(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明に至る過程)
本発明者らは、開発の過程において、遮蔽マスクを用いた蒸着法を行う際、
図17に示す方法を用いている。
図17は、有機EL材料を蒸着法により形成する比較例を示す図である。
【0011】
図17において、基板151の上には、画素電極152及び絶縁膜153が設けられている。絶縁膜153は、画素電極152の端部を覆うように設けられている。そのため、画素電極152の上面の一部は、露出した状態にある。絶縁膜153は、有機EL素子の発光領域を画定する役割を果たし、一般的には、バンク又はリブと呼ばれる。
図17では、絶縁膜153は、バンクとして機能する第1領域153aと、遮蔽マスク154を支持するマスク受け部材として機能する第2領域153bとを有する。
【0012】
蒸着源(図示せず)としては、通常、線状の蒸着源が用いられる。線状の蒸着源は、一方向(長手方向に直交する方向)に走査され、基板151の上方を通過しつつ蒸着を行う。
図17において、矢印155は、蒸着源から蒸散した蒸着材料の進行方向を示している。このとき、
図17に示されるように、蒸着材料は、遮蔽マスク154に遮られて局所的に画素電極152又は第1領域153aの上に到達する。そして、遮蔽マスク154の影になって蒸着材料が十分に成膜されない領域が生じる。ここでは、そのような領域を「シャドウ領域」と呼ぶ。
【0013】
図17に示される第1シャドウ領域161は、遮蔽マスク154の厚さ165とテーパー角θに依存して蒸着が遮られる領域である。第2シャドウ領域162は、画素電極152の表面に対する第1領域153aの高さ166及び第2領域153bの高さ167に起因して蒸着が遮られる領域である。つまり、
図15に示す蒸着法では、第1シャドウ領域161と第2シャドウ領域162の分だけ蒸着材料が十分に付着しない領域が生じることとなる。
【0014】
そこで、本発明者らは、目的の一として上述のシャドウ領域を低減するために、異物の影響を考慮しつつ絶縁膜153の高さを低減することを検討した。本発明は、その検討の結果として得た知見に基づくものである。
【0015】
(実施形態の説明)
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0016】
また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0018】
また、本明細書および特許請求の範囲において、「上」及び「下」とは、基板における発光素子が形成される側の面(以下、単に「表面」という。)を基準とした相対的な位置関係を指す。例えば、本明細書では、基板の表面から遠ざかる方向を「上」と言い、基板の表面に近づく方向を「下」と言う。
【0019】
(第1実施形態)
<有機EL表示装置の構成>
図1は、第1実施形態における有機EL表示装置100の概略の構成を示す斜視図である。本実施形態における有機EL(エレクトロルミネセンス)表示装置100は、基板101の上に、複数の画素102aを含む表示部102、表示部102を囲む周辺部103、表示部102に対して外部からの信号を供給する端子部104、表示部102と端子部104との間に配置された駆動回路105、及び端子部104に対して外部からの信号を伝達するフレキシブルプリント回路基板106を有する。
【0020】
表示部102は、画像を表示する部位である。表示部102に配置された各画素102aは、各々が発光部位を有する。つまり、複数の画素102aの集合体が表示部102として機能する。各画素102aには、駆動素子として、後述する薄膜トランジスタ70を用いた回路が形成されている。本実施形態では、各画素102aに設けられた薄膜トランジスタ70を制御することにより、各画素102aに設けられた発光素子90の発光制御を行う構成となっている。
【0021】
端子部104は、表示部102又は駆動回路105に接続された配線が集まって形成された配線群で構成され、外部からの信号を供給する端子として機能する。外部からの信号は、端子部104に接続されたフレキシブルプリント回路基板106から伝達される。端子部104とフレキシブルプリント回路基板106との接続は、公知の異方性導電膜を用いた方法を用いることができる。
【0022】
駆動回路105は、各画素102aに供給する制御信号及びデータ信号を出力する回路である。具体的には、駆動回路105は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路で構成することができる。なお、本実施形態では、駆動回路105を用いて各画素102aを制御する例を示したが、周辺部103に、薄膜トランジスタを用いて走査線ドライバ又はデータ信号線ドライバを設け、これらに対して制御信号又はデータ信号を供給する構成とすることも可能である。
【0023】
フレキシブルプリント回路基板106は、駆動回路105と外部回路との間の信号の送受信を行うために使用される回路基板である。フレキシブルプリント回路基板106は、可撓性を有する樹脂基板上に複数の配線を配置した構成を有し、端子部104上に接着されて駆動回路105と電気的に接続される。
図1において、駆動回路105は基板101上に実装されているが、駆動回路105は、フレキシブルプリント回路基板106上に配置されてもよい。
【0024】
図2は、第1実施形態の有機EL表示装置100における概略の構成を示す断面図である。具体的には、
図2は、有機EL(エレクトロルミネセンス)表示装置100における隣接する画素102aの間の境界付近を切断した断面を示す図である。
【0025】
図2において、基板101上には、薄膜トランジスタ70及び第1保持容量81が設けられている。薄膜トランジスタ70は、いわゆるトップゲート型の薄膜トランジスタである。しかし、これに限らず、どのようなタイプの薄膜トランジスタを設けてもよい。
図2に示す薄膜トランジスタ70は、発光素子90に対して電流を供給する駆動用トランジスタとして機能する。
【0026】
なお、薄膜トランジスタ70及び第1保持容量81の構造は、公知の構造であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0027】
薄膜トランジスタ70は、絶縁膜11で覆われている。絶縁膜11は、薄膜トランジスタ70及び第1保持容量81の形状に起因する起伏を平坦化する平坦化膜として機能する。本実施形態では、絶縁膜11は樹脂材料で形成しており、樹脂材料としてアクリル樹脂又はポリイミド樹脂を用いるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本実施形態の有機EL表示装置100において、絶縁膜11は、開口部13を有する。開口部13は、絶縁膜11の一部を除去することにより形成される。このとき、開口部13は、薄膜トランジスタ70のドレイン電極70gの一部が露出するように設けられる。
【0029】
このような開口部13の底面から絶縁膜11の上面にかけて、透明電極15が設けられている。本実施形態では、透明電極15として、ITO(Indium Tin Oixde)等の金属酸化物で構成される透明導電膜をパターン化したものを用いるが、これに限定されるものではない。このとき、透明電極15は、開口部13によって露出した上述のドレイン電極70gに接続されている。
【0030】
さらに、絶縁膜11の上面には、第2保持容量82の下部電極17が設けられている。本実施形態の下部電極17は、発光素子90の下方に設けられている。本実施形態の発光素子90は、上方に向かって光を出射する構成となっているため、発光素子90の下方の空間を利用して第2保持容量82を形成することが可能である。
【0031】
なお、前述の透明電極15は、下部電極17を形成する際に、薄膜トランジスタ70のドレイン電極70gをエッチングガスから保護する保護膜としても機能する。
【0032】
透明電極15及び下部電極17の上には、絶縁膜19が設けられている。本実施形態では、絶縁膜19は、窒化シリコン膜である。しかし、これに限らず、酸化シリコン膜などの他の無機絶縁膜であってもよい。絶縁膜19には、透明電極15の一部を露出させる開口部21が設けられている。
【0033】
絶縁膜19の上には、互いに離間して画素電極23a及び23bが設けられている。なお、
図2に示される画素電極23bは、画素電極23aを含む画素に隣接する、同じ発光色の画素に含まれる画素電極である。ここでは、説明を簡単にするため、画素電極23aに着目して説明するが、画素電極23bも同様の構成を有している。
【0034】
画素電極23aは、絶縁膜19に設けられた開口部21を介して透明電極15に接続される。すなわち、画素電極23aは、透明電極15を介して薄膜トランジスタ70及び第1保持容量81に接続されている。また、画素電極23aは、第2保持容量82の上部電極としても機能すると共に、発光素子90の陽極(アノード電極)としても機能する。このように、画素電極23aは、絶縁膜11の上方に位置する部分と開口部13の内部に位置する部分とを有する。
【0035】
なお、本実施形態では、画素電極23aとして、ITO等の透明導電膜で銀膜を挟んだ積層構造の電極を用いるが、これに限られるものではない。ただし、発光素子90から発した光が上方に出射するように構成するためには、画素電極23aは、反射性を有する導電膜を含むことが好ましい。
【0036】
また、本実施形態では、第2保持容量82が、下部電極として機能する下部電極17、絶縁膜19、及び上部電極として機能する画素電極23aを含む。本実施形態の第2保持容量82は、絶縁膜19が誘電率の比較的高い窒化シリコン膜であるため、大きな容量を確保しやすいという利点を有する。さらに、発光素子90の下方の空間を有効活用することができるため、占有面積を大きく確保しやすい。
【0037】
画素電極23a及び23bは、その一部が絶縁膜25に覆われている。具体的には、絶縁膜25は、互いに離間して設けられた画素電極23a及び23bの端部を覆うと共に、画素電極23a及び23bそれぞれの上面の一部を露出させる。ただし、本実施形態では、平坦化膜として機能する絶縁膜11に予め開口部13が設けられているため、開口部13の内部を覆うように絶縁膜25が設けられる。換言すれば、平面的に見て、絶縁膜11は、後述する第1領域25a及び第2領域25bを有する領域に開口部13を有するとも言える。絶縁膜25としては、例えば、感光性アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の樹脂材料を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0038】
本実施形態では、絶縁膜25が発光素子90の発光領域を画定するバンクとしての役割を果たすと共に、有機EL材料を蒸着する際の遮蔽マスクを支持するマスク受け部材としても機能する。絶縁膜25の構成の詳細については、後述する。
【0039】
画素電極23a及び23bの上面のうち絶縁膜25に重畳しない領域には、それぞれ有機EL層27a及び27bが設けられる。本実施形態では、有機EL層27a及び27bは、有機EL材料を蒸着法により成膜して形成する。有機EL層27a及び27bは、少なくとも発光層を含み、その他に、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層又は正孔輸送層を含むことができる。
【0040】
なお、本実施形態では、画素ごとに発光色の異なる発光層を設けることができる。発光層としては、例えば、赤色、緑色又は青色に発光する有機EL材料を含む発光層を用いることができる。本実施形態では、有機EL層27a及び27bに含まれる発光層として、緑色に発光する有機EL材料を含む発光層を用いる。しかし、有機EL層27a及び27bのすべてを画素ごとに設けることは必須の構成ではなく、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層又は正孔輸送層といった機能層に関しては、複数の画素にわたって設ける構成としてもよい。
【0041】
有機EL層27の上には、アルカリ金属を含む導電膜で構成される共通電極29が設けられている。アルカリ金属としては、例えばマグネシウム(Mg)、リチウム(Li)などを用いることができる。本実施形態では、アルカリ金属を含む導電膜として、マグネシウムと銀の合金であるMgAg膜を用いる。共通電極29は、発光素子90の陰極(カソード電極)として機能する。また、共通電極29は、複数の画素にわたって設けられる。
【0042】
有機EL層27からの出射光を上面側、つまり共通電極29側に取り出すトップエミッション型の表示装置とする場合は、共通電極29には透過性が要求される。そのため、前述のような材料を用いる場合、共通電極29に対して透過性を付与するために、その膜厚を、出射光が透過する程度に薄くする。具体的には、共通電極29の膜厚を10nm〜30nm程度とすることで透過性を付与することができる。
【0043】
共通電極29の上には、封止膜31が設けられている。封止膜31は、外部からの水分等の侵入を防ぎ、有機EL層27及び共通電極29の劣化を防ぐ役割を果たす。
図2において詳細には図示していないが、本実施形態では、封止膜31として、窒化シリコン膜で樹脂膜を挟んだ三層構造の積層膜を用いるが、これに限られるものではない。この場合、封止膜31に含まれる樹脂膜が、絶縁膜11に設けられた開口部13に起因する起伏を平坦化する役割をも果たす。
【0044】
ここで、絶縁膜25の構成について
図2及び
図3を用いて説明する。
図3は、第1実施形態の有機EL表示装置100における表示部102の一部を拡大した様子を示す平面図である。具体的には、表示部102のうち、隣接する画素電極23a及び23bに着目した拡大図である。
【0045】
前述のとおり、絶縁膜25は、画素電極23a及び23bの端部を覆うように設けられ、画素電極23a及び23bの上面の一部を露出させている。
図3において、この画素電極23a及び23bのうち絶縁膜25に重畳しない部分(露出した部分)を露出面23a’及び23b’とする。露出面23a’及び23b’は、発光素子90の発光領域に対応する。
【0046】
このとき、
図2及び
図3に示されるように、絶縁膜25は、平面的に見て、露出面23a’及び23b’の周囲に設けられた第1領域25aと、隣接する第1領域25aの間に設けられた窪み部25cを含む第2領域25bとを有する。本実施形態では、
図3に示されるように、平面的に見て、第1領域25aが、露出面23a’及び23b’の全周にわたって設けられている。しかし、これに限らず、第1領域25aは、露出面23a’及び23b’の周囲に島状に設けられていてもよい。
【0047】
また、
図2に示されるように、本実施形態では、第1領域25aにおける絶縁膜25の上面が、画素電極23a及び画素電極23bの上面よりも上に位置する。さらに、第1領域25aにおける絶縁膜25の上面には、露出面23a’及び露出面23b’に沿って溝部25dが設けられている。
図3においては、溝部25dが露出面23a’及び23b’の全周にわたって設けられているが、これに限らず、露出面23a’及び23b’の周囲に島状に設けられていてもよい。なお、溝部25dは、必要に応じて設ければよく、省略することも可能である。
【0048】
以上のように、本実施形態の有機EL表示装置100は、
図2及び
図3を用いて説明した構成を有する絶縁膜25を含む構造を有している。そして、この絶縁膜25が、発光素子90の発光領域を画定するバンクとしての役割を果たすと共に、有機EL材料を蒸着する際の遮蔽マスクを支持するマスク受け部材としても機能する。
【0049】
<有機EL表示装置の製造方法>
次に、本実施形態における有機EL表示装置100の製造方法について
図4〜9を用いて説明する。
図4〜9は、本実施形態における有機EL表示装置100の製造方法を示す断面図である。
【0050】
まず、
図4に示されるように、基板101上に薄膜トランジスタ70及び第1保持容量81を形成する。薄膜トランジスタ70の形成方法は、特に限定されず、公知の方法で形成することができる。また、基板101として、本実施形態ではガラス基板を用いるが、他の絶縁基板を用いてもよい。
【0051】
なお、基板101として、樹脂材料で構成されるフレキシブル基板を用いる場合は、別の支持基板上にポリイミド等の樹脂膜を形成し、その樹脂膜の上に薄膜トランジスタ70及び第1保持容量81を形成する。そして、最終的に
図2に示した封止膜31を形成した後に支持基板を剥離すればよい。
【0052】
本実施形態では、基板101上に下地絶縁膜(図示せず)を設け、その上に半導体膜70aを形成する。次に、半導体膜70aを覆うゲート絶縁膜70bを形成する。ゲート絶縁膜70bを形成したら、ゲート絶縁膜70b上の、半導体膜70aと重畳する領域にゲート電極70cを形成する。このとき、ゲート電極70cの形成と同時に、第1保持容量81の上部電極として機能する容量電極70dを形成する。容量電極70dは、ゲート絶縁膜90bを介して半導体膜90aと重畳することにより、第1保持容量81を構成する。
【0053】
そして、ゲート電極70c及び容量電極70dを覆う層間絶縁膜70eを形成し、その後、層間絶縁膜70eに形成されたコンタクトホールを介して半導体膜70aに接続されるソース電極70f及びドレイン電極70gを形成する。こうして、基板101上に、薄膜トランジスタ70及び第1保持容量81が形成される。
【0054】
薄膜トランジスタ70及び第1保持容量81を形成した後、
図5に示されるように、絶縁膜11を形成する。本実施形態では、絶縁膜11を構成する材料として、ポジ型の感光性を有するアクリル樹脂材料を用いる。より詳細には、絶縁膜11を構成するアクリル樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィにより開口部13を形成する領域を選択的に感光させてパターニングを行い、不要なアクリル樹脂材料を除去する。これにより、エッチング処理を行うことなく、開口部13を有する絶縁膜11を形成することができる。なお、
図5に示されるように、開口部13は、薄膜トランジスタ70のドレイン電極70gを露出するように形成される。
【0055】
開口部13を形成した後、開口部13の底面から絶縁膜11の上面にかけてITO等の金属酸化物材料で構成される透明電極15を形成する。透明電極15は、絶縁膜11を覆うように形成されたITO等の透明導電膜をフォトリソグラフィによりパターン化して形成する。このとき、透明電極15は、薄膜トランジスタ70のドレイン電極70gの露出した部分を覆うように形成する。
【0056】
透明電極15を形成した後、
図6に示されるように、第2保持容量82の下部電極17を形成する。下部電極17を構成する導電性材料としては、透明電極15を構成する金属酸化物材料とのエッチング選択比の大きな材料を用いることが好ましい。このとき、透明電極15は、薄膜トランジスタ70のドレイン電極70gを覆うことにより、下部電極17を構成する際に使用するエッチングガス(又はエッチング溶液)からドレイン電極70gを保護する役割を果たす。
【0057】
次に、窒化シリコンで構成される絶縁膜19を形成し、フォトリソグラフィによる透明電極15の一部を露出させる開口部21を形成する。絶縁膜19は、第2保持容量82を構成する誘電体として機能する。
【0058】
絶縁膜19に開口部21を形成したら、画素電極23a及び23bを形成する。このとき、画素電極23aは、開口部21を介して透明電極15に接続される。換言すれば、画素電極23aは、透明電極15を介して薄膜トランジスタ70及び第1保持容量81に接続される。図示はされないが、画素電極23bも同様の構成を有している。
【0059】
画素電極23a及び23bを形成したら、次に、
図7に示されるように、絶縁膜25を形成する。本実施形態では、絶縁膜25を構成する材料として、感光性のアクリル樹脂材料を用いる。具体的には、まず、感光性のアクリル樹脂材料をスピンコート法等により塗布する。このとき、開口部13が樹脂材料で完全に埋まるように塗布を行う。そして、塗布された樹脂材料の上面が、画素電極23a及び23bの上面よりも上に位置するように膜厚を制御する。換言すれば、画素電極23a及び23bの上面に一定の厚さで樹脂材料が塗布されるように制御する。
【0060】
感光性のアクリル樹脂材料を塗布した後、紫外光の照射により選択的に感光させる。本実施形態では、ポジ型の感光性アクリル樹脂材料を用いるため、感光した領域が現像液により除去される。さらに、本実施形態では、紫外光を照射する際、ハーフトーンマスクを用いる。これにより、紫外光による感光量を領域ごとに異ならせることが可能であるため、膜厚の異なる領域を複数形成することができる。このように、ハーフトーンマスクを用いることにより、
図2及び
図3を用いて説明した構成を有する絶縁膜25を一度の感光処理で形成することができる
【0061】
ただし、これに限らず、遮光マスクを用いて領域ごとに感光させてもよい。また、絶縁膜25として、非感光性の樹脂材料を用い、フォトリソグラフィにより
図2及び
図3を用いて説明した形状の絶縁膜25を形成しても構わない。
【0062】
以上のように、本実施形態では、樹脂材料を用いることにより、
図2及び
図3を用いて説明した構成を有する絶縁膜25を形成する。このとき、絶縁膜25は、
図2及び
図3に示されるように、平面的に見て、画素電極23aの露出面23a’及び画素電極23bの露出面23b’の周囲に設けられた第1領域25aと、隣接する第1領域25aの間に設けられた窪み部25cを含む第2領域25bとを有する。
【0063】
また、前述のように、塗布された樹脂材料の上面が、画素電極23a及び23bの上面よりも上に位置するように膜厚を制御することにより、第1領域25aにおける絶縁膜25の上面が、画素電極23a及び画素電極23bの上面よりも上に位置するように、絶縁膜25を形成することができる。
【0064】
また、ハーフトーンマスクを用いて感光量の小さい領域を形成することにより、
図3に示されるように、第1領域25aにおける絶縁膜25の上面に、露出面23a’及び露出面23b’に沿って溝部25dを形成することができる。
【0065】
次に、
図8に示されるように、絶縁膜25の第1領域25aをマスク受け部材として利用し、遮蔽マスク60を基板101の上方に配置する。
図8では、開口部13の上方にのみ遮蔽マスク60が配置されているように見えるが、実際には、遮蔽マスク60は、複数の画素に対応する位置にそれぞれ開口部を有する1枚の板状部材である。例えば、
図8において、遮蔽マスク60は、画素電極23aの上方に開口部61aを有し、画素電極23bの上方に開口部61bを有する。
【0066】
ここで、
図8において、遮蔽マスク60の上面及び下面から延長された破線は、遮蔽マスク60における開口部61a及び61b以外の部分の位置を示している。
図8では、同じ発光色の隣接する画素を図示しているが、当然のことながら、異なる発光色の画素については、遮蔽マスク60で覆われている。この場合、異なる発光色の画素については、遮蔽マスク60と画素電極(図示せず)との間に距離Xに相当する間隙がある。つまり、第1領域25aの上面(すなわち、遮蔽マスク60の底面)と異なる発光色の画素が有する画素電極の上面との間の距離は、距離Xに等しい。そのため、
図8には図示されていないが、異なる発光色の画素(ここでは、赤色及び青色に発光する画素)が有する画素電極の上面は、遮蔽マスク60に接触することなく遮蔽マスク60によって覆われている。
【0067】
また、
図8において、絶縁膜25の第2領域25bには、窪み部25cと遮蔽マスク60との間に空間62が形成される。これにより、仮に、異物(例えばパーティクル等)が基板101上にあったとしても、遮蔽マスク60を用いた蒸着時における異物の影響を低減することができる。具体的には、遮蔽マスク60と基板101との間に異物が挟まれて蒸着に影響を及ぼしたり、基板101上の膜に傷を与えたりする可能性を低減することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、絶縁膜25の第1領域25aに、
図3に示されるように溝部25dを設けている。本実施形態では、
図8に示されるように、溝部25dの上に開口部61a及び61bの縁部が位置するように遮蔽マスク60を配置する。溝部25dが無い場合、開口部61a及び61bの縁部と絶縁膜25との境界部分に付着した蒸着材料が、遮蔽マスク60を取り除くときに脱落してパーティクルを発生する虞がある。
【0069】
しかしながら、本実施形態では、その縁部が溝部25dの上にあるため、前述の境界部分に蒸着材料が付着することを防ぐことができる。したがって、遮蔽マスク60を取り除く際に、パーティクルの発生する可能性を低減することができる。なお、本実施形態において、溝部25dは必須の構造ではなく、適宜省略することも可能である。
【0070】
前述のように遮蔽マスク60を配置したら、蒸着源を基板101上で走査して、有機EL材料の蒸着処理を行う。これにより、遮蔽マスク60の開口部61a及び61bの内側、すなわち画素電極23a及び23bの上には有機EL層27a及び27bが形成される。本実施形態では、緑色に発光する有機EL材料を蒸着して有機EL層27a及び27bを形成する。他の発光色の有機EL材料を蒸着する際は、他の遮蔽マスク60を用意するか、遮蔽マスク60の位置をずらして蒸着処理を行えばよい。
【0071】
以上のように、遮蔽マスク60を用いて有機EL層27a及び27bを形成したら、
図9に示されるように、発光素子90の陰極として機能する共通電極29を形成する。本実施形態では、共通電極29としてMgAg膜を用いる。このようなアルカリ金属を含む導電膜は、水分等に弱いため、有機EL層27a及び27bの蒸着と共通電極29の蒸着とを大気開放せずに実行することが好ましい。この場合、真空を維持したまま連続的に蒸着処理を行うことが好ましいが、これに限らず、窒素雰囲気等の不活性雰囲気を維持したままに連続的に蒸着処理を行うことも有効である。
【0072】
最後に、窒化シリコン膜、アクリル樹脂材料で構成される樹脂膜及び窒化シリコン膜をこの順に積層して封止膜31を形成する。このとき、封止膜31の一部を構成する樹脂膜は、絶縁膜11に形成された開口部13に起因する起伏を平坦化することができる。さらに、パーティクル等の異物が共通電極29の上に存在していたとしても、樹脂膜によって起伏を平坦化できるため、樹脂膜の上に形成される窒化シリコン膜が異物の影響で剥がれたりカバレッジ不良を起こしたりする可能性を低減することができる。
【0073】
以上のように、本実施形態では、絶縁膜25が、発光素子90の発光領域を画定するバンクとしての役割を果たすと共に、有機EL材料を蒸着する際の遮蔽マスクを支持するマスク受け部材としても機能する。そして、絶縁膜25の第2領域25bには窪み部25cが設けられているため、遮蔽マスク60と絶縁膜25との間に空間62を確保することができる。その結果、遮蔽マスク60を用いた有機EL材料の蒸着時における異物の影響を低減することができる。
【0074】
さらに、絶縁膜25の第1領域25aを画素電極23a及び23bの端部を覆うバンクとして機能させると共に、遮蔽マスク60を支持するマスク受け部材としても機能させることにより、画素電極23a及び23bと遮蔽マスク60の開口部61a及び61bとの間の距離Xを近づけることができる。その結果、バンクの高さ及びマスク受け部材の高さに起因するシャドウ領域(蒸着材料が十分に成膜されない領域)の発生を抑えることが可能である。
【0075】
(第2実施形態)
第2実施形態では、絶縁膜25の構成を第1実施形態とは異なるものとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0076】
図10は、第2実施形態における有機EL表示装置200の概略の構成を示す断面図である。
図10において、絶縁膜35は、第1領域35a、第2領域35b、窪み部35c、及び溝部35dを含む。このとき、第1領域35aにおける絶縁膜35の上面が、画素電極23a及び画素電極23bの上面と同一の面内に位置する。ここで、本明細書において、「同一の面内」とは、完全に一致する場合だけでなく、技術常識に照らして、概ね一致すると言える程度に一致することも含むものとする。
【0077】
本実施形態によれば、第1実施形態に比べて、画素電極23a及び23bと遮蔽マスク60の開口部61a及び61bとの間の距離Xをさらに近づけることができる。
【0078】
ただし、本実施形態の場合、そのまま遮蔽マスク60を基板101上に配置すると、他色となる発光素子を形成する画素電極にて、遮蔽マスク60と画素電極23a及び23bが接してしまう。そのため、本実施形態の場合、遮蔽マスク60の、基板101に面する側に凹部を設けたり凸部を設けたりする等の改良を加えることが望ましい。
【0079】
図11A及び
図11Bは、第2実施形態における有機EL表示装置200の製造工程の一例を示す断面図である。
図11Aに示される遮蔽マスク63は、開口部63aに加えて、リセス63cを有する点で第1実施形態に用いた遮蔽マスク60と異なる。また、
図11Bに示される遮蔽マスク65は、開口部65aに加えて、支持部65cを有する点で第1実施形態に用いた遮蔽マスク60と異なる。なお、
図11A及び
図11Bでは、画素電極23aが蒸着対象であり、画素電極23bが蒸着対象ではない場合を示している。
【0080】
前述のように、本実施形態の有機EL表示装置200は、第1領域35aにおける絶縁膜35の上面が、画素電極23a及び23bの上面と同一の面内に位置する。そのため、本実施形態で使用する遮蔽マスク63及び65は、それぞれリセス63cの深さ又は支持部65cの高さの分だけ画素電極23bの上面から離間させて用いられる。例えば、
図11Aに示される遮蔽マスク63は、平面視において画素電極23bと重畳する部分にリセス63cを有する。また、
図11Bに示される遮蔽マスク65は、平面視において絶縁膜35の第1領域35aと重畳する部分に支持部65cを有する。
【0081】
これにより、遮蔽マスク63及び65と画素電極23bとの接触を避けることができる。例えば、
図11Aでは、開口部63aが画素電極23aに対応する位置にあり、画素電極23bは遮蔽マスク63によって覆われている。この場合において、遮蔽マスク63と画素電極23bとは接触しない。この点については、
図11Bに示される構造においても同様である。
【0082】
なお、
図11Aでは、画素電極23bの上方にリセス63cを配置する例を示したが、リセス63cは、個々の画素に対応させて設けてもよいし、複数の画素に対応させて設けてもよい。つまり、蒸着対象ではない画素がまとまっていれば、それらの画素を含む領域の全体を覆うようにリセス63cを設けてもよい。また、
図11Bでは、支持部65cを絶縁膜35の第1領域35aに当たる位置に配置する例を示したが、支持部65cを設ける位置は任意である。また、支持部65cは、画素電極23bを囲むように設けてもよいし、表示部102の中にランダムに点在させてもよい。ただし、いずれの場合においても平面視において絶縁膜35と重畳する位置に配置することが望ましい。
【0083】
(第3実施形態)
第3実施形態では、絶縁膜25の構成を第1実施形態とは異なるものとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0084】
図12は、第3実施形態における有機EL表示装置300の概略の構成を示す断面図である。
図12において、絶縁膜25は、第1領域25a、第2領域25b、窪み部25c、溝部25d、及び突出部25eを含む。このとき、突出部25eは、第2領域25bの中に位置する。突出部25eは、窪み部25cの側面に沿って線状に設けられていてもよいし、点状に設けられていてもよい。換言すれば、平面的に見て、絶縁膜25は、第2領域25bに囲まれた第3領域25fを有するとも言える。
【0085】
第3領域25fにおける絶縁膜25の上面(突出部25eの上面)は、窪み部25cの底面よりも上に位置すればよいが、突出部25eは、蒸着時において遮蔽マスクを支持する部材として機能させることもできる。この場合は、第1領域25aにおける絶縁膜25の上面と第3領域25fにおける絶縁膜25の上面が、同一の面内に位置することが好ましい。
【0086】
本実施形態によれば、第1実施形態に比べて、より安定的に遮蔽マスク60の支持を行うことができる。
【0087】
(第4実施形態)
第4実施形態では、絶縁膜25の構成を第1実施形態とは異なるものとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0088】
図13は、第4実施形態における有機EL表示装置400の概略の構成を示す断面図である。
図13において、絶縁膜40は、第1領域40a、第2領域40b、窪み部40c、及び溝部40dを含む。本実施形態における第1領域40aの上面は、第1実施形態における第1領域25aよりも高い位置にある。
【0089】
この場合、第1領域40aの上面は、画素電極23a及び23bの上面から十分高い位置にある。そのため、第1実施形態に比べて、有機EL材料の蒸着時において、基板101と遮蔽マスク60との間に挟まれた異物の影響を受ける可能性を低減することが可能である。
【0090】
(第5実施形態)
第5実施形態では、絶縁膜25の構成を第1実施形態及び第3実施形態とは異なるものとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100及び第3実施形態の有機EL表示装置300との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0091】
図14は、第5実施形態における有機EL表示装置500の概略の構成を示す断面図である。
図14において、絶縁膜40は、第1領域40a、第2領域40b、窪み部40c、溝部40d、及び突出部40eを含む。このとき、突出部40eは、第2領域40bの中に位置する。第3実施形態と同様に、突出部40eは、窪み部40cの側面に沿って線状に設けられていてもよいし、点状に設けられていてもよい。換言すれば、平面的に見て、絶縁膜40は、第2領域40bに囲まれた第3領域40fを有するとも言える。
【0092】
第3領域40fにおける絶縁膜40の上面(突出部40eの上面)は、窪み部40cの底面よりも上に位置すればよいが、突出部40eは、蒸着時において遮蔽マスクを支持する部材として機能させることもできる。この場合は、第1領域40aにおける絶縁膜40の上面と第3領域40fにおける絶縁膜40の上面が、同一の面内に位置することが好ましい。
【0093】
本実施形態によれば、第1実施形態に比べて、より安定的に遮蔽マスク60の支持を行うことができる。
【0094】
(第6実施形態)
第6実施形態では、絶縁膜25の構成を第1実施形態とは異なるものとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0095】
図15は、第6実施形態における有機EL表示装置600の概略の構成を示す断面図である。
図15において、絶縁膜45は、第1領域45a、第2領域45b、窪み部45c、及び溝部45dを含む。本実施形態では、第1領域45aにおける絶縁膜45に設けられた溝部45dの深さが第1実施形態の溝部25dとは異なる。具体的には、窪み部45cの底面と溝部45dの底面が、同一の面内に位置する。
【0096】
本実施形態によれば、絶縁膜45を形成する際に、感光性の樹脂材料に対して紫外光照射を行うに当たり、窪み部45cの形成と溝部45dの形成とを同じ感光量で行うことができる。すなわち、3段階以上の透過率を備えた特殊なハーフトーンマスクを用いなくても、感光する領域、感光しない領域、及び溝部45dを形成する微感光領域(絶縁膜45の厚さ方向における途中まで感光する領域)を区別する一般的なハーフトーンマスクを用いて、絶縁膜45の形状を得ることができる。したがって、第1実施形態に比べて、製造コストを低減することができるという利点がある。
【0097】
(第7実施形態)
第7実施形態では、表示部102を構成する画素102aの配置を第1実施形態とは異なるものとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100との構成上の差異に注目して説明を行い、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0098】
図16は、第7実施形態における有機EL表示装置の表示部の構成を示す平面図である。
図16では、4つの画素102aについて説明するが、表示部102は、実際には、さらに多くの画素102aを有している。
【0099】
画素102aは、3つのサブピクセル23R、23G及び23Bを有する。サブピクセル23Rは、発光色が赤色の画素であり、サブピクセル23Gは、発光色が緑色の画素であり、サブピクセル23Bは、発光色が青色の画素である。これらのサブピクセル23R、23G及び23Bは、共に画素電極の露出面23Ra、23Ga及び23Baを有している。これらの露出面23Ra、23Ga及び23Baは、いずれも絶縁膜25の第1領域25a及び溝部25dで囲まれており、隣接する画素間には、絶縁膜25の第2領域25bが設けられている。
【0100】
本実施形態の表示部102の構成によれば、隣接する画素間に十分な間隙が設けられているため、第1領域25aにて遮蔽マスク60を受けるに当たり、均等に分散された力で支えることができる。また、異物が第2領域25bに位置する可能性が高まり、より異物の影響を受けにくくすることが可能である。
【0101】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0102】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。