特許第6870816号(P6870816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870816支持台、回動阻止部材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870816
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】支持台、回動阻止部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47B 9/14 20060101AFI20210426BHJP
   F16B 12/44 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A47B9/14
   F16B12/44 D
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-190633(P2016-190633)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-50967(P2018-50967A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208684
【氏名又は名称】第一工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】浦川 佳也
(72)【発明者】
【氏名】冨田 豊
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−070140(JP,U)
【文献】 特開2015−006251(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0079536(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 9/00
A47B 41/00
A47B 13/00
A47B 17/02
A47B 21/02
A47B 27/14
A47B 96/06
A47G 29/00
F16B 12/00−12/60
F16B 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に間隔を隔てて水平方向に向けて設けられた2つの第1貫通孔を有し、支持対象を支持する支持部と、
2つの前記第1貫通孔のそれぞれに対応する2つの第2貫通孔を有し、前記支持部の荷重を受ける脚部と、
一方の前記第1貫通孔および一方の前記第2貫通孔に挿入される棒状の雄ねじ部と前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部とを有し、前記支持部に前記脚部を接続する接続部材と、
前記雄ねじ部を中心とする前記支持部の回動を阻止する回動阻止部材とを備え、
前記回動阻止部材は、
前記支持部および前記脚部の一方に対して前記接続部材で固定される本体部と、
前記本体部に設けられ、他方の前記第1貫通孔および他方の前記第2貫通孔に挿入されるピンとを有し、
上側の前記第1貫通孔の高さにおける前記支持部と前記脚部との隙間幅を上側隙間幅とし、下側の前記第1貫通孔の高さにおける前記支持部と前記脚部との隙間幅を下側隙間幅としたとき、
前記上側隙間幅が前記下側隙間幅よりも広いときには、上側の前記第1貫通孔および上側の前記第2貫通孔に前記雄ねじ部が挿入され、
前記下側隙間幅が前記上側隙間幅よりも広いときには、下側の前記第1貫通孔および下側の前記第2貫通孔に前記雄ねじ部が挿入される、支持台。
【請求項2】
2つの前記第1貫通孔の組を第1組とし、2つの前記第2貫通孔の組を第2組としたとき、
前記第1組および前記第2組の一方は、他方に対して異なる高さで対応可能なように上下方向にずらして複数設けられている、請求項1に記載の支持台。
【請求項3】
前記本体部は、前記雄ねじ部が挿通される貫通孔を有しており、
前記雄ねじ部は、前記本体部に当接される頭部を有している、請求項1または2に記載の支持台。
【請求項4】
上下方向に間隔を隔てて水平方向に向けて設けられた2つの第1貫通孔を有し、支持対象を支持する支持部と、
2つの前記第1貫通孔のそれぞれに対応する2つの第2貫通孔を有し、前記支持部の荷重を受ける脚部と、
一方の前記第1貫通孔および一方の前記第2貫通孔に挿入される棒状の雄ねじ部と前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部とを有し、前記支持部に前記脚部を接続する接続部材とを備える支持台において、前記雄ねじ部を中心とする前記支持部の回動を阻止するための回動阻止部材であって、
前記支持部および前記脚部の一方に対して前記接続部材で固定される本体部と、
前記本体部に設けられ、他方の前記第1貫通孔および他方の前記第2貫通孔に挿入されるピンとを有し、
前記ピンは、他方の前記第1貫通孔および他方の前記第2貫通孔のそれぞれの内側に配置される第1部分と、前記第1部分の先端部から先方に延びて設けられた第2部分とを有しており、
前記第2部分の直径は、前記第1部分の直径よりも小さくされている、回動阻止部材。
【請求項5】
前記本体部は、前記雄ねじ部が挿通される貫通孔を有しており、
前記雄ねじ部は、前記本体部に当接される頭部を有している、請求項4に記載の回動阻止部材。
【請求項6】
請求項4または5に記載した回動阻止部材の製造方法であって、
(a)一定厚さの金属製の板材を加工することによってピン挿通孔を有する前記本体部を形成し、
(b)金属製の棒材を加工することによって前記ピン挿通孔に挿通されるピン本体と前記本体部の一方面に当接される当接部とを有する前記ピンを形成し、
(c)前記本体部の一方面側から前記ピン挿通孔に前記ピン本体を挿通させるとともに、前記当接部を前記本体部の一方面に溶接する、回動阻止部材の製造方法。
【請求項7】
前記(b)では、前記本体部の一方面に当接される当接部の当接面を前記ピン本体に対して垂直に形成する、請求項6に記載の回動阻止部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持対象を支持する支持部と、支持部の荷重を受ける脚部と、支持部に脚部を接続する接続部材とを備える支持台、支持部の回動を阻止する回動阻止部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、支持部に脚部を接続部材で接続した支持台がある。例えば、下記特許文献1には、上記支持台としての机が開示されている。この机は、天板および側板を有する「支持部」としての本体と、本体の荷重を受ける「脚部」として脚体と、本体に脚体を接続する「接続部材」としてのボルトとを備えている。この机において、2つの脚体のそれぞれは、2本のボルトとこれらに螺合される2つのナットとを用いて本体に固定されている。この机において、本体の高さを調整する際には、脚体に設けられた昇降孔からボルトおよびナットが取り外され、本体の高さが調整された後、ボルトが他の昇降孔に挿通されてナットに螺合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−6251号公報
【0004】
上記特許文献1に記載された机では、2つの脚体を本体に固定するために、4本のボルトのそれぞれにナットを螺合しなければならず、机の組み立て作業に時間がかかるという問題があった。また、学校などで使用される机では、学年が変わるごとに児童の身長や好みに応じて本体の高さを調整する必要があるが、机の数が多い(例えば1クラスに40台)だけでなく、作業が短期間(例えば3月)に集中するため、作業負担が大きくなり過ぎるという問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、短時間で簡単に組み立てることができる支持台、支持台を構成する支持部の回動を阻止する回動阻止部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の支持台の特徴は、上下方向に間隔を隔てて水平方向に向けて設けられた2つの第1貫通孔を有し、支持対象を支持する支持部と、2つの前記第1貫通孔のそれぞれに対応する2つの第2貫通孔を有し、前記支持部の荷重を受ける脚部と、一方の前記第1貫通孔および一方の前記第2貫通孔に挿入される棒状の雄ねじ部と前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部とを有し、前記支持部に前記脚部を接続する接続部材と、前記雄ねじ部を中心とする前記支持部の回動を阻止する回動阻止部材とを備え、前記回動阻止部材は、前記支持部および前記脚部の一方に対して前記接続部材で固定される本体部と、前記本体部に設けられ、他方の前記第1貫通孔および他方の前記第2貫通孔に挿入されるピンとを有することにある。
【0007】
この構成において、一方の第1貫通孔および一方の第2貫通孔には、接続部材の雄ねじ部が挿入されており、雄ねじ部に雌ねじ部が螺合されることによって、支持部に脚部が接続されている。また、他方の第1貫通孔および他方の第2貫通孔には、回動阻止部材のピンが挿入されており、これにより、支持部は、脚部に対して雄ねじ部を中心とする回動が阻止されている。回動阻止部材のピンが設けられた本体部は、支持部および脚部の一方に接続部材で固定されているので、ピンは他方の第1貫通孔および他方の第2貫通孔から脱落し難い。なお、第1貫通孔および第2貫通孔は、それぞれ少なくとも2つずつ形成されていればよく、それぞれ2つに限定するものではない。
【0008】
この構成では、他方の第1貫通孔および他方の第2貫通孔には、回動阻止部材のピンが挿入されるので、雄ねじ部を挿入する必要がない。したがって、雄ねじ部を雌ねじ部に螺合する手間を省くことができ、支持台を短時間で簡単に組み立てることができる。
【0009】
本発明の他の特徴は、2つの前記第1貫通孔の組を第1組とし、2つの前記第2貫通孔の組を第2組としたとき、前記第1組および前記第2組の一方は、他方に対して異なる高さで対応可能なように上下方向にずらして複数設けられていることにある。
【0010】
この構成では、支持部の高さを調整することができる。例えば、支持部に第1組が複数設けられている場合には、脚部に設けられた第2組を複数の第1組から選択した1つに対応させることによって、支持部の高さを調整することができる。一方、脚部に第2組が複数設けられている場合には、支持部に設けられた第1組を複数の第2組から選択した1つに対応させることによって、支持部の高さを調整することができる。また、この構成では、上記特許文献1に開示された先行技術に比べて接続部材の数を半分にすることができるので、高さ調整作業の作業負担を大幅に軽減できる。
【0011】
本発明の他の特徴は、前記本体部は、前記雄ねじ部が挿通される貫通孔を有しており、前記雄ねじ部は、前記本体部に当接される頭部を有していることにある。
【0012】
この構成では、雄ねじ部の頭部で本体部を支持部および脚部の一方に押し付けて固定することができる。
【0013】
本発明の他の特徴は、上側の前記第1貫通孔の高さにおける前記支持部と前記脚部との隙間幅を上側隙間幅とし、下側の前記第1貫通孔の高さにおける前記支持部と前記脚部との隙間幅を下側隙間幅としたとき、前記上側隙間幅が前記下側隙間幅よりも広いときには、上側の前記第1貫通孔および上側の前記第2貫通孔に前記雄ねじ部が挿入され、前記下側隙間幅が前記上側隙間幅よりも広いときには、下側の前記第1貫通孔および下側の前記第2貫通孔に前記雄ねじ部が挿入されることにある。
【0014】
この構成では、上側隙間幅と下側隙間幅とを比較して、上側隙間幅が広いときには、雄ねじ部が上側に配置されるとともにピンが下側に配置される。一方、下側隙間幅が広いときには、雄ねじ部が下側に配置されるとともにピンが上側に配置される。つまり、隙間幅が広い側では、接続部材によって支持部に脚部が密着されて接続される。したがって、支持部と脚部との隙間を効果的に解消することができる。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、上下方向に間隔を隔てて水平方向に向けて設けられた2つの第1貫通孔を有し、支持対象を支持する支持部と、2つの前記第1貫通孔のそれぞれに対応する2つの第2貫通孔を有し、前記支持部の荷重を受ける脚部と、一方の前記第1貫通孔および一方の前記第2貫通孔に挿入される棒状の雄ねじ部と前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部とを有し、前記支持部に前記脚部を接続する接続部材とを備える支持台において、前記雄ねじ部を中心とする前記支持部の回動を阻止するための回動阻止部材であって、前記支持部および前記脚部の一方に対して前記接続部材で固定される本体部と、前記本体部に設けられ、他方の前記第1貫通孔および他方の前記第2貫通孔に挿入されるピンとを有することにある。
【0016】
支持台において、一方の第1貫通孔および一方の第2貫通孔には、接続部材の雄ねじ部が挿入されており、雄ねじ部に雌ねじ部が螺合されることによって、支持部に脚部が接続されている。回動阻止部材のピンは、他方の第1貫通孔および他方の第2貫通孔に挿入される。これにより、雄ねじ部を中心とする支持部の回動を阻止できる。回動阻止部材のピンが設けられた本体部は、支持部および脚部の一方に接続部材で固定されるので、ピンは他方の第1貫通孔および他方の第2貫通孔から脱落し難い。
【0017】
また、支持台の工場出荷時に、他方の第1貫通孔および他方の第2貫通孔に雄ねじ部が挿入されている場合でも、長期の使用により雄ねじ部が緩んで脱落することがある。この場合には、脱落した雄ねじ部に代えて回動阻止部材を用いることによって、支持台を短時間で簡単に修復することができる。
【0018】
本発明の他の特徴は、前記ピンは、他方の前記第1貫通孔および他方の前記第2貫通孔のそれぞれの内側に配置される第1部分と、前記第1部分の先端部から先方に延びて設けられた第2部分とを有しており、前記第2部分の直径は、前記第1部分の直径よりも小さくされていることにある。
【0019】
この構成では、第2部分の直径は第1部分の直径よりも小さくされているので、ピンを第1貫通孔および第2貫通孔に挿通させる際には、小径の第2部分をガイドとして用いて容易に挿通させることができる。したがって、第1部分の外面と第1貫通孔および第2貫通孔のそれぞれの内面との隙間の幅を狭くすることが可能となり、この隙間によるピンのがたつきを抑制できる。
【0020】
本発明の他の特徴は、前記本体部は、前記雄ねじ部が挿通される貫通孔を有しており、前記雄ねじ部は、前記本体部に当接される頭部を有していることにある。
【0021】
この構成では、雄ねじ部の頭部で本体部を支持部および脚部の一方に押し付けて固定することができる。
【0022】
本発明の他の特徴は、上記回動阻止部材の製造方法であって、(a)一定厚さの金属製の板材を加工することによってピン挿通孔を有する前記本体部を形成し、(b)金属製の棒材を加工することによって前記ピン挿通孔に挿通されるピン本体と前記本体部の一方面に当接される当接部とを有する前記ピンを形成し、(c)前記本体部の一方面側から前記ピン挿通孔に前記ピン本体を挿通させるとともに、前記当接部を前記本体部の一方面に溶接することにある。
【0023】
この構成では、金属製の板材と金属製の棒材とによって、回動阻止部材を簡単に製造することができる。
【0024】
本発明の他の特徴は、前記(b)では、前記本体部の一方面に当接される当接部の当接面を前記ピン本体に対して垂直に形成することにある。
【0025】
この構成では、当接部の当接面を本体部の一方面に溶接するだけで、ピン本体を本体部の他方面に対して垂直に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る支持台の構成を示す斜視図である。
図2図1に示した支持台の要部の構成を示す拡大斜視図である。
図3図1に示した支持台の要部の構成を示す拡大断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る回動阻止部材の構成を示す図であり、(A)は左側面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る回動阻止部材の構成を示す分解斜視図である。
図6】支持部に脚部を固定する方法を示す断面図である。
図7】従来の支持台に対する回動阻止部材の使用方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る支持台、回動阻止部材およびその製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる「前・後・左・右・上・下」の各方向は、図1中に矢印で示した各方向と一致する。
【0028】
(支持台10の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る支持台10の構成を示す斜視図である。図2は、支持台10の要部の構成を示す拡大斜視図である。図3は、支持台10の要部の構成を示す拡大断面図である。本実施形態の支持台10は、左右対称に構成されているため、以下では、主に支持台10の左側の部分に着目して説明する。
【0029】
図1に示すように、支持台10は、学校の教室などで使用される児童用の机であり、支持部12と、左右一対の脚部14a,14bと、各脚部14a,14bに対応して設けられた接続部材16と、各脚部14a,14bに対応して設けられた回動阻止部材18とを備えている。
【0030】
図1に示すように、支持部12は、教科書やノートなどの支持対象(図示省略)を支持する部分であり、天板20と、天板20の左右方向両端部から下方に延びて設けられた2つの垂下部22a,22bとを有している。図2に示すように、垂下部22aには、複数(本実施形態では11個)の第1貫通孔24,24…が、上下方向に一定の間隔を隔てて水平方向(左右方向)に向けて設けられている。
【0031】
図3に示すように、接続部材16を用いて支持部12に脚部14aを接続する際には、児童が希望する天板20(図1)の高さに応じて、複数の第1貫通孔24,24…から2つの第1貫通孔24,24が選択される。本実施形態では、一方の第1貫通孔24が選択されると、そこから下方に数えて2つ目が他方の第1貫通孔24として自動的に選択される。したがって、図2に示すように、選択可能な2つの第1貫通孔24,24の組を第1組26とすると、支持部12(垂下部22a)には、合計9個の第1組26が上下方向にずらして設けられていることになる。
【0032】
図1に示すように、各脚部14a,14bは、支持部12の荷重を受ける部分であり、上下方向に延びる棒状の支柱30,30を有している。各支柱30,30は、四角形の断面を有するパイプ状に形成されており、左右方向に延びる棒状の連結部32を介して互いに連結されている。
【0033】
図3に示すように、支柱30の上端部30aでは、右側の壁部36が左側に押し潰されて左側の壁部38に重ね合わされている。この上端部30aには、2つの第2貫通孔40,40が、上下方向に間隔を隔てて水平方向(左右方向)に向けて設けられている。2つの第2貫通孔40,40の間隔は、支持部12に設けられた第1組26を構成する2つの第1貫通孔24,24の間隔と同じに定められている。したがって、2つの第2貫通孔40,40の組を第2組42とすると、第2組42は、複数(本実施形態では9個)の第1組26から選択された1つの第1組26に対応する。
【0034】
図3に示すように、選択された1つの第1組26に第2組42が対応したとき、第1組26を構成する一方(上側)の第1貫通孔24と第2組42を構成する一方(上側)の第2貫通孔40とが連通され、かつ、第1組26を構成する他方(下側)の第1貫通孔24と第2組42を構成する他方(下側)の第2貫通孔40とが連通される。
【0035】
図3に示すように、接続部材16は、一方(上側)の第1貫通孔24および一方(上側)の第2貫通孔40に挿入される棒状の雄ねじ部44と、雄ねじ部44に螺合される雌ねじ部46とを有している。雄ねじ部44は、外周面に雄ねじ48aが形成された雄ねじ本体48と、雄ねじ本体48の基端部に設けられた頭部50とを有しており、頭部50には、六角レンチ(図示省略)が挿入される六角孔52が設けられている。
【0036】
雌ねじ部46は、内周面に雌ねじ54aが形成された雌ねじ本体54と、雌ねじ本体54の一方の開口を覆う袋部56とを有している。つまり、本実施形態の雌ねじ部46は、いわゆる「袋ナット」である。本実施形態では、2つの雌ねじ部46,46が、支柱30の上端部30aに設けられた2つの第2貫通孔40,40の内周部に溶接されている。これにより、各雌ねじ部46の内側の空間は、対応する第2貫通孔40に連通されている。
【0037】
(回動阻止部材18の構成)
図4は、本発明の一実施形態に係る回動阻止部材18の構成を示す図であり、(A)は左側面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。図5は、回動阻止部材18の構成を示す分解斜視図である。図3に示す回動阻止部材18は、雄ねじ部44を中心とする支持部12の回動を阻止するものであり、接続部材16で支持部12に固定される本体部60と、第1貫通孔24および第2貫通孔40に挿入されるピン62とを有している。本体部60およびピン62は、互いに溶接可能なように、鉄およびステンレス等の金属で形成されている。
【0038】
図4(A),(B),(C)に示すように、本体部60は、一定の厚さを有して上下方向に長く形成された板状部材である。本体部60の前後方向両側縁60a,60bは、上下方向に延びる直線状に形成されており、本体部60の上下方向両側縁60c,60dは、外側に向かって膨らむ円弧状に形成されている。本体部60の左右方向両側面60e,60fは、滑らかな平坦面に形成されている。
【0039】
図5に示すように、本体部60の上部における前後方向中央部には、接続部材16(図3)の雄ねじ部44が挿通される円形の貫通孔64が形成されている。本体部60の下部における前後方向中央部には、ピン62が挿通される円形のピン挿通孔66が形成されている。さらに、図4(A)に示すように、本体部60の一方面(左側面)60eにおける貫通孔64の周囲には、本体部60の適正な向きを示す文字「上」と、雄ねじ部44を回す方向を示す矢印と、雄ねじ部44を回す効果を示す文字「シマル」および「ユルム」とが記載されている。
【0040】
図5に示すように、ピン62は、ピン挿通孔66に挿通される円柱状のピン本体68と、ピン本体68の基端部から拡径して設けられた円盤状の当接部70とを有している。ピン本体68は、下側の第1貫通孔24および下側の第2貫通孔40(図3)のそれぞれの内側に配置される円柱状の第1部分68aと、第1部分68aの先端部から先方に延びて設けられた第2部分68bとを有している。第1部分68aの外径は、第1貫通孔24および第2貫通孔40の各内径に対して若干細い隙間嵌めとなる太さに形成されている。また、第2部分68bの外径は、第1部分68aの直径よりも細く形成されているが、雌ネジ部46の内径に対して前記第1部分68aの隙間嵌め(第1貫通孔24および第2貫通孔40に対する各隙間)と同じ隙間嵌め(隙間)となる太さに形成されている。
【0041】
当接部70には、本体部60の一方面(左側面)60eに当接される当接面70aが形成されており、当接面70aには、溶接の際に溶かされる複数(本実施形態では3つ)の突起74が周方向に一定の角度間隔(本実施形態では120度)を隔てて形成されている。当接面70aは、ピン本体68に対して垂直な平坦面に形成されている。したがって、当接面70aが本体部60の一方面(左側面)60eに当接されて溶接されると、本体部60の他方面(右側面)60fとピン本体68とがなす角度は必然的に90度になる。
【0042】
(回動阻止部材18の製造方法)
図5に示すように、回動阻止部材18を製造する際には、まず、一定厚さの金属製の板材(図示省略)を加工することによって貫通孔64とピン挿通孔66とを有する本体部60を形成する。また、金属製の棒材(図示省略)を加工することによってピン本体68と当接部70とを有するピン62を形成する。続いて、本体部60の一方面60e側からピン挿通孔66にピン本体68を挿通させるとともに、当接部70の当接面70aを本体部60の一方面60eに当接させる。その後、当接部70の当接面70aと本体部60の一方面60eとをプロジェクション溶接により接合する。プロジェクション溶接では、当接面70aに設けられた複数の突起74が溶かされるので、当接部70の当接面70aを本体部60の一方面60eに隙間なく接合できる。
【0043】
(支持台10の組み立て方法)
図6は、支持部12に脚部14aを固定する方法を示す断面図である。図1に示す支持台10を組み立てる際には、まず、支持部12と2つの脚部14a,14bとを別々に準備し、2つの脚部14a,14bを連結部32で連結する。2つの脚部14a,14bを連結部32で連結したとき、2本の支柱30,30は、鉛直方向に延びて互いに平行になることが望ましい。しかし、現実には、様々な条件により、2本の支柱30,30は、上方に向かうにつれて左右方向中央側に傾く傾向がある。
【0044】
2つの脚部14a,14bの連結が完了すると、図6に示すように、支持部12を構成する垂下部22aの左右方向の内側(右側)に脚部14aの支柱30を配置する。上述のように、支柱30は、上方に向かうにつれて左右方向中央側(右側)に傾いているので、支持部12と脚部14aとの間に生じる隙間76の幅は、上方に向かうにつれて広くなる。したがって、上側の第1貫通孔24の高さにおける隙間76の幅を上側隙間幅W1とし、下側の第1貫通孔24の高さにおける隙間76の幅を下側隙間幅W2としたとき、上側隙間幅W1は下側隙間幅W2よりも広くなる。
【0045】
支持部12に対する脚部14aの位置決めが完了すると、図3に示すように、支持部12に脚部14aを固定する。支持部12に脚部14aを固定する際には、まず、支持部12の側面12aに回動阻止部材18の本体部60を配置するとともに、回動阻止部材18のピン62を下側の第1貫通孔24および下側の第2貫通孔40に挿通させる。ピン62の第2部分68bの直径は、第1部分68aの直径よりも小さくされているので、ピン62(ピン本体68)を下側の第1貫通孔24および下側の第2貫通孔40に挿通させる際には、小径の第2部分68bがガイドとなる。
【0046】
続いて、回動阻止部材18の貫通孔64、上側の第1貫通孔24および上側の第2貫通孔40に雄ねじ部44を挿入し、この雄ねじ部44を雌ねじ部46に螺合する。すると、雄ねじ部44と雌ねじ部46との締め付け力によって支持部12と脚部14aとが密着されて接続される。このとき、回動阻止部材18の本体部60は、雄ねじ部44の頭部50で支持部12に押し付けられて固定される。
【0047】
(回動阻止部材18の他の使用方法)
図7は、従来の支持台80に対する回動阻止部材18の使用方法を示す断面図である。図7に示す従来の支持台80は、支持部82と脚部84aとを有しており、支持部82と脚部84aとは、2つの接続部材86,86によって互いに接続されている。この従来の支持台80では、上側の雄ねじ部88を中心とする支持部82の回動が下側の接続部材86によって阻止される。
【0048】
図7に示す従来の支持台80において、支持部82の高さを調整する場合には、2つの接続部材86,86を取り外す必要があるが、支持部82の高さを調整した後は、一方(図7では下側)の接続部材86に変えて、上記実施形態の回動阻止部材18が用いられてもよい。この場合には、図7中に二点鎖線で示すように、回動阻止部材18のピン62が、下側の第1貫通孔90および下側の第2貫通孔92に挿通される。また、接続部材86の雄ねじ部88が、回動阻止部材18の貫通孔64、上側の第1貫通孔90および上側の第2貫通孔92に挿通されて、雌ねじ部94に螺合される。
【0049】
このように、従来の支持台80においても、回動阻止部材18を用いることによって、高さ調整作業の作業負担を大幅に軽減することができる。
【0050】
また、図7に示す従来の支持台80において、2つの接続部材86,86のうち1つが緩んで脱落した場合には、脱落した接続部材86に代えて回動阻止部材18が用いられてもよい。この場合は、回動阻止部材18によって支持台80を簡単に修復することができる。
【0051】
(効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、図3に示すように、下側の第1貫通孔24および下側の第2貫通孔40には、雄ねじ部44を挿入する必要がなく、雄ねじ部44を雌ねじ部46に螺合する手間を省くことができるので、支持台10を短時間で簡単に組み立てることができる。
【0052】
図3に示すように、回動阻止部材18におけるピン62が設けられた本体部60は、接続部材16で支持部12に固定されるので、ピン62は第1貫通孔24および第2貫通孔40から脱落し難い。
【0053】
上述のように、ピン62を第1貫通孔24および第2貫通孔40に挿通させる際には、小径の第2部分68bをガイドとして用いて容易に挿通させることができる。したがって、第1部分68aの外面と第1貫通孔24および第2貫通孔40のそれぞれの内面との隙間の幅を狭くすることが可能となり、この隙間によるピン62のがたつきを抑制できる。
【0054】
第2部分68bの外径は、雌ネジ部46の内径に対して第1部分68aの隙間嵌めと同じ隙間嵌め(隙間)となる太さに形成されているため、第1部分68aおよび第2部分68bを第1貫通孔24、第2貫通孔40および雌ねじ部46の各内周面に同時に接触させることができ、接触面圧を分散して各接触部分の損傷を防止することができる。
【0055】
図3に示すように、2つの第1貫通孔24の組を第1組26とし、2つの第2貫通孔40の組を第2組42としたとき、第1組26は、第2組42に対して異なる高さで対応可能なように上下方向にずらして複数設けられている(図2)。したがって、複数の第1組26から選択した1つに第2組42を対応させることによって、支持部12の高さを調整することができる。
【0056】
図6に示すように、上側隙間幅W1と下側隙間幅W2とを比較して、広い方の上側隙間幅W1に対応する第1貫通孔24および第2貫通孔40には、雄ねじ部44が挿入される。そして、この雄ねじ部44が雌ねじ部46に螺合されることによって、支持部12に脚部14aが接続される。したがって、支持部12と脚部14aとを確実に密着させることができ、支持部12と脚部14aとの隙間76を効果的に解消することができる。
【0057】
図3に示すように、回動阻止部材18の本体部60は、雄ねじ部44が挿通される貫通孔64を有しており、雄ねじ部44は、本体部60に当接される頭部50を有しているので、雄ねじ部44の頭部50で本体部60を支持部12に押し付けて固定することができる。
【0058】
図5に示すように、金属製の板材からなる本体部60と、金属製の棒材からなるピン62とよって、回動阻止部材18を簡単に製造することができる。また、当接部70の当接面70aをピン本体68に対して垂直に形成しているので、当接面70aを本体部60の一方面60eに溶接するだけで、ピン本体68を本体部60の他方面60fに対して垂直に配置することができる。
【0059】
(変形例)
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、図1に示す支持台10が物(教科書やノートなど)を支持する机として構成されているが、支持台は人を支持する椅子(図示省略)として構成されてもよい。
【0060】
図3に示すように、上記実施形態では、2つの雌ねじ部46,46が、脚部14aを構成する支柱30の上端部30aに溶接されているが、雌ねじ部46,46は、脚部14aから独立して設けられてもよい。また、ピン62が挿入される側の雌ねじ部46は省略されてもよい。
【0061】
図3に示すように、上記実施形態では、回動阻止部材18の本体部60に貫通孔64が形成されているが、貫通孔64に代えて、U字状またはV字状の凹部(図示省略)が本体部60の外周縁に形成されてもよい。この場合でも、雄ねじ本体48の周囲に凹部を配置することによって、頭部50で本体部60を支持部12に押し付けて固定することができる。
【0062】
図5に示すように、上記実施形態では、ピン本体68が、外径の異なる第1部分68aおよび第2部分68bを有する棒状に構成されているが、ピン本体68は、全長にわたって一定の外径を有する棒状に構成されてもよいし、先端に向かうにつれて外径が徐々に小さくなる棒状に構成されてもよい。
【0063】
また、ピン本体68は、外径の異なる第1部分68aおよび第2部分68bを有する場合においては、第2部分68bの外径を雌ネジ部46の内径に対して第1部分68aの隙間嵌めより大きな隙間の隙間嵌めとなる太さに形成することで、雌ねじ部46の内周面への接触を回避して雌ネジ部46の損傷を防止することもできる。また、ピン本体68は、第2部分68bの外径を雌ネジ部46の内径に対して第1部分68aの隙間嵌めより小さな隙間の隙間嵌めとなる太さに形成することで、第1貫通孔24および第2貫通孔40の各内周面への接触を回避して第1貫通孔24および第2貫通孔40の損傷を防止することもできる。
【0064】
図3に示す回動阻止部材18は、上下が逆に配置されてもよい。つまり、下側の第1貫通孔24と下側の第2貫通孔40とに接続部材16の雄ねじ部44が挿通されるとともに、上側の第1貫通孔24と上側の第2貫通孔40とに回動阻止部材18のピン62が挿通されてもよい。特に、下側隙間幅W2が上側隙間幅W1よりも広くなっている場合には、回動阻止部材18の上下を逆にすることによって、支持部12と脚部14aとの隙間76を効果的に解消することができる。
【0065】
図3に示すように、上記実施形態では、回動阻止部材18の本体部60が接続部材16で支持部12に固定されているが、この本体部60は接続部材16で脚部14aに固定されてもよい。この場合には、脚部14aの側に回動阻止部材18が配置されるので、雌ねじ部46は支持部12の側に配置されることになる。
【0066】
図3に示すように、上記実施形態では、支持部12に設けられた2つの第1貫通孔24の組である第1組26が上下方向にずらして複数設けられているが、これに代えて、脚部14aに設けられた2つの第2貫通孔40の組である第2組42が上下方向にずらして複数設けられてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…支持台、12…支持部、14a,14b…脚部、16…接続部材、
18…回動阻止部材、24…第1貫通孔、26…第1組、40…第2貫通孔、
42…第2組、44…雄ねじ部、46…雌ねじ部、50…頭部、60…本体部、
62…ピン、64…貫通孔、66…ピン挿通孔、70…当接部、70a…当接面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7