【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、総務省、「テラヘルツ波デバイス基盤技術の研究開発−300GHz帯増幅器技術−」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仕切部材は、前記ビームホールの延在方向に沿って前記ビームホールを第1方向に分割する第1仕切部、及び、前記ビームホールの延在方向に沿って前記ビームホールを前記第1方向に対して直角の第2方向に分割する第2仕切部、の両方又は一方を備える、
請求項2記載の遅波回路。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。なお、下記の実施形態は、あくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【0014】
[実施形態1]
実施形態1に係る遅波回路について図面を用いて説明する。
図1は、実施形態1に係る遅波回路を有する進行波管の構成を模式的に示した(A)X−X’間断面図(電子ビームの進行方向に対して垂直な断面図)、(B)Y−Y’間断面図、(C)Z−Z’間断面図である。
【0015】
進行波管100は、電磁波を電子ビームと相互作用させ、電磁波と電子ビームとを同程度の速度とするために電子ビームに対して電磁波を迂回させる遅波回路10と、遅波回路10が形成された構造体5と、を有する装置である。
【0016】
遅波回路10は、ビームホール1と、導波路2と、仕切部材3と、ビーム通路4と、を有する。
【0017】
ビームホール1は、所定方向に延在するとともに電子ビームを伝送するための空間である。ビームホール1の断面は、概円形状になっている。なお、ビームホール1自体は、四角より丸の方が反射は小さい。ビームホール1は、導波路2の中央を貫通するように配されている。
【0018】
導波路2は、ビームホール1を迂回するように電磁波を伝送するための空間である。導波路2は、蛇行(折り畳み)が繰り返されたミアンダ状(折り畳み型)に構成されている。なお、導波路2は、ミアンダ状に限らず、らせん状(ヘリックス型)に構成されていてもよく、らせん状の導波路の中心軸に沿ってビームホールが配された構成としてもよい。
【0019】
仕切部材3は、ビームホール1を通る電子ビーム(ビーム通路4に相当)をビームホール1の外壁面1aに寄せる(ビームホール1の中央を通らない)ように配置するためのガイド部材である。仕切部材3は、電磁波の進行方向と平行となるようにビームホール1の中央に配されている。仕切部材3は、ビームホール1を、電子ビームが通る複数(
図1では2つ)のビーム通路4に分割する。仕切部材3は、導体よりなる。仕切部材3には、構造体5に用いられる材料と同じ材料を用いることができ、例えば、銅、銅合金等を用いることができる。仕切部材3の断面は、概H形状になっている。仕切部材3は、導波路2における電磁波の通過を妨げないよう、導波路2にはみ出さないように形成されている。また、仕切部材3は、導波路2以外のビームホール1内にも形成されていてもよい。仕切部材3は、電子ビームのコレクタ(スリット)として利用してもよい。
【0020】
仕切部材3は、第1仕切部3aと、第2仕切部3b、3cと、を有する。第1仕切部3aは、ビームホール1の延在方向に沿ってビームホール1を第1方向(
図1(A)では垂直方向)に分割する部分である。第1仕切部3aは、ビームホール1の中央を通るように1本ある。第2仕切部3b、3cは、ビームホール1の延在方向に沿ってビームホール1を第1方向に対して直角の第2方向(
図1(A)では水平方向)に分割する部分である。第2仕切部3b、3cは、第1仕切部3aの両面に、それぞれ所定間隔をおいて2本ある。第2仕切部3bと第2仕切部3cとの間の空間は、ビーム通路4となる。なお、ここでは、オンチップMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)で製造の困難な丸いビームホール1の形成は1つにし、製造のしやすい水平や垂直の仕切部3a、3b、3cにより、概四角に分割を行っている。積層工程でねている円柱を作るのは下半分が作りにくいので、半分ずつ作り、貼り合わせることになる。複数作ると貼り合わせも増える。また、後からドリル等で穴を開ける場合、現状ビームホールは直径200μm程度で、長さ20mm程度なので、ドリルが細くなりすぎ、折れてしまう。また、クライストロンの場合は、周期構造の各段で共振する構成となっているため、周期構造の各段を別々に作成し、貼り合わせることができる(比較的低周波でサイズが大きい場合)が、進行波管は共振させず進行させながら増幅するので、各段の不連続点を減らすため、各段を別々に作成し、貼り合わせることができないため、ビームホールの製造困難度が増している。
【0021】
ビーム通路4は、ビームホール1における電子ビームが通る通路である。ビーム通路4は、ビームホール1の外壁面1aと仕切部材3で囲まれている。なお、ビーム通路4の数は、その数だけ磁界によるビーム整形回路が必要になるため、2個としているが、これに限るものではない。
【0022】
なお、実施形態1では、進行波管100を例に記載しているが、実施形態1に係る遅波回路をクライストロン等の増幅器に利用してもよい。
【0023】
実施形態1によれば、ビームホール1を仕切部材3により分割することにより、ビームホール1内を通る電子ビームをビームホール1の外壁面1aに寄せる(ビームホール1の中央を通らないようにする)ことができ、電磁波と電子ビームの相互作用する領域を増加させることができ、遅波回路10におけるゲインを増大させることができる。また、実施形態1によれば、ビームホール1の中央に導体からなる仕切部材3を配置することにより、仕切部材3が電磁波の通路となり、ビームホール1での電磁波の反射や損失も低減させることができる。
【0024】
なお、特許文献3〜5にはマルチビーム構成の技術が記載されているが、これらの技術は、クライストロンにおいて、パービアンスを下げて電力効率を上げるために、1つのビーム面積を小さくし、マルチビーム構成としている。しかしながら、特許文献3〜5に記載の技術は、複数のビームホールを均等に分配するものであり、電子ビームをビームホールの外壁面に寄せる(ビームホールの中央を通らない)ように配置するものではない。
【0025】
[実施形態2]
実施形態2に係る遅波回路について図面を用いて説明する。
図2は、実施形態2に係る遅波回路を有する進行波管の構成を模式的に示した(A)X−X’間断面図、(B)Y−Y’間断面図、(C)Z−Z’間断面図である。
【0026】
実施形態2は、実施形態1の変形例であり、仕切部材13の断面を十字型とし、仕切部材13によりビームホール1内のビーム通路4を4個に分割したものである。
【0027】
仕切部材13は、第1仕切部13aと、第2仕切部13bと、を有する。第1仕切部13aは、ビームホール1の延在方向に沿ってビームホール1を第1方向(
図2(A)では垂直方向)に分割する部分である。第1仕切部13aは、ビームホール1の中央を通るように1本ある。第2仕切部13bは、ビームホール1の延在方向に沿ってビームホール1を第1方向に対して直角の第2方向(
図2(A)では水平方向)に分割する部分である。第2仕切部13bは、ビームホール1の中央を通るように1本あり、第1仕切部13aとの交差部分(ビームホール1の中央部分)で接続している。仕切部材13の他の構成は、実施形態1の仕切部材(
図1の3)の構成と同様である。
【0028】
実施形態2によれば、実施形態1と同様に、ビームホール1を仕切部材13により分割することにより、ビームホール1を通る電子ビームをビームホール1の外壁面1aに寄せる(ビームホール1の中央を通らないようにする)ことができ、電磁波と電子ビームの相互作用する領域を増加させることができ、遅波回路10におけるゲインを増大させることができる。また、実施形態2によれば、ビームホール1の中央に導体からなる仕切部材13を配置することにより、仕切部材13が電磁波の通路となり、ビームホール1での電磁波の反射や損失も低減させることができる。
【0029】
[実施例1、2、比較例1]
実施例1、2、比較例1に係る遅波回路の電界部分、ゲイン、S21特性、S11特性について図面を用いて説明する。
図3は、遅波回路の構成を模式的に示した正面図であり、(A)は実施例1、(B)は実施例2、(C)は比較例1に関するものである。
図4は、遅波回路の電界分布を模式的に示した図であり、(A)は実施例1、(B)は実施例2、(C)は比較例1に関するものである。
図5は、遅波回路のゲインの周波数依存性を表したグラフであり、(A)は実施例1、(B)は実施例2、(C)は比較例1に関するものである。
図6は、遅波回路のS21(伝送特性)の周波数依存性を表したグラフであり、(A)は実施例1、(B)は実施例2、(C)は比較例1に関するものである。
図7は、遅波回路のS11(反射特性)の周波数依存性を表したグラフであり、(A)は実施例1、(B)は実施例2、(C)は比較例1に関するものである。
【0030】
まず、実施例1、2、比較例1の構成について説明する。実施例1に係る遅波回路は、実施形態1(
図1参照)に対応するものであり、
図3(A)のように、ビームホール1内の仕切部材3の断面形状を概H型とし、ビーム通路4を2つとしたものである。実施例2に係る遅波回路は、実施形態2(
図2参照)に対応するものであり、
図3(B)のように、ビームホール1内の仕切部材13の断面形状を概X型とし、ビーム通路4を4つとしたものである。比較例1に係る遅波回路は、
図3(C)のように、ビームホール1内に仕切部材を有さず、ビーム通路4を1つとしたものである。なお、ビームホール1(直径200μm程度)及び導波路2(直線距離20mm程度)の構成、サイズは、実施例1、2、比較例1とも同じである。仕切部材3、13の幅(厚さ)は10μm程度である。ビームホール1、導波路2、仕切部材3、13の構成については、実施形態1、2の説明を参照されたい。
【0031】
次に、実施例1、2、比較例1に係る遅波回路に電子ビームを通したときの電界分布の計算結果について説明する。なお、ビーム径はビームホール1の径の0.7倍で計算している。なお、電子ビームは、ビーム電圧12kV、ビーム電流20mA(分割なし)に設定している。また、電磁波は、電力2.5mWに設定している。実施例1では、
図4(A)のように、ビームホール1の中央(主に
図3(A)の第1仕切部3aの周辺)にも電磁波が通過するようになっている。実施例2では、
図4(B)のように、ビームホール1の中央(主に
図3(B)の第1仕切部13aと第2仕切部13bとの交差部分の周辺)にも電磁波が通過するようになっている。一方、比較例1では、
図4(C)のように、電磁波はビームホール1をよけるように伝搬し、ビームホール1の周辺部で電界が高くなっており、ビームホール1の中央では電子ビームと電磁波との相互作用が有効に行われていない。また、実施例1、2のように仕切部材3、13を設けることにより、ビームホール1の中央に電磁波の通路ができることで、反射が低減し、ビームホール1を介した結合による損失も低下する。
【0032】
次に、実施例1、2、比較例1に係る遅波回路に電子ビーム及び電磁波を通したときのゲインの計算結果について説明する。なお、電子ビームは、ビーム電圧12kV、ビーム電流20mA(分割なし)に設定している。実施例1、2では、
図5のように、比較例1よりもゲインが増加しており、周波数290GHzで5dB程度増加している。
【0033】
次に、実施例1、2、比較例1に係る遅波回路に電子ビーム及び電磁波を通したときのS21(伝送特性)の計算結果について説明する。なお、電子ビームは、ビーム電圧12kV、ビーム電流20mA(分割なし)に設定している。実施例1、2では、比較例1よりもS21が全体的に増加し、損失が低下している。
【0034】
次に、実施例1、2、比較例1に係る遅波回路に電子ビーム及び電磁波を通したときのS11(反射特性)の計算結果について説明する。なお、電子ビームは、ビーム電圧12kV、ビーム電流20mA(分割なし)に設定している。実施例1、2では、比較例1よりも0.3THz付近でS11が低減している。
【0035】
[実施形態3]
実施形態3に係る遅波回路について図面を用いて説明する。
図8は、実施形態3に係る遅波回路を有する進行波管の構成を模式的に示した(A)X−X’間断面図、(B)Y−Y’間断面図である。
【0036】
実施形態3は、実施形態1の変形例であり、貼り合わせ可能に複数(
図8では2つ)に分割したものである。ビームホール1は、その延在方向に沿って中央で縦に複数に分割されており、導波路2及び第1仕切部3aは、ビームホール1の分割ラインに沿って分割されている。これに伴って、仕切部材も仕切部材3Aと仕切部材3Bに分割され、構造体も構造体5Aと構造体5Bに分割される。仕切部材3Aは構造体5Aに形成され、仕切部材3Bは構造体5Bに形成されている。構造体5Aと構造体5Bとは貼り合わせによって接合している。仕切部材3Aと仕切部材3Bとは貼り合わせによって接合していてもよい。構造体5Aと構造体5Bとの接合には、ろう材(例えば、融点が800〜1000℃の合金)を用いることができる。完成した進行波管100の構成は、実施形態1(
図1参照)の構成と同様である。なお、実施形態3のような分割したものを貼り合わせる方法は、実施形態2に適用してもよい。
【0037】
次に、実施形態3に係る遅波回路を有する進行波管の製造方法について図面を用いて説明する。
図9は、実施形態3に係る遅波回路を有する進行波管の製造方法を模式的に示した工程断面図である。
【0038】
まず、基板20上に、第1仕切部3aを形成するための第1レジスト(図示せず)を形成し、第1レジストから露出した基板20上に第1仕切部3aを形成し、その後、第1レジストを除去する(ステップA1;
図9(A)参照)。ここで、第1レジストは、リソグラフィ技術を用いて形成することができる。また、第1仕切部3aは、めっき技術を用いて形成することができる。
【0039】
次に、第1仕切部3a上に、第2仕切部3b、3cを形成するための第2レジスト(図示せず)を形成し、第2レジストから露出した第1仕切部3a上に第2仕切部3b、3cを形成し、その後、第2レジストを除去する(ステップA2;
図9(A)参照)。ここで、第2レジストは、リソグラフィ技術を用いて形成することができる。また、第2仕切部3b、3cは、めっき技術を用いて形成することができる。
【0040】
次に、第1仕切部3a上に、ビームホール(
図9(D)の1)を形成するための第3レジスト21を形成し、その後、第3レジスト21の一部を含む基板20上に、導波路(
図9(D)の2)を形成するための第4レジスト22を形成する(ステップA3;
図9(B)参照)。ここで、第3レジスト21及び第4レジスト22は、リソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0041】
次に、第3レジスト21及び第4レジスト22から露出した基板20上に、第3レジスト21及び第4レジスト22が完全に埋まるように構造体5Bを形成する(ステップA4;
図9(C)参照)。ここで、構造体5Bは、めっき技術を用いて形成することができる。
【0042】
次に、基板20を除去(例えば、剥離)し、その後、第3レジスト21及び第4レジスト22を除去(例えば、溶解除去)する(ステップA5;
図9(D)参照)。これにより、仕切部材3Bを有する構造体5Bが製造される。これとは別に、ステップA1〜A5と同様な方法で、構造体5Bと面対称な構造体(
図8の5A)を製造する。
【0043】
最後に、構造体5Aと構造体5Bとを位置合わせして接合(仕切部材3Aと仕切部材3Bとを接合しても可)する(ステップA6;
図8(A)参照)。ここで、構造体5Aと構造体5Bとの接合には、ろう材を用いることができる。
【0044】
実施形態3によれば、実施形態1の構成を簡易に製造することができ、構造体を複数に分割しない場合と比べて、工数が低減し、コストを低減させることができる。また、仕切部材3A、3Bの仕切部3a、3b、3cを水平や垂直な直線状とすることで、簡易に製造できる。
【0045】
なお、特許文献3〜5の技術のようなマルチビーム構成を作製する場合、分割数や露光回数が増加し、工程が複雑となってしまう。
【0046】
[実施例3、比較例2]
実施例3、比較例2に係る遅波回路を有する進行波管に貼り合わせずれがある場合のゲインの計算結果について図面を用いて説明する。
図10は、遅波回路を有する進行波管の構成を模式的に示した断面図であり、(A)は実施例3、(B)は比較例2に関するものである。
【0047】
まず、実施例3、比較例2の構成について説明する。実施例3に係る遅波回路10を有する進行波管100は、実施形態3(
図8参照)に対応するものであり、
図10(A)のように、構造体5Aと構造体5Bとを垂直方向に10μmずらして貼り合わせ、ビームホール1内の仕切部材3A、3Bを組み合わせたものの断面形状を概H型とし、ビーム通路4を2つとしたものである。比較例2に係る遅波回路10を有する進行波管100は、
図10(B)のように、構造体5Aと構造体5Bとを垂直方向に10μmずらして貼り合わせ、ビームホール1内に仕切部材を有さず、ビーム通路4を1つとしたものである。なお、ビームホール1(直径200μm程度)及び導波路2(直線距離20mm程度)の構成、サイズは、実施例3、比較例2とも同じである。仕切部材3の幅(貼り合わせた状態の厚さ)は10μm程度である。
【0048】
次に、実施例3、比較例2に係る遅波回路に電子ビーム及び電磁波を通したときのゲインの計算結果について説明する。貼り合わせずれがない比較例1に係る遅波回路(
図3(C)参照)を有する進行波管に相当するもの(図示せず)では周波数0.3GHzでゲインが20dBであったのに対し、比較例2では10μmの貼り合わせずれ(半径の5%のずれ)で、周波数0.3GHzでゲインが5dBまで低下した。つまり、比較例2では仕切部材がないことによって貼り合わせずれが生じたことでゲインが著しく低下した。一方、貼り合わせずれがない実施例1に係る遅波回路(
図3(A)参照)を有する進行波管に相当するもの(図示せず)では周波数0.3GHzでゲインが25dBであったのに対し、実施例3では10μmの貼り合わせずれ(半径の5%のずれ)で、周波数0.3GHzでゲインが24dBまでしか低下しなかった。つまり、実施例3では仕切部材3A、3Bがあることによって貼り合わせずれが生じてもゲインの低下がほとんどなかった。
【0049】
以上のことから、実施例3のように仕切部材3A、3Bを適用すれば、貼り合わせずれによるゲイン低下を抑制することができる。つまり、実施例3では、貼り合わせずれがあっても、左右別々のビーム通路4で対応できるため、貼り合わせずれによるゲイン低下を抑制できる。
【0050】
[実施形態4]
実施形態4に係る遅波回路について図面を用いて説明する。
図11は、実施形態4に係る遅波回路を有する進行波管の構成を模式的に示した断面図である。
【0051】
実施形態4は、実施形態2の変形例であり、仕切部材23を垂直方向に仕切る第1仕切部(
図2の13a)のみとし、水平方向に仕切る第2仕切部(
図2の13b)を廃止したものである。仕切部材23と外壁面1aで囲まれた空間には片側に2つのビーム経路4(両側で4つのビーム経路4)としている。なお、実施形態4はこれに限るものではなく、片側に1つのビーム経路4(両側で2つのビーム経路4)としてもよい。その他の構成は、実施形態2と同様である。
【0052】
実施形態4によれば、実施形態2よりもゲインロスが若干増加してしまうが、仕切部材がないもの(
図3(C)参照)と比べて、仕切部材23によりビームホール1内を通る電子ビームをビームホール1の外壁面1aに寄せる(ビームホール1の中央を通らないようにする)ことができ、電磁波と電子ビームの相互作用する領域を増加させることができ、遅波回路10におけるゲインを増大させることができる。また、実施形態4によれば、ビームホール1の中央に導体からなる仕切部材23を配置することにより、仕切部材23が電磁波の通路となり、ビームホール1での電磁波の反射や損失も低減させることができる。さらに、実施形態4によれば、実施形態2よりも簡単な工程で製造することができ、コストを低減させることができる。
【0053】
[実施形態5]
実施形態5に係る遅波回路について図面を用いて説明する。
図12は、実施形態5に係る遅波回路を有する進行波管の構成を模式的に示した断面図である。
【0054】
実施形態5は、実施形態4の変形例であり、ビームホール11の断面形状を楕円形状とし、仕切部材23を垂直方向に仕切る第1仕切部(
図2の13a)のみとし、仕切部材23と外壁面11aで囲まれた空間には片側に1つのビーム経路4(両側で2つのビーム経路4)としたものである。その他の構成は、実施形態4と同様である。
【0055】
実施形態5によれば、実施形態4よりも上面及び下面が概水平なのでビームホール11での反射が増加してしまうが、仕切部材がないもの(
図3(C)参照)と比べて、仕切部材23によりビームホール11内を通る電子ビームをビームホール11の外壁面11aに寄せる(ビームホール11の中央を通らないようにする)ことができ、電磁波と電子ビームの相互作用する領域を増加させることができ、遅波回路10におけるゲインを増大させることができる。また、実施形態5によれば、ビームホール11の中央に導体からなる仕切部材23を配置することにより、仕切部材23が電磁波の通路となり、ビームホール11での電磁波の反射や損失も低減させることができる。
【0056】
[実施形態6]
実施形態6に係る遅波回路について図面を用いて説明する。
図13は、実施形態6に係る遅波回路を有する進行波管の構成を模式的に示した断面図である。
【0057】
実施形態6は、実施形態2の変形例であり、ビームホール31の断面形状を角丸四角形状としたものである。その他の構成は、実施形態4と同様である。
【0058】
実施形態6によれば、実施形態2よりも上面及び下面が水平なのでビームホール31での反射が増加してしまうが、仕切部材がないもの(
図3(C)参照)と比べて、仕切部材13によりビームホール31内を通る電子ビームをビームホール31の外壁面31aに寄せる(ビームホール31の中央を通らないようにする)ことができ、電磁波と電子ビームの相互作用する領域を増加させることができ、遅波回路10におけるゲインを増大させることができる。また、実施形態6によれば、ビームホール31の中央に導体からなる仕切部材13を配置することにより、仕切部材13が電磁波の通路となり、ビームホール31での電磁波の反射や損失も低減させることができる。
【0059】
[実施形態7]
実施形態7に係る遅波回路について図面を用いて説明する。
図14は、実施形態7に係る遅波回路の構成を模式的に示した(A)矢視Aの平面図、(B)Y−Y’間断面図、(C)Z−Z’間断面図である。
【0060】
遅波回路10は、電磁波を電子ビームと相互作用させ、電磁波と電子ビームとを同程度の速度とするために電子ビームに対して電磁波を迂回させるための回路である。遅波回路10は、ビームホール1と、導波路2と、ガイド部材3と、を有する。
【0061】
ビームホール1は、所定方向に延在するとともに電子ビームを伝送するための空間である。導波路2は、ビームホール1を迂回するように電磁波を伝送するための空間である。ガイド部材3は、ビームホール1を通る電子ビーム(ビーム通路4に相当)をビームホール1の外壁面1aに寄せるように配置するための部材である。
【0062】
実施形態7によれば、ガイド部材3によってビームホール1を通る電子ビームをビームホール1の外壁面1aに寄せることで、電磁波と電子ビームとの間の相互作用の低下が抑えられ、高周波化が進んで遅波回路10が微細化されても電磁波と電子ビームとの間の相互作用を改善することができる。
【0063】
(付記)
本発明では、前記第1の視点に係る遅波回路の形態が可能である。
【0064】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記ガイド部材は、前記ビームホールを、電子ビームが通る複数のビーム通路に分割する仕切部材である。
【0065】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記仕切部材は、導体よりなる。
【0066】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記ビームホールの断面は、概円形状又は楕円形状若しくは角丸矩形状である。
【0067】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記導波路は、ミアンダ状に構成され、前記ビームホールは、前記導波路の中央を貫通するように配されている。
【0068】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記導波路は、らせん状に構成され、前記ビームホールは、前記らせん状の前記導波路の中心軸に沿って配されている。
【0069】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記仕切部材は、前記ビームホールの延在方向に沿って前記ビームホールを第1方向に分割する第1仕切部、及び、前記ビームホールの延在方向に沿って前記ビームホールを前記第1方向に対して直角の第2方向に分割する第2仕切部、の両方又は一方を備える。
【0070】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記第1仕切部は、前記ビームホールの中央を通るように1本あり、前記第2仕切部は、前記第1仕切部の両面に、それぞれ所定間隔をおいて2本ある。
【0071】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記第1仕切部は、前記ビームホールの中央を通るように1本あり、前記第2仕切部は、前記ビームホールの中央を通るように1本ある。
【0072】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記ビーム通路は、前記ビームホールの外壁面と前記仕切部材で囲まれている。
【0073】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記仕切部材は、電磁波の進行方向と平行になるように前記ビームホールの中央に配設されている。
【0074】
前記第1の視点に係る遅波回路において、前記ビームホールは、複数に分割されており、前記導波路及び前記仕切部材は、前記ビームホールの分割ラインに沿って分割されている。
【0075】
本発明では、前記第2の視点に係る進行波管の形態が可能である。
【0076】
本発明では、前記第3の視点に係る進行波管の製造方法の形態が可能である。
【0077】
本発明の第4の視点に係る送信源用増幅器は、前記第1の視点に係る遅波回路を有する。
【0078】
なお、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(必要により不選択)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、本願に記載の数値及び数値範囲については、明記がなくともその任意の中間値、下位数値、及び、小範囲が記載されているものとみなされる。