(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6870875
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】剣道用マスク
(51)【国際特許分類】
A63B 71/10 20060101AFI20210426BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20210426BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
A63B71/10 A
A62B18/02 Z
A41D13/11 H
A41D13/11 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-119700(P2020-119700)
(22)【出願日】2020年7月13日
【審査請求日】2020年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2020-102887(P2020-102887)
(32)【優先日】2020年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508127214
【氏名又は名称】株式会社東山堂
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】林 孝洋
【審査官】
槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−080961(JP,A)
【文献】
特開2015−033487(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3224873(JP,U)
【文献】
All Japan Kendo Federation,“稽古自粛の解除及び感染防止ガイドライン制定”,全剣連のお知らせ,日本,全日本剣道連盟,2020年 6月 4日,URL,https://www.kendo.or.jp/information/20200604-2/
【文献】
TOZANDO INTL.,“世界初!剣道用『防曇ぼうどんフェイスガード』ついに完成!!”,YouTube,日本,YouTube,2020年 5月 4日,主に0:00〜0:02を参照,URL,https://www.youtube.com/watch?v=QiLUk7yiBHY
【文献】
inter-edu.com Co.,Ltd.,“剣道用フェイスシールド”,学校の先生による学校公式ブログ エデュログ edulog,日本,瀧野川女子学園中学高等学校,2020年 6月11日,URL,https://www.edulog.jp/takinogawa/archives/1234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/10
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剣道用面の面金の後側に取り付けられ、当該剣道用面を装着した着用者の鼻と口に対向するカバー部と、
前記カバー部の下端部から後側に向かって延出する受け部とを備えていることを特徴とする剣道用マスク。
【請求項2】
前記カバー部が、前記面金の上下方向の中間部に取り付けられている請求項1記載の剣道用マスク。
【請求項3】
前記カバー部に、着用者の鼻と口とに対向する対向部を避けて通気部が形成されている請求項1又は2のいずれかに記載の剣道用マスク。
【請求項4】
前記カバー部が、前側に突出するように曲がっている請求項1乃至3のいずれかに記載の剣道用マスク。
【請求項5】
前記受け部が、左右方向に並ぶ複数の受け部要素に分割されている請求項1乃至4のいずれかに記載の剣道用マスク。
【請求項6】
隣り合う前記受け部要素は、隣り合う辺部同士が互いに重なっている請求項5記載の剣道用マスク。
【請求項7】
前記カバー部と前記受け部とが、一枚の板材を折り曲げて形成されている請求項1乃至6のいずれかに記載の剣道用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剣道用マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
剣道用面は、特許文献1に示すように、着用者の顔面を保護する面金と、面金に取り付けられ、着用者の頭部を保護する緩衝部材と、を備えた構造になっている。
【0003】
前記剣道用面の面金に取り付けられる剣道用マスクとして、当該面金の上下方向の中間部に後側から取り付けられ、当該剣道用面の着用者の鼻と口に対向するカバー板を備えたものがある。
【0004】
前記剣道用マスクでは、着用者の鼻や口から前方へ向かって飛散した唾等の飛散物をカバー板によって受け止めることができる。また、カバー板が、面金の中間部に取り付けられているので、面金の上部と下部から空気が流入して呼吸し易い。
【0005】
しかしながら、前記剣道用マスクでは、カバー板によって面金の下部が塞がれない。このため、着用者の鼻や口から下方へ向かって飛散した飛散物が、面金の下部から外方へ放出され、好ましくない。例えば、大人が子供を指導する際には、大人の飛散物が身長の低い子供に降り掛かることになり、飛散物にウイルスが含まれていると、当該ウイルスの感染拡大を招くという問題等もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−22311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、剣道用面の着用者の鼻や口から下方へ向かって飛散した飛散物が面金から外方へ放出されない剣道用マスクを得ることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る剣道用マスクは、剣道用面の面金の後側に取り付けられ、当該剣道用面を装着した着用者の鼻と口に対向するカバー部と、前記カバー部の下端部から後側に向かって延出する受け部とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成によれば、剣道用面を装着した着用者の鼻と口に対向するカバー部の下端部から後側に向かって延出する受け部を設けたので、着用者の鼻や口から下方へ向かって飛散した飛散物が受け部に受け止められ、面金の下部から外方へ放出されなくなる。これにより、例えば、大人が子供を指導する際に、大人の飛散物が身長の低い子供に降り掛かることを防止できる。その結果、飛散物にウイルスが含まれていたとしても、当該ウイルスの感染拡大を抑制できる。
【0010】
また、前記カバー部が、前記面金の上下方向の中間部に取り付けられているものであってもよい。
【0011】
このような構成によれば、カバー部が面金の中間部に取り付けられているので、面金の上部と下部からカバー部と着用者の顔面との間に空気が流入するようになり、カバー部と着用者の顔面との間の通気性が向上する。これにより、着用者が呼吸し易くなり、また、着用者の呼吸によるカバー部の曇りが抑制される。
【0012】
また、前記カバー部に、着用者の鼻と口とに対向する対向部を避けて通気部が形成されていてもよい。
【0013】
このような構成によれば、カバー部に対向部を避けて通気部が形成されているので、カバー部の対向部によって着用者の鼻や口から前方へ吐き出された飛散物を受け止めつつ、通気部によってカバー部と着用者の顔面との間の通気性がさらに向上する。これにより、着用者がより呼吸し易くなり、また、着用者の呼吸によるカバー部の曇りが可及的に抑制される。
【0014】
また、前記カバー部が、前側に突出するように曲がっているものであってもよい。
【0015】
このような構成によれば、カバー部が前側に突出するように曲がっているので、カバー部と着用者の顔面との間にスペースが形成され、より呼吸し易くなる。
【0016】
また、前記受け部が、左右方向に並ぶ複数の受け部要素に分割されているものであってもよい。
【0017】
このような構成によれば、受け部が左右方向に並ぶ複数の受け部要素に分割されているので、カバー部の下端部を前側に突出するように曲げ易くなる。
【0018】
また、隣り合う前記受け部要素は、隣り合う辺部同士が互いに重なっているものであってもよい。
【0019】
このような構成によれば、隣り合う受け部要素の隣り合う辺部同士が互いに重なっているので、隣り合う受け部要素の間に隙間が形成され難くなる。これにより、カバー部を曲げ易いように受け部を分割しても、受け部によって飛散物を可及的に受け止めることができる。
【0020】
また、前記カバー部と前記受け部とが、一枚の板材を折り曲げて形成されているものであってもよい。
【0021】
このような構成によれば、一枚の板材を折り曲げて形成できるので、製造が容易となる。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した剣道用マスクによれば、剣道用面の着用者の鼻や口から下方へ向かって飛散した飛散物が面金から外方へ放出されなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係る剣道用マスクを剣道用面に取り付けた状態を模式的に示す正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る剣道用マスクを剣道用面に取り付けた状態を模式的に示す側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る剣道用マスクを剣道用面に取り付けた状態を模式的に示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る剣道用マスクのカバー部を面金に取り付けていない状態(弾性変形させていない状態)を模式的に示す斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係る剣道用マスクのカバー部を面金に取り付けた状態(弾性変形させた状態)を模式的に示す斜視図である。
【
図6】その他の実施形態に係る剣道用マスクを模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る剣道用マスクの一実施形態を説明する。
【0025】
<第1の実施形態> 本実施形態に係る剣道用マスク100は、
図1乃至
図3に示すように、剣道用面Mの面金Fに後側に引っ掛けて取り付けられるものである。そこで、先ず、剣道用マスク100の取り付け対象となる面金Fの構造を説明する。
【0026】
面金Fは、剣道用面Mの着用者の顔面と対向するものである。そして、面金Fは、略楕円形状に形成された台輪F1と、台輪F1の左右方向中央を通るように上下方向に架け渡された縦金F2と、台輪F1の左右方向に架け渡され、上下方向に略等間隔に複数並ぶ横金F3と、を備えている。
【0027】
台輪F1には、着用者の頭部を覆う面布団や内輪等の緩衝部材Hが取り付けられている。縦金F2は、前側に突出するように湾曲している。各横金F3は、その中央にて縦金F3と接続されており、前側に突出するように湾曲している。従って、横金F2の内面は、その両側部分が後方に向かって左右方向に広がるように湾曲している。横金F3は、縦金F2の左・右両側がいずれも後側に向かいながら左右方向へ広がるように湾曲している。また、縦金F2と横金F3とは、その両端が緩衝部材Hが取り付けられた台輪F1の前面F1sに接続されている。
【0028】
次に、本実施形態に係る剣道用マスク100の構成を説明する。
【0029】
剣道用マスク100は、
図1乃至
図5に示すように、面金Fに上下方向の中間部に取り付けられ、着用者の目、鼻及び口に対向するカバー部10と、カバー部10の下端から後側へ延出する受け部20と、を備えている。本実施形態に係るカバー部10と受け部20とは、一枚の透明性を有する板材Pを折り曲げて形成されたものであり、一体に形成されている。
【0030】
カバー部10は、弾性変形可能なものであって、面金10に取り付けられておらず弾性変形していない非取付状態で、
図4に示すように、平板状をなすものである。この平板状のカバー部10は、正面視略台形状をなし、面金Fの下部形状に合わせて下側に向かうに従って左右方向の幅が徐々に短くなっている。また、カバー部10は、面金Fに取り付けられ弾性変形した取付状態で、
図1乃至
図3に示すように、前側に突出するように左右方向に湾曲するものである。すなわち、この状態で、カバー部10は、上下方向から見て弓なり状(略円弧状)に湾曲している。
【0031】
カバー部10の上端部には、面金F上部の横金F3に下側から引っ掛かる二つの上側引掛り部11が形成されている。この上端引掛り部11は、例えば、カバー部10の上端部を切り込みによって左右に分割して形成されている。
【0032】
カバー部10の左・右側端部には、面金F下部の横金F3に取り付けられる乳革F4を通すための乳革通し部12が形成されている。この乳革通し部12は、カバー部10の左・右側端部を縁から左右方向中央に向かって切り欠いて形成されている。
【0033】
カバー部10の下端には、面金F下部の横金F3に上側から引っ掛かる下側引掛り部13が形成されている。この下側引掛り部13は、具体的には、カバー部10の下端の左・右端部によって形成されている。
【0034】
受け部20は、
図4に示すように、非取付状態のカバー部10、すなわち、平板状のカバー部10の下端から後側へ延出した略三角形状のものであり、左右方向に並ぶ二つの受け部要素21,22に分割されている。この二つの受け部要素21,22は、カバー部10が非取付状態になると、互いに重なり合わず、カバー部10が取付状態になると、隣り合う辺部21s、22s同士が互いに重なり合うようになっている。
【0035】
受け部20は、カバー部10が取付状態において、例えば、そのカバー部10の下端から横金F3と略平行に直線状に延出するものである。また、この状態で、受け部20は、カバー部10の左・右側端よりも前側に位置付けられるようになっている。すなわち、受付部20は、取付状態のカバー部10よりも後側へ突出しないようになっている。また、この状態で、二つの受け部要素20a,20bは、隣り合う辺部21s,22s同士が互いに密着するように重なり合っている。
【0036】
次に、本実施形態に係る剣道用マスク100の取付方法を説明する。
【0037】
先ず、カバー部10に左・右側端を互いに近づけるように力を加えることにより、カバー部10を前側に突出するように湾曲させ面金Fの後側に嵌め込む。この後、カバー部10に加えていた力を取り除くと、カバー部10が、その復元力によって平板状に戻ろうとする。そうすると、カバー部10の左・右側端の一部が、それぞれ横金F3の左・右両側に接触した後、その左・右両側に沿って後側へスライドし台輪F1の前面F1sに引っ掛かる。これにより、カバー部10の面金Fに対する左右方向及び前後方向への動きが規制される。
【0038】
この状態において、受け部20を構成する二つの受け部要素21,22は、カバー部10の下端から後方に延出し、隣り合う辺部21s、22s同士が互いに重なり合う。
【0039】
次に、カバー部10の上側引掛け部11を面金F上部の横金F3に下側から引っ掛ける。具体的には、カバー部10の上端部に形成された切り込みに縦金F2を嵌め込み、当該切り込みの両側を上下に並ぶ横金F3の隙間に挿し込むことにより、カバー部10の上端部を横金F3に下側から引っ掛ける。これにより、カバー部10の面金Fに対する上方向への動きが規制される。
【0040】
次に、カバー部10の下側引掛け部13を面金F下部の横金F3に上側から引っ掛ける。具体的には、カバー部10の下端の左・右端部を横金F3に上側から引っ掛ける。これにより、カバー部10の面金Fに対する下方向への動きが規制される。
【0041】
このような構成によれば、剣道用面Mを装着した着用者の鼻と口に対向するカバー部10の下端から後側に向かって延出する受け部20を設けたので、着用者の鼻や口から下方へ向かって飛散した飛散物が受け部20に受け止められ、面金F下部から外部へ放出されなくなる。
【0042】
また、一枚の板材Pを折り曲げてカバー部10と受け部20とを形成しているので、その折り曲げ角度を変更するたけで、カバー部10に対する受け部20の延出する方向を調節できる。
【0043】
また、カバー部10の弾性変形を利用して面金Fに取り付けるので、剣道用面Mから剣道用マスク100を容易に着脱することができ、清掃が容易となる。
【0044】
<その他の実施形態> カバー部と受け部とは、一枚の板材を折り曲げて形成されたものでなくてもよい。例えば、カバー部と受け部とを、別の板材によって形成し、カバー部の下端部に受け部を取り付けたものであってもよい。また、カバー部と受け部とは、金型によって一体に成形したものであってもよい。
【0045】
カバー部は、面金の上下方向の上部を除く下側を塞ぐように取り付けられるものであってもよく、面金の上下方向の下部を除く上側を塞ぐように取り付けられるものであってもよい。さらに、カバー部は、面金全体を塞ぐように取り付けられるものであってもよい。
【0046】
カバー部は、面金に取り付けられた状態で、平板状になっているものであってもよい。また、カバー部は、着用者の目と対向せず、鼻と口に対向するものであってもよい。
【0047】
カバー部10に、
図6に示すように、着用者の口と鼻とに対向する対向部10aを避けてその周囲に通気部14を形成してもよい。例えば、通気部14は、カバー部10の対向部10aを避けて左・右側端部10bに形成された貫通する孔であってもよく、また、カバー部の対向部10aを避けて左・右側端部を縁から中央に向かって切り欠いて形成された凹部であってもよい。また、通気部14は、複数形成されていてもよく、また、対向部10aの口と対向する部分よりも上側に形成されていることが好ましい。
【0048】
受け部は、複数の受け部要素に分割されていないものであってもよい。また、受け部は、三つ以上の受け部要素に分割されていてもよい。すなわち、受け部は、複数の受け部要素に分割されていてもよい。
【0049】
受け部は、前記第1の実施形態のようにカバー部の下端部から横金と略平行に延出するものであってもよく、また、横金と平行方向に対して後側に向かって下側へ傾斜して延出するものであってもよい。また、受け部は、カバー部の下端部から後側に向かって湾曲しながら延出するものであってもよい。また、受け部は、その後端部が上方又は下方に折れ曲がっているものであってもよい。
【0050】
隣り合う受け部要素は、カバー部が面金に取り付けられた状態で、隣り合う辺部同士が互いに重ならないものであってもよい。
【0051】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
M 剣道用面
F 面金
100 剣道用マスク
P 板材
10 カバー部
10a 対向部
14 通気部
20 受け部
20a,20b 受け部要素
【要約】 (修正有)
【課題】剣道用面の着用者の鼻や口から下方へ向かって飛散した飛散物が面金から外方へ放出されない剣道用マスクを提供する。
【解決手段】剣道用面の面金の後側に取り付けられ、当該剣道用面を装着した着用者の鼻と口に対向するカバー部10と、前記カバー部10の下端部から後側に向かって延出する受け部20とを備える。
【効果】着用者の鼻や口から下方に向かって飛散した飛散物が受け部20に受け止められ、面金の下部から外方へ放出されなくなる。
【選択図】
図5