【文献】
室伏 克己,多官能二級チオールを用いたUV硬化組成物の特性,色材協会誌,一般社団法人 色材協会,2010年 6月20日,83巻6号,pp.263-269
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ラジカル重合性化合物(C)と前記チオール化合物(B)を混合することにより混合液(i)を得る工程1、前記放射能汚染水(A)と前記界面活性剤(E)を混合し、これに前記混合液(i)を混合することにより前記混合液(I)を得る工程2、及び前記混合液(I)と前記ラジカル重合開始剤(F)とを混合する工程3を有する、請求項1に記載の放射能汚染水の処理方法。
前記チオール化合物(B)が、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス[2−(3−メルカプトブチリルオキシエチル)]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)及びトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の放射能汚染水の処理方法。
前記含水樹脂組成物が、前記ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、前記チオール化合物(B)を0.01〜15質量部、充填材(D)を10〜500質量部含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射能汚染水の処理方法。
前記保管容器がガラス繊維強化プラスチック製である場合において、該保存容器が、前記チオール化合物(B)、前記ラジカル重合性化合物(C)、前記ラジカル重合開始剤(F)、及び前記金属化合物(M)を含有する樹脂組成物、エポキシ樹脂、並びにフェノール樹脂から選択されるいずれかの材料で作製されている、請求項8に記載の放射能汚染水の処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の放射能汚染水の処理方法は、放射能汚染水(A)を含む含水樹脂組成物を固化する工程を含む。
[含水樹脂組成物]
含水樹脂組成物は、放射能汚染水(A)を含む混合液(I)にラジカル重合開始剤(F)を加えてなる。
該混合液(I)には、放射能汚染水(A)、2級チオール化合物(B1)及び3級チオール化合物(B2)から選ばれる1種以上のチオール化合物(B)、ラジカル重合性化合物(C)、充填材(D)、並びに界面活性剤(E)が含まれる。
したがって、含水樹脂組成物には、放射能汚染水(A)、チオール化合物(B)、ラジカル重合性化合物(C)、充填材(D)、界面活性剤(E)、及びラジカル重合開始剤(F)が含まれる。
なお、本発明における含水樹脂組成物には、金属が含まれる。該金属は、放射能汚染水に必然的に含まれている放射性核種でもよいし、必要に応じて添加する後述の金属Mでもよい。含水樹脂組成物中の金属の含有量は特に限定されないが、ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
以下、これら各成分について説明する。
【0010】
<放射能汚染水(A)>
放射能汚染水には、金属である放射性核種が含まれている。
放射能汚染水に含まれる主な放射性核種としては、コバルト(
60Co、半減期5.27年)、ストロンチウム(
90Sr、半減期28.78年)、ルテニウム(
106Ru)、アンチモン(
125Sb)、セシウム(
137Cs、半減期30.1年)、ヨウ素(
129I)、トリチウム(
3HまたはT、半減期12.32年)などが挙げられる。本発明の放射能汚染水の処理方法では、後述するチオール化合物(B)を放射能汚染水に添加することにより、チオール化合物(B)と放射能汚染水に含まれる金属が錯体を形成することにより安定化する。さらに、この金属が触媒として働くことにより、後述するラジカル重合性化合物(C)の硬化が進行し、放射能汚染水の固化体を作製することができる。チオール化合物(B)が存在しないと、放射能汚染水中の金属は水の影響で失活して触媒能を失うので、ラジカル重合性化合物(C)の硬化が進行せず、固化体を作製することができない。
【0011】
放射能汚染水は、特に前処理せずにそのまま用いることができる。この場合、チオール化合物(B)は、以下に示す優先順位に従って、汚染水に含まれる金属に配位して錯体を形成すると推定される。錯体を形成する優先順位は
106Ru>
60Co>
137Cs>
90Sr>
125Sbと推定される。
また、多核種除去設備により、放射能汚染水(A)から予め主要な放射性核種を取り除いた処理水(以下「トリチウム水」ともいう)を本発明の方法で処理し、固化体を作製しても良い。この場合、必要に応じて硬化触媒として機能する金属Mを添加して補ってもよい。金属Mは、リチウム、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等の第1〜2族の金属元素、チタン、ジルコニウム、バナジウム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛等の第3〜12族の金属元素、アルミニウム、インジウム、錫、鉛等の第13〜14族の金属元素、ネオジム、セリウム等の希土類の金属元素、ビスマス等が挙げられる。これらのうちの1種単独で用いても、2種以上を用いても良い。金属Mを添加する態様は、特に限定されず、トリチウム水に添加してもよいし、放射線核種を取り除いていない放射能汚染水(A)に添加してもよく、後述する充填剤(D)に添加しても構わない。
金属Mを添加する場合、該金属Mを含有する金属化合物(M)として添加することが好ましく、金属化合物(M)としては、金属石鹸及びβ−ジケトン骨格を有する金属錯体から選ばれる1種以上の金属化合物(M)が好ましい。なお、本発明における金属石鹸は、長鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸以外の有機酸と、カリウム及びナトリウム以外の金属元素との塩をいう。また、本発明におけるβ−ジケトン骨格を有する金属錯体は、2つのカルボニル基の間に炭素原子が1つある構造を有する化合物が金属元素に対して配位した錯体をいう。具体的には、オクチル酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム、バナジウムアセトアセテート、コバルトアセトアセテート、及び鉄アセトアセテート等の金属石鹸;バナジウムアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタンジブトキシビス(アセチルアセトネート)、鉄アセチルアセトネート、及びアセト酢酸エチルエステルコバルト等のβ−ジケトン骨格を有する金属錯体が好ましく挙げられる。
【0012】
なお、放射能汚染水(A)は、特に前処理を行わなければ、放射線崩壊していく途中の重金属元素、希少金属元素を非常に多く含んでいる。汚染水の中で、重金属元素、希少金属元素と錯体を形成させた後のチオール化合物(B)をトラップすることで、汚染水の中から重金属元素、希少金属元素を回収してもよい。この場合、放射能が漏洩しない環境下で操作を行う必要がある。
含水樹脂組成物中における放射能汚染水(A)の量は、後述するラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、5〜50質量部、好ましくは7〜40質量部、より好ましくは10〜30質量部である。
また、放射能汚染水(A)に含まれる金属の含有量は、少なくとも100質量ppm以上であることが好ましく、含有量が満たない場合には、ラジカル重合性化合物(C)に対する硬化触媒としての機能を補う観点から、上述したように金属化合物(M)を添加することが好ましい。
【0013】
<チオール化合物(B)>
本発明においてチオール化合物(B)は、硬化促進剤としての機能を有すると共に、放射能汚染水(A)または後述する充填材(D)中に含まれる金属の近傍に配位し、水による金属の失活を防いで、金属が硬化触媒として機能するように助ける働きがあると推察される。
【0014】
本発明において、チオール化合物(B)は、2級チオール化合物(B1)及び3級チオール化合物(B2)から選ばれる1種以上のチオール化合物である。2級チオール化合物(B1)は、分子中に2級炭素原子に結合するメルカプト基を少なくとも1個以上有する化合物を意味し、3級チオール化合物(B2)は、分子中に3級炭素原子に結合するメルカプト基を少なくとも1個以上有する化合物を意味する。本発明に用いるチオール化合物(B)は、分子中に2級又は3級炭素原子に結合するメルカプト基(以下、それぞれを「2級メルカプト基」、「3級メルカプト基」と称することもある。)を1個以上有する化合物であれば特に制限はないが、水を含有した状態であっても速やかに硬化させる観点、および放射能汚染水や充填材中に含まれる金属を水による失活から防ぐ観点から、分子中に2級又は3級メルカプト基を合計で2個以上有する化合物である多官能チオールが好ましく、中でも、分子中に2級又は3級メルカプト基を2個有する化合物である2官能チオールが好ましい。また、2級チオール化合物(B1)の方が、3級チオール化合物(B2)よりも好ましい。
なお、ここでいう「多官能チオール」とは、官能基であるメルカプト基が2個以上であるチオール化合物を意味し、また、「2官能チオール」とは、官能基であるメルカプト基が2個であるチオール化合物を意味する。
【0015】
本発明に用いるチオール化合物(B)は、具体的には、特開2013−221091号公報に記載の化合物などが例示できる。中でも、下記式(T)で表されるエステル構造を含む基を有するチオール化合物が好ましく、R
1が水素原子である2級チオール化合物(B1)である場合は特に、カルボニル酸素とメルカプト基とが放射能汚染水(A)に含まれる金属Mに対して配位しやすくなり、金属元素がチオール化合物に囲まれた形となると考えられ、その結果、金属元素と水との接触を抑制することができると思われる。3級チオール化合物(B2)の場合、R
1及びR
2がともに水素よりもかさ高い置換基であり、メルカプト基の金属元素への配位における立体障害の観点から、2級チオール化合物(B1)の方が硬化促進性能をより発揮し得るものと考えられる。ただし、3級チオール化合物(B2)でも、カルボニル酸素とメルカプト基が安定的に金属元素に配位される場合は、2級チオール化合物(B1)よりも金属元素と水との接触がより抑制され得ると考えられる。
【0016】
【化1】
(上記式(T)中、R
1は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜18の芳香族基であり、R
2は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜18の芳香族基であり、Mは放射能汚染水(A)に含まれる金属である。)
チオール化合物(B)として、好適に用いられる化合物は、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス[2−(3−メルカプトブチリルオキシエチル)]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)及びトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)であり、これらは単独で用いてもよく、2以上を混合して用いてもよい。
チオール化合物(B)は、後述するラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜12質量部、更に好ましくは0.3〜10質量部、より更に好ましくは0.5〜10質量部である。チオール化合物(B)の量が0.01質量部以上であると硬化機能を十分に得ることができ、15質量部以下であると反応速度を適度にコントロールしながら速やかに硬化できる。
【0017】
<ラジカル重合性化合物(C)>
放射能汚染水(A)を固化させるための固化剤として、ラジカル重合性化合物(C)(以下「(C)成分」ともいう)を用いる。なお、本発明において、ラジカル重合性化合物は、分子内にエチレン性不飽和基を有し、ラジカルによって重合反応を進行しうる化合物を指す。
ラジカル重合性化合物としては、ビニルエステル樹脂(エポキシ(メタ)アクリレート樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ラジカル重合性不飽和単量体、及び前記樹脂とラジカル重合性不飽和単量体との混合物等が挙げられ、中でもビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂又はこれらとラジカル重合性不飽和単量体との混合物から選ばれる1種以上が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート及びメタクリレートの一方または両方」を意味する。
【0018】
〔ビニルエステル樹脂〕
ビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂に対して不飽和一塩基酸を反応させて得られたものを用いることができる。
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型グリシジルエーテル類等が挙げられる。
具体的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びテトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの、あるいはビスフェノールAのグリシジルエーテルと前記ビスフェノール類の縮合物とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等)、ビフェニル型エポキシ樹脂(例えば、ビフェノールとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの)、ナフタレン型エポキシ樹脂(例えば、ジヒドロキシナフタレンとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの)、アラルキルジフェノール型エポキシ樹脂(例えば、アラルキルフェノールとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの)、ジグリシジル型エポキシ樹脂(例えば、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル)、脂環式型エポキシ樹脂(例えば、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート等)、前記エポキシ樹脂とジイソシアネートとを反応して得られるオキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂(具体例として旭化成エポキシ製アラルダイトAER4152等)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタンとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等)が挙げられる。
【0019】
前記不飽和一塩基酸は公知のものが使用でき、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等を挙げることができる。また、一個のヒドロキシ基と一個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と多塩基酸無水物との反応物を使用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の一方または両方」を意味し、また、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基及びメタクリロイル基の一方または両方」を意味する。
上記多塩基酸は、前記エポキシ樹脂の分子量を増大させるために使用するものであり公知のものを使用できる。例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、エチレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ポリエチレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、プロピレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ポリプロピレングリコール・2モル無水マレイン酸付加物、ドデカン二酸、トリデカン二酸、オクタデカン二酸、1,16−(6−エチルヘキサデカン)ジカルボン酸、1,12−(6−エチルドデカン)ジカルボン酸、カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(商品名Hycar CTBN)等を挙げることができる。
【0020】
〔不飽和ポリエステル樹脂〕
不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和二塩基酸、及び必要に応じて飽和二塩基酸を含む二塩基酸成分と、多価アルコール成分とをエステル化反応させて得られたものを用いることができる。
前記不飽和二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができ、これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記飽和二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソセバシン酸等の脂肪族二塩基酸、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、ダイマー酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、又はこれらのジアルキルエステル等の芳香族二塩基酸、ハロゲン化飽和二塩基酸等を挙げることができ、これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
前記多価アルコ−ルに特に制限はないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等の二価アルコール;
水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノ−ルA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等に代表される2価フェノールとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドに代表されるアルキレンオキサイドとの付加物等の二価アルコール;1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリトール等の三価以上のアルコール等を挙げることができる。
【0022】
不飽和ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、ジシクロペンタジエン系化合物により変性したものを用いてもよい。ジシクロペンタジエン系化合物による変性方法については、例えば、ジシクロペンタジエンとマレイン酸付加生成物(シデカノールモノマレ−ト)を得た後、これを一塩基酸として用いてジシクロペンタジエン骨格を導入する方法等の公知の方法が挙げられる。
本発明で使用するビニルエステル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂には、アリル基またはベンジル基などの酸化重合(空気硬化)基を導入することができる。導入方法に特に制限はないが、例えば、酸化重合基含有ポリマーの添加や、水酸基とアリルエーテル基とを有する化合物の縮合、アリルグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルアリルエーテルに水酸基とアリルエーテル基を有する化合物と酸無水物との反応物を付加させる方法等が挙げられる。
なお、本発明での酸化重合(空気硬化)とは、例えばアリルエーテル基などに見られる、エーテル結合と二重結合との間にあるメチレン結合の酸化によるパーオキシドの生成と分解に伴う架橋を指す。
【0023】
〔ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、及び(メタ)アクリレート樹脂〕
本発明におけるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるポリエステル、具体的には、ポリエチレンテレフタレート等の両末端の水酸基に対して、(メタ)アクリル酸を反応させて得られた樹脂を用いることができる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、イソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるポリウレタンの両末端の水酸基又はイソシアナト基に対して、(メタ)アクリル酸を反応させて得られた樹脂を用いることができる。
(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、水酸基、イソシアナト基、カルボキシ基及びエポキシ基から選ばれる1種以上の置換基を有するポリ(メタ)アクリル樹脂や、前記置換基を有する単量体と(メタ)アクリレートとの重合体の置換基に対して、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類を反応させて得られた樹脂を用いることができる。
【0024】
〔ラジカル重合性不飽和単量体〕
本発明においては、ラジカル重合性化合物(C)としてラジカル重合性不飽和単量体を用いることができる。
ラジカル重合性不飽和単量体は、それのみを単独で用いてもよいが、ラジカル重合性不飽和単量体と、前記ビニルエステル樹脂及び前記不飽和ポリエステル樹脂の少なくとも1種との混合物として用いることが好ましい。
前記ラジカル重合性不飽和単量体に特に制限はないが、ビニル基、又は(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
ビニル基を有する単量体の具体例としては、スチレン、p−クロロスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、t−ブチルスチレン、酢酸ビニル、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリロイル基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ−ルジ(メタ)アクリレート、PTMGのジメタアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロイルエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAEO変性(n=2)ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性(n=3)ジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルメタアクリレート又はトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌルアクリレート等を挙げることができる。
【0026】
更に、多官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン−グリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
さらに、ラジカル重合性不飽和単量体として、以下のような化合物を使用することもできる。具体的には、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、アリルメタクリレート、ビニルベンジルブチルエーテル、ビニルベンジルヘキシルエーテル、ビニルベンジルオクチルエーテル、ビニルベンジル(2−エチルヘキシル)エーテル、ビニルベンジル(β−メトキシメチル)エーテル、ビニルベンジル(n−ブトキシプロピル)エーテル、ビニルベンジルシクロヘキシルエーテル、ビニルベンジル(β−フェノキシエチル)エーテル、ビニルベンジルジシクロペンテニルエーテル、ビニルベンジルジシクロペンテニルオキシエチルエーテル、ビニルベンジルジシクロペンテニルメチルエーテル、ジビニルベンジルエーテルを挙げることができる。
これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ラジカル重合性不飽和単量体は、放射能汚染水を固化させる際の硬度、強度等を向上させるために用いることができるが、その含有量が多すぎると固化体の劣化や環境汚染につながる場合がある。したがって、ラジカル重合性不飽和単量体の含有量は、ラジカル重合性化合物(C)中、90質量%以下であることが好ましい。
更に、ラジカル重合性化合物(C)がラジカル重合性不飽和単量体として特にスチレンを含有する場合、その含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、5質量%以下がより更に好ましい。
【0028】
ラジカル重合性化合物(C)は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、及び(メタ)アクリレート樹脂を合成したときに使用した触媒や重合禁止剤が残留していてもよい。
触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾール誘導体等の三級窒素を含有する化合物;テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミン等のアミン塩;及びトリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン等が挙げられる。
ラジカル重合性化合物(C)に触媒又は重合禁止剤が残留する場合、その量は、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂の合計100質量部に対して、それぞれ、好ましくは0.001〜2質量部である。
含水樹脂組成物中のラジカル重合性化合物(C)の含有量は、好ましくは15〜95質量%、より好ましくは20〜90質量%である。ラジカル重合性化合物(C)の含有量が前記範囲内であると、固化物の硬度がより一層向上する。
【0029】
<充填材(D)>
放射能汚染水を固化させる際に、作業性の向上や固化体の物性を調整することを目的として含水樹脂組成物中に充填材(D)(以下「(D)成分」ともいう)を含有する。充填材(D)としては、例えば、無機充填材及び有機充填材を挙げることができる。
無機充填材としては、セメント、生石灰、川砂利、川砂、海砂利、海砂、山砂利、砕石、砕砂、珪砂等のシリカを主成分とする砂、セラミック、ガラス屑等の人工骨材、タルク等の公知のものが使用できるが、セメントの水和反応による発熱と収縮の観点から、水和反応性を有するセメントと川砂利等の乾燥した骨材との組み合わせが好ましい。
セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等のポルトランドセメント類、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメント類、超速硬セメント、アルミナセメント、油井セメント、地熱セメント、カラーセメント、微粉末セメント等の特殊セメント類及び各種石膏類が使用できる。
【0030】
また、難燃性を付与する観点から、水酸化アルミニウムを用いることができ、流動性を調整する観点から、ヒュームドシリカ、タルク等を用いることもできる。更に、モレキュラーシーブを用いることもできる。
更に、水中に含まれる汚染物質や放射性物質等を除去する観点から、ゼオライト、活性炭等の吸着剤を混合しておくことが好ましい。
有機充填材としては、アマイド系ワックス及び吸水ポリマー等の有機系充填材を用いることもできる。
さらに、充填材(D)の一部または全部を、特開2015−231610に開示されるジオポリマー固化体や、放射能で汚染された土壌及び瓦礫等の廃棄物で置き換えても良い。また、前記放射能汚染水(A)として、金属種が除去されたトリチウム水を用いる場合には、硬化触媒として機能する金属量を補うために、充填材(D)に金属化合物(M)を配合しても良い。この場合の金属化合物(M)としては、前記放射能汚染水(A)の項目で挙げたものを用いることができる。
【0031】
充填材(D)の含有量は、ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、10〜500質量部が好ましい。充填材(D)の量が前記範囲内であると、処理中の粘度をコントロールして十分な作業性を確保することができ、放射能汚染水を固化させた際に充分な強度を発現することができる。
【0032】
<界面活性剤(E)>
前記ラジカル重合性化合物(C)と放射能汚染水(A)とのなじみを向上させることを目的として界面活性剤(E)(以下「(E)成分」ともいう)を用いる。界面活性剤を含まない放射能汚染水を固化させた場合、放射能汚染水はラジカル重合性化合物(C)の硬化物の外にはじき出され、ラジカル重合性化合物(C)のみが硬化する傾向がある。界面活性剤(E)を用いることにより、ラジカル重合性化合物(C)は、放射能汚染水を抱き込んだまま硬化し、固化体の外に逃がさないという効果がある。
【0033】
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの界面活性剤の中でも陰イオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩類、ステアリン酸ソーダ石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸等の脂肪酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、特殊高分子系等が挙げられる。
これらの中でも、スルホン酸塩類が好ましく、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムがより好ましく、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが更に好ましい。
【0034】
非イオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシエチレン誘導体;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ソルビタンモノラウリレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
これらの中では、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。また、非イオン性界面活性剤のHLB(Hydrophile-Lipophil Balance)は、5〜15が好ましく、6〜12より好ましい。
【0035】
含水樹脂組成物における界面活性剤(E)の量は、前記放射能汚染水(A)、前記チオール化合物(B)、前記ラジカル重合性化合物(C)、前記充填材(D)、界面活性剤(E)及び後述するラジカル重合開始剤(F)の合計100質量部に対して0.05〜10質量部であり、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部、更に好ましくは0.06〜1質量部、より更に好ましくは0.07〜0.5質量部である。界面活性剤の量が0.05質量部以上であると、充填材(D)の吸水性の低下を防ぐことができるため、充填材の効果が発揮できる。また、10質量部以下であると樹脂物性の低下を抑えることができると共に、得られる性能とコストとのバランスが向上する。
【0036】
<ラジカル重合開始剤(F)>
本発明の処理方法における含水樹脂組成物には、硬化剤としてラジカル重合開始剤(F)(以下「(F)成分」ともいう)を用いる。ラジカル重合開始剤(F)としては、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤から選ばれる少なくとも1種の開始剤が挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル系、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系、ジクミルパーオキサイド等ジアルキルパーオキサイド系、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の有機過酸化物が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエート等のベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系等が挙げられる。
【0037】
含水樹脂組成物におけるラジカル重合開始剤(F)の量は、ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、好ましくは0.3〜10質量部であり、より好ましくは0.3〜7質量部、更に好ましくは0.4〜6質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。
ラジカル重合開始剤(F)の量が0.3質量部以上であると、本発明のラジカル重合性含水樹脂組成物を十分に硬化させることができ、10質量部以下であると、得られる効果と製造コストのバランスが向上する。
【0038】
<その他の成分>
〔その他硬化促進剤〕
本発明の処理方法における含水樹脂組成物には、硬化性を向上させることを目的として、放射能汚染水(A)に含まれる金属及びチオール化合物(B)以外のその他硬化促進剤を含んでも良い。
その他硬化促進剤としては、アニリン、N,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられ、具体的には、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等を使用できる。
【0039】
〔重合禁止剤〕
本発明の処理方法における含水樹脂組成物には、過度の重合を抑える観点、反応速度をコントロールする観点から、重合禁止剤を用いてもよい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、カテコール、4−tert−ブチルカテコール等の公知のものが挙げられる。
重合禁止剤を含有する場合、その量はラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部である。
【0040】
〔硬化遅延剤〕
本発明の処理方法における含水樹脂組成物には、ラジカル重合性化合物(C)の硬化を遅らせる目的で、硬化遅延剤を含んでもよい。硬化遅延剤としては、フリーラジカル系硬化遅延剤が挙げられ、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(4H−TEMPO)、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(4−Oxo−TEMPO)等のTEMPO及びその誘導体が挙げられる。これらの中でも、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(4H−TEMPO)がコスト面、扱いやすさの点から好ましい。
また、セメント等の無機充填材を含有する場合には、オキシカルボン酸、ホスホン酸及びその誘導体などから選ばれる凝結遅延剤を用いることもできる。具体的には、オキシカルボン酸およびその誘導体としては、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が例示される。また、ホスホン酸およびその誘導体としては、アルミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が例示される。
【0041】
硬化遅延剤を含有する場合、その量はラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部である。
【0042】
〔カップリング剤〕
本発明の処理方法では、後述するとおり含水樹脂組成物を保管容器内で固化することが好ましい。そのため、含水樹脂組成物の保管容器に対する密着性を向上させること等を目的として、カップリング剤を使用してもよい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
このようなカップリング剤としては、例えば、R
3−Si(OR
4)
3で表されるシランカップリング剤を挙げることができる。なお、R
3としては、例えば、アミノプロピル基、グリシジルオキシ基、メタクリルオキシ基、N−フェニルアミノプロピル基、メルカプト基、ビニル基等が挙げられ、R
4としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
カップリング剤を含有する場合、その量は、ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部である。
【0043】
〔湿潤分散剤〕
本発明の処理方法における含水樹脂組成物には、湿潤分散剤を含んでいてもよい。
湿潤分散剤としては、フッ素系湿潤分散剤及びシリコン系湿潤分散剤が挙げられ、これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フッ素系の湿潤分散剤の市販品としては、メガファック(登録商標)F176、メガファック(登録商標)R08(大日本インキ化学工業株式会社製)、PF656、PF6320(OMNOVA社製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル株式会社製)、フロラードFC430(スリーエム ジャパン株式会社製)、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
シリコーン系湿潤分散剤の市販品としては、BYK(登録商標)−322、BYK(登録商標)−377、BYK(登録商標)−UV3570、BYK(登録商標)−330、BYK(登録商標)−302、BYK(登録商標)−UV3500,BYK−306(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
また、シリコーン系湿潤分散剤は、下記式(U)で表される化合物を含むシリコーン系湿潤分散剤であることが好ましい。
【0044】
【化2】
(式中、R
5及びR
6は、それぞれ独立に、芳香環を含んでもよい炭素原子数が1〜200の炭化水素基、又は−(CH
2)
3O(C
2H
4O)
p(CH
2CH(CH
3)O)
qR’を示し、nは1〜200の整数、R’は炭素原子数が1〜12のアルキル基を示し、p及びqはそれぞれ整数であり、かつ、q/p=0〜10を満たす。)
なお、前記式(U)で表される化合物を含むシリコーン系湿潤分散剤の市販品としては、BYK(登録商標)−302及びBYK(登録商標)−322(ビックケミー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
湿潤分散剤を含有する場合、その量は、ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対し、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜2質量部である。
【0045】
〔ワックス〕
本発明の処理方法で使用する含水樹脂組成物には、ワックスを含んでいてもよい。
ワックスとしては、パラフィンワックス類、極性ワックス類が挙げられ、これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラフィンワックス類としては、各種融点を有する公知のものを使用することができる。また、極性ワックス類としては、構造中に極性基及び非極性基を合わせ持つものを用いることができ、具体的には、NPS(登録商標)−8070、9125(日本精蝋株式会社製)、エマノーン(登録商標)3199、3299(花王株式会社製)等が挙げられる。
ワックスを含有する場合、その量は、ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、好ましくは0.05〜4質量部、より好ましくは0.1〜2.0質量部である。
【0046】
〔揺変剤〕
本発明の処理方法における含水樹脂組成物には、作業性確保のための粘度調整等を目的として揺変剤を使用してもよい。
揺変剤としては、無機系揺変剤、及び有機系揺変剤を挙げることができ、有機系揺変剤としては、水素添加ひまし油系、アマイド系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系、及びこれらを併用した複合系が挙げられ、具体的には、DISPARLON(登録商標)6900−20X(楠本化成株式会社)等が挙げられる。
また、無機系揺変剤としては、シリカやベントナイト系が挙げられ、疎水性のものとして、レオロシール(登録商標)PM−20L(株式会社トクヤマ製の気相法シリカ)、アエロジル(登録商標)AEROSIL R−106(日本アエロジル株式会社)等が挙げられ、親水性のものとして、アエロジル(登録商標)AEROSIL−200(日本アエロジル株式会社)等が挙げられる。揺変性をより向上させる観点から、親水性の焼成シリカに、揺変性改質剤であるBYK(登録商標)−R605やBYK(登録商標)−R606(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を添加したものも好適に用いることができる。
揺変剤を含有する場合、その量は、ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して、好ましくは、0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0047】
<保管容器>
本発明の処理方法では、放射能汚染水の保管容器内で放射能汚染水(A)を含む含水樹脂組成物の固化体を作製し、そのまま保管容器の開口部を封止して安全な放射能レベルとなるまで保管する処理方法が望ましい。保管容器としては、防水性、耐久性、耐放射線性に優れたものであれば特に限定されず、金属製、プラスチック製、繊維強化プラスチック(FRP)製など当該技術分野において公知のものを用いることができる。より好ましくは、ガラス繊維強化プラスチック製の容器を用いることができ、例えば、引き抜き成形、ハンドレイアップ成形、フィラメントワインディング成形など、公知の成形方法を用いて成形した保管容器を用いることができる。保管容器の形状や大きさに関しては特に限定されず、使用者の要求に応じて種々の形状のものを採用することができる。硬化熱を効率的に放熱させる観点からは、板状容器など表面積の大きい形状の容器を用いることが望ましい。板状容器であれば、開口部を封止した後にスタッキングして保管することも可能なので、保管場所の容積削減の観点からも有利である。
【0048】
保管容器としてFRP製のものを用いる場合、使用する樹脂は特に限定されないが、上述の放射能汚染水(A)の固化体作製に用いるラジカル重合性化合物(C)、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂等を用いることができる。エポキシ樹脂およびフェノール樹脂としては、特開2014−139565に挙げられているものなどが使用でき、その他にも日本機械学会発行の「発電用原子力設備規格維持規格(JSME S NA1−2004)」(2004年版)の規格を満たす、昭和電工(株)社製のリポキシ(登録商標)H−630が好ましく挙げられる。前記規格に適合した樹脂を用いる場合、使用にあたり細かい仕様が決められているため、これに準じて樹脂を硬化させることがより好ましい。
FRP製容器の作製に用いる硬化剤や架橋剤は、前記ラジカル重合開始剤(F)や特開2014−139565に記載のものを用いることができる。
気候条件、湿度等の水分の影響を受けないことを考慮すると、前記チオール化合物(B)、前記金属化合物(M)、前記ラジカル重合性化合物(C)、前記ラジカル重合開始剤(F)を含有する組成物をガラス繊維強化プラスチック製の保管容器の材料として用いることが好ましい。
【0049】
[放射能汚染水の処理方法]
本発明の放射能汚染水の処理方法は、含水樹脂組成物を固化する工程を含む。
<含水樹脂組成物の調製方法>
本発明の含水樹脂組成物は、放射能汚染水(A)、チオール化合物(B)、ラジカル重合性化合物(C)、充填材(D)、及び界面活性剤(E)を含む混合液(I)に、ラジカル重合開始剤(F)を加えて製造される。均一に混合する観点からは、前記ラジカル重合性化合物(C)と前記チオール化合物(B)を混合することにより、混合液(i)を得る工程1、前記放射能汚染水(A)と前記界面活性剤(E)を混合し、これに前記混合液(i)を混合することにより混合液(I)を得る工程2、及び前記混合液(I)と前記ラジカル重合開始剤(F)とを混合する工程3を有する方法が好ましい。この場合、充填材(D)及び必要に応じて添加されるその他の成分は、ラジカル重合が開始される前に均一に混合する観点から、工程1又は工程2のいずれかで混合することが好ましく、工程2で混合することがより好ましい。
前記方法により放射能汚染水(A)を処理することにより、放射能汚染水(A)中の金属または充填材(D)に配合した金属の近傍にチオール化合物(B)を効率的に配位させることが可能になる。
前記各工程における混合方法に特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。また、各混合時の温度は、均一に混合する観点、及び各成分の変質を抑制する観点から、10〜40℃が好ましい。
【0050】
<含水樹脂組成物を固化する工程>
本発明の含水樹脂組成物は、放射能汚染水(A)、チオール化合物(B)、ラジカル重合性化合物(C)、充填材(D)、及び界面活性剤(E)を含む混合液(I)に、ラジカル重合開始剤(F)を加えて製造される。ラジカル重合開始剤(F)を加えることにより、ラジカル重合性化合物(C)が重合により硬化し、これにより、含水樹脂組成物が固化する。
固化する態様は様々であり、ラジカル重合開始剤(F)を添加することのみで、固化が進行する場合もあるし、例えば、熱重合開始剤を用いた場合であれば、必要に応じて加熱を行い、あるいは光重開始剤を用いた場合であれば、必要に応じて光照射を行えばよい。
放射能汚染水(A)を含む含水樹脂組成物は、前記保管容器内で固化させることが好ましい。放射能汚染水(A)の固化体形成後に保管容器の開口部を封止し、密閉容器とした上で放射能が安全なレベルに低減されるまで、長期保管を行う。保管容器の封止に用いる材料は、保管容器の作製に用いたものと同様のものを用いることが好ましい。
【0051】
FRP製の保管容器を用いた場合には、特開2014−139565号公報に開示の「放射性物質を吸着及び/又は遮蔽するフィラーをFRPプリプレグに塗布して担持させる工程」を用いて、保管容器の破損個所を修復したり補強したりして、メンテナンスを施すことも可能である。その際の樹脂材料としては、水の影響を受けないよう、前記チオール化合物(B)、ラジカル重合性化合物(C)、ラジカル重合開始剤(F)、及び金属化合物(M)を含有する組成物を用いることが好ましい。
放射能汚染水(A)の固化体を封入した保管容器は、最終処分場にて地中に埋設して保管しても良い。また、保管容器を宇宙に放出して処分することも可能である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例により制限されるものではない。
実施例及び比較例で使用した原料は以下のとおりである。
【0053】
<放射能汚染水(A)>
・水(A−1)
・重水(A−2)
放射能汚染水又はトリチウム水は、水又は重水で代用した。
【0054】
<チオール化合物(B)>
・2官能2級チオール化合物、「カレンズMT(登録商標)BD1」(1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、分子量299.43)、昭和電工社製
<ラジカル重合性化合物(C)>
・ビニルエステル樹脂リポキシ(登録商標)、「NSR−112」(スチレン含有なし)、昭和電工株式会社製
【0055】
<充填剤(D)>
・6号珪砂(D−1)
・ポルトランドセメントJIS規格品、HOKUSEIセメント社製、普通セメント(D−2)
<界面活性剤(E)>
・ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、「ペレックスOT−P」、花王株式会社製
<ラジカル重合開始剤(F)>
・クメンハイドロパーオキサイド、「パークミルH−80」、日油株式会社製
【0056】
<金属化合物(M)>
・オクチル酸コバルト、「ヘキソエートコバルト」(製品全量中のコバルトの含有量8質量%、分子量345.34)、東栄化工株式会社製
<その他成分>
・硬化遅延剤 クエン酸、和光純薬工業株式会社製
【0057】
<実施例1〜5、比較例1〜5>
・実施例1
ラジカル重合性化合物(C)100質量部に対して金属化合物(M)1質量部を室温にて添加・撹拌した後、これにチオール化合物(B)0.5質量部を添加・撹拌し、混合液(i)を得た。該混合液(i)に、さらに水(A−1)と界面活性剤(E)とを混合した界面活性剤1質量%溶液25質量部、充填剤(D−1)250質量部及び充填剤(D−2)50質量部を加え添加・撹拌し、混合液(I)を得た。該混合液(I)に対して、ラジカル重合開始剤(F)1質量部を添加・撹拌し含水樹脂組成物とした。該含水樹脂組成物について重量減少率の測定を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた含水樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤(F)添加後、25℃にて約30分程度で固化することを確認した。
【0058】
・実施例2〜5、比較例1〜5
表1の記載にしたがって各成分を配合した以外は、実施例1と同様の方法によって、含水樹脂組成物を得た。該含水樹脂組成物について重量減少率の測定を行った。結果を表1に示す。
なお、比較例3、4については、該含水樹脂組成物が硬化しなかったので、重量減少率の測定を行うことができなかった。
【0059】
<重量減少率の測定>
実施例及び比較例で得られた含水樹脂組成物を一辺が4cmの正方形であって厚みが3mmの型枠の中に流し込んで、測定対象試料(a)とした。型枠に流し込んだ際の試料(a)の重量測定を行った。該試料(a)について、以下に示すように、各重量減少率を測定した。
(1)重量減少率A(%)
試料(a)を25℃で12時間乾燥させて、試料(b)とし、乾燥後の重量減少率(%)を算出した。
重量減少率Aの算出は、以下のとおりである。
100×(試料(a)の重量−試料(b)の重量)/試料(a)の重量
(2)累積重量減少率B(%)
試料(b)を80℃のオーブンで6時間乾燥させて、試料(c)とし、乾燥後の累積重量減少率(%)を算出した。
累積重量減少率Bの算出は、以下のとおりである。
B=100×(試料(a)の重量−試料(c)の重量)/試料(a)の重量
水分の減少率B’(%)の算出は以下のとおりである。
B’=100×(試料(a)の重量−試料(c)の重量)/試料(a)中の水分の重量
(3)累積重量減少率C(%)
試料(c)を型枠から外して、6つの破片になるように硬化物を割り重量を測定し、次いでそれらの破片を100℃のオーブンで2時間乾燥させ、試料(d)とし、乾燥後の累積重量減少率(%)を算出した。
累積重量減少率Cの算出は、以下のとおりである。
C=100×(試料(a)の重量−試料(d)の重量)/試料(a)の重量
水分の減少率C’(%)の算出は以下のとおりである。
C’=100×(試料(a)の重量−試料(d)の重量)/試料(a)中の水分の重量
【0060】
【表1】
【0061】
本発明放射能汚染水の処理方法によれば、放射能汚染水を短時間で固化できることが分かった。また得られた固化物は、重量減少率が低いため、保水効果が高いこと、すなわち、安定的に保管可能であることがわかった。
一方、界面活性剤(E)を配合しない比較例1、2、5は、重量減少率が実施例と比べて高く、保水効果が低かった。また、金属化合物(M)を配合しない比較例3、及びチオール化合物(B)を配合しない比較例4は、含水樹脂組成物の硬化が確認されなかった。