,P11)のうち、間仕切りにおけるP05とP06の中間地点P52と、間仕切りにおけるP09とP11の中間地点P51が仮想センサの位置として決定される。
【0042】
図18は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第10の図である。間仕切りにおける仮想センサの位置を決定する処理が行われた後は、センサN2が配置されている箇所(P01〜P11)、仮想センサが設定されている箇所(P51,P52)、及び間仕切りの始点や終点となる箇所(P53)を、コンター図の表示に用いる表示モデルの節点として設定し、各節点を結ぶグリッド(
図18の破線)によって画定される三角形のタイルを縦横に配したポリゴンを生成する処理が行われる。
【0043】
図19は、コンター図を生成する際の内部処理の概要を示す第11の図である。ポリゴンを生成する処理が行われた後は、ポリゴンの各節点における環境データの推定値を計算する処理が行われる。本第3例においても、上記第1例や第2例と同様、各仮想センサにおける環境データの推定値は、近隣に実際に配置されているセンサN2の環境データを用いて算出される。また、間仕切りの端部における環境データの値も、基本的に上記第1例や第2例と同様、例えば、近隣に実際に配置されているセンサN2の環境データの平均値が用いられる。本第3例が特異な点は、間仕切りの端部における環境データの値を算出するに当たって参照される近隣のセンサN2の環境データの個数が、上記第1例や第2例よりも多いことである。すなわち、上記第1例や第2例における間仕切り端部の環境データの値が、近隣の2つのセンサN2の環境データの値の平均値を採っていたのに対し、本第3例における間仕切り端部の環境データの値は、
図19に示されるように、間仕切り端部の近隣4カ所(P05,P04,P07,P09)にある4つのセンサN2の環境データの値の平均値を採る。
【0044】
ポリゴンの各節点における環境データの値(実測値や推定値)が全て算出された後は、上記第1例や第2例と同様、ポリゴンの各タイル内における環境データの補間計算が行われ、補間計算によって算出された値に沿って模様が連続的に変化する塗装を施したグラフィックデータがタイル毎に生成される。そして、生成されたグラフィックデータを各タイルに嵌め込んだポリゴンがコンター図として表示される。
【0045】
本実施形態の解析システム1では、間仕切りにおける分断処理として、上記第1例から第3例までに挙げられるような処理がコンター図の生成処理において適宜実行されることにより、
図6に示したような間仕切りの境界が明確なコンター図が生成されることになる。これにより、解析装置2の操作者は、実際の環境データの分布と概ね同等なコンター図を解析装置2のモニタで参照できる。したがって、建物Tのフロアの環境状況を正確に把握し、フロアの環境に関わる空調設備等の運用課題を的確に捉えることが可能になる。
【0046】
なお、
図6に示したコンター
図2D画面G03において、3D表示ボタンF1が操作さ
れた場合の表示形態について説明する。
図20は、解析装置2に表示されるコンター図の一例を示した第2の図である。コンター
図2D画面G03において3D表示ボタンF1が操作されると、解析装置2には、例えば、建物Tの各フロアのコンター図を積み重ねて斜視図で立体表示したコンター
図3D画面G04が表示される。コンター
図3D画面G04には、各フロアのコンター図の他に、斜視図で示されるコンター図の視点の角度を変更するスライダやボタンを配置した視点調整パネルF6が表示される。またコンター
図3D画面G04には、3D表示ボタンF1に代えて2D表示ボタンF5が表示される。解析装置2の操作者は、コンター
図3D画面G04のコンター図を参照することにより、建物Tの各フロア間を行き来する気流等を把握できる。これにより、建物Tの特定のフロアのみならず、建物T全体における空調設備等の運用課題を把握することが可能になる。
【0047】
なお、上記実施形態では、建物Tに用意された解析装置2にコンター図が表示される形態を採っているが、コンター図は、建物Tから遠隔の地に置かれたコンピュータで生成あるいは表示されてもよい。また、コンター図の生成に用いられる環境データは、建物Tから遠隔の地に置かれたコンピュータに収録されてもよい。また、コンター図は、ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータが協働で生成したものであってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、建物Tのフロアの各部に設置された無線温湿度センサ6から収集される環境データに基づいてコンター図が生成されていたが、コンター図は、有線のセンサから収集される環境データに基づいて生成されてもよい。