(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者からの血液サンプル中の静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーをアッセイするための方法であって、前記方法は、一方では前記サンプル中のDダイマーのレベル(DdiS)を得るための前記サンプル中のDダイマーの前記アッセイを含み、他方ではこの同じサンプル中のフィブリン形成の動的測定を含み、前記動的測定は以下のステップ、
a)前記サンプル中の凝固の活性化をトリガすることなく開始するステップと、
b)ステップa)で得られた混合物をインキュベートし、前記インキュベートされたサンプル中でトロンビンの生成およびフィブリン血餅の形成をトリガするステップと、
c)前記フィブリン血餅を形成するb)で得られた前記サンプルの少なくとも1つの特性の時間変動を測定するステップと、
d)c)で分析された前記フィブリン血餅の形成プロファイルを確立し、前記プロファイルから、プロファイル曲線の接線の変曲点において測定されたフィブリン形成時間(FFT)と、フィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定された前記サンプルの特性の値(Vp(TA))とを抽出するステップと、
e)血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベル(R)を算出するステップであって、
e1)凝固亢進の関数として調整されたDダイマーのレベル(DdiS/HC)を得るために、d)で定められたFFTを用いて前記凝固亢進によって生成されたDダイマーのレベルの関数として前記サンプルのDダイマーのレベル(DdiS)を調整するステップ、および
e2)Rを得るために、d)で定められたVp(TA)を用いて炎症によって生成されたDダイマーのレベルの関数としてe1)で得られた調整DダイマーのレベルDdiS/HCを調整するステップ
によって算出するステップと、
f)e)で得られた前記フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルRを、閾値に対して比較するステップと、
g)e)で得られた前記フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルRと、前記サンプルのDダイマーのレベル(DdiS)とを用いて、凝固活性化状態において存在する線溶亢進によって生成されたフィブリノゲン分解産物のレベル(FgDP(HF))を定めるステップと、
h)g)で得られた前記FgDP(HF)レベルを閾値に対して比較し、d)で得られた前記フィブリン形成時間(FFT)を閾値に対して比較するステップと
を含む、方法。
患者からの血液サンプル中の静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーをアッセイするための方法であって、前記方法は、一方では前記サンプル中のDダイマーのレベル(DdiS)を得るための前記サンプル中のDダイマーの前記アッセイを含み、他方ではこの同じサンプルのフィブリン形成の動的測定を含み、前記動的測定は以下のステップ、
a)前記サンプル中の凝固の活性化をトリガすることなく開始するステップと、
b)ステップa)で得られた混合物をインキュベートし、前記インキュベートされたサンプル中でトロンビンの生成およびフィブリン血餅の形成をトリガするステップと、
c)前記フィブリン血餅を形成するb)で得られた前記サンプルの少なくとも1つの特性の時間変動を測定するステップと、
d)c)で分析された前記フィブリン血餅の形成プロファイルを確立し、このプロファイルから、前記プロファイルの曲線の接線の変曲点において測定されたフィブリン形成時間(FFT)と、フィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定された前記サンプルの特性の値(Vp(TA))とを抽出するステップと、
e’)血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベル(R)を算出するステップであって、
e’1)炎症に対して調整されたDダイマーのレベル(DdiS/I)を得るために、d)で定められたVp(TA)を用いて炎症によって生成されたDダイマーのレベルの関数として前記サンプルのDダイマーのレベルDdiSを調整するステップ、および
e’2)低いDダイマーレベルに対してe’1)で得られた炎症に対して調整されたDダイマーのレベル(DdiS/I)を補正するステップ
によって算出するステップ、ならびに
炎症の関数として前記患者からの前記サンプルを分類するステップと、
f’)e)で得られた前記フィブリンの前記分解の結果もたらされたDダイマーのレベルRを、閾値に対して比較するステップと、
g’)前記サンプル中のDダイマーのレベル(DdiS)およびe’)で得られたレベルRを用いるか、またはe’1)で得られた炎症の関数として調整されたDダイマーのレベルDdiS/Iおよびe’)で得られたレベルRを用いて、線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベル(Ddi(HF))を定めるステップと、
h’)g’)で得られたレベルDdi(HF)を閾値に対して比較し、TA/FFT比率を閾値に対して比較するステップであって、ここでTAはd)で得られた前記フィブリン重合プラトーに達する時間であり、FFTはd)で得られた前記フィブリン形成時間である、ステップと
を含む、方法。
ステップb)において、トロンビン生成およびフィブリン血餅形成をトリガするステップは、インキュベートされた前記サンプルにカルシウムイオンを加えるステップによって行われることを特徴とする、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
b)で得られた前記サンプルの少なくとも1つの特性の時間変動を測定するステップは、トロンボエラストグラフィ、レオメトリ、または画像分析によって行われることを特徴とする、請求項38または請求項39に記載の方法。
前記患者が高齢の個体であるか、がんである患者であるか、感染症である患者であるか、または血栓形成傾向である患者であるとき、VTEに対して特異的なDダイマーを前記アッセイするデバイスは、請求項11〜20および21〜42のいずれか一項に記載の方法を行うことを特徴とする、請求項43に記載の機器。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに、本発明者らは、凝固活性化、炎症および過剰な線維素溶解に由来するDダイマーを、血管内フィブリン分解に由来する血栓症に対して特異的なDダイマーと区別し、かつそれらを定量的に測定できる方法を開発した。加えてこの方法は、それらのDダイマーを自動の実験用デバイス、遠隔生物学デバイス、またはポータブルデバイスにおいて緊急の状況で定めることを可能にする。開発された方法は信頼性が高く、簡単であり、実施が迅速であり、かつ再現性がある。さらに、本発明者らはこの方法を洗練することにより、この方法の改変バージョンにおいて、この方法は年齢にかかわらずすべての患者に適用でき、かつ偽陰性の数を低減して、根底にある血栓形成傾向の事象、亜区域性または重篤でない肺塞栓症の事象、心筋梗塞の事象、がんの事象、感染症の事象、および妊娠の事象における静脈血栓症、ならびに根底に炎症の感受性を有する高齢の対象に対する静脈血栓症を検出することを可能にする。最後に、一般的なアッセイ方法とは反対に、本発明による方法は年齢の関数としての任意の調整を必要としない。
【0020】
本発明による方法は、3つの知見に基づくものである。凝固活性化状態とは反対に、血栓症においては凝固亢進および線溶亢進が存在しないか、または低減している。他方で、主に重要なのは炎症性態である。
【0021】
より具体的には、第1の側面において、本発明は、患者からの血液サンプル中の静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーをアッセイするための方法の第1のバージョンに関し、前記方法は、一方ではサンプル中のDダイマーのレベル(Ddi
S:D−dimers in the sample)を得るためのサンプル中のDダイマーのアッセイを含み、他方ではこの同じサンプル中のフィブリン形成の動的測定を含み、前記動的測定は以下のステップを含む。
a)サンプル中の凝固の活性化をトリガすることなく開始するステップと、
b)ステップa)で得られた混合物をインキュベートし、インキュベートされたサンプル中でトロンビンの生成およびフィブリン血餅の形成をトリガするステップと、
c)フィブリン血餅を形成するb)で得られたサンプルの少なくとも1つの特性の時間変動を測定するステップと、
d)c)で分析されたフィブリン血餅の形成プロファイルを確立し、このプロファイルから、プロファイル曲線の接線の変曲点において測定されたフィブリン形成時間(FFT:fibrin formation time)と、フィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定されたサンプルの特性の値(Vp
(TA))とを抽出するステップと、
e)血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベル(R)を算出するステップであって、
e1)凝固亢進(hypercoagulation)の関数として調整されたDダイマーのレベル(Ddi
S/HC)を得るために、d)で定められたFFTを用いて凝固亢進によって生成されたDダイマーのレベルの関数としてサンプルのDダイマーのレベル(Ddi
S)を調整するステップ、および
e2)Rを得るために、d)で定められたVp
(TA)を用いて炎症によって生成されたDダイマーのレベルの関数としてe1)で得られた調整DダイマーのレベルDdi
S/HCを調整するステップによって算出するステップと、
f)e)で得られたフィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルRを、閾値に対して、好ましくは0.5μg/mlの閾値に対して比較するステップと、
g)e)で得られたフィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルRと、サンプルのDダイマーのレベル(Ddi
S)とを用いて、凝固活性化状態において存在する線溶亢進(hyperfibrinolysis)(FgDP
(HF))によって生成されたフィブリノゲン分解産物のレベルを定めるステップと、
h)g)で得られたFgDP
(HF)レベルを閾値に対して比較し、d)で得られたフィブリン形成時間(FFT)を閾値に対して比較するステップとである。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第1のバージョンは、ステップe)において、初期フィブリノゲン換算量(FEU:fibrinogen equivalent units)で表されるレベルRを算出するステップが、次のステップによって行われることを特徴とする。
e1)次の等式を用いて、凝固亢進の関数として調整されたDダイマーのレベル(Ddi
S/HC)を算出するステップであって、
【0023】
【数1】
【0024】
ここで対照時間(Control Time)とは、ステップa)〜d)に従って測定された、血栓症の疑いのない健康な患者からのサンプルの平均フィブリン血餅形成時間である、ステップ、および
e2)次の等式を用いてレベルRを算出するステップであって、
【0025】
【数2】
【0026】
ここで[Fib]
(Vp(TA))は、次の等式を有する標準曲線における特性の値Vp
(TA)に対して演繹されるフィブリノゲン濃度であり、
y=aln(x)−b、
ここで
yはフィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定された特性の値であり、
xはフィブリノゲン濃度であり、
aおよびbは、フィブリンプラトーのレベルとフィブリノゲン濃度とを結び付ける対数方程式の定数であり、
標準曲線は血液サンプルに対して確立されたものであり、この血液サンプルのフィブリノゲン濃度が定められており、かつその特性の値(Vp
(TA))がステップa)〜d)によって定められている、ステップ。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第1のバージョンは、ステップf)において、e)で得られたレベルRが閾値未満、好ましくは0.5μg/mlの閾値未満であることは、その患者における血栓症を除外することを可能にし、レベルRが閾値より高く、好ましくは0.5μg/mlの閾値よりも高いことは、その患者における血栓症の可能性を示すことを特徴とする。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第1のバージョンは、ステップg)が次のステップで構成されるステップを含むことを特徴とする。
g1)既知のレベルのFgDPおよび既知のレベルのDダイマーを有する血液サンプルを用いて確立された標準曲線において、サンプル中のDダイマーのレベル(Ddi
S)に対応するFgDPのレベルを定めるステップ、
g2)g1)で用いられた標準曲線において、ステップe)で得られた調整されたDダイマーのレベル(R)に対応するFgDPのレベルを定めるステップ、および
g3)g1)で得られたFgDPのレベルからg2)で得られたFgDPのレベルを引くことによって、線溶亢進によって生成されたFgDPのレベル(FgDP
(HF))を定めるステップ。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第1のバージョンは、ステップh)が次のステップで構成されるステップを含むことを特徴とする。
h1)FgDP
(HF)と閾値、特に1μg/mlの閾値とを比較するステップであって、FgDP
(HF)が閾値未満または陰性であることは、その患者における血栓症を除外することを可能にし、FgDP
(HF)が閾値よりも高いことは、その患者における血栓症の可能性を示す、ステップ、
h2)FFTと閾値、特に[e1)の対照時間−1標準偏差]に等しい閾値、たとえば135秒の対照時間に対する120秒の閾値とを比較するステップであって、FFTが閾値未満であることは、患者が血栓症を有さないが急性凝固活性化状態を有することを示し、FFTが閾値よりも高いことは、その患者における血栓症を示す、ステップ。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第1のバージョンは、次のことを特徴とする。
− ステップh2)において血栓症が診断されたとき、静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベル(Ddi
VTE)は、ステップe)で得られたDダイマーのレベルRであり、
− ステップh1)およびh2)において血栓症が除外されたが、ステップe)で得られたレベルRは閾値より高く、好ましくは0.5μg/mlの閾値よりも高いとき、この方法は、次の等式を用いて静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベル(Ddi
VTE)を算出するステップで構成されるステップも含み、
【0031】
【数3】
【0032】
ここでDdi
Sは、サンプル中のDダイマーのレベルである。
【0033】
Ddi
VTEレベルは肺塞栓症または深部静脈血栓症の程度を表すものであり、したがって疾患の重篤度を表す。
【0034】
加えて本発明は、患者からの血液サンプル中の静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーをアッセイするための方法の第2のバージョンに関し、前記方法は、一方ではサンプル中のDダイマーのレベル(Ddi
S)を得るためのサンプル中のDダイマーのアッセイを含み、他方ではこの同じサンプルのフィブリン形成の動的測定を含み、前記動的測定は以下のステップを含む。
a)サンプル中の凝固の活性化をトリガすることなく開始するステップと、
b)ステップa)で得られた混合物をインキュベートし、インキュベートされたサンプル中でトロンビンの生成およびフィブリン血餅の形成をトリガするステップと、
c)フィブリン血餅を形成するb)で得られたサンプルの少なくとも1つの特性の時間変動を測定するステップと、
d)c)で分析されたフィブリン血餅の形成プロファイルを確立し、このプロファイルから、プロファイル曲線の接線の変曲点において測定されたフィブリン形成時間(FFT)と、フィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定されたサンプルの特性の値(Vp
(TA))とを抽出するステップと、
e’)血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベル(R)を算出するステップであって、
e’1)炎症(inflammation)に対して調整されたDダイマーのレベル(Ddi
S/I)を得るために、d)で定められたVp
(TA)を用いて炎症によって生成されたDダイマーのレベルの関数としてサンプルのDダイマーのレベルDdi
Sを調整するステップ、および
e’2)低いDダイマーレベルに対してe’1)で得られた炎症に対して調整されたDダイマーのレベル(Ddi
S/I)を補正するステップによって算出するステップ、ならびに
炎症の関数として患者からのサンプルを分類するステップと、
f’)e)で得られたフィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルRを、閾値に対して、好ましくは0.5μg/mlの閾値に対して比較するステップと、
g’)サンプル中のDダイマーのレベル(Ddi
S)およびe’)で得られたレベルRを用いるか、またはe’1)で得られた炎症の関数として調整されたDダイマーのレベルDdi
S/Iおよびe’)で得られたレベルRを用いて、線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベル(Ddi
(HF))を定めるステップと、
h’)g’)で得られたレベルDdi
(HF)を閾値に対して比較し、TA/FFT比率を閾値に対して比較するステップであって、ここでTAはd)で得られたフィブリン重合プラトーに達する時間であり、FFTはd)で得られたフィブリン形成時間である、ステップとである。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第2のバージョンは、ステップe’)において、初期フィブリノゲン換算量(FEU)で表されるレベルRが、次のステップによって得られることを特徴とする。
e’1)次の等式によって、炎症の関数として調整されたDダイマーのレベル(Ddi
S/I)を算出するステップであって、
【0036】
【数4】
【0037】
ここで[Fib]
(Vp(TA))は、次の等式を有する標準曲線における特性の値Vp
(TA)に対して演繹されるフィブリノゲン濃度であり、
y=aln(x)−b、
ここで
yはフィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定された特性の値であり、
xはフィブリノゲン濃度であり、
aおよびbは、フィブリンプラトーのレベルとフィブリノゲン濃度とを結び付ける対数方程式の定数であり、
標準曲線は血液サンプルに対して確立されたものであり、この血液サンプルのフィブリノゲン濃度が定められており、かつその特性の値Vp
(TA)がステップa)〜d)によって定められている、ステップ、
e’2)e’1)で得られたレベルDdi
S/Iを次の等式によって補正するステップであって、
R=Ddi
S/I+[0.5−F
Ddi−S]
ここでF
Ddi−Sは低いDダイマーレベル(<4μg/ml)に対する補正因子であり、この値は次の等式を有する標準曲線におけるサンプルのDダイマーのレベル(Ddi
S)に対する補正因子の値に対応し、
y=ax
2+bx+c
ここでyは補正因子Fであり、
xはDダイマーのレベルであり、
a、bおよびcは、補正因子とDダイマーのレベルとを結び付ける多項式の定数であり、
標準曲線は血液サンプルに対して確立されたものであり、この血液サンプルのDダイマーのレベルが定められており、かつそれに対する補正因子が経験的に定められているため、レベルDdi
S/Iが0.5μg/ml FEU(フィブリノゲン換算量)の閾値に関連付けられる。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第2のバージョンは、ステップe’)において、炎症の関数として患者からのサンプルを分類するステップが次のステップを含むことを特徴とする。
− 比率1/[Fib]
(Vp(TA))を算出するステップであって、ここで[Fib]
(Vp(TA))はe1’)で定められたフィブリノゲン濃度である、ステップ、および
− もし比率1/[Fib]
(Vp(TA))>0.20であれば、その患者からのサンプルを炎症を有さない患者のグループIに分類するステップ、または
− もし比率1/[Fib]
(Vp(TA))≦0.20であれば、その患者からのサンプルを炎症を有する患者のグループIIに分類するステップである。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第2のバージョンは、ステップf’)において、e’)で得られたレベルRが閾値未満、好ましくは0.5μg/mlの閾値未満であることは、その患者における血栓症を除外することを可能にすることを特徴とする。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第2のバージョンは、ステップg’)において、線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベル(Ddi
HF)が、次のとおりに算出されることを特徴とする。
g’1)次の等式を用いて、ステップe’)で定められたレベルRとサンプルのDダイマーのレベルDdi
Sとの比率として算出される。
【0041】
【数5】
【0042】
g’2)次の等式を用いて、ステップe’)で定められたレベルRとe’1)で得られたレベルDdi
S/Iとの比率として算出される。
【0043】
【数6】
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第2のバージョンは、次のことを特徴とする。ステップh’)において、
− g’1)で得られたレベル(R/Ddi
S)
patientは、次のステップによって閾値と比較され、
h’1)サンプルのレベルDdi
Sに対して、次の等式を有する標準(standard)曲線において比率(R/Ddi
S)
standardの値を定めるステップであって、
y=ax
−b
ここでxはDダイマーのレベルであり、
yは血管内フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルと、Dダイマーのレベルとの比率(R/Ddi
S)であり、
aおよびbは、比率R/Ddi
SとDダイマーのレベルとを結び付ける等式の定数であり、
標準曲線は、以下を用いて確立されたものであり、
− 患者からのサンプルがグループIに分類されたとき:ステップe’)によってグループIに分類された血液サンプル、および既知であるか、または定められたそのDダイマーのレベル、およびステップa)〜e’2)によって得られたそのレベルR、ならびに
− 患者からのサンプルがグループIIに分類されたとき:ステップe’)によってグループIIに分類された血液サンプル、および既知であるか、または定められたそのDダイマーのレベル、およびステップa)〜e’2)によって得られたそのレベルRである、ステップ、ならびに
h’’1)g’1)で得られた線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベル(R/Ddi
S)
patientの値と、h’1)で得られた比率(R/Ddi
S)
standardの値とを比較するステップであって、ここで
(R/Ddi
S)
patientが比率(R/Ddi
S)
standard未満であることは、その患者(patient)における血栓症を除外することを可能にし、(R/Ddi
S)
patientが比率(R/Ddi
S)
standard以上であることは、その患者における血栓症の可能性を示す、ステップであり、
− g’2)で得られたレベル(R/Ddi
S/I)
patientは、次のステップによって閾値と比較され、
h’2)サンプルのレベルDdi
Sに対して、次の等式を有する標準曲線において比率(R/Ddi
S/I)
standardの値を定めるステップであって、
y=ax
−b
ここでxはDダイマーのレベルであり、
yは血管内フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルと、炎症の関数として調整されたDダイマーのレベルとの比率(R/Ddi
S/I)であり、
aおよびbは、比率R/Ddi
S/IとDダイマーのレベルとを結び付ける等式の定数であり、
標準曲線は、次のとおりに確立されたものであり、
− 患者からのサンプルがグループIに分類されたとき:ステップe’)によってグループIに分類された血液サンプル、および既知であるか、または定められたそのDダイマーのレベル、ステップa)〜e’1)によって得られたそのレベルDdi
S/I、およびステップa)〜e’2)によって得られたそのレベルRを用い、
− 患者からのサンプルがグループIIに分類されたとき:ステップe’)によってグループIIに分類された血液サンプル、および既知であるか、または定められたそのDダイマーのレベル、ステップa)〜e’1)によって得られたそのレベルDdi
S/I、およびステップa)〜e’2)によって得られたそのレベルRを用いる、ステップ、ならびに
h’’2)g’2)で得られた線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベル(R/Ddi
S/I)
patientの値と、h’2)で得られた比率(R/Ddi
S/I)
standardの値とを比較するステップであって、ここで
(R/Ddi
S/I)
patientが比率(R/Ddi
S/I)
standard未満であることは、その患者における血栓症を除外することを可能にし、(R/Ddi
S/I)
patientが比率(R/Ddi
S/I)
standard以上であることは、その患者における血栓症の可能性を示す、ステップである。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第2のバージョンは、ステップh’)において、比率TA/FFTを閾値に対して比較するステップが次のステップを含むことを特徴とする。
h’3)比率TA/FFTを算出するステップであって、ここでTAはステップd)で定められたフィブリン重合プラトーに達する時間であり、FFTはステップd)で定められたフィブリン血餅形成時間である、ステップと、
h’’3)患者からのサンプルがグループIに分類されたとき:比率TA/FFTを第1の閾値、特に135秒の対照時間に対する第1の閾値1.75に対して比較するステップであって、ここで
比率TA/FFTが第1の閾値より高いことは、グループIに分類された患者における血栓症を除外し、かつ血栓形成傾向または凝固活性化状態を診断することを可能にし、
比率TA/FFTが第1の閾値以下であることは、グループIに分類された患者における血栓症を示す、ステップ、
患者からのサンプルがグループIIに分類されたとき:比率TA/FFTを第2の閾値、特に135秒の対照時間に対する第2の閾値1.65に対して比較するステップであって、ここで
比率TA/FFTが第2の閾値より高いことは、グループIIに分類された患者における血栓症を除外し、かつ血栓形成傾向または凝固活性化状態を診断することを可能にし、
比率TA/FFTが第2の閾値以下であることは、グループIIに分類された患者における血栓症を示す、ステップとであり、
ここで対照時間とは、ステップa)〜d)に従って測定された、血栓症の疑いを呈しない健康な対象からのサンプルのフィブリン血餅形成に対する平均時間である。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第2のバージョンは、次のことを特徴とする。
− ステップh’’3)において血栓症が診断されたとき、静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベル(Ddi
VTE)は、ステップe’)で得られたDダイマーのレベルRであり、
− ステップh’’1)、h’’2)およびh’’3)において血栓症が除外されたが、ステップe’)で得られたレベルRは閾値より高く、好ましくは0.5μg/mlの閾値よりも高いとき、この方法は、次の等式を用いて静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベル(Ddi
VTE)を算出するステップで構成されるステップも含み、
【0047】
【数7】
【0048】
ここでDdi
Sは、サンプル中のDダイマーのレベルである。
【0049】
レベルDdi
VTEは肺塞栓症または深部静脈血栓症の程度を表すものであり、したがって疾患の重篤度を表す。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明による方法の第1または第2のバージョンは、血液サンプルが1μlから300μl、好ましくは50μlから200μlの体積を有することを特徴とする。好ましくは、血液サンプルは無希釈である。
【0051】
サンプルのDダイマーのアッセイは、免疫比濁法または免疫酵素法に従って行われ得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明によるアッセイ方法のステップa)は、患者からの血液サンプルと組織因子と任意にはリン脂質とを混合するステップ、好ましくは患者からの血液サンプルと組織因子とリン脂質とを混合するステップによって行われる。ステップa)の組織因子は、0.5〜5pM、好ましくは2pMの濃度で存在し得る。ステップa)の混合物は、トロンビン生成およびフィブリン形成をトリガするためのカルシウムイオンを含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明によるアッセイ方法のステップb)は、ステップa)で得られた混合物を30℃から40℃の温度にて20秒から400秒、好ましくは60秒から300秒の時間インキュベートするステップを含むことを特徴とする。
【0054】
いくつかの実施形態において、ステップb)において、トロンビン生成およびフィブリン血餅形成をトリガするステップは、インキュベートされたサンプルにカルシウムイオンを加えるステップによって行われる。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明によるアッセイ方法において用いられる血液サンプルは、血漿サンプルである。血漿サンプルは、乏血小板血漿サンプルであり得る。これらの実施形態においては、ステップc)において、b)で得られたサンプルの少なくとも1つの特性の時間変動を測定するステップは、350〜800nmの波長、好ましくは540nmの波長における光学濃度の時間変動(DOD)を測定するステップによって行われる。好ましくは、ステップc)の光学濃度の測定は、Dダイマーをアッセイするために用いられるのと同じ波長である540nmにて行われる。
【0056】
他の実施形態において、本発明によるアッセイ方法において用いられる血液サンプルは、全血サンプルである。全血サンプルは、クエン酸全血サンプルであり得る。これらの実施形態においては、ステップc)において、b)で得られたサンプルの少なくとも1つの特性の時間変動を測定するステップは、トロンボエラストグラフィ、レオメトリ、または画像分析によって行われる。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明によるアッセイ方法は、少なくともステップc)およびd)が自動診断デバイスまたは遠隔生物学アナライザ、好ましくは凝固アナライザにおいて行われることを特徴とする。
【0058】
第2の側面において、本発明は患者における静脈血栓塞栓症(VTE)を診断するためのインビトロの方法に関し、この方法は次のステップで構成されるステップを含む。
− 本明細書に記載されるVTEに対して特異的なDダイマーをアッセイするための方法を用いて、患者からの血液サンプルにおけるVTEに対して特異的なDダイマーのアッセイを行うステップと、
− その患者に関する診断を提供するステップとである。
【0059】
本発明によるインビトロ診断方法の1つにおいて、その患者に関する診断とは(i)血栓症の除外、(ii)急性凝固活性化状態、または(iii)血栓症である。
【0060】
患者が高齢の個体であるか、がんである患者であるか、感染症である患者であるか、または血栓形成傾向である患者であるような実施形態において、静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーをアッセイするステップは、本発明のアッセイ方法の第2のバージョンを用いて行われる。この場合、その患者に関する診断とは(i)血栓症の除外、(ii)急性凝固活性化状態、(iii)血栓形成傾向、または(iv)血栓症である。
【0061】
本発明のいくつかの好ましい実施形態のより詳細な説明が、以下に与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
上述のとおり、本発明は、患者からの生物学的サンプルにおける血栓症に対して特異的なDダイマーのレベルを定めるための方法と、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症または深部静脈血栓症)の診断または凝固活性化状態の識別におけるこの方法の適用とに関する。
【0064】
I− 静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーをアッセイするための方法
本発明によるアッセイ方法は、2つの主要なステップを含む。一方はDダイマーのアッセイであり、他方はフィブリン形成の動的測定である。これらの主要ステップは、患者からの血液サンプルに対して行われる。
【0065】
A.患者からの血液サンプル
本明細書において用いられる「患者」という用語は、ヒトを示す。「患者」という用語は特定の年齢を示さないため、小児、青年、および高齢の個体を含む成人を包含する。一般的に、患者とは肺塞栓症または深部静脈血栓症を有することが疑われる対象、たとえば病院の救急科で呼吸困難および/または胸部痛の処置を受ける患者などである。さらに、こうした患者は既知の医学的状態を有さないことがある。代替的に、こうした患者は、血栓症に対する素因を有することが知られている患者(たとえば、がんである患者、妊娠中の女性または出産直後の女性、術後の段階の患者、旅行中または特に長期旅行などの旅行直後の対象など);凝固亢進状態を呈する患者(たとえば、血栓形成傾向である患者、腎不全である患者、外傷、転倒、もしくは骨折を経験した患者、または高齢の対象など);凝固活性化状態を呈する患者(たとえば、感染症もしくは敗血症である患者、肺疾患、気管支炎、もしくは呼吸不全である患者、炎症性疾患である患者、胃炎である患者、心筋症である患者、または脳卒中の病歴のある患者など)であることがある。本発明の状況において、「正常な患者」または「健康な患者」という用語は、その患者に血栓症の疑いがないときに用いられる。
【0066】
本発明による方法は、患者からの単純な血液の生物学的サンプルを使用する。血液サンプルは、血液サンプルを回収する目的のために患者の静脈から採られる。好ましくは、この血液の生物学的サンプルは無希釈でこの方法に用いられる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明による方法は、全血(すなわち、すべての成分を有する血液)のサンプルに対して行われる。全血はクエン酸化されてもよい。この場合、採られた全血はクエン酸チューブに回収される。
【0068】
他の実施形態において、本発明による方法は、血液サンプルから得られた血漿サンプルに対して行われる。ヒト血液から血漿を得るための方法は、当該技術分野において公知である。好ましくは、生物学的サンプルは乏血小板血漿(PPP:platelet−poor plasma)サンプルである。この場合、この生物学的サンプルは特に、患者の血液サンプルを含むクエン酸チューブを18〜22℃の温度のサーモスタット遠心機内で2000〜2500gの速度にて15分間遠心分離することによって得ることができる。
【0069】
乏血小板血漿サンプルを保存する必要があるときは、次のステップで構成される以下のプロトコルを用いることが可能である。
− 血漿を迅速にデカントして、白血球細胞および血小板の細胞層より上の約0.5cmの血漿を残すステップ、
− 溶血チューブまたはプラスチックチューブに血漿を回収するステップ、
− このチューブを18〜22℃の温度のサーモスタット遠心機内で2000〜2500gの速度にて15分間遠心分離するステップ、
− (細胞デブリを含む)チューブの底部を取らないように0.5〜1mlのフラクションにアリコートするステップ、次いで
− −70℃から−90℃、好ましくは−80℃の温度にて急速冷凍するステップ。
【0070】
本発明によるアッセイは、任意の適切な体積の血液サンプルに対して行われ得る。一般的に本発明においては、小体積の血液サンプルが用いられる。たとえば、血液の生物学的サンプルは、1μlから300μlの体積、好ましくは50μlから200μl、好ましくは試薬(以下を参照)の添加後の最終体積300μlに対して約200μlの体積、好ましくは試薬の添加後の最終体積150μlに対して約100μlの体積を有する。こうした体積は実際にルーチン機器における分析のために十分であるが、遠隔生物学デバイスにおいては、サンプル体積対最終体積の比(すなわち約2:3の比)が忠実にされるのであれば、その体積が低減されてもよい。ポータブルデバイスの場合に、試薬が凍結乾燥されていて患者のベッドサイドで使用時にサンプルによって再構成される場合には、同じ最終反応濃度が得られるのであれば、その体積が5μlから20μl、好ましくは10μlの体積までさらに低減されてもよい。
【0071】
B.サンプルのDダイマーのアッセイ
本発明による方法において、第1の主要ステップ(血液サンプル中のDダイマーのアッセイ)は、任意の適切な方法によって行われ得る。いくつかの実施形態においては、サンプルのDダイマーの通常のアッセイが行われるだろう。「サンプルのDダイマーの通常のアッセイ」という表現は、たとえばラテックス法などの免疫比濁法、またはたとえばELISA(「酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme−linked immunosorbent assay)」)法もしくはELFA(「酵素結合蛍光アッセイ(enzyme−linked fluorescent assay)」)法などの免疫酵素法に従って行われるアッセイを意味することが意図される。免疫比濁法は、Dダイマーを含む溶液の濁度の変化に基づくものである。典型的に、免疫比濁法は(i)患者からの血液サンプルと、抗Dダイマー抗原モノクローナル抗体でコートされたラテックス微粒子の懸濁物とを混合するステップ(「ラテックス法」)、次いで(ii)特に所与の波長、典型的には540nmにて、混合物の濁度をモニタするステップを含む。免疫酵素法は、抗Dダイマー抗原モノクローナル抗体によって本発明のDダイマーを捕捉するステップと、次いで標識二次抗体によってそれらを明らかにするステップとを含む。
【0072】
C.フィブリン形成の動的測定
本発明による方法は、3つの知見に基づくものである。凝固活性化状態とは反対に、血栓症においては凝固亢進および線溶亢進が存在しないか、または低減している。他方で、主に重要なのは炎症性状態である。
【0073】
上に示されるとおり、本発明者らは、静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーをアッセイするための方法の2つのバージョンを開発した。本発明の方法の第1のバージョンによるフィブリン形成の動的測定は、いくつかのステップ、すなわちステップa)、b)、c)、d)、e)、f)、およびg)と、診断ステップであるステップh)とを含む。本発明による方法の第2のバージョンによるフィブリン形成の動的測定は、第1のバージョンと同じステップa)、b)、c)、およびd)と、第1のバージョンのステップとは異なるステップe’)、f’)、およびg’)と、診断ステップであるステップh’)とを含む。これらのステップを、以下に詳細に説明する。
【0074】
方法のステップ
ステップa)
本発明によるアッセイ方法のステップa)は、血液サンプル中の凝固の活性化をトリガすることなく開始するステップで構成される。凝固活性化の開始は、当該技術分野において公知の任意の適切な方法によって行うことができ、その方法は、ハーゲマン因子または凝固因子XIIの活性化(病変血管から剥がれたコラーゲンと前記因子とが接触するときに起こること)からなる内因性の経路を介するものであってもよいし、組織病変の際に組織因子によって開始されて血液凝固をもたらす外因性の経路を介するものであってもよい。たとえば、外因性の経路を介すると、ステップa)は血液の生物学的サンプルと、組織因子と、任意にはリン脂質とを混合するステップを含み得る。いくつかの好ましい実施形態において、ステップa)は、凝固の内因性の経路の活性化をトリガすることなく開始するために、血液サンプルと、組織因子と、任意にはリン脂質とを混合するステップを含む。この場合、血液の生物学的サンプルは、組織因子(TF:tissue factor)、好ましくはヒト組織因子と、好ましくは半精製または精製されたリン脂質(PL:phospholipids)との溶液に混合される。特に遠隔生物学デバイスまたはポータブルデバイスの場合に、組織因子とリン脂質とは、好ましくは血液の生物学的サンプルによって再構成されるように凍結乾燥される。
【0075】
ステップa)の混合物は、混合物中に2〜5μMの最終濃度のリン脂質、好ましくは約4μMの濃度を含み得る。好ましくは組織因子は、血液の生物学的サンプルとの混合物におけるその最終濃度が0.5〜20pM、好ましくは1〜5pM、たとえば2pMなどになるような量で用いられる。
【0076】
加えて、ステップa)の混合物はカルシウムイオンを含んでもよい。カルシウムイオンは15〜20mM、好ましくは17mMの最終濃度にて存在してもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、本発明による方法のステップa)は、次のステップを含む。
a1)リン脂質および任意にはカルシウムイオンの溶液に組織因子を導入するステップ、次いで
a2)a1)で得られた溶液と、血液の生物学的サンプルとを混合するステップ。
【0078】
他の実施形態において、本発明による方法のステップa)は、次のステップを含む。
a1)組織因子の溶液にリン脂質を導入し、任意にはカルシウムイオンを加えるステップ、次いで
a2)血液の生物学的サンプルによって再構成されるように、a1)で得られた溶液を凍結乾燥するステップ。
【0079】
ステップa)の最後に、重合プラトーまでのフィブリン形成プロファイルを定めるための、少なくとも組織因子と血漿の生物学的サンプルとの混合物、または少なくとも組織因子と全血の生物学的サンプルとの混合物が得られる。
【0080】
ステップb)
ステップb)は、ステップa)で得られた混合物をインキュベートし、次いでインキュベートされたサンプル中でトロンビン生成およびフィブリン血餅形成をトリガするステップで構成される。トロンビン生成およびフィブリン血餅形成をトリガするステップは、当該技術分野において公知の任意の方法によって行われ得る。このトリガするステップは、内因性または内因性の経路の凝固因子の複雑なカスケードを伴い、その結果としてフィブリノゲンから重合フィブリンへの転換がもたらされることによって、フィブリン血餅が生じる。いくつかの特定の実施形態において、このトリガするステップは、得られた混合物にカルシウムイオンを加えるステップによって行われる。
【0081】
よってステップb)は、ステップa)で得られた混合物をインキュベートするステップを含む。インキュベーションは、任意の適切な時間および温度条件下で行われ得る。このインキュベーションは、典型的には20秒から400秒、好ましくは60秒から300秒、好ましくは300秒の時間、ルーチン機器において30℃から40℃の温度、好ましくは約37℃の温度にて行われてもよい。特に遠隔生物学機器の使用、好ましくはポータブルデバイスの使用による体積の低減に伴って、このインキュベーション時間は60秒未満、好ましくは30秒未満まで短くされ得る。
【0082】
次いで、インキュベートされた混合物にカルシウムイオンが加えられる。これらのカルシウムイオンはCaCl
2溶液の形で、約0.1Mの濃度で加えられ得る。組織因子の存在下で、カルシウムの添加を通じてトロンビン生成およびフィブリン血餅形成がトリガされる。
【0083】
ステップc)
ステップc)は、フィブリン血餅を形成するサンプルの少なくとも1つの特性の時間変動を測定するステップで構成される。この特性は、フィブリン血餅形成をモニタすることを可能にする任意の光学的または物理的特性であってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、特に使用される生物学的サンプルが血漿サンプルである場合に、測定される特性は好ましくは光学的特性、特に少なくとも1つの波長における光学濃度(OD:optical density)(吸光度とも呼ばれる)である。波長は350nmから800nmであってもよい。好ましくは、光学濃度測定は、Dダイマーの通常のアッセイに用いられる波長である540nmの波長にて行われる。
【0085】
よってたとえばステップc)の間、フィブリン血餅形成はたとえば2秒以下ごとに、350nmから800nmの少なくとも1つの波長、好ましくは540nmにて、1〜10分、好ましくは10分の期間光学濃度を測定することによって、動的にモニタされる。したがってこの期間の間に、特にたとえば10〜20秒であってもよいベース時間(または初期時間t
i)における光学濃度と比較した光学濃度の変動(DOD)によって、フィブリン血餅形成が分析される。よって、分析波長λおよび測定時間tにおいて、DOD(λ)
tは、時間tに波長λにて測定された光学濃度値(OD(λ)
t)から、時間t
iに波長λにて測定された光学濃度値(OD(λ)
ti)を引いたものに相当し、これは次のとおりに算出される。
DOD(λ)
t=OD(λ)
t−OD(λ)
ti
【0086】
代替的には、本発明による方法のステップc)において動的に測定される、フィブリン血餅を形成するサンプルの特性は物理的特性であり、それは濁度、弾性、粘度、粘弾性、剛性率などであってもよい。
【0087】
よって他の実施形態において、特に使用される生物学的サンプルが全血サンプルである場合に、ステップc)において動的にモニタされるフィブリン血餅の物理的特性は、好ましくはトロンボエラストグラフィ、レオメトリ、または画像分析によって測定される。一般的にフィブリン血餅形成は、フィブリン重合プラトーに達する時間における振幅に達するまでの、たとえば10分以下、好ましくは5分未満などの期間にわたる、血餅の物理的特性の時間変動によってモニタされる。
【0088】
ステップd)
本発明による方法のステップd)は、最初にステップc)において分析されたフィブリン血餅の形成プロファイルを確立するステップで構成される。
【0089】
「フィブリン血餅の形成プロファイル」という表現は、フィブリン重合プラトーまでのフィブリン形成中の時間の関数としての血餅の少なくとも1つの光学的または物理的特性の変化を意味することが意図される。
【0090】
フィブリン形成の動的測定に続いて、トロンビン生成およびフィブリン血餅形成が開始された血液サンプルの少なくとも1つの特性を時間の関数として定めることによって、次の3つのデータが提供される。
− フィブリン血餅形成時間(FFT)、
− フィブリン重合プラトーに達する時間(TA)、および
− 時間TAにおいて測定された特性の値(Vp
(TA))。
【0091】
したがってステップd)は、確立されたフィブリン血餅形成プロファイルから、曲線の接線の変曲点において測定されたフィブリン形成時間(FFT)と、フィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定された光学的または物理的特性の値(Vp
(TA))とを抽出するステップで構成される。代替的に、光学的または物理的特性の値は重合プラトーの90%より多くに達する時間、好ましくは重合プラトーの95%より多くに達する時間、たとえば96%、または97%、または98%、または99%などに達する時間に測定され得ることを当業者は理解するだろう。
【0092】
測定される特性が光学濃度である場合、すなわち特に血漿サンプルの場合には、曲線の接線の変曲点において測定されたフィブリン形成時間(FFT)と、フィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定されたサンプルのDOD
(TA)とが、フィブリン血餅形成プロファイル(プラトーを有するS形状曲線に似たシグモイドプロファイル)から抽出される。
【0093】
トロンボエラストグラフィによって物理的特性が測定される場合、すなわち特に全血サンプルの場合には、曲線の接線の変曲点において測定されたフィブリン血餅形成時間(FFT)と、フィブリン重合プラトーに達する時間(TA)における振幅(A
(TA))とが、フィブリン血餅形成プロファイル(音叉の形状を有するプロファイル)から抽出される。
【0094】
レオメトリまたは画像分析によって物理的特性が測定される場合、すなわち特に全血サンプルの場合には、曲線の接線の変曲点において測定されたフィブリン形成時間(FFT)と、フィブリン重合プラトーに達する時間(TA)における振幅(A
(TA))とが、フィブリン血餅形成プロファイル(プラトーを有するS形状曲線に似たシグモイドプロファイル)から抽出される。
【0095】
このことは、以下に特に示されている。
−
図5aにおいて、正常(健康)な患者からの血漿および凝固亢進を有する患者からの血漿によって示され、
−
図5bにおいて、正常な患者からの全血および高フィブリノゲン血症を有する患者からの全血によって示される。
【0096】
曲線の接線の変曲点において定められるフィブリン形成時間(FFT)と、フィブリンプラトーの開始に達する時間(TA)とは、光学濃度測定を用いる方法に対する凝固亢進性血漿、またはトロンボエラストグラフィ、レオメトリ、もしくは画像分析によって物理的特性が測定される方法に対する高フィブリノゲンレベルを有する全血のいずれによっても、凝固亢進に対して比例的に短くなる。
【0097】
プラトーに達する時間におけるDOD
(TA)、またはプラトーに達する時間における振幅(A
(TA))のいずれかによって表されるフィブリン重合プラトーのレベルは炎症によって増加し、これは
図5のフィブリノゲンのレベルによって表されるか、または2つのタンパク質(CRPおよびフィブリノゲン)のアッセイが行われた患者からのサンプルにおける
図6(A)のC反応性タンパク質(CRP:C−reactive protein)のレベルおよび
図6(B)のフィブリノゲンのレベルによって表される。
【0098】
プラトーに達する時間におけるODの値は、正常な患者からの血漿(3.5g/l)よりも凝固亢進を有する患者からの血漿の方が低く、これは含有されるフィブリノゲンが少ないためである(3.0g/l)。
【0099】
プラトーに達する時間における振幅Aは、正常レベルのフィブリノゲン(2.5g/l)を有する正常な血液よりも、高レベルのフィブリノゲン(5g/l)を有する全血の方が高い。
【0100】
静脈血栓症を有するか否かにかかわらず活動性のがんを有さない患者に対する
図7(A)、および活動性のがんを有する患者に対する
図7(B)に示されるとおり、血栓症の疑いのあるすべての患者について、フィブリン重合プラトーに達する時間はフィブリン形成時間に比例する。抗凝固剤処置の不在下では、患者に関係なくこのプラトーに達する時間は8分を超えない。
【0101】
この方法の第1のバージョン − ステップe)、f)、g)およびh)
本発明による第1の方法は、静脈血栓塞栓症(VTE)に対して特異的なDダイマーのレベル、すなわち血管内フィブリン分解に特異的に由来するDダイマーのレベルを定めることを可能にし、これはサンプルのDダイマーのレベルを次のものの関数として調整することによるものである。
− トロンビンおよびフィブリン生成の開始後の、凝固亢進によって生成されたDダイマーのレベル、
− 炎症によって生成されたDダイマーのレベル、ならびに
− 線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベル。
【0102】
特に実施例1に記載されるとおり、こうした方法は、問題となる患者の静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベルを非常に短時間(すなわち10分未満)で定めることを可能にする。具体的には、肺塞栓症を有する患者および有さない患者、深部静脈血栓症を有する患者および有さない患者、ならびに凝固活性化状態を有する患者および有さない患者のさまざまな血漿を、トロンビン生成の開始後のフィブリン血餅形成プロファイルにおいて10分未満で識別する。
【0103】
ステップe)
本発明者らが最初に開発したこの方法の第1のバージョンにおいて、ステップe)は、サンプルのDダイマーのレベルを凝固亢進によって生成されたDダイマーのレベルの関数として、および炎症によって生成されたDダイマーのレベルの関数として調整することによって、血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルを算出するステップで構成される。より具体的には、血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベル(R)は、次のステップによって算出される。
e1)凝固亢進の関数として調整されたDダイマーのレベルを得るために、d)で定められたFFTを用いて凝固亢進によって生成されたDダイマーのレベルの関数としてサンプルのDダイマーのレベル(Ddi
S)を調整するステップ、および
e2)Rを得るために、d)で定められたVp
(TA)を用いて炎症によって生成されたDダイマーのレベルの関数として、e1)で算出された凝固亢進の関数として調整されたDダイマーのレベルを調整するステップ。
【0104】
具体的には、実施例1に示されるとおり、血栓症を有さない患者からのサンプルに比べて、肺塞栓症(PE)および/または深部静脈血栓症(DVT)を有する患者からのすべてのサンプルにおいて、フィブリン形成時間(FFT)の系統的な延長が存在することを本発明者らは観察した。凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数としてDダイマーを調整するために、実施例2の線形実施例を利用する。
【0105】
凝固亢進の関数として調整されたDダイマーのレベル(Ddi
S/HC)は、サンプルのDダイマーのレベル(Ddi
S)から次の式によって定められる。
【0107】
ここで対照時間とは、本発明による方法のステップa)〜d)によって測定された、血栓症の疑いを有さない正常で健康な対象からのサンプルのフィブリン血餅形成の平均時間である。
【0108】
これは特に実施例3に示されている。よってステップe)は、凝固亢進の結果もたらされるDダイマーを考慮するようにしてd)で測定されたフィブリン形成時間(FFT)からDダイマーを算出するステップを含む。
【0109】
血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベル(R)は、凝固亢進の関数として調整されたDダイマーのレベル(Ddi
S/HC)を、次の式によって炎症の関数として調整することによって算出される。
【0111】
ここで[Fib]
(Vp(TA))は、次の等式を有する標準曲線における特性の値(Vp
(TA))に対して演繹されるフィブリノゲン濃度であり、
y=aln(x)−b、
ここで
yはフィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定された特性の値であり、
xはフィブリノゲン濃度であり、
aおよびbは、フィブリンプラトーのレベル(値または振幅)とフィブリノゲン濃度とを結び付ける対数方程式の定数であり、
標準曲線は血液サンプルを用いて確立されたものであり、この血液サンプルのフィブリノゲン濃度が定められており、かつその特性の値(Vp
(TA))が本発明による方法のステップa)〜d)によって定められている。
【0112】
よって、血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベル(R)は、初期フィブリノゲン換算量(FEU)で表される。
【0113】
上記に示されたとおり、光学濃度の測定に基づく方法の場合、たとえば血漿サンプルの場合などにはVp
(TA)はDOD
(TA)、すなわちフィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定された光学濃度であり、トロンボエラストグラフィ、レオメトリ、または画像分析によって物理的特性が測定されることに基づく方法の場合、たとえば全血サンプルの場合などにはVp
(TA)はA
(TA)、すなわちフィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定された振幅である。
【0114】
炎症のレベル(すなわちフィブリノゲン濃度)の判定を可能にする標準曲線の例は、それぞれDODの測定に基づく方法の場合が
図9(A)〜(B)および実施例4に提供され、トロンボエラストグラフィによる物理的特性の測定に基づく方法の場合が
図9(C)および実施例4に提供されている。
【0115】
よって、得られたDダイマーのレベルは、初期フィブリノゲン換算量(FEU)で表される。
【0116】
ステップf)
本発明による方法の第1のバージョンのステップf)は、患者からのサンプルにおける静脈血栓症、特に肺塞栓症(PE)または深部静脈血栓症(DVT)の確率を定めるために、e)で得られたフィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルを閾値と比較するステップで構成される。好ましくは、閾値は0.50μg/mlである。具体的には、好ましくは、プラスミンによって生成されるDダイマーの量は使用される8D2および2.1.16抗体によるFEU(フィブリノゲン換算量)の約50%であるため、測定の陽性閾値は0.50μg/mlである。好ましくは、この閾値はDダイマーの通常のアッセイの閾値と同じである。
【0117】
e)で得られたフィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルRが閾値(好ましくは0.5μg/mlの閾値)未満であることは、その患者における血栓症を除外することを可能にする。e)で得られたフィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルRが閾値(好ましくは0.5μg/mlの閾値)より高いことは、その患者における血栓症の可能性を示す。
【0118】
特に、表4に示されるとおり、比率Rによって定められてFEU(フィブリノゲン換算量)で表されるe)で得られたDダイマーのレベルを有する患者のうち、血栓症を有さない患者の90%より多くが陰性レベル(すなわち0.5μg/mlの閾値未満)を有し、かつ血栓症を有さない患者すべてが0.50μg/mlから10.5μg/mlの範囲の陽性レベル(すなわち0.5μg/mlの閾値より高い)を有する。血栓症を有さない患者であって、0.50μg/mlから2.7μg/mlのレベルを有する偽陽性であることが見出された患者(<10%)のうち、3分の1はレベル<0.60μg/mlを有し、3分の1はがんを有し、3分の1は凝固活性化状態(骨折、血栓性微小血管症、妊娠、または術後)を有する。つまり、偽陽性レベルのDダイマーを有する患者の80%は、凝固亢進および炎症によって生成されたDダイマーの関数としてDダイマーを調整することによって陰性にされる。
【0119】
一般的に、ステップf)で行われる比較によってその患者における血栓症を除外することが可能になるとき、この方法はステップf)で止められ得る。もし反対が当てはまれば、この方法は続けられる。
【0120】
ステップg)
本発明による方法の第1のバージョンは次いで、凝固活性化状態において存在する線溶亢進によって生成されたフィブリノゲン分解産物(FgDP)のレベルを定めるステップg)を含む。よってステップg)は、次のステップで構成される。
g1)サンプル中のDダイマーのレベル(Ddi
S)からFgDPのレベルを定めるステップ、
g2)ステップe)で得られた調整されたDダイマーのレベル(R)からFgDPのレベルを定めるステップ、および
g3)g1)で得られたFgDPのレベルからg2)で得られたFgDPのレベルを引くことによって、線溶亢進によって生成されたFgDPのレベル(FgDP
HF)を算出するステップ。
【0121】
具体的には、がんの場合および顕著な凝固活性化状態においては高レベルのDダイマーが生成され、大量に存在するプラスミンの作用下で形成される高レベルのフィブリノゲン分解産物(FgDP)と組み合わされる。
【0122】
特に、
図10に示されるとおり、通常のアッセイによって定められたサンプルのDダイマーのレベルと、血漿サンプルに対して行われた本発明の方法に従って凝固亢進および炎症によって生成されたDダイマーの関数として調整されたDダイマーのレベル(上記ステップe))とは、これらのサンプルにおいてラテックス法によって測定された、線溶亢進の結果もたらされるFgDPのレベルと完璧に相関する。
図11に示されるとおり、これはどのDダイマー試薬を用いてもそうである。全血サンプルに対して行われた本発明の方法に従って凝固亢進および炎症によって生成されたDダイマーの関数として調整されたDダイマーのレベルについても、同じことが当てはまる。よってFgDPのレベルは、得られたDダイマーのレベルから線形回帰によって算出できる。
【0123】
顕著な凝固活性化状態において、本発明者らは以下のことを観察した。
− かなりの線溶亢進があり、大量のFgDPが生じる。
− フィブリノゲンから生成されたFgDPは、血栓症を有さない患者に由来するサンプルよりも、肺塞栓症(PE)および/または深部静脈血栓症(DVT)を有する患者に由来するサンプルの方が系統的に低い。よって、通常のDダイマーの関数として生成されたFgDPと、e)で得られた調整Dダイマーの関数として生成されたFgDPとの陽性の差によって、実施例6においては1μg/mlである閾値において、血栓症を有する患者と血栓症を有さない患者とを区別することが可能になる。
図11に示されるとおり、これはどのDダイマー試薬を用いてもそうである。
− 実施例1に記載されるとおり、対照時間−1標準偏差の閾値において、凝固活性化状態においてはフィブリン形成時間(FFT)が短くなる。実施例6に記載されるとおり、このことを利用して、顕著な線溶亢進の存在下での血栓症を除外し、急性凝固活性化状態に注意を向ける。
【0124】
実施例5、6、および7に示されるとおり、このことによって、患者からの前記サンプルにおける肺塞栓症または深部静脈血栓症の確率を直接的かつ迅速に定め、かつ/または凝固活性化に注意を向けることが可能になる。より優先的には、実施例8に示されるとおり、このことによって、高レベルのDダイマーの存在下でPEおよびDVTの確率を増すか、または肺塞栓症もしくは静脈血栓症の程度に注意を向けることが可能になる。
【0125】
よって、サンプルのDダイマーのレベル(Ddi
S)の関数として生成されたFgDPと、e)で得られた調整Dダイマーのレベル(R)の関数として生成されたFgDPとの陽性の差によって、予め定められた閾値において、血栓症の可能性を有する患者と血栓症を有さない患者とを区別することが可能になる。以下に提供される実施例の場合、本発明者らは1μg/mlの閾値を予め定めている。
【0126】
より具体的には、ステップg)は次のステップで構成される。
g1)既知のレベルのFgDPおよび既知のレベルのDダイマーを有する血液サンプルを用いて確立された標準曲線において、サンプル中のDダイマーのレベル(Ddi
S)に対応するFgDPのレベルを定めるステップ、
g2)この同じ標準曲線において、ステップe)で得られた調整されたDダイマーのレベル(R)に対応するFgDPのレベルを定めるステップ、および
g3)g1)で得られたFgDPのレベルからg2)で得られたFgDPのレベルを引くことによって、線溶亢進によって生成されたFgDPのレベル(FgDP
(HF))を算出するステップ。
【0127】
ステップh)
最後に、本発明による方法の第1のバージョンのステップh)は、g)で得られた線溶亢進によって生成されたFgDPのレベル(FgDP
(HF))を閾値に対して比較するステップと、d)で得られたフィブリン形成時間(FFT)を閾値に対して比較するステップとを含む。
【0128】
より具体的には、ステップh)は次のステップで構成される第1のステップを含む。
h1)FgDP
(HF)と閾値(たとえば1μg/mlの閾値など)とを比較するステップであって、FgDP
(HF)が閾値未満または陰性であることは、その患者における血栓症を除外することを可能にし、FgDP
(HF)が閾値よりも高いことは、その患者における血栓症の可能性を示す。
【0129】
閾値とは、多数のサンプルを用いて確立された予め定められた閾値であることを当業者は認識するだろう。調査したサンプルに基づいて、本発明者らは予め定められた閾値1μg/mlを用いた。
【0130】
次いでステップh)は、次のステップで構成される第2のステップを含む。
h2)FFTと閾値、特に[対照時間−1標準偏差]に等しい閾値、たとえば135秒の対照時間に対する120秒の閾値とを比較するステップであって、FFTが閾値未満であることは、患者が血栓症を有さないが急性凝固活性化状態を有することを示し、FFTが閾値よりも高いことは、その患者における血栓症を示し、対照時間はステップe1)で定められる。
【0131】
ここでも、閾値とは多数のサンプルを用いて確立された予め定められた閾値であることを当業者は認識するだろう。調査したサンプルに基づいて、本発明者らは135秒の対照時間に対する120秒の予め定められた閾値を用いた。
【0132】
よって、特に
図12に示されるとおり、偽陽性レベルのDダイマーを有する患者の92%、すなわち血栓症を有さない患者の97%は、ステップh)に従うDダイマーの調整によって陰性にされ、
図13に示されるとおり、これはDダイマーをアッセイするためのどの試薬でもそうである。
【0133】
好ましくは、この方法の最後に得られる静脈血栓症に対して特異的なDダイマーのレベルが高いことは、肺塞栓症(PE)または深部静脈血栓症(DVT)の程度を表す。よって、本発明による方法によって患者における血栓症が診断される場合に、ステップe)で得られるDダイマーのレベルRを臨床的に用いられる尺度、すなわち0.5μg/mlの閾値に関連付けたものは、肺塞栓症または静脈血栓症の程度、したがって疾患の重篤度に比例する。実際に、重篤度の診断は通常はイメージングにおいて、発症した肺動脈の数およびタイプによって定められる。
【0134】
より具体的には、本発明による方法のステップh2)において患者における血栓症が診断される場合、静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベル(Ddi
VTE)は、ステップe)で得られるDダイマーのレベルRである。
【0135】
本発明による方法のステップh1)およびh2)において患者における血栓症が除外されるが、ステップe)で得られたレベルRは閾値より高く、好ましくは0.5μg/mlの閾値よりも高い場合、静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベル(Ddi
VTE)は次の式によって算出され、
【0137】
ここでRはステップe)で得られたDダイマーのレベルであり、Ddi
SはサンプルのDダイマーのレベルである。この算出は、静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベルを、臨床的に用いられる閾値より下のレベルに関連付けることを可能にする。
【0138】
こうしてこの方法の最後に提供される静脈血栓症に対して特異的なDダイマーのレベルは、次いで肺塞栓症または深部静脈血栓症の程度を表す。
【0139】
「PEの程度またはDVTの場所を表すレベル」という表現は、静脈血栓症に対して特異的なDダイマーのレベルが、PEの程度(すなわちその重篤度)またはDVTの場所と直接相関することを意味することが意図される。表7に示されるとおり、「高レベル」という用語は、約1μg/mlから4μg/mlまたはそれ以上のレベルを意味することが意図される。
【0140】
この方法の第2のバージョン − ステップe’)、f’)、g’)およびh’)
静脈血栓塞栓症(VTE)に対して特異的なDダイマーのレベルを定めることを可能にする本発明による方法の第2のバージョンは、第1の方法のステップと同一のステップa)、b)、c)およびd)と、第1のバージョンのステップとは異なるステップe’)、f’)、g’)およびh’)とを含む。
【0141】
ステップe’)
ステップe)の第2の変形は、静脈血栓塞栓症(VTE)の症例の大部分(75%)におけるDダイマーのレベルが4μg/ml未満であることに注目した本発明者らによって開発された。凝固活性化状態とは反対に、血栓症においては凝固亢進および線溶亢進が存在しないか、または低減している。他方で、主に重要なのは炎症性状態である。具体的には、VTEの80%に対して、半分は炎症を有さない患者の第1のグループであり(フィブリノゲン濃度:3.0〜4.5g/l)、半分は亜正常炎症を有する患者の第2のグループである(フィブリノゲン濃度:4.5〜6.0g/l)。さらに、フィブリン血餅重合プラトーに達する時間(TA)は血栓症の方が早く、VTEを凝固活性化状態または血栓形成傾向と区別することを可能にする。
【0142】
結果として、本発明による方法の第2のバージョンのステップe’)は、次のステップで構成される。
− 血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルを算出するステップであって、
e’1)炎症によって生成されたDダイマーのレベルの関数としてサンプルのDダイマーのレベルを調整するステップ、および
e’2)この調整レベルを低Ddiレベル(<4μg/ml)に対して補正するステップによって算出するステップ、ならびに
− 炎症の関数として患者からの血液サンプルを分類するステップ。
【0143】
よってステップe)と比べると、ステップe’)においては、フィブリン形成時間(FFT)を用いて凝固亢進によって生成されたDダイマーのレベルの関数としてサンプルのDダイマーのレベルを調整することが削除されている。このことは、FFTが短く(FFT<[平均対照時間−1標準偏差]、たとえば135秒の対照に対してFFT≦120秒など)罹患率が1000当り2.5である血栓形成傾向が根底にある場合の血栓症を検出することを可能にする。
【0144】
低Ddiレベルに対する調整レベルの補正によって、以下の事象における血栓症を検出することが可能になる。
(i)Dダイマーが一般的に低く(≦1.5μg/ml)、かつ罹患率がPEの20%の領域にある、亜区域性または重篤でない肺塞栓症の事象、および
(ii) 炎症が顕著であり(≧5g/l)、かつ罹患率がPEの15%の領域にある、肺梗塞(肺塞栓症合併症)の事象。
【0145】
最後に、炎症の関数として患者からのサンプルを分類することによって、がん(患者の20%)、感染症(患者の10%)、および根底に炎症の感受性を有する高齢の個体の場合の血栓症を定めることが可能になる。
【0146】
より具体的には、ステップe’)において、血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルRは、次のステップによって定められる。
e’1)ステップd)で定められた重合プラトーに達する時間に測定された特性の値Vp
(TA)を用いて、サンプルのDダイマーのレベル(Ddi
S)から炎症の関数として調整されたDダイマーのレベルであるDdi
S/Iを算出するステップ、および
e’2)血管内フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベル(R)を定めるために、Dダイマーのレベル<4μg/mlに対してe’1)で得られたレベルDdi
S/Iを補正するステップ。
【0147】
ステップe’1)。よってステップe’1)は、次の等式によって、ステップd)で定められた重合プラトーに達する時間に測定された特性の値Vp
(TA)を用いて、サンプルのDダイマーのレベル(Ddi
S)から炎症の関数として調整されたDダイマーのレベルDdi
S/Iを算出するステップで構成される。
【0149】
ここで[Fib]
(Vp(TA))は、等式y=aln(x)−bを有する標準曲線における特性の値(Vp
(TA))に対して演繹されるフィブリノゲン濃度であり、ここで
yはフィブリン重合プラトーに達する時間(TA)に測定された特性の値であり、
xはフィブリノゲン濃度であり、
aおよびbは、フィブリンプラトーのレベル(値または振幅)とフィブリノゲン濃度とを結び付ける対数方程式に対する定数であり、
標準曲線は血液サンプルを用いて確立されたものであり、この血液サンプルのフィブリノゲン濃度が定められており、かつその特性の値(Vp
(TA))が本発明による方法のステップa)〜d)によって定められている。
【0150】
よって、炎症の関数として調整されたDダイマーのレベルDdi
S/Iは、初期フィブリノゲン換算量(FEU)で表される。
【0151】
ステップe’2)。ステップe’2)は、低いDダイマーのレベル(<4μg/ml)に対してe’1)で得られたレベルDdi
S/Iを補正することによって、血管内フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベル(R)を算出するステップで構成される。この低いDダイマーのレベルをフィブリノゲンの関数として補正することは、比率Ddi
S/Iを0.5μg/ml FEU(フィブリノゲン換算量)の閾値に近付けるという目的を有する。
【0152】
レベルRは、次の等式を用いて算出される。
R=Ddi
S/I+[0.5−F
Ddi−S]
ここでF
Ddi−Sは低いDダイマーのレベル(<4μg/ml)に対する補正因子であり、この値は次の等式を有する標準曲線におけるサンプルのDダイマーのレベル(Ddi
S)に対する補正因子の値Fに対応し、
y=ax
2+bx+c
ここでyは補正因子Fであり、
xはDダイマーのレベルであり、
a、bおよびcは、補正因子とDダイマーのレベルとを結び付ける多項式に対する定数であり、
標準曲線は血液サンプルに対して確立されたものであり、この血液サンプルのDダイマーのレベルが定められており、かつそれに対する補正因子が経験的に定められているため、比率Ddi
S/Iが0.5μg/ml FEU(フィブリノゲン換算量)の閾値に関連付けられる。
【0153】
本発明者らによって確立された標準曲線は、
図14(B)に提供されている。
【0154】
サンプルの分類。ステップe’)は、炎症の関数としてサンプルを分類するステップで構成されるステップも含む。より具体的には、このステップは、比率1/[Fib]
(Vp(TA))を算出するステップであって、ここで[Fib]
(Vp(TA))はe’1)で演繹されたフィブリノゲン濃度である、ステップと、患者からのサンプルを以下のとおりに分類するステップとで構成される。
− もし比率1/[Fib]
(Vp(TA))>0.20(すなわち[Fib]
(Vp(TA))<5g/l)であれば、グループI(炎症を有さない患者)、または
− もし比率1/[Fib]
(Vp(TA))≦0.20(すなわち[Fib]
(Vp(TA))≧5g/l)であれば、グループII(炎症を有する患者)。
【0155】
ステップf’)
本発明による方法の第2のバージョンのステップf’)は、e’)で得られたフィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルRを閾値に対して比較するステップで構成される。
【0156】
e’)で得られたフィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルRが閾値未満(好ましくは0.5μg/mlの閾値未満)であることは、その患者における血栓症を除外することを可能にする。e’)で得られたフィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルRが閾値より高い(好ましくは0.5μg/mlの閾値より高い)ことは、その患者における血栓症の可能性を示す。
【0157】
ステップg’)
ステップg’)は、線溶亢進において、大過剰に生成されたプラスミンによってフィブリノゲンが分解されるという事実に基づいている。
図2に示されるとおり、Dダイマーを含むフィブリン分解産物(FDP)と、フィブリノゲン分解産物(FgDP)とが循環に現れる。よって、がんおよび顕著な凝固活性化状態においては、高いDダイマーのレベルと高いFgDPのレベルとの組み合わせが生じる。よって、線溶亢進によって生成されたFgDPのレベル、または線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベルを意味する区別なしに測定することが可能である。
【0158】
したがって本発明による方法は、サンプル中のDダイマーのレベル(Ddi
S)と、e’)で得られたフィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベル(R)とを用いるか、またはe’1)で得られた炎症の関数として調整されたDダイマーのレベルDdi
S/Iと、e’)で得られたレベルRとを用いて、凝固活性化状態において存在する線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベルを算出するステップg’)を含む。
【0159】
より具体的には、ステップg’)は次のステップで構成される。
g’1)線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベルDdi
HFまたは(R/Ddi
S)
patientを、ステップe’)で定められた調整および補正されたDダイマーのレベル(R)と、サンプル中のDダイマーのレベル(Ddi
S)との比率として、次の等式を用いて算出するステップ、
【0161】
g’2)線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベルDdi
HFまたは(R/Ddi
S)
patientを、ステップe’)で定められた調整および補正されたDダイマーのレベル(R)と、e’1)で得られた炎症の関数として調整されたDダイマーのレベルDdi
S/Iとの比率として、次の等式を用いて算出するステップ。
【0163】
ステップh’)
最後に、本発明による方法の第2のバージョンのステップh’)は、g’)で得られた線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベル(Ddi
HF)を閾値に対して比較するステップと、比率TA/FFTを閾値に対して比較するステップとを含む。ステップh)で用いられるFFTをステップh’)で用いられる比率TA/FFTに置き換えることによって、凝固活性化状態および血栓形成傾向と、フィブリン血餅重合プラトーに達する時間がより急速である血栓症とを区別することが可能になる。
【0164】
より具体的には、ステップh’)は最初に次のステップで構成されるステップを含む。
h’1)サンプルのレベルDdi
Sに対して、次の等式を有する標準曲線において比率(R/Ddi
S)
standardの値を定めるステップであって、
y=ax
−b
ここでxはDダイマーのレベルであり、
yは血管内フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルと、Dダイマーのレベルとの比率(R/Ddi
S)であり、
aおよびbは、比率R/Ddi
SとDダイマーのレベルとを結び付ける等式に対する定数であり、
標準曲線は、次のとおりに確立されたものであり、
− 患者からのサンプルがグループIに分類されたとき:本発明の方法のステップe’)によってグループIに分類された血液サンプル、既知であるか、または定められたそのDダイマーのレベル、および本発明による方法のステップa)〜e’2)によって定められたそのレベルRを用い、
− 患者からのサンプルがグループIIに分類されたとき:本発明の方法のステップe’)によってグループIIに分類された血液サンプル、既知であるか、または定められたそのDダイマーのレベル、および本発明による方法のステップa)〜e’2)によって得られたそのレベルRを用いる、ステップ、
h’’1)g’1)で得られる線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベル(R/Ddi
S)
patientの値と、h’1)で得られる比率(R/Ddi
S)
standardの値とを比較するステップであって、ここで(R/Ddi
S)
patientが比率(R/Ddi
S)
standardよりも低いことは、その患者における血栓症を除外することを可能にし、(R/Ddi
S)
patientが比率(R/Ddi
S)
standard以上であることは、その患者における血栓症の可能性を示す、ステップ、
【0165】
h’2)サンプルのレベルDdi
Sに対して、次の等式を有する標準曲線において比率(R/Ddi
S/I)
standardの値を定めるステップであって、
y=ax
−b
ここでxはDダイマーのレベルであり、
yは血管内フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルと、炎症の関数として調整されたDダイマーのレベルとの比率(R/Ddi
S/I)であり、
aおよびbは、比率R/Ddi
S/IとDダイマーのレベルとを結び付ける等式に対する定数であり、
標準曲線は、次のとおりに確立されたものであり、
− 患者からのサンプルがグループIに分類されたとき:本発明の方法のステップe’)によってグループIに分類された血液サンプル、および既知であるか、または定められたそのDダイマーのレベル、本発明による方法のステップa)〜e’1)によって得られたそのレベルDdi
S/I、および本発明による方法のステップa)〜e’2)によって得られたレベルRを用い、
− 患者からのサンプルがグループIIに分類されたとき:本発明の方法のステップe’)によってグループIIに分類された血液サンプル、および既知であるか、または定められたそのDダイマーのレベル、本発明による方法のステップa)〜e’1)によって得られたそのレベルDdi
S/I、および本発明による方法のステップa)〜e’2)によって得られたそのレベルRを用いる、ステップ、
h’’2)g’2)で得られる線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベル(R/Ddi
S/I)
patientの値と、h’2)で得られる比率(R/Ddi
S/I)
standardの値とを比較するステップであって、ここで(R/Ddi
S/I)
patientが比率(R/Ddi
S/I)
standardよりも低いことは、その患者における血栓症を除外することを可能にし、(R/Ddi
S/I)
patientが比率(R/Ddi
S/I)
standard以上であることは、その患者における血栓症の可能性を示す、ステップ。
【0166】
ステップh’)はさらに、次のステップで構成されるステップを含む。
h’3)比率TA/FFTを算出するステップであって、ここでTAはステップd)で定められたフィブリン重合プラトーに達する時間であり、FFTはステップd)で定められたフィブリン血餅形成時間である、ステップと、
h’’3)患者からのサンプルがグループIに分類されたとき:比率TA/FFTを第1の閾値、特に135秒の対照時間に対する第1の閾値1.75に対して比較するステップであって、ここで
比率TA/FFTが第1の閾値より高いことは、グループIに分類された患者における血栓症を除外し、かつ血栓形成傾向または凝固活性化状態を診断することを可能にし、
比率TA/FFTが第1の閾値以下であることは、グループIに分類された患者における血栓症を示す、ステップ、
患者からのサンプルがグループIIに分類されたとき:比率TA/FFTを第2の閾値、特に135秒の対照時間に対する第2の閾値1.65に対して比較するステップであって、ここで
比率TA/FFTが第2の閾値より高いことは、グループIIに分類された患者における血栓症を除外し、かつ血栓形成傾向または凝固活性化状態を診断することを可能にし、
比率TA/FFTが第2の閾値以下であることは、グループIIに分類された患者における血栓症を示す、ステップであり、
ここで対照時間とは、ステップa)〜d)に従って測定された、血栓症の疑いのない健康な対象からのサンプルの平均フィブリン血餅形成時間である。
【0167】
テストされたサンプルに基づいて、本発明者らは、ステップe’)でグループIに分類されたサンプルに対する第1の閾値1.75と、ステップe’)でグループIIに分類されたサンプルに対する第2の閾値1.55とを定めた。これらの閾値は予め定められたものであり、テストされるサンプルの総数または使用される試薬のバッチの関数として変動し得ることを当業者は理解するだろう。
【0168】
フィブリン血餅形成時間(FFT)を考慮することによって、血栓症(それに対するTA/FFTは閾値以下である)と、凝固活性化状態および血栓形成傾向を有する血栓症(それに対するTA/FFTは閾値より高い)とを区別することが可能である。実際に、血栓形成傾向におけるFFTは常に短い(≦[対照時間−1標準偏差]、たとえば135秒の対照時間に対して<120秒)のに対し、凝固活性化状態におけるFFTは対照時間に等しい。
【0169】
好ましくは、この方法の最後に得られる静脈血栓症に対して特異的なDダイマーのレベルが高いことは、肺塞栓症(PE)または深部静脈血栓症(DVT)の程度を表す。よって、本発明による方法によって患者における血栓症が診断される場合に、ステップe’)で得られるDダイマーのレベルRを臨床的に用いられる尺度、すなわち0.5μg/mlの閾値に対して関連付けたものは、PEまたはDVTの程度、したがって疾患の重篤度に比例する。実際に、重篤度の診断は通常はイメージングにおいて、発症した肺動脈の数およびタイプによって定められる。
【0170】
より具体的には、本発明による方法のステップh’’3)において患者における血栓症が診断される場合、静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベル(Ddi
VTE)は、ステップe’)で得られるDダイマーのレベルRである。
【0171】
ステップh’’1)、h’’2)およびh’’3)において血栓症が除外されるが、ステップe’)で得られたレベルRは閾値より高く、好ましくは0.5μg/mlの閾値よりも高い場合、この方法は、次の等式を用いて静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベル(Ddi
VTE)を算出するステップで構成されるステップも含み、
【0173】
ここでDdi
Sは、サンプル中のDダイマーのレベルである。この算出は、静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーのレベルを、閾値より下のレベルに関連付けることを可能にする。
【0174】
こうしてこの方法の最後に提供される静脈血栓症に対して特異的なDダイマーのレベルは、次いで肺塞栓症または深部静脈血栓症の程度を表す。
【0175】
C.自動化
ステップc)の光学濃度の測定は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法によって行われ得る。たとえば、ステップc)のOD測定は任意の好適な既存の機器、特に濁度計または分光光度計を用いて行われ得る。特にいくつかの実施形態においては、本発明による方法の少なくともステップc)およびd)が、ルーチン自動診断デバイス、好ましくは凝固アナライザにおいて行われる。優先的には、本発明による方法のすべてのステップが、こうした自動デバイスにおいて行われる。より優先的には、この測定はルーチン自動デバイスにおいてDダイマーの通常のアッセイと同時に行われる。たとえば、実施例9および10に記載されるとおり、本発明による方法はスターゴ(Stago)グループのSTA−R(登録商標)MaxまたはSTA−R(登録商標)Evolution Expert Series自動デバイスにおいて行われる。
【0176】
こうした自動デバイスは、同時にサンプルをロードし、混合動作およびインキュベーションを行い、ある波長における光学濃度を測定して、緊急の状況における単一のサンプル、または同時に複数のサンプルによって得られる血餅形成プロファイルを定めることを可能にする。全体のプロセスが10分未満で行われる。このことは、このプロセスを高速で信頼性が高く、かつ患者において再現性のある方法にする。
【0177】
本発明による方法は、遠隔生物学デバイスまたは患者のベッドサイドのポータブルデバイスにおいても使用され得る。いくつかの好ましい実施形態において、使用される遠隔生物学デバイスまたはポータブルデバイスは、物理的方法、好ましくは光学的方法、たとえばトロンボエラストグラフィもしくはレオメトリ法、または画像分析法などに基づくものである。優先的には、緊急の状況において単一のサンプルによって得られるフィブリン血餅形成プロファイルを定めるために、本発明による方法のこの変形のすべてのステップが、こうしたデバイスにおいて行われる。Dダイマーの通常のアッセイに対するものと同じ血液のチューブを用いて、全体のプロセスが5分未満で行われる。
【0178】
II − インビトロの診断の方法
本発明に従う静脈血栓塞栓症に対して特異的なDダイマーをアッセイするための方法は、患者からの(たとえば血漿または全血などの)血液サンプルを用いて、これらの患者の年齢にかかわらず、かつこれらの患者の根底にある病理学的または生理的条件にかかわらず、これらの患者における静脈血栓塞栓症を診断することを可能にする。本発明者らによって得られた結果に示されるとおり、本発明による方法は、血栓塞栓症である患者の100%を偽陰性なしに診断することを可能にし、かつDダイマーをアッセイするための通常の方法よりも多くの患者を除外することを可能にする。
【0179】
よって本発明は、患者における静脈血栓塞栓症(VTE)のインビトロ診断のための方法に関し、この方法は次のステップで構成されるステップを含む。
− サンプル中のVTEに対して特異的なDダイマーのレベルを得るために、本明細書に記載される方法の第1または第2のバージョンに従って、患者からの血液サンプル中のVTEに対して特異的なDダイマーの定量的アッセイを行うステップと、
− その患者に関する診断を提供するステップとである。
【0180】
一般的に、テストされる患者が高齢の個体であるか、がんである患者であるか、感染症である患者であるか、または血栓形成傾向である患者である場合に、好ましくは本発明に従うVTEに対して特異的なDダイマーをアッセイするための方法の第2のバージョンが選択されることになる。それ以外の場合には、本発明による方法の第1のバージョンが用いられてもよい。
【0181】
この方法の第1のバージョンが用いられるとき、その患者に関する診断とは(i)血栓症の除外、(ii)急性凝固活性化状態、または(iii)血栓症であってもよい。この方法の第2のバージョンが用いられるとき、その患者に関する診断とは(i)血栓症の除外、(ii)急性凝固活性化状態、(iii)血栓形成傾向を有する患者における血栓症、または(iv)低レベルの重篤度を有する血栓症もしくは肺梗塞の事象における血栓症を含む血栓症であってもよい。
【0182】
別様に定義されない限り、記載において用いられるすべての技術用語および科学用語は、この発明が属する技術分野の通常の専門家によって一般的に理解される用語と同じ意味を有する。同様に、本明細書において言及されるすべての出版物、特許出願、すべての特許および他のすべての参考文献は、引用によって援用される。
【実施例】
【0183】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明するものである。しかし、これらの実施例は単なる例示のみのために提供されるものであって、いかなるやり方でも本発明の範囲を限定しないことが理解される。
【0184】
実験プロトコル
実施例において用いたプロトコルは、以下のとおりである。
プロトコルA
プロトコルAは、STAR(登録商標)Evolution Expert Series自動凝固アナライザ(スターゴ)において行う方法である。
【0185】
STAR(登録商標)Evolution自動デバイスの8つのキュベットに、機器によって以下を同時に加える(ステップa))。
− Dダイマーの通常のアッセイに対して意図されたクエン酸チューブを2500gの速度にて15分間遠心分離した後に得た、200μlの純粋な血漿サンプル、
− 50μlの組織因子およびリン脂質の混合物[TF+PL]、凍結乾燥して水で戻したもの;最終濃度2〜5pMの組織因子(TF)および4μMのリン脂質(PL)。
【0186】
自動デバイスはアームによって撹拌し、37℃にて300秒間のインキュベーションを行う。自動デバイスは次いで、50μlのCaCl
2を加えて最終濃度16.7mMにし、このトリガ試薬をニードルによって撹拌する(ステップb))。自動デバイスは次いで、540nmにおける光学濃度(OD)を時間の関数として10分間測定し(ステップc))、フィブリン形成曲線をプロットする。
【0187】
図5a(ステップd))に記載したとおり、測定の「後処理」に対するアルゴリズムは、曲線の接線からフィブリン形成時間(FFT)を算出し、かつプラトーの時間TAにおけるODおよび時間T0〜10秒におけるODから、プラトーに達する時間(TA)におけるODの変動(DOD)を算出することを可能にする。
図8および実施例3に示すとおり、凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数として調整されたDダイマーのレベルを、式[(X)x(FFT/対照時間)]によって算出し、ここでXは測定したDダイマーのレベルである。
【0188】
炎症によって生成されたDダイマーの関数として調整されたDダイマーのレベルを、比率[調整Dダイマー/炎症]によって算出する。
図9および実施例4に示すとおり、炎症のレベルを等式y=aln(x)−bから定め、ここでyはDODであり、xはフィブリノゲン濃度であり、aおよびbはフィブリンプラトーのレベルとフィブリノゲン濃度とを結び付ける対数方程式に対する定数である。よって、Dダイマーをフィブリノゲン換算量(FEU)で表す(ステップe))。
【0189】
血餅重合に達する時間を比率TA/FFTによって算出し、ここでTAはステップd)で定めたフィブリン重合プラトーに達する時間であり、FFTはステップd)で定めたフィブリン血餅形成時間である。
【0190】
プロトコルB
プロトコルBは、Rotem(登録商標)デルタ自動凝固アナライザにおいて行う方法である。
【0191】
37℃に予熱した、Dダイマーの通常のアッセイに対して意図されたクエン酸チューブから取った、300μlの無希釈全血(本発明による方法の変形のステップa)およびb))を、40μlの組織因子およびリン脂質の混合物[TF+PL]を含有する前もって予熱した機器のキュベットに加え、この混合物は凍結乾燥して水で戻したものであり;2〜5pMの組織因子(TF)および4μMのリン脂質(PL)の最終濃度にし、かつ16.7mMのCaCl
2の最終濃度にする。トロンボエラストマー測定を開始し(本発明による方法の変形のステップc))、次いで血液と試薬との混合物300μlを機器によって分析し、この機器はフィブリン血餅の凝固活性化、形成、重合、および安定性を30分間継続的に記録して、通常のパラメータ(CT、CFT、角度α、A5、A10、MCF、MCF−t)を提供する。
【0192】
図5(B)に記載したとおり、接線からのフィブリン形成時間(FFT)およびフィブリン形成曲線のプラトーに達する時間(TA)における振幅を、時間の関数としての振幅の時間変化から算出する(本発明による方法の変形のステップd))。実施例3に示すとおり、凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数として調整されたDダイマーのレベルを、式[(X)x(FFT/対照時間)]によって算出し、ここでXは測定したDダイマーのレベルである。
【0193】
炎症によって生成されたDダイマーの関数として調整されたDダイマーのレベルを、比率[調整Dダイマー/炎症のレベル]によって算出する。
図9および実施例4に示すとおり、プラトーに達する時間における振幅(mm)とフィブリノゲン濃度とを結び付ける線形方程式からこのレベルを定める。よって、Dダイマーを初期フィブリノゲン換算量(FEU)で表す(本発明による方法の変形のステップe))。
【0194】
プロトコルC
プロトコルCは、STAR(登録商標)Evolution Expert Series自動凝固アナライザ(スターゴ)において行う方法である。
【0195】
STAR(登録商標)Evolution自動デバイスのキュベットに、機器によって以下を同時に加える(ステップa))。
− 200μlの陰性対照または陽性対照血漿の各々のサンプル、凍結乾燥して水で再構成したもの、
− 50μlの組織因子およびリン脂質の混合物[TF+PL]、凍結乾燥して水で戻したもの;最終濃度2pMの組織因子(TF)および4μMのリン脂質(PL)。
【0196】
自動デバイスはアームによって撹拌し、37℃にて300秒間のインキュベーションを行い、次いで50μlのCaCl
2を加えて最終濃度16.7mMにし、このトリガ試薬をニードルによって撹拌する(ステップb))。自動デバイスは次いで、540nmにおける光学濃度(OD)を時間の関数として10分間測定し(ステップc))、各対照血漿に対するフィブリン形成曲線をプロットする。
【0197】
図5A(ステップd)))に記載したとおり、測定の「後処理」に対するアルゴリズムは、各対照血漿に対する曲線の接線からフィブリン形成時間(FFT)を算出し、かつプラトーの時間TにおけるODおよび時間T0〜10秒におけるODから、プラトーに達する時間(TA)におけるODの変動(DOD)を算出することを可能にする。
【0198】
図8および実施例3に示すとおり、凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数として調整されたDダイマーのレベルを、式[(X)x(FFT/対照時間)]によって算出し、ここでXは測定したDダイマーのレベルである。
【0199】
炎症によって生成されたDダイマーの関数として調整されたDダイマーのレベルを、比率[調整Dダイマー/炎症のレベル]によって算出する。
図9(A)および(B)ならびに実施例4に示すとおり、このレベルを等式y=aln(x)−bから定め、ここでyはDODであり、xはフィブリノゲン濃度であり、aおよびbは(a and b of)フィブリンプラトーのレベルとフィブリノゲン濃度とを結び付ける対数方程式に対する定数である。よって、Dダイマーをフィブリノゲン換算量(FEU)で表す(ステップe))。
【0200】
実施例1:正常な患者および(血栓症を有するかまたは有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からのさまざまな血漿のフィブリン形成時間
この実施例において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップd)は、この方法の第1または第2のバージョンのものであることを意味する区別を有さない。
【0201】
図5および以下の表1に示すとおり、テストしたPEおよび/またはDVTの疑いのある患者からのサンプルの中で、正常な患者(血栓症の疑いのない正常で健康な対象)、血栓症の除外を有する患者、およびイメージングにおいて静脈血栓症の陽性の診断を有する患者から、凝固活性化状態を有する患者のサンプルを、凝固亢進を表すフィブリン形成時間(FFT)、プラトーに達する時間(TA)、および血餅重合に達する時間(比率TA/FFT)に関して区別する。
【0202】
凝固亢進状態を示す患者に対するフィブリン形成時間(FFT)は、より短い。しかし驚くべきことに、がん患者を含む血栓症の除外を有する患者とは反対に、PEおよび/またはDVTの診断を有する患者には凝固亢進状態が存在しない。本発明の方法の第1のバージョンにおいては、血栓症を有する患者と有さない患者とを識別するためにこのことを利用している。
【0203】
抗凝固剤処置を受けている患者を除き、含まれるすべての患者のプラトーに達する時間は8分間を超えず、抗凝固剤処置を受けている患者に対する結果の提供はフィブリン形成時間に限っている。
【0204】
血餅重合に達する時間は、正常な患者、または凝固活性化状態を有する患者、またはがん患者を含む血栓症の除外を有する患者よりも、PEおよび/またはDVTの診断を有する患者において短くなる(比率TA/FFTがより低い)。本発明の方法の第2のバージョンにおいては、血栓症を有する患者と有さない患者とを識別するためにこのことを利用している。
【0205】
表1.フィブリン形成時間(FFT)、およびプラトーに達する時間(TA)、および血餅重合に達する時間(TA/FFT)に関する、正常な患者および血栓症またはがんを有するか否かにかかわらず血栓症の疑いのある患者の血漿の中からの、凝固亢進状態を有する患者の血漿の識別。
【0206】
【表1】
【0207】
実施例2:(血栓症を有するかまたは有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からのさまざまな血漿における凝固亢進によるDダイマーの生成
この実施例において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップe)は、この方法の第1のバージョンのものである。
【0208】
図8(A、B)に示すとおり、テストしたPEおよび/またはDVTの疑いのある患者からのサンプルの中では、がんを有するかまたは有さない、イメージングにおいて血栓症の陽性の診断を有する患者または血栓症の除外を有する患者のいずれに対しても、フィブリン形成時間の関数として生じたDダイマーはサンプルの初期Dダイマーとよく相関する。
【0209】
次の式によってサンプルのDダイマーのレベルXから調整DダイマーYを算出することによって、凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数としてサンプルのDダイマーを調整するために、線形関数を利用する。
【0210】
【数15】
【0211】
このことによって、血栓症を有する患者におけるフィブリン形成時間FFTの伸長に対して比例的にDダイマーを増幅し、かつ凝固亢進を有する患者におけるフィブリン形成時間FFTの短縮に対して比例的にDダイマーを減算することが可能になる。
【0212】
この比率は、アッセイに用いるDダイマー試薬のタイプおよびバッチの関数として変動し、かつフィブリン形成を測定するために用いる組織因子−リン脂質試薬のバッチの関数として変動する。次いで、試薬のバッチをこの式に従って有利に較正できる。
【0213】
実施例3:(血栓症を有しおよび有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からのさまざまな血漿に対する、凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数としてのDダイマーの調整
この実施例において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップe)は、この方法の第1のバージョンのものである。
【0214】
特に実施例2および以下の表2に記載したとおり、凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数としてDダイマーを調整するために、本発明による方法の実施例2の線形相関y=ax+bを利用する。以下の表2に示すとおり、特に血栓症を有さない患者よりも血栓症を有する患者の方がDダイマーのレベルが3.6倍高く、血栓症を有さないがん患者よりも血栓症を有するがん患者の方が2.3倍高いことに基づいて、血栓症を有する患者と有さない患者とを識別する。
【0215】
凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数としてDダイマーを調整することによって、凝固活性化状態における凝固亢進によって生成されたDダイマーを減算することが可能になる。
【0216】
表2.(血栓症を有するかまたは有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からの血漿における、凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数としてのDダイマーの調整
【0217】
【表2】
【0218】
実施例4:本発明の方法による、正常な患者および(血栓症を有するかまたは有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からのさまざまな血漿のフィブリンプラトーのレベル
血漿サンプル
この実施例の第1の部分において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップd)は、この方法の第1または第2のバージョンのものであることを意味する区別を有さない。
【0219】
図6および
図9ならびに以下の表3に示すとおり、テストしたPEおよび/またはDVTの疑いのある患者からのサンプルの中で、イメージングにおいて血栓症の陽性の診断を有するか、または血栓症の除外を有する患者からのサンプルと、凝固活性化状態を有する患者および正常な患者(血栓症の疑いのない正常で健康な対象)とを、炎症を表すフィブリン形成プラトーのレベルに関して区別する。本発明の方法によるDODプラトーのレベルは、血栓症の存在または除外とは独立に、
図6(A、B)においてC反応性タンパク質(CRP)およびフィブリノゲンによって表される炎症が大きいほど高くなる。
【0220】
図9(A、B)に記載したとおり、最大血餅重合を表すフィブリン形成プラトーのレベルは、患者にかかわらずサンプルのフィブリノゲンのレベルと対数方程式y=alnx+bに従ってよく相関し、ここでyはプラトー開始時間における光学濃度の変動であり、lnxはフィブリノゲンのレベルを表すxのネイピア対数である。変数xは、xのネイピア対数の指数関数によって、等式から算出する。以下の表3に示すとおり、フィブリノゲンのレベルとDODとを結び付ける因子は、患者にかかわらず一定である。
【0221】
以下の表3に示すとおり、がんを有する患者の場合を含む、血栓症を有する患者および有さない患者は、フィブリノゲンおよび/またはDODの量によって表される炎症に基づいて識別する。
【0222】
表3.フィブリン形成プラトーに達する時間におけるDODによって定めた(血栓症を有するかまたは有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からの血漿のフィブリンプラトーのレベル。
【0223】
【表3】
【0224】
全血サンプル
この実施例の第2の部分において用いるプロトコルは、プロトコルBである。この方法は、抗血小板阻害剤、この場合はサイトカラシンDの存在下で行う。
【0225】
炎症のレベルは、
図5(B)に示した全血における代替的方法に従うプラトーに達する時間における振幅と、
図9(C)に示したクラウスにおけるフィブリノゲンのレベルとを結び付ける線形方程式から定める。本発明による方法の変形によってテストする患者に対して、プラトーに達する時間における振幅に基づく方法と、DODの決定に基づく本発明の方法との両方によって識別を行う。
【0226】
実施例5:本発明の方法による、正常な患者および(血栓症を有するかまたは有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からのさまざまな血漿に対する、炎症によって生成されたDダイマーの関数としてのDダイマーの調整
この実施例において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップe)およびf)は、この方法の第1または第2のバージョンのものであるという区別を有さない。
【0227】
本発明による方法の実施例4の対数関数を利用して、比率Rによって、炎症によって生成されたDダイマーの関数としてDダイマーを調整し、
【0228】
【数16】
【0229】
かつそれらをフィブリノゲン換算量FEUで表す。
【0230】
プラスミンが生成するDダイマーの量は、使用するラテックス試薬の抗体8D2および2.1.16によるFEU単位の約50%であるため、測定の陽性閾値は0.5μg/mlである。
【0231】
図12(A、B)および以下の表4に示すとおり、患者からのサンプルにおいて肺塞栓症(PE)または深部静脈血栓症(DVT)の確率を定めるために、閾値、好ましくは0.5μg/mlの閾値に対して調整Dダイマーのレベルを定める。
【0232】
Dダイマーに関して除外された127人の患者はすべて、陰性の調整Dダイマーレベルを有する。偽陽性のDダイマーを有する、血栓症を有さない88人の患者のうち、80%は陰性の調整Dダイマーレベルを有してイメージングを回避する。よって、血栓症を有さない患者の90%より多くが、本発明の方法によってイメージングを回避する。
【0233】
以下の表4に示すとおり、血栓症を有する患者の100%が、0.52μg/mlから10.5μg/mlの範囲の陽性の調整Dダイマーレベルを有する。
【0234】
0.50μg/mlから2.73μg/mlのレベルを有する調整Dダイマーの点から偽陽性であることを見出した、血栓症を有さない患者からのサンプルのうち、1/3はレベル<0.60μg/mlを有し、1/3はがんを有し、1/3は凝固活性化状態を有する。
【0235】
表4.凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数および炎症に対して調整されたDダイマーの関数としてのDダイマーの調整による、(血栓症を有するかまたは有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からの血漿の識別
【0236】
【表4】
【0237】
実施例6:血管内フィブリンによって生成されたDダイマーと、線溶亢進に関する高い凝固活性化状態において生成されたDダイマーとの区別
この実施例において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップg)は、この方法の第1のバージョンのものである。
【0238】
これらの活性化状態において存在するDダイマーと、血栓症のDダイマーとの区別を、線溶亢進に関して行う。急性活性化状態におけるプラスミンによるフィブリノゲン分解産物FgDPの生成は、それらの除外を可能にする。スターゴ試薬に対しては
図10(A、B)、IL試薬(ステップg))に対しては
図11(A、B)の線形方程式から線溶亢進を算出する。
【0239】
線溶亢進の存在下で(FgDP>7μg/ml)、血管内フィブリンによって生成されたFgDPは、血栓症を有さない患者からのサンプルよりも、血栓症を有する患者に由来するサンプルの方が系統的に低い。これはどのDダイマー試薬を用いてもそうである。このことによって、以下の表5に示すとおり、1μg/mlの閾値において陽性であるDダイマー調整の前後のFgDPの差に基づいて、血栓症を有する患者と血栓症を有さない患者とを識別することが可能になる。反対に、血栓症を有さない患者において差が陰性または<1.0であることは、急性凝固活性化状態に注意を向けることを可能にする。
【0240】
表5.STAR(登録商標)(スターゴ)における光学的方法による、FgDPの演繹による線溶亢進の関数としての(血栓症を有するかまたは有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からの血漿の識別
【0241】
【表5】
【0242】
よって、凝固亢進(H)、炎症(I)、および線溶亢進(F)によって等しく生成されたDダイマーの関数として調整された陰性のDダイマーのレベルに基づいて、95%の患者がイメージングを回避する。
【0243】
実施例7に示すとおり、偽陽性のうちの3つは閾値の限界にあり、4つはがんであり、3つは凝固活性化の原因を有して、フィブリン形成時間のかなりの短縮に基づいて偽陰性を生じることなくイメージングを回避できる。
【0244】
実施例7:本発明の方法によるDダイマーの調整と比率[クラウスの方法によるDdi/フィブリノゲン]との比較
この実施例において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップh)は、この方法の第1のバージョンのものである。
【0245】
図12および以下の表6によって示すとおり、本発明の方法の第1のバージョン(ステップh))に従う凝固亢進(H)、炎症(I)、および線溶亢進(F)によって生成されるDダイマーの関数としてのDダイマーの調整は、比率[Dダイマー/フィブリノゲン]よりも効果的である。以下の表6に示すとおり、因子5.3を掛けた調整Dダイマーのレベルが高いことに基づいて、血栓症を有する患者を血栓症を有さない患者から識別する。よって、
図12に示されるとおり、偽陽性レベルのDダイマーを有する患者の92%、すなわち血栓症を有さない患者の97%は、ステップh)に従うDダイマーの調整によって陰性にされる。7つの偽+のうち、4つはがんであり、3つは閾値の限界である。
【0246】
表6.(血栓症を有するかまたは有さず、かつがんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からの血漿における、比率(ration)[クラウスの方法によるDダイマー/フィブリノゲン]による調整と比較した、本発明の光学的方法によるDダイマーの調整(H:凝固亢進、I:炎症、F:線溶亢進、Ddi:Dダイマー、Fib:フィブリノゲン)
【0247】
【表6】
【0248】
比率[Dダイマー/フィブリノゲン]による偽陰性を本発明の方法によって検出することによって、血栓症を見逃さないことが可能になる。
【0249】
本発明の方法による偽陽性は比率[Dダイマー/フィブリノゲン]による偽陽性よりも少ないため、イメージングによって診断される患者の数を減らすことが可能になる。
【0250】
実施例8:PEおよび/またはDVTの確率に関する、本発明の方法に従って調整されたDダイマーのレベルの影響
このステップにおいて用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップh)は、この方法の第1のバージョンのものである。
【0251】
本発明の方法に従って調整されるDダイマーの閾値は、有利には年齢の関数として調整したものではない。なぜならDダイマーのレベルと、凝固活性化と、炎症とは、50歳より後に年齢の関数として徐々に増加するからである。その結果として、比率を年齢の関数として調整していない。
【0252】
本発明の方法に従って調整したDダイマーのレベルが高いほど、フィブリン形成時間を有する式およびDODによる比率の分母が大きくなり、PEまたはDVTの確率が高くなる。
【0253】
以下の表7に示すとおり、PEの程度が高いほど、かつDVTが遠位または表在性ではなくて近位であるほど、調整Dダイマーは高くなる。
【0254】
表7.凝固亢進(H)、炎症(I)、および線溶亢進(F)に対して調整されたDダイマーのレベルの関数としてのPEおよびDVTの確率、(FFT:フィブリン形成時間、T:平均対照時間−1標準偏差=120秒)、FgDP:フィブリノゲン分解産物、Ddi:Dダイマー、Act:凝固活性化状態)。
【0255】
【表7】
【0256】
実施例9:フィブリン形成測定の機器間の再現性
この実施例において用いるプロトコルは、この方法の第1または第2のバージョンのステップa)、b)、c)、およびd)に従って次のとおりに用いた、STA−R(登録商標)におけるプロトコルCである。
【0257】
STA−R(登録商標)Evolution Expert Series自動デバイス(スターゴ)の8つのキュベットに、機器によって以下を同時に加える。
− 200μlの対照血漿サンプル:正常(STA(登録商標)CCN);凝固亢進性(プロテインSを枯渇させた血漿、STA DEF PS)、および低線溶対照血漿(プラスミノゲンアクチベータインヒビター(plasminogen activator inhibitor)PAI−1、PAI 4Cを含有する血漿)、
− 50μlの組織因子とリン脂質との混合物[TF 2pM最終+PL 4μM最終]。
【0258】
撹拌および37℃にて300秒間のインキュベーションの後、自動デバイスは50μlのCaCl
2を加えて最終濃度16.7mMにし、ニードルによって撹拌する。最後に、自動デバイスはフィブリン形成時間と、プラトーに達する時間(TA)における光学濃度の変動DODとを、540nmの波長にて時間の関数として10分間測定する。
【0259】
3つのSTAR(登録商標)機器において、この方法の機器間の再現性を次のとおりに定めた。3つの機器の各々において、連続する5日間にわたって2つの測定を12シリーズ、つまり24回の測定を行い、正常な対照血漿(CCN)と、病理学的な対照血漿(DPS:プロテインSを枯渇させた対照血漿、凝固亢進性、PAI:低線溶対照血漿)との各々2つのボトルを用い、すなわち各対照血漿に対して48回の測定を行った。ロスナー(Rosner)に従って、異常な値は除去した。
【0260】
フィブリン形成時間FFTに対して得た変動係数(CV:coefficients of variation)は、すべて6%未満である。以下の表8に示すとおり、プラトーの時間におけるODおよび最大ODに対して得た変動係数は、どの対照血漿でもすべて3%未満である。STAR(登録商標)間の変動は、どのパラメータおよび対照血漿でも2.5%未満である。
【0261】
表8.フィブリン形成の測定の機器間の再現性(CCN:正常な対照血漿、DPS:プロテインSを枯渇させた対照血漿、凝固亢進性、PAI:低線溶対照血漿)。
【0262】
【表8】
【0263】
実施例10:フィブリン形成測定の反復性
この実施例において用いるプロトコルは、この方法の第1または第2のバージョンのステップa)、b)、c)、およびd)に従って次のとおりに用いた、STA−R(登録商標)におけるプロトコルAである。
【0264】
STA−R(登録商標)Evolution Expert Series自動デバイス(スターゴ)の8つのキュベットに、機器によって以下を同時に加える。
− 200μlの、正常な患者または静脈血栓症の疑いがある患者もしくはない患者からのクエン酸血漿のサンプル、
− 50μlの組織因子とリン脂質との混合物[TF 2pM最終+PL 4μM最終]。
【0265】
撹拌および37℃にて300秒間のインキュベーションの後、自動デバイスは50μlのCaCl
2を最終濃度16.7mMにて加え、ニードルによって撹拌する。最後に、自動デバイスはフィブリン形成時間と、プラトーに達する時間(TA)における光学濃度の変動DODとを、540nmの波長にて時間の関数として10分間測定する。
【0266】
この方法の各パラメータおよびサンプルの各々に対して、2つ組の測定の反復性を4つのSTAR(登録商標)機器において定めた。正常な患者からの154の血漿をSTAR(登録商標)機器の1つにおいて試薬の第1のバッチによってテストし、血栓症の疑いのある患者からの83のサンプルのDダイマー、フィブリン形成時間、プラトーにおけるDOD、およびフィブリノゲンを残りの3つのSTAR(登録商標)機器において試薬の第2のバッチによってテストした。
【0267】
各々のパラメータに対して得た変動の平均および標準偏差を、以下の表9および表10において報告している。
【0268】
表9および表10に示すとおり、フィブリン形成測定に対して得た変動の平均は、154人の正常な患者に対して2%未満であり、83人の静脈血栓症を有する患者および有さない患者に対して1%未満である。
【0269】
フィブリン形成のパラメータの測定は、クラウスの方法におけるフィブリノゲンの測定と同様に反復性がある。
【0270】
特異的Dダイマーの測定は、Dダイマーおよび比率[Dダイマー/フィブリノゲン]の測定と同様に反復性がある。変動の平均は2.3%未満である。
【0271】
2つ組において特異的Dダイマーによって陽性にされ、比率[Ddi/Fib]によって陰性にされた5つのサンプルのうち、2つはイメージングで確認した肺塞栓症を有する患者からのものであり、2つは凝固過剰活性化を有し、1つは心疾患を有する患者からのものである。
すなわち、比率[Ddi/Fib]によって偽陰性であることを見出した、PEを有する2人の患者は本発明の方法によって診断できるが、PEを有さない1人の患者は本発明の方法によってイメージングを必要とする。
【0272】
表9.正常な患者からのサンプルにおけるフィブリン形成測定の2つ組の反復性。
【0273】
【表9】
【0274】
表10.イメージングにおける血栓症を有する患者および有さない患者からのサンプルにおける、フィブリン形成、Dダイマーおよび本発明の方法に従って調整されたDダイマー、ならびに比率[Dダイマー/フィブリノゲン]の測定の2つ組の反復性。
【0275】
【表10】
【0276】
実施例11:Dダイマーをアッセイするための別の試薬による、本発明の方法に従うDダイマーの調整
この実施例において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップe)からh)は、この方法の第1のバージョンのものである。
【0277】
Dダイマーをアッセイするためのインスツルメンテイション・ラボラトリー(IL)の方法によって、実施例2の式による凝固亢進(H)によって生成されたDダイマーの関数、実施例4の対数関数および実施例5の比率Rによる炎症(I)の関数、ならびに実施例6の線形方程式による線溶亢進(F)の関数としてDダイマーを調整する。
【0278】
凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数としてDダイマーを調整することによって、凝固活性化状態における凝固亢進によって生成されたDダイマーを減算することが可能になるが、表11に示すとおり、血栓症を有する患者と有さない患者とを識別することはできない。
【0279】
表11.血栓症の疑いのある患者からの血漿における、凝固亢進によって生成されたDダイマーの関数としてのDダイマーをアッセイするためのILの方法によるDダイマーの調整
【0280】
【表11】
【0281】
図13および表12に示すとおり、炎症によって生成されたDダイマーの関数としてのDダイマーの調整によって、血栓症を有する患者と有さない患者とを識別することが可能になる。よって、約90%の患者が、陰性の調整Dダイマーレベルに対する2つのスターゴおよびIL試薬の1つまたは他のものによるイメージングを回避できる。
【0282】
表12.血栓症の疑いのある患者からの血漿における、凝固亢進および炎症によって生成されたDダイマーの関数としてのDダイマーをアッセイするためのILの方法によるDダイマーの調整。
【0283】
【表12】
【0284】
図13ならびに以下の表13および表14に示すとおり、凝固亢進(H)および炎症(I)に加えて、線溶亢進(F)によって生成されたDダイマーの関数としてのDダイマーの調整によって、より多くの患者を識別することが可能になる。よって、95%より多くの患者が、本発明の方法に従って調整した陰性のDダイマーのレベルに基づいて、イメージングを回避できる。9つの偽+のうち、3つは転移を伴うがんであり、3つは閾値の限界(≦0.60)であり、3つは高齢の患者(>80歳)である。
【0285】
表13.FgDPの演繹による線溶亢進によって生成されたDダイマーの関数としてのDダイマーをアッセイするためのILの方法による、本発明の方法による(血栓症を有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者からの血漿の識別。
【0286】
【表13】
【0287】
図13および以下の表14に示すとおり、本発明の方法によるこの調整は、比率[Dダイマー/フィブリノゲン]よりも効果的である。比率[Dダイマー/フィブリノゲン]による偽陰性を本発明の方法によって検出することによって、血栓症を見逃さないことが可能になる。本発明の方法による偽陽性は比率[Dダイマー/フィブリノゲン]による偽陽性よりも少ないため、イメージングを用いて診断される患者の数を減らすことが可能になる。
【0288】
表14.血栓症を有するかまたは有さない患者からの血漿における、DダイマーをアッセイするためのIL試薬による本発明の光学的方法と、比率[Dダイマー/フィブリノゲン]とによるDダイマーの調整の比較(H:凝固亢進、I:炎症、F:線溶亢進、Ddi:Dダイマー、Fib:フィブリノゲン)。
【0289】
【表14】
【0290】
実施例12:年齢の関数としての(血栓症を有するかまたは有さず、がんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある患者に対する本発明による方法の診断性能レベル
この実施例において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップe)からh)は、この方法の第2のバージョンのものである。
【0291】
ステップe’)に従って、炎症によって生成されたDダイマーのレベルの関数としてサンプルのDダイマーのレベルを調整し、この調整レベルを低いDダイマーのレベル(<4μg/ml)に対して補正することによって、血管内フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルRを算出した。炎症の関数として分類したサンプルの各々に対して、ステップg’)に従って、線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベルを算出した。次いで、患者における血栓症を除外もしくは診断するか、または患者における凝固活性化状態に注意を向けるために、比率TA/FFTを閾値に対して比較した。
【0292】
(血栓症を有するかまたは有さず、がんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのある合計218人の患者をテストした。テストしたこれら218人の患者のうち、47%は50歳を超えており、17%は75歳を超えており、15%はがんを有した。199人の患者(91.3%)において、イメージングテストまたは臨床的確率によるDダイマーの陰性のアッセイに基づいて、PEおよび/またはDVTの診断を除外した。19人の患者、すなわち8.7%において、陽性のイメージングテストに基づいてPEおよび/またはDVTの診断を確認した。この218人の患者に対して、本発明の方法の第2のバージョンを用いて、血栓症または凝固活性化状態の除外および/または診断を行った。この方法の診断性能レベルを、Dダイマーの通常のアッセイおよび年齢調整Dダイマーの診断性能レベルと比較した。
【0293】
次いで、(血栓症を有するかまたは有さず、がんを有するかまたは有さない)血栓症の疑いのあるより多数の患者に対して、本発明の方法の診断性能レベルを定めた。テストした合計796人の患者において、49%は50歳を超えており、19%は75歳を超えており、7.3%はがんを有した。730人の患者(91.7%)において、PEおよび/またはDVTの診断を除外した。66人の患者、すなわち8.3%において、PEおよび/またはDVTの診断を確認した。
【0294】
高齢の患者においては、Dダイマーのレベル決定の臨床的有用性が限られる。これは、肺塞栓症を除外するためにDダイマーの閾値を年齢によって調整する必要があるためである(Righiniら,JAMA,2014,311:1117−1124)。この調整した閾値は、50歳以上の患者に対して年齢に10を掛けたものに相当する。年齢に対して調整したDダイマー閾値と、臨床的確率のプレテスト評価との組み合わせを、肺塞栓症が除外された可能性のある多数の患者と組み合わせる(Righiniら,JAMA,2014,311:1117−1124)。肺塞栓症(PE)および深部静脈血栓症(DVT)の臨床的確率のプレテスト評価のための方法は、当該技術分野において公知である(それぞれKolokら,Arch.Intern.Med.,2008,168:21−31,およびWellsら,NEJM,2003,349:1227−1235を参照)。
【0295】
本発明の方法に従って調整されるDダイマーの閾値は、有利には年齢の関数として調整したものではない。なぜならDダイマーのレベルと、凝固活性化と、炎症とは、50歳より後に年齢の関数として徐々に増加するからである。その結果として、比率を年齢の関数として調整していない。本発明の方法に従って調整したDダイマーのレベルが高いほど、DODによる比率の分母が大きくなり、PEまたはDVTの確率が高くなる。
【0296】
以下の表15に示すとおり、血栓症の疑いのある218人の患者に対して、本発明の方法は、Dダイマーまたは年齢調整されたDダイマーの通常のアッセイよりも多くの患者(約20%多い)をさらに除外することを可能にする。よって、本発明の方法でテストした患者の75%よりも多くが、補助的なイメージングテストを必要としない。
【0297】
表15における性能レベルは、Dダイマーおよび年齢調整Dダイマーに対する通常の閾値0.50μg/mlと、本発明の方法によるこの実施例における閾値0.51μg/mlとにおいて与えている。偽陰性の診断がなければ、3つの方法の感受性は100%である。他方で表15に示すとおり、本発明の方法の特異性は、他の2つの方法よりもかなり高い。陽性の尤度比は他の2つの方法よりも高く、この結果が陽性であるときには、患者が血栓症を有する確率が他の方法よりも3倍高いことを確実にする。
【0298】
本発明による方法をより多数の患者に適用するときにも、類似の診断性能レベルを見出している。表16に示すとおり、血栓症の疑いのある796人の患者のうち、この方法は79%の患者を除外することを可能にし(他の方法よりも20%より多い)、表17および
図15(A)に示すとおり、これは年齢に関係しない。加えて本発明による方法は、がんである患者(<75歳)をより多く除外することを可能にする(
図15(B)を参照)。最後に本発明による方法は、高齢の患者およびがんである患者だけでなく、がんである高齢の患者をより良好に除外することを可能にする(
図15(B)を参照)。より多数の患者に対する結果は、本発明による方法の特異性が参照方法と比べて高いことを示す(表16を参照)。陽性の予測値は、参照方法の予測値よりも約2倍高い。
【0299】
表15.血栓症の疑いのある218人の患者(19人が血栓症を有し、199人が血栓症を有さない)に対する、本発明の方法の診断性能レベルと、Dダイマーおよび年齢調整Dダイマーのアッセイの診断性能レベルとの比較。
【0300】
【表15】
【0301】
表16.血栓症の疑いのある796人の患者(66人が血栓症を有し、730人が血栓症を有さない)に対する、本発明の方法の診断性能レベルと、Dダイマーおよび年齢調整Dダイマーのアッセイの診断性能レベルとの比較。
【0302】
【表16】
【0303】
表17.血栓症の疑いのある796人の患者のうち、Dダイマーのレベル(D−di)が<5.1μg/mlである50歳未満の386人の患者と50歳より上の379人の患者とに対する、本発明の方法による血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベル(D−di)。
【0304】
【表17】
【0305】
本発明の方法による血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルは、患者の年齢にかかわらず(平均年齢38歳または72歳)、血栓症の診断を有する患者のものと類似している。他方で、血栓症を有さない患者におけるDダイマーは、予想どおり年齢の関数として高くなる。
【0306】
実施例13:患者グループによる本発明による方法の診断性能レベル
この実施例において用いるプロトコルは、プロトコルAである。この実施例において用いる方法のステップe)およびh)は、この方法の第2のバージョンのものである。
【0307】
ステップe’)に従って、炎症によって生成されたDダイマーのレベルの関数としてサンプルのDダイマーのレベルを調整し、この調整レベルを低いDダイマーのレベル(<4μg/ml)に対して補正することによって、血管内フィブリン分解の結果もたらされたDダイマーのレベルRを算出した。炎症の関数として分類したサンプルの各々に対して、ステップg’)に従って、線溶亢進によって生成されたDダイマーのレベルを算出した。次いで、患者における血栓症を除外もしくは診断するか、または患者における凝固活性化状態に注意を向けるために、比率TA/FFTを閾値に対して比較した。
【0308】
本発明の方法の第2のバージョンを用いて、血栓症の疑いのある合計796人の患者に対して、本発明の方法の診断性能レベルを定めた。血栓症を有する8.3%の患者、がんを有する7.3%の患者、血栓症の素因を有する患者、凝固亢進状態を有する患者、および凝固活性化状態を有する患者に対する、本発明の方法によって得られた結果を以下の表18〜21に提供する。
【0309】
肺塞栓症(PE)および深部静脈血栓症(DVT)の診断
肺塞栓症(PE)を有する46人の患者、深部静脈血栓症(DVT)を有する16人の患者、PEおよびDVTの両方を有する4人の患者、静脈血栓症の病歴(HIST:history)を有する15人の患者に対して得た、本発明の方法の診断性能レベルを表18に記載している。
【0310】
表18.血栓症の疑いのある796人の患者のうち、血栓症の診断を有する66人の患者に対して得た、本発明の方法の診断性能レベル。
【0311】
【表18】
【0312】
表19に示すとおり、得た結果は、本発明による方法が、炎症のレベルが高い肺梗塞の事象および重篤でない分離した亜区域性肺塞栓症の事象を含む、静脈血栓塞栓症である患者の100%近くを診断することを可能にすることを示す。なお表18に示すとおり、定めた血管内フィブリン分解の結果もたらされるDダイマーのレベルは、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症または深部静脈血栓症)の病歴(HIST)の場合に高くなる。
【0313】
表19.血栓症の疑いのある796人の患者のうち、血栓症の診断を有する66人の患者に対して得た、本発明の方法の診断性能レベル。
【0314】
【表19】
【0315】
血栓症素因状態
この研究でテストした血栓症の素因を示す113人の患者は、既知のがんである患者(58人の患者、VTEに対して陰性と診断した47人および陽性と診断した11人を含む)、未知のがんである患者(21人の患者、陰性と診断した17人および陽性と診断した4人を含む)、妊娠中の女性(14人の患者、すべて陰性と診断)、出産した女性(4人の患者、すべて陰性と診断)、術後の段階の患者(2人の患者、すべて陰性と診断)、および長期旅行をしたばかりの患者(14人の患者、陽性と診断した1人を除いてすべて陰性と診断)であった。
【0316】
表20.血栓症の疑いのある796人の患者のうち、血栓症の診断を有する16人を含む、血栓症素因状態を有する113人の患者に対して得た、本発明の方法の診断性能レベル。
【0317】
【表20】
【0318】
血栓症素因状態を有する患者において得た結果は、本発明による方法が静脈血栓塞栓症である患者の100%を診断することを可能にすることを明らかに示す。加えて表20に示すとおり、本発明の方法は、がんでない患者の93%より多くを除外することを可能にする。がんである患者において、Dダイマーを定めるための通常の方法による22%と比べて、本発明の方法は患者の50%の除外を可能にする。
【0319】
凝固亢進状態
この研究でテストした凝固亢進状態を有する436人の患者は、血栓形成傾向のある患者(4人の患者、陽性と診断した1人を除いてすべてVTE陰性と診断)、腎不全である患者(26人の患者、陽性と診断した1人を除いてすべて陰性と診断)、外傷、転倒、または骨折をした患者(13人の患者、すべて陰性と診断)、および50歳以上の対象のグループ(393人の対象、陰性と診断した357人および陽性と診断した36人を含む)であった。
【0320】
表21.血栓症の疑いのある796人の患者のうち、血栓症の診断を有する38人を含む、凝固亢進状態を有する436人の患者に対して得た、本発明の方法の診断性能レベル。
【0321】
【表21】
【0322】
凝固性亢進状態を有する患者において得た結果は、本発明による方法が静脈血栓塞栓症である患者の100%を診断することを可能にすることを明らかに示す。加えて表21に示すとおり、本発明の方法は、高齢の患者を含む患者の75%より多くを除外することを可能にする。本発明の方法が除外しなかった高齢の患者のうち1/3はがんを有し、2/3は腎不全または凝固活性化である。
【0323】
凝固活性化状態
この研究でテストした凝固活性化状態を有する144人の患者は、感染症または敗血症である患者(5人の患者、すべてVTE陰性と診断)、肺疾患、気管支炎、または呼吸不全である患者(71人の患者、陽性と診断した1人を除いてすべて陰性と診断)、炎症性疾患である患者(6人の患者、すべて陰性と診断)、胃炎である患者(7人の患者、すべて陰性と診断)、心筋症である患者(45人の患者、陽性と診断した1人を除いてすべて陰性と診断)、および脳卒中の病歴のある患者(10人の患者、すべて陰性と診断)であった。
【0324】
表22.血栓症の疑いのある796人の患者のうち、血栓症の診断を有する2人を含む、凝固活性化状態を有する144人の患者に対して得た、本発明による方法の診断性能レベル。
【0325】
【表22】
【0326】
表22に示すとおり、凝固活性化状態を有する144人の患者において得た結果は、本発明による方法が静脈血栓塞栓症である患者の100%を診断し、加えて陰性の患者の80%を除外する(平均年齢80歳の心筋症を有する高齢の患者を除く)ことを可能にすることを明らかに示す。