(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870848
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】合成樹脂用導電剤、導電性樹脂組成物及び導電性床材
(51)【国際特許分類】
H01B 1/20 20060101AFI20210426BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20210426BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20210426BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20210426BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20210426BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20210426BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20210426BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
H01B1/20 Z
C08L101/00
C08L27/06
C08K3/26
C08K5/12
C08K5/11
C08K5/06
C08K5/17
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-89279(P2017-89279)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-188493(P2018-188493A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西 佑典
【審査官】
岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−198239(JP,A)
【文献】
特開2005−154575(JP,A)
【文献】
特開2001−323122(JP,A)
【文献】
特開2017−048291(JP,A)
【文献】
特開2015−117366(JP,A)
【文献】
特開2002−309112(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0326346(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第106554629(CN,A)
【文献】
国際公開第2015/017659(WO,A1)
【文献】
特開2011−173816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/20
C08K 3/00 −13/08
C08L 1/00 −101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1で示される第四級アンモニウム塩及
びジオール化合物
としてエチレングリコールを含有
し、
前記第四級アンモニウム塩が、R1が炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩と、R1が化2で示される有機基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩とを含むことを特徴とする合成樹脂用導電剤。
【化1】
(化1において、
R
1:炭素数
10〜16の脂肪族炭化水素基及び下記の化2で示される有機基から選ばれる基
R
2,R
3:炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基
Y:分子中に1〜5個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)オキシアルキレングリコールからすべての水酸基を除いた残基
X
−:過塩素酸イオン
基)
【化2】
(化2において、
R
4:炭素数
9〜
13の脂肪族炭化水素基
R
5:炭素数1〜5のアルキレン基
)
【請求項2】
下記の化
3で示される第四級アンモニウム塩及
びジオール化合物
としてエチレングリコールを含有
し、第四級アンモニウム塩としてR1が炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基である場合の化3で示される第四級アンモニウム塩及びR1が化4で示される有機基である場合の化3で示される第四級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも一種のみを含むことを特徴とする合成樹脂用導電剤。
【化3】
(化
3において、
R
1:炭素数
10〜16の脂肪族炭化水素基及び下記の化
4で示される有機基から選ばれる基
R
2,R
3:炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基
Y:分子中に1〜5個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)オキシアルキレングリコールからすべての水酸基を除いた残基
X
−:過塩素酸イオン
基)
【化4】
(化
4において、
R
4:炭素数
9〜
13の脂肪族炭化水素基
R
5:炭素数1〜5のアルキレン基)
【請求項3】
第四級アンモニウム塩/ジオール化合物=99.9/0.1〜80/20(質量比)の割合で含有する請求項1又は2記載の合成樹脂用導電剤。
【請求項4】
R1が炭素数12〜14の脂肪族炭化水素基であり、R4が炭素数11〜13の脂肪族炭化水素基である請求項1〜3のいずれか一つの項記載の合成樹脂用導電剤。
【請求項5】
第四級アンモニウム塩が、(R1が炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩)/(R1が化2で示される有機基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩)=80/20〜20/80(質量比)の混合物である請求項1記載の合成樹脂用導電剤。
【請求項6】
第四級アンモニウム塩が、(R1が炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基である場合の化3で示される第四級アンモニウム塩)/(R1が化4で示される有機基である場合の化3で示される第四級アンモニウム塩)=80/20〜20/80(質量比)の混合物である請求項2記載の合成樹脂用導電剤。
【請求項7】
ポリ塩化ビニル系樹脂用のものである請求項1〜6のいずれか一つの項記載の合成樹脂用導電剤。
【請求項8】
ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、下記の可塑剤を15〜60質量部、炭酸カルシウムを50〜500質量部及び請求項1〜7のいずれか一つの項記載の合成樹脂用導電剤を5〜30質量部の割合で含有することを特徴とする導電性樹脂組成物。
可塑剤:フタル酸エステル系可塑剤、脂肪族ジカルボン酸エステル系可塑剤及びトリメリット酸エステル系可塑剤から選ばれる少なくとも一つ
【請求項9】
炭酸カルシウムが、炭素数12〜22の飽和脂肪酸で表面処理された脂肪酸表面処理炭酸カルシウムを含有するものである請求項8記載の導電性樹脂組成物。
【請求項10】
炭酸カルシウムが、炭素数12〜22の飽和脂肪酸で表面処理された脂肪酸表面処理炭酸カルシウム/未処理の炭酸カルシウム=80/20〜20/80(質量比)の混合物である請求項9記載の導電性樹脂組成物。
【請求項11】
表面処理炭酸カルシウムが、炭素数16〜18の飽和脂肪酸で表面処理されたものである請求項9又は10記載の導電性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一つの項記載の導電性樹脂組成物を用いて成形された厚さが1〜3mmの成形物であることを特徴とする導電性床材。
【請求項13】
2層以上の積層導電性床材であって、表層を請求項8〜11のいずれか一つの項記載の導電性樹脂組成物を用いて成形された厚さが0.5〜1.5mmの導電性床材であることを特徴とする積層導電性床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂用導電剤、かかる合成樹脂用導電剤を含有する導電性樹脂組成物及びかかる導電性樹脂組成物を用いて成形した導電性床材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、合成樹脂は様々な分野に使用され、建築資材においては床の材料として広く使われている。合成樹脂は本質的に帯電する性質を持つため、床材にも静電気防止の対策が取られることが多い。特に半導体関連工場、コンピュータールーム等、静電気による障害を防止しなければならない建物の床はもちろんのこと、電子機器の普及に伴い一般事務スペース等においても静電気対策が必要とされている。そのため、床材には表面抵抗が10
4〜10
6Ω程度の適度な導電性を付与することが望まれている。従来、合成樹脂に導電性を付与するものとして、カーボンブラックや導電性繊維が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらの従来手段には、床材のような内装材の成形物に望まれるカラーリングをすることが難しいという問題がある。合成樹脂用帯電防止剤としては、界面活性剤も提案されている(例えば、特許文献2及び3を参照)。しかし、これらの従来手段には、鮮やかにカラーリングすることができるものの、得られる成形物の表面抵抗が10
7Ω未満までには下がらない上に、界面活性剤の配合量を上げていくと界面活性剤がブリードアウトして表面にべたつきが生じ易いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−289373号公報
【特許文献2】特開平4−198239号公報
【特許文献3】特開2005−154575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、得られる成形物のカラーリング性に優れ、且つ成形物に適度な導電性を付与できると共に、成形物の表面にべたつきを生じない合成樹脂用導電剤、かかる合成樹脂用導電剤を含有する導電性樹脂組成物及びかかる導電性樹脂組成物を用いて成形した導電性床材を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成樹脂用導電剤としては、特定の第四級アンモニウム塩及び特定のジオール化合物を含有するものが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記の化1で示される第四級アンモニウム塩及び下記の化3で示されるジオール化合物
のうち本発明においてはエチレングリコールを含有することを特徴とする合成樹脂用導電剤に係る。
さらに本発明は、前記第四級アンモニウム塩が、R1が炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩と、R1が化2で示される有機基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩とを含む。若しくは、さらに本発明は、第四級アンモニウム塩としてR1が炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩及びR1が化2で示される有機基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも一種のみを含む。また本発明は、かかる合成樹脂用導電剤を含有する導電性樹脂組成物及びかかる導電性樹脂組成物を用いて成形して成る導電性床材に係る。
【0007】
【化1】
【0008】
化1において、
R
1:炭素数8〜16の脂肪族炭化水素基
のうち本発明においては炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基及び下記の化2で示される有機基から選ばれる基
R
2,R
3:炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基
Y:分子中に1〜5個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)オキシアルキレングリコールからすべての水酸基を除いた残基
X
−:塩素イオン基、過塩素酸イオン基及びアルキル基の炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基から選ばれる基
のうち本発明においては過塩素酸イオン基
【0009】
【化2】
【0010】
化2において、
R
4:炭素数7〜15の脂肪族炭化水素基
のうち本発明においては炭素数9〜13の脂肪族炭化水素基
R
5:炭素数1〜5のアルキレン基
【0011】
【化3】
【0012】
化3において、
A:炭素数2〜4のアルキレン基
m:1〜10の整数
【0013】
先ず、本発明に係る合成樹脂用導電剤(以下、本発明の導電剤という)について説明する。本発明の導電剤は、前記の化1で示される第四級アンモニウム塩と前記の化3で示されるジオール化合物
のうち本発明においてはエチレングリコールを含有するものである。
なお、以下、化3で示されるジオール化合物のうちエチレングリコール以外は参考例とする。
【0014】
本発明の導電剤に供する第四級アンモニウム塩は、第四級アンモニウムカチオン基と化1中のX
−で示されるアニオン基とから構成されている。一方の第四級アンモニウムカチオン基には、1)化1中のR
1が炭素数8〜16の脂肪族炭化水素基
のうち本発明においては炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基(以下、炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基以外は参考例とする)であり、R
2及びR
3が炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であって、Yが1〜5個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)アルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合の第四級アンモニウムカチオン基、2)化1中のR
1が化2で示される有機基
(本発明においては、R4が炭素数7〜15の脂肪族炭化水素基のうち炭素数9〜13の脂肪族炭化水素基であり、それ以外は参考例とする)であり、R
2及びR
3が炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であって、Yが1〜5個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)アルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合の第四級アンモニウムカチオン基がある。炭素数8〜16の脂肪族炭化水素基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソテトラデシル基等が挙げられ、化2で示される有機基としてはオクタンアミドメチル基、デカンアミドメチル基、ドデカンアミドメチル基、テトラデカンアミドメチル基、ヘキサデカンアミドメチル基、2−オクタンアミドエチル基、2−デカンアミドエチル基、2−ドデカンアミドエチル基、2−テトラデカンアミドエチル基、2−ヘキサデカンアミドエチル基、3−オクタンアミドプロピル基、3−デカンアミドプロピル基、3−ドデカンアミドプロピル基、3−テトラデカンアミドプロピル基、3−ヘキサデカンアミドプロピル基、4−オクタンアミドブチル基、4−デカンアミドブチル基、4−ドデカンアミドブチル基、4−テトラデカンアミドブチル基、4−ヘキサデカンアミドブチル基、5−オクタンアミドペンチル基、5−デカンアミドペンチル基、5−ドデカンアミドペンチル基、5−テトラデカンアミドペンチル基、5−ヘキサデカンアミドペンチル基等が挙げられる。なかでもR
1としては、炭素数12〜14の脂肪族炭化水素基、R
4が炭素数11〜13の脂肪族炭化水素基であり且つR
5がプロピル基である場合の化2で示される有機基が好ましい。また化1中のR
2及びR
3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基が挙げられるが、なかでもメチル基が好ましい。更に化1中のYとしては、1)エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール等の分子中に1個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位を有するアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基、2)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール等の分子中に2〜5個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が挙げられるが、なかでもエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が好ましい。
【0015】
他方の化1中のX
−で示されるアニオン基としては、1)塩素イオン基、2)過塩素酸イオン基、3)メチルスルホン酸イオン基、エチルスルホン酸イオン基、プロピルスルホン酸イオン基、イソプロピルスルホン酸イオン基、ブチルスルホン酸イオン基、イソブチルスルホン酸イオン基等のアルキル基の炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基が挙げられ
る。本発明は、なかでも過塩素酸イオン基が
適用され、それ以外は参考例とする。
【0016】
以上説明した化1で示される第四級アンモニウム塩の具体例としては、2−ヒドロキシエチルジメチルオクチルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチルノニルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチルデシルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチルドデシルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチルテトラデシルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチルヘキサデシルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジプロピルオクチルアンモニウム塩酸塩、2−ヒドロキシエチルジプロピルデシルアンモニウム塩素酸塩、3−ヒドロキシプロピルジメチルドデシルアンモニウム過塩素酸塩、テトラエチレングリコールジメチルテトラデシルアンモニウムメチルスルホン酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチル−3−オクタンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチル−3−ノナンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチル−3−デカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチル−3−ドデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチル−3−テトラデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチル−3−ヘキサデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジプロピル−3−オクタンアミドプロピルアンモニウム塩酸塩、2−ヒドロキシエチルジプロピル−3−デカンアミドプロピルアンモニウム塩素酸塩、3-ヒドロキシプロピルジメチル−3−ドデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩、テトラエチレングリコールジメチル−3−テトラデカンアミドプロピルアンモニウムメチルスルホン酸塩等が挙げられるが、なかでも2−ヒドロキシエチルジメチルドデシルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチルテトラデシルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチル−3−ドデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩、2−ヒドロキシエチルジメチル−3−テトラデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩が好ましい。
【0017】
以上説明した化1で示される第四級アンモニウム塩は一つを単独で使用することもできるが、二つ以上を併用することが好ましく、(R
1が炭素数8〜16の脂肪族炭化水素基
(本発明においては炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基)である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩)/(R
1が化2で示される有機基
(本発明においては、R4が炭素数9〜13の脂肪族炭化水素基)である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩)=80/20〜20/80(質量比)の割合の混合物が好ましい。
【0018】
本発明の導電剤に供するジオール化合物としては、1)エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール等の化3中のm=1である場合のアルキレングリコール、2)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール等の分子中に2〜10個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位を有する化3中のm=2〜10である場合のポリアルキレングリコールが挙げられるが、エチレングリコール及び化3中のm=2〜6である場合のポリアルキレングリコールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
【0019】
本発明の導電剤は以上説明した前記第四級アンモニウム塩及び前記ジオール化合物を含有するものであるが、(第四級アンモニウム塩)/(ジオール化合物)=99.9/0.1〜80/20(質量比)の割合で含有するものが好ましく、(第四級アンモニウム塩)/(ジオール化合物)=99.5/0.5〜90/10(質量比)の割合で含有するものがより好ましい。
【0020】
本発明の導電剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリエステル、ポリアミド等の縮合系樹脂等、各種の熱可塑性樹脂に導電性を付与できるが、なかでも床材等に使用されるポリ塩化ビニル系樹脂に対して有用である。
【0021】
次に、本発明に係る導電性樹脂組成物(以下、本発明の樹脂組成物という)について説明する。本発明の樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤、炭酸カルシウム及び以上説明した本発明の導電剤を含有して成るものである。
【0022】
本発明の樹脂組成物に供するポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単量体の単独重合体、塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。かかる他の単量体としては、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、ブテン、1−ペンテン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、シアン化ビニリデン、アルキルビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類、アリールエーテル類、ジアルキルマレイン酸類、フマル酸エステル類、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルシラン類、アクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アルキルエステル類等が挙げられる。本発明の組成物に用いるポリ塩化ビニル系樹脂は、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフトポリマー、塩化ビニル−ウレタンコポリマー等のグラフト共重合体であってもよい。なかでもポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単量体の単独重合体、塩化ビニル単量体と酢酸ビニル単量体の共重合体が好ましい。かかるポリ塩化ビニル系樹脂は、その平均重合度が通常は500〜4000のものが使用されるが、600〜2000のものが好ましく、なかでも700〜1200のものがより好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物に供する可塑剤は、1)フタル酸エステル系可塑剤、2)脂肪族ジカルボン酸エステル系可塑剤及び3)トリメリット酸エステル系可塑剤から選ばれる少なくとも一つである。フタル酸エステル系可塑剤としては、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジベンジル等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸エステル系可塑剤としては、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。トリメリット酸エステル系可塑剤としては、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。なかでも可塑剤としては、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシルが好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物に供する炭酸カルシウムには、1)未処理炭酸カルシウム、2)脂肪酸表面処理炭酸カルシウム、3)前記1)及び前記2)の混合物が含まれる。未処理炭酸カルシウムとしては、天然の石灰石等を粉砕して得られる平均粒径が0.5〜10μmの重質タイプ、化学反応によって得られる粒径が0.02〜2μmの合成タイプがあり、市販品としてはソフトン2200、ソフトン2600、ソフトン3200、BF−200、BF−300(以上、いずれも備北粉化工業社製の商品名)、ホワイトンB(白石カルシウム社製の商品名)が挙げられる。なかでも未処理炭酸カルシウムとしては、平均粒径が1〜5μmの重質タイプが好ましい。脂肪酸表面処理炭酸カルシウムは、前記未処理の重質タイプや合成タイプの炭酸カルシウムの表面を2〜6質量%の脂肪酸で処理して得られるものであり、市販品としてはライトンS−4(備北粉化工業社製の商品名)、白艶華CC、白艶華CCR、Vigot10、Vigot15(以上、いずれも白石カルシウム社製の商品名)が挙げられる。なかでも脂肪酸表面処理炭酸カルシウムとしては、炭素数12〜22の飽和脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムが好ましく、炭素数16〜18の飽和脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムがより好ましい。かかる脂肪酸表面処理炭酸カルシウムの平均粒径としては、0.02〜10μmのものが使用できるが、0.02〜5μmのものが好ましい。以上説明した炭酸カルシウムは単独でも使用できるが、なかでも(脂肪酸表面処理炭酸カルシウム)/(未処理炭酸カルシウム)=80/20〜20/80(質量比)の割合の混合物が好ましい。これらの炭酸カルシウムには、クレー、タルク等を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、以上説明した前記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物100質量部に対し、前記可塑剤を15〜60質量部、前記炭酸カルシウムを50〜500質量部及び前記本発明の導電剤を5〜30質量部の割合で含有するものである。
【0026】
本発明の樹脂組成物には、更に合目的的に他の添加剤を使用することができ、かかる添加剤としては、安定剤、カラーリング剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、充填剤、滑剤、耐候剤等が挙げられるが、これらの他の添加剤の使用量は可及的に少量とするのが好ましい。前記安定剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム等の金属石鹸、エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物、ジフェニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト等の有機ホスファイト系安定剤、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫マレート、有機錫メルカプチド、有機錫スルホンアミド等の錫系安定剤、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫ビス(トリデシルエチルマレート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)等の有機錫エステルマレート系安定剤等が挙げられ、これらの安定剤は単独又は2種以上を混合して用いることができる。安定剤を用いる場合、その使用量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部当たり、0.5〜10重量部の割合とするのが好ましく、1〜5重量部の割合とするのがより好ましい。また前記カラーリング剤としては、市販のものを使用することができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、以上説明したポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤、炭酸カルシウム及び本発明の導電剤等をロール混練機、バンバリーミキサー、押出し機等の混練機を用いて混練することにより調製できる。
【0028】
本発明の樹脂組成物を2.0mmの厚さのシートに成形すると、かかるシートは20℃で55%RH雰囲気下での表面抵抗値を1×10
4〜9×10
6Ωのものとすることができる。かかる表面抵抗値は、JIS K6911に準じて測定することができる。
【0029】
最後に、本発明に係る導電性床材(以下、本発明の床材という)について説明する。本発明の床材は、前記本発明の樹脂組成物を用いて厚さを1〜3mmの成形物に成形してなるものである。成形には、カレンダー成形、プレス成形、押出し成形等の公知の成形法を採用することができる。本発明に係る積層導電性床材は、前記本発明の導電性組成物を用いて前記の方法で成形した厚さが0.5〜1.5mmのシートを表層とし、これに裏打ちシート等を貼合してなるものである。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した本発明によると、得られる成形物のカラーリング性に優れ、且つ成形物に表面抵抗が10
4〜10
6Ω程度の適度な導電性を付与できると共に、成形物の表面にべたつきを生じないという効果がある。
【0031】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【実施例】
【0032】
試験区分1(導電剤の調製)
・実施例1
第四級アンモニウム塩(A−1)4.8部、第四級アンモニウム塩(B−1)4.8部及びジオール化合物(D−1)0.4部を混合して実施例1の導電剤(E−1)を調製した。
【0033】
・実施例2〜
18,21、参考例19,20,22〜25及び比較例1〜7
実施例1と同様にして、実施例2〜
18,21、参考例19,20,22〜25及び比較例1〜7の導電剤(E−2)〜(E−25)及び(e−1)〜(e−7)を調製した。実施例1も含め、以上で調製した各例の導電剤の内容を表1及び表2にまとめて示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表1及び表2において、
*1:(R
1が炭素数8〜16の脂肪族炭化水素基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩)/(R
1が化2で示される有機基である場合の化1で示される第四級アンモニウム塩)の質量比
A−1:2−ヒドロキシエチルジメチルドデシルアンモニウム過塩素酸塩
A−2:2−ヒドロキシエチルジメチルテトラデシルアンモニウム過塩素酸塩
A−3:2−ヒドロキシエチルジメチルデシルアンモニウム過塩素酸塩
A−4:2−ヒドロキシエチルジメチルヘキサデシルアンモニウム過塩素酸塩
A−5:2−ヒドロキシエチルジメチルオクチルアンモニウム過塩素酸塩
A−6:2−ヒドロキシエチルジメチルドデシルアンモニウムメチルスルホン酸塩
a−1:2−ヒドロキシエチルジメチルオクタデシルアンモニウム過塩素酸塩
B−1:2−ヒドロキシエチルジメチル−3−ドデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩
B−2:2−ヒドロキシエチルジメチル−3−テトラデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩
B−3:2−ヒドロキシエチルジメチル−3−デカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩
B−4:2−ヒドロキシエチルジメチル−3−ヘキサデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩
B−5:2−ヒドロキシエチルジメチル−3−オクタンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩
b−1:2−ヒドロキシエチルジメチル−3−オクタデカンアミドプロピルアンモニウム過塩素酸塩
b−2:ジメチル−3−ドデカンアミドプロピルアミンジエチル硫酸塩
【0037】
D−1:エチレングリコール
D−2:ポリオキチエチレングリコール(m=5)
d−1:PEG−1000(三洋化成社製)
d−2:オレイルアルコールのエチレンエキサイド15モル付加物
d−3:テトラデシルアルコールのエチレンオキシド5モル付加物/オレイルアルコールのエチレンオキシド13モル付加物=50/50(質量比)
d−4:オレイン酸のエチレンオキシド13モル付加物
【0038】
試験区分2(導電性樹脂組成物の調製)
・実施例26
ポリ塩化ビニル系樹脂として塩化ビニル単独重合体(平均重合度800)(P−1)を100部、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(K−1)を25部、炭酸カルシウムとしてステアリン酸表面処理炭酸カルシウム(M−1)/未処理炭酸カルシウム(N−1)=50/50(質量比)の混合物を160部及び試験区分1で調製した導電剤(E−1)を10部、以上を混練機に投入した後、更に安定剤としてバリウム−亜鉛系液体安定剤1.5部、バリウム−亜鉛系粉体安定剤0.5部、エポキシ化大豆油3部及びカラーリング剤としてGBG−2156(緑色、日本ピグメント社製の商品名)1部を加えて混練し、実施例26の導電性樹脂組成物(R−1)を調製した。
【0039】
・実施例27〜
43,46、参考例44,45,47〜50及び比較例8〜19
実施例26と同様にして、実施例27〜
43,46、参考例44,45,47〜50及び比較例8〜19の導電性樹脂組成物(R−2)〜(R−25)及び(r−1)〜(r−12)を調製した。実施例26も含め、各例の導電性樹脂組成物の内容を表3及び表4にまとめて示した。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
表3及び表4において、
*2:(炭素数12〜22の飽和脂肪酸で表面処理された脂肪酸表面処理炭酸カルシウム)/(未処理の炭酸カルシウム)の質量比
P−1:塩化ビニル単独重合体(平均重合度800)
P−2:塩化ビニル単独重合体(平均重合度1050)
P−3:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(平均重合度700)
P−4:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(平均重合度900)
P−5:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(平均重合度1100)
K−1:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル
K−2:フタル酸ジイソノニル
K−3:フタル酸ジイソデシル
K−4:アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル
K−5:トリメリット酸トリオクチル
【0043】
M−1:ステアリン酸処理炭酸カルシウム(平均粒径0.08μm)
M−2:ステアリン酸処理炭酸カルシウム(平均粒径2.2μm)
M−3:パルミチン酸処理炭酸カルシウム(平均粒径0.08μm)
M−4:ラウリン酸処理炭酸カルシウム(平均粒径0.08μm)
M−5:ベヘニン酸処理炭酸カルシウム(平均粒径2.2μm)
m−1:変性脂肪酸処理炭酸カルシウム(平均粒径1.8μm)
m−2:カーボンブラック
m−3:カーボン繊維(繊維径13μm、平均繊維長0.3〜0.4mm)
N−1:未処理炭カルシウム(製品名:ホワイトンB,白石カルシウム社製)
N−2:未処理炭酸カルシウム(製品名:ソフトン2200,白石カルシウム社製)
n−1:タルク(LMR、富士タルク工業社製)
E−1〜E−25,e−1〜e−7:表1及び表2に記載の導電剤
【0044】
試験区分3(導電性床材の成形及び評価)
・実施例51
試験区分2で調製した導電性樹脂組成物(R−1)を用いて、カレンダー成形により厚さ2.0mmの導電性床材を成形した。
【0045】
・実施例52〜
68,71、参考例69,70,72〜75及び比較例20〜31
実施例51と同様にして、表5に記載の実施例52〜
68,71、参考例69,70,72〜75及び比較例20〜31の導電性床材を成形した。実施例51も含め、成形した各例の導電性床材について次のようにカラーリング性、導電性及び非べたつき性を評価した。結果を表5にまとめて示した。
【0046】
・カラーリング性
成形した導電性床材の色調を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
◎:くすみや変色がなく、鮮やかであり、カラーリング性に著しく優れる
○:くすみや変色が僅かにあるが、鮮やかであり、カラーリング性に優れる
△:くすみや変色があり、鮮やかさに欠け、カラーリング性に劣る
×:黒色であり、カラーリング性に著しく劣る
【0047】
・導電性
成形した導電性床材を、20℃で相対湿度55%の条件下に24時間調湿した後、同条件下で表面抵抗値(Ω)を電気抵抗値測定装置(日置電機社製の商品名SM−8220、SME−8310)を用いて測定した。
【0048】
・非べたつき性
成形した導電性床材を、20℃で相対湿度55%の条件下に24時間調湿した後、表面の外観を肉眼で観察し、手で触って、下記の基準で評価した。
◎:導電剤のブリードアウトがなく、べたつきもない
○:導電剤のブリードアウトが僅かにあるが、べたつきはない
△:導電剤のブリードアウトがあり、べたつきがある
×:導電剤のブリードアウトが激しく、著しいべたつきがある
【0049】
【表5】
【0050】
表1〜表4に対応する表5の結果からも明らかなように、本発明の導電剤を含有する導電性脂組成物を用いて成形した導電性床材は、カラーリング性に優れ、且つ表面抵抗が10
4〜10
6Ω程度の適度な導電性を有すると共に、表面にべたつきを生じない。