特許第6870959号(P6870959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870959
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】透明電極およびこれを含む素子
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20210426BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210426BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20210426BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 1/04 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20210426BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 33/42 20100101ALI20210426BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H05B33/14 A
   H05B33/28
   H05B33/26 Z
   H01B1/04
   H01B1/02 Z
   H01B1/00 H
   G06F3/041 495
   G06F3/041 650
   G06F3/041 420
   H01L33/42
   B32B9/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-216621(P2016-216621)
(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-92031(P2017-92031A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2019年10月16日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0158426
(32)【優先日】2015年11月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】禹 輪 成
(72)【発明者】
【氏名】孫 熙 尚
(72)【発明者】
【氏名】辛 源 鎬
(72)【発明者】
【氏名】趙 恩 亨
(72)【発明者】
【氏名】郭 燦
(72)【発明者】
【氏名】朴 賢 哲
(72)【発明者】
【氏名】▲そう▼ 永 眞
(72)【発明者】
【氏名】高 東 秀
(72)【発明者】
【氏名】高 雄
(72)【発明者】
【氏名】金 光 熙
【審査官】 中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−211212(JP,A)
【文献】 特開2012−216497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
B32B 9/00
G06F 3/041
H01B 1/00
H01B 1/02
H01B 1/04
H01L 33/42
H01L 51/50
H05B 33/26
H05B 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、グラフェンまたはその誘導体からなるグラフェンメッシュ構造体を含む第1層と、
前記第1層上に形成される第2層と、
を含み、
前記グラフェンメッシュ構造体が複数のホールを含み、
前記第2層が、複数の導電性ナノワイヤーが互いに絡まって形成されたナノワイヤーメッシュ構造体を含み、
熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂またはこれらの組み合わせを含み、少なくとも前記第2層の上部面を覆うように形成されるオーバーコート層をさらに含み、
前記オーバーコート層が、前記第2層および前記第1層を通過して前記基板と連結されることを特徴とする透明電極。
【請求項2】
前記複数のホールが、前記グラフェンメッシュ構造体上で反復的な配列を成す、請求項1に記載の透明電極。
【請求項3】
前記第1層が、前記グラフェンメッシュ構造体にドーピングされるドーパントを含む、請求項1または2に記載の透明電極。
【請求項4】
前記ドーパントが、金属ハライド、窒酸化物、硫酸化物、金属過酸化物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の透明電極。
【請求項5】
前記金属ハライドが、AuCl、FeCl、MoCl、WCl、SnCl、MoF、RuF、TaBr、SnI、HAuClのうちの一つ以上を含む、請求項4に記載の透明電極。
【請求項6】
前記窒酸化物が、HNO、AgNO、NOF、NOCl、N、NOBF、CHNO、CNO、CHONO、NO(SbCl)、NOBF、NOClO、NOSOH、CNO、NOCl、NOF、NOBrのうちの一つ以上を含む、請求項4に記載の透明電極。
【請求項7】
前記第1層の面抵抗が1000Ω/sq以下である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項8】
前記第1層の光透過度が98%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項9】
前記第1層の上部から見る時、
前記複数のホールが円形の形状を有し、
前記複数のホールが四角形配列または六角形配列を成す、請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項10】
前記第1層の上部から見る時、
前記複数のホールが多角形の形状を有し、
前記複数のホールが四角形配列または六角形配列を成す、請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項11】
前記導電性ナノワイヤーが、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の透明電極。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の透明電極を含む電子素子。
【請求項13】
平板ディスプレイ、曲面ディスプレイ、タッチスクリーンパネル、太陽電池、e−ウィンドウ、エレクトロクロミックミラー、ヒートミラー、透明トランジスタ、フレキシブルディスプレイのうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項12に記載の電子素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
透明電極およびこれを含む素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LCD、OLEDまたはLEDなどの平板ディスプレイ、タッチスクリーンパネル、太陽電池、透明トランジスタなどの電子素子は透明電極を含む。透明電極用材料は、可視光領域で例えば80%以上の高い光透過度と例えば10−4Ω・cm以下の低い比抵抗を有するように要求される。現在使用されている酸化物材料としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、スズ酸化物(SnO)、亜鉛酸化物(ZnO)などがある。透明電極素材として広く使用されているITOは3.75eVの広いバンドギャップを有している縮退型半導体であり、スパッタ工程で容易に大面積製作が可能である。
【0003】
しかし、フレキシブルタッチパネル、UD級の高解像度ディスプレイへの応用の観点から、既存のITOは伝導度、柔軟性の側面で限界があり、インジウムの限定された埋蔵量によって価格問題が存在し、これを代替するために多くの試みが行われている。
【0004】
最近、次世代電子機器としてフレキシブル(flexible)電子機器が注目されている。そのために、前述の透明電極材料以外に、透明度と共に比較的に高い伝導度を有しながら、柔軟性も確保可能な材料の開発が必要である。ここで、フレキシブル電子機器は曲げられる(bendable)か、折り畳める(foldable)電子機器を含む。
【0005】
特許文献1には、柔軟性を有する透明電極の例示として、複数のナノワイヤーを含む透明導電層の構成が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された透明電極はナノワイヤーの低い破断延伸率によってナノワイヤーが破壊されやすい。したがって、特許文献1に開示された透明電極をフレキシブル電子機器に応用することには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0378489号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、向上した伝導度および向上した光透過度を有しながら機械的柔軟性が補強された、電子素子のための透明電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態による透明電極は、基板と、前記基板上に形成され、グラフェンまたはその誘導体からなるメッシュ構造体(以下、グラフェンメッシュ構造体という)を含む第1層と、前記第1層上に形成される第2層とを含み、前記グラフェンメッシュ構造体が複数のホールを含み、前記第2層が複数の導電性ナノワイヤーを含む。
【0009】
前記複数のホールは、前記グラフェンメッシュ構造体上で反復的な配列を成していてもよい。
【0010】
前記第1層は、前記グラフェンメッシュ構造体にドーピングされるドーパント(dopant)を含みうる。
【0011】
前記ドーパントは、金属ハライド、窒酸化物、硫酸化物、金属過酸化物、またはこれらの組み合わせを含みうる。
【0012】
前記金属ハライドは、AuCl、FeCl、MoCl、WCl、SnCl、MoF、RuF、TaBr、SnI、HAuClのうちの一つ以上を含みうる。
【0013】
前記窒酸化物は、HNO、AgNO、NOF、NOCl、N、NOBF、CHNO、CNO、CHONO、NO(SbCl)、NOBF、NOClO、NOSOH、CNO、NOCl、NOF、NOBrのうちの一つ以上を含みうる。
【0014】
前記第1層は面抵抗が1000Ω/sq以下であり、98%以上の光透過度を有し得る。
【0015】
一方、前記第1層の上部から見る時、前記複数のホールは円形の形状を有し、前記複数のホールは四角形配列または六角形配列を成すことができる。
【0016】
一方、前記第1層の上部から見る時、前記複数のホールは多角形の形状を有し、前記複数のホールは四角形配列または六角形配列を成すことができる。
【0017】
前記第2層は、前記導電性ナノワイヤーが互いに絡まって形成されたナノワイヤーメッシュ構造体を含むことができる。
【0018】
一方、前記透明電極は、少なくとも前記第2層の上部面を覆うように形成されるオーバーコート層をさらに含むことができ、前記オーバーコート層は前記第2層および前記第1層を通過して前記基板と連結される。
【0019】
前記導電性ナノワイヤーは、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、またはこれらの組み合わせを含むことできる。
【0020】
他の一実施形態による電子素子は、前記透明電極を含むことができる。
前記電子素子は、平板ディスプレイ、曲面ディスプレイ、タッチスクリーンパネル、太陽電池、e−ウィンドウ、エレクトロクロミックミラー(electrochromic mirror)、ヒートミラー(heat mirror)、透明トランジスタ、フレキシブルディスプレイのうちのいずれか一つであり得る。
【発明の効果】
【0021】
減少した面抵抗および向上した光透過度を有しながら柔軟性を有する透明電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態による透明電極の構造を模式的に示したものである。
図2】一実施形態による透明電極の第1層を示したものである。
図3】一実施形態による透明電極の、グラフェンメッシュ構造体のカバレージに対する光透過度の変化を示すグラフである。
図4】一実施形態による透明電極の、グラフェンメッシュ構造体のカバレージに対する面抵抗の変化を示すグラフである。
図5】一実施形態による透明電極の、グラフェンメッシュ構造体で複数の円形のホール間の配列別のカバレージに対する電気伝導度の変化を示すグラフである。
図6】一実施形態による透明電極を上部から見た構造を示したものである。
図7図6のVI−VIによる断面図を示したものである。
図8】他の一実施形態による透明電極の、六角形のホールが六角形配列された第1層を示したものである。
図9】他の一実施形態による透明電極の、グラフェンメッシュ構造体の複数の円形のホールと六角形のホールがそれぞれ六角形配列された場合、カバレージに対する電気伝導度の変化を示すグラフである。
図10】実施例1および比較例1で作製された透明電極のオーバーコート層が100μmの幅を有する複数のライン(line)でパターニングされた場合に対する8585テスト結果を、時間の経過(日)による面抵抗変化率(ΔR/R)で示すグラフである。
図11】実施例1および比較例2で作製された透明電極の曲げ性評価結果を、曲げ回数(cycle)による面抵抗変化率(ΔR/R)で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の利点および特徴、そしてこれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すれば明確になる。しかし、本発明は以下で開示される実施形態に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に実現され、ただ本実施形態は本発明の開示が完全なようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。したがって、いくつかの実施形態で、よく知られた技術は本発明が曖昧に解釈されることを避けるために具体的に説明されない。
【0024】
他の定義がなければ、本明細書で使用される全ての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通的に理解される意味として使用できる。また一般に使用される辞典に定義されている用語は明白に特に定義されていない限り理想的または過度的に解釈されない。
【0025】
明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特にことわりがない限り、他の構成要素を排除するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0026】
また、各構成要素は、特に言及しない限り複数含んでいてもよい。
【0027】
図面で、複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示す。明細書全体にわたって類似の部分については同一図面符号を使用する。
【0028】
本明細書で、層、膜、領域、板などの第1要素が第2要素「上に」あるという時、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「直上」にあるという時は、その中間に他の部分がないことを意味する。
【0029】
以下、本発明の一実施形態による透明電極10の概略的な構造を説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態による透明電極の構造を模式的に示したものである。図1に示すように、一実施形態による透明電極10は、基板100、基板100上に形成され、グラフェンまたはその誘導体(以下では便宜上、グラフェンに統一して記述する)からなるメッシュ(mesh)構造体(グラフェンメッシュ構造体)を含む第1層110、第1層110上に形成され、導電性ナノワイヤーを含む第2層120、および少なくとも第2層120の上部面を覆うように形成されるオーバーコート層130を含む積層体である。
【0031】
前記基板100は透明基板であってもよい。前記基板100の材料は特に制限されず、ガラス基板、半導体基板、高分子基板、またはこれらの組み合わせであってもよく、絶縁膜および/または導電膜が積層されている基板であってもよい。例えば、前記基板100としては、酸化物ガラス、ガラスなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、セルロースまたはその誘導体、ポリイミドなどのポリマー、または有機無機ハイブリッド材料、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0032】
前記基板100の厚さも特に制限されず、最終製品の種類によって適切に選択することができる。例えば、前記基板100の厚さは、0.5μm以上、例えば1μm以上、または10μm以上であってもよいが、これに制限されない。前記基板100の厚さは、1mm以下、例えば500μm以下、または200μm以下であってもよいが、これに制限されない。前記基板100が絶縁膜および/または導電膜が積層されている基板である場合、前記基板100と前記絶縁膜および/または導電膜の間には必要によって(例えば、透過された光の屈折率調節のための)追加の層(例えば、アンダーコート層)を有していてもよい。また、後述の第1層110と基板100の間に接着層(図示せず)がさらに配置されることによって第1層110との接着力が補強され得る。
【0033】
図2は、一実施形態による透明電極の第1層110を示したものである。
【0034】
図1および図2に示すように、第1層110は前記基板100上に形成され、グラフェンメッシュ構造体を含む。前記グラフェンメッシュ構造体は、上部から基板100に向かって開口された複数のホール111と、グラフェンメッシュ構造体にドーピングされて面抵抗特性を改善させることができるドーパント112を含むことができる。
【0035】
一実施形態で、ホール111は、第1層110の上部から見た断面が図2に示されているように円形形状を有するようにパターン化されたホールであってもよい。複数のホール111間には互いに相応する断面形状および断面積を有し、互いに隣接したホール111間には一定のホールピッチ(hole pitch)を有するように配置されてもよい。一実施形態で、複数のホール111が有する直径およびホールピッチは数〜数十マイクロメーターの大きさで形成されてもよい。
【0036】
このような複数のホール111は、グラフェン単層または4層以下で積層されたグラフェン層にフォトリソグラフィ(photo lithography)などを用いて形成されたパターンホールであってもよいが、ホール111の形成方法や母材になるグラフェンの構造が必ずしもこれに制限されるのではない。
【0037】
一実施形態では、第1層110の上部から見る時、第1層110の総面積に対する複数のホール111が占める総面積を除いた面積の比率をカバレージ(Coverage)という。即ち、カバレージとは、第1層110の上部の総面積に対するホール111を除いたグラフェンメッシュ構造体が基板100を覆っている程度を意味するものである。カバレージは、第1層110の光透過度および面抵抗に影響を与えることができる。
【0038】
図3は、一実施形態による透明電極の、グラフェンメッシュ構造体のカバレージに対する光透過度(透過率)の変化を示すグラフである。
【0039】
図3の光透過度のグラフは、横1cm×縦1cm大きさのサンプルとして、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)基板上に円形断面を有するホールが六角形配列(hexagonal array)されたグラフェンメッシュ構造体が積層された積層体であって、グラフェンメッシュ自体の構造的特性による光透過度特性を確認するためにドーパントをドーピングしていない状態であり、日本電色工業株式会社製の光透過度測定器(NDH−7000 SP)を用いて、グラフェンメッシュ構造体のカバレージごとの光透過率の変化を測定した結果である。
【0040】
前記基板は光透過率が非常に高い基板であって、基板による光吸収または反射の程度は非常に小さい誤差であって無視できる。
【0041】
図3に示すように、グラフェンメッシュ構造体のカバレージが増加することによってホール111が占める面積が減少するので、基板100を透過した光がグラフェンメッシュ構造体を透過せず、グラフェンメッシュ構造体に吸収、または反射される頻度が高まることが分かる。
【0042】
一実施形態で、グラフェンメッシュ構造体の光透過度は、図3に示されているように、全カバレージ領域で98%以上、例えば80%以下のカバレージで98.2%以上、52%以下のカバレージで98.82%以上、42%以下のカバレージで99.19%以上であってもよい。
【0043】
グラフェンメッシュ構造体の光透過度が98%以上と、優れた光学特性を示すので、一般的なグラフェン単層、または4層以下で積層されたグラフェン層と異なり、透明電極に使用可能な適正水準のグラフェンメッシュ構造体を提供することができる。
【0044】
図4は、一実施形態による透明電極の、グラフェンメッシュ構造体のカバレージに対する面抵抗の変化を示したグラフである。図4で、y軸は対数尺度(logarithm scale)で表示されている。
【0045】
図4の面抵抗グラフは、横1cm×縦1cm大きさのサンプルとして、PET基板上に円形断面を有するホールが六角形配列されたグラフェンメッシュ構造体が積層された積層体を使用し、グラフェンメッシュ構造体自体の構造的特性による面抵抗特性を確認するためにドーパントをドーピングしていない状態であり、ロレスタ(LORESTA)−GP(MCP−T610)、ESPタイププローブ(MCP−TP08P)(株式会社三菱化学アナリティック製)を用いて、各カバレージ別に第1層の上部面に対する4点プローブ測定を9回行った後、その平均値を記録した結果である。
【0046】
図4に示すように、カバレージが増加するほどグラフェンメッシュ構造体に接触可能な面積が増加するので、面抵抗は次第に減少する様相を示す。一実施形態で、グラフェンメッシュ構造体の面抵抗は42%のカバレージで平均2100Ω/sq、例えば50%のカバレージで平均1500Ω/sqの面抵抗を有し得る。
【0047】
一般に、グラフェンメッシュ構造体は複数のホール111を含むので、一般的なグラフェン単層、または4層以下で積層されたグラフェン層に比べて構造的特性上必然的に高い面抵抗を有する。
【0048】
しかし、一実施形態による透明電極はグラフェンメッシュ構造体のカバレージを調節して光透過度および面抵抗特性を調節することによって、グラフェンメッシュ構造体に別途のドーパントがドーピングされていない場合にも、導電層として使用できる水準の物性を確保することができる。
【0049】
一方、一実施形態で複数のホール111は、グラフェンメッシュ構造体上で反復的な配列を成していてもよい。即ち、グラフェンメッシュ構造体の上部から見た断面が互いに規則性を有するように配列されてもよい。例えば、図2を基準にいずれか一つのホール111の上、下、左、右にそれぞれ隣接する他のホール111が配置され、全体的に見る時、四角形(cubic)配列構造を成してもよい。但し、本発明の範囲がこれに限定されるのではなく、ホールの大きさ、断面形状、ホールピッチ、ホールが成す配列構造は多様に設定することができる。
【0050】
前記複数のホール111が有する配列構造もグラフェンメッシュ構造体の面抵抗に影響を与えることができる。
【0051】
図5は、一実施形態による透明電極の、グラフェンメッシュ構造体で複数の円形のホール間の配列別のカバレージに対する電気伝導度の変化を示すグラフである。
【0052】
例えば、複数のホール111が図2に示されているように円形断面形状を有しながら四角形配列構造を成す場合と、円形断面形状を有するが六角形配列構造を成す場合のカバレージ別電気伝導度を図5に示されたグラフを通じてそれぞれ比較することができる。
【0053】
図5および後述の図9中、相対電気伝導度σmesh/σは、(ホールを有さないグラフェン層の面抵抗R)/(ホールを有するグラフェンメッシュ構造体の面抵抗Rmesh)で求められる値である。
【0054】
図5に示すように、例えば60%を超過するカバレージでは複数のホール111が占める面積が少ないので、四角形配列と六角形配列との間で面抵抗は大きな差を示さない。但し、例えば55%以下のカバレージでは複数のホール111が占める面積が次第に増加するにつれて面抵抗が増加するようになるので、四角形配列と六角形配列との間で電気伝導度の差が発生するようになる。
【0055】
一実施形態では、図5に示されているように、例えば55%以下、例えば50%以下のカバレージで円形のホールが六角形配列を成すグラフェンメッシュ構造体の電気伝導度が、円形のホールが四角形配列を成すグラフェンメッシュ構造体の電気伝導度より大きく形成され得る。
【0056】
これは、カバレージが互いに同一であっても、円形のホールが成す配列構造によって導電層の役割を果たすグラフェンメッシュ構造体の電気的特性が変わるためであると思われ、前述のように円形のホールが六角形配列構造を成す場合、より低い面抵抗、即ち、より大きな電気伝導度を示すことが分かる。これは、円形のホールが六角形配列を有するグラフェンメッシュ構造体で全体のカバレージ領域の中の電流の流れに寄与する領域の広さが円形のホールが四角形配列を有するグラフェンメッシュ構造体よりさらに大きいためである。
【0057】
このように、一実施形態ではグラフェンメッシュ構造体自体の構造的特徴として、カバレージ以外に、複数のホール111の配列を互いに異なるように調節することによって面抵抗を低くすることもできる。
【0058】
即ち、一実施形態ではグラフェンメッシュ構造自体の構造的特徴(カバレージ、ホール配列)を異なるように設計することによって、別途のドーパントがドーピングされていないグラフェンメッシュ構造体の場合にも導電層として使用できる水準の電気伝導性を確保することができる。
【0059】
一方、図2を再び参照すれば、第1層110はグラフェンメッシュ構造体にドーピングすることによって面抵抗特性を大きく改善させることができるドーパント112をさらに含むことができる。
【0060】
ドーパント112の種類は特に制限されず、例えば金属ハライド、窒酸化物、硫酸化物、ハロゲン酸化物、金属過酸化物、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0061】
金属ハライド、窒酸化物、硫酸化物、金属過酸化物はp型ドーパントドーピングに適した物質であって、グラフェンメッシュ構造体の面抵抗を大幅に低下させることによって電気伝導度を向上させることができる。
【0062】
前記金属ハライドは、金属塩であってよく、例えば、金イオン、銀イオン、鉄イオン、タングステンイオン、モリブデンイオンなどを含む金属塩でありうる。本明細書中、金属ハライドは、例えばテトラクロロ金(III)酸などのハロゲン化金属錯体、その水和物、塩などを含む。例えば、金属ハライドは、AuCl、FeCl、MoCl、WCl、SnCl、MoF、RuF、TaBr、SnI、HAuClのうちの一つ以上を含むことができる。
【0063】
前記窒酸化物は、HNO、AgNO、NOF、NOCl、N、NOBF、CHNO、CNO、CHONO、NO(SbCl)、NOBF、NOClO、NOSOH、CNO、NOCl、NOF、NOBrのうちの一つ以上を含むことができる。
【0064】
前記硫酸化物は、(CHSO、KHSO、KHSO、KSO、FSOHおよびCFSOHのうちの一つ以上を含むことができる。
【0065】
前記金属過酸化物は、KMnO、BaMnO、OsOのうちの一つ以上を含むことができる。
【0066】
ドーパント112は、溶媒と混合されるか、グラフェンメッシュ構造体の表面にスパッタリング、コーティング、ガス吸着などの方法によって直接ドーピングされてもよく、ポリマーおよび前記ドーパント112を含む高分子層がグラフェンメッシュ構造体の表面にロールツーロール(roll−to−roll)などの方法を通じてコーティングされてもよい。例えば、ドーパント112は、図2に示されているように金属塩粒子の形態(例えば、AuCl粒子)でグラフェンメッシュ構造体の表面に形成されてもよい。
【0067】
前記ドーパント112の含量は、第1層110の総質量を基準に、例えば0.01〜15質量%であり、好ましくは0.01〜10質量%である。ドーパント112の含量が前記範囲内である場合、グラフェンメッシュ構造体の電気伝導度を向上させると同時にグラフェンメッシュ構造体の光透過度を低下させないことが可能である。前記ドーパント112の含量は、ドーパント112の種類によって多様に調節することができる。
【0068】
グラフェンメッシュ構造体にドーパント112がさらにドーピングされることによって、電子または正孔を輸送するキャリアが増加しフェルミ準位(fermi level)が下がるようになるので、結果的にグラフェンメッシュ構造体の電気伝導度が向上しうる。ドーパント112によって減少する面抵抗の具体的な例示は後述の実施例で説明する。
【0069】
このように、一実施形態による透明電極は、構造的特性を改善して光透過度と面抵抗特性を改善したグラフェンメッシュ構造体にさらにドーパント112をドーピングすることによって、第1層110の電気伝導度を大きく向上させることができるので、結果的には透明電極10が高い機械的柔軟性と低い面抵抗および適正水準の光透過度を有し得る。
【0070】
図6は、図1の透明電極10を上部から見た構造を示したものであって、第1層110と第2層120とが重なった状態をより強調して示したものである。
【0071】
一方、図6で第2層120の上部面は前述の図1に示されたオーバーコート層130で覆われていてもよいが、オーバーコート層は透明な素材からなるので前述の第1層110および第2層120との区別が難しいため、図6を説明することにおいてはオーバーコート層の構成を省略して説明する。
【0072】
第2層120は複数の導電性ナノワイヤー121を含み、第1層110上に配置される。導電性ナノワイヤー121は、例えば、導電性を有する金属材料を含み、金属導電性を有し、例えば銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、またはこれらの組み合わせでありうる。導電性ナノワイヤーは、例えば、これらの合金、あるいは2以上のセグメントを有する導電性ナノワイヤーであってもよい。例えば、前記導電性ナノワイヤーは銀(Ag)ナノワイヤーであってもよい。
【0073】
導電性ナノワイヤー121は、特に制限されないが、平均直径が、例えば100nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下である。前記導電性ナノワイヤー121の長さは特に制限されず、直径によって適切に選択することができる。例えば、前記導電性ナノワイヤー121の長さは10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であるが、これに制限されない。
【0074】
このような導電性ナノワイヤー121は、公知の方法によって製造できるか、あるいは商業的に入手可能である。前記導電性ナノワイヤー121の表面にはポリビニルピロリドンなどの高分子コーティングが形成されていてもよい。
【0075】
第2層120の形成は、公知の層形成方法によって実施でき、特に制限されない。非制限的な例としては、第2層120は、導電性ナノワイヤー121を含む適切なコーティング組成物を第1層110上に塗布し溶媒を除去することによって形成することができる。前記コーティング組成物は、適切な溶媒(例えば、水、水と混和性または非混和性の有機溶媒など)および分散剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、C2〜C20の有機酸など)をさらに含むことができる。
【0076】
例えば、前記導電性ナノワイヤー121を含むコーティング組成物は商業的に入手可能であるか、公知の方法で製造することができる。
【0077】
前記組成物を基板に塗布し、必要に応じて乾燥および/または熱処理を行うことにより、導電性ナノワイヤー121が一連の層を成す構造を形成することができる。前記組成物の塗布は多様な方法で実施でき、一例としてバーコーティング(bar coating)、ブレードコーティング(blade coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、スプレーコーティング(spray coating)、スピンコーティング(spin coating)、グラビアコーティング(Gravure coating)、インクジェットプリンティング(ink jet printing)またはこれらの組み合わせによって塗布することができる。
【0078】
一方、第2層120の内部で、導電性ナノワイヤー121間には電気的連結を提供することができるように互いに接触することによって、向上した電気伝導度を示すことができる。また、互いに接触された導電性ナノワイヤー121同士が互いに絡まってメッシュ形態の構造体を形成するようになることで、さらに向上した電気伝導度を示すことができる。
【0079】
形成された第2層120は、好ましくは複数の導電性ナノワイヤー121が互いに絡まっている構造であって、複数の導電性ナノワイヤー121は図6に示されているように互いに絡まって不規則なナノワイヤーメッシュ構造を形成することができる。これにより、第2層120は導電性ナノワイヤー121が絡まってナノワイヤーメッシュ構造体を形成する部分と、メッシュ構造体により形成された空孔(pore)を含む。
【0080】
第2層120で、導電性ナノワイヤー121が形成する「ナノワイヤーメッシュ構造体」は前述の第1層110で形成された「グラフェンメッシュ構造体」とは互いに異なる形状を有するメッシュ構造体でありうる。
【0081】
即ち、前述のグラフェンメッシュ構造体の場合、後述のフォトレジスト工程によってグラフェン単層を一定のパターンでエッチングすることによって、第1層110を貫通するホール111が互いに同一な断面形状、大きさを有して規則的な形態に配列されるのに比べて、第2層120に形成されたナノワイヤーメッシュ構造体は多様な形状、大きさを有する空孔が不規則な形態に配置された形状を有する。
【0082】
一方、第2層120は有機バインダー(organic binder)を含むことができる。前記有機バインダーは、第2導電層である第2層120の形成のために組成物の粘度を適切に調節するか、前記ナノワイヤー間の結着力、または第1層110との接着力を高める役割を果たすことができる。前記有機バインダーの非制限的な例としては、メチルセルロース(methyl cellulose)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose、HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxylpropyl cellulose、HPC)、キサンタンゴム(xanthan gum)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone、PVP)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyl ethyl cellulose)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。前記有機バインダーの含量は適切に選択することができ、特に制限されない。例えば、前記有機バインダーの含量は前記第2層120の100質量部に対して1〜99質量部であってもよい。
【0083】
一実施形態による透明電極10は、このように複数のホール111を備えたグラフェンメッシュ構造体を含む第1層110上に複数の導電性ナノワイヤー121を含む第2層120を形成することによって、複数のホール111によって上昇した第1層110の面抵抗を低くして電気的特性を改善することができると同時に、反復的な曲げ、衝撃などの物理的外力を加える場合にもこれによる面抵抗の変化率を最小水準に維持するので、機械的柔軟性および信頼性も改善することができる。
【0084】
一方、図7は、図6のVI−VIによる断面図を示したものである。
【0085】
前述の図1図6および図7を共に参照すれば、一実施形態による透明電極10は、第2層120上に熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、またはこれらの組み合わせを含むオーバーコート層130を含むことができる。
【0086】
オーバーコート層130は透明な素材からなるので、基板100、第1層110および第2層120を順次に透過した光がオーバーコート層130を透過して放出されるか、オーバーコート層130に入射した光が基板100が位置している方向に向かって伝達される。
【0087】
前記オーバーコート層130の製造のための熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂の具体的な例は公知である。
【0088】
一実施形態で、オーバーコート層130のための熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート基を有するパーフルオロポリマー、(メタ)アクリレート基を有するポリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含むポリマー素材であってもよい。
【0089】
オーバーコート層130は、無機酸化物微粒子(例えば、シリカ微粒子)をさらに含むことができる。前述の材料から前記導電性薄膜の上にオーバーコート層を形成する方式は知られており、特に制限されない。
【0090】
一方、図7に示すように、オーバーコート層130は第2層および第1層を通過して基板100の上部面と連結されてもよい。即ち、オーバーコート層130は、コーティング過程で樹脂がナノワイヤーメッシュ構造体に形成された空孔を通じて第1層110に浸透し、浸透した樹脂のうちの一部は第1層110に形成された複数のホール111を含む空間を満たしながら基板100の上部面まで到達することによって、オーバーコート層130と基板100の上部面を互いに連結することができる。
【0091】
一般にグラフェンはその化学的安定性によって大部分の基板との接着力が良好ではなく、特にフレキシブル基板との接合力が弱いため、工程進行あるいは機械的衝撃が加えられる場合、性能が大きく低下しやすい。また、基板上にグラフェン、ナノワイヤーおよびオーバーコート層を順次に配置する場合、弱い機械的衝撃または曲げによってもグラフェンおよび基板と直接接触しないオーバーコート層が第2層から剥離されやすいので、これによって面抵抗が増加し透明電極の特性が低下する恐れがある。
【0092】
これに対して、本実施形態によれば、オーバーコート層130が単純に第2層120の上部面に形成されるのではなく、図7に示されているようにオーバーコート層130の形成時、樹脂が第2層120の複数の導電性ナノワイヤー121の間の空孔と、第1層110に形成された複数のホール111とを満たしながら基板100とも接触可能であるため、オーバーコート層130と基板100、第1層110および第2層120との間の結着力を向上させることができると同時に、グラフェンメッシュ構造体と基板100の結着力も向上させることができる。即ち、一実施形態によれば、機械的衝撃や、反復的な曲げに対してもオーバーコート層130の剥離現象および/または第1層110が基板から剥離される現象を最少化することができる。
【0093】
一般に層状を有するグラフェンの伝導特性が報告された後、機械的特性がぜい弱なインジウムスズ酸化物(ITO)を代替する高フレキシブル透明導電膜材料としてグラフェンを応用するための多くの研究が行われた。しかし、グラフェンは光吸収係数が比較的高いため満足できる水準の光透過度を示しにくく、単層が4層以上積層された厚さを別個に積層して使用することは難しい。
【0094】
一方、導電性ナノワイヤー121を用いたフレキシブル透明電極の開発も行われているが、このような導電性ナノワイヤー121は、破断延伸率が低いため高い延伸領域では導電性ナノワイヤーの破壊が生じうるため、フレキシブル電極への応用に限界がある。
【0095】
即ち、導電性ナノワイヤー121は低い面抵抗と向上した光透過度を達成することができるが、高い歪み(strain)領域(例えば6.7%以上)ではナノワイヤーの破壊が発生しやすい。グラフェンは向上した柔軟性を提供することはできるが、光透過度に比べて高い面抵抗を示す傾向がある。
【0096】
一方、グラフェン単層または4層以下で積層されたグラフェン層上に導電性ナノワイヤー121を配置する透明電極の開発も試みられているが、導電性ナノワイヤー上に位置するオーバーコート層または基板とグラフェン層との間の接着力が低下することにより、反復的な曲げによってオーバーコート層の分離現象が起こりやすく、これによる導電性ナノワイヤーとグラフェン層との間に離隔が発生することによって透明電極の面抵抗が増加する傾向がある。
【0097】
しかしながら、一実施形態による透明電極10の場合、前述のように多数のホール111を備えたグラフェンメッシュ構造体を含む第1層110上に導電性ナノワイヤーを含む第2層120が配置されたグラフェンメッシュ構造体と導電性ナノワイヤーとのハイブリッド構造を有する。
【0098】
このようなハイブリッド構造により、透明電極10の面抵抗が減少し、導電性ナノワイヤーの破壊領域でもグラフェンによる電気伝導経路(path)が存在するので向上した機械的柔軟性と信頼性とを示すことができる。
【0099】
また、前述のように、複数のホール111が配列された構造や、グラフェンメッシュ構造体をドーパント112によってドーピングすることにより、第1導電層の役割を果たすグラフェンメッシュ構造体の電気伝導度をさらに向上させることもできる。
【0100】
このようにグラフェンメッシュ構造体と導電性ナノワイヤーとのハイブリッド構造によって機械的柔軟性、信頼性、面抵抗および電気伝導度が向上するが、具体的な効果については後述の実施例で説明する。
【0101】
透明電極10のグラフェンメッシュ構造体は、以下のように上記で例示した断面および配置構造以外の断面および配置構造を有してもよい。
【0102】
図8は他の一実施形態による透明電極の、六角形のホールが六角形配列された第1層を示したものであり、図9は他の一実施形態による透明電極の、グラフェンメッシュ構造体の複数の円形のホールと六角形のホールとがそれぞれ六角形配列された場合における、カバレージに対する電気伝導度の変化を示すグラフである。
【0103】
図8に示すように、他の一実施形態による透明電極の第1層110'は、グラフェンメッシュ構造体が例えば六角形の断面を有するホール111'が六角形配列された構造から形成されてもよい。
【0104】
図8に示されているように六角形の断面を有するホール111'が六角形配列される場合の電気伝導度を、前述の図5に示された円形の断面を有するホール111が六角形配列される場合の電気伝導度と比較した結果は図9の通りである。
【0105】
図9に示されているように、例えば35%以下、例えば30%以下のカバレージで六角形のホールが六角形配列を成すグラフェンメッシュ構造体の電気伝導度が、円形のホールが六角形配列を成すグラフェンメッシュ構造体の電気伝導度より大きく形成され得る。図9から、ホールの配列だけではない、ホールの断面形状を異なるように設計することによってグラフェンメッシュ構造体自体の電気伝導度を向上させることができるのを確認することができる。このような結果は、同一カバレージを有する場合でも、六角形のホールが円形のホールに比べてさらに密集して配置され、特にカバレージが低くなるほどより円形のホールに比べて効率的な六角形配列が可能なので、電流の流れに寄与する部分がさらに増加するためであると把握される。
【0106】
このように、他の一実施形態ではグラフェンメッシュ構造体のカバレージやホール111'の配列を調節すること以外にも、ホール形状を異なるように設計することによってグラフェンメッシュ構造体自体の構造的特性に起因した面抵抗を低くすることができ、導電層として使用できる水準の電気伝導性を確保することができる。
【0107】
さらに他の一実施形態によれば、前述の透明電極を含む電子素子が提供される。
【0108】
前記電子素子は、平板ディスプレイ、曲面ディスプレイ、タッチスクリーンパネル、太陽電池、e−ウィンドウ、エレクトロクロミックミラー、ヒートミラー、透明トランジスタ、またはフレキシブルディスプレイであってもよい。
【0109】
他の一実施形態で、前記電子素子はフレキシブルディスプレイであってもよい。フレキシブルディスプレイとは一軸または複数の軸を中心に折るか曲げることができる電子素子を意味し、フレキシブルディスプレイの詳細な構造は公知である。フレキシブルディスプレイは、例えばフレキシブル基板と、基板上に形成された透明電極、透明電極上に形成された有機発光物質を含むフレキシブル有機発光表示装置であり得る。
【0110】
一方、前記電子素子はタッチスクリーンパネルであってもよく、タッチスクリーンパネルは、表示装置用パネル、例えば、液晶表示パネル上に第1透明導電膜、第1透明接着層(例えば、光学用接着剤(Optical Clear Adhesive:OCA)フィルム、第2透明導電膜、第2透明接着層、および表示装置用ウィンドウ(window)が順次に形成された構造を有し得る。第1透明導電膜および/または第2透明導電膜は前述の透明電極であってもよい。
【0111】
ここでは透明電極をフレキシブルディスプレイまたはタッチスクリーンパネルに適用した例を説明したが、これに限定されず、透明電極が使用される全ての電子素子の電極として用いることができ、例えば液晶表示装置の画素電極および/または共通電極、有機発光表示装置のアノードおよび/またはカソード、プラズマ表示装置の表示電極にも用いることができる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。但し、下記に記載された実施例は本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0113】
実施例1
実施例1の透明電極は、以下のような方法によって作製した。
【0114】
[1]銅(Cu)箔の一方の面に化学気相成長法(CVD)によってグラフェン単層を蒸着した。蒸着したグラフェン単層上にポリメチルメタクリレート(以下、PMMA)層を形成した後、銅箔をエッチングして除去した。その後、PMMA層が形成されたグラフェン単層をPET基板上に転写した後にPMMA層を除去することによって、PET基板上にグラフェン単層が形成されたPET−グラフェン単層積層体を得た。
【0115】
[2]その後、得られたPET−グラフェン単層積層体の、グラフェン単層上にフォトレジスト層を形成し、フォトレジスト層上に円形のホールパターンが形成されたマスクを配置した後、露光および現像した。その後、残ったフォトレジストを除去し、現像されたパターンに沿ってグラフェン単層をエッチングすることによって、グラフェンメッシュ構造体を含む第1導電層である第1層を基板上に形成した。形成されたグラフェンメッシュ構造体は複数のパターン化されたホールを備え、前記ホールは第1層の上面から見た断面が円形であり、複数のホールを有するパターン構造は四角形配列構造であり、グラフェンメッシュ構造体のカバレージは42%であった。
【0116】
基板上に形成されたグラフェンメッシュ構造体の上部面の面抵抗を前述のロレスタ−GP(MCP−T610)、ESPタイププローブ(MCP−TP08P)(株式会社三菱化学アナリティック製)を用いて、4点プローブ方式でグラフェンメッシュ構造体の面抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0117】
[3]一方、下記の成分を有する銀ナノワイヤー含有組成物を得た:
銀ナノワイヤー水溶液(濃度:0.5質量%、銀ナノワイヤーの平均直径20nm)4.8g
溶媒:水8.24gおよびエタノール4.73g
バインダー:ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液(濃度:10質量%)0.96g
前記銀ナノワイヤー含有組成物を前記第1層上にワイヤーバー(wired bar)を用いてコーティングし、大気中で90℃の温度で1分間乾燥して第2導電層である第2層を形成した。
【0118】
[4]その後、ウレタンアクリレート1gをジアセトンアルコールとイソプロピルアルコールとが1:1の比率(体積比)で混合された溶媒9gに入れて混合した混合液を準備した。その後、ワイヤーバーを用いて、第2層上に前記混合液をコーティングした後、5分以上常温で乾燥した。次に、得られた結果物を100℃のオーブンで乾燥し、UV硬化器で硬化してオーバーコート層を形成することによって、基板、グラフェンメッシュ構造体からなる第1層、導電性ナノワイヤーを含む第2層およびオーバーコート層が順次に積層されたハイブリッド透明電極を得た。
【0119】
実施例2
グラフェンメッシュ構造体を含む第1導電層である第1層を基板に形成した後、ドーパントとして3mgのAuClを使用し、溶媒として1mLのニトロメタン(nitromethane)を使用して互いに混合し、混合物をグラフェンメッシュ構造体上に塗布してドーピングしたことを除いては、前述の実施例1と同様な方法で透明電極を製造した。ドーピングされたAuClは第1層の総質量を基準として10質量%の含量を有する。
【0120】
実施例2で製造されたAuClドーピングされたグラフェンメッシュ構造体の上部面の面抵抗を前述のロレスタ−GP(MCP−T610)、ESPタイププローブ(MCP−TP08P)(株式会社三菱化学アナリティック製)を用いて、4点プローブ方式で測定した。結果を表1に示す。
【0121】
実施例3の製造
グラフェンメッシュ構造体を含む第1導電層である第1層を基板に形成した後、ドーパントとして揮発性HNOを大気雰囲気下に常温で10分間グラフェンメッシュ構造体に吸着させてドーピングすることを除いては、前述の実施例1と同様な方式で透明電極を製造する。ドーピングされたHNOは第1層の総質量を基準に0.01質量%の含量を有する。
【0122】
実施例3で製造されたHNOドーピングされたグラフェンメッシュ構造体の上部面の面抵抗を前述のロレスタ−GP(MCP−T610)、ESPタイププローブ(MCP−TP08P)(株式会社三菱化学アナリティック製)を用いて、4点プローブ方式で測定した。結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1に示すように、別途のドーピングを行わない実施例1の場合、カバレージ42%で1560Ω/sqであって比較的高い面抵抗を示す反面、AuClおよびHNOでそれぞれグラフェンメッシュ構造体をドーピングする場合、前述の実施例1に比べて約1000Ω/sq〜1300Ω/sqほどの面抵抗減少効果を得ることができることを確認した。
【0125】
比較例1
フォトレジスト層を用いた複数のホールおよびパターンを形成せずグラフェン単層である第1層上に直ちに第2層を形成したことを除いては、前述の実施例1と同様な方法で基板、グラフェン単層からなる第1層、導電性ナノワイヤーを含む第2層およびオーバーコート層が順次に積層された透明電極を得た。
【0126】
実施例1と比較例1に対して、下記の評価1(信頼性評価)を行った。
【0127】
比較例2
[1]下記の成分を有する銀ナノワイヤー含有組成物を得た:
銀ナノワイヤー水溶液(濃度:0.5質量%、銀ナノワイヤーの平均直径20nm)4.8g
溶媒:水8.24gおよびエタノール4.734g
バインダー:ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液(濃度:10質量%)0.96g
前記銀ナノワイヤー含有組成物をPET基板上にワイヤーバーを用いてコーティングし、大気中で90℃の温度で1分間乾燥して銀ナノワイヤー導電層を形成した。
【0128】
[2]その後、ウレタンアクリレート溶質1gをジアセトンアルコールとイソプロピルアルコールが1:1の比率(体積比)で混合された溶媒9gに入れて混合した混合液を準備した。その後、ワイヤーバーを用いて、銀ナノワイヤー導電層上に前記混合液をコーティングした後、5分以上常温で乾燥した。次に、得られた結果物を100℃のオーブンで乾燥し、UV硬化器で硬化してオーバーコート層を形成することによって、基板、銀ナノワイヤー導電層およびオーバーコート層が順次に積層された銀ナノワイヤー透明電極を得た。
【0129】
実施例1と比較例2に対して、下記の評価2(曲げ性評価)を行った。
【0130】
評価1:信頼性評価
[1]信頼性評価は8585テストを通じて確認することができる。8585テストとは、85℃温度および85%の相対湿度条件下での物性変化率をチェックすることであって、本実施例では時間の流れによって面抵抗が変化する程度を測定することにより、透明電極の安定性を評価することができる。
【0131】
8585テスト遂行に先立ち、前述の実施例1および比較例1それぞれのオーバーコート層をラインエッチング(line etching)して100μmの幅を有する複数のラインを形成した。
【0132】
エッチングによる影響を最少化するためにラインエッチング直後にそれぞれの透明電極を4日間常温、常湿条件下に放置して、4日経過後、それぞれの透明電極を85℃の温度および85%の相対湿度の条件下に配置し、8585テストを始めた。8585テスト進行中、実施例1および比較例1それぞれに対して、時間の経過による面抵抗変化率(ΔR/R)を測定し、その結果を図10に示す。図10中、Roはテスト開始時点(1日)の面抵抗、ΔRは、(測定した時点の面抵抗)−(テスト開始時点(1日)の面抵抗)を表す。
【0133】
[2]図10に示すように、比較例1の場合、8585テストを開始時点から4日目になる日(図10基準、8日)から急激な面抵抗増加を示し、テスト開始時点から7日経過した時点(図10基準、11日)には約40%の面抵抗増加率を示した。
【0134】
一方、実施例1の場合、8585テスト開始時点から8日経過した時点(図10基準、12日)に至るまで面抵抗増加率は20%程度であり、急激な増加なく緩慢な変化のみ起こることが分かる。
【0135】
即ち、透明電極を使用するのに適さない環境下でも実施例1の透明電極では、面抵抗変化率が大きくないので、単純なグラフェン単層と銀ナノワイヤー導電層との積層構造から形成された比較例1に比べて透明電極の信頼性(安定性)が高いことを確認することができる。
【0136】
評価2:曲げ性評価
[1]曲げ性評価(bending test)は、作製された透明電極を曲率半径1mmで20万回曲げた後、面抵抗変化率を測定することによって、反復された曲げまたは機械的衝撃など、物理的外力による透明電極の機械的柔軟性を評価することができる。
【0137】
曲げ性評価を実施する際、透明電極を曲げた時、導電層が、曲げられた透明電極の内側の面に位置して互いに重なるように配置される場合を事例1(inner case)と、反対に曲げられた透明電極の外側の面に位置するように配置される場合を事例2(outer case)とそれぞれ定義する。事例2の場合、曲げによって導電層に作用する誘導応力の大きさが事例1より大きいので、事例1に比べて事例2の面抵抗変化率がはるかに大きくなるのが一般的である。
【0138】
[2]図11に示すように、実施例1の事例1(inner case)の場合、20万回曲げるまでの面抵抗変化率が、例えば50%、例えば30%、例えば25%以下であるのを確認することができる。反面、比較例2の事例1(inner case)の場合、20万回曲げる時、面抵抗変化率は約110%以上である。一方、実施例1の事例2(outer case)の場合、20万回曲げる時、抵抗変化率が約125%〜200%の範囲を有するが、比較例2の事例2(outer case)の場合は20万回曲げる時、抵抗変化率が約2300%である。
【0139】
実施例1のグラフェンメッシュ構造体および銀ナノワイヤー導電層を有するハイブリッド透明電極は事例1と事例2の両方とも比較例2より優れた機械的柔軟性を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0140】
10 透明電極
100 基板
110、110’ 第1層(グラフェンメッシュ構造体)
111、111’ ホール
112 ドーパント
120 第2層
121 導電性ナノワイヤー
130 オーバーコート層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11