(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のリアクトルは、コアを冷却する場合には、ケース内に放熱性を有する充填材を充填し、固化させてなる充填成形部を介して、冷却面を兼ねるリアクトルの設置面によって行っていた。しかし、この技術のみでは、コアの上部、すなわち、設置面から遠い部分においては、冷却効率に問題がある。また、設置面を基準にした高さの高いリアクトルの場合、設置面からコアまで複数の部材が介在することがあり、その分だけ熱抵抗が増大するため、一層冷却効率が低下する。
【0006】
また、従来のリアクトルは、コアの周囲を被覆する樹脂部材が設けられた状態でリアクトル本体が構成され、リアクトル本体がケースに収容される。このように、リアクトル本体が組み立てられた後に、ケースに収容されるものであるため、リアクトル本体とケースとの間には隙間が生じ得る。すなわち、樹脂部材又はコアは、その一部がケースと接するが、その他の部分についてはケースと接触せず、両者は離間する。そのため、当該間隙の空気が介在することとなり、熱抵抗が増大する。このような問題に対処するため、従来から、リアクトル本体をケースに収容した後、ケース内に充填材を充填することにより、リアクトル本体とケースとの間の間隙に充填材を介在させ、熱抵抗を低くして冷却効率を向上させる技術が採用されていた。
【0007】
しかし、リアクトルは量産品であるため、その組立性の良さが要求されるところ、上記の充填材をケースに充填させる方法は、リアクトル製造の最終段階でなされるものであり、リアクトルの組立性向上に関与するものではなかった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、冷却効率及び組立性を向上させることのできるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリアクトルは、次の構成を有することを特徴とする。
(1)コア、前記コアの一部に装着されるコイル、及び前記コアを被覆して前記コイルから絶縁する樹脂部材を有するリアクトル本体と、前記リアクトル本体を収容するケースと、を備えること。
(2)前記リアクトル本体は、全体形状が扁平であり、前記コア、前記ケース及び前記樹脂部材は、前記コイルの巻軸方向に直交する面で上下に二分割され、前記コアは、前記コイルが装着される脚を有する上コアと下コアとから構成され、前記ケースは、前記上コアを収容する上ケースと前記下コアを収容する下ケースとから構成され、前記樹脂部材は、前記上コア及び前記上ケースの間にそれぞれと密着して介在し、前記上コア及び前記上ケースとを一体化する上側樹脂部材と、前記下コア及び前記下ケースの間にそれぞれと密着して介在し、前記下コア及び前記下ケースを一体化する下側樹脂部材とから構成され、前記上コア、前記上ケース、及び前記上側樹脂部材を有する上ユニットと、前記下コア、前記下ケース、及び前記下側樹脂部材を有する下ユニットと、が、前記上コア及び前記下コアの前記脚に前記コイルが装着されて接着されてなり、前記下ケースには、前記扁平の片面を冷却面上に設置される底面とし、当該底面に、前記コアの底面の全面が露出する開口部が設けられていること。
【0010】
本発明において、次の構成を有していても良い。
(1)前記ケースの側面に、前記コイルの端部引き出し用の開口を設けたこと。
(2)前記開口は、前記ケースの一側面に設けられたこと。
(3)前記上コア及び下コアは、E字状のコアであること。
(4)前記上ケースには、リアクトルを前記冷却面に固定するための固定部が設けられていること。
(5)前記ケース内の隙間に配置された放熱性及び絶縁性を有する充填成形部を備え、
前記ケースの内周面の一部と前記コイルとの間に介在しているのは、前記充填成形部のみであること。
(6)前記ケースの冷却面とは反対側の前記上ケースの上面には、前記コアの上面の全面が露出する開口部が設けられ、前記開口部を覆う上蓋を備えること。
(7)前記ケースの冷却面とは反対側の前記上ケースの上面には、前記コアの上面の全面が露出する開口部が設けられ、前記開口部を覆う上蓋を備え、前記上蓋は、前記上ケースと前記上コアとの間の前記樹脂部材と同じ樹脂で一続きに形成されていること。
【0011】
本発明のリアクトルの製造方法は、上下に分割されたコア及びケースと、前記コアの一部に装着されたコイルとを有するリアクトルの製造方法であって、前記ケースには、前記コアの一面全面を露出させる開口部が設けられ、前記一面全面が前記開口部から臨むように、所定間隔隔てて前記分割されたコア及びケースを金型内にセットして、前記金型内に樹脂を充填し、固化させるユニット製造工程を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷却効率及び組立性を向上させることのできるリアクトルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。
【0015】
[1.実施形態]
[1−1.概略構成]
図1は、本実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す斜視図であり、
図2は、その分解斜視図である。
【0016】
リアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、電圧の昇降圧等に使用される。本実施形態のリアクトルは、例えばハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のリアクトルである。リアクトルは、これら自動車に搭載される昇圧回路の主要部品である。
【0017】
リアクトルは、リアクトル本体と、リアクトル本体を収容するケース4と、を備える。リアクトル本体は、磁性体を含み構成されるコア10と、コア10の一部に装着されたコイル5と、コア10の外周を覆い、コア10、コイル5、及びケース4のそれぞれの間を絶縁する樹脂部材2を有する。ケース4は、リアクトル本体より若干大きく、隙間を空けてリアクトル本体が収容される。そして、この隙間に樹脂部材2又は充填材が固化してなる充填成形部6が設けられている。
【0018】
ケース4には、その側面にフランジ状に張り出した固定部41が設けられており、固定部41に設けられたネジ孔にネジを挿入し、ネジ締結により冷却面7にリアクトルが固定される。冷却面7は、リアクトルを冷却する面である。冷却面7は、例えば、PCUケース、ミッションケース、電圧制御ユニットのケース又はヒートシンクなどのリアクトルの設置対象となるベースの設置面である。
【0019】
[1−2.詳細構成]
本実施形態のリアクトルの各部の詳細構成について、
図1〜
図5を用いて説明する。なお、本明細書において、
図1に示すz軸方向を「上」側、その逆方向を「下」側とする。各部材の構成を説明するのに、「下」は「底」や「裏」とも称する。z軸方向は、リアクトルの上下方向であり、リアクトルの高さ方向である。
【0020】
(コア)
図3は、コア10の斜視図である。
図4は、コア10の分解斜視図である。
図5は、
図1のA−A断面図であり、
図6は、
図1のB−B断面図である。
【0021】
コア10は、磁性体を含み構成され、その全体形状が扁平である。コア10としては、フェライトコア、積層鋼板、圧粉磁心、又はメタルコンポジットコアを用いることができる。ここでは、コア10は、磁性粉末と樹脂とが混練されて成型されて成るメタルコンポジットコアである。本実施形態のコア10は、
図3及び
図4に示すように、コイル5の巻軸方向に直交する面で二分割された上下一対の上コア10a、下コア10bからなる。コア10の後述する中脚11にコイル5を嵌め込み、コイル5をコア10の一部に装着するためである。上コア10a、下コア10bは、いずれも同一形状のE字型コアであり、各脚部が突き合わされてコア10が構成される。
【0022】
具体的には、
図4に示すように、上コア10a及び下コア10bは、円柱状の中脚11と、中脚11の両脇に位置し、断面が円弧状で中脚11と平行に延びる一対の外脚12と、中脚11及び一対の外脚12を繋ぐオーバル形状の継板13とから構成されて、各脚11、12を含む断面がE字形状をなす。
【0023】
中脚11は各コア10a、10bの中央に位置する。一対の外脚12は、円弧の中心を中脚11の中心に一致させて同一円上に向かい合って配置されている。一方の外脚12は、他方の外脚12よりその断面の円弧が短い。継板13は、平板であり、特に、リアクトル外部に露出する面は平面である。外脚12及び継板13の磁束が通過する断面積は、中脚11の磁束が通過する断面積の半分以下である。すなわち、外脚12のz軸と直交する断面積は、中脚11のz軸と直交する断面積の半分以下であり、継脚13のy軸と直交する断面積は、中脚11のz軸と直交する断面積の半分以下である。
【0024】
上コア10a及び下コア10bは扁平である。すなわち、中脚11の延び方向となる高さよりも、中脚11の断面である円の直径の方が大きい。
【0025】
図5及び
図6に示すように、コア10は、コイル5が装着される中脚部101と、中脚部101の両脇に位置する一対の外脚部102と、中脚部101及び外脚部102を繋ぐ継板部103とを有する。
【0026】
中脚部101は、上コア10a、下コア10bの中脚11を突き合わせることで円柱状に構成されており、その周囲にコイル5が装着される。中脚部101は、コイル5に通電がなされることにより磁束が発生する部位である。
【0027】
外脚部102は、上コア10a、下コア10bの外脚12を突き合わせることで断面が円弧の柱状に構成されている。一対の外脚部102は、その円弧の中心を中脚11の中心に一致させて、互いに向かい合うように同一円上に配置されており、一方の外脚部102は、他方の外脚部102よりも円弧が短く構成されている。
【0028】
継板部103は、上コア10a、下コア10bの継板13で構成されている。外脚部102及び継板部103は、中脚部101で発生した磁束が通過するヨーク部である。中脚部101で発生した磁束は、例えば、上コア10aの継板部103から左右の一対の外脚部102、下コア10bの継板部103を介して中脚部101に戻り、閉じた磁気回路を形成する。
【0029】
なお、本実施形態では、上コア10a、下コア10bの対になる各脚間にスペーサを設けていないが、当該部分にスペーサを介在させても良い。スペーサは、所定幅の磁気的なギャップを与えてリアクトルのインダクタンス低下を防止する。スペーサの材料としては、非磁性体、セラミック、非金属、樹脂、炭素繊維、若しくはこれら二種以上の合成材又はギャップ紙を用いることができる。
【0030】
(コイル)
コイル5は、絶縁被覆を有する導線である。本実施形態では、コイル5は、平角線の導線が円状に巻かれて成るエッジワイズコイルである。コイル5は、その全体形状が扁平である。すなわち、導線が巻かれてなる巻回部は、その直径が、コイル5の巻軸方向の長さよりも短い。コイル5の線材や巻き方は平角線のエッジワイズコイルに限定されず、他の形態であっても良い。
【0031】
図5及び
図6に示すように、コイル5は、その空芯部にコア10の中脚部が配置されており、コイル5の巻軸と中脚部が平行になっている。
図1に示すように、コイル5の両端部51a、51bは、円弧が短い外脚部の両脇から、互いに平行にリアクトルの側方外部に引き出されている。
【0032】
(ケース)
図7は、ケース4の斜視図である。
図8は、ケース4の分解斜視図である。ケース4は、リアクトル本体を収容する収容部材である。ケース4は、例えばアルミニウム合金等、熱伝導性が高く軽量な金属で構成されており、放熱性を有する。
【0033】
図7に示すように、コア10及びコイル5が扁平であるため、ケース4も全体的に扁平である。ケース4は、リアクトル本体の収容スペースを形成する側壁40と、側壁40に設けられた固定部41と、上面及び底面に設けられた開口部42と有する。
【0034】
側壁40は、リアクトル本体を取り囲むように環状に形成された壁である。本実施形態では、側壁40の全体形状は、
図7に示すように、矩形の内の3辺と、その残りの一辺が円弧状になった形状に形成されている。
図7に示すように、側壁40の内周面の一部には、内側に向かって突出した凸部401が設けられている。
図6に示すように、凸部401は、2箇所に対向して設けられている。一方の凸部401は、中脚部101を挟んで互いに向かい合う外脚部102の一方の端部間に設けられ、他方の凸部401は、外脚部102の他方の端部間に設けられ、2つの凸部401は対向している。凸部401は、コア10の中脚部101にコイル5を装着した場合に、コイル5の巻回部の外周部分に接しない程度に内側に出っ張っている。凸部401は、ケース4の内周に設けられる樹脂部材2で被覆されておらず、樹脂部材2からは露出しており、コイル5に近接している。これにより、放熱経路が短くなり、コイル5の熱をケース4に伝達しやすくし、放熱性を向上させることができる。
【0035】
図7及び
図8に示すように、固定部41は、側壁40の外周面に3つ設けられており、ここでは、側壁40の円弧状をなす部分に外側に張り出して2つ設けられ、当該部分に対向する一辺となる部分に外側に張り出して1つ設けられている。各固定部41にはネジ孔411が設けられており、リアクトルを冷却面7に設置し、当該ネジ孔411にネジを挿通し、ネジ締結することにより、リアクトルを冷却面7に固定する。固定部41は、後述する上ケース4aに設けられている。
【0036】
ケース4の側面には、コイル5の端部51a、51bをリアクトル外部に引き出すための開口43がそれぞれ設けられている。本実施形態では、2つの開口43は、コイル5の直径程度離間して、ケース4の一側面に設けられている。
【0037】
ケース4は、コイル5の巻軸方向に直交する面で上下に二分割されて構成されており、ここでは、上ケース4aと下ケース4bとから構成されている。上ケース4aと下ケース4bは、固定部41を除いて同一の構成を有する。
【0038】
上ケース4aは、上コア10aを収容し、下ケース4bは下コア10bを収容する。上ケース4a、下ケース4bには、上コア10aの継板13、下コア10bの継板13の全面が露出する開口部42が設けられている。換言すれば、
図9に示すように、下ケース4bの開口部42は、下ケース4bの底面に設けられ、コア10の底面全面を露出させる。上ケース4aの開口部42は、上ケース4aの上面に設けられ、コア10の上面全面を露出させる。このようにコア10を露出させることにより、ケース4の磁気遮蔽効果に起因するインダクタンス値の低減を防止することができる。
【0039】
図7に示すように、開口部42は、コア10の上面及び底面の形状に倣ってオーバル形状であり、コア10の上面及び底面より一回り大きい。上ケース4aと下ケース4bとを組み合わせると、リアクトル本体を収容するスペースと両開口部42とが連通し、ケース4は上下に貫通している。
【0040】
図8に示すように、上ケース4a及び下ケース4bには、一側面には、内部のスペースと外部が連通する矩形状の切欠き431が設けられており、各ケース4a、4bが組み合わされる際に、各切欠き431が組み合わされることにより開口43が形成される。
【0041】
(樹脂部材)
図2に示すように、樹脂部材2は、コイル5の巻軸方向と直交する面で上下に二分割されており、上コア10a及び上ケース4aとの間に介在する上側樹脂部材2aと、下コア10b及び下ケース4bとの間に介在する下側樹脂部材2bと、を有する。上側樹脂部材2aは、下コア10bとの各脚11、12の接続面を除き、上コア10aの周囲を被覆する。上側樹脂部材2aは、上コア10a及び上ケース4aの双方とそれぞれ密着している。下側樹脂部材2bは、上コア10aとの各脚11、12の接続面及び底面を除き、下コア10aの周囲を被覆する。下側樹脂部材2bは、下コア10b及び下ケース4bの双方とそれぞれ密着している。各樹脂部材2a、2bの密着の程度は、上コア10a及び上ケース4a、下コア10b及び下ケース4bが全面的に隙間なく密着していることが望ましいが、一体化させる程度であれば一部に空隙が含まれていても良い。
【0042】
上側樹脂部材2a及び下側樹脂部材2bは、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等の樹脂から構成されている。
【0043】
上側樹脂部材2aは、上コア10aと上ケース4aとを絶縁しつつ、上コア10aと上ケース4aとを一体化する。下側樹脂部材2bは、下コア10bと下ケース4bとを絶縁しつつ、下コア10bと下ケース4bとを一体化する。言い換えると、
図10に示すように、上側樹脂部材2aは、上コア10a、上ケース4a及び上側樹脂部材2aにより上ユニット1aを構成し、同様に、下側樹脂部材2bは、下コア10b、下ケース4b及び下側樹脂部材2bにより下ユニット1bを構成する。
【0044】
上側樹脂部材2aには、上ケース4aの開口部42を塞ぐ上蓋21が延設されている。すなわち、
図5及び
図6に示すように、上蓋2cと上側樹脂部材2aとは、同一樹脂で一続きに継ぎ目無く構成された一つの樹脂製の部材である。上蓋21は、上ケース4aの開口部42から露出する上コア10aの上面を覆う。
【0045】
(充填成形部)
充填成形部6は、充填材がケース4内に充填及び固化されて形成されている。充填成形部6は、ケース4内の隙間に形成されてなる。そのため、充填成形部6は、コア10、コイル5、ケース4、樹脂部材2の形状に倣った形状となっている。充填材には、リアクトルの放熱性能の確保及びリアクトル本体からケースへの振動伝搬の軽減のため、比較的柔らかく熱伝導性の高い樹脂が適している。また、充填材は絶縁性を有することが好ましい。
【0046】
図5及び
図6に示すように、コイル5の周囲に充填成形部6が配置され、樹脂部材2を介してコア10と隣接しており、コイル5の熱が充填成形部6及び樹脂部材2を介してコア10を経て、冷却面7へと至る放熱ルートが形成されている。
【0047】
また、コイル5とケース4の凸部401との間に介在しているのは、充填成形部6のみである。
【0048】
[1−3.リアクトルの製造方法]
次に、本実施形態のリアクトルの製造方法について説明する。本リアクトルの製造方法は、(a)ユニット製造工程、(b)組立工程、及び(c)充填工程を有している。
【0049】
(a) ユニット製造工程
ユニット製造工程は、各ユニット1a、1bを製造する工程である。各ユニット1a、1bは、金型内に下ケース4b及び下コア10b、又は上ケース4a及び上コア10aを各ケース4a、4b、各コア10a、1bを所定間隔を空けつつセットして、治具等で各部材を押さえ、当該金型内に樹脂を充填し、固化させることで形成する。このセットの際、上コア10aの上面全面、下コア10bの底面全面に金型内の壁や突起或いは治具を当てておく。金型内壁との間隔に樹脂が充填され、固化することで、下側樹脂部材2b、上側樹脂部材2aが形成され、
図10に示すように、各ケース4a、4bと各コア10a、10bとが一体化される。下側樹脂部材2bは、下ケース4bと下コア10bとの間に密着して介在し、上側樹脂部材2aは、上ケース4aと上コア10aとの間に密着して介在する。このような一体化の際、上コア10aの上面は、上ケース4aの上面と同一平面上に位置し、上ケース4aの開口部42からその全面が臨むように露出する。また、下コア10bの底面は、下ケース4bの底面と同一平面上に位置し、下ケース4bの開口部42からその全面が臨むように露出する。
【0050】
但し、上ユニット1aの場合では、金型内に樹脂を充填し、固化することで、上蓋21が形成されており、上コア10aの上面は上蓋21により被覆される。また、上蓋21と上側樹脂部材2aは、上ユニット1aがインサート成形法により形成されるものであるため、同一樹脂により一続きに継ぎ目無く形成された樹脂部材である。なお、上蓋21に設けられた円形の開口及び略楕円形の開口は、金型内で上コア10aを治具で固定する際に形成されたものである。
【0051】
(b) 組立工程
組立工程は、下ユニット1bと上ユニット1aとをコイル5を介在させてリアクトルを組み立てる工程である。すなわち、
図11に示すように、下ユニット1bにおける下コア10bの中脚にコイル5を装着し、各コア10a、10bの各脚を突き合わせるようにして、下ユニット1bに対して上ユニット1aを上から被せて組み立てる。その際、各コア10a、10bの各脚、及び各ケース4a、4bの対向する面のそれぞれに、接着剤を塗布して両ユニット1a、1bを接着する。但し、各コア10a、10bの各脚の接着は必須ではなく、リアクトルの使用される周波数帯域によっては、各脚は接着しなくても良い。
【0052】
この組立工程により、ケース4の側面に開口43が形成される。また、少なくとも上ケース4a、下ケース4bが接着されているので、当該開口43を除いて、リアクトルは、密閉される。
【0053】
(c) 充填工程
充填工程は、開口43から充填材をケース4内に充填させて、固化させる工程である。その際、
図12に示すように、開口43を上方に向けて充填材を充填させる。すなわち、開口43は、コイル5の端部51a、51bを引き出すものであるとともに、ケース4内に充填材を注入する機能も兼ねる。本実施形態では、ケース4の一側面に2つの開口43が設けられており、かつ、開口43以外の部分でケース4が密閉されているため、充填した充填材が開口43以外から漏れ出るのを防止することができる。なお、
図12では、両方の開口43から充填材を注入するようにしているが、何れか一方からだけでも良い。
【0054】
[1−4.作用・効果]
(1)本実施形態のリアクトルは、コア10、コア10の一部に装着されるコイル5、及びコア10を被覆してコイル5から絶縁する樹脂部材2を有するリアクトル本体と、リアクトル本体を収容するケース4と、を備え、リアクトル本体は、全体形状が扁平であり、コア10、ケース4及び樹脂部材2は、コイル5の巻軸方向に直交する面で上下に二分割され、コア10は、コイル5が装着される中脚を有する上コア10aと下コア10bとから構成され、ケース4は、上コア10aを収容する上ケース4aと下コア10bを収容する下ケース4bとから構成するようにした。
【0055】
そして、樹脂部材2は、上コア10a及び上ケース4aの間にそれぞれと密着して介在し、上コア10a及び上ケース4aとを一体化する上側樹脂部材2aと、下コア10b及び下ケース4bの間にそれぞれと密着して介在し、下コア10b及び下ケース4bとを一体化する下側樹脂部材2bとから構成され、上コア10a、上ケース4a、及び上側樹脂部材2aを有する上ユニット1aと、下コア10b、下ケース4b、及び下側樹脂部材2bを有する下ユニット1bと、が、上コア10a及び下コア10bの中脚にコイル5が装着されて接着されてなり、下ケース4bには、上記扁平の片面を冷却面7上に設置される底面とし、当該底面に、コア10の底面の全面が露出する開口部42を設けるようにした。
【0056】
これにより、開口部42から露出したコア10の底面の全面から直接冷却することができるとともに、リアクトルの全体形状が扁平であるので、冷却面7上に設置されるリアクトルの底部から上部までの距離は短く、リアクトル上部までの冷却効率を向上させることができる。すなわち、コア10の底面全面から直接冷却するため、冷却面積を大きく、かつ、リアクトルの全体形状が扁平であるので、リアクトル底部から上部までの放熱ルートを短縮化でき、コア10を底面から上部まで全体的に冷却することができる。また、リアクトルの形状を扁平にしたことにより、リアクトル底部から上部に至るまでに複数部材が介在することによる熱抵抗の増加を防止することができる。
【0057】
また、コア10とコイル5とを絶縁する樹脂部材2を上下に二分割し、各ユニット1a、1bを構成する結合部材としての機能を持たせることにより、下ユニット1bにコイル5を介在させて上ユニット1aを組み付ける構成としたため、組立性を向上させることができる。すなわち、リアクトル製造の最終段階で使用される充填材ではなく、リアクトル本体が組み立てられる段階で、リアクトル本体を構成する樹脂部材を用いて各ユニット1a、1bを構成するようにしたので、組立性が向上する。その上、各樹脂部材2a、2bが、各コア10a、10b、各ケース4a、4bと密着するので、冷却効率を向上させることができる。すなわち、上コア10aと上ケース4aとの間、及び、下コア10bと下ケース4bとの間に生じる隙間によって、空気が介在して熱抵抗増大を招くことを抑制することができる。
【0058】
例えば、コア10とケース4の接触面の平面度を0.1とした時の樹脂部材2の有無による熱伝達係数を比較すると、厚みが1mmの樹脂部材2が両部材10、4の間にある場合、熱伝達係数は300W/m
2・Kであるのに対し、樹脂部材2が無い場合の熱伝達係数は200W/m
2・Kとなっており、樹脂部材2により密着性が向上し、熱伝達がしやすくなり、冷却効率が向上する。
【0059】
また、充填材が担っていた冷却機能を樹脂部材2が担うことで、ケース4内に充填する充填材の量を削減することができる。樹脂部材2を構成する樹脂より充填材の方がコスト高であるため、製造コストを削減することができる利点もある。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、冷却効率と組立性の双方を向上させることができる。
【0061】
(2)ケース4の側面に、コイル5の端部51a、51bの引き出し用の開口43を設けるようにした。これにより、リアクトルを小型化することができる。すなわち、従来のリアクトルでは、コイルの端部は、リアクトルの上方に引き出されており、コアにコイルの巻線を貫通させることはできないため、コアや他の部材を避けて上方に引き出す必要があった。そのため、コアやコイルよりも外側にコイルの端部を引き出すための開口を設けざるを得ず、リアクトルが大型化しており、設計条件の厳しい環境下で使用したいという要望に応えることができなかった。これに対し、本実施形態によれば、コイル端部51a、51bの引き出し用の開口43をケース4の側面に設けることで、リアクトル自体の大型化を防止しつつ、コイル端部51a、51bを引き出すことができ、スペース上の制約の厳しい環境下でも設置可能なリアクトルを得ることができる。
【0062】
(3)開口43は、ケース4の一側面に設けるようにした。これにより、ケース4内に充填材を充填する場合、当該開口43を当該充填材の注入口として使用することができる。また、リアクトルの製造過程で当該開口43を上方に向けて充填材を充填することが可能な構成であり、ケース4の側面であっても異なる側面にコイル端部51a、51bの引き出し用の開口43を設ける場合と比べて、充填材が漏れ出る心配をしなくて済むため、生産性を向上させることができる。このように、リアクトルの小型化の利点とともに、製造工程上の利点を享受することができる。
【0063】
(4)上コア10a及び下コア10bは、E字状のコアとした。これにより、リアクトルの小型化及び低背化を図ることができる。すなわち、E字状のコアとしたので、磁束の流れは、E字の中脚部101から継板部103で左右に分流し、外脚部102から継板部103を介して中脚部101で合流することになる。このように磁束の流れが二手に分かれるため、外脚12の磁束が通る断面積は、中脚11の磁束が通る断面積の半分以下で済む。このように外脚12に必要な断面積が決まれば、外脚12の円弧の長さを長くすることで、その分、外脚12の厚みを薄くすることができる。その結果、小型化を図ることができる。また、継板13の磁束が通る断面積は、中脚11の磁束が通る断面積の半分以下で済む。このように継板13に必要な断面積が決まれば、継板13の厚みを薄くすることができる。その結果、低背化を図ることができる。例えば、U字状のコアを突き合わせて環状コアを形成する場合は、磁束が分流することはないのでコイルが装着される部分も、コイルが装着されないヨーク部分も断面積を同じにしなければならず、幅や高さが大きくなるのに対し、形状をE字状とすることで小型化及び低背化を図ることができる。
【0064】
また、継板13は、厚みを薄くした分、必要な断面積を確保するため、x軸方向の幅が広くなることから、コアの底面の面積が広くなる。換言すれば、冷却面7への冷却面積の確保を効率的に行うことができる。
【0065】
(5)上ケース4aには、リアクトルを冷却面7に固定するための固定部41を設けるようにした。これにより、リアクトル本体を上ケース1aから抑えるように固定することができるので、リアクトル本体がケース4から離脱、飛び出るなどの問題を防止できる。すなわち、リアクトル本体をケース4内で強固に固定することができ、耐振性を向上させることができる。また、コア10の底面と冷却面7との密着を安定的に固定できるので、リアクトルの使用が長期になっても、冷却効率の維持を図ることができる。
【0066】
(6)ケース4内の隙間に配置された放熱性及び絶縁性を有する充填成形部6を備え、ケース4の内周面の一部とコイル5との間に介在しているのは、充填成形部6のみとした。これにより、ケース4とコイル5の間を絶縁しつつ、他に部材が介在しないので、熱抵抗が増大することなくコイル5を効率的に冷却することができる。
【0067】
(7)ケース4の冷却面7とは反対側の上ケース4aの上面には、コア10の上面の全面が露出する開口部42を設け、当該開口部42を覆う上蓋21を備えるようにした。これにより、コア10の上面の錆を防止することができる。また、何らかの要因でコア10に欠けが生じ、そのコア片がリアクトル外部へ放出されることを防止することができる。従って、コア10の欠けによるコア片の他部品への異物混入を防止することができ、信頼性の高いリアクトルを得ることができる。
【0068】
(8)ケース4の冷却面7とは反対側上ケース4aの上面には、コア10の上面の全面が露出する開口部42を設け、当該開口部42を覆う上蓋21を備え、上蓋21は、上ケース4aと上コア10aとの間の上側樹脂部材2aと同じ樹脂で一続きに形成するようにした。上記(7)の作用効果に加えて、モールド成形法により、上蓋21を樹脂部材と同じ樹脂で一続きに形成したので、製造工数を削減することができる。
【0069】
(9)本実施形態のリアクトルの製造方法は、上下に分割されたコア10及びケース4と、コア10の一部に装着されたコイル5とを有するリアクトルの製造方法であって、ケース4には、コア10の一面全面を露出させる開口部42が設けられ、コア10の一面全面が開口部42から臨むように、所定間隔隔てて分割されたコアである上コア10a、下コア10b及び上ケース4a、下ケース4bを金型内にセットして、当該金型内に樹脂を充填し、固化させるユニット製造工程を有するようにした。
【0070】
これにより、ケース4とコア10の絶縁を図ることができるとともに、別部材で当該絶縁を図るよりも、工数を少なくすることができる。さらに、上ユニット1a、下ユニット1bを、コイル5を介在させてリアクトルを構成することができるので、リアクトル自体の組立性を向上させることができる。
【0071】
[2.他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、除基実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0072】
(1)実施形態では、上ユニット1aと下ユニット1bとを接着剤により接着して密閉するようにしたが、Oリングなどのゴム、ガスケットなどのシール材を上ケース4a、下ケース4b間に介在させて密閉するようにしても良い。
【0073】
(2)実施形態では、上蓋21をインサート成形法により上側樹脂部材2aと一体的に形成するようにしたが、別部材として設けるようにしても良い。また、上蓋21を樹脂で構成したが、放熱性を有する金属で構成するようにしても良い。例えば、上ケース4aを、上ケース4aの開口部42を塞ぐ有底のケースとしても良い。また、上蓋21をなくして、上ケース4aの開口部42から露出する上コア10aの上面に冷却部材又は冷却面を密着させてコア10を上部からも冷却するようにしても良い。コア10の温度が上昇しやすい環境下で有効である。
【0074】
(3)実施形態では、コア10を断面がE字状の上コア10a、10bから構成したが、上コア10a、10bは、一部にコイル5が装着できれば、断面形状がE字状に限らず、U字状、I字状など他の形状であっても良い。