(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870852
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】遺伝子組換え無脊椎動物アルツハイマー病モデルおよびその利用
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20210426BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20210426BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20210426BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
A01K67/033 501
C12N15/09 ZZNA
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-99855(P2017-99855)
(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公開番号】特開2018-191607(P2018-191607A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】510108858
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 泰豊
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】津田 玲生
【審査官】
太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】
Neuroscience,2005年,Vol. 132,pp. 123-135
【文献】
Biotechnology Letters,2007年,Vol. 29,p. 1803-1809
【文献】
鈴木マリ,永井義隆,ショウジョウバエを用いた神経変性疾患研究,生体の科学,2016年12月15日,第67巻第6号,第589−595頁
【文献】
北爪しのぶ,他,アルツハイマー病βセレクターゼの基質としての糖転移酵素,蛋白質 核酸 酵素,2004年,Vol. 49, No. 15,p. 2468-2472
【文献】
津田玲生,他,178個体レベルのスクリーニングによるアルツハイマー病治療薬の開発,Dementia Japan,2015年 9月15日,Vol. 29, No. 3(September),p. 163
【文献】
津田玲生,他,262アルツハイマー病の発症に伴った神経変性の定量的解析モデル作成,Dementia Japan,2016年10月15日,Vol. 30, No. 4(October),p. 178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガングリオシド産生に関与する酵素をコードする遺伝子が導入され、ガングリオシドを発現する遺伝子組換え無脊椎動物。
【請求項2】
前記ガングリオシド産生に関与する酵素が、β1,4−ガラクトース転移酵素およびα2,3−シアル酸転移酵素であり、前記ガングリオシドがGM3ガングリオシドである、請求項1に記載の遺伝子組換え無脊椎動物。
【請求項3】
シアル酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子がさらに導入された、請求項1または2に記載の遺伝子組換え無脊椎動物。
【請求項4】
アミロイドβをコードする遺伝子がさらに導入され、ガングリオシドとアミロイドβを共発現する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の遺伝子組換え無脊椎動物。
【請求項5】
前記アミロイドβがオランダ型アミロイドβ変異体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子組換え無脊椎動物。
【請求項6】
前記無脊椎動物が昆虫または線虫である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の遺伝子組換え無脊椎動物。
【請求項7】
前記昆虫がショウジョウバエである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子組換え無脊椎動物。
【請求項8】
(1)請求項4〜7のいずれか1項に記載の遺伝子組換え無脊椎動物を準備するステップと、
(2)前記遺伝子組換え無脊椎動物に候補化合物を投与するステップと、
(3)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換え無脊椎動物を解析するステップと
を含む、アルツハイマー病の治療薬のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子組換え無脊椎動物アルツハイマー病モデル、および、それを用いたアルツハイマー病の治療薬のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本はかつて無いスピードで人口の高齢化が進展しており、それと共にアルツハイマー病を中心とする認知症患者の数も増えつつある。認知症患者の介護は、経済的にも大きな負担となることから、一日も早い有効な治療法の確立が急務である。現在、アルツハイマー型認知症の治療として、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA阻害薬などを用いて一時的に認知症の症状を改善する対症療法が行われているものの、その効果は極めて限定的であり、アルツハイマー病の発症および進行を抑制する根本療法の確立が強く望まれている。
【0003】
アルツハイマー病の根本療法を確立するためには、アルツハイマー病の発症機序の解明が必要である。アルツハイマー病患者に共通してみられる病理学的特徴としては、(1)脳の萎縮、(2)斑状のアミロイド蓄積物(老人斑)の形成、(3)神経細胞内における繊維状の塊(神経原線維変化:neurofibrillary tangle(NFT))の形成の3つが知られている。老人斑の形成はアミロイドβ(Aβ)の凝集・蓄積によって引き起こされることが知られており、Aβの凝集がアルツハイマー病の発症の発端であるとするアミロイド仮説が、特に有力な仮説として提唱されている。Aβの凝集は、神経細胞膜を構成するGM1ガングリオシド(GM1)に対してAβが結合して複合体(GM1結合型Aβ:GAβ)が形成されることから開始されるとの知見が得られており(非特許文献1)、GAβが「種(シード)」となってAβの凝集が促進されるとする仮説を支持する多数の研究結果が得られている(非特許文献2、3)。
【0004】
アルツハイマー病の発症機序のさらなる解明と、アルツハイマー病の根本療法のための治療薬の開発のためには、モデル動物が非常に有用である。これまでに、数多くのアルツハイマー病モデルマウスが作製され、研究に使用されている。しかし、哺乳動物では内在性のガングリオシドが大量に存在することが阻害要因となり、アルツハイマー病の病態関連したAβとガングリオシドの相互作用を解析することは困難であった。さらに、大量の治療薬候補化合物を試験するには相当数のマウスが必要となるため、多大な時間的・経済的コストがかかることも問題となる。
【0005】
一方、昆虫や線虫などの無脊椎動物においては、ガングリオシドの内在性発現はみられない。さらに、無脊椎動物は、哺乳動物と比べてライフサイクルが短く、安価かつ容易に飼育することができ、治療薬候補化合物の大規模スクリーニングには有益である。しかし、ガングリオシドを産生する無脊椎動物の作製に成功した例は、今までに報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yanagisawa, K. et al., Nat. Med., Vol. 1, pp. 1062-1066 (1995)
【非特許文献2】Hayashi, H. et al., J. Nuerosci., Vol. 24, pp. 4894-4902(2004)
【非特許文献3】Yanagisawa K., Glycoconj. J., Vol. 32, pp. 87-91(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の諸問題を解消し、ヒト脳内の生理的条件におけるAβの凝集を再現した無脊椎動物を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ガングリオシドを産生する遺伝子組換え無脊椎動物の作製に初めて成功した。本発明者らは、このガングリオシドガングリオシドを産生する遺伝子組換え無脊椎動物に、さらにアミロイドβを共発現させることにより、ヒト脳内の生理的条件におけるAβの凝集を再現できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、一実施形態によれば、ガングリオシド産生に関与する酵素をコードする遺伝子が導入され、ガングリオシドを発現する遺伝子組換え無脊椎動物を提供するものである。
【0010】
前記ガングリオシド産生に関与する酵素は、β1,4−ガラクトース転移酵素およびα2,3−シアル酸転移酵素であり、前記ガングリオシドがGM3ガングリオシドであることが好ましい。
【0011】
前記遺伝子組換え無脊椎動物は、シアル酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子がさらに導入されたものであることが好ましい。
【0012】
前記遺伝子組換え無脊椎動物は、アミロイドβをコードする遺伝子がさらに導入され、ガングリオシドとアミロイドβを共発現することが好ましい。
【0013】
前記アミロイドβは、オランダ型アミロイドβ変異体であることが好ましい。
【0014】
前記無脊椎動物は、昆虫または線虫であることが好ましい。
【0015】
前記昆虫は、ショウジョウバエであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、一実施形態によれば、(1)上記ガングリオシドとアミロイドβを共発現する遺伝子組換え無脊椎動物を準備するステップと、(2)前記遺伝子組換え無脊椎動物に候補化合物を投与するステップと、(3)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換え無脊椎動物を解析するステップとを含む、アルツハイマー病の治療薬のスクリーニング方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る遺伝子組換え無脊椎動物は、内因性のガングリオシドが存在しないため、ヒト脳内と同レベルのガングリオシドおよびAβを発現させることにより、ヒト脳内の生理的条件におけるAβの凝集を再現することができる。また、本発明に係る遺伝子組換え無脊椎動物をアルツハイマー病の治療薬のスクリーニングに用いることにより、大量の候補化合物について、迅速かつ安価なハイスループットスクリーニングを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】遺伝子組換えショウジョウバエにおけるGM3ガングリオシドの合成経路を示す図である。
【
図2】遺伝子組換えショウジョウバエの神経組織におけるGALT6、SAT1、GNEの発現を免疫染色により確認した図である。
【
図3】(a)GALT6およびSAT1を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(−))と、(b)GALT6およびSAT1を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(+))の脳神経組織から抽出した脂質についての質量分析の結果を示す図である。
【
図4】GALT6、SAT1およびDut40を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(+))の脳神経組織における凝集Aβをウェスタンブロッティングにより検出した結果を示す図である。
【
図6】Dut40のみを発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(−)または(+))の脳神経組織における凝集Aβをウェスタンブロッティングにより検出した結果を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による遺伝子組換え無脊椎動物を用いたアルツハイマー病の治療薬のスクリーニング方法の原理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明は、第一の実施形態によれば、ガングリオシド産生に関与する酵素をコードする遺伝子が導入され、ガングリオシドを発現する遺伝子組換え無脊椎動物である。
【0021】
本実施形態において用いることができる「無脊椎動物」は、内在性のガングリオシドを実質的に発現していない、すなわち、棘皮動物よりも下位の無脊椎動物であれば、任意のものであってよい。内在性のガングリオシドを「実質的に発現していない」とは、通常行われる検出手段(例えば免疫化学的手法など)によって、内在性のガングリオシドを検出することができないことを意味する。内在性のガングリオシドを実質的に発現していない無脊椎動物としては、例えば、昆虫などの節足動物、線虫などの線形動物、環形動物、軟体動物が挙げられる。本実施形態において用いることができる無脊椎動物は、好ましくは、昆虫または線虫(Caenorhabditis elegans)である。好ましい昆虫としては、例えば、ショウジョウバエなどの双翅目、カイコなどの鱗翅目、ミツバチなどの膜翅目、コクヌストモドキなどの甲虫目の昆虫が挙げられる。本実施形態において用いることができる昆虫は、好ましくはショウジョウバエ属(Drosophila)のハエであり、特に好ましくはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)である。
【0022】
「ガングリオシド」とは、セラミドに糖が結合した糖脂質であるスフィンゴ糖脂質の一種であって、糖鎖部分に少なくとも1つのシアル酸を含むものである。ガングリオシドは、糖鎖部分の構造の違いにより、ガングリオ系、ラクト系、グロボ系などに分類され、さらに、糖鎖部分に含まれるシアル酸の数によって分類される。例えば、シアル酸を1つ含むガングリオ系ガングリオシドとしては、GM1a、GM1b、GM2、GM3など;シアル酸を2つ含むガングリオ系ガングリオシドとしては、GD1a、GD1b、GD2、GD3など;シアル酸を3つ含むガングリオ系ガングリオシドとしては、GT1a、GT1b、GT1c、GT2、GT3など;シアル酸を4つ含むガングリオ系ガングリオシドとしては、GQ1b、GQ1cなど;シアル酸を5つ含むガングリオ系ガングリオシドとしては、GP1cなどが挙げられる。本実施形態におけるガングリオシドは、好ましくはGM1a、GM1b、GM2、GM3などのモノシアロガングリオ系ガングリオシドであり、特に好ましくはGM3である。
【0023】
「ガングリオシド産生に関与する酵素」には、糖転移酵素と糖質加水分解酵素とが含まれる。糖転移酵素としては、例えば、ガラクトース転移酵素、シアル酸転移酵素、フコース転移酵素、N−アセチルガラクトサミン転移酵素などが挙げられる。糖質加水分解酵素としては、例えば、ガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼなどが挙げられる。ガングリオシドの生合成経路はすでに解明されており、発現させたいガングリオシドに応じて、適切な酵素を選択することができる。例えば、GM3であれば、β1,4−ガラクトース転移酵素およびα2,3−シアル酸転移酵素を発現させることにより産生させることができる。例えば、GM2であれば、β1,4−N−アセチルガラクトサミン転移酵素を発現させることにより産生させることができる。例えば、GM1aであれば、β1,3−ガラクトース転移酵素2を発現させることにより産生させることができる。
【0024】
本実施形態におけるガングリオシド産生に関与する酵素は、任意の動物種由来のものであってよいが、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、非ヒト霊長類、ヒトなどの哺乳動物由来のものであり、特に好ましくはヒト由来である。ガングリオシド産生に関与する酵素をコードする遺伝子はすでにクローニングされており、その塩基配列情報は、所定のデータベースから入手することができる。例えば、ヒトβ1,4−ガラクトース転移酵素については、Genbankアクセッション番号BC069620.1、ヒトα2,3−シアル酸転移酵素については、Genbankアクセッション番号NM_003896およびNM_001042437、ヒトβ1,4−N−アセチルガラクトサミン転移酵素については、Genbankアクセッション番号NM_153446、NM_001159387.1およびNM_001159388.1、ヒトβ1,3−ガラクトース転移酵素2については、Genbankアクセッション番号AF288390が利用可能である。
【0025】
本実施形態におけるガングリオシド産生に関与する酵素には、酵素活性が維持されていることを限度として、上述のようなデータベースに登録されているアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは約95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質が包含され得る。アミノ酸配列の同一性は、配列解析ソフトウェアを用いて、または、当分野で慣用のプログラム(FASTA、BLASTなど)を用いて算出することができる。また、本実施形態におけるガングリオシド産生に関与する酵素には、酵素活性が維持されていることを限度として、データベースに登録されているアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質が包含され得る。ここで、「1〜数個」とは、例えば「1〜30個」、好ましくは「1〜10個」、特に好ましくは「1〜5個」である。
【0026】
上記ガングリオシド産生に関与する酵素をコードする遺伝子の無脊椎動物への導入は、当分野において周知の方法により行うことができる。例えば、プラスミド、ウイルス、トランスポゾンなどの公知のベクターに、プロモーターなどの転写調節配列とともに導入したい遺伝子配列を組み込み、対象の無脊椎動物へと導入することができる。特に、昆虫については、トランスポゾンを用いた遺伝子組換え技術が十分に確立されており、例えばショウジョウバエであれば、当分野において十分に確立されたGAL4−UAS発現系を用いて作製することができる。具体的には、転写因子であるGAL4を発現するショウジョウバエ系統と、GAL4の標的配列であるUASの下流にガングリオシド産生に関与する酵素をコードする遺伝子を組み込んだベクターを導入したショウジョウバエ系統とを交配させることにより、ガングリオシドを発現する遺伝子組換えショウジョウバエを作製することができる。
【0027】
UASの下流にガングリオシド産生に関与する酵素をコードする遺伝子を組み込んだベクターを導入したショウジョウバエ系統は、従来公知の方法により、例えばpUASTなどの形質転換ベクターに目的の酵素をコードする遺伝子を組み込んだものを、ショウジョウバエの胚に導入して作製することができる。GAL4を発現するショウジョウバエ系統は、すでに存在する系統を入手して用いてもよいし、従来公知の方法により、プロモーター/エンハンサーの下流にGAL4遺伝子を組み込んだベクターを導入して作製してもよい。本実施形態においては、好ましくは、神経細胞特異的プロモーター/エンハンサーを用いることができ、特に限定されないが、elav、Appl、R57C10などを用いることができ、好ましくはelavを用いることができる。また、GAL4を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ系統として、すでに存在する系統を使用する場合には、例えば、GAL4を神経細胞特異的に発現する系統であるelav
C155−gal4系統(Lin,D.M. et al., Neuron,13:507−523(1994))や、GAL4を脳キノコ体の神経細胞特異的に発現する系統であるmb247−gal4系統(Schulz,RA. et al., Oncogene,12:1827−1831(1996))などを用いることができる。
【0028】
上記のショウジョウバエ系統は、例えば、京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源センター(http://www.dgrc.kit.ac.jp/)や、ブルーミントンショウジョウバエストックセンター(http://flystocks.bio.indiana.edu/)などの国内外の公共ストックセンターから入手することができる。
【0029】
本実施形態の遺伝子組換え無脊椎動物がガングリオシドを十分に産生することができるためには、ガングリオシドの構成成分であるシアル酸を供給するシアル酸ドナー基質が十分に供給されていることが好ましい。シアル酸ドナー基質は、餌に添加することにより供給されてもよいし、遺伝子組換え無脊椎動物にシアル酸ドナー基質の合成に関与する酵素をコードする遺伝子をさらに導入することにより、シアル酸ドナー基質の生合成を補充してもよい。すなわち、本実施形態の遺伝子組換え無脊椎動物は、ガングリオシド産生に関与する酵素をコードする遺伝子に加え、シアル酸ドナー基質の合成に関与する酵素をコードする遺伝子がさらに導入されていてもよい。シアル酸ドナー基質の合成に関与する酵素をコードする遺伝子としては、例えば、ヒトUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼ/N−アセチルマンノサミンキナーゼ(Genbankアクセッション番号NG_008246.1)などが挙げられる。
【0030】
本実施形態の遺伝子組換え無脊椎動物は、アミロイドβをコードする遺伝子がさらに導入され、ガングリオシドとアミロイドβを共発現していることが好ましい。アミロイドβ(以降、本明細書では「Aβ」と記載する)とは、アミロイド前駆体タンパク質断片(APP)がβセクレターゼおよびγセクレターゼによって切断されて生成されるペプチドであり、APPにおける切断点の相違により、アミノ酸数の異なるAβ40やAβ42などが含まれる。
【0031】
「APP」には、NCBIのRefSeqデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/RefSeq/)において、RefSeqアクセッション番号NP_001129601.1、NP_001129602.1、NP_958817.1、NP_001191231.1、NP_958816.1、NP_001191230.1、NP_000475.1、NP_001129488.1、NP_001129603.1として登録されているアミノ酸配列からなるヒトAPPアイソフォームの他、家族性アルツハイマー病において見出される公知の変異を含むアイソフォームが包含される。
【0032】
また、「APP」には、βセクレターゼおよびγセクレターゼによって切断されてAβを生成するものであることを限度として、上記アミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは約95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質が包含され得る。アミノ酸配列の同一性は、配列解析ソフトウェアを用いて、または、当分野で慣用のプログラム(FASTA、BLASTなど)を用いて算出することができる。
【0033】
また、「APP」には、βセクレターゼおよびγセクレターゼによって切断されてAβを生成するものであることを限度として、上記アミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質が包含され得る。ここで、「1〜数個」とは、例えば「1〜30個」、好ましくは「1〜10個」、特に好ましくは「1〜5個」である。
【0034】
すなわち、本実施形態におけるAβは、例えば、以下に限定されないが、野生型、オランダ型変異体(E22Q)、北極型変異体(E22G)、イタリア型変異体(E22K)、フランドル型変異体(A21G)、アイオワ型変異体(D23N)のAβ40またはAβ42などであってよい。本実施形態におけるAβは、好ましくはオランダ型変異体のAβ40またはAβ42である。
【0035】
本実施形態の遺伝子組換え無脊椎動物は、ガングリオシドが関与する神経機能などの種々の生理機能を解析するためのモデル動物として使用することができる。また、本実施形態の遺伝子組換え無脊椎動物は、ヒト脳内と同程度の低レベルのAβを共発現させることにより、ヒト脳内の生理的条件におけるAβの凝集を再現することができるため、アルツハイマー病のモデル動物として有用である。
【0036】
本発明は、第二の実施形態によれば、(1)上記ガングリオシドとアミロイドβを共発現する遺伝子組換え無脊椎動物を準備するステップと、(2)前記遺伝子組換え無脊椎動物に候補化合物を投与するステップと、(3)前記(2)で候補化合物を投与された遺伝子組換え無脊椎動物を解析するステップとを含む、アルツハイマー病の治療薬のスクリーニング方法である。本実施形態のスクリーニング方法は、Aβとガングリオシドの相互作用を阻害できる化合物を、アルツハイマー病の根本的な治療または予防のために有用なAβ凝集阻害剤として取得できるものである。
【0037】
本実施形態における「無脊椎動物」、「ガングリオシド」および「アミロイドβ(Aβ)」は、第一の実施形態において定義したものと同様である。
【0038】
本実施形態のスクリーニング方法は、ガングリオシドとAβを共発現する遺伝子組換え無脊椎動物を使用する。本実施形態におけるガングリオシドとAβを共発現する遺伝子組換え無脊椎動物は、上で記載したように作製することができる。
【0039】
次いで、ガングリオシドとAβを共発現する遺伝子組換え無脊椎動物に、候補化合物を投与する。候補化合物には、合成化合物、ペプチド性化合物、核酸、抗体などが挙げられ、これらの候補化合物は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。候補化合物を遺伝子組換え無脊椎動物に投与するには、種々の濃度の候補化合物を、餌に添加して摂取させればよい。餌に添加される候補化合物の濃度は、化合物の種類により異なるが、例えば、0.1〜100mMの範囲で適宜選択することができる。候補化合物の投与は、例えば7〜30日間にわたって行うことができる。
【0040】
次いで、候補化合物を投与された遺伝子組換え無脊椎動物を解析することにより、候補化合物のAβ凝集阻害効果を評価する。凝集Aβの蓄積は、公知の手順により、例えば抗Aβ抗体を用いて生化学的または病理学的に脳組織を解析することにより、検出および定量することができる。また、本実施形態における遺伝子組換え無脊椎動物は、凝集Aβの蓄積と相関して運動機能や学習記憶能力が低下するため、運動機能や学習記憶能力を測定することによって、脳組織中の凝集Aβの蓄積の度合いを評価してもよい。運動機能や学習記憶能力の測定方法はすでに十分に確立されており、従来公知の方法を適宜選択することができる。例えば、無脊椎動物としてショウジョウバエを用いる場合であれば、運動機能の測定は、当分野において十分に確立された方法であるクライミングアッセイにより、負の重力走性(負の走地性)を評価することによって行うことができ、学習記憶能力の測定は、匂いと電気ショックを組み合わせた匂い嫌悪学習試験により行うことができる。
【0041】
候補化合物を投与された遺伝子組換え無脊椎動物において凝集Aβの蓄積が減少したかどうかを判定するためには、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換え無脊椎動物の解析を並行して実施して比較してもよいし、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換え無脊椎動物について過去に実施した解析結果と比較してもよい。
【0042】
本実施形態のスクリーニング方法において、候補化合物の投与により、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換え無脊椎動物と比較して凝集Aβの蓄積量が有意に減少した場合には、当該候補化合物は、アルツハイマー病の根本的な治療または予防のために有用なAβ凝集阻害剤として有望であると評価することができる。一方、候補化合物の投与により、候補化合物を投与しなかった遺伝子組換え無脊椎動物と比較して凝集Aβの蓄積量に変化が見られないまたは増加した場合には、当該候補化合物は、アルツハイマー病の根本的な治療または予防のために有用なAβ凝集阻害剤として有望ではないと評価することができる。
【0043】
本実施形態の方法の概略を
図7に示す。無脊椎動物には内因性のガングリオシドが存在しないため、目的の部位(例えば神経組織)のみに特異的にガングリオシドを産生させることができ、その結果、ヒト脳内と同程度の低レベルのAβ発現における凝集Aβの蓄積を検出することができる。そのため、本実施形態の方法は、ヒト脳内の生理的条件と同様の条件において候補化合物のAβ凝集阻害効果を評価することができ、アルツハイマー病の治療薬のスクリーニングに有用である。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げ、本発明についてさらに説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0045】
<1.遺伝子組換えショウジョウバエの作製および飼育>
哺乳類動物においてGM3ガングリオシド合成経路に関与する酵素であるβ1,4−ガラクトース転移酵素(公式略称:B4GALT6、以下「GALT6」と記載する)、α2,3−シアル酸転移酵素(公式略称:ST3GAL5、以下「SAT1」と記載する)、およびUDP−N−アセチルグルコサミン2−エピメラーゼ/N−アセチルマンノサミンキナーゼ(公式略称:GNE)を発現する遺伝子組換えショウジョウバエを、以下の手順により作製した。本実施例で作製した遺伝子組換えショウジョウバエにおけるGM3ガングリオシドの合成経路を
図1に示す。本実施例で作製した遺伝子組換えショウジョウバエでは、導入遺伝子GALT6(Tg−GALT6)によりグルコシルセラミド(GlcCer)からラクトシルセラミド(LacCer)が合成されるようになり、導入遺伝子SAT1(Tg−SAT1)によりLacCerからGM3ガングリオシドが合成されるようになる。また、導入遺伝子GNE(Tg−GNE)により、GM3ガングリオシド合成のためのシアル酸ドナー基質であるCMP−Neu5Acが合成されるようになる。
【0046】
ヒトGALT6、ヒトSAT1、およびヒトGNEのコード配列を、ヒト脳cDNAライブラリー(コード番号9503、タカラバイオ社製)を鋳型として、以下のプライマーセットを用いたPCRにより増幅することにより取得した。
【0047】
(i)GALT6
【化1】
【0048】
(ii)SAT1
【化2】
【0049】
(iii)GNE
【化3】
【0050】
PCR産物を、pCR−Blunt−II TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific社製)にクローニングし、続いてpUASTベクター(Brand and Perrimon, Development, 1993)のEcoRIサイトにサブクローニングした。pUASTベクターをyw系統のショウジョウバエ胚に注入し、得られた成体をさらにw
1118系統のショウジョウバエと交配することにより、遺伝子組換えショウジョウバエUAS−GALT6、UAS−SAT1およびUAS−GNEを得た。
【0051】
また、オランダ型変異(E22Q)Aβ40(以下、「Dut40」と記載する)を発現する遺伝子組換えショウジョウバエを、以下の手順により作製した。ヒトAβのコード配列をHeLa細胞のcDNAをPCRにより増幅し、ラットプロエンケファリンAの分泌シグナルペプチド配列を融合させた(Finelli et al., Mol.Cell.Neurosci., 2004)。さらに、以下のプライマーセットを用いたPCRにより、オランダ型変異(E22Q)を導入した。得られたPCR産物をpUASTベクターのBglIIサイトにサブクローニングし、上記手順と同様にして遺伝子組換えショウジョウバエUAS−Dut40を得た。
【0052】
(iv)Dut40(下線は変異導入部位を示す)
【化4】
【0053】
上記UAS系統とGAL4系統とを交雑させることにより、上記導入遺伝子を発現するショウジョウバエを作製した。GAL4を神経細胞特異的に発現するショウジョウバエ系統として、elav
C155−gal4系統(ブルーミントンショウジョウバエストックセンターより入手)を用いた。
【0054】
上記導入遺伝子を発現するショウジョウバエをさらに交雑することにより、GALT6およびSAT1を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ;GALT6、SAT1およびGNEを発現する遺伝子組換えショウジョウバエ;ならびにGALT6、SAT1およびDut40を発現する遺伝子組換えショウジョウバエを作製した。GALT6、SAT1およびGNEの発現を免疫染色により確認した結果を
図2に示す。免疫染色は、抗GALT6抗体(20148−1−AP、Proteintech社製)、抗SAT1抗体(ab107534、Abcam社製)、抗GNE抗体(25079−1−AP、Proteintech社製)を用い、通常の手順により行った(Yamasaki et al., Genes Cells., 2011)。この結果から、GALT6、SAT1およびGNEが神経組織特異的に発現していることが確認された。
【0055】
得られたショウジョウバエを、温度25℃、12時間の明暗サイクルの環境下において、一般的なエビオス・コーンミール・ショ糖・寒天培地を用いて飼育した。また、シアル酸ドナー基質であるNeu5Acを摂食させる場合には、10mMのNeu5Ac/150mMスクロース溶液をろ紙にしみ込ませ、1日おきに24時間ずつ、1〜2週間にわたり自由摂食させた。
【0056】
<2.遺伝子組換えショウジョウバエにおけるGM3ガングリオシド産生>
作製した遺伝子組換えショウジョウバエにおいてGM3ガングリオシドが産生されているかどうかを確認するために、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)による解析を行った。解析は、以下のショウジョウバエについて行った:(1)野生型(Neu5Ac摂食(−))(陰性対照)、(2)GALT6のみを発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(−))、(3)GALT6およびSAT1を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(−))、(4)GALT6およびSAT1を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(+))、(5)SAT1のみを発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(+))、(6)GALT6、SAT1およびGNEを発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(−))。
【0057】
各遺伝子組換えショウジョウバエにつき、200〜1000匹の成虫の頭部を採集し、TBS緩衝液(50mMのTris−HCl(pH7.6),150mMのNaCl)を添加し、ホモジナイズ後、乾燥させた。得られたペレットをクロロホルム:メタノール混合液(v/v=2:1)に懸濁し、脂質抽出液を回収し、さらに、ペレットをクロロホルム:メタノール:水混合液(v/v/v=2:1:0.8)に再懸濁し、脂質抽出液を回収した。回収された脂質抽出液を窒素ガス中42℃で乾燥させ、脂質抽出物を得た。脂質抽出物を0.1NのNaOH/メタノールに溶解させ、40℃で2時間処理した後、0.1mLの2N酢酸で中和し、窒素ガス中で蒸発濃縮し、C18 BondElut 300mgカートリッジ(アジレント・テクノロジー社製)により脱塩した。その後、脂質抽出物をメタノールに溶解し、LC−MS用サンプルとした。LC−MSには、液体クロマトグラフ質量分析計LCMS−8050(島津製作所)を用いた。
【0058】
結果を
図3および表1に示す。GALT6およびSAT1を発現する遺伝子組換えショウジョウバエにおいて、シアル酸ドナー基質であるNeu5Acを摂食させなかった場合にはGM3ガングリオシドの産生が見られなかったが(
図3(a))、シアル酸ドナー基質であるNeu5Acを摂食させることにより、GM3ガングリオシドが産生されることが確認された(
図3(b))。また、GALT6およびSAT1に加え、GNEを発現する遺伝子組換えショウジョウバエにおいて、GM3ガングリオシドが産生されることが確認された(表1)。
【0059】
表1.遺伝子組換えショウジョウバエにおけるLacCerおよびGM3産生
【表1】
【0060】
<3.遺伝子組換えショウジョウバエにおけるGM3ガングリオシド依存性Aβ凝集>
GM3ガングリオシドとDut40を共発現する遺伝子組換えショウジョウバエにおいて、GM3ガングリオシドに依存した凝集Aβの蓄積が見られるかどうかを確認するために、GALT6、SAT1およびDut40を発現する遺伝子組換えショウジョウバエの脳組織から調製したサンプルについてウェスタンブロッティングを行った。GALT6、SAT1およびDut40を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(−))と、GALT6、SAT1およびDut40を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(+))のそれぞれにつき、100匹以上の成虫の頭部を採集し、TBS緩衝液中でホモジナイズした。これを超遠心し(100,000g、1時間、4℃)、上清を回収した(TBS可溶性分画)。一方、残った沈殿物を100%ギ酸中で再度ホモジナイズし、遠心により不要成分を除去し(14,000rpm、20分間、25℃)、上清を回収し、乾燥させた(TBS不溶性分画)。Aβは、凝集していない状態ではTBS可溶性画分に分離され、凝集して不溶化した状態ではTBS不溶性分画に分離される。
【0061】
各分画をLaemmliバッファーにより調製したサンプルと、合成Aβペプチド(対照)を4−20%トリス−トリシンゲル(コスモバイオ社製)に供し、SDS−PAGEにて泳動後、ニトロセルロース膜(NitroBind、MSI社製)に転写した。その後、ニトロセルロース膜をPSB中で5分間煮沸し、5%スキムミルクおよび0.1%Tween20/PBS溶液にてブロッキングし、一次抗体として抗Aβモノクローナル抗体(クローン82E1、免疫生物研究所製)(1:100希釈)、二次抗体としてHRP標識ヤギ抗マウスIgG(CellSignaling社製)(1:3000希釈)を用いてウェスタンブロッティングを行った。バンドの検出は、ECLウェスタンブロッティング検出システム(GEヘルスケア・ライフサイエンス社製)により行った。検出されたバンドを画像解析ソフト(ImageJ、アメリカ国立衛生研究所製)により数値化し、各群のAβ量を比較定量した。
【0062】
結果を
図4に示す。GALT6、SAT1およびDut40を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(−))から調製したサンプル1および2(各3レーン)に比べ、GALT6、SAT1およびDut40を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(+))から調製したサンプル3および4(各3レーン)において、Dut40の凝集が増加していることが示された。
図4の結果を定量化したグラフを
図5に示す。この結果から、GM3ガングリオシドに依存してDut40の凝集が有意に増加していることが示された。
【0063】
Dut40の凝集がNeu5Acの摂食によるものではないことを確認するために、Dut40を発現する遺伝子組換えショウジョウバエ(Neu5Ac摂食(−)または(+))について、上記と同様にしてサンプルを調製し、ウェスタンブロッティングを行った。結果を
図6に示す。この結果、Neu5Acの摂食はDut40の凝集に影響しないことが確認された。
【0064】
以上の結果から、ガングリオシドとAβを共発現する遺伝子組換えショウジョウバエにおいて、ヒト脳におけるガングリオシドに依存した凝集Aβの蓄積を再現できることが示された。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]