(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軟化点の高い方の非晶質樹脂Hが、軟化点が110℃以上170℃以下の非晶質ポリエステル系樹脂Bである、請求項1又は2に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[静電荷像現像トナー用結着樹脂組成物]
本発明の静電荷像現像トナー用結着樹脂組成物(以下、単に「結着樹脂組成物」ともいう)は、10モル%以上50モル%以下のコハク酸及び50モル%以上90モル%以下の芳香族カルボン酸を含むカルボン酸成分と、アルコール成分とを重縮合して得られる非晶質ポリエステル系樹脂A(以下、単に「非晶質ポリエステル系樹脂A」又は「樹脂A」ともいう)を含有し、樹脂Aの軟化点が80℃以上100℃以下である。
本発明によれば、低温定着性、保存性、及び現像性に優れた静電荷像現像トナー用結着樹脂組成物、及び静電荷像現像用トナー(以下単に「トナー」ともいう)が得られる。
【0009】
その理由は定かではないが以下のように考えられる。
一般的に、結着樹脂の軟化点を低くすることで、トナーが低温で融解しやすくなり低温定着性が改善される。一方で、結着樹脂の軟化点を低くすることで、保存性、現像性が低下するという課題がある。
しかしながら、本発明では、カルボン酸成分として、10モル%以上50モル%以下のコハク酸及び50モル%以上90モル%以下の芳香族カルボン酸を含む非晶質ポリエステル系樹脂Aであって、軟化点が80℃以上100℃以下であるものを含有する結着樹脂組成物を用いることにより、保存性、現像性を損なうことなく、低温定着性を向上させることが可能となった。
保存性が向上するのは、コハク酸の導入により、分子のパッキング性が高まり、分子の運動性が低下するためであると考えられる。
また、現像性が向上するのは、コハク酸の導入により、分子のパッキング性が高まり、樹脂への電荷移動速度が速くなったことがその要因の一つと推定される。
【0010】
〔樹脂A〕
樹脂Aは、ポリエステル部位を少なくとも有する樹脂であり、例えば、ポリエステル、並びに、ポリエステルセグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、ポリエステル、並びに、ポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本発明において、「非晶質樹脂」とは、示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度(℃)に対する軟化点(℃)の比、すなわち[(軟化点)/(吸熱の最高ピーク温度)]で定義される結晶性指数の値が1.4以上、又は0.6未満の樹脂をいう。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。
【0011】
ポリエステルは、アルコール成分と、カルボン酸成分との重縮合により得られる。
(アルコール成分)
アルコール成分としては、芳香族ポリオール化合物であっても、脂肪族ポリオール化合物であってもよい。
芳香族ポリオール化合物としては、電子写真用トナーの低温定着性及び現像性を向上させる観点から、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I):
【化1】
〔式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる少なくとも1種であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上であり、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下であり、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である。〕で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのプロピレンオキサイド付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0012】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは100モル%である。
【0013】
脂肪族ポリオール化合物としては、炭素数2以上20以下の脂肪族ジオール、グリセリン等の3価以上の脂肪族アルコール等が挙げられ、これらの中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0014】
アルコール成分として脂肪族ジオールを含有する場合、脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0015】
アルコール成分として、3価以上の多価アルコールを含んでいてもよい。
3価以上の多価アルコールとしては、グリセロール(グリセリンともいう)、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
3価以上の多価アルコールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0016】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分は、低温定着性、保存性、及び現像性の観点から、10モル%以上50モル%以下のコハク酸及び50モル%以上90モル%以下の芳香族カルボン酸を含む。カルボン酸成分として、コハク酸が含まれることで、ポリエステル系樹脂のパッキング性が向上し、低温定着性、保存性、及び現像性に優れたトナーが得られる。
コハク酸の含有量は、低温定着性、保存性、及び現像性の観点から、カルボン酸成分中、10モル%以上であり、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは25モル%以上であり、そして、50モル%以下であり、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは35モル%以下である。
【0017】
芳香族カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、3価以上の芳香族多価カルボン酸、及びそれらの酸の無水物又はそれらの酸のアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。なお、本発明において、カルボン酸成分には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
【0018】
芳香族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは55モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、更に好ましくは65モル%以上であり、そして、90モル%以下であり、好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
【0019】
3価以上のカルボン酸としては、3価のカルボン酸が好ましく、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸又はこれらの酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中では、トリメリット酸が好ましい。
【0020】
3価以上のカルボン酸が含まれる場合、3価以上のカルボン酸の含有量、好ましくはトリメリット酸の含有量は、生産性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0021】
芳香族カルボン酸の含有量は、低温定着性、保存性、及び現像性の観点から、カルボン酸成分中、50モル%以上、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは65モル%以上であり、そして、90モル%以下であり、好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
【0022】
コハク酸及び芳香族カルボン酸以外の他のカルボン酸成分として、脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物又は3価以上の脂肪族多価カルボン酸化合物が含まれていてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;それらの酸の無水物又はそれらの酸のアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
脂環式ジカルボン酸化合物としてはシクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。3価以上の脂肪族多価カルボン酸化合物としてはアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等の誘導体等が挙げられる。その他の酸として、ロジン;フマル酸、マレイン酸、アクリル酸等で変性されたロジン等が挙げられる。
【0023】
他のカルボン酸が含まれる場合、他のカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0024】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、分子量調整の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0025】
カルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、末端基を調整する観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下、更に好ましくは1.0未満である。
【0026】
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180℃以上250℃以下の温度で行うことができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、ポリヒドロキシアミン化合物とアルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、ポリヒドロキシアミン化合物とアルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0027】
〔複合樹脂〕
樹脂Aは、ポリエステルセグメントを有する複合樹脂であってもよい。
複合樹脂は、好ましくはポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する。
ポリエステルセグメントは、ポリエステルよりなり、当該ポリエステルとしては上述のポリエステルと同様のものが好ましい例として挙げられる。
スチレン系樹脂セグメントとしては、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルの付加重合体が好ましい。
【0028】
スチレン化合物としては、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて単に「スチレン化合物」という)が挙げられる。
スチレン化合物の含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0029】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは5以上、より好ましくは7以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは8以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数を指す。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を含むことを意味する。
【0030】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(イソ)」は、これらの接頭辞が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの接頭辞が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はその両者を含むことを示す。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、スチレン系樹脂セグメントの原料モノマー中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
【0031】
スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外に用いられるスチレン系樹脂の原料モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
【0032】
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは170℃以下である。
【0033】
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下程度が好ましい。
【0034】
(両反応性モノマー)
複合樹脂は、ポリエステルセグメントの原料モノマー及びスチレン系樹脂セグメントの原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマー単位を更に有する複合樹脂であることが好ましい。
複合樹脂は、(i)式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と、芳香族ジカルボン酸を含有するカルボン酸成分とを含む、ポリエステルセグメントの原料モノマー、(ii)スチレン系樹脂セグメントの原料モノマー、及び(iii)ポリエステルセグメントの原料モノマー及びスチレン系樹脂セグメントの原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂であることが好ましい。
【0035】
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基、より好ましくはカルボキシ基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物である。
両反応性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましいが、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸がより好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸が更に好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸は、ポリエステルセグメントの原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、ポリエステルセグメントの原料モノマーである。
【0036】
両反応性モノマーの使用量は、ポリエステルセグメントのアルコール成分の合計100モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは3モル以上であり、そして、好ましくは20モル以下、より好ましくは10モル以下である。
【0037】
複合樹脂におけるポリエステルセグメントとスチレン系樹脂セグメントとの質量比(ポリエステルセグメント/スチレン系樹脂セグメント)は、好ましくは60/40以上、より好ましくは75/25以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは85/15以下である。
【0038】
複合樹脂は、例えば、ポリエステルセグメントの原料モノマーとスチレン系樹脂セグメントの原料モノマーに加えて、更に両反応性モノマーを用いて、公知の方法により得られる。
【0039】
(樹脂Aの物性)
樹脂Aの軟化点は、低温定着性、保存性、及び現像性の観点から、80℃以上であり、好ましくは83℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは87℃以上であり、そして、100℃以下であり、好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
【0040】
樹脂Aのガラス転移温度は、トナーの低温定着性及び現像性を向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは47℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは85℃以下、より好ましくは75℃以下、より好ましくは65℃以下、より好ましくは55℃以下、より好ましくは54℃以下、更に好ましくは50℃以下である。
【0041】
樹脂Aの酸価は、トナーの低温定着性及び現像性を向上させる観点から、好ましくは90mgKOH/g以下、好ましくは60mgKOH/g以下、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上である。
【0042】
樹脂Aの重量平均分子量は、トナーの低温定着性及び現像性を向上させる観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上であり、そして、好ましくは8,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは6,000以下である。
軟化点、ガラス転移温度、酸価、重量平均分子量の測定方法は、実施例に記載の方法による。2種以上の樹脂を含有する場合は、軟化点、ガラス転移温度、酸価、重量平均分子量は、それぞれの加重平均値が上記範囲にあることが好ましい。
【0043】
結着樹脂組成物において、樹脂Aの含有量は、結着樹脂の合計量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
本明細書において「結着樹脂」とは、樹脂A等のポリエステル系樹脂成分を含む結着樹脂成分を意味する。
【0044】
<樹脂H,L>
結着樹脂組成物には、軟化点や結晶性の相違する複数種の樹脂が配合されていてもよい。
具体的には、軟化点の異なる非晶質樹脂H(以下、単に「樹脂H」ともいう)及び非晶質樹脂L(以下、単に「樹脂L」ともいう)を含有していてもよいし、樹脂H、樹脂L及び結晶性樹脂C(以下単に「樹脂C」ともいう)を含有していてもよい。なお、軟化点の高い方が非晶質樹脂Hであり、軟化点の低い方が非晶質樹脂Lである。
【0045】
結着樹脂組成物は、
好ましくは、(i)樹脂H、及び樹脂Lを含み、樹脂H、及び樹脂Lから選ばれる少なくとも1種が、樹脂Aであり、
より好ましくは、(ii)樹脂H、樹脂L、及び樹脂Cを含み、樹脂H、及び樹脂Lから選ばれる少なくとも1種が、樹脂Aであり、
更に好ましくは、(iii)樹脂H、樹脂L、及び樹脂Cを含み、樹脂Lが、樹脂Aである。
【0046】
上述の樹脂の中でも、結着樹脂組成物は、低温定着性、保存性、現像性の観点から、軟化点が20℃以上異なる2種の樹脂H及び樹脂Lを含む結着樹脂を含有することが好ましい。
樹脂Lは、好ましくは上述の樹脂Aである。
樹脂Hは、好ましくは、下記の非晶質ポリエステル系樹脂Bである。
非晶質ポリエステル系樹脂B(以下単に「樹脂B」ともいう)は、下記の点を除き上述の樹脂Aの例示と同様である。
樹脂Bのカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにこれらの無水物及びアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。これらの中では、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等が挙げられる。
【0047】
樹脂Hの軟化点は、低温定着性の観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下であり、そして、保存性及び現像性の観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上である。
【0048】
樹脂Lの軟化点は、保存性及び現像性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは125℃以下、より好ましくは115℃以下、より好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。
【0049】
樹脂Hと樹脂Lの軟化点の差は、低温定着性、保存性、現像性の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上であり、そして、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。
【0050】
結着樹脂組成物において、樹脂Hと樹脂Lの質量比(樹脂H/樹脂L)は、低温定着性、保存性、現像性の観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは65/35以下、更に好ましくは50/50以下、更に好ましくは45/55以下である。
【0051】
<樹脂C>
上述の樹脂の中でも、結着樹脂組成物は、結晶性樹脂C(以下単に「樹脂C」ともいう)を更に含有することが好ましい。
「結晶性樹脂」とは、前記結晶性指数の値が0.6以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下である樹脂をいう。
【0052】
樹脂Cは、好ましくは、下記の結晶性ポリエステル系樹脂Cである。
結晶性ポリエステル系樹脂Cの好ましいアルコール成分及びカルボン酸成分は、上述の樹脂Aにおけるアルコール成分及びカルボン酸成分の例示において、下記の点を除き同様である。
結晶性ポリエステル系樹脂Cのアルコール成分としては、脂肪族ポリオール化合物を含み、より好ましくは、α,ω−脂肪族ポリオール化合物を含む。なお、脂肪族ポリオール化合物の好ましい例、及びその他の好ましい例は上述の例示と同様である。
脂肪族ポリオール化合物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは100モル%である。
【0053】
結晶性ポリエステル系樹脂Cのカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにこれらの無水物及びアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。これらの中では、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等が挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、これらの無水物及びアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等を用いることができる。
【0054】
樹脂Cの軟化点は、低温定着性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下であり、そして、現像性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。
樹脂Cの融点は、低温定着性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下であり、そして、現像性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。
【0055】
樹脂Cの酸価は、トナーの保存性を向上させる観点から、好ましくは0mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下である。
【0056】
結着樹脂組成物において、非晶質樹脂の合計と結晶性樹脂Cとの質量比(非晶質樹脂の合計/結晶性樹脂C)は、トナーの保存性を向上させる観点から、好ましくは80/20以上、より好ましくは83/17以上、更に好ましくは85/15以上であり、また、トナーの低温定着性及び保存性を向上させる観点から、好ましくは95/5以下、より好ましくは94/6以下、より好ましくは93/7以下である。
【0057】
結着樹脂組成物において、ポリエステル系樹脂の合計含有量は、結着樹脂中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。
【0058】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)は、上述の結着樹脂組成物を含有する。
結着樹脂組成物の含有量は、トナー中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは98質量%以下である。
【0059】
<荷電制御剤>
トナーは、好ましくは荷電制御剤を含有する。
荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
【0060】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の中でも、負帯電性荷電制御剤が好ましく、サリチル酸化合物の金属化合物がより好ましい。
【0061】
荷電制御剤の含有量は、トナーのカブリ抑制性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0062】
<着色剤>
トナーは、着色剤を含有していてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0063】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0064】
<離型剤>
トナーは、離型剤を含有していてもよい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0065】
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0066】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、結着樹脂中への分散性の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
【0067】
トナーには、更に、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜用いられていてもよい。
【0068】
トナーの体積中位粒径(D
50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0069】
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
トナーの製造方法としては、
(1)樹脂Aを含有する結着樹脂組成物を含むトナー用原料混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕してトナーを製造する方法、
(2)樹脂Aを含有する結着樹脂組成物を水溶性媒体中に分散させた分散液を含むトナー用原料混合物中で、結着樹脂粒子を凝集及び融着させてトナー粒子を得ることによりトナーを製造する方法、
(3)樹脂Aを含有する結着樹脂組成物を水溶性媒体中に分散させた分散液とトナー用原料を高速撹拌させてトナー粒子を得ることによりトナーを製造する方法
等が挙げられる。
トナーの生産性を向上させる観点、及びトナーの定着性を向上させる観点から、(1)の溶融混練法が好ましい。また、(2)の凝集及び融着法によりトナーを得てもよい。
【0070】
上述のいずれの方法でトナーを製造する場合においても、結着樹脂組成物の使用量は、トナー中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。
【0071】
(1)樹脂Aを含有する結着樹脂組成物を含むトナー用原料混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕してトナーを製造する方法(溶融混練法)
(1)の方法は、好ましくは下記工程1及び工程2を含む。
工程1:樹脂Aを含有する結着樹脂組成物を含むトナー用原料混合物を溶融混練する工程
工程2:工程1で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する工程
【0072】
また、工程1では、着色剤も溶融混練することがより好ましく、他の樹脂、離型剤、荷電制御剤等の添加剤も、ともに溶融混練することが好ましい。
【0073】
溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸又は二軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、トナー中に着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤を効率よく高分散させることができる観点から、二軸押出機を用いることが好ましく、同方向回転二軸押出機がより好ましい。
【0074】
結着樹脂組成物、着色剤、荷電制御剤、及び、離型剤等のトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
【0075】
混練(スクリュー)の温度は、例えば、スクリュー内部に通す熱媒体の温度により調整することができる。
スクリュー内の加熱温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下である。
【0076】
スクリューの回転速度は、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点から、好ましくは50r/min以上、より好ましくは100r/min以上、より好ましくは150r/min以上であり、そして、好ましくは350r/min以下、より好ましくは300r/min以下、より好ましくは250r/min以下である。
【0077】
工程1で得られた溶融混練物を、粉砕が可能な程度に冷却した後、続く工程2に供する。
【0078】
工程2では、工程1で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する。
【0079】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を硬化させて得られた樹脂混練物を、約1mm以上5mm以下に粗粉砕した後、更に所望の粒径に微粉砕してもよい。
【0080】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、及び衝突板式ジェットミルを用いることが好ましく、流動層式ジェットミルを用いることがより好ましい。
【0081】
分級工程に用いられる分級機としては、ロータ式分級機、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
【0082】
(1)の方法は、更に下記工程3を含んでいてもよい。
工程3:分級し得られた粉体と外添剤を混合する工程
外添剤としては、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等が挙げられ、これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0083】
静電荷像現像用トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0084】
実施例において、各種物性等の測定及び評価は下記の方法により行った。
【0085】
[測定方法]
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0086】
〔樹脂のガラス転移温度、融点、最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業株式会社製)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。なお、結晶性樹脂のときには該ピーク温度を融点とする。また、非晶質樹脂のときには吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0087】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0088】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業株式会社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0089】
〔樹脂の重量平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、樹脂の重量平均分子量Mwを求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させた。ついで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業株式会社製)を用いて濾過して不溶成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
下記装置を用いて、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の分子量が既知の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製;2.63×10
3、2.06×10
4、1.02×10
5、ジーエルサイエンス株式会社製;2.10×10
3、7.00×10
3、5.04×10
4)を標準試料として作成したものを用いた。
測定装置:「CO-8010」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMH
XL」+「G3000H
XL」(いずれも東ソー株式会社製)
【0090】
〔トナーの体積中位粒径(D
50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5質量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mLと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0091】
[評価]
〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着画像を得た。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度390mm/sec)を用い、定着ロールの温度を100℃から240℃へと10℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着画像の定着試験を行った。定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆株式会社、幅:18mm、JIS Z1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ロールに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ロールの温度を最低定着温度(℃)とし、低温定着性を評価した。なお、定着試験に用いた紙は、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m
2)であった。
【0092】
〔保存性〕
20mLの容器(直径約3cm)にトナー4gを入れ、温度55℃、相対湿度60%の環境下で72時間放置した。放置後、トナー凝集の発生程度を目視にて観察し、以下の評価基準より保存性を評価した。
(評価基準)
A:48時間後及び72時間後も凝集は全く認められない。
B:48時間後で凝集は認められないが72時間後ではわずかに凝集が認められる。
C:48時間後で凝集は認められないが72時間後では明らかに凝集が認められる。
D:48時間以内で凝集が認められる。
【0093】
〔現像性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、500枚の画像を得た。50枚目と500枚目の画像を透過型マクベス濃度計「TR-927」(マクベス社製)を用いて画像濃度を測定し、画像濃度の安定性(500枚目の画像濃度の値/50枚目の画像濃度の値)として、現像性の評価を行った。
【0094】
[樹脂の製造]
樹脂製造例L1〜L10(樹脂L1〜L10)
表1に示すコハク酸を除くポリエステルの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、210℃で1時間保温した後に210℃から235℃まで10℃/hrで昇温し、その後235℃で5時間縮重合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、コハク酸を投入した。投入後、180℃に保持したまま、1時間反応を行った後、180℃から210℃まで10℃/hrで昇温し、210℃、10kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、樹脂L1〜L10を得た。各種物性を測定し、表1に示した。
【0095】
樹脂製造例L11(樹脂L11)
表1に示すアジピン酸を除くポリエステルの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、210℃で1時間保温した後に210℃から235℃まで10℃/hrで昇温し、その後235℃で5時間縮重合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、アジピン酸を投入した。投入後、180℃に保持したまま、1時間反応を行った後、180℃から210℃まで10℃/hrで昇温し、210℃、10kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、樹脂L11を得た。各種物性を測定し、表1に示した。
【0096】
樹脂製造例H1(樹脂H1)
表1に示すアジピン酸及び無水トリメリット酸を除くポリエステルの原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、210℃で1時間保温した後に210℃から235℃まで10℃/hrで昇温し、その後235℃で5時間縮重合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、アジピン酸、無水トリメリット酸を投入した。投入後、180℃に保持したまま、1時間反応を行った後、180℃から210℃まで10℃/hrで昇温し、210℃、10kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、樹脂H1を得た。各種物性を測定し、表1に示した。
【0097】
【表1-1】
【0098】
【表1-2】
【0099】
【表1-3】
【0100】
表1中の注釈は以下のとおりである。
*1 アルコール成分100モルに対するモル比率
*2 BPA-PO: ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物、BPA-EO: ビスフェノールAのポリオキシエチレン(2.2)付加物
【0101】
・樹脂製造例C1(樹脂C1)
表2に示すポリエステルの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、140℃で2時間保温した後に140℃から200℃まで10℃/hrで昇温し、その後200℃で2時間縮重合反応させ、さらにエステル化触媒を投入し、200℃、8.0kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、樹脂C1を得た。各種物性を測定し、表2に示した。
【0102】
【表2】
【0103】
表2中の注釈は以下のとおりである。
*1 アルコール成分100モルに対するモル比率
【0104】
[トナーの製造]
実施例1〜8、比較例1〜5
表3に示す結着樹脂100質量部、カーボンブラック「MOGUL L」(キャボット社製)4質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン S-34」(オリヱント化学工業株式会社製)1質量部及びポリプロピレンワックス「NP-105」(三井化学株式会社製、融点:140℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、同方向回転二軸押出機を用い、スクリュー回転速度200r/min、スクリュー内の加熱温度80℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D
50)が8.0μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、外添剤として「アエロジル R-972」(日本アエロジル株式会社製)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。各種評価を行い表3に示した。
【0105】
【表3】
【0106】
上述のとおり、実施例及び比較例の結果から、本発明によれば、低温定着性、保存性、及び現像性に優れた静電荷像現像トナー用結着樹脂組成物が得られることがわかる。