特許第6870877号(P6870877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 湖北工業株式会社の特許一覧

特許6870877リード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品
<>
  • 特許6870877-リード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品 図000002
  • 特許6870877-リード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品 図000003
  • 特許6870877-リード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品 図000004
  • 特許6870877-リード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品 図000005
  • 特許6870877-リード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品 図000006
  • 特許6870877-リード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品 図000007
  • 特許6870877-リード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870877
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】リード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品
(51)【国際特許分類】
   H01G 13/00 20130101AFI20210426BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20210426BHJP
   H01G 9/012 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01G13/00 303B
   H01G13/00 303C
   H01G9/048 H
   H01G9/012 305
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-145988(P2020-145988)
(22)【出願日】2020年8月31日
(62)【分割の表示】特願2017-175783(P2017-175783)の分割
【原出願日】2017年9月13日
(65)【公開番号】特開2020-194978(P2020-194978A)
(43)【公開日】2020年12月3日
【審査請求日】2020年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2016-196437(P2016-196437)
(32)【優先日】2016年10月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 学
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−029160(JP,A)
【文献】 特開2003−105586(JP,A)
【文献】 実開昭62−120334(JP,U)
【文献】 特開平11−026327(JP,A)
【文献】 特開2004−192929(JP,A)
【文献】 特開2011−054603(JP,A)
【文献】 特開平06−077374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
9/00−9/18
9/21−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のリード部(41)と、その一端に設けられた端子部(42)とを有し、前記端子部(42)を介してチップ型電解コンデンサ(1)のコンデンサ素子(3)に取り付けられるリード線端子(4)の製造方法であって、
外周に半田濡れ性が良好な被覆層(412)が全周に亘って設けられた断面多角形の金属線材(411)であって、プレス加工により塑性変形可能な材質からなるとともに、その外周面が互いに対向する一対の面を含む金属線材(411)を準備する工程と、
一端に前記コンデンサ素子(3)に接続される扁平部(421)を有する前記端子部(42)を前記金属線材(411)の一端に設ける工程と、
前記金属線材(411)を前記一対の面が押圧されて前記一対の面に直交する方向の厚みが減少し且つ前記一対の面に平行な幅方向の長さが増加するようにプレス加工して前記リード部(41)を形成する工程と、
を包含するリード線端子の製造方法。
【請求項2】
前記リード部(41)を形成する工程は、前記端子部(42)が前記コンデンサ素子(3)に取り付けられる前に行われる請求項1に記載のリード線端子の製造方法。
【請求項3】
前記リード部(41)を形成する工程において、前記金属線材(411)が第1のプレス型(110)と第2のプレス型(120)との間で挟圧され、前記第1のプレス型(110)のプレス面(111)と前記第2のプレス型(120)のプレス面(121)との少なくとも一方に凹部(130)が設けられている請求項1又は2記載のリード線端子の製造方法。
【請求項4】
前記凹部(130)は、前記金属線材(411)の軸線方向に延びる溝状である請求項3記載のリード線端子の製造方法。
【請求項5】
複数本の前記凹部(130)が平行に設けられている請求項4記載のリード線端子の製造方法。
【請求項6】
帯状のリード部(41)の一端に、扁平部(421)を有する端子部(42)が設けられたリード線端子(4)が、前記端子部(42)の前記扁平部(421)を介してコンデンサ素子(3)に取り付けられてなるチップ型電解コンデンサ(1)であって、
前記リード部(41)は、断面多角形の帯状の金属線材(411)と、その外周に全周に亘って設けられた半田濡れ性が良好な被覆層(412)とを備え、
前記金属線材(411)は、プレス加工により塑性変形可能な材質からなるとともに、その外周面は、互いに対向する一対のプレス加工面を含んでおり、
前記金属線材(411)の表面のうち前記一対のプレス加工面はプレス加工時における押圧面であり、前記一対のプレス加工面に交差する両側面はプレス加工時における非押圧面である、
チップ型電解コンデンサ。
【請求項7】
帯状のリード部(41)と、その一端に設けられ、扁平部(421)を有する端子部(42)とを有し、前記端子部(42)の前記扁平部(421)を介してチップ型電解コンデンサ(1)のコンデンサ素子(3)に取り付けられるリード線端子(4)の半製品(4’)であって、
前記端子部(42)から延出するとともに、外周に全周に亘って半田濡れ性が良好な被覆層(412)が設けられた断面多角形の金属線材(411)であって、プレス加工により塑性変形可能な材質からなるとともに、その外周面が互いに対向する一対の面を含む金属線材(411)を有し、
前記金属線材(411)の表面のうち前記一対の面がプレス加工時における押圧面であり、前記一対の面に交差する両側面がプレス加工時における非押圧面である、
リード線端子の半製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型電解コンデンサ用のリード線端子の製造方法、チップ型電解コンデンサ及びリード線端子の半製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、チップ型電解コンデンサ用のリード線端子は、回路基板に半田付けされる帯状のリード部と、その一端に設けられた端子部とを有しており、端子部を介してチップ型電解コンデンサのコンデンサ素子に取り付けられる。リード部は、断面円形の金属線材を径方向にプレス加工することにより帯状に形成される(特許文献1)。また、リード部は、回路基板との半田付け強度の信頼性を確保するために、外周に半田濡れ性の良好な被覆層(例えば、錫メッキ層)が設けられた金属線材により形成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−26327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、リード部を形成する金属線材は断面円形であるため、金属線材をプレス加工すると、外周に設けられた被覆層の厚みが局部的に薄くなり、半田濡れ性が損なわれることがあった。
【0005】
図7は、従来のリード部のプレス工程の説明図である。図7(a)に示すように、リード部を形成する金属線材511は断面円形であって、外周に被覆層512が設けられている。図7(b)に示すように、第1のプレス型110と第2のプレス型120との間で金属線材511を挟圧して帯状のリード部を形成する。金属線材511は、挟圧される際に断面楕円状に変形するが、その際、被覆層512は比較的柔らかいため、その厚みが金属線材511の中心部の上下で最も薄くなり、両側に向かって次第に厚くなる。
【0006】
このように、被覆層512の厚みが局部的に薄くなると、その部分で半田濡れ性が大きく低下して半田付け強度の信頼性が損なわれることがある。また、被覆層512の厚みが両側で厚くなることによって、金属線材511の両側に金属粉が多く発生し、回路基板のショートやコンデンサ特性の低下が発生しやすくなるという問題もある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて創案されたものであり、その目的は、チップ型電解コンデンサ用リード線端子のリード部の半田濡れ性が局部的に低下するのを抑制するとともに金属粉の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、帯状のリード部(41)と、その一端に設けられた端子部(42)とを有し、前記端子部(42)を介してチップ型電解コンデンサ(1)のコンデンサ素子(3)に取り付けられるリード線端子(4)の製造方法であって、外周に半田濡れ性が良好な被覆層(412)が全周に亘って設けられた断面多角形の金属線材(411)であって、プレス加工により塑性変形可能な材質からなるとともに、その外周面が互いに対向する一対の面を含む金属線材(411)を準備する工程と、一端に前記コンデンサ素子(3)に接続される扁平部(421)を有する前記端子部(42)を前記金属線材(411)の一端に設ける工程と、前記金属線材(411)を前記一対の面が押圧されて前記一対の面に直交する方向の厚みが減少し且つ前記一対の面に平行な幅方向の長さが増加するようにプレス加工して前記リード部(41)を形成する工程と、を包含する。
【0009】
また、第2の発明は、帯状のリード部(41)の一端に、扁平部(421)を有する端子部(42)が設けられたリード線端子(4)が、前記端子部(42)の前記扁平部(421)を介してコンデンサ素子(3)に取り付けられてなるチップ型電解コンデンサ(1)であって、前記リード部(41)は、断面多角形の帯状の金属線材(411)と、その外周に全周に亘って設けられた半田濡れ性が良好な被覆層(412)とを備え、前記金属線材(411)は、プレス加工により塑性変形可能な材質からなるとともに、その外周面は、互いに対向する一対のプレス加工面を含んでおり、前記金属線材(411)の表面のうち前記一対のプレス加工面はプレス加工時における押圧面であり、前記一対のプレス加工面に交差する両側面はプレス加工時における非押圧面である
【0010】
また、第3の発明は、帯状のリード部(41)と、その一端に設けられ、扁平部(421)を有する端子部(42)とを有し、前記端子部(42)の前記扁平部(421)を介してチップ型電解コンデンサ(1)のコンデンサ素子(3)に取り付けられるリード線端子(4)の半製品(4’)であって、前記端子部(42)から延出するとともに、外周に全周に亘って半田濡れ性が良好な被覆層(412)が設けられた断面多角形の金属線材(411)であって、プレス加工により塑性変形可能な材質からなるとともに、その外周面が互いに対向する一対の面を含む金属線材(411)を有し、前記金属線材(411)の表面のうち前記一対の面がプレス加工時における押圧面であり、前記一対の面に交差する両側面がプレス加工時における非押圧面である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、チップ型電解コンデンサ用のリード線端子のリード部の半田濡れ性が局部的に低下するのを抑制することができるとともに、金属粉の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるリード線端子を備えたチップ型電解コンデンサの斜視図である。
図2図1のチップ型電解コンデンサの縦断面図である。
図3】本発明によるリード線端子の半製品の斜視図である。
図4】本発明によるリード線端子製造方法の第1実施形態の説明図である。
図5】本発明によるリード線端子製造方法の第2実施形態の説明図である。
図6】比較例のリード線端子製造方法の説明図である。
図7】従来のリード線端子製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のチップ型電解コンデンサ1は、有底筒状の容器2と、この容器2内に収容されたコンデンサ素子3と、このコンデンサ素子3から導出された一対のリード線端子4と、容器2の開口部を封閉する封口部材5と、容器2の開口端側に設けられた座板6とを備えている。容器2は金属製の薄板から成り、開口端が内方に折曲されて封口部材5を固定支持している。
【0014】
リード線端子4は、L字形に折曲された帯状のリード部41を有しており、その一端には端子部42が設けられている。リード部41は、断面四角形の金属線材を帯状にプレス加工することにより形成される。本実施形態では、金属線材は長尺のCP線(銅被覆鋼線)を切断することにより形成される。
【0015】
図3に示すように、金属線材411の一端に端子部42を設けてリード線端子の半製品4’を製造し、この半製品4’の端子部42をコンデンサ素子3の電極箔に取り付け、コンデンサ素子3を容器2に組み込んだ後に金属線材411を帯状にプレス加工してリード線端子4とする。
【0016】
金属線材411の外周には、半田濡れ性を良好にするために、錫メッキから成る被覆層412(図4参照)が設けられている。端子部42は、アルミニウム等から成る棒状部材をプレス加工することにより形成され、一端にコンデンサ素子3に接続される扁平部421を有している。端子部42の他端には、金属線材411の一端が溶接等によって接続されており、金属線材411は端子部42から延出している。
【0017】
封口部材5はゴム等により形成され、端子部42を挿通する一対の貫通孔51を有している。座板6は絶縁性材料により形成され、容器2の開口端に接着等により固定される。
【0018】
座板6は、リード部41を挿通する一対の貫通孔61と、この貫通孔61に連通する一対の溝62とを有する。一対のリード部41は、貫通孔61に挿通された後、互いに離反する方向に折曲されて溝62に収容される。
【0019】
次に、リード線端子4の製造方法について説明する。
リード線端子4は、以下のような手順により製造される。まず、外周に被覆層412が設けられた断面多角形の長尺のCP線を切断してリード部41と対応する長さの金属線材411を準備する。次に、金属線材411の一端に端子部42を設ける。そして、金属線材411をプレス加工してリード部41を形成する。
【0020】
リード部41を形成する工程では、図4(a)に示すように、金属線材411を第1のプレス型110と第2のプレス型120との間で挟圧して図4(b)に示すような帯状に塑性加工する。なお、金属線材411を帯状に加工した後に、その両側を切断してもよい。
【0021】
金属線材411は断面四角形であるため、プレス加工の際、その上下両面において被覆層412の厚みが局部的に薄くなることがなく、幅方向の全長にわたって厚みが略均一となる。
【0022】
したがって、図7に示される断面円形の金属線材511と比べて、帯状に加工した後の被覆層412の厚みのばらつきが少なくなるため、半田濡れ性が局部的に低下するのを抑制することができる。これにより、回路基板に対するリード部41の半田付け強度の信頼性が向上する。
【0023】
また、被覆層412の厚みのばらつきが少なくなることで、被覆層412の厚みが両側で厚くなるのを抑制することができ、金属粉が発生しにくくなるため、回路基板のショートやコンデンサ特性の低下を抑制することができる。
【0024】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図5(a)に示すように、本実施形態では、第1のプレス型110のプレス面111と第2のプレス型120のプレス面121とに複数本の溝状の凹部130が設けられている。これらの凹部130は、金属線材411の軸線方向(図5の紙面に直交する方向)に延びるように平行に設けられており、プレス面111、121は断面波形を呈している。
【0025】
このような複数本の凹部130を設けることにより、金属線材411を第1のプレス型110と第2のプレス型120との間で挟圧すると、図5(b)に示すように、被覆層412が複数本の凹部130に沿って断面波形に変形し、金属線材411の軸線方向に延びる複数本の凸条412bが形成されるため、金属線材411の両側にカス412aが突出しにくくなる。
【0026】
一方、図6に示すように、第1のプレス型110のプレス面111と第2のプレス型120のプレス面121とに複数本の溝状の凹部130が設けられていない場合は、図5の場合と比べて金属線材411の両側にカス412aが突出しやすくなるので、金属粉がこぼれ落ち易くなる。
【0027】
図5に示されるような凹部130を第1のプレス型110と第2のプレス型120に設けることにより、金属粉がこぼれ落ちにくくなるので、回路基板のショートやコンデンサ特性の低下をさらに抑制することができる。
【0028】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。
【0029】
例えば、金属線材の断面形状は四角形以外の多角形でもよい。
【0030】
また、金属線材はCP線以外の素材で形成してもよい。
【0031】
また、錫メッキに代えて、半田濡れ性が良好な他の材料から成る被覆層を金属線材の外周に設けてもよい。
【0032】
また、金属線材をプレス加工してリード部を形成する工程は、端子部がコンデンサ素子の電極箔に取り付けられる前に行うようにしてもよい。この場合、リード部のプレス加工の際に発生する金属粉をリード線端子から十分に除去した後に端子部を電極箔に取り付けることができるため、完成したチップ型電解コンデンサに金属粉が付着しにくくなるので、回路基板のショートやコンデンサ性能の低下等をさらに抑制することができる。なお、このような製造方法は、断面形状が多角形以外の金属線材をプレス加工する場合に適用した場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、第1のプレス型のプレス面と第2のプレス型のプレス面に設けられる凹部の形状は溝状以外でもよく、凹部の数は単数でもよい。
【0034】
また、凹部は第1のプレス型と第2のプレス型のいずれか一方のみに設けてもよい。なお、断面形状が多角形以外の金属線材をプレス加工する場合においても、第1のプレス型のプレス面と第2のプレス型のプレス面の少なくとも一方に凹部を設けることにより、同様の効果(金属線材の両側にカスが突出しにくくなり、金属粉が発生しにくくなる。)を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 チップ型電解コンデンサ
3 コンデンサ素子
4 リード線端子
4’ リード線端子の半製品
41 リード部
42 端子部
110 第1のプレス型
111 プレス面
120 第2のプレス型
121 プレス面
411 金属線材
412 被覆層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7