特許第6870973号(P6870973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大倉工業株式会社の特許一覧

特許6870973容器の電子線照射滅菌方法、該方法に用いられるプラスチックフィルム、該方法に用いられる容器梱包体、自動充填方法
<>
  • 特許6870973-容器の電子線照射滅菌方法、該方法に用いられるプラスチックフィルム、該方法に用いられる容器梱包体、自動充填方法 図000003
  • 特許6870973-容器の電子線照射滅菌方法、該方法に用いられるプラスチックフィルム、該方法に用いられる容器梱包体、自動充填方法 図000004
  • 特許6870973-容器の電子線照射滅菌方法、該方法に用いられるプラスチックフィルム、該方法に用いられる容器梱包体、自動充填方法 図000005
  • 特許6870973-容器の電子線照射滅菌方法、該方法に用いられるプラスチックフィルム、該方法に用いられる容器梱包体、自動充填方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870973
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】容器の電子線照射滅菌方法、該方法に用いられるプラスチックフィルム、該方法に用いられる容器梱包体、自動充填方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/08 20060101AFI20210426BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20210426BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B65B55/08 B
   B65B55/04 Z
   B65B55/04 B
   A61L2/08 108
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-238085(P2016-238085)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-95257(P2018-95257A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】溝淵 義輝
(72)【発明者】
【氏名】宮原 康史
(72)【発明者】
【氏名】安藤 克敏
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−130172(JP,A)
【文献】 特開2003−011263(JP,A)
【文献】 特開2010−023917(JP,A)
【文献】 特開2006−232381(JP,A)
【文献】 特開2016−125924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/08
A61L 2/08
B65B 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り離し予定線を介して連なった連続状態にある複数の容器を、プラスチックフィルムからなる梱包資材で被覆して容器梱包体を作成するステップと、前記容器梱包体に電子線を照射するステップとを備える容器の電子線照射滅菌方法において、
前記梱包資材の前記容器と接する面の表面抵抗率を1.0×1011Ω/□以下とすることを特徴とする容器の電子線照射滅菌方法。
【請求項2】
前記プラスチックフィルムが袋状に成形されていることを特徴とする請求項1記載の容器の電子線照射滅菌方法。
【請求項3】
前記容器がスパウト付き袋であることを特徴とする請求項1または2記載の容器の電子線照射滅菌方法。
【請求項4】
前記容器梱包体が、前記複数の容器を前記梱包資材で被覆したものを、更に箱体に収納したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の容器の電子線照射滅菌方法。
【請求項5】
少なくとも一方の表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であるプラスチックフィルムからなる梱包資材で、切り離し予定線を介して連なった連続状態にある複数の容器を被覆してなる容器梱包体であって、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の容器の電子線照射方法に用いられることを特徴とする容器梱包体。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の容器の電子線照射滅菌方法によって滅菌処理された、切り離し予定線を介して連なった連続状態にある複数の容器を、容器梱包体から取出して自動充填機に導入し、該容器内に内容物を充填することを特徴とする自動充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の電子線照射滅菌方法に関する。更に該方法において梱包資材として用いられるプラスチックフィルム、該方法に用いられる容器梱包体、更には容器梱包体から容器を取出して自動充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等を充填する容器は、通常、内容物の充填に先立ち、滅菌が行われる。容器の滅菌の方法としては、例えば、高圧蒸気滅菌、エチレンオキシド滅菌、γ線や電子線等の放射線照射滅菌等が知られている。放射線照射による滅菌は、高圧蒸気滅菌のように容器を高温にする必要がなく、エチレンオキシド滅菌のように有害な残留物や副生成物を発生させる恐れがない。
【0003】
特許文献1はバッグインボックス用内袋(口付2重袋)等を滅菌する方法に関する発明で、紫外線と放射線とを併用することを特徴とする。紫外線は浸透力が弱く、表面のみの滅菌しかできない。γ線もしくは電子線といった放射線は、菌数が多い場合、高線量の照射を必要とするから、その際包装材の物性変化を起こし易く、分解臭を発生するという問題があった。特許文献1は、このような紫外線による欠点と、放射線による欠点とを、両者を組み合わせることによって補い合うことを特徴とする。
【0004】
従来、バッグインボックス用内袋は、γ線照射により滅菌されることが多かった。これはバッグインボックス用内袋を構成するフィルムが厚く、また二重袋構造のものが多い為である。γ線は透過力に優れているため、γ線照射滅菌は梱包形態の制限も、線量のバラツキも少なく、バッグインボックス用内袋のような製品も滅菌可能であるが、処理速度が遅い。
一方、電子線照射滅菌は、透過力がγ線ほど強くないが、処理速度は速い。近年、γ線に近い透過力を備える電子線照射装置が開発されており、バッグインボックス用内袋の滅菌処理において、処理速度の速い電子線照射滅菌が採用されるケースも増えてきている。
【0005】
特許文献2は、多数の包装袋からなる連続容器(連続包装袋)の内面及び外面を確実に殺菌することを目的とする発明である。一対の連続フィルムの各々内面を放射線処理した後、一対のフィルムを重ね合わせ、連続容器とし、次いで外面を殺菌することを特徴とする。
包装袋を滅菌処理する場合、特許文献2に記載されているように、連続容器(複数の容器が切り離し予定線を介して長尺状に連なった容器群)の状態で滅菌処理を行うことが多い。ロール状に巻かれた連続容器を、ロールから繰り出しながら放射線を照射して滅菌し、再びロール上に巻き取るのである。
【0006】
スパウト付きバッグインボックス用内袋においては、スパウトが予め設置されていることから、ロール状に巻くことができず、上述した滅菌を行うことは難しい。このようなロール状に巻くことができない容器は、複数の容器を梱包資材で被覆し、一つの容器梱包体とした後に、該容器梱包体に放射線を照射して、容器の滅菌処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−25855号公報
【特許文献2】特開2006−232381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、スパウト付きバッグインボックス用内袋を連続容器の状態で折り畳んで袋状の梱包資材(プラスチックフィルムからなる袋)に入れ(図3参照)、容器梱包体を作成し、該容器梱包体に電子線を照射して滅菌処理を行った。すると、連続容器と梱包資材との間でスパークが生じ、該梱包資材にピンホールが発生した。梱包資材にピンホールが発生すると、連続容器の清浄性が低下する恐れがある。また連続容器と梱包資材との間でスパークが発生すると、連続容器の一部が溶け出す恐れもある。
滅菌処理後、梱包資材から連続容器を取出す際に、重なり合うバッグインボックス用内袋同士が密着し、スムーズに取出すことができなかった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、複数の容器を梱包資材で被覆して容器梱包体とした後、該容器梱包体に電子線を照射する容器の滅菌方法において、容器と梱包資材との間でスパークが発生することを防止し、更には容器梱包体から容器を取出す際に、容器同士の密着を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、電子線照射滅菌時にスパークが発生した原因や、容器を取出す際に容器同士が密着した原因について検討した結果、電子線照射によって容器に静電気が滞留したことが原因であると推察した。そして容器梱包体において容器を被覆する梱包資材に帯電防止性をもたせることにより上記課題が解決できることを見出した。
【0011】
即ち本発明によると、複数の容器を梱包資材で被覆して容器梱包体を作成するステップと、前記容器梱包体に電子線を照射するステップとを備える容器の電子線照射滅菌方法において、前記梱包資材の前記容器と接する面の表面抵抗率を1.0×1014Ω/□以下とすることを特徴とする容器の電子線照射滅菌方法が提供される。
また、前記梱包資材の前記容器と接する面の表面抵抗率を1.0×1013Ω/□以下とすることを特徴とする前記容器の電子線照射滅菌方法が提供される。
更に、前記梱包資材がプラスチックフィルムであることを特徴とする前記容器の電子線照射滅菌方法が提供される。
【0012】
更にまた、前記プラスチックフィルムが袋状に成形されていることを特徴とする前記容器の電子線照射滅菌方法が提供される。
更にまた、前記容器がスパウト付き袋であることを特徴とする前記容器の電子線照射滅菌方法が提供される。
更にまた、前記容器が切り離し予定線を介して連なった連続容器の状態にあることを特徴とする前記容器の電子線照射滅菌方法が提供される。
更にまた、前記容器梱包体が、前記複数の容器を前記梱包資材で被覆したものを、更に箱体に収納したものであることを特徴とする前記容器の電子線照射滅菌方法が提供される。
【0013】
加えて、少なくとも一方の表面の表面抵抗率が1.0×1014Ω/□以下であるプラスチックフィルムであって、前記容器の電子線照射滅菌方法の梱包資材として用いられることを特徴とするプラスチックフィルムが提供される。
更に、少なくとも一方の表面層が帯電防止剤を含む樹脂組成物よりなることを特徴とする前記プラスチックフィルムが提供される。
【0014】
また、少なくとも一方の表面抵抗率が1.0×1014Ω/□以下である梱包資材で、複数の容器を被覆してなる容器梱包体であって、前記容器の電子線照射方法に用いられることを特徴とする容器梱包体が提供される。
また、前記容器の電子線照射滅菌方法によって滅菌処理された容器を、容器梱包体から取出して自動充填機に導入し、該容器内に内容物を充填することを特徴とする自動充填方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明による容器の電子線照射滅菌方法では、電子線の照射に先立ち、容器が表面抵抗率の低い梱包資材で被覆される為、電子線照射滅菌を行っても容器に静電気が滞留し難い。その結果、梱包資材と容器との間で発生していたスパークが抑制される。また電子線照射滅菌後、各容器が密着して取出し難くなるといった問題も低減する。
尚、梱包資材が袋状に成形されたプラスチックフィルムであると、梱包資材で容器を覆う作業が簡単である。また容器をクリーンルームなどへ運び入れる際に、容器の持ち運びが容易である。
本発明により滅菌される容器が、切り離し予定線を介し連なった連続容器であると、滅菌処理された容器を、自動充填機に導入する作業が容易になる。さらに、容器がプラスチックフィルム等の梱包資材だけでなく、更に箱体により被覆されていると、容器の保管や運搬が容易になり、更に容器梱包体を段積みして電子線照射することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の電子線照射滅菌方法を説明するための図で、梱包ステップ(A)および照射ステップ(B)の模式図である。
図2】本発明に用いられる梱包資材であるプラスチックフィルムの一実施例を表す模式的断面図(A)(B)である。
図3】本発明の電子線照射滅菌方法を説明するための模式図である。
図4】実施例1、2の電子線照射後の各容器の帯電量のばらつきを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の容器の電子線照射滅菌方法を説明するための模式図である。本発明の電子線照射滅菌方法は、複数の容器10を梱包資材11で被覆し容器梱包体Xを作成するステップ(以下、梱包ステップと称する)(A)と、前記容器梱包体に電子線を照射するステップ(以下、照射ステップと称す)(B)とを備える。
【0018】
[梱包ステップ]
<容器>
梱包ステップでは、複数の容器10が梱包資材11で被覆される。
図1における容器10はガラス瓶であるが、本発明の電子線照射滅菌方法は、その他の容器にも適用することができる。本発明により滅菌される容器10として、プラスチックボトルや、平袋、スタンディングパウチ、ガゼット袋、バッグインボックス用内袋等を例示することができる。尚、梱包ステップにおいて、一つの梱包資材11で被覆する容器10の数は特に限定されないが、容器10が、ガラス瓶やプラスチックボトルのような、内容物を充填する前に既にある程度の嵩を有するものである場合、十数個から数十個程度が一般的である。また容器が、スタンディングパウチ、ガゼット袋、バッグインボックス用内袋のような、内容物を充填する前には扁平な容器である場合、数十〜数百個程度が一般的である。また該容器は、各容器が切り離し予定線を介してつながった連続容器の状態であってもよい。
【0019】
<梱包資材>
複数の容器10を包む梱包資材11は、少なくとも一方の表面の表面抵抗率が1.0×1014Ω/□以下のフィルムである。該抵抗率が1.0×1014Ω/□を超えると、梱包資材11と容器10との間のスパークを抑制することが困難である。該表面抵抗率は、特に1.0×1013Ω/□以下であることが望ましく、中でも1.0×1012Ω/□以下であることが望ましく、更には1.0×1011Ω/□以下であることが望ましい。当該抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であると、容器が切り離し予定線を介して連なった連続容器である場合に、各包装袋が密着し難く、梱包資材11の中から連続容器を容易に取出すことができる。尚、電子線を高線量で照射する場合は、容器10が特に帯電し易い為、梱包資材11の表面抵抗率を1.0×10Ω/□以下にすることが望ましい。
【0020】
梱包資材11は、例えばプラスチックケース等でもよいが、容器10と梱包資材11とが接触し易いという理由から、可撓性を備えるプラスチックフィルムであることが望ましい。
梱包資材11は、例えば従来プラスチックフィルムに用いられていた樹脂に帯電防止剤を配合した樹脂組成物を成形することにより得られる。従来、プラスチックフィルムに用いられていた樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等を例示することができる。本発明の梱包資材11は、これらの樹脂の1種、或いは2種以上と帯電防止剤を含む樹脂組成物をフィルム状に製膜して得ることができる。尚、梱包資材11の柔軟性や価格を考慮すると、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどを採用し、これをフィルム状に成形したプラスチックフィルムを、梱包資材11とすることが望ましい。
【0021】
帯電防止剤としては、高分子型帯電防止剤、界面活性剤型帯電防止剤、導電性微粉末等を例示することができ、これらのうちの1種、或いは2種以上を選択し、採用することができる。尚、透明性が必要な場合には、高分子型帯電防止剤又は界面活性剤型帯電防止剤を用いることが好ましい。
高分子型帯電防止剤は、持続性帯電防止剤や永久帯電防止剤と呼ばれるポリマータイプの帯電防止剤で、ブリードアウトし難く、透明性や帯電防止効果の持続性に優れる。高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコ−ル、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエ−テルエステルアミド、エチレン−メタクリル酸共重合体などのアイオノマ−、ポリエチレングリコールメタクリレート系共重合体等の第四級アンモニウム塩から選択される1種、または2種以上の混合物、または2種以上の共重合体、更にそれらと他の樹脂との共重合体等の中で、分子鎖中に極性基を有し無機塩または低分子量有機プロトン酸塩を錯体形成または溶媒和することが可能な樹脂を例示することができる。この中でオレフィン系樹脂との相溶性や帯電防止性能の点からポリエーテルポリオレフィン、ポリエ−テルエステルアミドが好ましく、ポリエーテルポリオレフィンが特に好ましい。
【0022】
界面活性剤型帯電防止剤としては、従来公知の陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤等を使用できる。陽イオン界面活性剤としては、例えば四級アンモニウム塩、ピリジン誘導体等を使用することができる。また、陰イオン界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキル芳香族スルフォン酸塩、コハク酸スルフォン酸塩、リン酸エステル塩等を用いることができる。非イオン界面活性剤としては、例えば、アルコール型(ポリエチレングリコールなど)、エーテル型(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなど)、エステル型(ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなど)、アミン型(ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジエタノールアミン、ヒドロキシアルキルアミンモノエタノールアミンなど)、グリセリン型(ポリオキシエチレングリセリドなど)、アミド型(アルキルアルカノールアミド、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミドなど)を用いることができる。さらにまた、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン、ヒドロキシアルキルイミダゾリン硫酸エステル、ベタイン形カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等を用いることができる。
【0023】
電子線を高線量で照射する場合は、梱包資材11の表面抵抗率を大きく下げる必要がある。このような場合は、帯電防止剤として導電性微粉末を用いることが望ましい。
導電性微粉末は、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、カーボンブラック、有機導電性化合物等の中から1種、または2種以上を選択し、採用することができる。
【0024】
梱包資材11を成す樹脂組成物中に含まれる帯電防止剤の量は特に限定されるものではなく、表面抵抗率が1.0×1014Ω/□以下になるよう、適宜決定すればよい。このような抵抗率を達成するためには、梱包資材11を成す樹脂組成物中に帯電防止剤を5〜35重量%程度配合することが望ましく、特に10〜25重量%程度配合することが望ましい。帯電防止剤の配合量が少ない場合は、所望の帯電防止性能が得られず、電子線照射滅菌される容器に静電気が滞留することを抑制し難い。また帯電防止剤の配合量が多いと、フィルム表面の表面抵抗率は下がるが、フィルムが高価格になる。
【0025】
図1に示す梱包資材11は、上述した樹脂や帯電防止剤から成る単層のプラスチックフィルムであるが、本発明の梱包資材11は、図2(A)に示すような、表面抵抗率が1.0×1014Ω/□以下の層(以下、帯電防止層と称す)21aと、他の層21bからなる2層のプラスチックフィルムであっても良く、更に図2(B)に示すような、二つの帯電防止層21’aの間に他の層21’bが配された3層のプラスチックフィルムであっても良い。図2(A)(B)に示すプラスチックフィルム21、21’は、同程度の膜厚の単層のプラスチックフィルムと比較すると、同程度の効果を奏するために必要な帯電防止剤の量が少ない。
尚、図2(A)に示すプラスチックフィルム21のように、一方の表面層と他方の表面層の表面抵抗率が異なる場合、抵抗率が低い層が内面(内容物と接する面)となるように、容器をプラスチックフィルム21で覆うことが、容器の帯電を効果的に防止することができる為、望ましい。
【0026】
<容器梱包体>
複数の容器を、上述した梱包資材11で被覆し、これを容器梱包体Xとして電子線照射滅菌を行ってもよいが、図1に示す容器梱包体Xは、更に箱体12を備える。箱体12は、従来梱包資材として用いられている箱体を適宜使用することができ、例えば段ボール箱等を用いるとよい。容器梱包体Xが、容器10とプラスチックフィルム等の梱包資材11のみからなる場合、プラスチックフィルムは可撓性であるため運搬し難い。また容器10が、割れたり変形したりする恐れもある。よって、本発明の容器梱包体Xは、保型性のある箱体12を備えることが好ましい。
【0027】
<被覆方法(容器梱包体の作成方法)>
複数の容器10を梱包資材11や箱体12で被覆し、容器梱包体Xを作成する方法は特に限定されないが、例えば、箱体12を開き、梱包資材11を敷き、該梱包資材11の中央部分に容器10を配置し、梱包資材11の四辺を折り畳み、更に箱体12の四つのフラップを折り畳むとよい。尚、プラスチックフィルムからなる梱包資材11は予め袋状に成形して置くことが望ましい。梱包資材11がプラスチックフィルムから成り、袋状であると、複数の容器10を被覆する作業や、箱体12から複数の容器10を一度に取り出す作業が容易になる。
【0028】
[照射ステップ]
容器梱包体Xが完成したら、該梱包体Xに電子線を照射する。電子線の照射方法は特に限定されず、従来と同様の方法を採用することができる。図1(B)では、容器梱包体Xをベルトコンベアー等(図示しない)で電子線照射装置Yに供給し、容器梱包体Xの上方から電子線を照射する。電子線の照射量は特に限定されるものではないが、2〜60kGy、特に5〜30kGyの照射が一般的である。また、容器梱包体Xの電子線照射は複数回行っても良い。例えば容器梱包体Xに電子線照射を行った後、容器梱包体Xの上下を反転させ、再度電子線照射滅菌を行うと、容器梱包体Xにより均一に電子線照射を行うことができる。
【0029】
[別の実施形態]
図3は、本発明の電子線照射滅菌方法の別の実施形態を説明するための模式図である。
図3における容器30は、バッグインボックス用内袋として用いられるスパウト30s付き袋であり、各容器30が連なった連続容器の状態で梱包資材31に収納されている。
スパウト付き袋は、スパウトがある為ロール状に巻き取ることができない。このような容器30は、図3に示すように、連続容器の状態で折り畳み、梱包資材31により被覆するとよい。図3に示す滅菌方法では、容器(スパウト付き袋)30を梱包資材31と段ボール箱から成る箱体32とで覆い、容器梱包体Xを作成(梱包ステップ)した後、該容器梱包体に電子線を照射(照射ステップ)して、容器30の電子線照射滅菌を行う。
尚、該容器30に内容物を充填する際には、電子線照射滅菌された容器梱包体から、最先の容器を引き出し、これを自動充填機に導入するとよい。該容器は連続容器の状態で梱包資材31に収納されているため、最先の容器を自動充填機に導入すると、他の容器も順次、自動充填機に供給される。本発明の電子線照射滅菌方法により滅菌された容器は、各容器が密着し難い為、自動充填機への供給がスムーズである。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づき本発明の効果を示す。尚、各実施例、比較例における評価の方法は以下の通りである。
[容器の取出し易さ]
電子線照射滅菌後に、容器梱包体から容器(スパウト付き袋)を順次取出す。各容器が密着することなく、スムーズに取出せたものは○、容器同士の密着が多少見られたものは△、容器の密着が多くみられ、自動充填機への導入には適さないと思われるものは×とする。
[スパークの有無]
電子線照射滅菌後に、梱包資材(袋状のプラスチックフィルム)を取出し、袋状のフィルムを、フラットな状態に切り開いたのち、該梱包資材を紙の上に置く。梱包資材の表面にアルコールを吹き付け、該アルコールが梱包資材を透過し、紙に至るか、否か、確認する。紙にアルコールの跡が付いた場合、梱包資材にピンホールが発生していると判断する。尚、梱包資材にピンホールが発生したものは、電子線照射滅菌中に容器と梱包資材との間でスパークが発生したものと思われる。
【0031】
[実施例1]
ポリエチレン系樹脂80重量%にグリセリン脂肪酸エステル系帯電防止剤を20重量%添加した樹脂組成物を製膜し、50μmの単層のフィルムを製造し、該フィルムを梱包資材とする。該梱包資材の表面抵抗率は1.0×1012Ω/□であった。
梱包資材を袋状に成形し、これを段ボール箱に収納し、更にその中に容器(スパウト付き袋)200枚を連続容器の状態で収納し、梱包資材の開口部を折畳み、更に段ボール箱のフラップを折り畳んで、容器梱包体を得る。次いで、該容器梱包体に10kGyの電子線を照射し、容器梱包体を上下反転し10kGyの電子線を照射し、更に容器梱包体を反転し10kGyの電子線を照射し、更に容器梱包体を反転し10kGyの電子線を照射し、容器の電子線照射滅菌を行った(表裏2回ずつ、各10kGyの電子線を照射)。
照射後、容器梱包体から容器(スパウト付き袋)を取出し、容器の取出し易さを確認した。また容器を取出した後、梱包資材にピンホールがないか確認した。結果を表1に記す。
【0032】
[実施例2]
プロピレン系樹脂から成る層(A)と、エチレン系樹脂からなる層(B)と、エチレン系樹脂75重量%とポリエーテルオレフィン系高分子型帯電防止剤20重量%と非イオン系の界面活性剤型帯電防止剤5重量%から成る帯電防止層(C)とを、この順で備える80μmの3層のフィルムを製造し、該フィルムを梱包資材とする。該梱包資材の帯電防止層(C)の表面抵抗率は1.0×1010Ω/□であった。
実施例1と同様にして、容器(スパウト付き袋)200枚の電子線照射滅菌を行った。尚、プラスチックフィルムを袋状に成形する際に、梱包資材(プラスチックフィルム)の帯電防止層(C)が内側になるようにした。
照射後、容器梱包体から容器(スパウト付き袋)を取出し、容器の取出し易さを確認した。また容器を取出した後、梱包資材にピンホールがないか確認した。結果を表1に記す。
【0033】
[比較例1]
梱包資材を製造する際に、帯電防止剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電子線照射滅菌を行った。梱包資材の表面抵抗率は1.0×1016Ω/□であった。容器の取出し易さ、スパークの有無について表1に記す。
【0034】
【表1】
【0035】
帯電防止剤が配合された梱包資材を用いて電子線照射滅菌を行った実施例1、2においては、梱包資材にピンホールの発生が見られなかった。よって滅菌処理中にスパークが発生しなかったものと思われる。一方、比較例1に用いられた梱包資材には、多数のピンホールが確認された。よって滅菌処理中にスパークが発生したものと思われる。また梱包資材の表面抵抗率が下がるほど、取出し時に密着する容器の数が少なくなった。
【0036】
実施例1、2については、容器を取出す際に、各容器の表裏の帯電量を測定した。実施例1の各容器の静電位差は全て±20kV以内であり、実施例2は全て±15kV以内であった。各容器の帯電量のばらつきを図4に示す。実施例1、2の帯電量の標準偏差値を求めたところ、8.02(実施例1)、6.14(実施例2)であった。梱包資材の表面抵抗率が小さいほど、容器が帯電し難いことが確認できた。
【符号の説明】
【0037】
10 容器(ガラス瓶)
11、21、21’、31 梱包資材(プラスチックフィルム)
12、32 箱体
21a、21’a 帯電防止層
21b、21’b 他の層
30 容器(スパウト付き袋/連続容器)
30s スパウト
X 容器梱包体
Y 電子線照射装置




図1
図2
図3
図4