特許第6870803号(P6870803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870803誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870803
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/47 20060101AFI20210426BHJP
   C04B 35/49 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C04B35/47
   C04B35/49
   H01B3/12 304
   H01B3/12 338
   H01B3/12 326
   H01B3/12 335
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-69162(P2016-69162)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-14094(P2017-14094A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2019年1月18日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0095992
(32)【優先日】2015年7月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ユン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ソン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャン ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョー、ソー キョン
【審査官】 西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4461679(JP,B2)
【文献】 特開2004−075452(JP,A)
【文献】 特開2002−274938(JP,A)
【文献】 特開2012−156386(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/046554(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
H01B 1/00−1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oで表示される主成分(xの範囲は0≦x≦1.0、yの範囲は0.6≦y≦0.8)を含む誘電体磁器組成物であって、
前記誘電体磁器組成物は、前記主成分100at%に対して、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む0.2〜4.0at%の第1の副成分をさらに含み、
前記誘電体磁器組成物は、前記主成分100at%に対して、Siを含む或いはSiを含むガラス(Glass)化合物である1.0〜3.0at%の第3の副成分をさらに含む、誘電体磁器組成物。
【請求項2】
前記誘電体磁器組成物は、前記主成分100at%に対して、Y、Dy、Ho、La、Ce、Nd、Sm、Gd及びErのうち少なくとも一つを含む4.0at%以下の第2の副成分をさらに含む、請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項3】
前記誘電体磁器組成物は、可変電界(a variable electric field)が印加されるとき、誘電率が一定である、請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項4】
誘電体層と第1及び第2の内部電極が交互に積層されたセラミック本体を含み、
前記誘電体層は、(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oで表示される主成分(xの範囲は0≦x≦1.0、yの範囲は0.6≦y≦0.8)を含む誘電体磁器組成物を含み、
前記誘電体磁器組成物は、前記主成分100at%に対して、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つを含む0.2〜4.0at%の第1の副成分をさらに含み、
前記誘電体磁器組成物は、前記主成分100at%に対して、Siを含む或いはSiを含むガラス(Glass)化合物である1.0〜3.0at%の第3の副成分をさらに含む、積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記誘電体磁器組成物は、前記主成分100at%に対して、Y、Dy、Ho、La、Ce、Nd、Sm、Gd及びErのうち少なくとも一つを含む4.0at%以下の第2の副成分をさらに含む、請求項4に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記誘電体磁器組成物は、可変電界(a variable electric field)が印加されるとき、誘電率が一定である、請求項4または5に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流(dc)電界が印加される場合に誘電率の変化のない高誘電率誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタ、又はサーミスタなどのセラミック材料を用いる電子部品は、セラミック材料からなるセラミック本体、本体の内部に形成された内部電極、及び上記内部電極と接続されるようにセラミック本体の表面に設置された外部電極を備える。
【0003】
セラミック電子部品のうち積層セラミックキャパシタは、積層された複数の誘電体層、一つの誘電体層を介して対向配置される内部電極、上記内部電極に電気的に接続された外部電極を含む。
【0004】
従来の積層セラミックキャパシタなどに用いられる誘電体材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)に基づく強誘電体材料であり、常温で高い誘電率を有し且つ損失率(Dissipation Factor)が比較的小さく絶縁抵抗特性に優れるという特徴がある。
【0005】
しかしながら、上記誘電体材料を強誘電体(Ferroelectric)材料として用いる場合、粒子サイズが小さくなるに従って誘電率が減少し、時間の経過に伴って誘電率が減少するエージング(Aging)特性があり、温度変化による誘電率の変化が大きいことから125℃以上の高温で誘電率が急激に減少し、絶縁抵抗が低いことから150℃以上の高温で用いることが困難であるという問題がある。
【0006】
また、実際のデバイス回路において、キャパシタは大部分がdc電圧の印加された環境で用いられているため、dc電界で高い容量を具現することが重要である。
【0007】
キャパシタの開発が行われるにつれて単位厚さ当たりに印加されるdc電界の大きさが次第に大きくなっている状況で、BaTiOのような強誘電体材料を適用する場合は、薄層化によるキャパシタの高容量化が進行されるほど同一のdc電圧下での有効容量の減少幅も次第に大きくなるという問題がある。
【0008】
このような問題を根本的に解決するためには、dc電界による誘電率の変化のない常誘電体(Paraelectric)材料を適用する必要がある。
【0009】
このようにdc−bias特性に優れた誘電体材料は、ESD(Electrostatic discharge)環境でも耐久性が強いのみならずアコースティックノイズ(Acoustic noise)も小さいという長所があるため、このような特性が求められるキャパシタ製品に有用に適用されることができる。
【0010】
しかしながら、現在、キャパシタ産業で広く用いられているC0G系常誘電体の場合、誘電率が30程度と低すぎ、高容量MLCCを製作することが困難であるという問題がある。
【0011】
したがって、上記特性を具現し且つMLCCの高容量化のためには誘電率の高い常誘電体材料が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】日本特開2012−156386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、直流(dc)電界が印加される場合に誘電率の変化のない高誘電率誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oで表示される母材粉末(上記xの範囲は0≦x≦1.0、yの範囲は0.3≦y≦0.8)を含む誘電体磁器組成物が提供される。
【0015】
本発明の他の実施形態によれば、誘電体層と第1及び第2の内部電極が交互に積層されたセラミック本体を含み、上記誘電体層は、(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oで表示される母材粉末(上記xの範囲は0≦x≦1.0、yの範囲は0.3≦y≦0.8)を含む誘電体磁器組成物を含む積層セラミックキャパシタが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックキャパシタは、DC−bias特性に優れた、即ち、直流(DC)電界が印加される場合に誘電率の変化がなく、容量の減少がないため、高容量特性を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例及び比較例によるAC電界に対する誘電率の変化を示すグラフである。
図2】本発明の実施例及び比較例によるDC電界に対する容量の変化を示すグラフである。
図3】本発明の実施例及び比較例による温度に対する誘電率の変化を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。
図5図4のA−A'線に沿う積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0019】
本発明は誘電体磁器組成物に関するものであり、誘電体磁器組成物を含む電子部品としてはキャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ又はサーミスタなどがあり、以下では、誘電体磁器組成物及び電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明する。
【0020】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oで表示される母材粉末(上記xの範囲は0≦x≦1.0、yの範囲は0.3≦y≦0.8)を含む。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、上記母材粉末におけるZr/Tiの比率又はy値を調節することにより、C0G系常誘電体の誘電率の約3倍である90以上の高い誘電率が得られる。
【0022】
また、X8R以上(−55℃〜175℃)での静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)、及びac電界及びdc電界による誘電率の変化が非常に小さい特性を具現することができる。
【0023】
また、後述するように、上記母材粉末にSiOを含む焼結助剤及びMnO及びYを添加することにより、Ni内部電極の使用可能な耐還元特性、高い絶縁抵抗、及び良好な信頼性を具現することができる。
【0024】
以下、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0025】
a)母材粉末
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oで表示される母材粉末(上記xの範囲は0≦x≦1.0、yの範囲は0.3≦y≦0.8)を含む。
【0026】
上記式において、xは0≦x≦1.0を満たし、yは0.3≦y≦0.8を満たすことができる。
【0027】
一般に、ESD(Electrostatic Discharge)保護特性を有する積層セラミックキャパシタに適用される誘電体磁器組成物は、強誘電体としてX7R特性を満たす誘電体材料又はC0G系の常誘電体材料が用いられている。
【0028】
しかしながら、強誘電体材料を適用する場合は、高い誘電率の確保が可能であるため、誘電体の厚さを厚く設計することができるという長所があるが、ESD(Electrostatic Discharge)評価時、高電界環境下で電歪クラックの発生又はDC−bias特性による実容量の減少によって実際のチップにはより高い電圧が印加されるため、ESD特性に弱いという問題がある。
【0029】
また、C0G系の常誘電体材料を適用する場合は、誘電率が低いことからキャパシタの容量確保のためには誘電体の薄層化が伴われなければならず、これにより、耐電圧特性が低下するため、ESD特性を満たすことができないという問題がある。
【0030】
また、一般にキャパシタ産業で広く用いられているC0G系常誘電体の場合は、誘電率が30程度と低すぎて高容量の積層セラミックキャパシタを製作することが困難であるという問題がある。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、DC−bias特性に優れた常誘電体材料を用い、且つ常温誘電率を一般的な常誘電体材料に比べて約3倍以上向上させた母材粉末を含む。
【0032】
即ち、本発明の一実施形態による誘電体組成物は、DC−bias特性に優れた、即ち、直流(DC)電界が印加される場合に誘電率の変化がなく、容量の減少がないため、高容量特性を具現することができる。
【0033】
上記常誘電体材料の常温誘電率を高くするために、上記材料の固溶元素のうちZr/Tiの比率を調節することにより、これを具現することができる。
【0034】
即ち、本発明の一実施形態によれば、上記Zr/Tiの比率を示すyが0.3≦y≦0.8の範囲を満たすように調節することにより、一般的な常誘電体材料に比べて誘電率を3倍以上高くすることができる。
【0035】
具体的には、上記Zr/Tiの比率を示すyが0.3≦y≦0.8の範囲を満たすように調節することにより、既存のC0G材料に比べて誘電率が高く、dc−bias特性に優れ、絶縁抵抗と耐電圧が高く、信頼性に優れ且つX8R以上(−55℃〜175℃)の温度特性を具現することができる。
【0036】
上記yが0.3未満の場合は、誘電率が低いことから目標誘電率である90以上の誘電率が得られず、このような容量を得るために薄膜で誘電体層を形成する場合は、耐電圧特性が低下するという問題がある。
【0037】
上記yが0.8を超える場合は、X8R以上(−55℃〜175℃)の温度特性を具現することができない。
【0038】
特に、本発明の一実施形態によれば、上記Zr/Tiの比率を示すyが0.2≦y≦0.9の範囲を満たすように調節することにより、常温絶縁抵抗に優れることができる。
【0039】
但し、上記xとyの値が同一の場合は、常温絶縁抵抗が低下する可能性があるため、本発明の一実施形態によれば、上記xとyは異なる値を有する。
【0040】
即ち、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の母材粉末は、DC−bias特性に優れた常誘電体材料における各成分の組成比を一定の範囲に調節することにより、常温誘電率が高く、DC−bias特性に優れることができる。
【0041】
常温誘電率が従来の常誘電体材料より高いため、誘電体層の厚さをより厚く設計することができ、優れたDC−bias特性が発現されるため、ESD保護特性にも優れることができる。
【0042】
上記母材粉末の平均粒径は、特に制限されず、1000nm以下であればよい。
【0043】
b)第1の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、第1の副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物又は炭酸塩をさらに含むことができる。
【0044】
上記第1の副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物又は炭酸塩は、上記母材粉末100at%に対して0.2〜4.0at%の含量で含まれることができる。
【0045】
上記第1の副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、高温耐電圧特性を向上させる役割をする。
【0046】
上記第1の副成分の含量及び後述の第2の副成分の含量は、母材粉末100at%に対して含まれる量であり、特に、各副成分が含む金属イオンの原子%で定義されることができる。
【0047】
上記第1の副成分の含量が0.2at%未満の場合は、耐還元性及び信頼性が低下する可能性がある。
【0048】
上記第1の副成分の含量が4.0at%を超える場合は、焼成温度の増加及び高温耐電圧の低下などの副作用が発生する可能性がある。
【0049】
特に、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、母材粉末100at%に対して0.2〜4.0at%の含量を有する第1の副成分をさらに含むことができ、これにより、低温焼成が可能であり、高い高温耐電圧特性が得られる。
【0050】
c)第2の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100at%に対して、Y、Dy、Ho、La、Ce、Nd、Sm、Gd及びErのうち少なくとも一つを含む酸化物又は炭酸塩である4.0at%以下の第2の副成分をさらに含むことができる。
【0051】
上記第2の副成分は、上記母材粉末100at%に対して4.0at%以下で含まれることができる。
【0052】
上記第2の副成分の含量は、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区分せず、第2の副成分に含まれたY、Dy、Ho、La、Ce、Nd、Sm、Gd及びErのうち少なくとも一つ以上の元素の含量を基準とすることができる。
【0053】
例えば、上記第2の副成分に含まれたY、Dy、Ho、La、Ce、Nd、Sm、Gd及びErのうち少なくとも一つ以上の元素の含量の総和は、上記母材粉末100at%に対して4.0at%以下であればよい。
【0054】
上記第2の副成分は、本発明の一実施形態において誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの信頼性の低下を防ぐ役割を行うことができる。上記第2の副成分が上記母材粉末100at%に対して4.0at%以下で含まれる場合、高い誘電率が具現され且つ高温耐電圧特性が良好な誘電体磁器組成物を提供することができる。
【0055】
上記第2の副成分の含量が上記母材粉末100at%に対して4.0at%を超えて含まれる場合、信頼性が低下したり、誘電体磁器組成物の誘電率が低くなり高温耐電圧特性が悪くなる問題が発生する可能性がある。
【0056】
d)第3の副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体磁器組成物は、上記母材粉末100at%に対して、Siを含む酸化物又は炭酸塩或いはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.5〜4.0at%の第3の副成分をさらに含むことができる。
【0057】
上記Siを含む酸化物又は炭酸塩或いはSiを含むガラス(Glass)化合物の形である第3の副成分が上記誘電体磁器組成物に添加されることにより、焼結温度を低くし、焼結性を促進することができる。
【0058】
上記第3の副成分の含量が0.5at%未満の場合は、誘電体層の緻密度が低くなり、耐電圧特性が低下する可能性がある。
【0059】
上記第3の副成分の含量が4.0at%を超える場合は、二次相の生成によって耐電圧特性が低下する可能性がある。
【0060】
図1は、本発明の実施例及び比較例によるAC電界に対する誘電率の変化を示すグラフである。
【0061】
図1は、比較例である、強誘電体BaTiO材料を適用したX7R(−55℃〜125℃)特性の積層セラミックキャパシタの試験片と、本発明の実施例である、誘電率130の常誘電体(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oを適用した積層セラミックキャパシタの試験片のAC電界の大きさによる誘電率の変化を示す。
【0062】
図1を参照すると、BaTiO材料を適用した比較例の場合に比べて、常誘電体(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oを適用した実施例の場合は、AC電界の大きさによる誘電率の変化が殆どないことが確認できる。
【0063】
図2は、本発明の実施例及び比較例によるDC電界に対する容量の変化を示すグラフである。
【0064】
図2は、比較例である、強誘電体BaTiO材料を適用したX7R(−55℃〜125℃)特性の積層セラミックキャパシタの試験片と、本発明の高誘電率常誘電体(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oを適用した積層セラミックキャパシタの試験片のDC電界の大きさによる容量の変化を示す。
【0065】
図2を参照すると、BaTiO材料を適用した比較例の場合に比べて、常誘電体(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oを適用した実施例の場合は、DC電界の大きさによる誘電率の変化が殆どなく容量の変化がないことが確認できる。
【0066】
図3は、本発明の実施例及び比較例による温度に対する誘電率の変化を示すグラフである。
【0067】
図3は、比較例である、強誘電体BaTiO材料を適用したX7R(−55℃〜125℃)特性の積層セラミックキャパシタの試験片と、本発明の高誘電率常誘電体(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oを適用した積層セラミックキャパシタの試験片の温度による誘電率の変化を示す。
【0068】
図3を参照すると、BaTiO材料を適用した比較例の場合に比べて、常誘電体(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oを適用した実施例の場合は、150℃以上の静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)に優れ、X8R以上(−55℃〜175℃)の特性を具現することができることが分かる。
【0069】
図4は、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100を示す概略的な斜視図であり、図5は、図4のA−A'線に沿う積層セラミックキャパシタ100を示す概略的な断面図である。
【0070】
図4及び図5を参照すると、本発明の他の実施例による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111と第1及び第2の内部電極121、122が交互に積層されたセラミック本体110を有する。セラミック本体110の両端部には、セラミック本体110の内部に交互に配置された第1及び第2の内部電極121、122とそれぞれ導通する第1及び第2の外部電極131、132が形成されている。
【0071】
セラミック本体110は、その形状に特に制限はないが、一般に直方体状であればよい。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適切に変更可能であり、例えば、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であればよい。
【0072】
誘電体層111の厚さはキャパシタの容量設計に合わせて任意に変更可能であり、本発明の一実施例において焼成後の誘電体層の厚さは1層当たり好ましくは0.1μm以上である。
【0073】
薄すぎる厚さの誘電体層は一層内に存在する結晶粒数が少なく、信頼性に悪影響を及ぼすため、誘電体層の厚さは0.1μm以上であればよい。
【0074】
第1及び第2の内部電極121、122は、各端面がセラミック本体110の反対側の両端部の表面に交互に露出するように積層されている。
【0075】
上記第1及び第2の外部電極131、132は、セラミック本体110の両端部に形成され、交互に配置された第1及び第2の内部電極121、122の露出端面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成する。
【0076】
上記第1及び第2の内部電極121、122に含有される導電性材料は、特に限定されないが、本発明の一実施形態による誘電体層の構成材料が常誘電体材料を有することから貴金属を通常用いることができ、本発明の一実施形態ではニッケル(Ni)内部電極を用いることもできる。
【0077】
上記導電性材料として用いる貴金属は銀(Ag)又はパラジウム(Pd)合金であればよい。
【0078】
上記第1及び第2の内部電極121、122の厚さは、用途などに応じて適切に決定可能であり、特に制限されないが、例えば、0.1〜5μm又は0.1〜2.5μmであればよい。
【0079】
上記第1及び第2の外部電極131、132に含有される導電性材料としては、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、又はこれらの合金を用いることができる。
【0080】
上記第1及び第2の外部電極131、132の厚さは、用途などに応じて適切に決定可能であり、特に制限されないが、例えば、10〜50μmであればよい。
【0081】
上記セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を含むことができる。
【0082】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)Oで表示される母材粉末(上記xの範囲は0≦x≦1.0、yの範囲は0.3≦y≦0.8)を含むことができる。
【0083】
上記誘電体磁器組成物は、上述した本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の特徴と同一であるため、ここではその具体的な説明を省略する。
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、これは、発明の具体的な理解のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0085】
母材粉末である主成分(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O粉末は、次のように固相法を適用して製造された。
【0086】
出発原料はCaCO、SrCO、ZrO、TiOである。
【0087】
まず、これらの粉末を設計比率の通りに秤量してボールミルで混合し、800〜900℃の範囲にか焼して、平均粒子サイズ300nmの(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O粉末を準備した。
【0088】
下記表1と表2の各実験例に明示された組成比に合わせて主成分(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O粉末(母材粉末)とそれぞれの副成分MnO、Y、SiOを秤量し、主成分と副成分が含まれた原料粉末に、ジルコニアボールを混合/分散メディアとして用いてエタノール/トルエンと分散剤及びバインダーを混合した後、20時間ボールミリングした。
【0089】
製造されたスラリーをドクターブレード方式のコーターを用いて5.0μmと10〜13μmの厚さにして成形シートを製造した。
【0090】
成形シートにNi内部電極印刷をした。
【0091】
カバー用シート(10〜13μmの厚さ)を25層ずつ積層して上カバー及び下カバーを製作し、内部電極の印刷された21層の活性シートを加圧し積層してバー(bar)を製作した。
【0092】
この圧着バーを、切断機を用いて3216(長さ×幅×厚さ:3.2mm×1.6mm×1.6mm)サイズのチップに切断した。
【0093】
製作が完了したチップをか焼し、還元雰囲気(1%H/99%N、HO/H/N雰囲気)で1230〜1270℃の温度で2時間焼成した後、1000℃で窒素(N)雰囲気で再酸化を3時間行って熱処理した。
【0094】
焼成されたチップに対して銅(Cu)ペーストを用いてターミネーション工程及び電極焼成を施して外部電極を形成した。
【0095】
上記のように完成されたプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto−type MLCC)の試験片に対して容量、DF、絶縁抵抗、TCC及び高温150℃での電圧step増加による抵抗劣化挙動などを評価した。
【0096】
積層セラミックキャパシタ(MLCC)チップの常温静電容量及び誘電損失は、LCR−meterを用いて1kHz、AC0.5V/μmの条件で容量を測定した。
【0097】
静電容量と積層セラミックキャパシタ(MLCC)チップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数から積層セラミックキャパシタ(MLCC)チップの誘電率を計算した。
【0098】
常温絶縁抵抗(IR)は、10個ずつのサンプルを取ってDC10V/μmを印加した状態で60秒経過した後に測定した。
【0099】
温度による静電容量の変化は、−55℃から175℃の温度範囲で測定した。
【0100】
高温IR昇圧実験では、170℃で電圧を10V/μmずつ印加して電圧ステップを増加させながら抵抗劣化挙動を測定した。各段階の時間は10分であり、5秒間隔で抵抗値を測定した。
【0101】
高温IR昇圧実験から高温耐電圧を導出した。これは、焼成後に厚さ3.2μmの20層の誘電体層を有する3216サイズのチップに対して175℃で5V/μmのDC電圧を10分間印加し電圧ステップ(Voltage step)を継続的に増加させながら測定したときにIRが10Ω以上になる電圧を意味する。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
上記表1を参照すると、実験例1〜10は、主成分(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O粉末に対して第1の副成分MnO及び第3の副成分SiOの含量がそれぞれ0.5at%及び0.5at%であり、第1の主成分のSr含量x=0のときの、Ti含量yの変化例を示し、表2の1〜10は、これらの実験例によるproto−typeの積層セラミックキャパシタの特性を示す。
【0105】
表1及び表2を参照すると、Ti含量yが増加するにつれて常温誘電率が増加し、且つ高温部175℃でのTCCであるTCC(175℃)が低下し、高温175℃での耐電圧特性が低くなることが分かる。
【0106】
Ti含量yが0.3以上のときから90以上の誘電率が得られるが、0.9以上と過量の場合にはTCC(175℃)が±15%の範囲を外れるという問題が発生する。
【0107】
Ti含量yが0.3≦y≦0.8の範囲で本発明の目標特性である90以上の誘電率、1000以上のRC値、X9R温度特性、及び50V/μm以上の高温(175℃)耐電圧の全ての特性を同時に具現することができるため、適正なy含量の範囲が0.3≦y≦0.8であることが分かる。
【0108】
表1の実験例11〜15は、(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O粉末に対して第1の副成分MnO及び第3の副成分SiOの含量がそれぞれ0.5at%及び0.5at%であり、第1の主成分のTi含量y=0.6のときの、Sr含量xの変化例を示し、表2の11〜15は、これらの実験例によるproto−typeの積層セラミックキャパシタの特性を示す。
【0109】
Sr含量の全範囲0≦x≦1.0において誘電率、DF、常温RC値、TCC(175℃)、及び高温(175℃)耐電圧の特性が同じような水準で具現され、本発明の目標特性を満たすことが分かる。
【0110】
したがって、適正なSr含量のx範囲が0≦x≦1.0を満たすことが分かる。
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
表3の実験例16〜22は、主成分(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O粉末においてx=0.4、y=0.6であり、第3の副成分SiOの含量が0.5のときの、第1の副成分Mnの含量の変化による実験例を示し、表4の16〜22は、これらの実験例によるproto−typeの積層セラミックキャパシタの特性を示す。
【0114】
Mnの含量が0.1at%と少ない場合(実験例16)は、高温(175℃)耐電圧が35V/μmと低くなるという問題があり、Mnの含量が0.2at%以上増加する場合は、高温(175℃)耐電圧が50V/μm以上に上昇(実験例17〜21)し、Mnの含量が5at%と過量の場合(実験例22)は、二次相などが生成されて高温(175℃)耐電圧が50V/μm未満と再び低くなるという問題が発生する。
【0115】
したがって、第1の副成分Mnの適正含量は0.2〜4at%であることが分かる。
【0116】
表3の実験例27〜30は、主成分(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O粉末においてx=0.4、y=0.6であり、第1の副成分Mnの含量が2.0at%であり、第3の副成分SiOの含量が0.5at%のときの、第2の副成分Yの含量の変化による実験例を示し、表4の27〜30は、これらの実験例によるproto−typeの積層セラミックキャパシタの特性を示す。
【0117】
Yの含量が増加するにつれて高温(175℃)耐電圧が上昇してから再び減少し、at%を基準に6at%と過量の場合(実験例30)は、二次相などの生成によって高温(175℃)耐電圧が50V/μm未満と低くなるという問題がある。
【0118】
したがって、第2の副成分Yの適正含量は、at%を基準に0at%より大きく4at%以下であることが分かる。
【0119】
表3の実験例31〜34は、主成分(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O粉末においてx=0.4、y=0.6であり、第1の副成分Mnの含量が2.0at%であり、第3の副成分SiOの含量が0.5at%であり、且つ第2の副成分YをDyに変更するか又はYとDyを共に添加したときの実験例を示し、表4の31〜34は、これらの実験例によるproto−typeの積層セラミックキャパシタの特性を示す。
【0120】
at%を基準に、第2の副成分全体の含量が同一の場合においてY又はDy単独の場合又はYとDyが共に添加された場合の特性はほぼ同一であり、第2の副成分Dyの含量が6at%と過量の場合(実験例33)は同様に高温(175℃)耐電圧が50V/μm未満と低くなることが分かる。
【0121】
表3の実験例35〜39は、主成分(Ca1−xSr)(Zr1−yTi)O粉末においてx=0.4、y=0.6であり、第1の副成分Mnの含量が2.0、第2の副成分Yがat%で2.0at%のときの、第3の副成分SiOの含量の変化による実験例を示し、表4の35〜39は、これらの実験例によるproto−typeの積層セラミックキャパシタの特性を示す。
【0122】
SiO含量が0.25at%と非常に小さい場合(実験例35)は、誘電体層の緻密度が低く、高温(175℃)耐電圧が50V/μm未満と低くなるという問題がある。
【0123】
SiO含量が増加するにつれて高温(175℃)耐電圧が増加してから減少することが確認できる。SiO含量が5at%と過量の場合は、二次相の生成などによって同様に高温(175℃)耐電圧が50V/μm未満と低くなるという問題があることが分かる。
【0124】
SiO含量が0.5〜4.0at%の範囲で本発明の全ての目標特性を同時に具現することができるため、第3の副成分SiOの適正含量は0.5〜4.0at%であることが分かる。
【0125】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0126】
100 積層セラミックキャパシタ
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 第1及び第2の内部電極
131、132 第1及び第2の外部電極
図1
図2
図3
図4
図5