(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示すような座椅子は使用者が立ち上がる際には使用者自身がレバーを回動させるなどして手動によって椅子本体を上昇させるようになっているため、その操作は容易でない。一方、特許文献2に示すような座高調整式椅子では、モーターで座部設置台盤を昇降動させるため、比較的容易に昇降動できるが、上昇時の乗り降りが容易でなく、また、座った際の安定性も高くない。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その主たる目的は、乗り降りが容易でかつ着座時の安定性に優れた新規な昇降式座椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために第1の発明は、座椅子部と、当該座椅子部を昇降する昇降部とを備え、前記昇降部は、前記座椅子部の下部に位置すると底板と、前記座椅子部と底板間を上下に支持連結する一対のX軸状リンク部材と、当該X軸状リンク部材をボールネジ機構を介して昇降動するモーターとを備え、前記各X軸状リンク部材は、前記座椅子部の着座方向前方側から前記底板の後方側に延びる第1のリンク軸と、前記座椅子部の着座方向後方側から前記底板の前方側に延びる第2のリンク軸とを備えると共に、前記第1リンク軸または第2リンク軸のいずれか一方または両方が、その交差軸より前記座椅子部の着座方向前方側がその後方側より短くなっていることを特徴とする昇降式座椅子である。
【0008】
このような構成によれば、座椅子部が昇降部によって降下した状態では、この座椅子部が底板と略水平となるため、安定して着座することができる。そして、この状態から座椅子部が上昇すると、これに伴って座椅子部が、その着座方向前方側が後方側よりも低くなるように傾斜するため、座椅子部への乗り降りをスムーズに行うことができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1リンク軸の前記底板側の支持点が、前記第2リンク軸の前記底板側の支持点よりも低い位置になっていることを特徴とする昇降式座椅子である。このような構成によれば、座椅子部が降下した状態では、その着座方向前方側が後方側よりも高くなって座椅子部全体がやや後方に傾斜するため、着座時に前方にずり落ちる可能性も低くなってより安定した状態で着座することができる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第2リンク軸の前記座椅子部側の支持点が、前記座椅子部の厚さ方向に対して前記第1リンク軸の前記座椅子部側の支持点よりも高い位置になっていることを特徴とする昇降式座椅子である。このような構成によっても第2の発明と同様に、座椅子部が降下した状態では、その着座方向前方側が後方側よりも高くなって座椅子部全体がやや後方に傾斜するため、着座時に前方にずり落ちる可能性も低くなってより安定した状態で着座することができる。
【0011】
第4の発明は、第1の発明において、前記第1リンク軸の一端が前記底板の着座方向後方側に軸支されていると共に、その他端が回動輪を介して前記座椅子部を支持し、かつ前記回動輪の径が、前記座椅子部の降下時に前記座椅子部の着座方向前方側がその後方側より高くなる大きさとなっていることを特徴とする昇降式座椅子である。このような構成によっても第2の発明と同様に、座椅子部が降下した状態では、その着座方向前方側が後方側よりも高くなって座椅子部全体がやや後方に傾斜するため、着座時に前方にずり落ちる可能性も低くなってより安定した状態で着座することができる。
【0012】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記底板下に回転テーブルを備えたことを特徴とする昇降式座椅子である。このような構成によれば、座椅子部が左右方向に自在に旋回可能となるため、座椅子部への乗り降りがより簡単となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の昇降式座椅子は、座椅子部が昇降部によって降下した状態では、この座椅子部の座面が底板と略水平または後傾となるため、安定して着座することができる。そして、この状態から座椅子部が上昇すると、これに伴って座椅子部が、その着座方向前方側が後方側よりも低くなるように前傾するため、座椅子部への乗り降りをスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る昇降式座椅子100の実施の一形態を示したものである。図示するようにこの昇降式座椅子100は、人が座るための座椅子部10と、この座椅子部10を昇降させる昇降部20と、この昇降部20を座椅子部10と共に回転させる回転テーブル30とから主に構成されている。
【0016】
先ず、座椅子部10は、略矩形状の座面板11上に、人が着座するための座面12と、着座した人の腰部を支える背面13と、着座した人の両肘を支える肘掛け14,14とから構成されている。なお、この座面板11や座面12および背面13の形状は、これに限定されるものでなく、円形その他の形状であっても良く、また、肘掛け14,14を省略した構成であっても良い。
【0017】
一方、昇降部20は、
図2乃至
図4に示すような構成をしている。ここで、
図2は座椅子部10を透視した昇降部20の平面図、
図3はその側面図、
図4はその正面図である。図示するようにこの昇降部20は、座椅子部10を支持すべくこれと一体となった円形の天板21と、この天板21とほぼ同じ大きさの円形の底板22と、これら天板21と底板22間を4点で上下に支持連結する一対のX軸状リンク部材23、23と、このX軸状リンク部材23、23をボールネジ機構24を介して昇降動するモーター25とから主に構成されている。
【0018】
X軸状リンク部材23は、それぞれ金属製のフラットバー形状(平板棒)をした第1のリンク軸23aと第2のリンク軸23bとから構成されており、各リンク軸23a、23bをX字状に交差させてその交差点を軸支してこれを中心に回動自在に形成されている。そして、このリンク軸23a、23bの一端はそれぞれ天板21および底板22の端部に軸支されると共に、他端は回動輪23c、23dを介してそれぞれ天板21および底板22に形成された上側レール21a、21a、下側レール22a、22aに沿って走行自在に支持されている。
【0019】
すなわち、
図5に示すようにこのX軸状リンク部材23の第1リンク軸23aは、その下端側が底板22の後端(着座方向後方)に回動自在に軸支(支持点:P2)されていると共に、その上端側が回動輪23dを介して天板21の着座方向前端側に設けられた上側レール21aに沿って走行可能に天板21側に支持(支持点:P1)されている。一方、第2リンク軸23bは、これとは反対にその上端側が天板21の後端(着座方向後方)に回動自在に軸支(支持点:P3)されると共に、その下端側が回動輪23cを介して底板22の着座方向前方側に設けられた下側レール22aに沿って走行可能に底板22側に支持(支持点:P4)されている。
【0020】
さらに、このX軸状リンク部材23は、第1リンク軸23aの長さが第2リンク軸23bよりも短くなっている。すなわち、図示するようにこの第1リンク軸23a、第2リンク軸23bの交差軸P5から各リンク軸23a、23bの各支持点P1、P2、P3、P4までの長さのうち、第1リンク軸23aの交差軸P5と支持点P2間の長さL2と、第2リンク軸23bの交差軸P5と支持点P3間の長さL3と、交差軸P5と支持点P4間の長さL4はいずれも同じである(L2=L3=L4)が、第1リンク軸23aの交差軸P5と支持点P1間の長さL1だけは、他の長さL2、L3、L4よりも数cm程度短くなっている(L2=L3=L4>L1)。
【0021】
そして、これら各支持点P1、P2、P3、P4は、天板21および底板22の高さ方向(厚さ方向)に対してそれぞれ同じ高さ位置になっている。従って、
図6(A)に示すように、天板21が降下した状態では、天板21は底板22とほぼ平行状態でその座椅子部10の座面12はほぼ水平状態となっているが、同図(B)に示すように、この天板21が上昇した状態では、天板21上の座椅子部10の座面12が着座方向前側にやや傾斜した状態(前傾)になっている。
【0022】
次に、ボールネジ機構24は、
図3および
図4に示すようにジョイント24aを介してモーター25の出力軸25aと同軸上に連結されるボールネジ25bと、このボールネジ25bに螺合するナット部材25cとから主に構成されている。ボールネジ25bはスラスト軸受25dによって底板22上に軸支されており、モーター25の出力軸25aの回転と同期して回転するようになっている。
【0023】
ナット部材25cは、このボールネジ25bの回転に伴ってその軸方向に沿って往復動すると共に、これより左右に延びる連結軸25e、25eを介して前記一対のX軸状リンク部材23、23の第2リンク軸23b、23bの下端側に設けられた回動輪23c、23cをそれぞれ軸支している。
【0024】
モーター25は、モーター本体とギヤヘッドを組み合わせたギヤドモータであり、ギヤヘッドのギヤ比によって任意の回転数を得られるようになっている。そして、家庭用電源(50Hz、100V)でモータを回転させ、その出力軸25aから回転数を落としてトルクを増幅させた回転力によってボールネジ25bを回転駆動する。なお、
図2に示すようにこのモーター25にはこれを制御するためのリモコンRが接続されており、リモコンRによってその回転方向(上下動)や停止を任意にコントロールできるようなっている。
【0025】
そして、例えばこのモーター25を正方向に駆動すると、これと連動するボールネジ25bが回転して、これに螺合しているナット部材25cがボールネジ25bに沿ってモーター25方向へ移動する。すると、このナット部材25cと回動輪23c、23cを介して連結したX軸状リンク部材23の第2リンク軸23b、23bが立ち上がるように回動し、これによって座椅子部10が上昇する。
【0026】
反対に、この位置からモーター25を逆方向に駆動すると、これと連動するボールネジ25bが回転してナット部材25cがボールネジ25bに沿ってモーター25から離れる方向に移動する。すると、このナット部材25cと回動輪23c、23cを介して連結したX軸状リンク部材23の第1リンク軸23a、23aが倒れるように回動し、これによって座椅子部10が降下するようになっている。
【0027】
一方、この昇降部20を構成する天板21と底板22には、その外縁部に沿ってそれぞれ可撓性の保護枠26,27が設けられている。この保護枠26,27は、
図7に示すように内周側が開いた断面C字形のリング状のゴム体、例えば自転車のゴムタイヤから構成されており、天板21(および底板22)の外側にこれより突出して設けられた枠体26a上に被せるようにして取り付けられている。なお、この保護枠26,27はゴムタイヤの他に同じ形状をしたウレタンフォームのような緩衝材で構成しても良い。
【0028】
さらに、この上下の保護枠26,27間はその内部を覆い隠すように伸縮性の保護カバー28で覆われている。この保護カバー28は、例えば
図8に示すような筒状をした上下方向に伸縮自在なアコーディオン状のカーテンで構成されている。このアコーディオン式カーテンは、例えば筒状に縫い込まれた布体28aの内側に螺旋状の塩ビチューブなどからなるフレーム28bを備えた構造となっている。従って、同図(B)に示すようにフレーム28bを上下に伸縮するに伴って布体28aがアコーディオン状に交互に折り畳まれたり、同図(A)に示すように伸張できるようになっている。
【0029】
回転テーブル30は、
図9および
図10に示すように、床面上に配置される固定板30aと、前記昇降部20の底板22が載置するように取り付けられるお盆状の回転板30bとからなっており、これらを互いに向き合うように上下に重ね合わせると共に、その中心部を軸ナット30cで軸支した構造となっている。そして、この固定板30aの周縁部には、ベアリング30dが複数(本実施の形態では8個)等間隔に配置されており、このベアリング30d、30d…上に回転板30bが位置することで、その回転板30bが軸ナット30cを中心として任意の方向にスムーズに回転するようになっている。なお、この固定板30aはその中心を横断するように設けられている断面コ字形状のフレーム30eによって補強されている。
【0030】
このような構成をした本発明の昇降式座椅子100は、先ず
図11(A)および(B)に示すようにその座椅子部10に着座した人などのリモコンRの操作によってその座椅子部10を任意の高さに昇降操作することができる。これによって、通常時、例えばコタツなどに入っている場合には同図(B)に示すように座椅子部10を最下部まで下げた状態で利用するが、立ち上がる際には、同図(A)に示すようにそのまま座椅子部10を上昇させて通常の椅子状にすることにより、ひざや腰などに負担をかけることなく容易に立ち上がることができる。
【0031】
また、座る際には、同図(A)に示すように座椅子部10を上昇させて通常の椅子状にしてからその座椅子部10に座り、そのままの状態で同図(B)に示すように座椅子部10を最下部まで降下させれば、同じくひざや腰などに負担をかけることなく容易に床面近くに着座することができる。
【0032】
また、
図6(A)に示すように座椅子部10が昇降部20によって降下した状態では、この座椅子部10が底板22と略水平となるため、安定して着座することができる。そして、
図6(B)および
図5に示すように、この状態から座椅子部10を上昇させると、これに伴って座椅子部10の座面12が、その着座方向前側が後側よりも低くなるように傾斜した状態となる。これにより、臀部を滑らせるようにして座面12から離れたり座ったりできるため、座椅子部10への乗り降りをスムーズに行うことができる。
【0033】
さらに、本発明の昇降式座椅子100は、底板22下に回転テーブル30を備えていることから、
図11(C)および(D)に示すように座椅子部10を任意の方向に任意の角度で回転することができる。従って、例えばコタツから立ち上がる際には同図(B)に示すようにコタツ(図示せず)方向から同図(C)に示すようにそのまま座椅子部10を左方向に約90°旋回させた後、同図(D)に示すように座椅子部10を上昇させることで容易にコタツから出て立ち上がることができる。なお、コタツに入るときはこれとは反対の操作を行うことでひざや腰に負担をかけることなく容易に座ることができる。
【0034】
また、座ったままの状態で簡単に任意の方向に座椅子部10を旋回させることが可能となるため、座ったままで各種の作業を行う際にもその方向転換が極めて容易にできる。また、天板21および底板22が円形であることから、昇降部20に角がなくなるため、昇降部20に体の一部をぶつけることがなくなると共に、座椅子部10をスムーズに回転することができる。
【0035】
また、本発明の昇降式座椅子100は、昇降部20を構成する天板21と底板22の外縁部に沿ってそれぞれ可撓性の保護枠26,27を設けたため、例えば座椅子部10の降下時に天板21と底板22間に手足や物が位置していてもこの保護枠26,27が緩衝材(クッション)として機能するため、天板21と底板22間に手足や指を挟んで怪我を招くことはない。さらに、この昇降式座椅子100に手足や体の一部をぶつけたとしてもその周囲が保護枠26,27によって覆われているため、同じく怪我をすることはない。
【0036】
さらに、本発明の昇降式座椅子100は、これら上下の保護枠26,27間を伸縮性のアコーディオン式カーテンからなる保護カバー28で覆ったことにより、天板21と底板22間に手足や物、ペットなどが入り込むことがなくなり、その間にそれらを挟み込んだりすることがない。また、仮に挟んだとしても可撓性の保護枠26,27が適宜変形することで怪我に至るようなことはなく、安全に昇降動を繰り返すことができる。また、その保護カバー28をアコーディオン式カーテンにすることにより降下時にそのカバーが垂れ下がったりすることがなく、見栄えが良くなる。
【0037】
次に、
図12乃至
図15は本発明に係る昇降式座椅子100に係る他の実施の形態を示したものであり、着座時の安定性をより高めるように工夫したものである。このため、本実施の形態では
図12に示すようにX軸状リンク部材23の第2リンク軸23bの天板21(座椅子部10)側の支持点P3である軸支部の位置を、天板21の厚さ(高さ)方向に対して第1リンク軸23aの天板21(座椅子部10)側の回動輪23dの支持点P1よりもやや高くしたものである。
【0038】
すなわち、天板21の厚さ(高さ)方向に対して第2リンク軸23bの支持点P3を第1リンク軸23aの支持点P1よりもやや高い位置にすれば、
図13に示すように座椅子部10が最も降下した状態(高さH)では、支持点P1が支持点P2よりも実際に低い位置であってもその着座方向前方側が後方側よりも高くなって座椅子部10がやや後方に傾斜(角度Q°)した状態となる。これによって、着座時に臀部が座面12から前方にずり落ちる可能性が低くなってより安定した状態で着座することができる。
【0039】
なお、
図12および
図13に示すような状態は、底板22の厚さ(高さ)方向に対して第1リンク軸23aの支持点P2の高さを第2リンク23bの支持点P4よりも低くしても達成できる。従って、いずれか一方の構造を採用または両方の構造を併用することで座椅子部10が降下したときにその座面12を所定角度Q°だけ後傾状態とすることができる。なお、このように座椅子部10が降下時に後傾した状態であってもこれが上昇することにより、水平状態に移行し、やがて最上昇時では前傾状態となるが、この最上昇時に座椅子部10を前傾状態までにすることなく、各リンク軸23a、23bの長さを適宜調節することで最上昇時に座椅子部10を水平状態にすることも可能である。
【0040】
また、このように座椅子部10を最降下させたときにその座面12(座椅子部10)を後傾状態にするためには、前記の構造の他に
図14および
図15に示すような構造によっても達成できる。すなわち、
図14および
図15に示すように第1リンク軸23aの回動輪23dの径d1を、
図5および
図6に示したような回動輪23の径d2よりも大きくすれば、その回動輪23dによる座椅子部10のレール21aの支持する位置がその分だけ高くなる。これによって、支持点P1が支持点P2よりも低い位置であっても座椅子部10の着座方向前方側がその後方側より高くなるように傾斜(後傾)するため、着座時に臀部が座面12から前方にずり落ちる可能性が低くなってより安定した状態で着座することができる。