(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
A.光学部材の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学部材を説明する概略断面図である。光学部材100は、偏光板10と低屈折率層20とプリズムシート30とを含む。偏光板10と低屈折率層20とは、代表的には、粘着剤を介して直接積層されている。光学部材100は、代表的には、偏光板10と低屈折率層20とプリズムシート30とをこの順に含む。偏光板10は、代表的には、偏光子11と、偏光子11の片側に配置された保護層12と、偏光子11のもう一方の側に配置された保護層13とを有する。プリズムシート30は、代表的には、基材部31とプリズム部32とを有する。このように、偏光板とプリズムシートとを一体化することにより、プリズムシートと偏光板との間の空気層を排除することができるので、液晶表示装置の薄型化に寄与することができる。液晶表示装置の薄型化は、デザインの選択幅を広げるので、商業的な価値が大きい。さらに、空気層を排除することにより、空気層とプリズムシートおよび/または偏光板との界面における所望でない反射および屈折を抑制することができるので、液晶表示装置の表示特性に対する悪影響を防止することができる。加えて、偏光板とプリズムシートとを一体化することにより、プリズムシートを面光源装置(バックライトユニット、実質的には導光板)に取り付ける際のこすれによるプリズムシートの傷つきを回避できるので、そのような傷に起因する表示の濁りを防止することができ、かつ、機械的強度に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【0011】
低屈折率層の屈折率nは1<n≦1.25の関係を満たす。屈折率nは、好ましくは1.20以下である。本発明においては、このような屈折率を有する低屈折率層を偏光板とプリズムシートとの間に配置することにより、液晶表示装置においてより高い輝度を得ることができる。これは、低屈折率層の屈折率に応じて全反射の起きる角度が異なり、屈折率nが小さいほど低屈折率層による反射効率が高くなるからである。その結果、上記低屈折率層を上記のように配置することにより、極角方向に傾いた入射光の反射率が向上し、液晶表示装置においてより高い輝度を得ることができる。
【0012】
低屈折率層の屈折率nと厚みd(nm)とは、1つの実施形態においては、下記式(1)または(2)で表される関係を満たす。
1<n≦1.20かつ300≦d・・・・・・・(1)
1.20<n≦1.25かつ500≦d・・・・(2)
上記構成を有することにより、極角方向に傾いた入射光の反射率が向上し、液晶表示装置においてより高い輝度を得ることができる。すなわち、屈折率nの値が小さい場合には、厚みdが小さくても、低屈折率層において充分な反射効率を得ることができることを意味する。これは、低屈折率層の厚みdが大きいほど低屈折率層による反射効率が高くなるからである。
【0013】
低屈折率層の厚みdとしては、上記式(1)または(2)で表される関係を満たし得る任意の適切な値を取り得る。低屈折率層の屈折率nが1<n≦1.20である場合は、厚みdは、例えば400nm以上、好ましくは500nm以上、より好ましくは600nm以上である。屈折率nが1.20<n≦1.25である場合は、厚みdは、例えば600nm以上、好ましくは700nm以上、より好ましくは800nm以上である。低屈折率層の厚みdが上記範囲内であることにより、極角方向に傾いた入射光の低屈折率層による反射率がさらに向上する。その結果、液晶表示装置においてより高い輝度を得ることができる。
【0014】
本発明の1つの実施形態は、偏光板とプリズムシートとを一体化した光学部材を用いた液晶表示装置において、偏光板とプリズムシートとを別置きとした光学部材を用いた液晶表示装置に比べて充分な輝度が得られないという新たに発見された課題を解決するためになされたものである。上記のとおり所定の屈折率を有する低屈折率層を偏光板とプリズムシートとの間に配置することにより、プリズムシートと一体化された偏光板における特有の問題である液晶表示装置の輝度の低下を抑制することができる。上記低屈折率層を偏光板とプリズムシートとの間に配置する技術的意義は以下のとおりである:偏光板とプリズムシートとを別置きで用いる従来の構成では、スネルの法則に従い光の屈折が起きるので、偏光板内にはおおよそ40°未満の光しか入射されない。しかし、偏光板とプリズムシートとを一体化して空気界面を有さない構成では、プリズムシートで曲げられた光は空気面による全反射が起きない為に正面から斜め方向、様々な角度に進むことになる。すなわち、光が面に垂直に入る角度を0゜とした時、40゜以上(例えば、40°〜50°)極角方向に傾いた光が偏光板内に入ることになる。したがって、上記の一体化した光学部材を液晶表示装置の背面側偏光板として用いた場合、極角方向に傾いた光が偏光板内に入ると、上記光は偏光板で吸収されて減衰し、かつ上板と空気界面で全反射されて背面側に戻り、結果としてほとんどの光が視認側に出ることができなくなる。したがって、視認側で利用される光が低減するので、液晶表示装置の輝度が低下する。しかし、上記低屈折率層を偏光板とプリズムシートとの間に配置することにより、偏光板内に光が入る前に極角方向に傾いた入射光を低屈折率層で全反射することができる。全反射された光はバックライト側で反射されて視認側で再利用することができるので、結果として液晶表示装置において高い輝度を得ることができる。
【0015】
以下、光学部材の構成要素について詳細に説明する。
【0016】
B.偏光板
偏光板10は、代表的には、偏光子11と、偏光子11の片側に配置された保護層12と、偏光子11のもう一方の側に配置された保護層13とを有する。偏光子は、代表的には吸収型偏光子である。
【0017】
B−1.偏光子
上記吸収型偏光子の波長589nmの透過率(単体透過率ともいう)は、好ましくは41%以上であり、より好ましくは42%以上である。なお、単体透過率の理論的な上限は50%である。また、偏光度は、好ましくは99.5%〜100%であり、更に好ましくは99.9%〜100%である。上記の範囲であれば、液晶表示装置に用いた際に正面方向のコントラストをより一層高くすることができる。
【0018】
上記単体透過率及び偏光度は、分光光度計を用いて測定することができる。上記偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光子の平行透過率(H
0)及び直交透過率(H
90)を測定し、式:偏光度(%)={(H
0−H
90)/(H
0+H
90)}
1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H
0)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。また、上記直交透過率(H
90)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
【0019】
上記吸収型偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。また、米国特許5,523,863号等に開示されている二色性物質と液晶性化合物とを含む液晶性組成物を一定方向に配向させたゲスト・ホストタイプのE型およびO型偏光子、米国特許6,049,428号等に開示されているリオトロピック液晶を一定方向に配向させたE型およびO型偏光子等も用いることができる。
【0020】
このような偏光子の中でも、高い偏光度を有するという観点から、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール(PVA)系フィルムによる偏光子が好適に用いられる。偏光子に適用されるポリビニルアルコール系フィルムの材料には、ポリビニルアルコール又はその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等が挙げられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸や、そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものが挙げられる。ポリビニルアルコールの重合度は、1000〜10000程度、ケン化度は80モル%〜100モル%程度のものが一般に用いられる。
【0021】
上記ポリビニルアルコール系フィルム(未延伸フィルム)は、常法に従って、一軸延伸処理、ヨウ素染色処理が少なくとも施される。さらには、ホウ酸処理、ヨウ素イオン処理を施すことができる。また、上記処理の施されたポリビニルアルコール系フィルム(延伸フィルム)は、常法に従って乾燥されて偏光子となる。
【0022】
一軸延伸処理における延伸方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法のいずれも採用できる。乾式延伸法の延伸手段としては、たとえば、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等が挙げられる。延伸は多段で行うこともできる。前記延伸手段において、未延伸フィルムは、通常、加熱状態とされる。通常、未延伸フィルムは30μm〜150μm程度のものが用いられる。延伸フィルムの延伸倍率は目的に応じて適宜に設定できるが、延伸倍率(総延伸倍率)は2倍〜8倍程度、好ましくは3倍〜6.5倍、さらに好ましくは3.5倍〜6倍である。延伸フィルムの厚さは5μm〜40μm程度が好適である。
【0023】
ヨウ素染色処理は、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素及びヨウ化カリウムを含有するヨウ素溶液に浸漬することにより行われる。ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であり、ヨウ素及び溶解助剤としてヨウ化カリウムを含有する。ヨウ素濃度は、好ましくは0.01重量%〜1重量%程度、より好ましくは0.02重量%〜0.5重量%であり、ヨウ化カリウム濃度は、好ましくは0.01重量%〜10重量%程度、より好ましくは0.02重量%〜8重量%である。
【0024】
ヨウ素染色処理にあたり、ヨウ素溶液の温度は、通常20℃〜50℃程度、好ましくは25℃〜40℃である。浸漬時間は通常10秒間〜300秒間程度、好ましくは20秒間〜240秒間の範囲である。ヨウ素染色処理にあたっては、ヨウ素溶液の濃度、ポリビニルアルコール系フィルムのヨウ素溶液への浸漬温度、浸漬時間等の条件を調整することにより、ポリビニルアルコール系フィルムにおけるヨウ素含有量及びカリウム含有量が所望の範囲になるように調整する。ヨウ素染色処理は、一軸延伸処理の前、一軸延伸処理中、一軸延伸処理の後の何れの段階で行ってもよい。
【0025】
ホウ酸処理は、ホウ酸水溶液へポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行う。ホウ酸水溶液中のホウ酸濃度は、2重量%〜15重量%程度、好ましくは3重量%〜10重量%である。ホウ酸水溶液中には、ヨウ化カリウムによりカリウムイオン及びヨウ素イオンを含有させることができる。ホウ酸水溶液中のヨウ化カリウム濃度は0.5重量%〜10重量%程度、さらには1重量%〜8重量%とするのが好ましい。ヨウ化カリウムを含有するホウ酸水溶液は、着色の少ない偏光子、即ち可視光のほぼ全波長域に亘って吸光度がほぼ一定のいわゆるニュートラルグレーの偏光子を得ることができる。
【0026】
ヨウ素イオン処理には、例えば、ヨウ化カリウム等によりヨウ素イオンを含有させた水溶液を用いる。ヨウ化カリウム濃度は0.5重量%〜10重量%程度、さらには1重量%〜8重量%とするのが好ましい。ヨウ素イオン含浸処理にあたり、その水溶液の温度は、通常15℃〜60℃程度、好ましくは25℃〜40℃である。浸漬時間は通常1秒〜120秒程度、好ましくは3秒〜90秒間の範囲である。ヨウ素イオン処理の段階は、乾燥工程前であれば特に制限はない。後述の水洗浄後に行うこともできる。
【0027】
上記処理の施されたポリビニルアルコール系フィルム(延伸フィルム)は、常法に従って、水洗浄工程、乾燥工程に供することができる。
【0028】
乾燥工程は、任意の適切な乾燥方法、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等を採用し得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には20℃〜80℃、好ましくは25℃〜70℃であり、乾燥時間は好ましくは1分〜10分間程度である。また、乾燥後の偏光子の水分率は好ましくは10重量%〜30重量%であり、より好ましくは12重量%〜28重量%であり、さらに好ましくは16重量%〜25重量%である。水分率が過度に大きいと、偏光板を乾燥する際に、偏光子の乾燥に伴って偏光度が低下する傾向がある。特に500nm以下の短波長領域における直交透過率が増大する、すなわち、短波長の光が漏れるために、黒表示が青色に着色する傾向がある。逆に、偏光子の水分率が過度に小さいと、局所的な凹凸欠陥(クニック欠陥)が発生しやすい等の問題を生じる場合がある。
【0029】
偏光板10は、代表的には長尺状(例えば、ロール状)で提供されて光学部材の製造に用いられる。1つの実施形態においては、偏光子は、長尺方向に吸収軸を有する。このような偏光子は、当業界で慣用されている製造方法(例えば、上記のような製造方法)により得られ得る。別の実施形態においては、偏光子は、幅方向に吸収軸を有する。
【0030】
B−2.保護層
保護層は、偏光板の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。それぞれの保護層は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0031】
保護層の厚みは、好ましくは10μm〜100μmである。保護層は、接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層されていてもよく、偏光子に密着(接着層を介さずに)積層されていてもよい。接着剤層は、任意の適切な接着剤で形成される。接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤は、好ましくは、金属化合物コロイドをさらに含有し得る。金属化合物コロイドは、金属化合物微粒子が分散媒中に分散しているものであり得、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的安定化し、永続的に安定性を有するものであり得る。金属化合物コロイドを形成する微粒子の平均粒子径は、偏光特性等の光学特性に悪影響を及ぼさない限り、任意の適切な値であり得る。好ましくは1nm〜100nm、さらに好ましくは1nm〜50nmである。微粒子を接着剤層中に均一に分散させ得、接着性を確保し、かつクニックを抑え得るからである。なお、「クニック」とは、偏光子と保護層の界面で生じる局所的な凹凸欠陥のことをいう。
【0032】
C.低屈折率層
低屈折率層20としては、屈折率nが1<n≦1.25の関係を満たす任意の適切な低屈折率層を採用し得る。低屈折率層の厚みは上記の通りである。
【0033】
低屈折率層は、代表的には、内部に空隙を有する。低屈折率層の空隙率は、任意の適切な値を取り得る。上記空隙率は、例えば5%〜90%であり、好ましくは25%〜80%である。空隙率が上記範囲内であることにより、低屈折率層の屈折率を充分低くすることができ、かつ高い機械的強度を得ることができる。
【0034】
上記内部に空隙を有する低屈折率層としては、例えば、多孔質層、および/または空気層を少なくとも一部に有する低屈折率層が挙げられる。多孔質層は、代表的には、エアロゲル、および/または粒子(例えば、中空微粒子および/または多孔質粒子)を含む。低屈折率層は、好ましくは、ナノポーラス層(具体的には、90%以上の微細孔の直径が10
−1〜10
3nmの範囲内の多孔質層)である。
【0035】
低屈折率層を構成する材料としては、任意の適切な材料を採用し得る。上記材料としては、例えば、国際公開第2004/113966号パンフレット、特開2013−254183号公報、および特開2012−189802号公報に記載の材料を採用し得る。具体的には、例えば、シリカ系化合物;加水分解性シラン類、ならびにその部分加水分解物および脱水縮合物;有機ポリマー;シラノール基を含有するケイ素化合物;ケイ酸塩を酸やイオン交換樹脂に接触させることにより得られる活性シリカ;重合性モノマー(例えば、(メタ)アクリル系モノマー、およびスチレン系モノマー);硬化性樹脂(例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素含有樹脂、およびウレタン樹脂);およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
上記有機ポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン類(例えば、ポリエチレン、およびポリプロピレン)、ポリウレタン類、フッ素含有ポリマー(例えば、フッ素含有モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体)、ポリエステル類(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体(本明細書では(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を意味し、「(メタ)」は、全てこのような意味で用いるものとする。))、ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリ尿素類、およびポリカーボネート類が挙げられる。
【0037】
上記材料は、好ましくは、シリカ系化合物;加水分解性シラン類、ならびにその部分加水分解物および脱水縮合物;を含む。
【0038】
上記シリカ系化合物としては、例えば、SiO
2(無水ケイ酸);SiO
2と、Na
2O−B
2O
3(ホウケイ酸)、Al
2O
3(アルミナ)、B
2O
3、TiO
2、ZrO
2、SnO
2、Ce
2O
3、P
2O
5、Sb
2O
3、MoO
3、ZnO
2、WO
3、TiO
2−Al
2O
3、TiO
2−ZrO
2、In
2O
3−SnO
2、およびSb
2O
3−SnO
2からなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含む化合物(上記「−」は、複合酸化物であることを示す。);が挙げられる。
【0039】
上記加水分解性シラン類としては、例えば、置換基(例えば、フッ素)を有していてもよいアルキル基を含有する加水分解性シラン類が挙げられる。上記加水分解性シラン類、ならびにその部分加水分解物および脱水縮合物は、好ましくは、アルコキシシラン、およびシルセスキオキサンである。
【0040】
アルコキシシランはモノマーでも、オリゴマーでも良い。アルコキシシランモノマーはアルコキシル基を3つ以上有するのが好ましい。アルコキシシランモノマーとしては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、およびジメチルジエトキシシランが挙げられる。アルコキシシランオリゴマーとしては、上記モノマーの加水分解及び重縮合により得られる重縮合物が好ましい。上記材料としてアルコキシシランを用いることにより、優れた均一性を有する低屈折率層が得られる。
【0041】
シルセスキオキサンは、一般式RSiO
1.5(ただしRは有機官能基を示す。)により表されるネットワーク状ポリシロキサンの総称である。Rとしては、例えば、アルキル基(直鎖でも分岐鎖でも良く、炭素数1〜6である。)、フェニル基、およびアルコキシ基(例えば、メトキシ基、およびエトキシ基)が挙げられる。シルセスキオキサンの構造としては、例えば、ラダー型、および籠型が挙げられる。上記材料としてシルセスキオキサンを用いることにより、優れた均一性、耐候性、透明性、および硬度を有する低屈折率層が得られる。
【0042】
上記粒子としては、任意の適切な粒子を採用し得る。上記粒子は、代表的には、シリカ系化合物からなる。
【0043】
上記粒子の低屈折率層における形状としては、任意の適切な形状を取り得る。上記形状としては、例えば、球状、板状、針状、ストリング状、およびブドウの房状が挙げられる。ストリング状の粒子としては、例えば、球状、板状、または針状の形状を有する複数の粒子が数珠状に連なった粒子、短繊維状の粒子(例えば、特開2001−188104号公報に記載の短繊維状の粒子)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ストリング状の粒子は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。ブドウの房状のシリカ粒子としては、例えば、球状、板状、および針状の粒子が複数凝集してブドウの房状になったものが挙げられる。シリカ粒子の形状は、例えば透過電子顕微鏡で観察することによって確認できる。
【0044】
上記粒子の平均粒子径は、例えば5nm〜200nmであり、好ましくは10nm〜200nmである。上記構成を有することにより、充分に屈折率が低い低屈折率層を得ることができ、かつ低屈折率層の透明性を維持することができる。なお、本明細書では、平均粒子径とは、窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積(m
2/g)から、平均粒子径=(2720/比表面積)の式によって与えられた値を意味するものとする(特開平1−317115号参照)。
【0045】
低屈折率層を得る方法としては、例えば、特開2010−189212号公報、特開2008−040171号公報、特開2006−011175号公報、国際公開第2004/113966号パンフレット、およびそれらの参考文献に記載された方法が挙げられる。具体的には、シリカ系化合物;加水分解性シラン類、ならびにその部分加水分解物および脱水縮合物の少なくともいずれか1つを加水分解及び重縮合させる方法、多孔質粒子および/または中空微粒子を用いる方法、ならびにスプリングバック現象を利用してエアロゲル層を生成する方法が挙げられる。
【0046】
低屈折率層20は、任意の適切な接着層(例えば、接着剤層、粘着剤層:図示せず)を介して偏光板10に貼り合わせられる。低屈折率層が粘着剤で構成される場合には、接着層を省略することができる。すなわち、この場合には、偏光板10とプリズムシート30とが、低屈折率粘着剤を介して貼り合わせられる。
【0047】
D.プリズムシート
プリズムシート30は、代表的には、基材部31とプリズム部32とを有する。なお、本実施形態においては、低屈折率層20がプリズム部32を支持する基材部として機能し得るので、基材部31は必ずしも設ける必要はない。プリズムシート30は、代表的には、本発明の光学部材が液晶表示装置のバックライト側に配置された場合に、バックライトユニットの導光板から出射された偏光光を、その偏光状態を保ったまま、プリズム部32内部での全反射等によって、液晶表示装置の略法線方向に最大強度を有する偏光光として、低屈折率層20を介して偏光板10に導く。なお、「略法線方向」とは、法線方向から所定の角度内の方向、例えば、法線方向から±10°の範囲内の方向を包含する。
【0048】
プリズムシート30は、任意の適切な接着層(例えば、接着剤層、粘着剤層:図示せず)を介して低屈折率層20に貼り合わせられる。低屈折率層が粘着剤で構成される場合には、接着層を省略することができる。
【0049】
D−1.プリズム部
1つの実施形態においては、
図1および
図2に示すように、プリズムシート30(実質的には、プリズム部32)は、低屈折率層20と反対側に凸となる複数の単位プリズム33が並列されて構成されている。好ましくは、単位プリズム33は柱状である。単位プリズム33の長手方向(稜線方向)は、偏光板10の透過軸と略直交方向または略平行方向に向いている。好ましくは、
図2に示すように、単位プリズム33の長手方向(稜線方向)は、偏光板10の透過軸と略直交方向に向いている。単位プリズムの稜線方向が偏光板の透過軸と略直交方向となるようにプリズムシートおよび偏光板を配置することにより、液晶表示装置において得られる輝度がさらに向上する。本明細書において、「実質的に直交」および「略直交」という表現は、2つの方向のなす角度が90°±10°である場合を包含し、好ましくは90°±7°であり、さらに好ましくは90°±5°である。「実質的に平行」および「略平行」という表現は、2つの方向のなす角度が0°±10°である場合を包含し、好ましくは0°±7°であり、さらに好ましくは0°±5°である。さらに、本明細書において単に「直交」または「平行」というときは、実質的に直交または実質的に平行な状態を含み得るものとする。なお、プリズムシート30は、単位プリズム33の稜線方向と偏光板10の透過軸とが所定の角度を形成するようにして配置(いわゆる斜め配置)してもよい。このような構成を採用することにより、モアレの発生をさらに良好に防止できる場合がある。なお、意図的に斜め配置を行う場合であっても、その角度は最大でも10°程度である場合が多いので、「実質的に平行」に含まれる場合が多い。
【0050】
単位プリズム33の形状は、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な構成が採用され得る。単位プリズム33は、その配列方向に平行かつ厚み方向に平行な断面において、その断面形状が、三角形状であってもよく、その他の形状(例えば、三角形の一方または両方の斜面が傾斜角の異なる複数の平坦面を有する形状)であってもよい。三角形状としては、単位プリズムの頂点を通りシート面に直交する直線に対して非対称である形状(例えば、不等辺三角形)であってもよく、当該直線に対して対称である形状(例えば、二等辺三角形)であってもよい。さらに、単位プリズムの頂点は、面取りされた曲面状となっていてもよく、先端が平坦面となるようにカットされて断面台形状となっていてもよい。単位プリズム33の詳細な形状は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、単位プリズム33として、特開平11−84111号公報に記載の構成が採用され得る。
【0051】
D−2.基材部
プリズムシート30に基材部31を設ける場合には、単一の材料を押出し成型等することにより基材部31とプリズム部32とを一体的に形成してもよく、基材部用フィルム上にプリズム部を賦形してもよい。基材部の厚みは、好ましくは25μm〜150μmである。このような厚みであれば、低屈折率層とプリズム部との距離を所望の範囲とすることができる。さらに、このような厚みは、取扱い性および強度の観点からも好ましい。
【0052】
基材部31を構成する材料としては、目的およびプリズムシートの構成に応じて任意の適切な材料を採用することができる。基材部用フィルム上にプリズム部を賦形する場合には、基材部用フィルムの具体例としては、三酢酸セルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂により形成されたフィルムが挙げられる。当該フィルムは好ましくは未延伸フィルムである。
【0053】
単一材料で基材部31とプリズム部32とを一体形成する場合、当該材料として、基材部用フィルム上にプリズム部を賦形する場合のプリズム部形成用材料と同様の材料を用いることができる。プリズム部形成用材料としては、例えば、エポキシアクリレート系やウレタンアクリレート系の反応性樹脂(例えば、電離放射線硬化性樹脂)が挙げられる。一体構成のプリズムシートを形成する場合には、PC、PET等のポリエステル樹脂、PMMA、MS等のアクリル系樹脂、環状ポリオレフィン等の光透過性の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0054】
基材部31は、好ましくは、実質的に光学的に等方性を有する。本明細書において「実質的に光学的に等方性を有する」とは、位相差値が液晶表示装置の光学特性に実質的に影響を与えない程度に小さいことをいう。例えば、基材部の面内位相差Reは、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは10nm以下である。なお、面内位相差Reは、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値である。面内位相差Reは、Re=(nx−ny)×tで表される。ここで、nxは光学部材の面内において屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは当該面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、tは光学部材の厚み(nm)である。
【0055】
さらに、基材部31の光弾性係数は、好ましくは−10×10
−13m
2/N〜10×10
−13m
2/Nであり、より好ましくは−5×10
−13m
2/N〜5×10
−13m
2/Nであり、さらに好ましくは−3×10
−13m
2/N〜3×10
−13m
2/Nである。
【0056】
E.位相差層
光学部材100は、目的に応じて、任意の適切な位置に任意の適切な位相差層をさらに有していてもよい(図示せず)。位相差層の配置位置、数、複屈折性(屈折率楕円体)等は、液晶セルの駆動モード、所望の特性等に応じて適切に選択され得る。目的に応じて、位相差層は、偏光子の保護層を兼ねてもよい。以下、本発明の光学部材に適用可能な位相差層の代表例を説明する。
【0057】
例えば、光学部材がIPSモードの液晶表示装置に用いられる場合には、光学部材は、偏光板10の低屈折率層20と反対側にnx
1>ny
1>nz
1を満たす第1の位相差層を有していてもよい。この場合、光学部材は、第1の位相差層のさらに外側(偏光板10と反対側)に、nz
2>nx
2>ny
2を満たす第2の位相差層をさらに有していてもよい。第2の位相差層は、nz
2>nx
2=ny
2を満たす、いわゆるポジティブCプレートであってもよい。第1の位相差層の遅相軸と第2の位相差層の遅相軸とは直交しても平行であってもよい。視野角と生産性を考慮すると、平行であることが好ましい。
【0058】
第1の位相差層の面内位相差Re
1は、好ましくは60nm〜140nmである。第1の位相差層のNz係数Nz
1は、好ましくは1.1〜1.7である。第2の位相差層の面内位相差Re
2は、好ましくは10nm〜70nmである。第2の位相差層の厚み方向位相差Rth
2は、好ましくは―120nm〜―40nmである。面内位相差Reは上記で定義したとおりである。厚み方向位相差Rthは、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで表される。Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で表される。ここで、nxおよびnyは、上記で定義したとおりである。nzは、光学部材(ここでは、第1の位相差層または第2の位相差層)の厚み方向の屈折率である。なお、添え字の「1」および「2」は、それぞれ第1の位相差層および第2の位相差層を表す。
【0059】
あるいは、第1の位相差層はnx
1>nz
1>ny
1を満たす位相差層であってもよい。この場合、第2の位相差層は、nx
2=ny
2>nz
2を満たす、いわゆるネガティブCプレートであることが好ましい。なお、本明細書においては、例えば「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。本明細書において「実質的に等しい」とは、液晶表示装置の全体的な光学特性に実用上の影響を与えない範囲でnxとnyが異なる場合も包含する趣旨である。したがって、本実施形態におけるネガティブCプレートは、二軸性を有する場合を包含する。
【0060】
また例えば、光学部材がVAモードの液晶表示装置に用いられる場合には、光学部材は、円偏光板として用いられてもよい。具体的には、光学部材は、偏光板10の低屈折率層20と反対側にλ/4板として機能する第1の位相差層を有していてもよい。この場合、偏光子の吸収軸と第1の位相差層の遅相軸とのなす角は、実質的に45度または実質的に135度であることが好ましい。さらに、この場合には、液晶表示装置は、液晶セルと視認側偏光板との間にλ/4板として機能する位相差層を有することが好ましい。光学部材は、偏光子と第1の位相差層との間にnz
2>nx
2>ny
2を満たす第2の位相差層をさらに有してもよい。さらに、液晶セルの位相差波長分散値(Re
cell[450]/Re
cell[550])をα
cellとし、第1の位相差層の位相差波長分散値(Re
1[450]/Re
1[550])をα
1としたときに、α
1/α
cellが0.95〜1.02であることが好ましい。加えて、第1の位相差層のNz係数は、1.1<Nz
1≦2.4の関係を満たすことが好ましく、上記第2の位相差層のNz係数は、−2≦Nz
2≦−0.1の関係を満たすことが好ましい。
【0061】
また例えば、光学部材がVAモードの液晶表示装置に用いられる場合には、光学部材は、直線偏光板として用いられてもよい。具体的には、光学部材は、偏光板10の低屈折率層20と反対側にnx
1>ny
1>nz
1を満たす第1の位相差層を有していてもよい。第1の位相差層の面内位相差Re
1は、好ましくは20nm〜200nmであり、より好ましくは30nm〜150nmであり、さらに好ましくは40nm〜100nmである。第1の位相差層の厚み方向位相差Rth
1は、好ましくは100nm〜800nmであり、より好ましくは100nm〜500nmであり、さらに好ましくは150nm〜300nmである。第1の位相差層のNz係数は、好ましくは1.3〜8.0である。
【0062】
F.偏光板のセット
本発明の光学部材は、代表的には、液晶表示装置の視認側と反対側に配置される偏光板(以下、背面側偏光板と称する場合がある)として用いられ得る。この場合、当該背面側偏光板と視認側偏光板とを含む偏光板のセットが提供され得る。視認側偏光板としては、任意の適切な偏光板が採用され得る。視認側偏光板は、代表的には、偏光子(例えば、吸収型偏光子)と、偏光子の少なくとも片側に配置された保護層とを有する。偏光子および保護層は、上記B項に記載のものが用いられ得る。視認側偏光板は、目的に応じて任意の適切な光学機能層(例えば、位相差層、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層)をさらに有していてもよい。偏光板のセットは、視認側偏光板(の偏光子)の吸収軸と背面側偏光板(の偏光子)の吸収軸とが実質的に直交または平行となるようにして液晶セルのそれぞれの側に配置される。
【0063】
G.液晶表示装置
図3は、本発明の1つの実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。液晶表示装置500は、液晶セル200と、液晶セル200の視認側に配置された視認側偏光板110と、液晶セル200の視認側と反対側に配置された背面側偏光板としての本発明の光学部材100と、光学部材100の液晶セル200と反対側に配置されたバックライトユニット300とを有する。光学部材100については、上記A項〜E項で説明したとおりである。視認側偏光板については、上記F項で説明したとおりである。図示例では、視認側偏光板110は、偏光子11と、偏光子の一方の側に配置された保護層12と、偏光子11のもう一方の側に配置された保護層13とを有する。視認側偏光板110および光学部材(背面側偏光板)100は、それぞれの吸収軸が実質的に直交または平行となるようにして配置されている。バックライトユニット300は、任意の適切な構成が採用され得る。例えば、バックライトユニット300は、エッジライト方式であってもよく、直下方式であってもよい。直下方式が採用される場合、バックライトユニット300は、例えば、光源と、反射フィルムと、拡散板とを備える(いずれも図示せず)。エッジライト方式が採用される場合、バックライトユニット300は、導光板と、ライトリフレクターとをさらに備え得る(いずれも図示せず)。
【0064】
液晶セル200は、一対の基板210、210’と、当該基板間に挟持された表示媒体としての液晶層220とを有する。一般的な構成においては、一方の基板210’に、カラーフィルター及びブラックマトリクスが設けられており、他方の基板210に、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線及びソース信号を与える信号線と、画素電極及び対向電極とが設けられている。上記基板210、210’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー等によって制御できる。上記基板210、210’の液晶層220と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜等を設けることができる。
【0065】
1つの実施形態においては、液晶層220は、電界が存在しない状態でホモジニアス配列に配向させた液晶分子を含む。このような液晶層(結果として、液晶セル)は、代表的には、nx>ny=nzの3次元屈折率を示す。なお、本明細書において、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、nyとnzとが実質的に同一である場合も包含する。
【0066】
このような3次元屈折率を示す液晶層を用いる駆動モードの代表例としては、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフィールドスイッチング(FFS)モード等が挙げられる。上記IPSモードは、電圧制御複屈折(ECB:Electrically Controlled Birefringnence)効果を利用し、電界が存在しない状態でホモジニアス配列に配向させた液晶分子を、例えば、金属で形成された対向電極と画素電極とで発生させた基板に平行な電界(横電界ともいう)で応答させる。より具体的には、例えば、テクノタイムズ社出版「月刊ディスプレイ7月号」p.83〜p.88(1997年版)や、日本液晶学会出版「液晶vol.2No.4」p.303〜p.316(1998年版)に記載されているように、ノーマリーブラックモードでは、液晶セルの電界無印加時の配向方向と一方の側の偏光子の吸収軸とを一致させて、上下の偏光板を直交配置させると、電界のない状態で完全に黒表示になる。電界があるときは、液晶分子が基板に平行を保ちながら回転動作することによって、回転角に応じた透過率を得ることができる。なお、上記のIPSモードは、V字型電極又はジグザグ電極等を採用した、スーパー・インプレーンスイッチング(S−IPS)モードや、アドバンスド・スーパー・インプレーンスイッチング(AS−IPS)モードを包含する。
【0067】
上記FFSモードは、電圧制御複屈折効果を利用し、電界が存在しない状態でホモジニアス配列に配向させた液晶分子を、例えば、透明導電体で形成された対向電極と画素電極とで発生させた基板に平行な電界(横電界ともいう)で応答させるものをいう。なお、FFSモードにおける横電界は、フリンジ電界ともいう。このフリンジ電界は、透明導電体で形成された対向電極と画素電極との間隔を、セルギャップより狭く設定することによって発生させることができる。より具体的には、SID(Society for Information Display)2001 Digest,p.484−p.487や、特開2002−031812号公報に記載されているように、ノーマリーブラックモードでは、液晶セルの電界無印加時の配向方向と、一方の側の偏光子の吸収軸とを一致させて、上下の偏光板を直交配置させると、電界のない状態で完全に黒表示になる。電界があるときは、液晶分子が基板に平行を保ちながら回転動作することによって、回転角に応じた透過率を得ることができる。なお、上記のFFSモードは、V字型電極又はジグザグ電極等を採用した、アドバンスド・フリンジフィールドスイッチング(A−FFS)モードや、ウルトラ・フリンジフィールドスイッチング(U−FFS)モードを包含する。
【0068】
上記の電界が存在しない状態でホモジニアス配列に配向させた液晶分子を用いる駆動モード(例えば、IPSモード、FFSモード)は斜めの階調反転がなく、斜め視野角が広いため、本発明に用いられる正面方向に指向した面光源を用いても斜めからの視認性が優れるという利点がある。
【0069】
別の実施形態においては、液晶層220は、電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を含む。このような液晶層(結果として、液晶セル)は、代表的には、nz>nx=nyの3次元屈折率を示す。電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を用いる駆動モードとしては、例えば、バーティカル・アライメント(VA)モードが挙げられる。VAモードは、マルチドメインVA(MVA)モードを包含する。
【0070】
図4は、VAモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。
図4(a)に示すように、VAモードにおける液晶分子は、電圧無印加時には、液晶分子は基板210、210’面に略垂直(法線方向)に配向する。ここで、「略垂直」とは、液晶分子の配向ベクトルが法線方向に対して傾いている場合、すなわち、液晶分子がチルト角を有する場合も包含する。当該チルト角(法線からの角度)は、好ましくは10°以下、さらに好ましくは5°以下、特に好ましくは1°以下である。このような範囲のチルト角を有することにより、コントラストに優れ得る。また、動画表示特性が向上し得る。このような略垂直配向は、例えば、垂直配向膜を形成した基板間に負の誘電率異方性を有するネマチック液晶を配することにより実現され得る。このような状態で光学部材100を通過して液晶層220に入射した直線偏光の光は、略垂直配向している液晶分子の長軸の方向に沿って進む。液晶分子の長軸方向には実質的に複屈折が生じないため入射光は偏光方位を変えずに進み、光学部材100と直交する透過軸を有する視認側偏光板110で吸収される。これにより電圧無印加時において暗状態の表示が得られる(ノーマリブラックモード)。電極間に電圧が印加されると、
図4(b)に示すように、液晶分子の長軸が基板面に平行に配向する。この状態の液晶分子は、光学部材100を通過して液晶層に入射した直線偏光の光に対して複屈折性を示し、入射光の偏光状態は液晶分子の傾きに応じて変化する。所定の最大電圧印加時において液晶層220を通過する光は、例えばその偏光方位が90°回転させられた直線偏光となるので、視認側偏光板110を透過して明状態の表示が得られる。再び電圧無印加状態にすると配向規制力により暗状態の表示に戻すことができる。また、印加電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して視認側偏光板110からの透過光強度を変化させることにより階調表示が可能となる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。実施例における試験および評価方法は以下のとおりである。また、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0072】
(1)屈折率および膜厚の測定方法
エリプソメーター(製品名「ウーラムM2000」、J.A. Woollam株式会社製)を用いて反射測定を行うことにより、屈折率および膜厚を求めた。
(2)プリズムシートから下側偏光板までの総厚みの評価
得られた液晶表示装置のプリズムシートから下側偏光板までの総厚みが500μm以下の場合を○、500μmを超える場合を×として評価した。
(3)液晶表示装置の正面輝度
液晶表示装置を全画面白表示となるようにし、コノスコープ(AUTRONIC MELCHERS株式会社製)にて測定した(単位:cd/m
2)。
(4)液晶表示装置の拡散照度
液晶表示装置の上方に所定の間隔をあけてコノスコープ(AUTRONIC MELCHERS株式会社製)を設置し、全方位において1°おきに輝度Lを測定することにより、光拡散照度(単位:Lx)を算出した。
【0073】
<実施例1>
(第1の位相差層用フィルムの作成)
環状ポリオレフィン系ポリマーを主成分とする市販の高分子フィルム[オプテス株式会社製、商品名「ゼオノアフィルム ZF14−130」(厚み:60μm、ガラス転移温度:136℃)]を、テンター延伸機を用いて、温度158℃で、フィルム幅が元のフィルム幅の3.0倍となるように幅方向に固定端一軸延伸した(横延伸工程)。得られたフィルムは、搬送方向に進相軸を有するネガティブ二軸プレート(3次元屈折率:nx>ny>nz)であった。このネガティブ二軸プレートの面内位相差は118nm、Nz係数は1.16であった。
【0074】
(第2の位相差層用フィルムの作成)
スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァ・ケミカル・ジャパン株式会社製、製品名「ダイラーク D232」)のペレット状樹脂を、単軸押出機とTダイを用いて、270℃で押出し、シート状の溶融樹脂を冷却ドラムで冷却して厚み100μmのフィルムを得た。このフィルムを、ロール延伸機を用いて、温度130℃、延伸倍率1.5倍で、搬送方向に自由端一軸延伸して、搬送方向に進相軸を有する位相差フィルムを得た(縦延伸工程)。得られたフィルムを、テンター延伸機を用いて、温度135℃で、フィルム幅が前記縦延伸後のフィルム幅の1.2倍となるように幅方向に固定端一軸延伸して、厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た(横延伸工程)。得られたフィルムは、搬送方向に進相軸を有するポジティブ二軸プレート(3次元屈折率:nz>nx>ny)であった。このポジティブ二軸プレートの面内位相差は20nm、厚み位相差Rthは−80nmであった。
【0075】
(位相差層付偏光板の作成)
ポリビニルアルコールを主成分とする高分子フィルム[クラレ株式会社製、商品名「9P75R」(厚み:75μm、平均重合度:2,400、ケン化度99.9モル%)]を水浴中に1分間浸漬させつつ搬送方向に1.2倍に延伸した後、ヨウ素濃度0.3重量%の水溶液中で1分間浸漬することで、染色しながら、搬送方向に、全く延伸していないフィルム(原長)を基準として3倍に延伸した。次いで、この延伸フィルムを、ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%の水溶液中に浸漬しながら、搬送方向に、原長基準で6倍までさらに延伸し、70℃で2分間乾燥することにより、偏光子を得た。
一方、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ株式会社製、製品名「KC4UYW」、厚み:40μm)の片面に、アルミナコロイド含有接着剤を塗布し、これを上記で得られた偏光子の片面に両者の搬送方向が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層した。なお、アルミナコロイド含有接着剤は、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度1200、ケン化度98.5モル%、アセトアセチル化度5モル%)100重量部に対して、メチロールメラミン50重量部を純水に溶解し、固形分濃度3.7重量%の水溶液を調製し、この水溶液100重量部に対して、正電荷を有するアルミナコロイド(平均粒子径15nm)を固形分濃度10重量%で含有する水溶液18重量部を加えて調製した。続いて、偏光子の反対側の面に、上記アルミナコロイド含有接着剤を塗布した第1の位相差層用フィルムを、これらの搬送方向が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層し、その後55℃で6分間乾燥させた。乾燥後の積層体の第1の位相差層の表面に、第2の位相差層用フィルムを、アクリル系粘着剤(厚み5μm)を介して、これらの搬送方向が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層することにより、位相差層付偏光板(第2の位相差層/第1の位相差層/偏光子/TACフィルム)を得た。
【0076】
(プリズムシート)
市販のノート型PC(SONY株式会社製、商品名「VAIO TypeS」)を分解し、バックライト側のプリズムシートを取り出し、プリズム部と逆側の面に存在している拡散層を酢酸エチルで除去し、拡散層を有しないプリズムシートを本実施のプリズムシートとして準備した。
【0077】
(低屈折率層)
プリズムシートのプリズム部と逆側の面に、平均粒径40nm前後の球状の中空シリカ粒子がメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶剤分散された塗工液(日揮触媒化成株式会社製、商品名「スルーリア4320」)をコーティングし、80℃で1分間乾燥することにより得られる層を低屈折率層とした。この層の膜厚及び屈折率を評価したところ、膜厚400nm、屈折率1.19であった。
【0078】
(光学部材の作成)
上記で得られた位相差層付偏光板と上記で得られた低屈折率層/プリズムシートの構成を有する積層体とをアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。その結果、
図1に示すような偏光板/低屈折率層/プリズムシートの構成を有する光学部材を得た。なお、プリズムシートの単位プリズムの稜線方向と偏光板の透過軸とは平行となるように一体化した。したがって、プリズムシートの単位プリズムの稜線方向と偏光板の吸収軸とが直交するように一体化した。このような配置関係を有する光学部材において、低屈折率層の厚みは400nmであった。
【0079】
(本発明の光学部材を用いた液晶表示装置の作製)
IPSモードの液晶表示装置(Apple株式会社製、商品名「iPad2」)から液晶パネルを取り出し、当該液晶パネルから偏光板等の光学部材を取り除き、液晶セルを取り出した。液晶セルは、その両表面(それぞれのガラス基板の外側)を洗浄して用いた。この液晶セルの上側(視認側)に市販の偏光板(日東電工株式会社製、製品名「CVT1764FCUHC」)を貼り付けた。さらに、偏光サングラスをかけて表示装置を見た際の視認性を向上させるために、上記偏光板の上に、λ/4板(カネカ株式会社製、商品名「UTZ−フィルム#140」)の遅相軸が偏光板の吸収軸と45°の角度をなすように貼り付けた。さらに、上記で得られた光学部材を、下側(背面側)偏光板として、アクリル系粘着剤を介して液晶セルの下側(背面側)に貼り付けて、液晶表示パネルを得た。このとき、それぞれの偏光板の透過軸が互いに直交するように貼り付けた。
一方、バックライトユニットとして、上記市販のノート型PC(SONY株式会社製、商品名「VAIO TypeS」)から取り出したバックライトユニットを用いた。上記で得られた液晶表示パネルにこのバックライトユニットを組み込み、
図3に示すような液晶表示装置を作製した。
【0080】
<実施例2>
低屈折率層の厚みが800nmとなるように光学部材を作成した以外は、実施例1と同様にして、本発明の光学部材を用いた液晶表示装置を作製した。
【0081】
<実施例3>
下記のように低屈折率層を得た以外は、実施例1と同様にして光学部材を用いた液晶表示装置を作製した。すなわち、プリズムシートのプリズム部と逆側の面に、スプリングバック現象を利用してエアロゲル層を生成し、低屈折率層とした。エアロゲル層の生成方法は、特開2006−011175号公報の実施例1に記載の手順にしたがった。
【0082】
<実施例4>
下記のように低屈折率層を得た以外は、実施例1と同様にして光学部材を用いた液晶表示装置を作製した。すなわち、プリズムシートのプリズム部と逆側の面に、実施例1で用いた中空シリカ粒子に代えて、針状のシリカ粒子が分散された材料をコーティングすることにより得られる多孔質層を低屈折率層とした。
【0083】
<実施例5>
下記のように低屈折率層を得た以外は、実施例1と同様にして光学部材を得た。この光学部材を用いて液晶表示装置を作製した。すなわち、プリズムシートのプリズム部と逆側の面に、下記のようにして低屈折率層を形成した。ジメチルスルホキシド(DMSO)2.2gにケイ素化合物の前駆体であるメチルトリメトキシシラン(MTMS)を0.95g溶解させた混合液に、0.01mol/Lのシュウ酸水溶液を0.5g添加し、室温で30分撹拌を行うことでMTMSを加水分解して、トリス(ヒドロキシ)メチルシランを生成した。その後、DMSO 5.5gに、28%濃度のアンモニア水0.38gおよび純水0.2gを添加した後、上記加水分解処理した混合液をさらに添加し、室温で15分撹拌することで、トリス(ヒドロキシ)メチルシランのゲル化を行い、ゲル状ケイ素化合物を得た。上記ゲル化処理を行った混合液を、そのまま40℃で20時間インキュベートして熟成処理を行った。次に、上記熟成処理したゲル状ケイ素化合物を、スパチェラを用いて数mm〜数cmサイズの顆粒状に砕いた。そこに、イソプロピルアルコール(IPA)40gを添加し、軽く撹拌した後、室温で6時間静置して、ゲル中の溶媒および触媒をデカンテーションした。同様のデカンテーション処理を3回繰り返し、溶媒置換を完了した。そして、上記混合液中のゲル状ケイ素化合物を粉砕処理した。粉砕処理は、ホモジナイザー(商品名「UH−50」、エスエムテー社製)を使用し、5cm
3のスクリュー瓶に、ゲル1.18g、IPA 1.14gを秤量した後、50W、20kHzの条件で2分間の粉砕を行った。上記粉砕処理によって、上記混合液中のゲル状ケイ素化合物が粉砕され、その結果、上記混合液は粉砕物のゾル液となった。上記混合液に含まれる粉砕物の粒度バラツキを示す体積平均粒子径を確認したところ、0.5μm〜0.7μmであった。さらに、0.3重量%のKOH水溶液を用意し、前記ゾル液0.5gに対して0.02gのKOHを添加して、塗工液を調製した。プリズムシートのプリズム部と逆側の面に上記塗工液をコーティングし、80℃で1分間乾燥することにより得られる層を低屈折率層とした。この層の膜厚及び屈折率を評価したところ、膜厚1000nm、屈折率1.07であった。
【0084】
<比較例1>
位相差層付偏光板と逆プリズムシートとをアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた以外は、実施例1と同様にして光学部材を用いた液晶表示装置を作製した。
【0085】
<比較例2>
位相差層付偏光板と逆プリズムシートとを、低屈折率コーティング剤であるフッ素混合アクリルハードコート(ダイキン工業株式会社製、商品名「AR110」)を塗工し、80℃で1分間乾燥させたのち、300mJの紫外線を当てて低屈折率層としたこと以外は、実施例1と同様にして光学部材を用いた液晶表示装置を作製した。
【0086】
<比較例3>
下記のように低屈折率層を得た以外は、実施例1と同様にして光学部材を用いた液晶表示装置を作製した。すなわち、プリズムシートのプリズム部と逆側の面に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52)25gに、塗工液(商品名「スルーリア4320」)375g、及び光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)5gを添加した混合液を塗工し、80℃で1分間乾燥した後に300mJの紫外線を照射して塗工膜を作製した。この塗工膜の屈折率は1.34、膜厚は1000nmであった。
【0087】
<比較例4>
逆プリズムシートをバックライトユニットに組み込み、位相差層付偏光板とは別部材として提供したこと以外は実施例1と同様にしてプリズムシート別置きの液晶表示装置を作製した。
【0088】
実施例および比較例で得られた液晶表示装置を、上記(1)〜(4)の評価に供した。結果を表1に示す。ただし、表1中の正面輝度比および拡散照度比は、それぞれ比較例1の正面輝度および拡散照度を100%とした場合の比を表す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1から明らかなように、偏光板とプリズムシートとを一体化した光学部材を背面側偏光板として用いた液晶表示装置において、本発明の実施例の光学部材を背面側偏光板として用いた液晶表示装置は、従来の光学部材を用いた場合よりも高い輝度を実現することができる。さらに、本発明の実施例の光学部材を背面側偏光板として用いた液晶表示装置は、偏光板とプリズムシートとを別置きで用いる場合と異なり、プリズムシートと導光板とがこすれて導光板が傷つくことが無いので、機械的強度に優れる。さらに、液晶表示装置の総厚みを薄くすることができる。